JP2008214481A - ナノマトリックス分散天然ゴム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】天然ゴムラテックスを脱蛋白質化した後、水溶性ラジカル開始剤にてゴム粒子表面にラジカル活性点を導入した後、モノマーを添加することにより天然ゴム粒子表面でグラフト共重合を行い、得られたラテックスを製膜又はバルク化した後、グラフト鎖を形成する高分子のガラス転移温度(Tg)−20℃以上ガラス転移温度(Tg)+30℃以下の温度で熱処理することにより、脱蛋白質化天然ゴム粒子表面にビニルモノマーがグラフトしたグラフト化天然ゴムからなり、グラフト鎖により形成された厚さ1〜100nmのマトリックス中に天然ゴム粒子が互いに繋がって層状に分散したナノマトリックス分散天然ゴムを製造する。
【選択図】図5
Description
本発明のナノマトリックス分散天然ゴムを得るための出発原料となる天然ゴムラテックスは、天然のゴムの木から得られたラテックスを意味し、当該ラテックスには新鮮なフィールドラテックスや、市販のアンモニア処理ラテックス等のいずれをも使用することができる。
これらの天然ゴムラテックスの脱蛋白質化は、高知の方法で行なわれる。例えば、1)ラテックスに蛋白質分解酵素又はバクテリアを添加して蛋白質を分解させる方法(上記特許文献2)や、2)石鹸等の界面活性剤により繰り返し洗浄する方法等、公知の方法により行なうことができる。
RNHCONH2 (1)
(式中、RはH、炭素数1〜5のアルキル基を表す)
脱蛋白質化天然ゴム粒子表面にビニルモノマーをグラフトさせるには、ビニルモノマーを脱蛋白質化天然ゴムラテックスに加え、適当な重合開始剤を加えて反応させることにより行なわれる。
得られたラテックスを製膜又はバルク化した後、グラフト鎖を形成する高分子のガラス転移温度(Tg)−20℃以上、ガラス転移温度(Tg)+30℃以下の温度で熱処理することにより、本発明のナノマトリックス分散天然ゴムが製造される。即ち、このような熱処理により、グラフト鎖により形成された厚さ1〜100nmのマトリックス中に天然ゴム粒子が互いに繋がって層状に分散したナノマトリックス分散天然ゴム構造をとる。
天然ゴムラテックスとして、市販の高アンモニア天然ゴムラテックス(HA−NR)(DRC:60wt/wt%)を使用した。
脱蛋白質化はHA−NRラテックスをDRC30wt/wt%に希釈した後、界面活性剤(SDS)1wt/wt%、尿素0.1wt/wt%を加え、室温でインキュベートすることにより行った。このラテックスを10,000gで遠心分離することにより洗浄し、DRC30wt/wt%及び界面活性剤濃度0.1wt/wt%に調整することにより、尿素脱蛋白質化天然ゴム(以下、U−DPNRという)ラテックスを得た。
酵素による脱蛋白質化は高アンモニア天然ゴム(HANR)ラテックスを乾燥ゴム重量(DRC)30wt/wt%に希釈した後、界面活性剤(SDS)1wt/wt%、蛋白質分解酵素(アルカラーゼ2.0T)0.04wt/wt%を加え、38℃で12時間インキュベ一トすることにより行なった。このラテックスを10,000gで遠心分離することにより洗浄し、DRC30wt/wt%及び界面活性剤濃度0.1wt/wt%に調整することにより、酵素脱蛋白質化天然ゴム(以下、E−DPNRという)ラテックスを得た。
2−1スチレンの精製
スチレンは重合禁止剤のカテコールを10%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄して除去し、無水硫酸マグネシウムで一昼夜乾燥してから使用した。
DRC30%に調整したU−DPNR及びE−DPNRラテックスをセパラブルフラスコに入れ、1時間窒素をバブリングすることにより、ラテックス中の溶存酸素を除去した。400rpmで攪拌しながらスチレンモノマーを滴下し、さらに1時間窒素バブリングを行なった後、tert−ブチルヒドロペルオキシド−テトラエチレンペンタミン(TBHPO−TEPA)有機レド1ツクス系開始剤3.3×10−2mo1/kg−rubberを順次滴下し、2時間、30℃で重合を行なった。反応後、未反応モノマーを減圧・除去してからメタノールでゴム分を凝固し、室温で一週間減圧乾燥を行なった。
DRC30%に調整したU−DPNR及びE−DPNRラテックスをセパラブルフラスコに入れ、1時間窒素をバブリングすることによりラテックス中の溶存酸素を除去した。400rpmで攪拌しながらtert−ブチルヒドロペルオキシド−テトラエチレンペンタミン(TBHPO−TEPA)有機レドックス系開始剤3.3×10−2mol/kg−rubber、スチレンモノマーを順次滴し2時間、30℃で重合を行なった。反応後、未反応モノマーを減圧/除去してからメタノールでゴム分を凝固し,室温で一週間減圧乾燥を行なった。
図3に、得られたゴム成分を、製膜した、U−DPNR(表面共重合)およびU−DPNR(未処理)の30℃における周波数分散の測定結果を示す。図3中、◆はU−DPNRの表面グラフト共重合を、×はU−DPNRを示す。
(比較例2)80:80℃で30分間熱処理後、30℃で粘弾性測定
(実施例1)130℃で10分間熱処理後、30℃で粘弾性測定
(実施例2)130℃で20分間加熱後、30℃で粘弾性測定
(実施例3)130℃で30分間加熱後、30℃で粘弾性測定
図4に、比較例2の試料をOsO4で染色し、凍結した超薄切片のTEM写真を示す。図4から、グラフト鎖により形成された厚さ1〜100nmのマトリックス中に天然ゴム粒子が分散したナノマトリックス分散天然ゴムが見られるが、これらの天然ゴム粒子は個々に分散しており、互いに繋がって層状に分散していない。
[5:周波数分散試験]
図6に、熱処理後の周波数分散試験の結果を示す。図6中、◆は比較例1を、■は比較例2を、▲は実施例1を、*は実施例2を、●は実施例3を、+はU−DPNRを示す。
130℃、30分間の熱処理後の各試料の、30℃におけるU−DPNR、U−DPNR(表面共重合)およびU−DPNR(内部共重合)それぞれの粘弾性験を行った。図7に、測定結果を示す。図7中、◆はU−DPNRを、■はU−DPNRの内部グラフト共重合を、▲はU−DPNRの表面グラフト共重合を示す。
Claims (14)
- 脱蛋白質化天然ゴム粒子表面にビニルモノマーがグラフトした表面グラフト共重合化天然ゴムからなり、グラフト鎖により形成された厚さ1〜100nmのマトリックス中に天然ゴム粒子が互いに繋がって層状に分散したナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記グラフト鎖により形成されたマトリックスの厚さが5〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載のナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記互いに繋がって層状の天然ゴム粒子の平均厚さが0.01〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記ビニルモノマーがスチレン系モノマーであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記ビニルモノマーが機能性官能基含有モノマーであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記脱蛋白質化天然ゴム粒子の窒素含有率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記表面グラフト共重合化天然ゴムが天然ゴム粒子100重量部に対して10〜20重量部のビニルモノマーがグラフトしたものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の制振材の素材としてのナノマトリックス分散天然ゴム。
- 前記グラフト化天然ゴムが架橋されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のナノマトリックス分散天然ゴム。
- 天然ゴムラテックスを脱蛋白質化した後、水溶性ラジカル開始剤を用いてゴム粒子表面にラジカル活性点を導入した後、モノマーを添加することにより天然ゴム粒子表面でグラフト共重合(表面グラフト共重合)を行い、得られたラテックスを製膜又はバルク化した後、グラフト鎖を形成する高分子のガラス転移温度(Tg)−20℃以上、ガラス転移温度(Tg)+30℃以下の温度で熱処理することを特徴とするナノマトリックス分散天然ゴムの製造方法。
- 前記ビニルモノマーがスチレン系モノマーであることを特徴とする請求項9に記載のナノマトリックス分散天然ゴムの製造方法。
- 前記ビニルモノマーがスチレンであり、前記熱処理温度が100〜150℃であることを特徴とする請求項10に記載のナノマトリックス分散天然ゴムの製造方法。
- 前記ビニルモノマーがスチレンであり、前記熱処理温度が120〜140℃であることを特徴とする請求項10に記載のナノマトリックス分散天然ゴムの製造方法。
- 前記ビニルモノマーが機能性官能基含有モノマーであることを特徴とする請求項9に記載のナノマトリックス分散天然ゴムの製造方法。
- 前記天然ゴムラテックスの脱蛋白質化を、天然ゴムラテックスに尿素系蛋白質変成剤及び界面活性剤を添加し、攪拌・混合して原料天然ゴムラテックス中の蛋白質を変成させる工程と、前記工程により変成した蛋白質を分離・除去する工程とを含む方法により行なうことを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載のナノマトリックス分散天然ゴムの製造方法。
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