JP2010506989A - 熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブとをベースにした伝導性複合材料 - Google Patents

熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブとをベースにした伝導性複合材料 Download PDF

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Abstract

カーボン・ナノチューブ(CNT)を含む熱可塑性ポリマー複合体の伝導性を制御し、改善し、または、絶縁材料を伝導性材料に変える方法。熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料と、この伝導性複合材料の製造方法と、溶融温度以上の温度で射出成形または押出成形をするか、射出成形または押出成形で得られた複合材料を熱処理する段階を含む方法。

Description

本発明は、熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料と、射出成形または押出成形を含むか複合材料の後熱処理段階を含むその製造方法とに関するものである。
カーボン・ナノチューブはその優れた電気伝導性および熱伝導性と機械特性が知られ、広く使用されている。また、カーボン・ナノチューブはポリマー材料にその優れた電気伝導性および熱伝導性と機械特性を与えるための添加剤として広く使用されている(特許文献1〜4参照)。
カーボン・ナノチューブの用途は多数の分野、特に電子工学(温度と構造に従って伝導体、半導体または絶縁体になる)、機械工学(例えば複合材料の補強用。カーボン・ナノチューブは鋼より100倍強く、重量はその1/6以下である)、電気工学(電荷の注入で伸び縮みする)の分野に及んでいる。
例えば電子部品の包装、燃料ラインの製造、帯電防止衣類の製造、サーミスタ、スーパーキャパシター用電極等の用途のポリマー組成物中でカーボン・ナノチューブは使用されている。
特許文献5(米国特許第6 090 459号明細書)には共押出成形で得られる多層パイプの製造方法が記載されている。その内部層は表面抵抗率が106オーム/正方以下である電気的に伝導性があるカーボン・ナノチューブを含む熱可塑性ポリマーから成る。CNTの含有量は2〜7重量%で、ポリマーは例えばMnが4000g/mo1以上、好ましくは10000g/mo1以上のポリアミドである。内部層か電気伝導性を有するので、パイプ中を材料を輸送する間に生じる静電気が放散して、爆発を防止することができる。
熱可塑性ポリマー材料の成形方法において、押出成形または射出成形ではポリマーの配向は、圧縮成形で見られるものに比べて、著しく大きくなる指向があるということは知られている。この場合、CNTもポリマー分子と一緒に配向し、従って、得られる複合材料の伝導性は変化し、違ったものになることもある。
国際特許第WO 91/03057合公報、 米国特許第US 5 744 235号明細書、 米国特許第US 5 445 327号明細書、 米国特許第US 5 663 230号明細書 米国特許第US 6 090 459号明細書
本発明の目的は、CNTを含む熱可塑性ポリマー材料の電気特性を制御し、改善し、さらには絶縁材料を伝導性材料にする方法を提供することにある。
本発明の一つの実施例では、CNTを含む熱可塑性複合材料の伝導性を増加させ、または所定ターゲット値にするために制御することが可能なプロセス条件を本発明は提供する。
本発明の他の実施例での本発明の目的は、当初は絶縁体であった射出成形または押出成形によって得られるCNTを含む熱可塑性複合体の物品を伝導体にする方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、NTの含有量が極めて低くても伝導体である射出成形または押出成形によって得られる熱可塑性複合体を提供することにある。
本発明の対象は、熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料であって、CNTの含有量が6重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.2〜2重量%である伝導性複合材料にある。
本発明の複合材料は1×106オーム以下、好ましくは1×104オーム以下の表面抵抗率を有する。
後熱処理をしない場合の複合材料の表面抵抗率に対するCNT含有率および成形方法の影響を示す図。 得られた材料の表面抵抗率に対する押出温度の影響を示す図。 パーコレーション曲線。 PA12と5%のNTCとを含む複合材料の表面抵抗率に対する成形方法および後熱処理の影響を示す図。 PA12と0.7%のNTCとを含む複合材料の表面抵抗率に対する成形方法および後熱処理の影響を示す図。
本発明の複合材料はポリアミド、ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリケトン、ポリエステル、ポリフルオロポリマーまたはこれらの混合物またはコポリマーから成る群の中から選択される熱可塑性ポリマーをベースにする。
本発明の複合材料は、ナイロン-12またはPVDFaベースにし、CNTの含有量が2重量%以下であるのが好ましい。
本発明の他の対象は、熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料の製造方法であって、熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とから成る組成物の成形(transformation)を、ポリマーの溶融温度Tm以上の温度、好ましくはTm+30℃〜Tm+60℃の温度、より好ましくはTm+60℃〜Tm+150℃の温度で射出成形または押出成形によって実行することを特徴とする方法にある。
本発明方法の一つの実施例で使用する組成物のCNTの含有量は6重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.2〜2重量%である。
本発明方法の一つの実施例で使用するポリマーはポリアミドである。
本発明方法の一つの実施例の成形温度は240℃〜400℃である。
本発明の他の対象は、熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料の製造方法にある。本発明の複合材料の製造方法は、上記複合材料をポリマーの融点以上の温度に0.1〜1800秒間、好ましくは0.1〜150秒間、必要な場合には0〜300バールの圧力、好ましくは125〜250バールの圧力下に維持する熱処理を実行する点に特徴がある。
本発明方法の一つの実施例での使用組成物中のCNTの含有量は6重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.2〜2重量%である。
本発明方法の一つの実施例で使用する熱処理は火炎処理、射出/圧縮成形、多色成形(overmoulding)、二重バブル押出成形、積層、フィルム接着、レーザー溶着、超音波溶着、高周波溶着、IML(In-Mould Labelling、金型内ラベル付け法)、IMD(In-Mould Decoration、金型内装飾法)、熱成形またはホットメルト接着法の中から選択される。
本発明はさらに、上記方法のいずれか一つで得られる複合材料の自動車、スポーツ用品、電子工学部品または包装用途での使用にある。
本発明の上記以外の特徴および効果は以下の詳細な説明からより明確になるであろう。
カーボン・ナノチューブ
本発明で使用可能なカーボン・ナノチューブは周知で、例えば下記文献に記載されている。
Plastic World、1993年11月、10頁 国際特許第WO 86/03455号公報 相対比が大きいものが好ましく、一般に縦横比は約lO〜約1000であるが、これに限定されるものではない。本発明で使用するカーボン・ナノチューブは90%以上の純度を有するのが好ましい。
熱可塑性ポリマー
本発明で使用可能な熱可塑性ポリマーはポリアミド、ポリセタール、ポリケトン、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリフルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレン硫黄、ポリ塩化ビニール、ポリエーテルイミド、テトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトンおよびこれらの混合物およびコポリマーから製造される任意のものだけである。
これらの熱可塑性ポリマーの中では特に下記のポリマーが挙げられる:ポリスチレン(PS):ポリオレフィン、特にポリエチレン(FE)およびポリプロピレン(PP);ポリアミド(例えばPA-6、PA-66、PA-11およびFA-12);ポリメタクリル酸メチル(PMMA);ポリエーテルテレフタレート(PET);ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリ弗化ビニリデン(PVDF);ポリスチレン/アクリロニトリル(SAN);ポリエチルエーテルケトン(PEEK);ポリ塩化ビニール(PVC);ポリウレタン(ポリエーテル残基である柔かいポリエーテルブロックと少なくとも一種のジイソシアネートと少なくとも一種の短いジオールとの反応で得られる硬いブロック(ポリウレタン)とから成り、連鎖延長剤の短いジオールは上記グリコールの中から選択できる:ポリウレタン・ブロックとポリエーテル・ブロックはポリエーテル・ジオールのOH官能基とイソシアネート官能基との反応で生じる結合によって連結される);ポリエステル・ウレタン(例えばジイソシアナート単位と、アモルファスジオールポリエステルに由来する単位と、短い連鎖延長剤のジオール、例えば上記グリコールのえ中から選択されるジオールに由来する単位とから成るもの);ポリエーテル−ブロックとポリアミド−ブロックとを有するコポリマー(PEBA)(例えば反応性末端基を有するポリアミドと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られるもの、例えば下記の重縮合で得られるもの:
(1) ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレン・ブロックとジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックの重縮合;
(2) ポリエーテルジオールとよばれるジヒドロキシル化された脂肪族α、ω−ポリオキシアルキレン単位のシアノエチル化および水素化で得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックの重縮合;
(3) ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテル・ジオールの重縮合、この特定の場合の製品がポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステル。
さらに、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル-エチレン/プロピレン−スチレン(AES)、メタクリル酸メチル−ブタジエンスチレン(MBS)、アクリロニトリル-ブタジエン−メタクリル酸メチル-スチレン(ABMS)、アクリロニトリル-n-ブチルアクリレート-スチレン(AAS)、変性ポリスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニール、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、弗素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリオレフィンエラストマー、スチレン/ブタジエン/スチレン・ブロック共重合体またはスチレン/イソプレン/スチレン・ブロック共重合体またはその水素化物等のスチレン・エラストマー、PVC、ウレタン、ポリエステル、そして、ポリアミドタイプのエラストマー、1,2-ポリブタジエンまたはトランス-l,4-ポリブタジエン等のポリブタジエンタイプの熱可塑性エラストマー;メチルカルボキシレート/ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、塩素化ポリエチレン等のポリエチレンエラストマー;フッ素化熱可塑性エラストマーを挙げることもできる。
「使用可能な熱可塑性ポリマー」という用語は上記のものに対応するホモポリマーに対応する任意のランダムコポリマー、勾配コポリマーまたはブロックコポリマーの全てを意味する。特に、アニオン重合されるSBS、SIS、SEBS、SBタイプのブロック共重合体およびSBMタイプの共重合体(ポリスチレン-co−ポリブタジエン−co−ポリメタクリル酸メチル)および制御されたラジカル重合で得られるコポリマー、例えばSABuS(ポリスチレン-co- ポリアクリル酸ブチル-co-ポリスチレン)、MABuM(ポリメタクリル酸メチル-co-ポリアクリル酸ブチル-co-ポリメタクリル酸メチル)タイプのコポリマーとその官能化誘導体の全てが含まれる。
本発明の複合材料は裸のCNT(生、洗浄または処理後)、ポリマー粉末と混合されたCNT、ポリマーまたはその他の添加剤と混合/被覆されたCNTのいずれからでも作ることができる。
本発明の複合材料中のCNTの含有量は6重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは0.2〜2重量%である。
本発明の成形プロセス:
本発明で使用する押出成形法または射出成形法は当業者に周知である。その従来法では加工温度は常にポリマーの溶融温度以上である。熱可塑性プラスチックの加工では流れ方向に配向する効果を有するということは公知である。従って、成形中にCNTが流れ方向に配向することが論理的に考えられる。
本発明者は、この配向現象の直接の結果として、押出成形および射出成形後にポリマーを伝導性にするためにはCNTの量を増やす必要があるということを観察した。特に、圧縮成形で得られる部品の場合には2重量%のCNTで伝導性を得るのに十分であるが、同じ部品を押出成形および射出成形で作る場合には伝導性にするのにCNTの量を6重量%以上にしなければならない。[図1]はこの観察結果を示している。
複合材料が伝導体であるとみなされるのはその表面抵抗率および/または容積抵抗率が1×106オーム以下の場合で、表面抵抗率および/または容積抵抗率が1×106オーム以上の場合には絶縁体である。
従って、本発明の一つの実施例では、本発明はCNTを含む熱可塑性複合材料、特にCNTの含有量が6重量%以下の組成物からなる熱可塑性複合材料の伝導性を増加させることができる方法を提供する。
驚くことに、上記効果は従来の押出成形法または射出成形法でのポリマーの加工温度を修正することによって得られる。すなわち、本発明では射出成形または押出成形をポリマーの溶融温度Tm以上のポリマー成形温度、好ましくはTm+60℃〜Tm+150℃の間の温度、さらに好ましくはTm+30℃〜Tm+60℃の間の温度で実行する。
[図1a]はCNTを5重量%含むポリマー組成物の成形温度を上げた時の押出成形での抵抗率の減少効果を示している組成が同じ場合、温度を増加させると抵抗率は下がり、伝導性が増加する。
さらに、伝導度の増加に対するマトリックスの粘度の影響もある。事実、押出成形温度が同じ場合、流動性の高いポリマーはより伝導性の高い複合材料になる。従って、本発明方法を用いることで、CNTの含有量を6重量%以下の5重量%程度、さらには2重量%程度にしても伝導性複合材料の伝導性を1x106オーム以下の抵抗率に改善することができる。この結果は圧縮成形では簡単に成し遂げられるが、押出成形または射出成形でこの結果を得るためには加工温度を高くし、成形パラメータを調節し、流動性マトリックスを使用する必要がある。
この結果は、ポリマーの成形温度を上げるか、他の成形パラメータを変え且つマトリックスの粘度を下げることによって射出成形または押出成形によって得られる物品の伝導性を増加させることができるということを示している。射出成形または押出成形は単純な圧縮成形よりはるかに広範囲で使用されており、らに、CNTの含有量を非常に低い量に抑えたままで上記の結果が得られるので、本発明には多くの経済的効果があるということを意味する。本発明のさらに他の技術的利点はマトリックス単独の機械特性、例えば低温耐衝撃強度および機械的モジュラスと同じ特性を維持できるという点にある。
後熱処理法
本発明の一つの実施例から、本発明はさらに、CNTを含む当初は絶縁体であった熱可塑性複合体を伝導性にする方法を提供する。
この本発明方法の第1段階は、CNTを6重量%以下含む複合熱可塑性組成物を成形して絶縁体、すなわち抵抗率が1×106オーム以上の成形品を製造する段階である。この第1段階は熱可塑性樹脂の成形の当業者にとって公知の任意の方法、例えば射出成形、押出成形、回転成形(rotomoulding)、多色成形(overmoulding)、熱成形、積層、押出ブロー成形および射出ブロー成形等で実行できる。
次の段階は上記で得られた成形品を熱処理する段階である。この熱処理の基本は複合材料を0.1〜1800秒間、好ましくは0.1〜150秒間、ポリマーの融点以上の温度に維持することにある。必要な場合には複合材料に0〜300バール、好ましくは125〜250バールの圧力を加えることができる。
本発明を工業的に実施する場合に用いることができる熱処理としては火炎処理、射出/圧縮成形、多色成形(overmoulding)、二重バブル押出成形、積層、フィルム結合、例えばレーザー溶着、超音波溶着、高周波溶着、IML(金型内ラベル付け、In-Mould Labelling)、IMD(金型内装飾、In-Mould Decoration)、熱成形またはホットメルト接着を挙げることができる。
本発明方法を用いることで、CNTの含有量を6重量%以下、例えば5重量%程度、さらには2重量%程度にして、絶縁物を伝導性複合体、すなわち1×106オーム以下の伝導度を有する複合体にすることができる。本発明の結果は後熱処理を行わない従来の射出/圧縮成形法では達成できない。
この結果は絶縁複合体を単にポリマーの溶融温度以上の温度で熱処理するだけでそれを伝導性にすることができるということを示している。成形された絶縁複合材料の後熱処理パラメータ(温度、圧縮度、時間)をコントロールすることでCNTの含有量が極めて低い複合材料を伝導性にすることができる。
この結果は、射出成形または押出成形は単純な圧縮成形よりはるかに広範囲で使用されているということ、極めて低いCNTの含有量でこの結果が得られること、そして完全に従来法である射出成形および/または押出成形で予め成形した物体を単に熱処理するだけであるということから、本発明には多くの経済的効果がある。
本発明の伝導性複合材料
本発明の他の対象は、熱可塑性ポリマーと、2重量%以下、好ましくは0.2〜2重量%のCNT(カーボン・ナノチューブ)とから成る伝導性複合材料にある。この伝導性複合材料の抵抗率は1×106オーム以下、例えば1×104オーム以下である。
本発明のこの伝導性複合材料は上記方法すなわち射出成形、押出成形または圧縮成形をベースにした方法、組成物および成分を用いて得ることができる。特に、本発明のこの複合材料は厚さが少なくとも500μmのバルクな物体またはフィルム状物体である。
本発明はさらに、本発明方法で得られる伝導性複合材料の自動車、スポーツ用品、電子工学または包装(パッケージング)用途での使用にある。
本発明は上記のものや下記の実施例に限定されるものではなく、当業者は多くの変更、改良をすることができるものである。
以下の実施例ではメルトフローインデックスが異なる2種のPA−12を使用した。AMNO PA−12は流体のPA−12である。AESNO PA−l2は粘性のあるPA−12である。下記の[表1]には3つの温度(240、260、280℃)での500s-1でのAMNO TLDおよびAESNO TLの粘度が記載されている。
Figure 2010506989
実施例1
伝導度を改善し、所望目標伝導度を達成するためのプロセス条件
流体のFA−12中に20重量%のCNTを含むマスターバッチにCNTの最終含有量が1〜5重量%となるようにAMNOまたはAESNOのPA−12を30mmの2軸スクリュー押出機でコンパウンディングした。
得られた顆粒を2軸マイクロスクリュー押出機(15cc μDSMタイプ)で、100回転/分で、210〜285℃の温度で押出した。矩形ダイ(20×0.2 mm2)を使用した。
a.伝導度に対する押出成形温度の作用
押出したフィルム上で測定した表面抵抗率値は[図1a]および[表2]に示してある。
Figure 2010506989
上記の結果は、組成が同じ場合、成形温度を上げることで抵抗率を低下できるということを示している([図1a]はAMNOマトリックスの場合には押出成形温度を開けると抵抗率は106のオーダで減少させることができることを示している)。従って、処方が同じ場合、加工温度を上げると伝導度が高くなる。
上記の結果はさらに、流体をベースにした処方は伝導性を促進する特性があるということを示している。
b.伝導度に対する射出金型温度の作用
2重量%のCNT5056を含むPVDF(カイナー(Kynar、登録商標)721)のペレットをDSMマイクロコンパウンダー(microcompounder)で下記条件で射出成形した:
T extr=230℃、100回転/分、8分間混合、
T inj=230℃
T mould=135〜160℃
射出ペレットの直径は24.50mm、厚さは1.56mmである。この射出ペレットを135〜145℃の金型中にした。両方の場合で、体積抵抗率>106オーム.cmであった。160℃での抵抗率は170〜180オーム.cmであった。
c.CNTが低含有量の伝導性押出成形品
加工温度を上げることによって電気パーコレーション(percolation)は低CNT含有量の方へ移動する。5重量%のCNTとバージンAMNOとをドライブレンドしてCNT含有量が0.35〜5重量のAMNO/CNT混合物を作った。押出成形されたロッド(直径1mm、μDSM)の抵抗測定値はAMNOの電気伝導率を得るのに2重量%のCNTで十分であることを示している([図1b])。
実施例2
後熱処理を有するプロセスの実施例
以下の実施例では上記と同じAMNOのマトリックスと5重量%または0.7重量%のCNTとの組成物を用い下記の方法で3種類のシート(厚さ2mm)を得た:
(a) 単純な圧縮成形
(b) 射出成形
(c) 射出成形後に熱処理
実験条件は以下の通り:
圧縮成形:260℃
射出成形:横または中央、260℃、120cm3/s
熱処理:260℃、t=10分
結果は[図2a]および[図2b]に示してある。
これらの結果は熱処理することによってCNTの含有量が極めて低い絶縁シートを伝導性にすることができるというポジティブな効果を示している。すなわち、CNTの含有量が0.7重量%でも伝導性(R<1×106オーム)の射出シートを得ることができる。
実施例3
PVDF+2重量%CNTで、射出成形後に熱処理して得られる他の複合材料の例
この実施例では熱処理と圧縮成形とを組合せる(または組合せない)。
2重量%のCNT5056を含むPVDF(カイナー(Kynar、登録商標)720)のペレットをDSMマイクロコンパウンダー(microcompounder)で下記条件で射出成形した:
T extr=230℃、100回転/分、8分間混合、
T inj=230℃
T mould=90℃
射出ペレットの直径は24.50mm、厚さは1.56mmである。この射出ペレットの体積抵抗率は常に>106オーム.cmであった。
ポスト-キュアリング・テストは3つのパラメータ:温度、圧縮成形時にサンプルに加えた圧力、圧縮時間に分けた実験デザインで実行した。各テストは単一ペレットで実行した。
このタイプのペレットの標準的な圧縮成形を下記のプロトコルに従って実行した:230℃で5分間流動化、250バールで2分間圧縮成形、圧力下または圧力なしに冷却。使用した圧縮成形金型は直径が25mm、厚さが1mmである。
このテストのポスト-キュアリング・プロトコルでは最初に計画温度で常に5分間流動させる:すなわち、プレスのプラテンを接近させ、しかし、金型の上部とは接触させない。この時間はペレットを所定温度に持ってくるのに必要である。
圧力が0バール以上の場合にはプレスの上側プラテンと金型の上部プレートとの間に接触がある。圧縮成形終了後、金型をプレスから外し、少なくとも1バールに対応する一様に分布した4kgの重量をサンプルに加える。この重量下で冷却することでPVDFを伝導度を測定するのに必要な平らな表面にすることができる。
Figure 2010506989
上記の結果は、熱処理によって複合材料の電気特性を制御できる可能性を示している。上記結果はさらに、伝導度が現れるのはポリマーの溶融温度T以上の温度であること、従って、それが本発明のキーパラメータであることを示している。

Claims (13)

  1. カーボンナノチューブ(CNT)の含有率が6重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは0.2〜2重量%である、熱可塑性ポリマーとCNTとをベースにした伝導性複合材料。
  2. 表面抵抗率が1×106オーム以下、好ましくは1×104オーム以下である請求項1に記載の複合材料。
  3. 上記熱可塑性ポリマーがポリアミド、ポリアセタール、ポリケトン、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリフルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレン硫黄、ポリ塩化ビニール、ポリエーテルイミド、テトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、これらの混合物またはコポリマーからなる群の中から選択される請求項1または2に記載の複合材料。
  4. 上記ポリマーがナイロン−12またはPVDFで、CNTの含有量が2重量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。
  5. 熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした組成物を、ポリマーの溶融温度Tm以上の成形温度、好ましくはTm+30℃とTm+60℃との間の温度、より好ましくはTm+60℃とTm+150℃との間の温度で射出成形または押出成形方法する、ことを特徴とする熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料の製造方法。
  6. CNTの含有量が6重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.2〜2重量%である請求項5に記載の方法。
  7. ポリマーがポリアミドである請求項5または6に記載の方法。
  8. 成形温度が240℃〜400℃である請求項7に記載の方法。
  9. 複合材料をポリマーの融点より高い温度に0.1〜1800秒間、好ましくは0.1〜150秒間、必要な場合には0〜300バール、好ましくは125〜250バールの圧力を加える熱処理を行った後に、複合材料の製造を行うことを特徴とする、熱可塑性ポリマーとカーボン・ナノチューブ(CNT)とをベースにした伝導性複合材料の製造方法。
  10. 組成物中のCNTの含有量が6重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.2〜2重量%である請求項9に記載の方法。
  11. 上記の熱処理を、火炎処理、射出/圧縮成形、多色成形(overmoutding)、二重バブル押出成形、積層、フィルム合体化法、例えばレーザー溶着、超音波溶着、高周波溶着、IML(In-Mould Labelling)、IMD(In-Mould Decoration)、熱成形またはホットメルト接着法から成る群の中から選択する請求項9または10に記載の方法。
  12. 伝導性複合材料が請求項1〜4に定義の特徴を有する請求項5〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 請求項5〜12のいずれか一項に記載の方法によって得られる伝導性複合材料の自動車、スポーツ、電子工学または包装用途での使用。
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