JP2004307438A - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】紫外線などの外来ストレスにより生じる皮膚の傷害や老化を、皮膚刺激性,接触感作性といった皮膚への悪影響もなく、有効に防止或いは改善する作用に優れる皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】ハナビラタケ菌糸体から菌糸体そのまま或いは乾燥したものから水、エタノールなどの親水性溶媒を用いて抽出された抽出物を含有して成る皮膚外用剤およびハナビラタケ菌糸体を培養した培養液から固形物を取除いた培養濾液を含有して成る皮膚外用剤。
【選択図】 なし
【解決手段】ハナビラタケ菌糸体から菌糸体そのまま或いは乾燥したものから水、エタノールなどの親水性溶媒を用いて抽出された抽出物を含有して成る皮膚外用剤およびハナビラタケ菌糸体を培養した培養液から固形物を取除いた培養濾液を含有して成る皮膚外用剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真皮線維芽細胞の代謝活性を活性化し、さらに紫外線による線維芽細胞の損傷を防止することにより、加齢や紫外線などの種々のストレスによるシワ,シミの発生,皮膚の弾性の低下といった皮膚老化症状の防止或いは改善に有効で、抗炎症作用、創傷治癒促進作用、保湿作用をも有する皮膚外用剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加齢や紫外線等外来ストレスにより生じるしわ,シミの発生、皮膚弾性の低下といった皮膚の老化症状には、皮膚真皮の線維芽細胞の機能低下やマトリックス線維の減少又は分解が重要な要因となっている。従って、皮膚の老化防止,改善作用を有する皮膚外用剤を得るため、線維芽細胞の賦活或いは増殖促進作用を有する成分の検索と配合が試みられている。
【0003】
例えば、ビワ抽出物(特許文献1参照)、α−ヒドロキシ酢酸(特許文献2参照)、α−ヒドロキシ酸のステロールエステル(特許文献3参照)、6−ベンジルアミノプリン(特許文献4参照)、特定のリボヌクレアーゼ(特許文献5参照)、L−リシル−L−グリシル−L−ヒスチジン(特許文献6参照)、乳汁由来線維芽細胞増殖因子(特許文献7参照)、酸化型コエンザイムA(特許文献8参照)等が開示されている。
【0004】
一方、きのこ類の一種であるハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている。
このハナビラタケから抽出により得られたβ‐グルカンを主成分とする抽出物について医薬品、食品分野での用途が提案されている(例えば、特許文献9、10参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平5−17206号公報
【特許文献2】
特開平5−112422号公報
【特許文献3】
特開平8−104632号公報
【特許文献4】
特開平7−233037号公報
【特許文献5】
特開平7−309778号公報
【特許文献6】
特開平7−316192号公報
【特許文献7】
特開平8−119867号公報
【特許文献8】
特開平8−175961号公報
【特許文献9】
特開2000−217543号公報
【特許文献10】
特開2002−125460号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の真皮線維芽細胞賦活効果を有する成分等の中には、作用効果が不十分であったり、安定性が悪かったりして、皮膚外用剤基剤中に含有させた場合、有効な効果を得るにはかなりの量を含有させなければならないものも存在していた。また、好ましくない副作用や刺激性などを有していたり、製剤安定性に悪影響を及ぼすものや、臭いや色の点で外用剤に配合しにくいもの、一定の作用、品質を維持することの困難なものも多かった。
【0007】
また、ハナビラタケからの抽出物については、今まで真皮繊維芽細胞賦活効果は知られていなかった。
【0008】
本発明は、真皮線維芽細胞の代謝活性を向上させる細胞賦活作用に優れる新規成分を探求し、それを皮膚外用剤に含有させることにより、紫外線などの外来ストレスにより生じる皮膚の傷害や老化を、有効に防止或いは改善する作用に優れる皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意研究した結果、培養したハナビラタケ菌糸体の抽出物及びハナビラタケ菌糸体培養濾液が、高い真皮線維芽細胞の代謝促進効果、及び紫外線による線維芽細胞の傷害を防止する効果並びに保湿効果を有することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、ハナビラタケ菌糸体からの抽出物を含有して成る皮膚外用剤およびハナビラタケ菌糸体を培養した培養液から固形物を取除いた培養濾液を含有して成る皮膚外用剤を要旨とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、培養して得られたハナビラタケの菌糸体を用いる。
ハナビラタケの培養法としては、担子菌の培養に通常用いられる固体培養法及び液体培養法のいずれでもよいが、後者の方法が生産性の点から好ましく用いられる。培養の培地としては、菌の発育に必要な諸栄養が含まれていれば良く、通常の培地処方でよい。すなわち、炭素源としては、例えばグルコース,シュークロース,マルトース,でんぷんなど資化し得る炭素源であれば利用できる。窒素源としては、例えば硫酸アンモニウム塩,硝酸アンモニウム塩,尿素等、天然の複合栄養源としては、例えばじゃがいもエキス,ニンジンエキス,麦芽エキス,ペプトン,コウジエキス,酵母エキス,酵母末等を用いることができ、その他成長に必要な微量元素無機塩類,ビタミン類などを適宜添加して用いればよい。
【0012】
培養は、通常好気的条件下が良く、例えば振とう培養法或いは通気攪拌培養法が用いられる。培養中の攪拌は、24時間毎に数分間往復振とう又は回転振とうすればよいが、連続振とうしても良い。培養温度は15℃〜40℃が好ましく、さらに20℃〜30℃前後が好ましい。培養時のpHは、3.0〜9.0の範囲に調整するのが好ましく、さらには4.5〜7.0の範囲に調整するのが好ましい。また、培養中は照光しないほうが好ましいが、1日11〜14時間程度の照光は可能である。
【0013】
培養日数は、物理的環境、培養組成などの培養条件によって異なるが、菌糸体の生育があれば良く、通常は2〜120日間、特に好ましくは5〜90日で、最大の菌糸体の生産される時期がよい。
【0014】
培養終了後、培養液を遠心分離或いは濾過することにより菌糸体と培養濾液を分離する。遠心分離は100〜5000G、好ましくは800〜3000Gの重力加速度を与える遠心操作により行うことが出来る。また、濾過は、3.5〜200メッシュ、特に好ましくは4〜16メッシュのメンブランフィルターなどを用いて濾別する。
【0015】
以上のような培養によって得られたハナビラタケの菌糸体から抽出物を得るには、生の菌糸体をそのまま或いは乾燥して用いることができる。抽出に用いる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく用いられる。例えば、水、エタノール,メタノール,イソプロパノール,イソブタノール,n−ヘキサノール,メチルアミルアルコール,2−エチルブタノール,n−オクチルアルコールなどのアルコール類、グリセリン,エチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコール,1,3−ブチレングリコール,ヘキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体などから選択される1種又は2種以上の混合溶媒が使用できる。また、親水性溶媒に無機塩類,界面活性剤などを添加して用いても良い。これらの親水性溶媒の中でも、エタノール,メタノール,1,3−ブチレングリコール,水から選択される1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒、及びこれらの溶媒に無機塩,界面活性剤を添加した溶媒が好ましく用いられる。
【0016】
抽出方法としては、室温,冷却又は加温した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、生のハナビラタケ菌糸体を直接圧搾して抽出物を得る圧搾法等が例示され、これらの方法を単独で又は2種以上を組み合わせて抽出を行うことができる。
【0017】
抽出の際のハナビラタケ菌糸体と溶媒との比率は特に限定されるものではないが、ハナビラタケ菌糸体1に対して溶媒0.5〜1000重量倍、特に抽出操作、効率の点で0.5〜100重量倍が好ましい。また、抽出温度は、常圧下で室温から溶剤の沸点以下の範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度などによって異なるが、2時間〜2週間の範囲とするのが好ましい。
【0018】
このようにして得られたハナビラタケ菌糸体抽出物は、抽出物をそのまま皮膚外用剤に配合することもできるが、真皮線維芽細胞賦活作用及び紫外線による細胞傷害防御作用を失わない範囲内で分画、脱臭,脱色,濃縮等の精製操作を加えた上で皮膚外用剤に配合することもできる。これらの抽出物やその精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに精製水などの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で皮膚外用剤に添加することができる。
【0019】
本発明においては、上述した菌糸体からの抽出物のほかに、濾別した菌糸体培養濾液も、そのまま皮膚外用剤に配合することができるが、培養濾液をその効果を失わない範囲内で分画、脱臭,脱色,濃縮などの精製操作を加えてから皮膚外用剤に配合することもできる。これらの培養濾液やその精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに精製水などの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で皮膚外用剤に添加することができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、これらのハナビラタケ菌糸体抽出物及び菌糸体培養濾液を既存の皮膚外用剤へ一定量配合することにより得られるものである。配合量としては、その効果や添加した際の匂い,色調の点から考え、0.001〜20重量%の濃度範囲とすることが望ましい。配合量が0.001重量%未満であると、十分な真皮線維芽細胞賦活作用、紫外線による細胞傷害防御作用及び老化防止効果が得られず、逆に20重量%を超えると皮膚外用剤の安定性等に影響を及ぼすこともある。
【0021】
本発明の皮膚外用剤の形態としては、ローション,乳剤,クリーム,軟膏等の形態をとることができる。またさらに、柔軟性化粧水,収れん性化粧水,洗浄用化粧水等の化粧水類、エモリエントクリーム,モイスチュアクリーム,マッサージクリーム,クレンジングクリーム,メイクアップクリーム等のクリーム類、エモリエント乳液,モイスチュア乳液,ナリシング乳液,クレンジング乳液等の乳液類、ゼリー状パック,ピールオフパック,洗い流しパック,粉末パック等のパック類、美容液、及び洗顔料といった種々の製剤形態の化粧料としても提供することができる。
【0022】
本発明においてはさらに、他の細胞賦活剤や美白成分,保湿剤,抗炎症剤,紫外線吸収剤等、他の有効成分を併用することもでき、日焼け止め化粧料、皮膚保護用化粧料、美白化粧料等の化粧料或いは医薬部外品等として提供することもできる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、ハナビラタケ菌糸体抽出物及びハナビラタケ菌糸体培養濾液の製造例を示す。
【0024】
製造例1〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(1)〕
グルコース4g,酵母エキス4g,麦芽エキス10g,及び精製水1リットルからなるpH5.5の培地を120℃で20分間滅菌し、寒天培地に培養したハナビラタケ菌糸体を接種し、30℃で30日間、ときどき攪拌しながら静置で前培養した。
グルコース20g,酵母末5g,消泡剤20ppm及び精製水1リットルからなるpH5.0の本培養培地2.0リットルを5リットル坂口フラスコに入れ、120℃で20分滅菌した。これに前培養した培地200mlを接種し、培養温度30℃で往復振とう機にて培養した。30日間培養後培養を停止し、遠心分離により菌糸体を培養物より分離し、菌糸体を得た。菌糸体に対して7倍量の水を加え95℃で2時間加熱抽出した。遠心分離により残さを除去して得た上澄液をハナビラタケ菌糸体抽出物(1)とした。
【0025】
製造例2〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(2)〕
製造例1で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物(1)を1/2量に濃縮し、エタノールを等容量加えて4℃で一昼夜放置、沈殿を生じさせた。この沈殿を遠心分離で集め、アセトン,次いでエーテルで洗浄し乾燥後、淡褐色粉末を得た。これをハナビラタケ菌糸体抽出物(2)とした。
【0026】
製造例3〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(3)〕
グルコース20g,酵母エキス5g,及び精製水1リットルからなるpH5.0に調整した培地を120℃で20分間滅菌した。これに寒天培地に培養したハナビラタケ菌糸体を接種し、30℃,3週間静置で前培養した。
グルコース50g,酵母末10g,消泡剤20ppmを1リットルの精製水に溶解し、pHを5.0に調整して本培養培地とした。この培地7リットルを10リットル容のジャーファーメンターに入れ、120℃で20分滅菌した、これに前培養した培地500ミリリットルを接種し、培養温度30℃,通気量0.5VVM,攪拌速度200〜300rpmの条件にて培養した。10日間培養後、培養を停止し、濾過して菌糸体を分離後、更に10000rpm,15分の条件で遠心分離し、菌糸体を得た。この菌糸体に精製水3リットルを加え50℃で1時間加熱抽出した。冷却後、10000rpmで30分遠心分離し、残さを除去した上澄液をハナビラタケ菌糸体抽出物(3)とした。
【0027】
製造例4〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(4)〕
製造例3で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物(3)をロータリーエバポレーターで濃縮し、1リットルとした。これにエタノール1リットルを加え、1昼夜4℃に放置して沈殿を生じさせた。ついで固液分離し、得られた沈殿物をアセトン,エーテルで洗浄した後乾燥して淡灰白色の粉末を得た。さらにこれを純水に溶解し、透析チューブにて精製水に対して透析し、生じた沈殿物を遠心分離で除去後、上澄液を凍結乾燥し、白色粉末を得、これをハナビラタケ菌糸体抽出物(4)とした。
【0028】
製造例5〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1)〕
製造例1にて本培養したハナビラタケ菌糸体の菌糸体を除去した培養液をハナビラタケ菌糸体培養濾液(1)とした。
【0029】
製造例6〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(1)〕
ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1)をロータリーエバポレーターで6分の1まで濃縮し、これに等容量のエタノールを添加して4℃で一昼夜放置、沈殿を生じさせた。遠心分離で沈殿を集め、アセトンついでエーテルで洗浄し、乾燥後、淡褐色粉末を得、ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(1)とした。
【0030】
製造例7〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液(2)〕
製造例3にて本培養したハナビラタケ菌糸体の菌糸体を除去した培養液をハナビラタケ菌糸体培養濾液(2)とした。
【0031】
製造例8〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(2)〕
製造例7で得られたハナビラタケ菌糸体培養濾液(2)をロータリーエバポレーターにて10分の1量まで濃縮し、等容量のエタノールを添加して1昼夜4℃で放置し、沈殿を生じさせた。ついで、固液分離し得られた沈殿物をアセトン,エーテルで洗浄した後、乾燥して、淡褐色粉末を得た。これを精製水に溶解し、透析チューブにて精製水に対して透析し、生じた沈殿物を遠心分離にて除去後、上澄液を凍結乾燥し、白色粉末を得、ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(2)とした。
【0032】
試験例1[真皮線維芽細胞代謝活性化作用]
ヒト由来真皮線維芽細胞を1ウェルあたり2.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間後に前記製造例1〜8で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物などを含有する1.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地にて、37℃で48時間培養した。次いで2−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−3,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を0.4mg/ml含有する前記培地に交換して37℃で2時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを、2−プロパノールにて抽出し550nmにおける吸光度により測定した。なお、1.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地のみで培養した系を対照とし、5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地で培養した系を陽性対照とした。結果は対照における吸光度を100.0%として表した活性化指数により表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
その結果、表1に示したとおり、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液を添加して真皮線維芽細胞を培養することにより、活性化指数の上昇が認められ、有意な線維芽細胞代謝活性化が認められていた。
【0035】
試験例2[紫外線による細胞傷害防御作用]
ヒト由来真皮線維芽細胞を1ウェルあたり2.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間後に製造例1〜8で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物などを含有する5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地に交換し、37℃で24時間培養した。次いで培地をHanks液に交換し、紫外線を0.5J/cm2量照射した。再度、5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地に交換し、37℃で24時間培養した後、培地をニュートラルレッドを20μg/ml含有する前記培地に交換して37℃で2時間培養し、培地中に含まれるニュートラルレッドをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄除去した。細胞内に取り込まれたニュートラルレッドを、0.1N塩酸含有30%エタノール水溶液で抽出し、抽出液の550nmの吸光度を測定した。ニュートラルレッドは、生細胞の細胞膜だけを透過し、リソゾームに沈着するので、生細胞だけを特異的に染色することができる。なお、製造例を添加せず、5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最少必須培地のみで培養した系を対照とし、それぞれの紫外線照射後の細胞生存率を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
その結果、表2に示したとおり、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液を添加して真皮線維芽細胞を培養することにより、紫外線による真皮線維芽細胞の傷害に対し、有意な防御作用が認められていた。
【0038】
実施例1〜8〔O/W乳化型美容液〕
表3に示した配合量で製造例1〜8で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物を配合し、下記の処方によりO/W乳化型美容液をそれぞれ調製し、実施例1〜実施例8とした。
(処方)
▲1▼スクワラン 5.0(重量%)、▲2▼白色ワセリン 2.0、▲3▼ミツロウ 0.5、▲4▼ソルビタンセスキオレエート 0.8、▲5▼ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20EO) 1.2、▲6▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲7▼プロピレングリコール 5.0、▲8▼精製水 全量を100とする量、▲9▼カルボキシビニルポリマー1.0重量%水溶液 20.0、(10)水酸化カリウム 0.1、(11)エタノール5.0、(12)製造例1〜6で得られた菌糸体抽出物など 表3に示した量、(13)香料 0.2
【0039】
(製法)
▲1▼〜▲5▼の油相成分を混合し75℃に加熱して溶解,均一化する。一方▲6▼〜▲8▼の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱し、油相成分を添加して予備乳化する。次いで▲9▼を添加した後ホモミキサーにて均一に乳化し、(10)を加えてpHを調整する。冷却後40℃にて(11)〜(13)を添加,混合,均一化する。
【0040】
【表3】
【0041】
前記実施例1〜実施例8を用いて、紫外線によるしわの発生に対する防止効果を評価した。なお製造例を精製水に代替したものを比較例1とした。しわ発生防止効果は、ヘアレスマウス5匹を1群とし、各群について実施例及び比較例をそれぞれ1日1回背部に塗布し、1J/cm2/週の長波長紫外線(UVA)を50週間照射し、ヘアレスマウスにおけるしわの発生状況を観察し、表4に示す判定基準に従って点数化して行った。この際、精製水のみを塗布した群を対照とした。結果は各群の平均値を算出し、UVA照射日数との関係により表5に示した。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
表5に示されるように、対照群においては、UVA照射日数が40週を越える頃には形成されたしわの深さが中程度にまで達し、50週後には深いしわの発生が認められていた。これに対し、本発明の実施例塗布群では、いずれにおいても50週後に微小ないし軽微なしわが認められた程度で、しわの発生は顕著に抑制されていた。一方比較例塗布群では、有意なしわの発生抑制或いは軽減は認められなかった。
【0045】
続いて、本発明の実施例1〜実施例8及び比較例1について、抗炎症作用及び創傷治癒促進効果を評価した。人工的に炎症又は創傷を形成した1群5匹のマウスを用い、各群に実施例及び比較例をそれぞれ0.5gずつ1日2回7日間塗布し、7日目に炎症部位及び創傷部位の状態を観察した。抗炎症作用については「有効」,「やや有効」,「無効」、創傷治癒促進効果については「完全治癒」,「ほぼ治癒」,「治癒不完全」の3段階でそれぞれ評価し、各評価を得たマウスの数にて表6に示した。
【0046】
【表6】
【0047】
表6より明らかなように、抗炎症作用については、本発明の実施例塗布群ではいずれにおいても無効と評価されたマウスは見られず、2例以上のマウスにおいて有効な抗炎症作用が認められていた。また創傷治癒促進効果についても、本発明の実施例塗布群では創傷治癒の不完全なマウスはいずれにおいても認められておらず、2例以上のマウスで完全な治癒を認めていた。これに対し比較例1塗布群では、やや有効な抗炎症作用の認められたマウスが1例見られたが、残り4例では炎症の改善は全く認められなかった。また比較例1塗布群すべてにおいて、創傷治癒は不完全であった。
【0048】
次に本発明の実施例1〜実施例8及び比較例1について、6ヶ月間の実使用試験を行った。パネラーとして、顕著なしわの発生等の皮膚症状を有する40歳〜60歳代の女性を用い、1群20名とした。使用試験は、各群に実施例及び比較例のそれぞれをブラインドにて使用させて行った。使用試験前および使用試験終了後の皮膚の状態を観察し、しわの改善状況について、「改善」,「やや改善」,「変化なし」の3段階にて評価した。なお、しわの程度については写真撮影及びレプリカにより評価した。結果は、各評価を得たパネラー数にて表7に示した。
【0049】
【表7】
【0050】
表8に示されるように、しわの改善状況については、本発明の実施例使用群ではすべてにおいて改善傾向が認められていた。特に、実施例2及び実施例7使用群では、80%のパネラーで明確な改善を認めていた。これに対し、比較例使用群では、明確な改善を認めたパネラーは見られず、75%のパネラーで症状の改善を認めなかった。
【0051】
実施例1〜実施例8及び比較例1を用いて保湿作用試験を行った。保湿作用は、気温20℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で、前腕内側部に実施例を0.01ml/cm2塗布し、30分後の表皮水分量を高周波インピーダンスメータ(IBS社製,Skicon200)を用いて測定した。なお、ブランクとして実施例及び比較例を塗布していない部分の表皮水分量を測定し、その差を保湿作用試験結果として、各試料とも10名のパネラーの平均値を算出した。
【0052】
【表8】
【0053】
保湿作用試験結果を表8に示した。実施例1〜実施例8は、比較例1より30μS以上表皮水分量の上昇量が多くなっており、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液を配合することにより表皮の保湿性が向上することが示された。
【0054】
なお、本発明の実施例1〜実施例8については、上記使用試験期間中に含有成分の析出,分離,凝集,変臭,変色といった状態変化は全く見られなかった。また、各実施例使用群において、皮膚刺激性反応や皮膚感作性反応を示したパネラーは存在しなかった。
【0055】
続いて、本発明の他の実施例の処方を示す。
実施例9〔皮膚用ローション〕
▲1▼エタノール 10.0(重量%)、▲2▼ヒドロキシエチルセルロース 1.0、▲3▼ハナビラタケ菌糸体抽出物(1) 5.0、▲4▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲5▼精製水 83.9
(製法)
▲1▼〜▲5▼を混合し均一とする。
【0056】
実施例10〔皮膚用乳剤〕
▲1▼ステアリン酸 0.2(重量%)、▲2▼セタノール 1.5、▲3▼ワセリン 3.0、▲4▼流動パラフィン 7.0、▲5▼ポリオキシエチレン(10EO)モノオレイン酸エステル 1.5、▲6▼酢酸トコフェロール 0.5、▲7▼グリセリン 5.0、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼トリエタノールアミン 1.0、(10)精製水 80.1、(11)ハナビラタケ菌糸体抽出物(2) 0.1
(製法)
▲1▼〜▲6▼の油相成分を混合,加熱して均一に溶解し、70℃に保つ。一方、▲7▼〜(10)の水相成分を混合,加熱して均一とし、70℃とする。この水相成分に前記油相成分を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却した後40℃にて(11)を添加,混合する。
【0057】
実施例11〔皮膚用ゲル剤〕
▲1▼精製水 86.3(重量%)、▲2▼カルボキシビニルポリマー 0.5、▲3▼ジプロピレングリコール 10.0、▲4▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲5▼水酸化カリウム 0.1、▲6▼ハナビラタケ菌糸体抽出物(3) 3.0
(製法)
▲1▼に▲2▼を均一に溶解した後、▲3▼に▲4▼を溶解して添加し、次いで▲5▼を加えて増粘させ、▲6▼を添加する。
【0058】
実施例12〔皮膚用クリーム〕
▲1▼ミツロウ 6.0(重量%)、▲2▼セタノール 5.0、▲3▼還元ラノリン 8.0、▲4▼スクワラン 27.5、▲5▼グリセリル脂肪酸エステル 4.0、▲6▼親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0、▲7▼ポリオキシエチレン(20EO) ソルビタンモノラウリン酸エステル 5.0、▲8▼プロピレングリコール 5.0、▲9▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、(10)精製水 37.33、(11)ハナビラタケ菌糸体抽出物(4) 0.07
(製法)
▲1▼〜▲7▼の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、▲8▼〜(10)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却後40℃にて(11)を添加,混合する。
【0059】
実施例13〔水中油型乳剤性軟膏〕
▲1▼白色ワセリン 25.0(重量%)、▲2▼ステアリルアルコール 25.0、▲3▼グリセリン 12.0、▲4▼ラウリル硫酸ナトリウム 1.0、▲5▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲6▼精製水 32.9、▲7▼ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1) 4.0
(製法)
▲1▼〜▲4▼の油相成分を混合,溶解して均一とし、75℃に加熱する。一方、▲5▼を▲6▼に溶解して75℃に加熱し、これに前記油相成分を添加して乳化し、冷却後40℃にて▲7▼を添加,混合する。
【0060】
実施例14〔化粧水〕
▲1▼エタノール 10.0(重量%)、▲2▼1,3−ブチレングリコール 5.0、▲3▼ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(1) 0.05、▲4▼香料 0.1、▲5▼精製水 84.85
(製法)
▲1▼〜▲4▼を順次▲5▼に添加して均一に混合,溶解する。
【0061】
実施例15〔エモリエントクリーム(油中水型)〕
▲1▼流動パラフィン 30.0(重量%)、▲2▼マイクロクリスタリンワックス 2.0、▲3▼ワセリン 5.0、▲4▼ジグリセリルオレイン酸エステル 5.0、▲5▼L−グルタミン酸ナトリウム 1.6、▲6▼L−セリン 0.4、▲7▼プロピレングリコール 3.0、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼精製水 47.8、(10)香料 0.1、(11)ハナビラタケ菌糸体培養濾液(2) 5.0
(製法)
▲5▼,▲6▼を▲9▼の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した▲4▼に攪拌しながら徐々に添加する。これをあらかじめ混合し70℃に加熱溶解した▲1▼〜▲3▼に均一に分散し、これに▲7▼,▲8▼を▲9▼の残部に溶解して70℃に加熱したものを攪拌しながら添加し、ホモミキサーにて乳化する。冷却後、40℃にて(10),(11)を添加,混合する。
【0062】
実施例16〔メイクアップベースクリーム〕
▲1▼ステアリン酸 12.0(重量%)、▲2▼セタノール 2.0、▲3▼グリセリルトリ2−エチルヘキサン酸エステル 2.5、▲4▼自己乳化型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0、▲5▼プロピレングリコール 10.0、▲6▼水酸化カリウム 0.3、▲7▼精製水 69.55、▲8▼酸化チタン 1.0、▲9▼ベンガラ 0.1、(10)黄酸化鉄 0.4、(11)香料 0.1、(12)ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(2) 0.05
(製法)
▲1▼〜▲4▼の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方▲5▼〜▲7▼の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに▲8▼〜(10)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて乳化した後冷却し、40℃にて(11),(12)を添加,混合する。
【0063】
実施例17〔乳液状ファンデーション〕
▲1▼ステアリン酸 2.0(重量%)、▲2▼スクワラン 5.0、▲3▼ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0、▲4▼セタノール 1.0、▲5▼デカグリセリルモノイソパルミチン酸エステル 9.0、▲6▼1,3−ブチレングリコール 6.0、▲7▼水酸化カリウム0.1、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼精製水 52.1、(10)酸化チタン 9.0、(11)タルク 7.4、(12)ベンガラ 0.5、(13)黄酸化鉄1.1、(14)黒酸化鉄 0.1、(15)香料 0.1、(16)ハナビラタケ菌糸体抽出物(1) 1.5
(製法)
▲1▼〜▲5▼の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方▲6▼〜▲9▼の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(10)〜(14)の顔料を添加しホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて均一に乳化した後冷却し、40℃にて(15),(16)を添加,混合する。
【0064】
実施例18〔ハンドクリーム〕
▲1▼セタノール 4.0(重量%)、▲2▼ワセリン 2.0、▲3▼流動パラフィン 10.0、▲4▼グリセリルモノステアリン酸エステル 1.5、▲5▼ポリオキシエチレン(60EO) グリセリルイソステアリン酸エステル 2.5、▲6▼酢酸トコフェロール 0.5、▲7▼グリセリン 20.0、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼精製水59.3、(10)ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1) 0.1
(製法)
▲1▼〜▲6▼の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、▲7▼〜▲9▼の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。ついで、この水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化して冷却し、40℃にて(10)を添加,混合する。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液は、真皮線維芽細胞賦活作用及び真皮線維芽細胞に対する紫外線による傷害を防御する作用を有し、これを含有する本発明の皮膚外用剤は、シワ,シミの発生、皮膚弾性の低下といった皮膚老化症状の防止或いは改善に有効で、抗炎症作用,創傷治癒促進作用,保湿作用をも有し、皮膚刺激性,接触感作性といった皮膚への悪影響もなく、さらに安定性,安全性も良好であった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、真皮線維芽細胞の代謝活性を活性化し、さらに紫外線による線維芽細胞の損傷を防止することにより、加齢や紫外線などの種々のストレスによるシワ,シミの発生,皮膚の弾性の低下といった皮膚老化症状の防止或いは改善に有効で、抗炎症作用、創傷治癒促進作用、保湿作用をも有する皮膚外用剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加齢や紫外線等外来ストレスにより生じるしわ,シミの発生、皮膚弾性の低下といった皮膚の老化症状には、皮膚真皮の線維芽細胞の機能低下やマトリックス線維の減少又は分解が重要な要因となっている。従って、皮膚の老化防止,改善作用を有する皮膚外用剤を得るため、線維芽細胞の賦活或いは増殖促進作用を有する成分の検索と配合が試みられている。
【0003】
例えば、ビワ抽出物(特許文献1参照)、α−ヒドロキシ酢酸(特許文献2参照)、α−ヒドロキシ酸のステロールエステル(特許文献3参照)、6−ベンジルアミノプリン(特許文献4参照)、特定のリボヌクレアーゼ(特許文献5参照)、L−リシル−L−グリシル−L−ヒスチジン(特許文献6参照)、乳汁由来線維芽細胞増殖因子(特許文献7参照)、酸化型コエンザイムA(特許文献8参照)等が開示されている。
【0004】
一方、きのこ類の一種であるハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている。
このハナビラタケから抽出により得られたβ‐グルカンを主成分とする抽出物について医薬品、食品分野での用途が提案されている(例えば、特許文献9、10参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平5−17206号公報
【特許文献2】
特開平5−112422号公報
【特許文献3】
特開平8−104632号公報
【特許文献4】
特開平7−233037号公報
【特許文献5】
特開平7−309778号公報
【特許文献6】
特開平7−316192号公報
【特許文献7】
特開平8−119867号公報
【特許文献8】
特開平8−175961号公報
【特許文献9】
特開2000−217543号公報
【特許文献10】
特開2002−125460号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の真皮線維芽細胞賦活効果を有する成分等の中には、作用効果が不十分であったり、安定性が悪かったりして、皮膚外用剤基剤中に含有させた場合、有効な効果を得るにはかなりの量を含有させなければならないものも存在していた。また、好ましくない副作用や刺激性などを有していたり、製剤安定性に悪影響を及ぼすものや、臭いや色の点で外用剤に配合しにくいもの、一定の作用、品質を維持することの困難なものも多かった。
【0007】
また、ハナビラタケからの抽出物については、今まで真皮繊維芽細胞賦活効果は知られていなかった。
【0008】
本発明は、真皮線維芽細胞の代謝活性を向上させる細胞賦活作用に優れる新規成分を探求し、それを皮膚外用剤に含有させることにより、紫外線などの外来ストレスにより生じる皮膚の傷害や老化を、有効に防止或いは改善する作用に優れる皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意研究した結果、培養したハナビラタケ菌糸体の抽出物及びハナビラタケ菌糸体培養濾液が、高い真皮線維芽細胞の代謝促進効果、及び紫外線による線維芽細胞の傷害を防止する効果並びに保湿効果を有することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、ハナビラタケ菌糸体からの抽出物を含有して成る皮膚外用剤およびハナビラタケ菌糸体を培養した培養液から固形物を取除いた培養濾液を含有して成る皮膚外用剤を要旨とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、培養して得られたハナビラタケの菌糸体を用いる。
ハナビラタケの培養法としては、担子菌の培養に通常用いられる固体培養法及び液体培養法のいずれでもよいが、後者の方法が生産性の点から好ましく用いられる。培養の培地としては、菌の発育に必要な諸栄養が含まれていれば良く、通常の培地処方でよい。すなわち、炭素源としては、例えばグルコース,シュークロース,マルトース,でんぷんなど資化し得る炭素源であれば利用できる。窒素源としては、例えば硫酸アンモニウム塩,硝酸アンモニウム塩,尿素等、天然の複合栄養源としては、例えばじゃがいもエキス,ニンジンエキス,麦芽エキス,ペプトン,コウジエキス,酵母エキス,酵母末等を用いることができ、その他成長に必要な微量元素無機塩類,ビタミン類などを適宜添加して用いればよい。
【0012】
培養は、通常好気的条件下が良く、例えば振とう培養法或いは通気攪拌培養法が用いられる。培養中の攪拌は、24時間毎に数分間往復振とう又は回転振とうすればよいが、連続振とうしても良い。培養温度は15℃〜40℃が好ましく、さらに20℃〜30℃前後が好ましい。培養時のpHは、3.0〜9.0の範囲に調整するのが好ましく、さらには4.5〜7.0の範囲に調整するのが好ましい。また、培養中は照光しないほうが好ましいが、1日11〜14時間程度の照光は可能である。
【0013】
培養日数は、物理的環境、培養組成などの培養条件によって異なるが、菌糸体の生育があれば良く、通常は2〜120日間、特に好ましくは5〜90日で、最大の菌糸体の生産される時期がよい。
【0014】
培養終了後、培養液を遠心分離或いは濾過することにより菌糸体と培養濾液を分離する。遠心分離は100〜5000G、好ましくは800〜3000Gの重力加速度を与える遠心操作により行うことが出来る。また、濾過は、3.5〜200メッシュ、特に好ましくは4〜16メッシュのメンブランフィルターなどを用いて濾別する。
【0015】
以上のような培養によって得られたハナビラタケの菌糸体から抽出物を得るには、生の菌糸体をそのまま或いは乾燥して用いることができる。抽出に用いる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく用いられる。例えば、水、エタノール,メタノール,イソプロパノール,イソブタノール,n−ヘキサノール,メチルアミルアルコール,2−エチルブタノール,n−オクチルアルコールなどのアルコール類、グリセリン,エチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコール,1,3−ブチレングリコール,ヘキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体などから選択される1種又は2種以上の混合溶媒が使用できる。また、親水性溶媒に無機塩類,界面活性剤などを添加して用いても良い。これらの親水性溶媒の中でも、エタノール,メタノール,1,3−ブチレングリコール,水から選択される1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒、及びこれらの溶媒に無機塩,界面活性剤を添加した溶媒が好ましく用いられる。
【0016】
抽出方法としては、室温,冷却又は加温した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、生のハナビラタケ菌糸体を直接圧搾して抽出物を得る圧搾法等が例示され、これらの方法を単独で又は2種以上を組み合わせて抽出を行うことができる。
【0017】
抽出の際のハナビラタケ菌糸体と溶媒との比率は特に限定されるものではないが、ハナビラタケ菌糸体1に対して溶媒0.5〜1000重量倍、特に抽出操作、効率の点で0.5〜100重量倍が好ましい。また、抽出温度は、常圧下で室温から溶剤の沸点以下の範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度などによって異なるが、2時間〜2週間の範囲とするのが好ましい。
【0018】
このようにして得られたハナビラタケ菌糸体抽出物は、抽出物をそのまま皮膚外用剤に配合することもできるが、真皮線維芽細胞賦活作用及び紫外線による細胞傷害防御作用を失わない範囲内で分画、脱臭,脱色,濃縮等の精製操作を加えた上で皮膚外用剤に配合することもできる。これらの抽出物やその精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに精製水などの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で皮膚外用剤に添加することができる。
【0019】
本発明においては、上述した菌糸体からの抽出物のほかに、濾別した菌糸体培養濾液も、そのまま皮膚外用剤に配合することができるが、培養濾液をその効果を失わない範囲内で分画、脱臭,脱色,濃縮などの精製操作を加えてから皮膚外用剤に配合することもできる。これらの培養濾液やその精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに精製水などの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で皮膚外用剤に添加することができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、これらのハナビラタケ菌糸体抽出物及び菌糸体培養濾液を既存の皮膚外用剤へ一定量配合することにより得られるものである。配合量としては、その効果や添加した際の匂い,色調の点から考え、0.001〜20重量%の濃度範囲とすることが望ましい。配合量が0.001重量%未満であると、十分な真皮線維芽細胞賦活作用、紫外線による細胞傷害防御作用及び老化防止効果が得られず、逆に20重量%を超えると皮膚外用剤の安定性等に影響を及ぼすこともある。
【0021】
本発明の皮膚外用剤の形態としては、ローション,乳剤,クリーム,軟膏等の形態をとることができる。またさらに、柔軟性化粧水,収れん性化粧水,洗浄用化粧水等の化粧水類、エモリエントクリーム,モイスチュアクリーム,マッサージクリーム,クレンジングクリーム,メイクアップクリーム等のクリーム類、エモリエント乳液,モイスチュア乳液,ナリシング乳液,クレンジング乳液等の乳液類、ゼリー状パック,ピールオフパック,洗い流しパック,粉末パック等のパック類、美容液、及び洗顔料といった種々の製剤形態の化粧料としても提供することができる。
【0022】
本発明においてはさらに、他の細胞賦活剤や美白成分,保湿剤,抗炎症剤,紫外線吸収剤等、他の有効成分を併用することもでき、日焼け止め化粧料、皮膚保護用化粧料、美白化粧料等の化粧料或いは医薬部外品等として提供することもできる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、ハナビラタケ菌糸体抽出物及びハナビラタケ菌糸体培養濾液の製造例を示す。
【0024】
製造例1〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(1)〕
グルコース4g,酵母エキス4g,麦芽エキス10g,及び精製水1リットルからなるpH5.5の培地を120℃で20分間滅菌し、寒天培地に培養したハナビラタケ菌糸体を接種し、30℃で30日間、ときどき攪拌しながら静置で前培養した。
グルコース20g,酵母末5g,消泡剤20ppm及び精製水1リットルからなるpH5.0の本培養培地2.0リットルを5リットル坂口フラスコに入れ、120℃で20分滅菌した。これに前培養した培地200mlを接種し、培養温度30℃で往復振とう機にて培養した。30日間培養後培養を停止し、遠心分離により菌糸体を培養物より分離し、菌糸体を得た。菌糸体に対して7倍量の水を加え95℃で2時間加熱抽出した。遠心分離により残さを除去して得た上澄液をハナビラタケ菌糸体抽出物(1)とした。
【0025】
製造例2〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(2)〕
製造例1で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物(1)を1/2量に濃縮し、エタノールを等容量加えて4℃で一昼夜放置、沈殿を生じさせた。この沈殿を遠心分離で集め、アセトン,次いでエーテルで洗浄し乾燥後、淡褐色粉末を得た。これをハナビラタケ菌糸体抽出物(2)とした。
【0026】
製造例3〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(3)〕
グルコース20g,酵母エキス5g,及び精製水1リットルからなるpH5.0に調整した培地を120℃で20分間滅菌した。これに寒天培地に培養したハナビラタケ菌糸体を接種し、30℃,3週間静置で前培養した。
グルコース50g,酵母末10g,消泡剤20ppmを1リットルの精製水に溶解し、pHを5.0に調整して本培養培地とした。この培地7リットルを10リットル容のジャーファーメンターに入れ、120℃で20分滅菌した、これに前培養した培地500ミリリットルを接種し、培養温度30℃,通気量0.5VVM,攪拌速度200〜300rpmの条件にて培養した。10日間培養後、培養を停止し、濾過して菌糸体を分離後、更に10000rpm,15分の条件で遠心分離し、菌糸体を得た。この菌糸体に精製水3リットルを加え50℃で1時間加熱抽出した。冷却後、10000rpmで30分遠心分離し、残さを除去した上澄液をハナビラタケ菌糸体抽出物(3)とした。
【0027】
製造例4〔ハナビラタケ菌糸体抽出物(4)〕
製造例3で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物(3)をロータリーエバポレーターで濃縮し、1リットルとした。これにエタノール1リットルを加え、1昼夜4℃に放置して沈殿を生じさせた。ついで固液分離し、得られた沈殿物をアセトン,エーテルで洗浄した後乾燥して淡灰白色の粉末を得た。さらにこれを純水に溶解し、透析チューブにて精製水に対して透析し、生じた沈殿物を遠心分離で除去後、上澄液を凍結乾燥し、白色粉末を得、これをハナビラタケ菌糸体抽出物(4)とした。
【0028】
製造例5〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1)〕
製造例1にて本培養したハナビラタケ菌糸体の菌糸体を除去した培養液をハナビラタケ菌糸体培養濾液(1)とした。
【0029】
製造例6〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(1)〕
ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1)をロータリーエバポレーターで6分の1まで濃縮し、これに等容量のエタノールを添加して4℃で一昼夜放置、沈殿を生じさせた。遠心分離で沈殿を集め、アセトンついでエーテルで洗浄し、乾燥後、淡褐色粉末を得、ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(1)とした。
【0030】
製造例7〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液(2)〕
製造例3にて本培養したハナビラタケ菌糸体の菌糸体を除去した培養液をハナビラタケ菌糸体培養濾液(2)とした。
【0031】
製造例8〔ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(2)〕
製造例7で得られたハナビラタケ菌糸体培養濾液(2)をロータリーエバポレーターにて10分の1量まで濃縮し、等容量のエタノールを添加して1昼夜4℃で放置し、沈殿を生じさせた。ついで、固液分離し得られた沈殿物をアセトン,エーテルで洗浄した後、乾燥して、淡褐色粉末を得た。これを精製水に溶解し、透析チューブにて精製水に対して透析し、生じた沈殿物を遠心分離にて除去後、上澄液を凍結乾燥し、白色粉末を得、ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(2)とした。
【0032】
試験例1[真皮線維芽細胞代謝活性化作用]
ヒト由来真皮線維芽細胞を1ウェルあたり2.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間後に前記製造例1〜8で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物などを含有する1.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地にて、37℃で48時間培養した。次いで2−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−3,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を0.4mg/ml含有する前記培地に交換して37℃で2時間培養し、テトラゾリウム環の開環により生じるフォルマザンを、2−プロパノールにて抽出し550nmにおける吸光度により測定した。なお、1.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地のみで培養した系を対照とし、5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地で培養した系を陽性対照とした。結果は対照における吸光度を100.0%として表した活性化指数により表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
その結果、表1に示したとおり、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液を添加して真皮線維芽細胞を培養することにより、活性化指数の上昇が認められ、有意な線維芽細胞代謝活性化が認められていた。
【0035】
試験例2[紫外線による細胞傷害防御作用]
ヒト由来真皮線維芽細胞を1ウェルあたり2.0×104個となるように96穴マイクロプレートに播種し、24時間後に製造例1〜8で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物などを含有する5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地に交換し、37℃で24時間培養した。次いで培地をHanks液に交換し、紫外線を0.5J/cm2量照射した。再度、5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最小必須培地に交換し、37℃で24時間培養した後、培地をニュートラルレッドを20μg/ml含有する前記培地に交換して37℃で2時間培養し、培地中に含まれるニュートラルレッドをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄除去した。細胞内に取り込まれたニュートラルレッドを、0.1N塩酸含有30%エタノール水溶液で抽出し、抽出液の550nmの吸光度を測定した。ニュートラルレッドは、生細胞の細胞膜だけを透過し、リソゾームに沈着するので、生細胞だけを特異的に染色することができる。なお、製造例を添加せず、5.0容量%牛胎仔血清添加ダルベッコ最少必須培地のみで培養した系を対照とし、それぞれの紫外線照射後の細胞生存率を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
その結果、表2に示したとおり、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液を添加して真皮線維芽細胞を培養することにより、紫外線による真皮線維芽細胞の傷害に対し、有意な防御作用が認められていた。
【0038】
実施例1〜8〔O/W乳化型美容液〕
表3に示した配合量で製造例1〜8で得られたハナビラタケ菌糸体抽出物を配合し、下記の処方によりO/W乳化型美容液をそれぞれ調製し、実施例1〜実施例8とした。
(処方)
▲1▼スクワラン 5.0(重量%)、▲2▼白色ワセリン 2.0、▲3▼ミツロウ 0.5、▲4▼ソルビタンセスキオレエート 0.8、▲5▼ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20EO) 1.2、▲6▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲7▼プロピレングリコール 5.0、▲8▼精製水 全量を100とする量、▲9▼カルボキシビニルポリマー1.0重量%水溶液 20.0、(10)水酸化カリウム 0.1、(11)エタノール5.0、(12)製造例1〜6で得られた菌糸体抽出物など 表3に示した量、(13)香料 0.2
【0039】
(製法)
▲1▼〜▲5▼の油相成分を混合し75℃に加熱して溶解,均一化する。一方▲6▼〜▲8▼の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱し、油相成分を添加して予備乳化する。次いで▲9▼を添加した後ホモミキサーにて均一に乳化し、(10)を加えてpHを調整する。冷却後40℃にて(11)〜(13)を添加,混合,均一化する。
【0040】
【表3】
【0041】
前記実施例1〜実施例8を用いて、紫外線によるしわの発生に対する防止効果を評価した。なお製造例を精製水に代替したものを比較例1とした。しわ発生防止効果は、ヘアレスマウス5匹を1群とし、各群について実施例及び比較例をそれぞれ1日1回背部に塗布し、1J/cm2/週の長波長紫外線(UVA)を50週間照射し、ヘアレスマウスにおけるしわの発生状況を観察し、表4に示す判定基準に従って点数化して行った。この際、精製水のみを塗布した群を対照とした。結果は各群の平均値を算出し、UVA照射日数との関係により表5に示した。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
表5に示されるように、対照群においては、UVA照射日数が40週を越える頃には形成されたしわの深さが中程度にまで達し、50週後には深いしわの発生が認められていた。これに対し、本発明の実施例塗布群では、いずれにおいても50週後に微小ないし軽微なしわが認められた程度で、しわの発生は顕著に抑制されていた。一方比較例塗布群では、有意なしわの発生抑制或いは軽減は認められなかった。
【0045】
続いて、本発明の実施例1〜実施例8及び比較例1について、抗炎症作用及び創傷治癒促進効果を評価した。人工的に炎症又は創傷を形成した1群5匹のマウスを用い、各群に実施例及び比較例をそれぞれ0.5gずつ1日2回7日間塗布し、7日目に炎症部位及び創傷部位の状態を観察した。抗炎症作用については「有効」,「やや有効」,「無効」、創傷治癒促進効果については「完全治癒」,「ほぼ治癒」,「治癒不完全」の3段階でそれぞれ評価し、各評価を得たマウスの数にて表6に示した。
【0046】
【表6】
【0047】
表6より明らかなように、抗炎症作用については、本発明の実施例塗布群ではいずれにおいても無効と評価されたマウスは見られず、2例以上のマウスにおいて有効な抗炎症作用が認められていた。また創傷治癒促進効果についても、本発明の実施例塗布群では創傷治癒の不完全なマウスはいずれにおいても認められておらず、2例以上のマウスで完全な治癒を認めていた。これに対し比較例1塗布群では、やや有効な抗炎症作用の認められたマウスが1例見られたが、残り4例では炎症の改善は全く認められなかった。また比較例1塗布群すべてにおいて、創傷治癒は不完全であった。
【0048】
次に本発明の実施例1〜実施例8及び比較例1について、6ヶ月間の実使用試験を行った。パネラーとして、顕著なしわの発生等の皮膚症状を有する40歳〜60歳代の女性を用い、1群20名とした。使用試験は、各群に実施例及び比較例のそれぞれをブラインドにて使用させて行った。使用試験前および使用試験終了後の皮膚の状態を観察し、しわの改善状況について、「改善」,「やや改善」,「変化なし」の3段階にて評価した。なお、しわの程度については写真撮影及びレプリカにより評価した。結果は、各評価を得たパネラー数にて表7に示した。
【0049】
【表7】
【0050】
表8に示されるように、しわの改善状況については、本発明の実施例使用群ではすべてにおいて改善傾向が認められていた。特に、実施例2及び実施例7使用群では、80%のパネラーで明確な改善を認めていた。これに対し、比較例使用群では、明確な改善を認めたパネラーは見られず、75%のパネラーで症状の改善を認めなかった。
【0051】
実施例1〜実施例8及び比較例1を用いて保湿作用試験を行った。保湿作用は、気温20℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で、前腕内側部に実施例を0.01ml/cm2塗布し、30分後の表皮水分量を高周波インピーダンスメータ(IBS社製,Skicon200)を用いて測定した。なお、ブランクとして実施例及び比較例を塗布していない部分の表皮水分量を測定し、その差を保湿作用試験結果として、各試料とも10名のパネラーの平均値を算出した。
【0052】
【表8】
【0053】
保湿作用試験結果を表8に示した。実施例1〜実施例8は、比較例1より30μS以上表皮水分量の上昇量が多くなっており、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液を配合することにより表皮の保湿性が向上することが示された。
【0054】
なお、本発明の実施例1〜実施例8については、上記使用試験期間中に含有成分の析出,分離,凝集,変臭,変色といった状態変化は全く見られなかった。また、各実施例使用群において、皮膚刺激性反応や皮膚感作性反応を示したパネラーは存在しなかった。
【0055】
続いて、本発明の他の実施例の処方を示す。
実施例9〔皮膚用ローション〕
▲1▼エタノール 10.0(重量%)、▲2▼ヒドロキシエチルセルロース 1.0、▲3▼ハナビラタケ菌糸体抽出物(1) 5.0、▲4▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲5▼精製水 83.9
(製法)
▲1▼〜▲5▼を混合し均一とする。
【0056】
実施例10〔皮膚用乳剤〕
▲1▼ステアリン酸 0.2(重量%)、▲2▼セタノール 1.5、▲3▼ワセリン 3.0、▲4▼流動パラフィン 7.0、▲5▼ポリオキシエチレン(10EO)モノオレイン酸エステル 1.5、▲6▼酢酸トコフェロール 0.5、▲7▼グリセリン 5.0、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼トリエタノールアミン 1.0、(10)精製水 80.1、(11)ハナビラタケ菌糸体抽出物(2) 0.1
(製法)
▲1▼〜▲6▼の油相成分を混合,加熱して均一に溶解し、70℃に保つ。一方、▲7▼〜(10)の水相成分を混合,加熱して均一とし、70℃とする。この水相成分に前記油相成分を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却した後40℃にて(11)を添加,混合する。
【0057】
実施例11〔皮膚用ゲル剤〕
▲1▼精製水 86.3(重量%)、▲2▼カルボキシビニルポリマー 0.5、▲3▼ジプロピレングリコール 10.0、▲4▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲5▼水酸化カリウム 0.1、▲6▼ハナビラタケ菌糸体抽出物(3) 3.0
(製法)
▲1▼に▲2▼を均一に溶解した後、▲3▼に▲4▼を溶解して添加し、次いで▲5▼を加えて増粘させ、▲6▼を添加する。
【0058】
実施例12〔皮膚用クリーム〕
▲1▼ミツロウ 6.0(重量%)、▲2▼セタノール 5.0、▲3▼還元ラノリン 8.0、▲4▼スクワラン 27.5、▲5▼グリセリル脂肪酸エステル 4.0、▲6▼親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0、▲7▼ポリオキシエチレン(20EO) ソルビタンモノラウリン酸エステル 5.0、▲8▼プロピレングリコール 5.0、▲9▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、(10)精製水 37.33、(11)ハナビラタケ菌糸体抽出物(4) 0.07
(製法)
▲1▼〜▲7▼の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、▲8▼〜(10)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却後40℃にて(11)を添加,混合する。
【0059】
実施例13〔水中油型乳剤性軟膏〕
▲1▼白色ワセリン 25.0(重量%)、▲2▼ステアリルアルコール 25.0、▲3▼グリセリン 12.0、▲4▼ラウリル硫酸ナトリウム 1.0、▲5▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲6▼精製水 32.9、▲7▼ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1) 4.0
(製法)
▲1▼〜▲4▼の油相成分を混合,溶解して均一とし、75℃に加熱する。一方、▲5▼を▲6▼に溶解して75℃に加熱し、これに前記油相成分を添加して乳化し、冷却後40℃にて▲7▼を添加,混合する。
【0060】
実施例14〔化粧水〕
▲1▼エタノール 10.0(重量%)、▲2▼1,3−ブチレングリコール 5.0、▲3▼ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(1) 0.05、▲4▼香料 0.1、▲5▼精製水 84.85
(製法)
▲1▼〜▲4▼を順次▲5▼に添加して均一に混合,溶解する。
【0061】
実施例15〔エモリエントクリーム(油中水型)〕
▲1▼流動パラフィン 30.0(重量%)、▲2▼マイクロクリスタリンワックス 2.0、▲3▼ワセリン 5.0、▲4▼ジグリセリルオレイン酸エステル 5.0、▲5▼L−グルタミン酸ナトリウム 1.6、▲6▼L−セリン 0.4、▲7▼プロピレングリコール 3.0、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼精製水 47.8、(10)香料 0.1、(11)ハナビラタケ菌糸体培養濾液(2) 5.0
(製法)
▲5▼,▲6▼を▲9▼の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した▲4▼に攪拌しながら徐々に添加する。これをあらかじめ混合し70℃に加熱溶解した▲1▼〜▲3▼に均一に分散し、これに▲7▼,▲8▼を▲9▼の残部に溶解して70℃に加熱したものを攪拌しながら添加し、ホモミキサーにて乳化する。冷却後、40℃にて(10),(11)を添加,混合する。
【0062】
実施例16〔メイクアップベースクリーム〕
▲1▼ステアリン酸 12.0(重量%)、▲2▼セタノール 2.0、▲3▼グリセリルトリ2−エチルヘキサン酸エステル 2.5、▲4▼自己乳化型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0、▲5▼プロピレングリコール 10.0、▲6▼水酸化カリウム 0.3、▲7▼精製水 69.55、▲8▼酸化チタン 1.0、▲9▼ベンガラ 0.1、(10)黄酸化鉄 0.4、(11)香料 0.1、(12)ハナビラタケ菌糸体培養濾液分画物(2) 0.05
(製法)
▲1▼〜▲4▼の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方▲5▼〜▲7▼の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに▲8▼〜(10)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて乳化した後冷却し、40℃にて(11),(12)を添加,混合する。
【0063】
実施例17〔乳液状ファンデーション〕
▲1▼ステアリン酸 2.0(重量%)、▲2▼スクワラン 5.0、▲3▼ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0、▲4▼セタノール 1.0、▲5▼デカグリセリルモノイソパルミチン酸エステル 9.0、▲6▼1,3−ブチレングリコール 6.0、▲7▼水酸化カリウム0.1、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼精製水 52.1、(10)酸化チタン 9.0、(11)タルク 7.4、(12)ベンガラ 0.5、(13)黄酸化鉄1.1、(14)黒酸化鉄 0.1、(15)香料 0.1、(16)ハナビラタケ菌糸体抽出物(1) 1.5
(製法)
▲1▼〜▲5▼の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方▲6▼〜▲9▼の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(10)〜(14)の顔料を添加しホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて均一に乳化した後冷却し、40℃にて(15),(16)を添加,混合する。
【0064】
実施例18〔ハンドクリーム〕
▲1▼セタノール 4.0(重量%)、▲2▼ワセリン 2.0、▲3▼流動パラフィン 10.0、▲4▼グリセリルモノステアリン酸エステル 1.5、▲5▼ポリオキシエチレン(60EO) グリセリルイソステアリン酸エステル 2.5、▲6▼酢酸トコフェロール 0.5、▲7▼グリセリン 20.0、▲8▼パラオキシ安息香酸メチル 0.1、▲9▼精製水59.3、(10)ハナビラタケ菌糸体培養濾液(1) 0.1
(製法)
▲1▼〜▲6▼の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、▲7▼〜▲9▼の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。ついで、この水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化して冷却し、40℃にて(10)を添加,混合する。
【0065】
【発明の効果】
以上詳述したように、ハナビラタケ菌糸体抽出物,ハナビラタケ菌糸体培養濾液は、真皮線維芽細胞賦活作用及び真皮線維芽細胞に対する紫外線による傷害を防御する作用を有し、これを含有する本発明の皮膚外用剤は、シワ,シミの発生、皮膚弾性の低下といった皮膚老化症状の防止或いは改善に有効で、抗炎症作用,創傷治癒促進作用,保湿作用をも有し、皮膚刺激性,接触感作性といった皮膚への悪影響もなく、さらに安定性,安全性も良好であった。
Claims (2)
- ハナビラタケ菌糸体からの抽出物を含有して成る皮膚外用剤。
- ハナビラタケ菌糸体を培養した培養液から固形物を取除いた培養濾液を含有して成る皮膚外用剤。
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