JP2008214153A - ガラスペースト組成物及び封着方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉛を含有せず低温で軟化し、安定して良好な封着特性を発揮するガラスペースト及びこれを用いた封着方法を提供する。
【解決手段】 ガラスペースト組成物は、溶媒及び分散剤を含有するビヒクルと、ビヒクルに分散するフリットガラスとを有し、フリットガラスは、酸化バナジウムを主成分とし、ガラス転移温度が300〜380℃であるガラスの粉末であり、平均粒子径が10μm未満である。フリットガラスの結晶化温度より低い封着温度で被着体同士を封着する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス、金属、セラミックスなどで構成される部材・部品の封止・接着に用いられるフリットガラスペースト組成物及びこれを用いた封着方法に関し、特に、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、蛍光表示管(VFD)、電解放射型ディスプレイ(FED)などの表示装置やICパッケージ、電気・電子機器等の製造において低温ガラス封着によって部品を封止・接着するための封着材料として使用可能なガラスペースト組成物及びこれを用いた封着方法に関する。
表示管やICパッケージ等の製造における低温ガラス封着、接着や被覆用の封着材料として、分散剤を含んだ有機溶媒(ビヒクル)に低融点ガラス粉末を分散してペースト状にしたガラスペーストが用いられている。このようなガラスペーストは、スクリーン印刷法による転写やディスペンサーなどを用いた塗布によって被着部に供給し、被着体同士を接触させた上で、加熱処理を行って封着させるのが一般的である。このようなガラスペーストに関して記載する文献としては、例えば、下記特許文献1及び2等がある。
従来、この種の封着材料には、低融点で溶融するPbO−B2−SiO2系ガラス粉末を用いたものが多いが、近年の環境影響改善の観点からPb(鉛)成分を含有しない鉛レス材料として、P25−SnO−ZnO系ガラス、Bi23−B23−SiO2系ガラス、V25−P25−BaO系ガラス、V25−TeO2−BaO系ガラスなどが注目されている。
特開2002−255587号公報 特開2002−348144号公報
しかし、上述のような鉛レス材料を用いた封着材料は、鉛を含有する封着材料に比べて軟化挙動が緩慢で封着特性が不安定になり易く、封着工程の僅かな条件ばらつきによって歩留まりが低下する。
このため、信頼性の低下が懸念されたり、均質性を高めるために封着温度を高めに設定する必要が生じる可能性があり、ペーストが保形性を失って封着性能を損なう要因が使用上の問題となっている。
本発明の課題は、鉛を含有しない素材によって構成されながら、低温で軟化した時に封着材料として良好な封止・接着特性を発揮するガラスペースト組成物及びこれを用いた封着方法を提供することにある。
又、本発明の課題は、焼成温度を厳格に管理したり、高めの焼成温度に設定することなく、良好に封着することが可能なガラスペースト組成物及びこれを用いた封着方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、ガラスペースト組成物は、溶媒及び分散剤を含有するビヒクルと、前記ビヒクルに分散するフリットガラスとを有するガラスペースト組成物であって、前記フリットガラスは、酸化バナジウムを主成分とし、ガラス転移温度が300〜380℃であるガラスの粉末であり、平均粒子径が10μm未満であることを要旨とする。
上記フリットガラスは、バナジウム、リン、アンチモン、バリウム及びテルルを、酸化物換算で、V25:50〜65質量%、P25:15〜27質量%、Sb23:5〜25質量%、BaO:1〜15質量%、及び、TeO2:0〜10質量%の割合で含有し、結晶化温度が480℃以上であると好ましい。更に、熱膨張係数及び流動性を制御するためのフィラー粉末を含有するとよく、フィラー粉末の含有割合は、前記フリットガラス粉末100質量部に対して20〜100質量部であると好ましく、上記フィラー粉末は、セラミックス粉末又は高融点ガラス粉末を使用可能である。上記セラミックス粉末は、Al23、Cr23及びTiO2からなる群のうちの少なくとも1成分を含有すると好ましく、上記高融点ガラス粉末は、SiO2ガラス又はSiO2を主成分とするガラスを含むとよい。
また、本発明の一態様によれば、封着方法は、上記のガラスペースト組成物を用いて、上記ガラスペースト組成物のフリットガラスの結晶化温度より低い封着温度で被着体同士を封着することを要旨とする。
本発明によれば、ガラスペースト組成物の焼成によって形成される塗膜の表面粗さが安定的に減少し、表面が平滑で均一な塗膜を形成するので、焼成温度などの環境条件のばらつきによる封着特性への影響が少なく、軟化したガラスが被着体同士を良好に濡らして良好な封着を形成することが可能になる。
ガラスの利用において、ガラス転移温度(Tg)は重要な温度であり、この温度において軟化したガラスの粘度は1013〜1015 poise程度となり、これ以下では固化してガラス状態となって流動性は通常無いに等しい。封着材料として使用されるガラスペーストは、樹脂を溶解した溶媒をビヒクルとして、これにフリットガラスをペースト状に分散したもので、一般的な封着作業では、一方の被着体上にガラスペーストを供給し、加熱によるビヒクル除去後の仮焼成によってフリットガラスが軟化し、冷却により一旦固化した塗膜を他方の被着体と合わせて本焼成することにより封止・接着する。一般的な封着作業で仮焼成・本焼成に適用される加熱温度は410〜460℃程度であり、ガラス転移温度がこれより低いフリットガラスを用いて、封着作業温度でガラスを適切に軟化させる。
鉛を含有しない封着材料として提案されているガラスペーストのフリットガラスは、V25を主成分とする低融点ガラス粉末であるが、従来の鉛を含有するフリットガラスより軟化挙動が緩慢で均質化し難いため、被着体への濡れ不良や封止歩留まり及び強度が低下する傾向がある。この点に関し、本願発明者らは、フリットガラスの粒子径の調節によって解決可能であることを見出した。
本発明のガラスペースト組成物においては、V25を主成分とする低融点フリットガラスを使用し、そのガラス転移温度は300〜380℃である。ガラス転移温度が300℃未満であると、ガラス軟化温度(Ts)が過度に低く、封着温度での粘性が小さくなるため、フリットガラスが柔らかく流動し易くなり、封着部分からガラスがはみ出たり、形状が保持できずにフィラー外形の影響を受けた粗い表面になる。封着部分からガラスがはみ出すと、これを除去するための後工程が余分に必要となる。仮焼成後の塗膜表面がフィラー形状の影響を受けるようになると、表面が微小凹凸を呈し易く粗面になり、充分な封着が期待できないので好ましくない。一方、ガラス転移温度が380℃を超えるフリットガラスを用いると、ガラス軟化温度も高くなり、充分に軟化せず被着体同士を封着できない。
フリットガラスは、加熱によって柔化しつつ被着体上で濡れ広がるが、使用するフリットガラスの粒子径によって封着特性が変動し易く、粒子径の増大によって封止特性が低下する傾向が見られる。この原因は、焼成によって得られる塗膜が不均質になり被着体と塗膜との密着性に影響を及ぼすことが考えられる。このため、フリットガラスの粒子径と、焼成によって得られる塗膜の表面粗さとの関係を調べたところ、粒子径が増大すると、塗膜の表面粗さへの焼成温度の影響が著しくなり、滑らかな(つまり均質な)塗膜を確実に得るために焼成温度を必要以上に高く設定する必要が生じることが判明した。これに基づき、本発明において使用するフリットガラスの平均粒子径は、10μm未満、好ましくは2〜4μmの範囲とする。平均粒子径が10μm以上のフリットガラスでは、焼成温度の微小変動による影響を受け易く、得られる塗膜が不均質化し表面粗さが増大し易い。この結果、塗膜の密着性や封着強度、歩留まりが低下する。2〜4μmのフリットガラスでは、焼成温度に若干のズレが生じても塗膜の表面粗さへの影響は小さく、安定して良好な封着性が得られる。
フリットガラスは、結晶化温度(Tcry)が高いものが適しており、480℃以上であると好ましい。結晶化温度が480℃より低いと、封着時に炉内の温度バラツキにより高温に曝された場合や、処理時間が超過した場合に結晶化するおそれがある。
上述の要件に適合する特性を有するバナジウム含有ガラスの組成について説明する。
酸化バナジウムを主成分とするフリットガラスとして好適なガラス素材としては、例えば、酸化物換算で、V25:50〜65質量%、P25:15〜27質量%、Sb23:5〜25質量%、BaO:1〜15質量%、及び、TeO2:0〜10質量%となる割合でバナジウム、リン、アンチモン、バリウム及びテルルを含有する組成のガラス素材が挙げられる。
上記酸化物換算において、V25が50重量%未満であると、前述したガラスの特性温度が高くなり、封着温度の上昇を招くので、表示管の封着やICパッケージ等の低温ガラス封着に使用するには適切でない。一方、V25が65重量%を超えると、耐候性が低下し、ガラス封止の信頼性が損なわれる。P25が15重量%未満である場合は、結晶化し易く、ガラス封止が脆くなる。一方、P25が27重量%を超えると、ガラスの特性温度が高くなり、封着温度の上昇を招くため、表示管の封着やICパッケージ等の低温ガラス封着に使用するには適切でない。Sb23が5重量%未満であると、耐候性が低下し、ガラス封止の信頼性に欠ける。一方、Sb23が25重量%を超えると、軟化挙動が悪く膜形成が困難になる。
BaOの添加は、化学安定性の向上のために好ましいが、BaOが15重量%を超えると、ガラスの特性温度が高くなり、封着温度の上昇を招くため、表示管の封着やICパッケージ等の低温ガラス封着に使用するには適切でない。TeO2の添加も結晶化の防止などの特性向上が図れるが、10重量%を超えると、化学的安定性が悪くなり、ガラス封止の信頼性が低下する。なお、前記ガラス組成にR2OとしてNa2O又はK2Oのようなアルカリ金属の酸化物を添加することも可能であるが、やはり10質量%を超えると、化学的安定性が悪くなる。
封着材料として用いられるガラスペースト組成物には、必要に応じてセラミックス粉末や高融点ガラス粉末等のフィラー粉末が配合される。フィラー粉末の役割には、被着体との熱膨張差の緩和、形成される封着塗膜の強度向上、ペーストの流動性の改善等がある。熱膨張差の緩和成分として使用する場合、フィラー素材としては、フリットガラス及び被着体の熱膨張係数に応じてフリットガラスより熱膨張係数が小さい耐熱素材が適宜選択され、配合割合は熱膨張差の緩和程度に応じて調節される。好ましくは、熱膨張係数が80×10−7/℃以下の耐火性素材が用いられる。フィラー素材を他の素材に代えることにより、本発明のガラスペースト組成物を封着材料以外の用途に応用できる。
フィラー粉末は、フリットガラスと比重が近いものが好ましい。フィラー粉末の比重がフリットガラスと極端に異なると、ペースト中で分離し易くペーストの安定性を低下させる原因となり、封着性能も低下するので、密度が5g/cm3以下、好ましくは2〜5g/cm3の耐火性素材が好適に用いられる。バナジウム−リン酸系ガラスの比重は概ね3〜4であり、これと同等の比重を示すセラミックスとしては、Al23系、Cr23系、TiO2系等、高融点ガラスとしては、SiO2ガラス、SiO2を主成分とするガラス等がある。具体的には、例えば、コージエライト、ジルコン、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタニア、シリカ、アルミナ、酸化錫、酸化ニオブ、リン酸ジルコニウム、ウイレマイト、ムライト、NbZr(PO4)、β−ユークリブタイト、β−スポジュメン、サイアロン、窒化珪素、β−石英固溶体等の無機物及びセラミックス、石英ガラスその他の高融点ガラス(封着温度で軟化しない歪点450℃以上のガラス)等が挙げられる。これらの素材の1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。熱膨張係数及び比重等を総合的に勘案すると、フィラー素材としては、シリカ、アルミナ、チタン酸アルミニウム、CaO−B23−Al23−SiO2系の低アルカリガラス等が好適であり、これらの何れか1つ以上を選択すると好ましい。
上記のようなフィラー素材を粒子状に粉砕したセラミックス粉末や高融点フリットガラスを用いて、ペースト組成物を調製する。フィラー粉末の形状は、略球形や不定形な破砕粉などの何れの形状でも良いが、比表面積が大きいと、吸着気体が気泡となる不具合が発生し易くなるので、略球形のものが好ましい。フィラー粉末の粒子径は1〜50μmの範囲が好適であり、望ましくはフリットガラスの粒子径と同程度にする。このようなフィラー粉末は、工業的に大量生産され、安定的に入手可能である。
ガラスペースト組成物は、フリットガラス及びフィラー粉末の溶媒への分散を安定化し保形性(可塑性)を付与するための分散剤として有機樹脂を含有し、フリットガラスとの反応性が低い樹脂が使用される。化学的安定性、費用及び安全性等の観点から、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール等のビニル系樹脂、カーボネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が好ましい。
ペースト組成物のビヒクルを構成する溶媒としては、分散剤を溶解し、フリットガラスとの反応性が低い有機溶剤が使用され、化学的安定性、費用、安全性及び樹脂との相溶性等を考慮して適宜選択される。具体的には、アルコール類、ケトン類、脂肪族カルボン酸エステルやヒドロキシカルボン酸エステル等のエステル類、エチレングリコールアルキルエーテル等のエーテル類、アミド類、カーボネート類等が使用でき、例えば、イソへキシルアルコール、イソデシルアルコール、イソドデシルアルコール、テルピネオール、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。上記溶媒は、単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上述の樹脂を上記溶媒に溶解し、これをビヒクルとして、フリットガラス及びフィラー粉末を配合して、均一に混合してペースト状に分散させることによってガラスペースト組成物が得られる。混合均一化操作は、ボールミル、ロールミル等の一般的な攪拌・混練手段を用いて行えば良い。フィラー粉末の含有割合は、フリットガラス100質量部に対して、20〜100質量部、好ましくは40〜80質量部、特に好ましくは60〜70質量部とする。フィラー量が過剰であると、フィラー表面に付着した気体が焼成時に軟化ガラス中に残留して最終的に気泡として残ったり膜強度が弱くなったりする場合がある。樹脂の使用量は、フリットガラス100質量部に対して0.5〜5質量部程度の割合が好ましく、過剰であると焼成時に十分に除去できずに残留分による弊害が生じ易くなる。溶媒の使用量は、樹脂を溶解可能な量であり、フリットガラス及びフィラー粉末の合計質量100質量部に対して10〜30質量部程度が好ましく、この範囲で適宜調整することによって、粘度が40〜55Pa・s程度の好適なペースト状態となる。
尚、上記ガラスペースト組成物には、必要に応じて、界面活性剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の添加剤を適宜配合しても良い。
上述のようにして調製されるガラスペースト組成物は、電子・電気機器の製造における部材の接合・接着のための接着剤や部材間を機密封止する封着材料として利用できる。又、ガラス被膜やガラス被覆構造部材を製造するための塗料に応用してもよい。封着材料として使用する場合は、例えば、ディスペンサーやスクリーン印刷装置等を用いて一方の被着体にペースト組成物を塗布して乾燥した後に、仮焼成することによって樹脂を焼却除去するとともにフリットガラスを軟化させる。これを一旦冷却した後、他方の被着体を接触させて適宜加圧しながら封着温度で本焼成して被着体を封止・接着する。封着温度は、一般的な410〜460℃の範囲を適用でき、仮焼成の温度は、通常、封着温度より若干高い温度に設定される。これらの温度はフリットガラスのガラス転移温度より低い。樹脂の焼却分解物・ガスの残留等による不具合が懸念されない場合には、仮焼成を省略して封着することも可能である。
本発明のガラスフリットペースト組成物の用途は、薄型平面ディスプレイの封止・接着用の低融点ガラスペーストに限られず、磁気ディスク基板等の電子機器用ガラス構造部材の接着や被膜形成用塗料などにも適用できる。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ガラスの調整>
ガラスAの配合組成をV25:55質量%、Sb23:10質量%、BaO:5質量%、P25:25質量%、TeO2:5質量%とし、ガラスBの配合組成をV25:58質量%、Sb23:8質量%、BaO:5質量%、P25:22質量%、TeO2:7質量%として原料酸化物を配合し、各ガラスの全量を500gとして、白金製ルツボを用いて大気中1000℃、30分間保持して配合物を溶解し、その後、冷却化してガラス化することにより、ガラスA(軟化温度:420℃)及びガラスB(軟化温度:410℃)を調製した。
得られたガラスA及びBを、各々、乳鉢で粗粉砕した後、さらにボールミルを用いて微粉化し、ガラスフリットにした。なお、ボールミル処理時間を90分、60分、30分及び10分に調節することによって、各ガラス毎に平均粒子径が2μm、4μm、9μm及び13μmの4種類のフリットガラスが得られた。なお、平均粒子径は、レーザー光学式の粒度分布測定装置SALD−2000(島津製作所製)を用いて測定した。
<ガラスペーストの作製>
上述の平均粒子径のガラスA及びガラスBのガラスフリット計8種の各々を用いて、以下のようにガラスペーストを作製した。
ガラスフリット50gに対し、エチルセルロースをブチルカルビトールアセテートに溶解して得たビヒクル(エチルセルロース含有量:30質量%)150gを添加し、乳鉢上で混合した後に三本ロールミルで混練して、ガラスペーストを得た。
<評価用試料の作製1>
水平にした縦50mm×横50mm×厚さ2mmのガラス板(PD200、旭硝子社製)の上面の周縁部に、ディスペンサーを用いて上述のガラスペーストを幅3mm、厚さ1mmで塗布した。このようにしてガラスペーストを塗布したガラス板を試料として、ペースト1種あたり2個ずつ用意した。
上記試料を、室温で10分間静置してペースト塗膜をレベリングした後、150℃で10分間加熱して、ペースト塗膜中の有機溶剤をある程度揮発させた。次いで加熱炉に入れて昇温速度10℃/分で昇温し455℃で30分間仮焼成した。
各種ペーストについて、2個の試料のうち1個はそのままで(表面評価用)、もう1個は同じ大きさのガラス板を重ね合わせて(封着評価用)、加熱炉に入れて昇温速度10℃/分で445℃まで昇温し、445℃で15分間保持して焼成してから冷却した。
<評価用試料の作製2>
仮焼成温度を455℃から460℃に変更したこと以外は評価用試料の作製1と同様にして試料を作製した。
<評価方法>
封着評価用の試料について、ガラス板上のペースト塗膜の面粗さを測定した。又、封着評価用の試料については、まず、ガラス板と溶融したガラスによる接着面の気泡発生(残存)状態を目視で観察し、次いで、気泡が残存するものについて画像解析装置を用いて観察視野1mm×1mmにおける気泡数を計測することによって封着状態を評価した。評価の結果を表1に示す。
<評価結果>
仮焼成温度455℃及び460℃で処理した試料は、何れもガラスA及びBの軟化温度より30℃以上高い温度で、その差は僅か5℃であるが、表1によれば、455℃で仮焼成した塗膜において表面粗さに差が生じていることから、ガラスの軟化挙動が緩慢であることが理解される。仮焼成温度が455℃における塗膜の表面粗さは、460℃の場合より大きく、特にフリットガラスの粒子径が10μm以上において急激に増加する。換言すると、粒子径が2〜4μm程度の細かいフリットガラスを用いれば、何れの焼成温度でも表面粗さが小さく均質な塗膜が得られ、焼成環境の変動やばらつきの影響を受け難く、安定して良好な封着特性を得ることができる。又、仮焼成温度を高めに設定する必要もなくなる。
(表1)
ガラスフリットの粒子径とペーストの封着特性
試料 ガラス 軟化温度 平均粒子径 焼成温度 面粗さRa 封着状態
(℃) (μm) (℃) (μm) (気泡数)
1 A 420 2 455 0.115 0
2 A 420 4 455 0.13 0
3 A 420 9 455 0.2 0
4 A 420 13 455 0.325 5
5 B 410 2 455 0.097 0
6 B 410 4 455 0.115 0
7 B 410 9 455 0.15 7
8 B 410 13 455 0.19 30
9 A 420 2 460 0.078 0
10 A 420 4 460 0.089 0
11 A 420 9 460 0.1 0
12 A 420 13 460 0.127 0
13 B 410 2 460 0.078 0
14 B 410 4 460 0.088 0
15 B 410 9 460 0.098 0
16 B 410 13 460 0.125 0
フリットガラスの粒子径とこれを用いたガラスペーストにより形成される塗膜の表面粗さとの関係を示すグラフ。

Claims (8)

  1. 溶媒及び分散剤を含有するビヒクルと、前記ビヒクルに分散するフリットガラスとを有するガラスペースト組成物であって、前記フリットガラスは、酸化バナジウムを主成分とし、ガラス転移温度が300〜380℃であるガラスの粉末であり、平均粒子径が10μm未満であることを特徴とするガラスペースト組成物。
  2. 前記フリットガラスは、バナジウム、リン、アンチモン、バリウム及びテルルを、酸化物換算で、V25:50〜65質量%、P25:15〜27質量%、Sb23:5〜25質量%、BaO:1〜15質量%、及び、TeO2:0〜10質量%の割合で含有し、結晶化温度が480℃以上である請求項1記載のガラスペースト組成物。
  3. 更に、熱膨張係数及び流動性を制御するためのフィラー粉末を含有する請求項1又は2に記載のガラスペースト組成物。
  4. 前記フィラー粉末の含有割合は、前記フリットガラス粉末100質量部に対して20〜100質量部である請求項3に記載のガラスペースト組成物。
  5. 前記フィラー粉末は、セラミックス粉末又は高融点ガラス粉末である請求項3又は4に記載のガラスペースト組成物。
  6. 前記セラミックス粉末は、Al23、Cr23及びTiO2からなる群のうちの少なくとも1成分を含有する請求項5に記載のガラスペースト組成物。
  7. 前記高融点ガラス粉末は、SiO2ガラス又はSiO2を主成分とするガラスを含む請求項5に記載のガラスペースト組成物。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載のガラスペースト組成物を用いて、前記ガラスペースト組成物のフリットガラスの結晶化温度より低い封着温度で被着体同士を封着する封着方法。
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