JP2008285789A - 全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブとからなるコンポジットファイバー - Google Patents

全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブとからなるコンポジットファイバー Download PDF

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Abstract

【課題】全芳香族ポリアミドと高純度の多層カーボンナノチューブとからなる機械特性に優れたコンポジットファイバーを提供する。
【解決手段】下記式(A)及び(B)
―NH―Ar―NH― (A)
―OC―Ar―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar、Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の構成単位から主としてなる全芳香族ポリアミド100重量部と、アーク放電法により調製され、チューブの平均直径が3〜30nm、平均層数が2〜10層かつ平均チューブ長が200nm〜10μmであり、非晶性炭素および金属の含有量の合計が1wt%以下の多層カーボンナノチューブ0.01〜20重量部から構成されるコンポジットファイバーであり、全芳香族ポリアミド中に該多層カーボンナノチューブが、凝集直径が100nm以下で分散していることを特徴とするコンポジットファイバー。
【選択図】なし

Description

本発明は、全芳香族ポリアミドと高純度の多層カーボンナノチューブとからなるコンポジットファイバーであり、全芳香族ポリアミド中に多層カーボンナノチューブが凝集することなく高度に分散し、かつ繊維軸方向に多層カーボンナノチューブが配向していることを特徴とする機械特性に優れたコンポジットファイバーに関するものである。
全芳香族ポリアミドは、剛直な芳香族環を連結させた構造をとり、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れた素材として、繊維あるいはフィルムの形態で電気絶縁材料、各種補強剤、防弾繊維等、幅広く利用されており工業的に極めて価値の高い素材の一つであるが、使用される用途に応じて樹脂に対してより高度な特性が要求されるようになってきた。
このような要求特性を満たす技術の一つとして、熱可塑性樹脂にカーボンナノチューブをナノスケールで分散させた組成物、所謂ナノコンポジットが最近注目されており、カーボンナノチューブを例えば電解、適当なせん断作用もしくはコーミングによってマトリックス中で配向させるとの記載がある(特許文献1)。
カーボンナノチューブは炭素6員環からなるグラファイトシートが円筒状を形成した物質であり、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。
カーボンナノチューブは、高電気伝導性、機械的性質や化学安定性等、これまでにない優れた特性を有しており、複合材料,半導体素子,導電材料,水素吸蔵材料などの実用化に向けた研究が進められている。
例えば、高強度、高弾性率、高導電性という特徴を生かしてポリマー中にフィラーとして添加して、機械的物性や導電性を向上させようとする試みも行われている。特に、単層カーボンナノチューブは、高いアスペクト比を有することからフィラーとして期待されている。単層カーボンナノチューブの機能を十分に発現させるためには、単層カーボンナノチューブを高度に分散させる必要がある。しかし、単層カーボンナノチューブ間に働くファンデルワールス相互作用により安定的にカーボンナノチューブを分散させることが困難であり、安定的に高度に分散させるために煩雑な操作が必要である。
これまで、単層カーボンナノチューブを液中に分散するまたは溶解するために種々の検討が行われている。例えば、強酸中で超音波処理することにより、カルボキシル基、ヒドロキシル基といった官能基を単層カーボンナノチューブの表面に付与し、脂肪族アミンやアルキルアニリンで修飾することで、有機溶媒に可溶な単層カーボンナノチューブを合成する技術を開示している。(例えば非特許文献1〜2)また、カルボキシル基を付与した単層カーボンナノチューブとアミノ基を有するクラウンエーテル、アミノ基を有するポリエチレングリコールや脂肪族アミンをイオン相互作用により修飾することにより有機溶媒に可溶な単層カーボンナノチューブを開示している。(例えば非特許文献3〜5)しかしながら、これらの技術は操作が煩雑であるばかりか、表面修飾するための前処理として強酸処理を行っているため、単層カーボンナノチューブの機械的特性や導電性が損なわれたりする問題があった。
これまで単層カーボンナノチューブと芳香族ポリアミドからなる組成物の製造法および繊維について、芳香族ポリアミドの無水硫酸溶液中にカーボンナノチューブを添加する方法を用いて検討されているが(特許文献2)、コンポジットファイバー中のカーボンナノチューブの分散、配向状態やそれが物性に及ぼす影響についての記載はなく、また繊維の機械特性に関する改善効果も不明である。
一方、多層カーボンナノチューブについては、その層数により例えば引っ張り特性、電気的特性において単層カーボンナノチューブとは異なる特性を有することが知られている。特に機械的特性においては、多層化により単層ナノチューブに比較して理論強度、弾性率が低下することが報告されている(例えば非特許文献6)。
しかしながらその一方で、多層化により単層ナノチューブのようなファンデルワールス力による凝集特性は消失し、その結果溶媒やポリマーマトリクス等への分散性が向上することが知られている。
また高純度の多層カーボンナノチューブを得る方法としてアーク放電法によるものが紹介されている(特許文献3等)。アーク放電法は、酸素その他の不純物を除去したヘリウムで満たした炉の中で黒鉛電極に放電を行うことで炭素を蒸発させ、気相反応によりカーボンナノチューブを製造する方法であり、均質かつ結晶性が高く高純度の多層カーボンナノチューブを得ることができる。
特公平8−26164号公報 WO03/085049号公報 特開2004−83384号公報 Science voi.282 95−97(1998) Adv.Mater.vol.11 834−840(1999) Nano.Lett.vol.2 1215−1218(2002) Nano.Lett.vol.3 565−568(2003) J.Phys.Chem.B vol.105 2525−2528(2001) Materials Science and Engineering A334 173−178 (2002)
本発明の目的は機械特性、特に弾性率や強度が向上した全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブとからなるコンポジットファイバー、およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アーク放電法により調製され、チューブの平均直径が3〜30nm、平均層数が2〜10層かつ平均チューブ長が200nm〜10μmであり非晶性炭素および金属の含有量の合計が1wt%以下の多層カーボンナノチューブを全芳香族ポリアミドに添加することで、多層カーボンナノチューブが高度に分散し、かつ繊維軸方向に分散した全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブからなるコンポジットファイバーが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.下記式(A)及び(B)
―NH―Ar―NH― (A)
―OC―Ar―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar、Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の構成単位から主としてなる全芳香族ポリアミド100重量部と、アーク放電法により調製され、チューブの平均直径が3〜30nm、平均層数が2〜10層かつ平均チューブ長が200nm〜10μmであり非晶性炭素および金属の含有量の合計が1wt%以下の多層カーボンナノチューブ0.01〜20重量部から構成されるコンポジットファイバーであり、全芳香族ポリアミド中に該多層カーボンナノチューブが、凝集直径が100nm以下で分散していることを特徴とするコンポジットファイバー。
2.偏光ラマン分光測定で入射レーザーを繊維の側面に繊維軸と直交方向から照射したときのカーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて下記式(1)
P=IYY/IXX (1)
(式中、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。)
で表される配向度Pが0より大きく0.15以下を満たすことを特徴とする上記に記載のコンポジットファイバー。
3.全芳香族ポリアミドが、Ar
Figure 2008285789
及び/または
Figure 2008285789
であり、Ar
Figure 2008285789
である上記に記載のコンポジットファイバー。
4.全芳香族ポリアミドが、Ar
Figure 2008285789
及び
Figure 2008285789
であり、Ar
Figure 2008285789
である共重合体であって、そのジアミン成分における上記式(a)と(b)の割合が1:0.8〜1:1.2である上記に記載のコンポジットファイバー。
5.用いられる多層カーボンナノチューブのラマン分光測定から算出したD/G値(Dバンド強度/Gバンド強度)が0.2以下であることを特徴とする上記に記載のコンポジットファイバー。
6.多層カーボンナノチューブと分散溶媒とを混合して混合液を得る工程、ついで混合液中に少量の全芳香族ポリアミドを添加して多層カーボンナノチューブ分散液を調製する工程、ついで分散液中に全芳香族ポリアミドを添加して全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブからなる紡糸用溶液を得る工程、ついでその溶液から紡糸する工程を有することを特徴とする上記に記載のコンポジットファイバーの製造方法。
本発明で得られる全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブからなるコンポジットファイバーは、多層カーボンナノチューブが凝集することなしに微細かつ高度にコンポジットファイバー中に分散し、かつ繊維軸方向に多層カーボンナノチューブが高度に配向している事により機械特性、とくに弾性率や引っ張り強度、伸度に優れている。
以下、本発明について詳述する。
(多層カーボンナノチューブについて)
本発明において使用する多層カーボンナノチューブとは、平均直径が3−30nm、平均層数が2〜10層かつ平均チューブ長が200nm〜10μmのカーボンからなるチューブ状材料であり、理想的な構造としては炭素の6角網目の面(グラフェンシート)がチューブ軸に平行に管を形成し、二〜十重管になっているものである。このサイズ領域にある多層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブと異なり、チューブ間に働くファンデルワールス力が小さいため凝集力が低減し、溶媒およびポリマー中への分散に有利であること加えて、チューブサイズ的にもポリマーマトリクス中で欠陥として作用することなくナノフィラーとして分散できるため強化用途に最適である。チューブサイズ、特に直径がこれより大きいと全芳香族ポリアミドとのコンポジットを作製した場合、界面の接着力が不十分であり、バルク異物として作用する恐れがあり、十分な補強効果も得られないため好ましくない。多層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブに比較してチューブ間に働くファンデルワールス力が小さく、溶媒中およびポリマー中に分散させる点で好ましい。また、多層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブとは異なり、多重管からなるので表面処理を施し万が一最外層のチューブが損傷を受けても内部のチューブまで影響を受けることが少ないため好ましい。また、同様の理由で機械的耐久性および耐熱性の観点からも多層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブよりも好ましいことが知られている。
上記の薄層カーボンナノチューブの従来公知の製法として 上記の多層カーボンナノチューブの従来公知の製法としては、アーク放電法を好適に用いることができる。一般的なカーボンナノチューブの製造方法としては上記以外にも炭素化合物を高温下で触媒金属微粒子に接触させて熱分解する化学気相成長法(CVD法)、プラズマ合成法や固相反応法およびレーザー蒸発法が知られているが、本発明に用いられる多層カーボンナノチューブの製造方法としてはアーク放電法によるものに限る。従来より一般的な樹脂材料の改質にはCVD法により得られる多層カーボンナノチューブを用いていたが、改良により純度を高めたとしてもCVD法は若干の金属その他の不純物の混在が避けられない。本発明者らは、鋭意検討の結果、特に全芳香族ポリアミド繊維のような高性能素材については、わずかな不純物の混在であっても物性改良効果に大きく影響を与えるため好ましくないとの事実を見出し、その結果、最も不純物の影響を受けず、ナノチューブのサイズ的にも補強用途に最適な領域でコントロールが可能かつ生産プロセスとしても実施可能なアーク放電法による多層カーボンナノチューブが最適な素材であることを確認した。
アーク放電法は、酸素その他の不純物を除去したヘリウムで満たした炉の中で黒鉛電極に放電を行うことで炭素を蒸発させ、気相反応によりカーボンナノチューブを製造する方法であり、均質かつ結晶性が高く高純度の多層カーボンナノチューブを得ることができる。反応条件により金属や非晶性炭素といった不純物を殆ど含有すること無しに、2〜10層程度のナノオーダーの直径を有する均質なカーボンナノチューブが選択的に調製可能であることから、本発明の目的にはアーク放電法により調製された多層カーボンナノチューブが好適に使用される。
また、本発明において使用する多層カーボンナノチューブは、不純物としてのフラーレン、活性炭、カーボンブラック、非晶質カーボン、金属等の含有量の合計が1wt%以下である。これらの含有量が1wt%以上になると凝集物としての欠陥点として作用する恐れがあり好ましくない。不純物の合計量としては0.5wt%以下であることが好ましく、0.3wt%以下であることがより好ましい。
また、本発明で使用される多層カーボンナノチューブは、ラマン散乱測定から算出したDバンドとGバンドの強度比(D/G)が、0.2以下であることが好ましく、さらには0.15以下であることが好ましい。D/Gの値が0.2よりも大きい場合は、アモルファスカーボン等不純物が含まれているか、あるいは多層カーボンナノチューブに欠陥構造が多いために好ましくはない。
本発明において、多層カーボンナノチューブは、例えば上記に記載したとおりアーク放電法により合成された多層カーボンナノチューブを使用することができる。また、場合に応じては分散性を更に向上させる目的で、従来公知の方法にて強酸処理や化学修飾を施した後に該多層カーボンナノチューブを使用することも好ましく実施できる。先述の通り、多層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブと異なり、最外層が処理の過程で損傷を受けても内層は構造を維持するため、機械的な特性低下が少ないためである。
(全芳香族ポリアミドについて)
本発明のコンポジットファイバーにおける全芳香族ポリアミドは、実質的に下記式(A)及び(B)
―NH―Ar―NH― (A)
―OC―Ar―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar,Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の2つの構成単位が交互に繰り返された構造からなる全芳香族ポリアミドである。
上記Ar,Arは、各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基であるが、その具体例としては、メタフェニレン基、パラフェニレン基、オルトフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ジフェニレンスルフィド基、4,4’−ジフェニレンスルホン基、4,4’−ジフェニレンケトン基、4,4’−ジフェニレンエーテル基、3,4’−ジフェニレンエーテル基、メタキシリレン基、パラキシリレン基、オルトキシリレン基等が挙げられる。
これら芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。なお、上記式(A)及び/又(B)の構成単位が、2種以上の芳香族基からなる共重合体であっても差し支えない。
これらのうち、Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、3,4’−ジフェニレンエーテル基が好ましく、パラフェニレン基、またはパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用したものがさらに好ましく、パラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用した場合にはそのモル比が1:0.8〜1:1.2の範囲にあることがさらに好ましい。
Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好ましく、パラフェニレン基がさらに好ましい。
すなわち本発明において好適に用いられるものとして具体的には、Arがパラフェニレン基及び3,4’−ジフェニレンエーテル基であり、Arがパラフェニレン基である共重合体であって、その共重合比(Arのパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基のモル比)が1:0.8〜1:1.2の範囲にある全芳香族ポリアミド、およびArとArがともにパラフェニレン基である全芳香族ポリアミドを挙げることが出来る。
すなわち全芳香族ポリアミドとして、Ar
Figure 2008285789
及び/または
Figure 2008285789
であり、Ar
Figure 2008285789
であるもの、およびAr
Figure 2008285789
及び
Figure 2008285789
であり、Ar
Figure 2008285789
である共重合体であって、そのジアミン成分における上記式(a)と(b)の割合が1:0.8〜1:1.2であるものが好ましい。
これらの全芳香族ポリアミドは溶液重合法、界面重合法、溶融重合法など従来公知の方法により製造する事が出来る。重合度は芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分の比率によりコントロールすることが出来、得られるポリマーの分子量としては98重量%濃硫酸に0.5g/100mLの濃度で溶かした溶液を30℃にて測定した特有粘度(inherent viscosity)ηinhが0.05〜20dL/gであることが好ましく、1.0〜10dL/gであることがより好ましい。
(組成)
本発明のコンポジットファイバーの組成としては全芳香族ポリアミド100重量部に対して、多層カーボンナノチューブが0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。多層カーボンナノチューブが0.01重量部未満であると機械特性の向上の効果が観察されにくく、20重量部より上のものは多層カーボンナノチューブの分散性が低下する。
(分散性について)
本発明ではコンポジットファイバー中の多層カーボンナノチューブが、凝集直径が100nm以下で分散していることを特徴とする。本発明において多層カーボンナノチューブの分散性は繊維軸と平行に切断した繊維断面を直接TEM等の電子顕微鏡で観察することができる。
(配向、及び配向方法について)
本発明ではコンポジットファイバー中の多層カーボンナノチューブが、繊維軸方向に配向していることを特徴とする。かかる多層カーボンナノチューブの配向性は繊維軸と平行に切断した繊維断面を直接TEM等の電子顕微鏡で観察する他に、偏向ラマン分光測定により評価する。
偏光ラマン分光測定とは入射レーザーを繊維の側面に繊維軸と直交方向から照射したときの多層カーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて下記式(1)
P=IYY/IXX (1)
(式中、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。)
で表される配向度Pにて配向性を評価する方法である。本発明では配向度Pが0以上0.2以下を満たすことが好ましい。
配向度Pはナノチューブが繊維軸方向に平行に配向したときにP=0に漸近し,ランダムな配向ではP=1となる。Pの値の上限としてより好ましくは0.2、さらに好ましくは0.1であり、0に近いほど好ましい。Pの値が0.2を超えると多層カーボンナノチューブの配向が不十分であるため好ましくない。
多層カーボンナノチューブおよび全芳香族ポリアミドの繊維軸方向への配向方法としては全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブからなる混合溶液から紡糸する際、流動配向、液晶配向、せん断配向、又は延伸配向させる事等が挙げられる。得られた繊維組成物をさらに延伸配向させることにより多層カーボンナノチューブの配向係数を上昇させる事も本発明のコンポジットファイバーを得るうえでさらに好ましい。配向度Pの減少度としては、0.01以上好ましくは0.05さらには0.1以上が好ましい。
(コンポジットファイバー)
本発明のコンポジットファイバーは単繊維径は0.01〜1000dtexである。好ましくは、0.1から500dtexである。
(コンポジットファイバーの製造法)
本発明のコンポジットファイバーの製造法としては、全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブの混合溶液を調製し、その混合溶液から紡糸する方法が好ましい。
混合溶液を調製する方法としては、例えば、1)全芳香族ポリアミドの溶液に、固体のカーボンナノチューブを添加する。2)全芳香族ポリアミド溶液とカーボンナノチューブの溶媒分散液とを混合する。3)カーボンナノチューブの溶媒分散液に固体の全芳香族ポリアミドを添加する。4)カーボンナノチューブの溶媒分散液中で、全芳香族ポリアミドのIn-situ重合を行う等の方法が知られている。しかし、混合溶液内で多層カーボンナノチューブが均一に分散していることが、多層カーボンナノチューブの配向つまりはコンポジットファイバーの機械物性向上のためには重要である。その観点からは紡糸用混合溶液の調製方法として上記2)の多カーボンナノチューブの溶媒分散液を作製し、全芳香族ポリアミド溶液と混合する方法が好ましい。
しかし、単に多層カーボンナノチューブの溶媒分散液と前芳香族ポリアミド溶液とを混合するだけでは、分散性に優れた紡糸用混合溶液を得ることは困難である。
そこで本発明者らは、多層カーボンナノチューブ分散液の分散性を向上させる方法として、多層カーボンナノチューブ溶媒分散液に少量の全芳香族ポリアミドを分散剤として添加し、分散させることで飛躍的に多層カーボンナノチューブの分散性が向上することを見出した。
すなわち、多層カーボンナノチューブと分散溶媒とを混合して混合液を得る工程、ついで混合液中に少量の全芳香族ポリアミドを添加して多層カーボンナノチューブ分散液を調製する工程、ついで分散液中に全芳香族ポリアミドを添加して全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブからなる紡糸用溶液を得る工程、その溶液から紡糸する工程により、本発明のコンポジットファイバーを好ましく製造することができる。
以下本発明のコンポジットファイバーの製造方法について詳述する。
分散溶媒は、ポリマーおよび多層カーボンナノチューブ双方を高度に分散させることが容易な極性有機溶媒であれば特に限定されるものではない。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等、100%硫酸、りん酸、ポリりん酸、メタンスルホン酸等の酸溶媒が挙げられる。これらの液体は単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。これらの分散媒は、多層カーボンナノチューブを分散させるのに好ましい液体である。また、分散性を阻害しない範囲において水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールといった1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールといった2価アルコール、グリセリンといった3価アルコール、アセトンといったケトン類、テトラヒドロフランといった環状エーテル、1,2−ジクロロベンゼンといったハロゲン化芳香族炭化水素、クロロホルムといったハロアルカン、1−メチルナフタレンといった置換複素環化合物を含んでいてもさしつかえない。
多層カーボンナノチューブを分散媒に混合する際には、特に限定されないが超音波や各種攪拌方法を用いることができる。攪拌方法としては、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ボールミル等の攪拌方法も使用することができる。中でも超音波処理装置が好ましい。
多層カーボンナノチューブの分散媒に対する濃度は特に限定されるものではないが、濃度が薄すぎると利用価値が低く、濃度が高すぎると多層カーボンナノチューブの分散性が低下することもあるので、0.001〜2重量%が好ましく、0.005〜1重量%がより好ましい。
本発明において、少量の全芳香族ポリアミドを分散剤として添加するによって多層カーボンナノチューブ分散液の分散性が極めて向上する。
本発明において分散剤として用いられる全芳香族ポリアミドは、実質的に下記式(A)及び(B)
―NH―Ar―NH― (A)
―OC―Ar―CO― (B)
(上記一般式(A)、(B)において、Ar、Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
の2つの構成単位が交互に繰り返された構造からなる全芳香族ポリアミドである。
上記Ar、Arは、各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基であるが、その具体例としては、メタフェニレン基、パラフェニレン基、オルトフェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ジフェニレンスルフィド基、4,4’−ジフェニレンスルホン基、4,4’−ジフェニレンケトン基、4,4’−ジフェニレンエーテル基、3,4’−ジフェニレンエーテル基、メタキシリレン基、パラキシリレン基、オルトキシリレン基等が挙げられる。
これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。なお、上記式(A)及び/又(B)の構成単位が、2種以上の芳香族基からなる共重合体であっても差し支えない。
これらのうち、Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、3,4’−ジフェニレンエーテル基が好ましく、パラフェニレン基、またはパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用したものがさらに好ましく、パラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基とを併用した場合にはそのモル比が1:0.8〜1:1.2の範囲にあることがさらに好ましい。
Arはメタフェニレン基、パラフェニレン基、が好ましく、パラフェニレン基がさらに好ましい。
すなわち本発明において好適に用いられるものとして具体的には、Arがパラフェニレン基及び3,4’−ジフェニレンエーテル基であり、Arがパラフェニレン基である共重合体であって、その共重合比(Arのパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基のモル比)が1:0.8〜1:1.2の範囲にある全芳香族ポリアミド、およびArとArがともにパラフェニレン基である全芳香族ポリアミドを挙げることが出来る。
これらの全芳香族ポリアミドは溶液重合法、界面重合法、溶融重合法など従来公知の方法にて製造する事が出来る。重合度は芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分の比率によりコントロールすることが出来、得られるポリマーの分子量としては98重量%濃硫酸に0.5g/100mLの濃度で溶かした溶液を30℃にて測定した特有粘度(inherent viscosity)ηinhが0.05〜20dL/gであることが好ましく、1.0〜10dL/gの間に有るものがより好ましい。
また、本発明において、分散剤として用いられる全芳香族ポリアミドは、コンポジットファイバーの構成要素である全芳香族ポリアミドと同じであることが好ましい。
分散剤としての全芳香族ポリアミドの使用量としては多層カーボンナノチューブに対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.2〜20重量%であることがより好ましい。
本発明において、多層カーボンナノチューブの混合液に、全芳香族ポリアミドを添加する方法として、固体の状態で添加する方法、または分散剤を溶解する溶媒に溶解した溶液の状態で添加する方法が挙げられる。分散剤溶液で添加する場合においては、使用する溶媒として特に限定はされないが、多層カーボンナノチューブを分散させるのに使用している分散媒と同種であることが好ましい。
混合液中に全芳香族ポリアミドを添加して多層カーボンナノチューブ分散液を調製する方法としては、特に限定はされないが超音波や各種攪拌方法を用いることができる。攪拌方法としては、ホモジナイザーのような高速攪拌やアトライター、ボールミル等の攪拌方法も使用することができる。なかでも超音波処理を行うことが好ましい。
このように本発明において全芳香族ポリアミドを分散剤として添加することで、分散性の向上、分散している状態が保持、安定化し、分散性に優れた多層カーボンナノチューブ分散液を得ることができる。これらの作用機構については、明らかではないが分散している多層カーボンナノチューブの間に凝集抑制作用のある分散剤が均一に挿入された状態であり、多層カーボンナノチューブ間のπ電子相互作用、双極子―双極子相互作用などの分子間相互作用を抑制し、凝集を回避しているものと推定される。
得られた多層カーボンナノチューブ分散液を濃縮することにより、分散性を保持したまま高濃度の多層カーボンナノチューブ分散液を得ることも可能である。
次いで多層カーボンナノチューブ分散液と全芳香族ポリアミド溶液とを混合することにより、紡糸用混合溶液を作製することができる。
多層カーボンナノチューブ分散液と全芳香族ポリアミド溶液とを混合する方法としては、特に限定はされないが、超音波や各種攪拌方法を使用することができる。
紡糸用混合溶液からの紡糸方法は、湿式、乾式、乾式湿式の併用いずれを用いても良い。前述したように紡糸工程において、流動配向、液晶配向、せん断配向、又は延伸配向させる事により全芳香族ポリアミドおよび多層カーボンナノチューブの配向を高め機械特性を向上させる事が出来る。
全芳香族ポリアミドが例えば、Arがパラフェニレン基及び3,4’−ジフェニレンエーテル基でありArがパラフェニレン基であって、その共重合比(Arのパラフェニレン基と3,4’−ジフェニレンエーテル基のモル比)が1:0.8〜1:1.2の範囲にある共重合全芳香族ポリアミドの場合は、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒を混合溶媒として乾湿式紡糸を行った後、高温下、高倍率で延伸配向させることによりコンポジットファイバーを得ることが出来る。かかる際の好ましい延伸倍率としては2〜40倍、より好ましくは5〜30倍であるが、最大延伸倍率(MDR)になるべく近づけて延伸することが機械物性の面で望ましい。好ましい延伸配向時の温度としては100℃〜800℃、より好ましくは200℃〜600℃である。また全芳香族ポリアミドが例えば、ArとArがともにパラフェニレン基であるポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の場合は、100%硫酸、りん酸、ポリりん酸、メタンスルホン酸等の酸溶媒を混合溶媒として、液晶紡糸によりコンポジットファイバーを得ることが出来る。液晶紡糸では通常、高いドラフト比でキャップから溶液を紡糸することにより配向させることができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。また比較例として用いた多層カーボンナノチューブはシンセンナノテクポート社製のMWNT(直径60〜100nm)である。
(1)コンポジットファイバー中の多層カーボンナノチューブの凝集直径:EFI社製TECNAI12 BIO TWINを用いて繊維軸と平行に切断した繊維断面(倍率:10万倍)を用いて4μmの範囲での凝集直径を直接観察することにより評価した。また合成したカーボンナノチューブについては、チューブ自身を銅グリッド状に乗せ、10万倍の視野4μmの範囲でのチューブ及び非晶質炭素など非チューブ状不純物の数を直接観察することでその比率を評価した。
(2)偏向ラマン分光測定:ラマン分光装置は,顕微レーザーラマン分光測定装置(堀場ジョバンイボン製LabRamHR)を用いた。励起レーザー光源として波長785nmの半導体レーザーを用い,レーザービーム径は約1μmに集光した。かかる装置を使い、以下のようにして偏光ラマン分光測定を行なった。入射レーザーを繊維組成物の側面に繊維軸と直交方向から照射して多層カーボンナノチューブのラマンスペクトルを測定する際、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のラマンシフト波数1580cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド強度(IXX),レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度(IYY)を測定した。
(3)ラマン分光測定:ラマン分光装置は,顕微レーザーラマン分光測定装置(堀場ジョバンイボン製T64000)を用いた。励起レーザー光源として波長514.5nmのArイオンレーザーを用い,レーザービーム径は約1μmに集光した。D/Gの値はラマンシフト波数1360cm−1付近のディスオーダー構造由来のDバンド強度とラマンシフト波数1580cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド強度から算出した。
(4)繊維の機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aを用いて、得られた繊維の単糸での引張り試験を行い、弾性率および強度を求めた。
[参考例1](多層カーボンナノチューブの合成)
金属陽極電極として外径40mm、内径10mmの銅製中空電極を用い、大気圧下・大気雰囲気中にて8リットル/分の流量で4vol%の水素を含有するアルゴンガスを送給しながら電極内部の孔から黒鉛陰極電極に向けて電流150A、電圧30V(アーク長約4mm)にて2分間アーク放電を行った。放電後、陰極中央部に堆積した生成物を採取することにより高純度の多層カーボンナノチューブ15mgを得た。TEM観察よりこのカーボンナノチューブは平均層数8、平均チューブ直径20nmおよび平均チューブ長が2μmであり、チューブ以外の炭素成分は形態的に確認されなかった。更に元素分析、ラマン分析を行うことで、D/G=0.11であり、TEM観察によるナノチューブ形態観察の結果と併せて考慮すると非晶質炭素をほとんど含有しない高結晶の多層カーボンナノチューブであることが確認された。また元素分析の結果、金属含有量は0.1wt%以下であり、カーボンナノチューブとしての純度も非常に高いことが確認された。該放電操作を繰り返すことにより、実施例での使用に必要な量の多層カーボンナノチューブを調製した。
[参考例2]アラミド樹脂溶液の作成
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコに、脱水精製したNMP2152g、p−フェニレンジアミン27.04g及び3、4’―ジアミノジフェニルエーテル50.06gを常温下で添加し窒素中で溶解した後、氷冷し攪拌しながらテレフタル酸ジクロリド101.51gを添加した。その後徐々に昇温して最終的に80℃、60分反応させたところで水酸化カルシウム37.04gを添加して中和反応を行い、NMPのアラミド樹脂溶液を得た。得られたドープを水にて再沈殿することにより得たアラミド樹脂の濃度0.5g/100mLの濃硫酸溶液を30℃で測定した特有粘度は3.6dL/gであった。
[実施例1]
NMP30gに参考例1にて調製した多層カーボンナノチューブ0.1gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この多層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例2で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む多層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、多層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに多層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド99重量部/多層カーボンナノチューブ1重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から100nmを超える薄層カーボンナノチューブの凝集物は観察されなかった。偏向ラマン分光測定から配向係数Pは0.10であった。ファイバーの単繊維径は1.6dtex、弾性率は85.8GPa、強度は27.50cN/dtexであった。
[実施例2]
NMP30gに参考例1にて調製した多層カーボンナノチューブ0.05gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この多層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例2で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む多層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、多層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに多層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド99.5重量部/多層カーボンナノチューブ0.5重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から100nmを超える薄層カーボンナノチューブの凝集物は観察されなかった。偏向ラマン分光測定から配向係数Pは0.10であった。ファイバーの単繊維径は1.6dtex、弾性率は84.5GPa、強度は26.30cN/dtexであった。
[比較例1]
NMP30gに多層カーボンナノチューブ(MWNT 外径40〜60nm 、D/G1.015、シンセンナノテクポート社製)0.1gを加え、発振周波数38kHzの超音波により8時間超音波処理を行った。この多層カーボンナノチューブNMP混合液に、参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液1.67gを分散剤として加えて温度0℃で4時間超音波処理することにより、アラミド樹脂を少量含む多層カーボンナノチューブ分散液を調製した。アラミド樹脂溶液を添加することにより、多層カーボンナノチューブの分散性は飛躍的に向上した。さらに多層カーボンナノチューブ分散液にアラミド樹脂溶液を少しずつ攪拌しながら添加して均一な全芳香族ポリアミド100重量部/多層カーボンナノチューブ1重量部からなるポリマー濃度5重量%の紡糸用混合溶液を調製した。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,コンポジットファイバーを得た。コンポジットファイバーのTEM縦断面測定から200nmを超える多層カーボンナノチューブの凝集物が観察された。また、多層カーボンナノチューブとポリマーとの界面でクラックが発生していることが確認された。ファイバーの単繊維径は1.7dtex、弾性率は69.9GPa、強度は21.60cN/dtexであった。
[比較例2]
参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液245gに、さらにNMP55gを加えて温度80℃で4時間攪拌することにより、実施例1とほぼ同じポリマー濃度であるカーボンナノチューブを含まないアラミド樹脂溶液を得た。かくして得られたポリマードープを孔径0.3mm、L/D=1、孔数5個のキャップを用いて、シリンダー温度50℃にてNMP30重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3m/分にて押出した。キャップ面と凝固浴面との距離は10mmとした。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、120℃の乾燥ローラーで乾燥後、500℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.9倍の倍率(15.3倍)で延伸を行い,ファイバーを得た。ファイバーの単繊維径は1.7dex、弾性率は76.1GPa、強度は23.70cN/dtexであった。

Claims (6)

  1. 下記式(A)及び(B)
    ―NH―Ar―NH― (A)
    ―OC―Ar―CO― (B)
    (上記一般式(A)、(B)において、Ar、Arは各々独立に炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わす。)
    の構成単位から主としてなる全芳香族ポリアミド100重量部と、アーク放電法により調製され、チューブの平均直径が3〜30nm、平均層数が2〜10層かつ平均チューブ長が200nm〜10μmであり、非晶性炭素および金属の含有量の合計が1wt%以下の多層カーボンナノチューブ0.01〜20重量部から構成されるコンポジットファイバーであり、全芳香族ポリアミド中に該多層カーボンナノチューブが、凝集直径が100nm以下で分散していることを特徴とするコンポジットファイバー。
  2. 偏光ラマン分光測定で入射レーザーを繊維の側面に繊維軸と直交方向から照射したときのカーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて下記式(1)
    P=IYY/IXX (1)
    (式中、レーザー偏光面を繊維軸と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を繊維軸と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。)
    で表される配向度Pが0より大きく0.15以下を満たすことを特徴とする請求項1に記載のコンポジットファイバー。
  3. 全芳香族ポリアミドが、Ar
    Figure 2008285789
    及び/または
    Figure 2008285789
    であり、Ar
    Figure 2008285789
    である請求項1または2に記載のコンポジットファイバー。
  4. 全芳香族ポリアミドが、Ar
    Figure 2008285789
    及び
    Figure 2008285789
    であり、Ar
    Figure 2008285789
    である共重合体であって、そのジアミン成分における上記式(a)と(b)の割合が1:0.8〜1:1.2である請求項3に記載のコンポジットファイバー。
  5. 用いられる多層カーボンナノチューブのラマン分光測定から算出したD/G値(Dバンド強度/Gバンド強度)が0.2以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のコンポジットファイバー。
  6. 多層カーボンナノチューブと分散溶媒とを混合して混合液を得る工程、ついで混合液中に少量の全芳香族ポリアミドを添加して多層カーボンナノチューブ分散液を調製する工程、ついで分散液中に全芳香族ポリアミドを添加して全芳香族ポリアミドと多層カーボンナノチューブからなる紡糸用溶液を得る工程、ついでその溶液から紡糸する工程を有することを特徴とする請求項1〜5に記載のコンポジットファイバーの製造方法。
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