JP2013166849A - ポリスルホン組成物の製造方法及び成形体の製造方法 - Google Patents

ポリスルホン組成物の製造方法及び成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的強度に優れ、半導電性を有する成形体の製造に好適なポリスルホン組成物と前記成形体の製造方法の提供。
【解決手段】ポリスルホンと、下記(A)の要件を満たすナノ構造中空炭素材料とを含有するポリスルホン組成物の製造方法であって、前記ポリスルホン85〜99質量部と、前記ナノ構造中空炭素材料1〜15質量部とを、1000〜9000/秒のせん断速度で溶融混練する工程を有することを特徴とするポリスルホン組成物の製造方法;かかる製造方法でポリスルホン組成物を得、このポリスルホン組成物を成形することを特徴とする成形体の製造方法。
(A)ナノ構造中空炭素材料が、炭素部及び中空部を有し、前記中空部の一部又は全体が前記炭素部により囲まれた構造を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリスルホン組成物の製造方法及び成形体の製造方法に関する。
10〜1012Ωmの体積固有抵抗値を有する半導電性樹脂は、帯電防止性、塵埃吸着防止性等の機能を生かして、電子写真複写機や静電記録装置等の画像形成装置における帯電ロール、帯電ベルト及び除電ベルト、並びに半導体部品を搬送する容器等の材料に使用されている。
電気絶縁性である樹脂に半導電性を付与する方法としては、金属、炭素繊維、カーボンブラック等の導電性物質を混合する方法が挙げられるが、半導電性を付与するためには、多量の導電性物質を混合する必要がある。
一方で、ポリスルホンは、高いガラス転移温度(Tg)を示すことから、その成形体は、高い耐熱性を有すると共に、低温から高温までの幅広い温度領域において、寸法安定性及び機械的強度に優れ、さらに耐薬品性にも優れている。そのため、ポリスルホンは、リレー部品、コイルボビン、スイッチ、IC(Integrated Circuit)ソケット、コネクター、ヒューズケース等の電気電子部品をはじめ、耐熱塗料等の耐熱性材料、各種OA(Office Automation)機器部品、各種自動車部品、医療機器部品、機能性分離膜、航空機部品等の幅広い用途で使用されている。そして、このように有用性が高いポリスルホンにも、半導電性を付与することが望まれる場合がある。
しかし、ポリスルホンに前記従来の方法により半導電性を付与しようとすると、多量の導電性物質の混合により、これらを含有するポリスルホン組成物は成形加工性が低下し、得られる成形体はポリスルホン本来の機械的強度が低下してしまうという問題点があった。また、導電性物質の分散性が不十分である場合には、得られるポリスルホン組成物が半導電性を示し難いという問題点があった。
これに対して、熱可塑性樹脂に導電性のナノ構造中空炭素材料を少量添加する技術が開示されている(特許文献1参照)。
特開2010−7067号公報
しかし、特許文献1で開示されている技術も含め、ポリスルホンと導電性物質を含有するポリスルホン組成物から、機械的強度に優れ、半導電性を有する成形体を得る方法は、これまでに無いのが実情であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、機械的強度に優れ、半導電性を有する成形体の製造に好適なポリスルホン組成物と前記成形体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、ポリスルホンと、下記(A)の要件を満たすナノ構造中空炭素材料とを含有するポリスルホン組成物の製造方法であって、前記ポリスルホン85〜99質量部と、前記ナノ構造中空炭素材料1〜15質量部とを、1000〜9000/秒のせん断速度で溶融混練する工程を有することを特徴とするポリスルホン組成物の製造方法を提供する。
(A)ナノ構造中空炭素材料が、炭素部及び中空部を有し、前記中空部の一部又は全体が前記炭素部により囲まれた構造を有する。
本発明のポリスルホン組成物の製造方法においては、前記ナノ構造中空炭素材料の前記炭素部の厚みが1〜100nmであり、前記中空部の径が0.5〜90nmであることが好ましい。
本発明のポリスルホン組成物の製造方法においては、前記ナノ構造中空炭素材料が、下記工程(1)、(2)、(3)及び(4)をこの順に有する方法で得られたものであることが好ましい。
(1)テンプレート触媒ナノ粒子を製造する工程。
(2)前記テンプレート触媒ナノ粒子の存在下、炭素材料前駆体を重合させ、前記テンプレート触媒ナノ粒子の表面に炭素材料中間体を形成させる工程。
(3)前記炭素材料中間体を炭化させて、ナノ構造複合材料を製造する工程。
(4)前記ナノ構造複合材料から、前記テンプレート触媒ナノ粒子を除去して、ナノ構造中空炭素材料を製造する工程。
本発明のポリスルホン組成物の製造方法においては、前記ポリスルホンと前記ナノ構造中空炭素材料との溶融混練を、帰還型スクリューを備えたせん断成形加工機により行うことが好ましい。
本発明のポリスルホン組成物の製造方法においては、前記ポリスルホンが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記式(11)で表される繰返し単位を80モル%以上有することが好ましい。
(11)−Ph11−SO−Ph21−O−
(式中、Ph11及びPh21はそれぞれp−フェニレン基であり、前記p−フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
また、本発明は、上記本発明の製造方法でポリスルホン組成物を得、このポリスルホン組成物を成形することを特徴とする成形体の製造方法を提供する。
本発明によれば、機械的強度に優れ、半導電性を有する成形体の製造に好適なポリスルホン組成物と前記成形体の製造方法が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、ポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)と、スルホニル基(−SO−)と、酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。
ポリスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、さらに、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)や、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
(1)−Ph−SO−Ph−O−
(式中、Ph及びPhはそれぞれ独立にフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
(2)−Ph−R−Ph−O−
(式中、Ph及びPhはそれぞれ独立にフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rはアルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子である。)
(3)−(Ph−O−
(式中、Phはフェニレン基であり、前記フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数であり、nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
Ph〜Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、p−フェニレン基であることが好ましい。
前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記フェニレン基の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に好ましくは2個以下、より好ましくは1個である。
Rである前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1〜5である。
ポリスルホンは、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、繰返し単位(1)を50モル%以上有することが好ましく、80モル%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(1)のみを有することがさらに好ましい。なお、ポリスルホンは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
ポリスルホンが有する好ましい繰返し単位(1)の例としては、下記式(11)で表されるものが挙げられる。そして、本発明において好ましいポリスルホンの例としては、ポリスルホンを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記式(11)で表される繰返し単位を80モル%以上有するものが挙げられる。
(11)−Ph11−SO−Ph21−O−
(式中、Ph11及びPh21はそれぞれp−フェニレン基であり、前記p−フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
Ph11及びPh21はそれぞれp−フェニレン基であり、隣接する基(原子)との結合位置が特定されている点以外は、上記のPh及びPhと同じである。
ポリスルホンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリスルホンは、これを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。例えば、繰返し単位(1)を有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある。)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
(4)X−Ph−SO−Ph−X
(式中、X及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子である。Ph及びPhは、前記と同義である。)
(5)HO−Ph−SO−Ph−OH
(式中、Ph及びPhは、前記と同義である。)
(6)HO−Ph−R−Ph−OH
(式中、Ph、Ph及びRは、前記と同義である。)
(7)HO−(Ph−OH
(式中、Ph及びnは、前記と同義である。)
化合物(4)において、X及びXは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、前記フェニレン基の水素原子を置換していてもよいハロゲン原子と同じものが挙げられる。
ポリスルホンを製造するときの重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。
前記炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸アルカリであってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ)であってもよいし、正塩及び酸性塩の混合物であってもよい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましい。
前記溶媒としては、非プロトン性溶媒が好ましく、なかでもジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等の有機極性溶媒が好ましい。
ポリスルホンは、その還元粘度が、好ましくは0.3dL/g以上、より好ましくは0.3〜0.6dL/g、さらに好ましくは0.3〜0.5dL/gである。ポリスルホンは、還元粘度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
ポリスルホンを製造するときの重縮合において、仮に副反応が生じなければ、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比が1:1に近いほど、炭酸のアルカリ金属塩の使用量が多いほど、重縮合温度が高いほど、また、重縮合時間が長いほど、得られるポリスルホンの重合度が高くなり易く、還元粘度が高くなり易い。しかし、実際には、副生する水酸化アルカリ等により、ハロゲノ基のヒドロキシル基への置換反応や解重合等の副反応が生じ、この副反応により、得られるポリスルホンの重合度が低下し易く、還元粘度が低下し易い。したがって、この副反応の度合いも考慮して、所望の還元粘度を有するポリスルホンが得られるように、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比、炭酸のアルカリ金属塩の使用量、重縮合温度及び重縮合時間を調整することが好ましい。
また、ポリスルホンとしては、例えば、住友化学社製の「スミカエクセルPES3600P」及び「スミカエクセルPES4100P」、並びにソルベイアドバンストポリマーズ社製の「UDEL P−1700」等の市販品も使用できる。なお、ポリスルホンとしては、末端基が−Cl、−OH、又は−OR(式中、Rはアルキル基である。)等であるものが挙げられる。
本発明において、ナノ構造中空炭素材料は、ナノサイズ(例えば、その外径が0.5nm〜1μm程度)であり、炭素部及び中空部を有し、下記(A)の要件を満たす。
(A)ナノ構造中空炭素材料が、炭素部及び中空部を有し、前記中空部の一部又は全体が前記炭素部により囲まれた構造を有する。
このような構造としては、一様な炭素部(複数の炭素部が連結されたり、塊状となっていない)によって、中空部の一部又は全体が囲まれた構造や、連結された複数の炭素部又は塊状となった複数の炭素部によって、中空部の一部又は全体が囲まれた構造を例示できる。
さらに、本発明の効果をより高めるために、前記ナノ構造中空炭素材料は、下記(B)、(C)の要件を満たすことが好ましい。
(B)ナノ構造中空炭素材料の炭素部の厚みが、1〜100nmである。
(C)ナノ構造中空炭素材料の中空部の径が、0.5〜90nmである。
また、本発明において、ナノ構造中空炭素材料は、その炭素部が多層状であってもよく、例えば、下記(D)の要件を満たしていてもよい。
(D)ナノ構造中空炭素材料の炭素部が、2〜200層(製造面で好ましいのは2〜100層である)からなる多層状の構造である。
本発明において、ナノ構造中空炭素材料は、下記工程(1)、(2)、(3)及び(4)をこの順に有する方法で得られたものが好ましい。
(1)テンプレート触媒ナノ粒子を製造する工程。
(2)前記テンプレート触媒ナノ粒子の存在下、炭素材料前駆体を重合させ、前記テンプレート触媒ナノ粒子の表面に炭素材料中間体を形成させる工程。
(3)前記炭素材料中間体を炭化させて、ナノ構造複合材料を製造する工程。
(4)前記ナノ構造複合材料から、前記テンプレート触媒ナノ粒子を除去して、ナノ構造中空炭素材料を製造する工程。
以下、前記工程(1)、(2)、(3)及び(4)について、具体的に説明する。
工程(1)において、テンプレート触媒ナノ粒子は、例えば、以下のようにして製造される。
1種又は複数種の触媒前駆体と、1種又は複数種の分散剤とを、反応又は結合させて、触媒複合体を形成させる。一般的には、触媒前駆体と分散剤とを適当な溶媒に溶解させて触媒溶液を調製するか、又は触媒前駆体と分散剤とを適当な溶媒に分散させて触媒懸濁液を調製し、触媒前駆体と分散剤とを結合させることにより、前記触媒複合体が形成される。
前記触媒前駆体としては、後述の炭素材料前駆体の重合及び/又は炭素材料中間体の炭化を促進するものであれば特に限定されないが、好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属を挙げることができ、より好ましくは鉄である。
前記分散剤は、目的とする安定性、大きさ、均一性を有する触媒ナノ粒子の生成を促進するものから選ばれ、種々の有機分子、高分子、オリゴマー等が例示できる。前記分散剤は、適当な溶媒に溶解又は分散させて用いる。
前記溶媒は、触媒前駆体と分散剤の相互作用のために用いるものであり、単なる溶媒としてだけではなく、分散剤として作用するものでもよく、テンプレート触媒ナノ粒子を懸濁させるものでもよい。
溶媒としては、水や有機溶媒をはじめとする種々のものが利用でき、好ましいものとしては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチレンクロライド等が挙げられる。
溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記触媒複合体は、溶媒分子によって囲まれた、触媒前駆体と分散剤とから得られる複合体であると考えられる。触媒複合体は、前記触媒溶液又は触媒懸濁液中で生成し、溶媒を乾燥等で除去することにより、乾燥された触媒複合体を得ることができる。また、この乾燥された触媒複合体は、適当な溶媒を加えることで懸濁液に戻すこともできる。
触媒溶液又は触媒懸濁液中では、分散剤と触媒前駆体とのモル比を制御できる。分散剤の官能基に対する触媒原子の割合は、好ましくは0.01:1〜100:1であり、より好ましくは0.05:1〜50:1である。
分散剤は、非常に小さくかつ均一な粒径のテンプレート触媒ナノ粒子の形成を促進できる。一般的に、分散剤存在下でナノ粒子は、1μm以下の大きさとして形成され、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下である。
前記触媒溶液又は触媒懸濁液には、テンプレート触媒ナノ粒子の形成を促進するための添加物を加えてもよい。
前記添加物としては、無機酸、塩基化合物が例示できる。
前記無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が例示でき、前記塩基化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム等の無機塩基化合物が例示できる。また、前記触媒溶液又は触媒懸濁液には、pHを8〜13に調整するため、アンモニア水溶液等の塩基性物質を加えてもよい。この場合、pHを10〜11に調整することが好ましい。前記触媒溶液又は触媒懸濁液のpHは、テンプレート触媒ナノ粒子の粒径に影響を与え、例えば、13を超えるpH値では、触媒前駆体が微細に分離する。
また、前記触媒溶液又は触媒懸濁液には、テンプレート触媒ナノ粒子の形成を促進するための固体物質を加えてもよく、例えば、前記固体物質としてイオン交換樹脂をテンプレート触媒ナノ粒子形成時に加えることができる。前記固体物質は、最終的な触媒溶液又は触媒懸濁液から、周知の簡単な操作によって除去できる。
テンプレート触媒ナノ粒子は、典型的には、前記触媒溶液又は触媒懸濁液を0.5時間〜14日間混合することにより得られる。このときの混合温度は0〜200℃であることが好ましい。前記混合温度は、テンプレート触媒ナノ粒子の粒径に影響を与える重要な因子である。
前記触媒前駆体として鉄を用いた場合には、典型的には、鉄が塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄等の鉄化合物となり、前記分散剤と反応又は結合することにより、テンプレート触媒ナノ粒子となる。これらの鉄化合物は、水系の溶媒に溶解する場合が多い。金属を用いてテンプレート触媒ナノ粒子を形成させる場合には、副生成物が生成する。このときの典型的な副生成物は、水素ガスである。典型的には、テンプレート触媒ナノ粒子は上記の混合工程で活性化されるか、又はさらには水素を用いて還元を行うことで活性化される。
テンプレート触媒ナノ粒子は、化学的に安定で且つ触媒活性が高い金属触媒ナノ粒子の懸濁液として形成されることが好ましい。テンプレート触媒ナノ粒子が安定であることで、粒子同士の凝集が抑制される。また、一部又はすべてのテンプレート触媒ナノ粒子が沈降したとしても、混合することによって容易に再懸濁する。
前記テンプレート触媒ナノ粒子は、炭素材料前駆体の重合、及び後述する炭素材料中間体の炭化を促進する触媒としての役割を担う。ここでテンプレート触媒ナノ粒子の径は、ナノ構造中空炭素材料における中空部の径に影響を与える。
工程(2)においては、炭素材料前駆体が、テンプレート触媒ナノ粒子を分散させ、自身が重合することにより、テンプレート触媒ナノ粒子の表面に炭素材料中間体が形成される。
前記炭素材料前駆体は、テンプレート触媒ナノ粒子を分散させることができるものであれば特に限定されず、有機材料で好ましいものとしては、分子中に1つもしくは複数の芳香族環と、さらに重合化のための官能基とを有するベンゼンやナフタレンの誘導体が例示できる。重合化のための官能基としては、「−COOH」、「−C(=O)−」、「−OH」、「−C=C−」、「−SO−」、「−NH」、「−SOH」、「−N=C=O」等の基が例示できる。
好ましい前記炭素材料前駆体としては、レゾルシノール、フェノール樹脂、メラニン−ホルムアルデヒドゲル、レゾルシノール−ホルムアルデヒドゲル、ポリフルフリルアルコール、ポリアクリロニトリル、砂糖、石油ピッチ等が例示できる。
テンプレート触媒ナノ粒子は、その表面で炭素材料前駆体が重合するように、炭素材料前駆体と混合される。テンプレート触媒ナノ粒子は触媒活性であるため、その粒子近傍で炭素材料前駆体の重合の開始及び/又は促進の役割を担う。
炭素材料前駆体に対するテンプレート触媒ナノ粒子の使用量は、炭素材料前駆体が、均一にナノ炭素材料中間体を最大量形成できるように設定できる。また、テンプレート触媒ナノ粒子の使用量は、用いる炭素材料前駆体の種類に応じて調整することが好ましい。本発明においては、炭素材料前駆体とテンプレート触媒ナノ粒子とのモル比(炭素材料前駆体:テンプレート触媒ナノ粒子)は、好ましくは0.1:1〜100:1であり、より好ましくは1:1〜30:1である。
前記モル比、テンプレート触媒ナノ粒子の種類及び粒径は、後述するナノ構造中空炭素材料における炭素部の厚みに影響を与える。
テンプレート触媒ナノ粒子と混合された炭素材料前駆体は、テンプレート触媒ナノ粒子の表面に炭素材料中間体が十分に形成されるまで、十分に重合させることが好ましい。炭素材料中間体を形成させるのに必要な時間は、温度、触媒の種類、触媒の濃度、溶液のpH、用いる炭素材料前駆体の種類に依存する。
例えば、pH調整のためにアンモニアを加えることで、重合の速度を速め、炭素材料前駆体同士の架橋量を向上させ、効果的に重合できることがある。
また、熱により重合可能な炭素材料前駆体については、通常、温度が上昇するほど重合が進む。この場合の重合温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは25〜120℃である。
また、例えば、レゾルシノール−ホルムアルデヒドゲル(鉄粒子を用いる場合で、懸濁液のpHが1〜14の場合)の最適な重合条件は、温度が0〜90℃であり、重合時間が1〜72時間である。
後述するナノ構造中空炭素材料の炭素部の厚みは、炭素材料前駆体の重合の進行度の調整によって制御できる。
工程(3)においては、前記炭素材料中間体を炭化させて炭素材料を形成させ、ナノ構造複合材料を得る。炭化は、通常、焼成により行い、典型的には、500〜2500℃の温度で行う。焼成時には、炭素材料中間体における酸素原子、窒素原子が放出され、炭素原子の再配列が起こり、炭素材料が形成される。好ましい炭素材料は、グラファイト様の層状構造(多層状構造)を有するものであり、その厚みは好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜20nmである。層数は、炭素材料中間体の種類、厚み、焼成温度により制御できる。また、後述するナノ構造中空炭素材料の炭素部の厚みは、炭素材料中間体の炭化の進行度の調整によっても制御できる。
工程(4)においては、前記ナノ構造複合材料から、前記テンプレート触媒ナノ粒子を除去して、ナノ構造中空炭素材料を得る。テンプレート触媒ナノ粒子の除去は、例えば、ナノ中空体構造、ナノリング構造を完全に壊すことのない手法で行えばよく、典型的には、ナノ構造複合材料と、硝酸、フッ酸溶液、水酸化ナトリウム等の酸又は塩基とを接触させることで行うことができる。なかでも、硝酸(例えば、5規定の硝酸)と接触させることが好ましく、3〜10時間リフラックスする条件が例示できる。
前記ナノ構造中空炭素材料は、形状、大きさ、電気的特性において特異的である。典型的な形状(構造)としては、中空部を有する粒子状構造、袋状構造、少なくともこれらの一部を含む構造、又はこれらの集合体構造が例示できる。さらに、前記粒子状構造は、外形が略球状であることが好ましい。また、前記袋状構造としては、前記粒子状構造において、中空部を開放する部位(開口部)を一つのみ有するものが例示できる。
テンプレート触媒ナノ粒子の表面に炭素材料が形成されることから、ナノ構造中空炭素材料の形状及び粒径、並びに中空部の形状及び径は、製造時に用いたテンプレート触媒ナノ粒子の形状及び大きさに大きく依存する。
前記ナノ構造中空炭素材料の形状及び粒径、炭素部が多層状の場合の層数、炭素部の厚み、中空部の形状及び径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定することができる。
本発明においては、前記ポリスルホンと前記ナノ構造中空炭素材料とを溶融混練することにより、ポリスルホン組成物を製造する。ポリスルホンとナノ構造中空炭素材料との使用比率は、両者の合計量を100質量部として、ポリスルホンが85〜99質量部、ナノ構造中空炭素材料が1〜15質量部であり、好ましくはポリスルホンが90〜96質量部、ナノ構造中空炭素材料が4〜10質量部である。ポリスルホンが多過ぎる(ナノ構造中空炭素材料が少な過ぎる)と、得られる組成物(成形体)の導電性が不十分になる可能性がある。また、ポリスルホンが少な過ぎる(ナノ構造中空炭素材料が多過ぎる)と、得られる組成物の成形加工性、及び成形体の機械的強度が不十分になる可能性がある。
溶融混練に供するポリスルホン組成物は、前記ポリスルホン及びナノ構造中空炭素材料以外に、必要に応じて、充填材、添加剤、ポリスルホン以外の樹脂等の他の成分を1種以上含有していてもよい。
前記充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよく、繊維状及び板状以外のその他の充填材であってもよい。その他の充填材としては、例えば、球状等の粒状充填材が挙げられる。
また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母、金雲母、フッ素金雲母及び四ケイ素雲母のいずれでもよい。
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウムが挙げられる。
充填材の含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
前記添加剤の例としては、レべリング剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられ、その含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
前記ポリスルホン以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、その含有量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
本発明においては、ポリスルホンとナノ構造中空炭素材料との溶融混練を、1000〜9000/秒のせん断速度で行う。このように所定範囲の高せん断速度で溶融混練を行うことにより、ナノ構造中空炭素材料が分散し、導電性に優れた組成物が得られる。前記せん断速度は、好ましくは1000〜5000/秒、より好ましくは1000〜3000/秒である。前記せん断速度が小さ過ぎると、ナノ構造中空炭素材料の分散が不十分となり、大き過ぎるとポリスルホンが熱劣化する可能性がある。
本発明においては、前記ナノ構造中空炭素材料が、例えば、カーボンナノチューブ等の炭素材料よりも分散し易いうえ、高せん断速度で溶融混練を行うことにより十分に分散し、その結果、前記ナノ構造中空炭素材料が少なくても、半導電性有する組成物が得られると考えられる。
溶融混練時の温度は、ポリスルホンとナノ構造中空炭素材料の種類に応じて適宜調節すればよいが、好ましくは250〜400℃、より好ましくは270〜400℃、さらに好ましくは280〜380である。
前記溶融混練は、従来の2軸押出機では不可能であったナノコンパウンディング等の押出成形を可能にする高せん断型の混練機、例えば、完全噛合型同方向回転平行4軸押出機(例えば、テクノベル社製「KZW FR」)や帰還型スクリューを備えた高せん断成形加工機(例えば、ニイガタマシンテクノ社製「NHSS2−28」)を用いて行うことができ、特に、帰還型スクリューを備えた高せん断成形加工機を用いて行うことが好ましい。
前記溶融混練は、ポリスルホン、ナノ構造中空炭素材料及び必要に応じて他の成分を、予めヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて混合した後、この混合物を混練機に供給することにより行ってもよい。また、他の成分を用いる場合には、ポリスルホンと、ナノ構造中空炭素材料とを予め混合した後、この混合物と他の成分とを別々に混練機に供給することにより行ってもよい。また、ハンドリングが良好となる点から、通常の押出機を用いて、ポリスルホン、ナノ構造中空炭素材料及び必要に応じて他の成分を低せん断速度で溶融混練してペレット化した後、このペレットを上記のように1000〜9000/秒の高せん断速度で溶融混練してもよい。
本発明により得られたポリスルホン組成物は、半導電性を有し、成形加工性が良好であり、各種成形体を製造するための成形材料として好適に用いられる。成形方法としては、樹脂を溶融・賦型・固化させ得る各種方法が採用でき、例えば、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。得られた成形体は、さらに切削やプレス等により加工してもよい。前記ポリスルホン組成物を用いて得られた成形体は、半導電性を有すると共に、ポリスルホンの特性も損なうことなく、機械的強度にも優れる。
前記ポリスルホン組成物を用いて得られた成形体としては、例えば、ウエハキャリア、 ICチップキャリア、液晶パネルキャリア、HDキャリア、 MRヘッドキャリア、 GMRヘッドキャリア、HDDのVCMキャリア等のキャリア;電子写真複写機や静電記録装置等の画像形成装置における帯電ロール、帯電ベルト、除電ベルト、転写ロール、転写ベルト、現像ロール等の帯電部材;紙幣等の紙の搬送装置部品等が挙げられる。ここで「キャリア」とは、各種部材や物品等の搬送に用いる、容器状やトレイ状等の搬送体を指す。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、濃度単位「M」は、「mol/l」を指す。また、以下の実施例において、ポリスルホンの還元粘度、並びに成形体の体積固有抵抗値及び引張強度は、それぞれ以下の方法で測定した。
(ポリスルホンの還元粘度の測定)
ポリスルホン約1gをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させて、その容量を1dLとし、この溶液の粘度(η)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。また、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドの粘度(η0)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。前記溶液の粘度(η)と前記溶媒の粘度(η0)から、比粘性率((η−η0)/η0)を求め、この比粘性率を、前記溶液の濃度(約1g/dL)で割ることにより、ポリスルホンの還元粘度(dL/g)を求めた。
(成形体の体積固有抵抗値の測定)
ASTM D257に準拠した体積固有抵抗測定法により、デジタル超絶縁/微少電流計(東亜ディーケーケー社製「DSM−8104」)を用いて、測定温度23℃での体積固有抵抗値を求めた。
(成形体の引張強度の測定)
ASTM D638に準拠して測定した。
<ナノ構造中空炭素材料の製造>
[製造例1]
2.24gの鉄粉末と7.70gのクエン酸と400mlの水で0.1Mの鉄混合液を調製し、これを密閉容器に入れ、卓上震盪機で7日間混合した。混合期間中、適宜発生した水素ガスを容器から排出し、テンプレート触媒ナノ粒子混合液を得た。6.10gのレゾルシノールと9.0gのホルムアルデヒドの混合溶液に、前記テンプレート触媒ナノ粒子混合液100mlを加え、激しく撹拌しながら30mlのアンモニア水溶液を滴下した。得られた懸濁液のpHは10.26であった。上記懸濁液をオイルバス上で80〜90℃に加熱して3.5時間熟成させ、炭素材料中間体を生成させた。得られた炭素材料中間体をろ過により回収し、一晩オーブン中で乾燥させたのち、窒素雰囲気中、1150℃で3時間焼成した。得られたナノ構造複合材料を5Mの硝酸溶液で6〜8時間リフラックスさせ、酸化性混合液(HO/HSO/KMnO=1/0.01/0.003(モル比))300ml中、90℃で3時間熱処理した。さらに水で洗浄し、オーブン中で3時間乾燥させて、ナノ構造中空炭素材料1(1.1g)を得た。
<原料用ポリスルホン組成物の製造>
[製造例2]
ポリスルホン(住友化学社製「スミカエクセルPES3600P」(還元粘度0.36dL/g))(94質量部)と、製造例1で得られたナノ構造中空炭素材料1(6質量部)とを、ヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度340℃で100/秒のせん断速度で混練して造粒し、原料用のポリスルホン組成物1aを得た。
[製造例3]
ポリスルホンの使用量を94質量部に代えて96重量部とし、ナノ構造中空炭素材料1の使用量を6質量部に代えて4質量部としたこと以外は、製造例2と同様の方法で、原料用のポリスルホン組成物2aを得た。
<成形用ポリスルホン組成物及び成形体の製造>
[実施例1]
ポリスルホン組成物1aを、帰還型スクリューを備えた高せん断成形加工機(ニイガタマシンテクノ社製「NHSS2−28」、スクリュー径28mm、スクリュー帰還部の内径2.5mm)に投入し、ギャップを2mmに設定し、可塑化部温度300℃、混練部温度320℃にて加熱溶融させ、スクリュー回転数を2000rpmとして、2940/秒のせん断速度で20秒間混練し、その後、T−ダイから押し出して、成形用のポリスルホン組成物1を得た。その際、せん断発熱を低減するため、冷却機構を用いて、混練部の温度が320℃を超えないように温度制御した。得られたポリスルホン組成物1を、プレス機(神藤金属工業所製「NP−37」)を用いて、340℃、100MPaの条件でプレス成形し、50mm×50mm×3mmtの成形体1−1を得、その体積固有抵抗値を測定した。また、得られたポリスルホン組成物1を、ハンドトゥルーダー(東洋精機社製「PM−1」)を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度150℃の条件で射出成形し、厚み2mmのJIS 7113 1(1/2)号ダンベル(成形体1−2)を得、その引張強度を測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリスルホン組成物1aに代えて、ポリスルホン組成物2aを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、成形用のポリスルホン組成物2、成形体2−1及びダンベル(成形体2−2)を製造し、成形体2−1の体積固有抵抗値及び成形体2−2の引張強度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリスルホン組成物1aを、プレス機(神藤金属工業所製「NP−37」)を用いて、340℃、100MPaの条件でプレス成形し、50mm×50mm×3mmtの成形体1R−1を得、その体積固有抵抗値を測定した。また、ポリスルホン組成物1aを、ハンドトゥルーダー(東洋精機社製「PM−1」)を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度150℃の条件で射出成形し、厚み2mmのJIS 7113 1(1/2)号ダンベル(成形体1R−2)を得、その引張強度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリスルホン組成物1aに代えて、ポリスルホン組成物2aを使用したこと以外は、比較例1と同様の方法で成形体2R−1及びダンベル(成形体2R−2)を製造し、成形体2R−1の体積固有抵抗値及び成形体2R−2の引張強度を測定した。結果を表1に示す。
[比較例3]
スクリュー回転数を2000rpmに代えて500rpmとし、せん断速度を740/秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、成形用のポリスルホン組成物1R、成形体3R−1及びダンベル(成形体3R−2)を製造し、成形体3R−1の体積固有抵抗値及び成形体3R−2の引張強度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013166849
上記結果から明らかなように、実施例の成形体は、半導電性を有し、比較例の成形体よりも、機械的強度に優れることが確認できた。
本発明は、帯電防止性、塵埃吸着防止性等が求められる樹脂成形体など、半導電性を有する樹脂成形体の分野で利用可能である。

Claims (6)

  1. ポリスルホンと、下記(A)の要件を満たすナノ構造中空炭素材料とを含有するポリスルホン組成物の製造方法であって、
    前記ポリスルホン85〜99質量部と、前記ナノ構造中空炭素材料1〜15質量部とを、1000〜9000/秒のせん断速度で溶融混練する工程を有することを特徴とするポリスルホン組成物の製造方法。
    (A)ナノ構造中空炭素材料が、炭素部及び中空部を有し、前記中空部の一部又は全体が前記炭素部により囲まれた構造を有する。
  2. 前記ナノ構造中空炭素材料の前記炭素部の厚みが1〜100nmであり、前記中空部の径が0.5〜90nmであることを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン組成物の製造方法。
  3. 前記ナノ構造中空炭素材料が、下記工程(1)、(2)、(3)及び(4)をこの順に有する方法で得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスルホン組成物の製造方法。
    (1)テンプレート触媒ナノ粒子を製造する工程。
    (2)前記テンプレート触媒ナノ粒子の存在下、炭素材料前駆体を重合させ、前記テンプレート触媒ナノ粒子の表面に炭素材料中間体を形成させる工程。
    (3)前記炭素材料中間体を炭化させて、ナノ構造複合材料を製造する工程。
    (4)前記ナノ構造複合材料から、前記テンプレート触媒ナノ粒子を除去して、ナノ構造中空炭素材料を製造する工程。
  4. 前記ポリスルホンと前記ナノ構造中空炭素材料との溶融混練を、帰還型スクリューを備えたせん断成形加工機により行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリスルホン組成物の製造方法。
  5. 前記ポリスルホンが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、下記式(11)で表される繰返し単位を80モル%以上有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリスルホン組成物の製造方法。
    (11)−Ph11−SO−Ph21−O−
    (式中、Ph11及びPh21はそれぞれp−フェニレン基であり、前記p−フェニレン基の1個以上の水素原子は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法でポリスルホン組成物を得、このポリスルホン組成物を成形することを特徴とする成形体の製造方法。
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