JP2019001701A - カーボン修飾窒化ホウ素、その製造方法および高熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
硝酸ナトリウム0.3gおよび過マンガン酸カリウム1.8gを濃硫酸14mlに溶解させ、これに日本黒鉛製グラファイトACB150 0.2gを加えて室温で攪拌した。7日間攪拌後、反応液を冷却して5%硫酸水50mlをゆっくりと加え、さらに30%過酸化水素水10mlを加えて1時間室温で攪拌した。次いで、過酸化水素濃度0.5%および硫酸濃度3%となるように調整した混合液100mlで希釈して、酸化したグラファイトを遠心沈降させた。沈殿物を再び0.5%の過酸化水素と3%の硫酸を含む混合液100mlに分散させ、次いで遠心沈降させることにより、酸化グラファイトを得た。
(酸化グラフェン層を有するカーボン修飾窒化ホウ素の作製)
0.044g/100mlの酸化グラフェン分散液50mlに六方晶窒化ホウ素粉末(昭和電工 ショウビーエヌ(登録商標) UHP−2)を超音波洗浄器で超音波を照射しながら、加えていった。窒化ホウ素粉末を加えると凝集沈殿が生じ、加える量が増えると上澄みの色(褐色)が薄くなって行き、窒化ホウ素粉末を7.5g加えた時点で上澄みはほぼ無色となった。
沈殿を濾別して蒸留水100ml、メタノール100mlで洗浄後、60℃で8時間乾燥して薄茶色の粉末を得た(カーボン修飾UHP−2とする)。この粉末を電界放射形走査電子顕微鏡で観察したところ、平板な窒化ホウ素粒子表面に多数の皺が観察された。原料の窒化ホウ素粒子にはこのような皺はみられないことから、この皺は窒化ホウ素粒子表面に形成された酸化グラフェンによるものと考えられる。さらに窒化ホウ素粒子表面の異なる5点の顕微ラマンスペクトルを測定したところ、全ての測定点で酸化グラフェンのDバンドを観測することができたことから、酸化グラフェンは窒化ホウ素粒子の全面を覆っているものと考えられる。
(還元型酸化グラフェン層を有するカーボン修飾窒化ホウ素の作製)
0.044g/100mlの酸化グラフェン分散液50mlに六方晶窒化ホウ素粉末しながら、加えていった。窒化ホウ素粉末を加えると凝集沈殿が生じ、加える量が増えると上澄みの色(褐色)が薄くなって行き、窒化ホウ素粉末を7.5g加えた時点で上澄みはほぼ無色となった。
次いで、ヒドラジン水和物5mlを加えて1晩室温で撹拌し、生成した沈殿を濾別して蒸留水100ml、メタノール100mlで洗浄後、60℃で8時間乾燥して灰色の粉末を得た(還元型カーボン修飾UHP−2とする)。乾燥した窒化ホウ素粒子表面の異なる5点の顕微ラマンスペクトルを測定したところ、全ての測定点で還元型酸化グラフェンのGバンドを観測することができたことから、還元型酸化グラフェンに覆われた窒化ホウ素粒子が得られているものと考えられる。
(カーボン修飾窒化ホウ素を含む樹脂組成物の作製1)
ビスA型エポキシ(三菱化学製:Ep828) 33重量部とフェノールノボラック(DIC製:TD2090)19重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(ナカライテスク製:2E4MZ)0.5重量部を乳鉢でよく混ぜ合わせ、さらに実施例1で作製したカーボン修飾UHP−2 48重量部を添加して乳鉢で均一になるまで混練して窒化ホウ素混合物を得た(窒化ホウ素添加量は35vol%)。得られた混合物を120℃で4分間乾燥し、真空プレス機にて140℃/0.5MPa/5分、180℃/0.5MPa/2時間プレスを行い、硬化物を得た。
(カーボン修飾窒化ホウ素を含む樹脂組成物の作製2)
実施例1で作製したカーボン修飾UHP−2の添加量を45vol%にする以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂硬化物を得た。
窒化ホウ素を未修飾の六方晶窒化ホウ素(昭和電工製ショウビーエヌ(登録商標) UHP−2)にする以外は実施例3と同様にして窒化ホウ素添加量35vol%のエポキシ樹脂硬化物を作製した。
窒化ホウ素(昭和電工製ショウビーエヌ(登録商標) UHP−2)の添加量を45vol%にする以外は、 比較例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物を作製した。
べテル製サーモウェーブアナライザ TA(周期加熱方式)を用いて、得られた硬化物の厚み方向と平面方向の熱伝導率を算出した。測定結果の一覧を表1に示す。
実施例1で作製したカーボン修飾窒化ホウ素粒子から無作為に10個の粒子を選択して顕微ラマンスペクトルを測定(測定装置:Horiba XploRA)し、酸化グラフェン由来の1590cm−1のバンドと窒化ホウ素由来の1360cm−1のバンドのマッピングを行った。すべての粒子について、観察した粒子表面の大部分で1590cm−1のバンドが検出されたことより、窒化ホウ素粒子はまんべんなく表面に酸化グラフェン層を有していると考えられる。また、1590cm−1のバンド強度が強いところは1360cm−1のバンド強度が弱かった。これは、酸化グラフェンによる被覆を支持していると考えられる。
酸化グラフェンと実施例1で作製したカーボン修飾窒化ホウ素について、X線光電子分光を用いて酸化グラフェンの吸着前後変化を分析した(測定装置:ULVAC PHI 5000)。C1sスペクトルにおいて、未吸着の酸化グラフェンに対して窒化ホウ素上の酸化グラフェン層にはC−O結合に帰属されるピーク強度の著しい減少とC−B結合およびC−N結合とみられる新たなピークがみられた。酸化グラフェンは窒化ホウ素に吸着することによって、何らかの化学的変化を起こしていると考えられる。
(カーボン修飾窒化ホウ素を含む樹脂組成物の作製3)
ビスA型エポキシ(三菱化学製:Ep828) 20重量部とフェノールノボラック(DIC製:TD2090)11重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(ナカライテスク製:2E4MZ)0.3重量部を乳鉢でよく混ぜ合わせ、さらに実施例1で作製したカーボン修飾UHP−2 38重量部、球状アルミナCB A20S 31重量部を添加して乳鉢で均一になるまで混練して窒化ホウ素−アルミナ混合物を得た(窒化ホウ素添加量は35vol%、アルミナ添加量は15vol%、充填材総添加量は50vol%)。得られた混合物を120℃で4分間乾燥し、真空プレス機にて140℃/20MPa/5分、180℃/0.5MPa/2時間プレスを行い、硬化物を得た。
続いて、べテル製サーモウェーブアナライザ TA(周期加熱方式)を用いて厚み方向と平面方向の熱拡散率を測定し、硬化物の比熱と比重から厚み方向と平面方向の熱伝導率を算出した。
(カーボン修飾窒化ホウ素を含む樹脂組成物の作製2〜5)
球状アルミナ(昭和電工製CB A20Sの添加量を表2に従って25、35、40vol%にする以外は、実施例5と同様にしてエポキシ樹脂硬化物を作製し、厚み方向と平面方向の熱伝導率を算出した。
窒化ホウ素を未修飾の六方晶窒化ホウ素(昭和電工製ショウビーエヌ(登録商標)UHP−2)にする以外は表3に従って実施例5と同様にして窒化ホウ素添加量35vol%、球状アルミナ添加量15、25、35、40 vol%のエポキシ樹脂硬化物を作製し、厚み方向と平面方向の熱伝導率を算出した。
(カーボン修飾窒化ホウ素を含む樹脂組成物の作製6)
無溶剤型シリコーン樹脂(信越化学工業製 KNS−320A)1.56重量部に実施例1で作製したカーボン修飾窒化ホウ素2.18重量部と硬化剤(信越化学工業製CAT−PL−50T)0.03重量部を乳鉢でよく混ぜ合わせた。混合物をポリテトラフッ化エチレン製四角容器に入れて真空脱泡(室温30分)した後、ポリテトラフッ化エチレン製板で混合物を押し広げながら蓋をして、80℃30分加熱して硬化させた。
得られた硬化物を型枠から取り出してべテル製サーモウェーブアナライザ TA(周期加熱方式)を用いて厚み方向の熱拡散率を測定し、硬化物の比熱と比重から厚み方向の熱伝導率を算出したところ、熱伝導率は1.31W/(m・K)であった。
カーボン修飾窒化ホウ素を無修飾の窒化ホウ素(昭和電工製ショウビーエヌ(登録商標)UHP−2)にする以外は実施例9と同様にして硬化物を作製し、厚み方向の熱伝導率を算出したところ、熱伝導率は0.82W/(m・K)であった。実施例9と比較すると、カーボン修飾窒化ホウ素を用いた方が熱伝導率は高くなる結果となった。
Claims (6)
- カーボン修飾窒化ホウ素であって、窒化ホウ素粒子表面にシート状カーボン層を有する、カーボン修飾窒化ホウ素。
- 前記シート状カーボン層が1〜20層の酸化グラフェンである、請求項1に記載のカーボン修飾窒化ホウ素。
- 前記シート状カーボン層が1〜20層の還元型酸化グラフェンである、請求項1に記載のカーボン修飾窒化ホウ素。
- 請求項1から3のいずれかに記載のカーボン修飾窒化ホウ素を樹脂に混合した、高熱伝導性樹脂組成物。
- カーボン修飾窒化ホウ素粒子の製造方法であって、
酸化グラフェン水分散液に窒化ホウ素粉末を混合する工程、
液中から固体を回収して乾燥する工程、
からなる、カーボン修飾窒化ホウ素の製造方法。 - 請求項5に記載の方法で得られたカーボン修飾窒化ホウ素を還元剤で還元する工程を含む、カーボン修飾窒化ホウ素の製造方法。
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