JP2008214130A - 窒化ホウ素ナノチューブ分散液、及びそれより得られる不織布 - Google Patents

窒化ホウ素ナノチューブ分散液、及びそれより得られる不織布 Download PDF

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Abstract

【課題】窒化ホウ素ナノチューブを含有する分散液ならびにその製造方法、更にこれを用いた窒化ホウ素ナノチューブの成型方法及び成型体を提供する。
【解決手段】1重量部の窒化ホウ素ナノチューブ(A)と、遊離水分含有量が5重量%以下である強酸性溶媒(B)を1〜100000重量部含有することを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブ分散液。また該分散液を湿式凝固、製膜後に洗浄、乾燥することにより得られる窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シート、ならびにその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、窒化ホウ素ナノチューブを含有する分散液ならびにそれより得られる窒化ホウ素ナノチューブ不織布に関する。さらに詳しくは、分散溶媒として遊離水分含有量が5重量%以下である強酸性溶媒を用い、分散性、安定性に優れた分散液を調製し、これを湿式凝固製膜せしめることによる窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シート、およびその製造方法に関する。
カーボンナノチューブは炭素6員環からなるグラファイトシートが円筒状を形成した物質であり、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。
カーボンナノチューブは、高電気伝導性、機械的性質、化学安定性等、これまでにない優れた特性を有しており、複合材料、半導体素子、導電材料、水素吸蔵材料などへの応用研究が進められている。
一方で近年、窒化ホウ素ナノチューブもカーボンナノチューブと構造的な類似性を有することから従来にない特性を有する材料として期待されている(特許文献1参照)。
例えば、高強度、高弾性率、高熱伝導性かつ絶縁性、高耐熱性という特徴を生かしてポリマーなどの構造材料マトリクス中にフィラーとして添加して、機械的物性、耐熱性や熱伝導性を向上させることが期待できる。更にチューブを賦型し、シートやマット状に成型できればマトリクスとの任意の複合化が可能となり、電気・電子部材、高強度、耐熱構造材料などの広い分野で様々な利用が可能となる。しかし、窒化ホウ素ナノチューブは粉黛状のナノフィラーであるため、通常の成型方法を適用することが困難であった。有効な成型方法としては、一旦窒化ホウ素ナノチューブを適当な溶剤に均一分散せしめ、これより溶媒抽出を行うことで成型することが考えられる。ただし窒化ホウ素ナノチューブは単独では水や一般的な有機溶剤への分散性が低く、通常カーボンナノチューブが分散するような界面活性剤水溶液や有機溶媒へも高度に分散することができない。このような場合、従来より高分子型添加剤とマトリクスポリマーを用いて窒化ホウ素ナノチューブを有機溶媒に分散し、ポリマーと共に成型することが検討されているが、この方法では分散用、マトリクス用ポリマーが成型材料としてそのまま窒化ホウ素ナノチューブと複合利用される場合のみ有効であり、窒化ホウ素ナノチューブのみを成型したり、この方法を適用できない溶剤不溶性のポリマーや金属との複合を目的とした窒化ホウ素ナノチューブ成型体調製は困難である。この目的には、純粋な窒化ホウ素ナノチューブを第三成分の添加なしに高度に溶媒分散させ、その分散液を用いた成型方法を確立する必要がある。
特開2000−109306号公報
本発明の目的は、分散性および安定性が改良された、窒化ホウ素ナノチューブを含有する分散液ならびにその製造方法を提供すること、更にこれを用いた窒化ホウ素ナノチューブの成型方法及び成型体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、窒化ホウ素ナノチューブを分散させる溶媒として、水分含有率の極端に低い強酸性液体を使用することにより、窒化ホウ素ナノチューブを強酸性液体中に均一にかつ安定して分散させることができること、ならびにこの溶液を湿式凝固製膜法により成型することで簡便に均一な不織布状窒化ホウ素ナノチューブシートを調製できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
1.1重量部の窒化ホウ素ナノチューブ(A)と、遊離水分含有量が5重量%以下である強酸性溶媒(B)を1〜100000重量部含有することを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
2.強酸性溶媒(B)が、濃硫酸、発煙硫酸、アルキルスルホン酸及び/またはそれらの混合溶媒から成ることを特徴とする上記に記載の窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
3.窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が0.4nm〜1μm、平均アスペクト比が5以上であることを特徴とする上記に記載の窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
4.強酸性溶媒(B)が、濃度95〜100重量%の濃硫酸および/またはメタンスルホン酸であることを特徴とする上記に記載の窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
5.上記に記載の分散液を湿式凝固し製膜せしめた後に洗浄し、次いで乾燥することにより得られる厚さ1μm以上の窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シート。
6.上記に記載の分散液を湿式凝固し製膜せしめた後に洗浄し、次いで乾燥することを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シートの製造方法、
7. 0.4nm〜1μm、平均アスペクト比が5以上である窒化ホウ素ナノチューブ50〜100重量%からなる厚さ1μm以上の窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シート。
により構成される。
本発明によれば、窒化ホウ素ナノチューブの分散安定性に優れた分散液を得ることができる。また本発明によれば、該分散液を用いて成型することにより不織布状の窒化ホウ素ナノチューブシートを容易に製造することができ、このシートは単独での使用、あるいはポリマーや金属等のマトリクスとの複合により高強度、高耐熱性の構造材料および/または絶縁性、高熱伝導性の成型体として、自動車、航空機、電気、電子素材の基材として好適に使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
<窒化ホウ素ナノチューブ(A)>
本発明において、窒化ホウ素ナノチューブとは、窒化ホウ素からなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、一重管もしくは多重管になっているものである。窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は、好ましくは0.4nm〜1μm、より好ましくは0.6〜500nm、さらにより好ましくは0.8〜200nmである。ここでいう平均直径とは、一重管の場合、その平均外径を、多重管の場合はその最外側の管の平均外径を意味する。平均長さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。平均アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。平均アスペクト比の上限は、平均長さが10μm以下であれば限定されるものではないが、上限は実質25000である。よって、窒化ホウ素ナノチューブは、平均直径が0.4nm〜1μm、平均アスペクト比が5以上であることが好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブの平均直径および平均アスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることが出来る。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から直接窒化ホウ素ナノチューブの直径および長手方向の長さを測定することが可能である。また組成物中の窒化ホウ素ナノチューブの形態は例えば繊維軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することが出来る。
窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法、化学的気相成長法を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている(Chem. Mater., 2000,vol.12,1808)。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法(特開2000-109306号公報、特開2002-97004号公報)等も提案されている。本発明に用いられる窒化ホウ素ナノチューブは、これらの方法により製造されるものに限定されない。窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理や化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブも使用することができる。
窒化ホウ素ナノチューブ(A)は、不純物として窒化ホウ素フレーク、触媒金属等を含んでいる場合がある。その場合、50%以上が窒化ホウ素ナノチューブであることが好ましく、80%以上が窒化ホウ素ナノチューブであることがより好ましい。
<強酸性溶媒(B)>
強酸性溶媒(B)は、窒化ホウ素ナノチューブと十分に相互作用できる程度の酸強度を有することに加え、窒化ホウ素ナノチューブと酸の相互作用を阻害する遊離水分濃度が低いものが好ましく、遊離水分含有量が5重量%以下である。強酸性溶媒(B)は濃硫酸、発煙硫酸、アルキルスルホン酸及び/またはそれらの混合溶媒から成ることが好ましい。具体的には、(i)濃硫酸、発煙硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、などのスルホン酸類、(ii) トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、フルオロホウ酸などハロゲン化酸素酸類、(iii)正リン酸、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などのリン酸類、(iv)フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸などが挙げられる。これらの液体は通常単独で用いるが、特別な副反応性などが無い組み合わせの場合は2種以上を混合して用いることもできる。これらの溶媒のなかでも、より好ましい強酸性液体として、濃硫酸、発煙硫酸、アルキルスルホン酸及び/またはそれらの混合溶媒から成るものが挙げられる。なかでも、98〜100%濃度の濃硫酸、メタンスルホン酸を特に好ましく挙げることができる。
分散液中の強酸性溶媒(B)の量は、1重量部の窒化ホウ素ナノチューブ(A)に対して1〜100000重量部、好ましくは2〜10,000重量部、より好ましくは5〜1,000重量部である。
強酸性溶媒(B)の量が多すぎると賦型用途への利用価値が低く、少なすぎると窒化ホウ素ナノチューブ(A)の分散性が低下することもある。
<分散液の製造方法>
本発明の分散液は、(i)窒化ホウ素ナノチューブ(A)に強酸性溶媒(B)を添加する方法や、(ii)強酸性溶媒(B)に窒化ホウ素ナノチューブ(A)を添加する方法により比較的容易に製造することができる。
窒化ホウ素ナノチューブ(A)を強酸性溶媒(B)に分散させる方法としては、特に限定されないが超音波や各種攪拌方法を用いることができる。攪拌方法としては、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ボールミル等の攪拌方法も使用することができる。
本発明の分散液は、分散性に優れ、かつ分散している状態が保持、安定化している。この理由については、完全に解明されたわけではないが窒化ホウ素ナノチューブ(A)の粒子間に強酸性液体が侵入し、その酸性により構成元素である窒素やホウ素部位と酸−塩基相互作用を発現する状態が形成され、窒化ホウ素ナノチューブの凝集が抑制されているものと推定される。
また、本発明の分散液には必要に応じて塩、粘度調整剤、キレーター等が含まれていてもかまわない。
<不織布の製造方法>
前述の方法で調製した窒化ホウ素ナノチューブ分散液を湿式凝固し製膜せしめた後に洗浄し、次いで乾燥することにより窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シートを製造することができる。
本発明で得られる窒化ホウ素ナノチューブ不織布は、純粋に窒化ホウ素ナノチューブ間のナノレベルでの絡み合いに基づき形成される網目状組織から成る成型体である。
本発明で用いる凝固液としては、純粋な水であってもよいが、水以外の成分として、窒化ホウ素ナノチューブの良分散剤あるいは有機溶剤が含有されていてもよい。
窒化ホウ素ナノチューブの良分散剤としては、窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調製する際に用いた強酸性液体を好ましく挙げることができ、特に濃度30%以下の希硫酸、濃度30%以下のリン酸水溶液や濃度20%以下のメタンスルホン酸などを好ましく上げることができる。また有機溶剤としては親水性の高い極性溶剤を好ましくあげることができ、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア、1,3−ジプロピルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。特にN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランを好ましく挙げることができる。
前記の窒化ホウ素ナノチューブ分散液の凝固時間は、窒化ホウ素ナノチューブの濃度、溶媒の種類、温度、凝固液の組成比によって変わるものであるので適宜決めればよい。
また該凝固工程は1段の凝固浴に限定されるものではなく、2段以上の凝固浴を用いてもよい。前記の多段の凝固において各段階の凝固時間は、窒化ホウ素ナノチューブの濃度、溶媒の種類、凝固液の組成比によって変わるものであるので適宜決めればよい。
窒化ホウ素ナノチューブ分散液を表面が平滑な面を有する基板表面上にキャストし、湿式プロセスにて凝固製膜せしめる。窒化ホウ素ナノチューブ分散液をキャストする温度は、200℃以下が好ましく、100℃以下がさらに好ましい。200℃以上でキャストした場合、用いる強酸性液体によっては蒸発、気化する恐れがあり、これは窒化ホウ素ナノチューブの安定な分散状態を阻害する要因にもなるため好ましくない。
上記窒化ホウ素ナノチューブをキャストした薄膜を凝固液に浸漬し凝固する温度は、100℃以下が好ましく、50℃以下がさらに好ましい。100℃以上でキャストした場合、凝固液の主成分である水の蒸発、気化が起こりやすくなり、凝固液組成の変性をきたす恐れがあり安定な凝固プロセスの維持に好ましくない。
このようにして凝固、製膜して得られる窒化ホウ素ナノチューブ不織布は、引き続き純水で洗浄、乾燥することにより取り扱いに安定な形状、強度を有する成型体として調製される。なお洗浄の際、残存する強酸性液体を効率よく除去するべく、純水による洗浄の前に塩基性水溶液を用いた中和プロセスを好ましく実施することができる。中和プロセスでは、塩基性物質を溶解した水溶液を好ましく用いることができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような水酸化アルカリ、石灰水のような水酸化アルカリ土類金属の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのような炭酸アルカリ塩、ピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基の水溶液、4級アンモニウム水酸化物、アンモニア水などを挙げることができる。
<不織布状シート>
本発明により、窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シートが得られる。本発明の窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シートは窒化ホウ素ナノチューブが互いに絡み合って積層した微細構造を基本とする組織からなり、均質かつ緻密な不織布構造を有しているいる。本発明の方法で極薄の不織布状シートを形成することが可能であり、実質的な厚さの下限は1μm程度のものも得ることができる。厚さの上限はとくになく、本発明方法で製造できる範囲であれば用途により所望の厚さが選択できる。
不織布状シートの好ましい目付け量は1.6g/m以上のものであり、より好ましい目付け量は5〜200g/mである。
また柔軟で屈曲性にある薄い不織布状シートを得ることが可能である。本発明の不織布状シートは、平均直径が0.4nm〜1μm、平均アスペクト比が5以上である窒化ホウ素ナノチューブ50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%からなる。
窒化ホウ素ナノチューブ以外の不織布状シートを構成する材料としては、本発明の目的を阻害せず、本発明方法を適用できるものであればとくに制限はない。具体的にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ホウ素酸化物又はそれらの混合酸化物などより構成されるセラミック系無機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維、ボロン繊維などの各種無機化合物よりなる繊維、またはシリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などのセラミック系微粒子、あるいはアラミド、アゾール、ポリイミドなどからなる有機繊維が挙げられる。なかでもセラミック系無機繊維、セラミック系微粒子または有機繊維が好ましい。
窒化ホウ素ナノチューブ以外の不織布状シートを構成する材料について、平均アスペクト比は5以上であることが好ましい。また平均直径は0.005〜100μmの範囲であることが好ましい。
シートは単独での使用、あるいはポリマーや金属等のマトリクスとの複合体として用いられ、高強度、高耐熱性の構造材料および/または絶縁性、高熱伝導性の成型体として、自動車、航空機、電気、電子素材の基材として好適に使用することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<分散性の評価>
分散液をスライドグラス上に1滴とり、カバーグラスでカーバーしたものを、光学顕微鏡を用いて200倍で観察し、窒化ホウ素ナノチューブの分散性を確認した。
<動的光散乱測定>
大塚電子ZDLS-7000を用いて濃度0.001重量%で動的光散乱測定を行った。
<走査型電子顕微鏡観察>
得られた窒化ホウ素ナノチューブ不織布状成型体の表面組織を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により観察することで微細構造、形態を評価した。
<参考例1>(窒化ホウ素ナノチューブの製造)
窒化ホウ素製のるつぼに、1:1のモル比でホウ素と酸化マグネシウムを入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した。ホウ素と酸化マグネシウムは反応し、気体状の酸化ホウ素(B)とマグネシウムの蒸気が生成した。この生成物をアルゴンガスにより反応室へ移送し、温度を1100℃に維持してアンモニアガスを導入した。酸化ホウ素とアンモニアが反応し、窒化ホウ素が生成した。1.55gの混合物を十分に加熱し、副生成物を蒸発させると、反応室の壁から310mgの白色の固体が得られた。続いて得られた白色固体を濃塩酸で洗浄、イオン交換水で中性になるまで洗浄後、60℃で減圧乾燥を行い窒化ホウ素ナノチューブ(以下、BNNTと略すことがある)を得た。得られたBNNTは、平均直径が27.6nm、平均長さが2460nmのチューブ状であった。
[実施例1]
(分散液の調製)
参考例1で得られた窒化ホウ素ナノチューブ500mgを98重量%濃硫酸5mlに添加して、3周波超音波洗浄器(アズワン製、出力100W、28Hz)で60分超音波処理を行うことで窒化ホウ素ナノチューブが均一分散した分散液を得た。
得られた分散液は、1日放置後も窒化ホウ素ナノチューブの沈殿は観察されなかった。また、光学顕微鏡観察(200倍)を用い分散性の評価を行ったところ、窒化ホウ素ナノチューブの分散性が飛躍的に向上していることを確認した。動的光散乱測定から算出した平均粒径サイズは405.7nmであった。
(窒化ホウ素ナノチューブ不織布の調製)
上述の窒化ホウ素ナノチューブが均一分散した分散液を、ガラス基板上にクリアランス400μmのドクターブレードを使用してキャスト流延した後、20℃にてイオン交換水に浸漬し硫酸を抽出することでシート状成型体を作成した。これをガラス基板ごと1%水酸化ナトリウム水溶液中に30分浸漬し、ついでイオン交換した流水中で1時間洗浄後、シートをガラス基板より剥離し、テフロン(登録商標)製の型枠に固定して30mmHgにて80℃で1時間、120℃で1時間減圧乾燥を実施することで10cm×10cmの面積の窒化ホウ素ナノチューブからなる不織布状シートを得た。シートは柔軟で屈曲性があり折り曲げることも可能であった。このシートの重さを測定したところ、目付けは50g/mであった。また走査型電子顕微鏡観察より、窒化ホウ素ナノチューブが互いに絡み合って積層した微細構造を基本とする組織から不織布が形成されていることが確認された(図1)。
[実施例2]
溶媒に98重量%硫酸の代わりに100%硫酸を用いた以外は実施例1と同様に窒化ホウ素ナノチューブ分散液を得た。動的光散乱測定から算出した窒化ホウ素ナノチューブ分散体の平均粒径サイズは401.2nmであった。この分散液をキャスト、凝固製膜することにより10cm×10cmの面積の窒化ホウ素ナノチューブから成る均一な不織布状シートを得た。シートは柔軟で屈曲性があり折り曲げることも可能であった。このシートの重さを測定したところ、目付けは50g/mであった。また走査型電子顕微鏡観察より、窒化ホウ素ナノチューブが互いに絡み合って積層した微細構造を基本とする組織から不織布が形成されていることが確認された(図2)。
[実施例3]
溶媒に98重量%硫酸の代わりに100%メタンスルホン酸を用いた以外は実施例1と同様に窒化ホウ素ナノチューブ分散液を得た。動的光散乱測定から算出した窒化ホウ素ナノチューブ分散体の平均粒径サイズは410.3nmであった。この分散液をキャスト、凝固製膜することにより10cm×10cmの面積の窒化ホウ素ナノチューブから成る均一な不織布状シートを得た。シートは柔軟で屈曲性があり折り曲げることも可能であった。このシートの重さを測定したところ、目付けは50g/mであった。また走査型電子顕微鏡観察より、窒化ホウ素ナノチューブが互いに絡み合って積層した微細構造を基本とする組織から不織布が形成されていることが確認された(図3)。
[比較例1]
溶媒に98重量%硫酸の代わりに70%硫酸を用いた以外は実施例1と同様に窒化ホウ素ナノチューブ分散液を調製した。分散液を一日静置した後に観察すると、窒化ホウ素ナノチューブは溶媒と巨視的に相分離していた。また光学顕微鏡観察(200倍)では窒化ホウ素ナノチューブの凝集物が観察された。以上のことから、窒化ホウ素ナノチューブは分散液中で時々刻々凝集しており、均一な分散性を保持、安定化することができないことを確認した。また、動的光散乱測定から算出した平均粒径サイズは1545.2nmであった。この分散液をキャスト、凝固製膜することを試みたが、キャストした時点で窒化ホウ素ナノチューブが分離、凝集しており、イオン交換水中で凝固しても均一なシート状成型体を得ることができなかった。
実施例1で得られた不織布の走査型電子顕微鏡観察。 実施例2で得られた不織布の走査型電子顕微鏡観察。 実施例3で得られた不織布の走査型電子顕微鏡観察。

Claims (7)

  1. 1重量部の窒化ホウ素ナノチューブ(A)と、遊離水分含有量が5重量%以下である強酸性溶媒(B)を1〜100000重量部含有することを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
  2. 強酸性溶媒(B)が、濃硫酸、発煙硫酸、アルキルスルホン酸及び/またはそれらの混合溶媒から成ることを特徴とする請求項1記載の窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
  3. 窒化ホウ素ナノチューブの平均直径が0.4nm〜1μm、平均アスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
  4. 強酸性溶媒(B)が、濃度98〜100重量%の濃硫酸および/またはメタンスルホン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の窒化ホウ素ナノチューブ分散液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の分散液を湿式凝固し製膜せしめた後に洗浄し、次いで乾燥することにより得られる厚さ1μm以上の窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シート。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の分散液を湿式凝固し製膜せしめた後に洗浄し、次いで乾燥することを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シートの製造方法。
  7. 0.4nm〜1μm、平均アスペクト比が5以上である窒化ホウ素ナノチューブ50〜100重量%からなる厚さ1μm以上の窒化ホウ素ナノチューブ不織布状シート。
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