JP2008214335A - ハナビラタケ抽出物、ビアリール化合物および化粧料 - Google Patents

ハナビラタケ抽出物、ビアリール化合物および化粧料 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のハナビラタケ抽出物よりも美白効果が高く、化粧料などの材料として有用なハナビラタケ抽物、および前記ハナビラタケ抽出物を含む化粧料を提供する。
【解決手段】ハナビラタケの菌糸体をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮して水および酢酸エチルで分配し、酢酸エチル画分として、以下の構造式で表されるハナビラタケ抽出物を得る。
Figure 2008214335

【選択図】図1

Description

本発明は、ハナビラタケ抽出物およびそれに含有されるビアリール化合物、ならびにハナビラタケ抽出物を含む化粧料に関する。
ハナビラタケ(学名:Sparassis crispa)は、ハナビラタケ科ハナビラタケ属に属する食用キノコである。ハナビラタケは、免疫増強作用を有するとされるβ−(1→3)−グルカンを含み、腫瘍増殖抑制作用、アレルギー症状改善作用、ヒトNK(Natural killer)細胞活性化作用、血糖値上昇抑制作用、血中コレステロール上昇抑制作用および血圧上昇抑制作用などの機能を有することから、健康食品の材料として利用される。またハナビラタケは、抗酸化活性、コラーゲン産生促進作用および美白作用を有することから、化粧料の材料としても利用される。
ハナビラタケを用いた化粧料として、ハナビラタケ抽出物を含む化粧料がある(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、美白効果を有するハナビラタケ抽出物として、ハナビラタケからクロロホルムを用いて抽出される画分、ならびにハナビラタケからエタノール、アセトンおよびヘキサンを用いて抽出される画分が開示される。
特許文献1に開示の技術によれば、エタノール、アセトンおよびヘキサンを用いて抽出される画分は、段落[0043]に記載されるように、ハナビラタケをエタノールで抽出して得られるエタノール溶液と、エタノール抽出後のハナビラタケをアセトンで抽出して得られるアセトン溶液とを混合して濃縮し、得られた濃縮物からヘキサンを用いて溶媒分画を行なって溶媒を留去して得られるヘキサン可溶部に含まれる。
また美白効果を有するハナビラタケ抽出物ではないが、抗腫瘍活性を有するハナビラタケ抽出物として、ハナビラタケの熱水またはアルカリ水などの水系溶媒による溶媒抽出物が提案され(たとえば、特許文献2参照)、抗菌活性を有するハナビラタケ抽出物として、ハナビラタケからクロロホルムまたは酢酸エチルを用いて抽出される画分が提案される(たとえば、特許文献3参照)。
特許文献3の技術によれば、ハナビラタケ抽出物は、段落[0036]に記載されるように、ハナビラタケをエタノールで抽出して得られるエタノール溶液と、エタノール抽出後のハナビラタケをアセトンで抽出して得られるアセトン溶液とを混合して濃縮し、得られた濃縮物からクロロホルム、次に酢酸エチルを用いて順に溶解部分を抽出して溶媒を留去して得られる。またハナビラタケ抽出物は、段落[0039]に記載されるように、ハナビラタケをクロロホルムで抽出して得られるクロロホルム抽出物であり、またこのクロロホルム抽出後のハナビラタケを酢酸エチルで抽出して得られる酢酸エチル抽出物である。
特許文献1〜3には、ハナビラタケをエタノール水溶液で抽出して得られるエタノール抽出物を液−液分配抽出してハナビラタケ抽出物を得る技術について一切記載がない。また特許文献2には、水系溶媒によるハナビラタケ抽出物が主成分としてグルカンを含有することが開示されるが、特許文献1および3には、ハナビラタケ抽出物の含有成分について一切記載がない。
特開2005−281224号公報 特開2000−217543号公報 特開2005−97127号公報
特許文献1に開示のハナビラタケ抽出物は、美白効果が充分でなく、美白効果の向上が求められる。
本発明の目的は、従来のハナビラタケ抽出物よりも美白効果が高く、化粧料などの材料として有用なハナビラタケ抽出物、および前記ハナビラタケ抽出物を含む化粧料を提供することである。
本発明は、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、
構造式(1)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、構造式(2)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、および構造式(3)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物の少なくともいずれか1つを含有することを特徴とするハナビラタケ抽出物である。
また本発明は、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、
ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水およびヘキサンで分配して水画分を得て、この水画分を濃縮してまたはしないで、酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分であることを特徴とするハナビラタケ抽出物である。
また本発明は、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、
ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水および酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分であることを特徴とするハナビラタケ抽出物である。
また本発明は、構造式(1)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、構造式(2)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、および構造式(3)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物の少なくともいずれか1つを酢酸エチル画分に含有することを特徴とする。
また本発明は、ハナビラタケの菌糸体からの抽出物であることを特徴とする。
また本発明は、構造式(1)
Figure 2008214335
、構造式(2)
Figure 2008214335
、または構造式(3)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物である。
また本発明は、前記本発明のハナビラタケ抽出物を含むことを特徴とする化粧料である。
本発明によれば、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、構造式(1)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物(以下「ビアリール化合物(1)」という)、構造式(2)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物(以下「ビアリール化合物(2)」という)、および構造式(3)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物(以下「ビアリール化合物(3)」という)の少なくともいずれか1つを含有するハナビラタケ抽出物が提供される。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物とは異なる成分として、ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つを含有する。本発明のハナビラタケ抽出物は、ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つを含有するか否かの点で、従来のハナビラタケ抽出物とは別異の組成物である。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物に比べて、チロシナーゼに対する阻害活性(以下「チロシナーゼ阻害活性」ともいう)が高く、従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。したがって本発明のハナビラタケ抽出物は、化粧料の材料として有用である。
また本発明によれば、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出して得たエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水およびヘキサンで分配して水画分を得て、この水画分を濃縮してまたはしないで、酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分であるハナビラタケ抽出物が提供される。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物とは異なる成分を含有する別異の組成物である。この違いは、抽出法の違いによって生じるものと考えられる。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物に比べて、チロシナーゼに対する阻害活性が高く、従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。したがって本発明のハナビラタケ抽出物は、化粧料の材料として有用である。
また本発明によれば、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出して得たエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水および酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分であるハナビラタケ抽出物が提供される。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物とは異なる成分を含有する別異の組成物である。この違いは、抽出法の違いによって生じるものと考えられる。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物に比べて、チロシナーゼに対する阻害活性に優れ、従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。したがって本発明のハナビラタケ抽出物は、化粧料の材料として有用である。
また本発明によれば、本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物とは異なる成分として、ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つを酢酸エチル画分に含有する。本発明のハナビラタケ抽出物は、ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つを含有するか否かの点で、従来のハナビラタケ抽出物とは別異の組成物である。ビアリール化合物(1)、(2)および(3)は、従来のハナビラタケ抽出物には含まれておらず、この違いは、抽出法の違いによって生じるものと考えられる。
また本発明によれば、本発明のハナビラタケ抽出物は、ハナビラタケの菌糸体からの抽出物である。本発明のハナビラタケ抽出物が、ハナビラタケの菌糸体からの抽出物であることによって、その美白効果が一層向上する。
また本発明によれば、構造式(1)
Figure 2008214335
、構造式(2)
Figure 2008214335
、または構造式(3)
Figure 2008214335
で表される新規化合物であるビアリール化合物(1)、(2)または(3)が提供される。ビアリール化合物(1)、(2)および(3)は、チロシナーゼに対する阻害活性に優れ、優れた美白効果を有する。したがってビアリール化合物(1)、(2)および(3)は、化粧料の材料として有用である。
また本発明によれば、本発明のハナビラタケ抽出物を含む化粧料が提供される。本発明の化粧料に含まれる本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物に比べて、チロシナーゼに対する阻害活性に優れ、従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。したがって本発明の化粧料は、従来のハナビラタケ抽出物を含む化粧料に比べて、美白効果に優れる。
[ハナビラタケ抽出物]
本発明のハナビラタケ抽出物は、ハナビラタケからの抽出物であり、より詳細には、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物である。
(A)ハナビラタケの子実体および菌糸体
本発明で用いられるハナビラタケの子実体(以下「ハナビラタケ子実体」ともいう)は、天然のものであっても、人工栽培されたものであってもよい。人工栽培の方法としては、たとえば人工栽培用の菌床を作製して、ハナビラタケの種菌を接種して培養する方法が挙げられる。
本発明で用いられるハナビラタケの菌糸体(以下「ハナビラタケ菌糸体」ともいう)は、たとえば液体培養法によって得ることができる。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖、デキストリン、グリセロールなどが挙げられる。窒素源としては、無機および有機のいずれの窒素源を用いてもよいが、生育速度の観点からは、有機窒素源を用いる方が好ましい。培地には、微量元素およびビタミンなどの生育因子を添加してもよい。また培地には、水溶性成分を添加することが好ましく、これによって均一に生育させることができる。培養温度は、たとえば15℃以上30℃以下であり、好ましくは18℃以上28℃以下、より好ましくは20℃以上25℃以下である。培地のpHは、たとえば2.5以上8.0以下であり、好ましくは3.0以上7.0以下であり、より好ましくは3.5以上6.0以下である。培養期間は、菌株に応じて選ばれ、たとえば数日間から数週間程度である。
このようにして得られるハナビラタケの子実体および菌糸体は、乾燥されずにそのまま抽出に供されてもよく、乾燥されて抽出に供されてもよい。また子実体および菌糸体は、粉末化などの加工が施されてから抽出に供されてもよい。抽出効率の観点からは、抽出に供される子実体および菌糸体は、粉末状であることが好ましい。
本発明のハナビラタケ抽出物の原料には、ハナビラタケの子実体および菌糸体のいずれを用いてもよく、両方を用いてもよい。子実体および菌糸体のうち、菌糸体からの抽出物は、子実体からの抽出物に比べて、チロシナーゼ阻害活性が高く、一層優れた美白効果を有する。したがってハナビラタケ抽出物の原料には、菌糸体を用いることが好ましい。
(B)抽出方法
本発明のハナビラタケ抽出物は、ハナビラタケを抽出溶媒(以下、単に「溶媒」ともいう)で抽出した後、得られた抽出液を分配抽出、より詳細には液−液分配抽出することによって得られる。
ハナビラタケの抽出溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などの極性有機溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルなどの無極性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いられてもよく、2種以上が混合されて混合溶媒として用いられてもよい。溶媒を混合して用いる場合には、各溶媒の混合比は、溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。
前述の抽出溶媒の中でも、アルコール類およびエステル類から選ばれる少なくとも一種の抽出溶媒を用いることが好ましい。特にエタノールおよび酢酸エチルは、取り扱いが容易であり、しかも優れたチロシナーゼ阻害活性を有する抽出物を得ることができることから、エタノールおよび酢酸エチルの少なくともいずれか一方の抽出溶媒を用いることが好ましい。その中でも、エタノールを用いることがさらに好ましい。エタノールは、水と混合されてエタノール水溶液として用いられることが好ましい。エタノール水溶液中におけるエタノールの濃度は、たとえば50体積%であり、好ましくは30体積%以上80体積%以下である。以下、特に断らない限り、エタノール水溶液中におけるエタノールの濃度を示す単位「%」は、「体積%」を意味する。
抽出溶媒の量は、特に制限されないが、ハナビラタケの乾燥重量に対して、5倍以上20倍以下の重量であることが好ましい。抽出溶媒の重量がハナビラタケの乾燥重量の5倍未満であると、操作性が悪く、また20倍を超えると、作業効率が悪い。
ハナビラタケの抽出方法としては、特に制限されないが、たとえば、ハナビラタケに抽出溶媒を加えた後、加温加熱して抽出する加熱抽出法、超臨界抽出法などが挙げられる。また一定量の抽出溶媒にハナビラタケを浸漬してバッチ処理する浸漬抽出法、連続的に抽出溶媒を送り続ける連続抽出法などの種々の抽出法を用いてもよい。抽出するときの抽出溶媒の温度は、抽出物のチロシナーゼ阻害活性を失活させない程度に選ばれ、具体的には10℃以上50℃以下であることが好ましく、20℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
具体的な抽出方法の一例を挙げると、たとえば、ハナビラタケを、その乾燥重量の5倍以上20倍以下の重量の抽出溶媒に浸漬し、常温で1日間以上14日間以下静置することによって、チロシナーゼ阻害活性成分を抽出することができる。ここで「常温」とは、20±5℃の温度範囲をいう。
前述の抽出方法によってハナビラタケから抽出物を得た後、濾過、遠心分離等の常法によって残渣と固液分離することによって、抽出液を得ることができる。このようにして得られる抽出液を、濃縮してまたは濃縮せずに、分配抽出することによって、本発明のハナビラタケ抽出物が得られる。分配抽出の溶媒としては、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒および水からなる群から選ばれる1種又は2種以上が用いられる。
さらに具体的に述べると、本発明のハナビラタケ抽出物は、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水およびヘキサンで分配して水画分を得て、この水画分を濃縮してまたはしないで、酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分である。
また本発明のハナビラタケ抽出物は、ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水および酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分である。
(C)チロシナーゼ阻害活性物質の単離および同定
図1は、チロシナーゼ阻害活性物質の単離および同定の手順を示す工程図である。チロシナーゼ阻害活性物質の単離および同定は、たとえば以下のように行なわれる。図1に示すように、まずハナビラタケの菌糸体をエタノール水溶液、たとえば50%エタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得る。得られたエタノール抽出物を減圧下でエタノールがある程度揮発するまで濃縮した後、水および酢酸エチルを加えて液液分配し、水画分および酢酸エチル画分を得る。
高いチロシナーゼ阻害活性が認められた酢酸エチル画分を、カラムクロマトグラフィー、たとえばシリカゲルカラムクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー(略称HPLC)で分画することによって、チロシナーゼ阻害活性を有する3つの化合物、すなわち化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)を得る。
各種スペクトル分析によって、化合物(2)は、構造式(2)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、すなわちビアリール化合物(2)である、4−(4−ヒドロキシ−6−メトキシ−2,3−ジメチルベンジル)−5−メチルベンゼン−1,3−ジオール(4-(4-Hydroxy-6-methoxy-2,3-dimethylbenzyl)-5-methyl-benzene-1,3-diol)と同定された。
また各種スペクトル分析および化合物(2)の各種スペクトルとの比較によって、化合物(1)は、構造式(1)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、すなわちビアリール化合物(1)である、3−(2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンジル)−6−ヒドロキシ−2−メトキシ−4−メチル安息香酸(3-(2,4-Dihydroxy-6-methyl-benzyl)-6-hydroxy-2-methoxy-4-methyl-benzoic
acid)と推定された。
また化合物(3)は、構造式(3)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物、すなわちビアリール化合物(3)である、4−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−6−メチルベンジル)−5−メチルベンゼン−1,3−ジオール(4-(4-Hydroxy-2-methoxy-6-methyl-benzyl)-5-methyl-benzene-1,3-diol)と推定された。
図2は、本発明のハナビラタケ抽出物の抽出手順の他の例を示す工程図である。図2に示すように、ハナビラタケ抽出物は、ハナビラタケの菌糸体をエタノール水溶液、たとえば50%エタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を減圧下で濃縮して、水およびヘキサンで液液分配して水画分を得て、この水画分を減圧下で濃縮して、酢酸エチルで液液分配して得られる酢酸エチル画分であってもよい。このようにして得られる酢酸エチル画分は、薄層クロマトグラフィー分析の結果から、ビアリール化合物(1)、ビアリール化合物(2)およびビアリール化合物(3)の少なくとも1つ、具体的には全てを含有することがわかった。
(D)効果
本発明のハナビラタケ抽出物は、チロシナーゼ阻害活性が高く、高い美白効果(肌の色を白くする効果)を有する。より詳細には、本発明のハナビラタケ抽出物は、特許文献1に開示の従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。
この違いは、含有成分の違いによって生じるものと考えられる。本発明のハナビラタケ抽出物は、前述のビアリール化合物(1)、ビアリール化合物(2)およびビアリール化合物(3)の少なくともいずれか1つを含有する。このように本発明のハナビラタケ抽出物は、ビアリール化合物(1)、ビアリール化合物(2)およびビアリール化合物(3)の少なくともいずれか1つを含有するので、チロシナーゼ阻害活性が高く、従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。
このように本発明のハナビラタケ抽出物は、高い美白効果を有するので、本発明のハナビラタケ抽出物を化粧料、特に皮膚用化粧料に添加すれば、美白効果の高い化粧料を得ることができる。本発明のハナビラタケ抽出物は、そのまま化粧料などの材料として使用できる。また本発明のハナビラタケ抽出物を、濃縮、希釈、濾過、乾燥などの一般的な粉末化の手法によって、粉末化して用いてもよい。
また本発明のハナビラタケ抽出物に含有されるチロシナーゼ阻害活性物質であるビアリール化合物(1)、(2)および(3)は、チロシナーゼ阻害活性が高く、高い美白効果を有するので、ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つを化粧料、特に皮膚用化粧料に添加すれば、美白効果の高い化粧料を得ることができる。
[化粧料]
本発明のハナビラタケ抽出物は、化粧料の材料として好適であり、特に美白化粧料の材料として好適である。本発明の化粧料は、本発明のハナビラタケ抽出物を含む。本発明のハナビラタケ抽出物は、従来のハナビラタケ抽出物に比べて、チロシナーゼ阻害活性に優れ、従来のハナビラタケ抽出物よりもさらに高い美白効果を有する。したがって本発明の化粧料は、従来のハナビラタケ抽出物を含む化粧料に比べて、美白効果に優れる。
本発明の化粧料におけるハナビラタケ抽出物の含有量は、特に制限されず、化粧料の形態に応じて広い範囲から適宜選択されるが、化粧料全量の0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、化粧料全量の0.5重量%以上20重量%以下であることがさらに好ましい。本発明のハナビラタケ抽出物の含有量が化粧料全量の0.1重量%未満であると、本発明のハナビラタケの美白効果が充分に発揮されないおそれがある。また本発明のハナビラタケ抽出物を、化粧料全量の30重量%を超えて含有させても、美白効果などの効果のそれ以上の顕著な向上が認められず、不経済である。
本発明の化粧料は、本発明のハナビラタケ抽出物とともに、油性基剤、水性基剤、界面活性剤、pH調整剤などを含んでもよい。油性基剤の具体例としては、たとえば、ミツロウ、カカオ油、カルナバロウ、高級脂肪酸(イソステアリン酸、ウンデシレン酸など)、固形パラフィン、高級アルコール(セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノールなど)などの常温固形状油性化合物、ワセリン、ラノリン、還元ラノリンなどの常温固形状油性化合物、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、流動パラフィン、オレイン酸、リノール酸、エステル類(ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチルなど)、シリコーン油(ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸など)などが挙げられる。
水性基剤の具体例としては、たとえば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸およびその塩、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩などの保湿剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマ、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴムなどの増粘剤などが挙げられる。油性基剤および水性基剤は化粧料の製剤形態に応じて選択され、それぞれ1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
界面活性剤としては、たとえば、イソステアリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシルデ゛シルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのカチオン型界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、レシチン、コラーゲンなどの天然界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。pH調整剤としては、たとえば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられる。
また本発明の化粧料は、本発明のハナビラタケ抽出物とともに、生理活性成分を含んでもよい。生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に生理活性を付与する化合物であれば特に制限されず、たとえば、本発明のハナビラタケ抽出物以外の美白成分、消炎剤、老化防止剤、紫外線防御剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、賦活剤、発毛剤、育毛剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分などが挙げられる。これらの中でも、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分などが特に好ましい。生理活性成分は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
生理活性成分の具体例としては、たとえば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントインなどの消炎剤、ビタミンA類(パルミチン酸レチノールなど)、ビタミンB類(リボフラビン,ニコチン酸アミドなど)、ビタミンD類(コレカルシフェロールなど)、ビタミンE類(dl−α−トコフェロールなど)などの抗酸化剤、ローヤルゼリー、コレステロール誘導体、各種アミノ酸などの賦活剤、γ−オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウムなどの血行促進剤などが挙げられる。本発明の化粧料における生理活性成分の含有量は従来の化粧料におけるのと同程度でよい。
また本発明の化粧料は、化粧料に一般的に用いられる化粧料添加剤の1種または2種以上のそれぞれ適量を含んでもよい。化粧料添加剤としては、たとえば、粉剤(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、塩類、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料、水、アルコールなどが挙げられる。これらの化粧料添加剤は、化粧料の形態に応じて、適宜選択して用いられる。
本発明の化粧料は、従来と同様の製造方法によって、従来から知られる化粧料の形態に調製される。化粧料が採り得る化粧料形態としては特に制限されないけれども、たとえば、美白料、クレンジングクリーム、クレンジングローション、先顔クリーム、石けんなどの皮膚洗浄剤、保湿化粧水、柔軟化粧水、収斂化粧水などの整肌料、ミルキィローション、エモリエントミルク、バニシングクリームなどの保護料、マッサージクリーム、マッサージローション、フォームパック、ピールオフパックなどの賦活料、入浴剤、パップ剤などが挙げられる。その他、石鹸、ボディーソープ、乳液、ボディローション、パック、入浴剤、シャンプー、リンス、コンディショナー、育毛剤、日焼け止め剤などに添加することもできる。
また本発明のハナビラタケ抽出物に含有されるチロシナーゼ阻害活性物質であるビアリール化合物(1)、(2)および(3)は、化粧料の材料として好適である。ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つを含む化粧料は、本発明のハナビラタケ抽出物を含む本発明の化粧料と同様に、ビアリール化合物(1)、(2)および(3)の少なくともいずれか1つとともに、油性基剤、水性基剤、界面活性剤、pH調整剤、生理活性成分、化粧料に一般的に用いられる化粧料添加剤を含んでもよく、また従来と同様の製造方法によって、従来から知られる化粧料の形態に調製される。
以下に製造例、実施例および調製例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(1)分離装置および分析装置
以下の製造例および実施例では、特に記載がない限り、以下の分離装置、クロマトグラフィー用担体、HPLC用カラムおよび分析装置を用いた。
薄層クロマトグラフィー(略称TLC):TLC−Plate Silica gel
60 F254(メルク(Merck)社製)
充填用シリカゲル:BW−127ZH(富士シリシア化学株式会社製)
高速液体クロマトグラフィー(略称HPLC):Class AV HPLC Syst
em(株式会社島津製作所製)
HPLCポンプ:LD−6AD(株式会社島津製作所製)
紫外・可視吸光検出器:SPD−10AVvp(株式会社島津製作所製)
システムコントローラー:SCL−10Avp(株式会社島津製作所製)
HPLCカラム(分画用):ユニゾン(Unison)US−C18,20mm×150mm(インタクト(Imtakt)株式会社製)
紫外・可視分光分析計:DU640 Spectrophotometer(ベックマンコールター(
Beckman coulter)社製)
マイクロプレートリーダー:Microplate reader Model 680(BIO RAD社製)
核磁気共鳴スペクトル(略称NMR):Model JNM EX270(270MHz、日本電子株式会社(JEOL)製)
質量分析装置(略称MS):JMN−ECA−600(600MHz at H、日本電子株式会社(JEOL)製)
赤外吸収スペクトル分析装置(略称IR):FT/IR FR−860(日本分光株式
会社(JASCO)製)
またHPLCによる分画は、表1に示す条件で行なった。
Figure 2008214335
表1に示す移動相の水には、導電率約0.5〜1.2μS/cmの蒸留水を用いた。また以下の製造例および実施例では、特に記載がない限り、表1の移動相と同じ導電率約0.5〜1.2μS/cmの蒸留水を水として用いた。この蒸留水は、岩城(IWAKI)旭テ
クノグラス(ASAHI TECHNO GLASS)株式会社製の蒸留水製造装置(商品名:AUTOMATIC
STILL ASL-2DS)にて、活性炭カートリッジにASL−ROZAI(商品名)を用い、イオン交換樹脂にCART−SH3.2(商品名)を用いて調製した。
(2)活性評価方法
(2−1)チロシナーゼ阻害活性評価
(a)原理
チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)は、メラニン生成の初期反応であるアミノ酸チロシンからL−DOPA(L−β−(3,4−Dihydroxyphenyl)alanine)への水酸化、L−DOPAからDOPAキノンへの酸化を触媒する酵素である。本試験では、L−DOPAを基質として用い、その反応生成物であるDOPAキノンの吸収波長である475nmにおける吸光度を測定し、DOPAキノンの生成阻害からチロシナーゼ活性阻害率を求めた。
(b)試験方法
任意の濃度に調製した試料溶液100μLと1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8、株式会社ヤトロン製)400μLとを混合し、これにチロシナーゼ(30units、シグマ(SIGMA)社製)60μLを加え、37℃のウォーターバス上で20分間馴致した。その後、2mMに調製したL−DOPA(和光純薬株式会社製)440μLを加えて、37℃で5分間反応させた。これをサンプルSとする。
また同様にして、試料溶液を添加しないもの(以下「コントロールC」という)、チロシナーゼを添加しないもの(以下「サンプルブランクS−Bl」という)、ならびに試料溶液およびチロシナーゼをともに添加しないもの(以下「コントロールブランクC−Bl)を準備した。検定試料、チロシナーゼおよびL−DOPAは、いずれも1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)で溶解して試験に用いた。
コントロールブランクC−Blを測定ブランクとして、サンプルS、コントロールCおよびコントロールブランクC−Blについて、波長475nmにおける吸光度を測定した。測定結果から、チロシナーゼ活性阻害率を下記式(A)に従い、算出した。試験は3回行い、その平均を1データとして表した。チロシナーゼ活性阻害率は、その値が大きいほど、チロシナーゼ阻害活性が高いことを示す。
チロシナーゼ活性阻害率(%)=C−{S−(S−Bl)}/C …(A)
式(A)において、符号CはコントロールCの吸光度を示し、SはサンプルSの吸光度を示し、S−BlはサンプルブランクS−Blの吸光度を示す。
(2−2)メラニン合成抑制評価
(a)供試細胞
本評価で使用したマウス由来B16メラノーマ細胞(RCB1283)は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターより購入した。
(b)B16メラノーマ細胞の培養
培養培地は、MEM(Minimum Essential Medium Eagle、シグマ(SIGMA)社製)に、10%FBS(Fetal Bovine Serum、GIBCO社製)および0.02%Antibiotic-
antimycotic(GIBCO社製)を添加して使用した。以下、この培養培地を「10%FBS−MEM」という。
B16メラノーマ細胞は、組織培養用シャーレ(直径φ90mm,NUNCLON)にて温度
37℃、5%CO条件下で培養し、70〜80%コンフルエントで、すなわち組織培養用シャーレに細胞が満杯な状態であるコンフルエントの状態の70〜80%まで細胞が培養されたときに植え継いだ。細胞の剥離には、PBS(−)(Dulbecco)で0.25%に調製したトリプシン(Trypsin 250、DIFCO社製)を用いた。細胞数は、生細胞を特異的に染色するトリパンブルー(Trypan Blue,同仁化学研究所製)をPBS(−)で0.4%に調製し、細胞懸濁液と混合して、カウンティングチェンバー(ビルケルチュルクタイプ,HIRSCHMANN LABORGERATE社製)を用いて計測した。
(c)細胞毒性試験
メラニン合成抑制試験に用いる試料濃度を決定するために、事前に細胞毒性試験を実施した。
96穴のプレート(96 well plate ;コーニング(CORNING)社製)に、5%FBS−MEMで5×10cells/mLに調製したB16メラノーマ細胞の懸濁液を200μLずつ播種し、37℃、5%COインキュベータで培養した。24時間後、5%FBS−MEMを交換し、任意の濃度に調製した試料溶液を加えた。60〜72時間後、培地を捨て、10%FBS−MEMで50μg/mLに調製したNR(
Neutral Red, SIGMA)を200μLずつ添加し、2時間後、NR溶液を捨て、1%CaCl、1%ホルマリン溶液100μLで細胞を固定し、固定液を捨てて、1%酢酸,50%エタノール溶液100μLを加えて1分間プレートミキサーで攪拌し、NRを抽出した。抽出後、マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定し、試料溶液を加えなかったものを対照(Control)として、細胞増殖率を比較した。検定試料は、5%FBS−MEMで調製し、5%FBS−MEMでの溶解が困難な場合にはDMSO(生化学用、和光純薬株式会社製)で溶解した。その際、DMSOは終濃度0.5%になるように添加した。それぞれの調製溶液を0.22μmフィルター(MILLEX GP, 33mm,
MILLIPORE)に通し、試験に用いた。試験は4回行い、その平均値を1データとして表した。
(d)メラニン合成抑制試験
メラニン合成抑制試験は以下のようにして行った。
5%FBS−MEMで5×10 cells/mLに調製したB16メラノーマ細胞の懸濁液を組織培養用シャーレ(直径φ60mm,NUNCLON)に5mL播種し、24時間、37℃、5%COインキュベータで培養した。その後、培地を捨て、メラニン合成促進物質であるテオフィリンを含む5%FBS−MEM(培地100mLあたりに50mMテオフィリン溶液4mLを添加)と、任意の濃度に調製した試料溶液とを、全量が5mLとなるように添加し、60〜72時間、37℃、5%CO下で培養した。
検定試料は、テオフィリン含有5%FBS-MEMで調製し、5%FBS−MEMでの溶解が困
難な場合にはDMSO(生化学用、和光純薬株式会社製)で溶解した。その際、DMSOは終濃度0.5%になるように添加した。それぞれの調製溶液を0.22μmフィルター(MILLEX GP, 33mm,MILLIPORE)に通し、試験に用いた。培養後、培地を捨て、PBS(−)500μLで細胞を洗浄し残った培地を完全に取り除いた。そこへ0.85規定(N)KOHを500μL加え、細胞を融解することでメラニンの抽出を行い、抽出液を回収後、PBS(−)500〜1000mLで洗浄し、先の抽出液と合わせてメラニン抽出液とし、マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度を測定し、メラニン量とした。試料溶液を添加しなかったものをControl(C)として比較することで、メラニン合成抑制率を算出した。試験は4回行い、その平均値を1データとして表した。メラニン合成抑制率は、その値が大きいほど、メラニン合成抑制活性が高いことを示す。
(2−3)活性指標物質
(2−1)のチロシナーゼ阻害活性試験および(2−2)のB16メラノーマ細胞を用いたメラニン合成抑制試験では、活性評価指標物質として、下記構造式で表されるβ−アルブチン(4-Hydroxyphenyl β-D-glucopyranoside、東京化成株式会社製)を用いた。β
−アルブチン(以下、単に「アルブチン」ともいう)は、ハイドロキノン配糖体であり、美白効果のある医薬部外品として厚生労働省から認可されており、化粧品として実用化されている。
Figure 2008214335
(3)製造例
(製造例1)ハナビラタケの菌糸体の製造
図3は、菌糸体の製造手順を示す工程図である。以下のようにして菌糸体を製造した。1トン(1t)大型タンク中において、表2に示す組成の培地で、ハナビラタケの菌糸体を培養し、得られた菌糸体培養物を遠心分離し、沈殿を凍結乾燥させて、ハナビラタケ菌糸体乾燥粉末を得た。表2に示す組成の培地のpHは5.5であり、残部は水である。
Figure 2008214335
(4)チロシナーゼ阻害活性の比較
(評価1)
製造例1で得たハナビラタケ菌糸体乾燥粉末、ならびにハナビラタケ子実体および子実体粉末について、以下のようにして、美白効果の指標であるチロシナーゼ阻害活性を評価し、ハナビラタケの形態の違いによるチロシナーゼ阻害活性の変化を調べた。
製造例1で得たハナビラタケ菌糸体粉末、ならびにハナビラタケ子実体および子実体粉末を、それぞれ50%エタノール水溶液に浸漬し、室温下で3日間静置して、浸漬抽出した。このときの室温は、20〜25℃であった。抽出に用いた試料および溶媒の量を表3に示す。
抽出後、桐山ロートおよび桐山ロート用ろ紙(孔径φ150mm、No.5C、株式会社桐山製作所製)を用いて吸引ろ過し、残渣に再度50%エタノール水溶液を加えて1回目と同様にして浸漬抽出した。2回の抽出操作で得られた抽出液を合わせて50%エタノール抽出液とし、このエタノール抽出液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、50%エタノール抽出物とした。得られた50%エタノール抽出物の収率を表3に示す。
このようにして得られたハナビラタケ菌糸体粉末、ならびにハナビラタケ子実体および子実体粉末の50%エタノール抽出物について、チロシナーゼ阻害活性を評価した。各抽出物のチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は5mg/mLとした。評価結果を表3に示す。
Figure 2008214335
表3から、ハナビラタケ菌糸体から得られる抽出物は、ハナビラタケ子実体および子実体粉末から得られる抽出物よりも高いチロシナーゼ阻害活性を有することが判る。
(評価2)
製造例1で得たハナビラタケ菌糸体粉末について、50%エタノール(略称EtOH)水溶液に代えて、エタノール、酢酸エチル(略称EtOAc)、クロロホルム(CHCl)、水をそれぞれ用いて、評価1と同様の抽出操作を行ない、ハナビラタケ菌糸体のエタノール抽出物、酢酸エチル抽出物、クロロホルム抽出物および水抽出物をそれぞれ得た。また50%エタノール水溶液を用いて室温下で3日間抽出することに代えて、温度80℃の熱水で2時間抽出すること以外は評価1と同様にして、ハナビラタケ菌糸体熱水抽出物を得た。また製造例1で得たハナビラタケ菌糸体粉末に50%エタノール水溶液を添加した後、温度60℃のウォーターバス上で3時間加熱抽出し、評価1の室温抽出のときと同様のろ過および濃縮操作を行ない、50%エタノール加熱抽出物を得た。抽出に用いた試料および溶媒の量ならびに、得られた抽出物の収率を表4に示す。
このようにして得られたハナビラタケ菌糸体粉末のエタノール抽出物、酢酸エチル抽出物、クロロホルム抽出物、水抽出物、熱水抽出物および50%エタノール加熱抽出物について、チロシナーゼ阻害活性を評価した。各抽出物のチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は5mg/mLとした。評価結果を表4に示す。表4では、実施例1で得たハナビラタケ菌糸体粉末の50%エタノール抽出物の評価結果を合わせて示す。
Figure 2008214335
表4から、50%エタノール抽出物および酢酸エチル抽出物は、他の溶媒による抽出物よりも高いチロシナーゼ阻害活性を有することが判る。特に50%エタノール抽出物は、最も強いチロシナーゼ阻害活性を示し、かつ収率も高いことが判る。
(5)実施例
(実施例1)
(a)チロシナーゼ阻害活性物質の単離
ハナビラタケ菌糸体粉末201.6gを、50%エタノール水溶液2000mLを用いて、評価1における1回目の抽出と同様にして浸漬抽出し、抽出液を得た。得られた抽出液を500mL程度になるまで減圧濃縮して、50%エタノール抽出物(以下「ハナビラタケ50%エタノール抽出物」ともいう)を得た。得られた50%エタノール抽出物についてチロシナーゼ阻害活性を評価した。50%エタノール抽出物のチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は2.5mg/mLとした。評価結果を表5に示す。
前述の図1に示すように、得られた50%エタノール抽出物に水2000mLおよび酢酸エチル2000mLを加えて液液分配し、水画分(50.8g)および酢酸エチル画分(2.0g)を得た。得られた水画分および酢酸エチル画分についてチロシナーゼ阻害活性を評価した。評価結果を表5に示す。表5では、活性評価指標物質であるβ−アルブチンのチロシナーゼ阻害活性評価結果を合わせて示す。各画分およびβ−アルブチンのチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は2.5mg/mLとした。
Figure 2008214335
表5に示すように、酢酸エチル画分に高いチロシナーゼ阻害活性が認められた。この酢酸エチル画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=50:10:1)でさらに細かく分画し、6画分、すなわちFr.1(1.7g)、Fr.2(32.8mg)、Fr.3(0.1g)、Fr.4(0.1g)、Fr.5(17.7mg)、Fr.6(57.2mg)を得た。「Fr.」は、フラクションを意味する。得られた各画分についてチロシナーゼ阻害活性を評価した。ただし、Fr.2については、試験は1回のみ行なった。各画分のチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は0.1mg/mLとした。評価結果を表6に示す。
Figure 2008214335
表6に示すように、Fr.2およびFr.5に高いチロシナーゼ阻害活性が認められた。Fr.5の収量が少なかったことから、Fr.2を、HPLCによって前述の表1に示す条件で分画した。移動相には、アセトニトリル濃度35%のアセトニトリル−水混合溶媒を用いた。
この移動相を用いたHPLCによってFr.2を6画分に分画して、Fr.2−1(9.8mg)、Fr.2−2(0.2mg)、Fr.2−3(0.9mg)、Fr.2−4(1.1mg)、Fr.2−5(0.7mg)、Fr.2−6(1.5mg)を得た。図4は、Fr.2を分画するときのHPLCのチャートである。Fr.2−1〜Fr.2−6は、図4に示す各保持時間に得られる画分である。得られた各画分についてチロシナーゼ阻害活性を評価した。各画分のチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は50μg/mLとした。評価結果を表7に示す。
Figure 2008214335
表7に示すチロシナーゼ阻害活性の評価結果から、チロシナーゼ阻害活性物質である可能性の高い3つのピークの化合物をそれぞれ化合物(1)、(2)および(3)として着目し、Fr.2−2を、化合物(1)を含有する画分、Fr.2−4を、化合物(2)を含有する画分、Fr.2−5を、化合物(3)を含有する画分として分取した。
この化合物(1)、(2)または(3)を含有する3つの画分Fr.2−2,Fr.2−4,Fr.2−5をTLC(展開溶媒クロロホルム:メタノール:水=25:8:1)で分析したところ、図5に示すようなスポットが確認された。図5は、化合物(1)、(2)および(3)のTLCによる展開結果を示す図である。図5では、紙面に向かって左側から順に、ハナビラタケ菌糸体50%エタノール抽出物の酢酸エチル画分、化合物(1)を含有する画分、化合物(2)を含有する画分、化合物(3)を含有する画分の展開結果を示す。図5に示すように、各画分に参照符20で示される化合物(1)と思われるスポット、参照符21で示される化合物(2)と思われるスポット、参照符22で示される化合物(3)と思われるスポットが、それぞれ確認された。
(b)チロシナーゼ阻害活性物質の同定
図6は、化合物(1)〜(3)のH−NMRスペクトルを示す図である。単離した化合物(1)〜(3)のH−NMRスペクトルを測定したところ、図6に示すように類似したスペクトルデータが得られたことから、化合物(1)〜(3)は、構造が非常に類似した関連化合物であると推測した。図6では、紙面に向かって上から順に、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)のH−NMRスペクトルを示す。
また化合物(2)について、13C−NMRスペクトル、HMBC、HMQC、NOE、MSおよびIR(フィルム法)を測定し、化合物の同定を行なった。化合物(1)および(3)については、化合物(2)の構造解析に基づいて推定構造を決定した。
(b−1)化合物(2)
化合物(2)のスペクトルデータを表8に示す。
Figure 2008214335
表8に示す分析結果より、化合物(2)を、構造式(2)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物である、4−(4−ヒドロキシ−6−メトキシ−2,3−ジメチルベンジル)−5−メチルベンゼン−1,3−ジオール(4-(4-Hydroxy-6-methoxy-2,3-dimethylbenzyl)-5-methyl-benzene-1,3-diol)であると同定した。前述の表8に示すH−NMRおよび13C−NMRのスペクトルデータにおけるナンバリングは、下記構造式(2)に基づいている。
Figure 2008214335
(b−2)化合物(1)
化合物(1)のスペクトルデータを表9に示す。
Figure 2008214335
表9に示すように、化合物(1)は、IRスペクトルにおいて1644.0cm−1にカルボン酸由来の炭素酸素二重結合の吸収を示しており、また化合物(2)と比較して分子量が30増加していることから、カルボキシル基の存在が示唆された。またNOEにおいてメトキシ基を飽和させた場合、化合物(2)では6.30ppmのシグナルが増強されるのに対し、化合物(1)では変化が認められなかったことから、化合物(1)を、構造式(1)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物である、3−(2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンジル)−6−ヒドロキシ−2−メトキシ−4−メチル安息香酸(3-(2,4-Dihydroxy-6-methyl-benzyl)-6-hydroxy-2-methoxy-4-methyl-benzoic acid)であると推定した。
(b−3)化合物(3)
化合物(3)のスペクトルデータを表10に示す。
Figure 2008214335
表10に示すように、化合物(3)は、化合物(2)と比較して分子量が14減少していることから、メチル基がないと考えられる。また前述の図6に示すH−NMRスペクトルにおいて、化合物(2)では、2つの芳香環のうち、メトキシ基を有する側の芳香環の1つのプロトン(H)が6.30ppmのシングレットピークとして確認できたが、化合物(3)では、6.21ppm、6.18ppmに2個のダブレットが現れた。またNOEにおいてメトキシ基を飽和させたところ、6.18ppmのピークが大きくなった。以上のことから、化合物(3)を、化合物(2)のメトキシ基を有する側の芳香環のメチル基がプロトンになった構造式(3)
Figure 2008214335
で表されるビアリール化合物である、4−(4−ヒドロキシ−2−メトキシ−6−メチルベンジル)−5−メチルベンゼン−1,3−ジオール(4-(4-Hydroxy-2-methoxy-6-methyl-benzyl)-5-methyl-benzene-1,3-diol)であると推定した。
(実施例2)
ハナビラタケ菌糸体粉末229.3gを、50%エタノール水溶液2000mLを用いて、評価1における1回目の抽出と同様にして浸漬抽出し、抽出液を得た。得られた抽出液を500mL程度になるまで減圧濃縮して、50%エタノール抽出物を得た。
前述の図2に示すように、得られた50%エタノール抽出物に水2000mLおよびヘキサン2000mLを加えて液液分配し、ヘキサン画分(1.4g)および水画分を得た。得られた水画分に酢酸エチル2000mLを加えて液液分配し、水画分(49.7g)および酢酸エチル画分(0.9g)を得た。このようにしてヘキサン画分(1.4g)、酢酸エチル画分(0.9g)、水画分(49.7g)を得た。得られたヘキサン画分、酢酸エチル画分および水画分についてチロシナーゼ阻害活性を評価した。評価結果を表11に示す。各画分のチロシナーゼ阻害活性評価試験における試料溶液の濃度は2.5mg/mLとした。
Figure 2008214335
表11に示すように、酢酸エチル画分に高いチロシナーゼ阻害活性が認められた。この酢酸エチル画分を実施例1の酢酸エチル画分と同様にしてシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびHPLCで分画し、ビアリール化合物(1)、(2)または(3)を含有すると思われる3つの画分を得た。この各画分を、実施例1の化合物(1)、(2)または(3)を含有する各画分と同様にして、TLC(展開溶媒 クロロホルム:メタノール:水=25:8:1)で分析したところ、各画分に前述の図5において参照符20〜22で示される化合物(1)、(2)または(3)と思われるスポットが、それぞれ確認された。以上の結果から、本実施例で得られる酢酸エチル画分は、ビアリール化合物(1)、ビアリール化合物(2)およびビアリール化合物(3)を含有することが判った。
(6)細胞毒性およびメラニン合成抑制活性評価
以上の実施例において、ハナビラタケ菌糸体の50%エタノール抽出物がチロシナーゼに対して高い阻害活性を示したことから、より生体内に近い環境で美白効果を検討するために、マウス由来B16メラノーマ細胞を用いたメラニン合成抑制試験を行なった。
検定試料の試験濃度を決定するために、まず細胞毒性試験を実施したところ、実施例1で得られたハナビラタケ菌糸体50%エタノール抽出物は100μg/mL以上、その水画分は20μg/mL以上、酢酸エチル画分は2μg/mL以上、活性指標物質であるアルブチンは20μg/mL以上で細胞毒性を示した。
そこでメラニン合成抑制試験では、50%エタノール抽出物を50μg/mL、水画分を10μg/mL、酢酸エチル画分を1μg/mL、アルブチンを10μg/mLの処理濃度で試験に供した。この濃度での評価結果を、最大濃度での評価結果という。また同じ処理濃度での比較を行なうために、ハナビラタケ菌糸体50%エタノール抽出物、その水画分およびアルブチンについては処理濃度1μg/mLでも試験を行なった。評価結果を表12に示す。
Figure 2008214335
表12から、ハナビラタケ菌糸体50%エタノール抽出物を水および酢酸エチルで液液分配して得られる酢酸エチル画分は、メラニン合成抑制活性を有することが判る。
(7)調製例
(調製例1)
化粧料として、下記処方の化粧水を調製した。
グリセリン 6重量%
ブチレングリコール 3重量%
ペンチレングリコール 3重量%
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 2重量%
実施例1のハナビラタケ50%エタノール抽出物 0.8重量%
ペタイン 0.5重量%
ジグリセリン 0.4重量%
プルラン 0.2重量%
酢酸トコフェロール 0.07重量%
クエン酸ナトリウム 0.02重量%
エタノール 0.02重量%
フェノキシエタノール 0.01重量%
水 残部
(全量で100重量%になる量)
チロシナーゼ阻害活性物質の単離および同定の手順を示す工程図である。 本発明のハナビラタケ抽出物の抽出手順の他の例を示す工程図である。 菌糸体の製造手順を示す工程図である。 Fr.2を分画するときのHPLCのチャートである。 化合物(1)、(2)および(3)のTLCによる展開結果を示す図である。 化合物(1)〜(3)のH−NMRスペクトルを示す図である。
符号の説明
20 化合物(1)のスポット
21 化合物(2)のスポット
22 化合物(3)のスポット

Claims (7)

  1. ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、
    構造式(1)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物、構造式(2)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物、および構造式(3)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物の少なくともいずれか1つを含有することを特徴とするハナビラタケ抽出物。
  2. ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、
    ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水およびヘキサンで分配して水画分を得て、この水画分を濃縮してまたはしないで、酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分であることを特徴とするハナビラタケ抽出物。
  3. ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方からの抽出物であって、
    ハナビラタケの子実体および菌糸体の少なくともいずれか一方をエタノール水溶液で抽出してエタノール抽出物を得て、このエタノール抽出物を濃縮してまたはしないで、水および酢酸エチルで分配して得られる酢酸エチル画分であることを特徴とするハナビラタケ抽出物。
  4. 構造式(1)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物、構造式(2)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物、および構造式(3)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物の少なくともいずれか1つを酢酸エチル画分に含有することを特徴とする請求項2または3に記載のハナビラタケ抽出物。
  5. ハナビラタケの菌糸体からの抽出物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のハナビラタケ抽出物。
  6. 構造式(1)
    Figure 2008214335
    、構造式(2)
    Figure 2008214335
    、または構造式(3)
    Figure 2008214335
    で表されるビアリール化合物。
  7. 請求項1〜5のいずれか1つに記載のハナビラタケ抽出物を含むことを特徴とする化粧料。
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