JP2008213038A - 圧縮鍛造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】素材として円筒状の鋼塊(いわゆる「丸ビレット」1)を型(下型22)に設置し、鍛造時に座屈しないように鍛造をおこない、かつ、圧下比および鍛造比が基準値以上となるように鍛造をおこなう。たとえば、鍛造比が1.2以上で横方向圧縮鍛造をおこない、その後、圧下比が1.7以上で軸方向圧縮鍛造がおこなわれる。
【選択図】図2
Description
圧延鋼材であれば、圧延工程においてポロシティー(気泡や巣など)が除去されているからである。
また、従来技術において、鋼塊を素材として使用する場合には、キルド鋼を使用し、ポロシティーや偏析が存在する部分を切除していた。
そのように処置する場合には、ポロシティーや偏析が存在する部分の切除工程が必要となり、かつ、鋼塊を切除することにより、鋼製品を成形した場合の歩留まりが悪化してしまう。
しかし、従来からの研究の内容を示す文献においては、圧縮鍛造で鋼塊を素材として用いる場合に、ポロシティーを除去して、鋼製品の延性、靭性を一定以上の水準に保持することについては、開示していない。
しかし、そのような従来技術(特許文献1)も、上述した問題点を解消するものではない。
ここで、本明細書における「圧縮鍛造」という文言は、軸方向圧縮鍛造(据え込み鍛造)、横方向圧縮鍛造(伸ばし鍛造)、軸方向圧縮鍛造と横方向圧縮鍛造の組み合せ鍛造を包含するものとして用いられている。
さらに、本明細書における「圧下比」および「鍛造比」の定義は、下記の通りである。すなわち、
圧下比=鍛造前の素材の長さ/鍛造後の(鍛造によって圧縮された)素材の長さ
鍛造比=鍛造前の素材の断面積/鍛造後の(鍛造によって鍛伸された)素材の断面積
である。なお、係る定義に基き、「圧下比」および「鍛造比」は、何れも、1.0よりも大きな数値となる。
この場合、「鍛造素材の直径に対する全長の比(L/D)が3以下で」ある旨が、上述した発明(請求項1の圧縮鍛造方法)における「鍛造時に座屈しないように鍛造をおこなう」ことに相当し、「圧下比が2.3以上で鍛造が行われる」旨が、上述した発明(請求項1の圧縮鍛造方法)における「圧下比および鍛造比が基準値以上となるように鍛造をおこなう」ことに相当する。
この場合においても、上述した圧縮鍛造をおこなう(請求項1の圧縮鍛造方法を実施する)のに適切ではない形状、サイズの素材(丸ビレット1)であっても、上述した圧縮鍛造(請求項1の圧縮鍛造方法)をおこなうのに適した形状、サイズに変形できる。
上述する構成を具備する本発明は、そのような知見に基づいて創造されたものである。
図7で示すように、圧下比が2.3以上では、ポロシティーと対応するパラメータである全水素量は一定である。すなわち、圧下比が2.3において全水素量すなわちポロシティーが最小となり、圧下比をそれ以上に大きくしても、全水素量すなわちポロシティーは減少しない。
したがって、圧下比が基準値以上(具体的には2.3以上)で鍛造を行えば、鋼塊を素材として圧縮鍛造をおこなっても、ポロシティーが最小レベルまで除去される。そのため、成形された鋼製品における延性、靭性が、圧延鋼材を素材として圧縮鍛造を行った製品と同程度の水準に保持される。
また、ポロシティーが圧延鋼材を素材とした場合と同程度のレベルまで除去されるので、従来技術において鋼塊を素材として用いる場合のように、ポロシティーの存在範囲を特定する必要はなく、使用範囲を限定する必要もなくなる。すなわち、材料歩留まりを大幅に向上させることができる。
ここで、図示の実施形態は、丸ビレットと呼ばれる円筒形状の鋼塊を材料として、ローラを製造する場合について、示している。
図1において、ローラ10は、外周側と内周側が共に複数段に形成されている段付の円筒形状である。
図1において、ローラ10の左端部は、鈍角のテーパ面11を有している。そのテーパ面11の外周部11aが、ローラ10の最大径の部分となっている。最大径の部分11aから、ローラ10の右端に移動するにしたがって、符号12で示す部分(外周部12)の直径と、符号13で示す部分(外周部13)の直径が、2段階で減少している。
外周部12、13には、抜き勾配が設けられている。
ここで、圧下比や鍛造比を大きくする場合、鍛造素材の直径に対する全長の比(L/D)が3を超えてしまうと、鍛造時に座屈が発生してしまう。そのため、L/Dは3以下に設定する必要がある。
内径部14、15、16、17は、抜き勾配がつけられている。
図1において、2点鎖線で示す部分は、圧縮鍛造を行った後に、機械加工によって切削される。その後、熱処理をして、製品としてのローラ10が完成する。言い換えると、ローラ10は、鍛造され、部分的に穴抜きされたワーク3(図5参照)を(図1の)2点鎖線の位置まで切削加工して、熱処理をして、製造される。
図2は、下型22に原材料である丸ビレット1を載せた状態を示している。丸ビレット1の上方には、上型21が配置されている。上型21と下型22とによって、鍛造型2が構成されている。
ここで、図3、図4で示す圧縮鍛造は、第1実施形態では、圧下比2.3以上となるように実行される。
図5において、符号4は打ち抜き工具を示し、符号5はダイを示し、符号6は打ち抜き工具4が摺動するガイドを示す。
(1) 圧下比が2.3以上となる。
(2) 鍛造比が1.2以上で、かつ、圧下比が1.7以上となる。
以下、図6のフローチャートに基づいて、丸ビレットの寸法あるいは質量を調節する工程を説明する。
図2で説明したのと同様に、下型22に丸ビレット1を載せて、図3〜図5で示すように、図1で示すローラ10の形状に圧縮鍛造をおこなう(ステップS2)。この場合、丸ビレット1の寸法あるいは質量は、図1で示すローラー10の質量にバリの質量を加えた適当と思われる値に設定する。
同様に、準備した寸法あるいは質量が異なる複数の丸ビレット1を、全て、圧縮鍛造する。その場合に、圧縮鍛造したワーク(図1で示すようなローラ10の切削加工前の状態)3に対応させて、材料となった丸ビレット1の寸法あるいは質量を記録しておく。
準備した丸ビレット1の全ての圧縮鍛造が完了したなら(ステップS3がYES)、ステップS4に進む。
そして、前述のステップS2で圧縮鍛造した全サンプルについて、全水素量を測定する(ステップS4)。
ここで、全水素量の測定については、図7を参照して後述する。
図7は、圧下比が異なるように鍛造された複数のワーク3を用意し、各ワークについて全水素量を計測した結果をプロットで示している。
図8において、計測装置7の内部における密閉した空間8に、ワーク3を設置する。このワーク3に、図示しない電極を介して所定値の電流(E)を流す。その状態で、空間8の気温を上昇せしめる。
電流Eを流し、空間8内の気温(雰囲気温度)が昇温するにつれて、ワーク3から水素が放出される。水素の放出量を水素計測装置9で計測し、水素計測装置9で計測された水素放出量の累積値が、ワーク3内の全水素量となる。
ここで、全水素量とポロシティー(気泡や巣など)とは正の相関関係があり、全水素量が圧下比2.3以上では、それ以上水素量は減少せず、ほとんど一定の数値となるということは、圧下比2.3以上であれば、ポロシティーは(圧下比2.3の場合に比較して)少なくはならず、圧下比2.3のポロシティーがほとんど最小値となることを意味している。
具体的には、成形された鋼製品における延性、靭性が、圧延鋼材を素材として圧縮鍛造を行った製品と同程度の水準に保持される。
その結果、圧延加工に必要なコストを節約することが可能となる。
図9の実験は、図7、図8を参照して上述したのと同様におこなわれる。
図9で示す実験では、軸方向圧縮鍛造だけがおこなわれた試験片における全水素量を計測することに加えて、横方向圧縮鍛造(鍛造比1.2)を行った後に軸方向圧縮鍛造(圧下比1.7および2.0)をおこなった(図9および本明細書では「複合圧縮鍛造」と記載されている)試験片における全水素量の計測もおこなわれている。
言い換えれば、鍛造比1.2で横方向圧縮鍛造を行った後に、圧下比1.7で軸方向圧縮鍛造を行えば、圧延加工を省略した鍛造のみによる成形が可能となる。そして、圧延加工に必要なコストを節約することが可能となる。
また、ポロシティーが圧延鋼材を素材とした場合と同程度のレベルまで除去されるので、ポロシティーの存在範囲を特定し、使用範囲を限定する必要がなくなる。これにより、材料歩留まりを向上させることができる。
表1の結果から、複合圧縮鍛造(鍛造比1.2で横方向圧縮鍛造を行った後に、圧下比1.7で軸方向圧縮鍛造をおこなう)により加工されたローラの外周付近から採取した試験片のシャルピー衝撃値と、圧下比2.3の軸方向圧縮鍛造を行って加工されたローラの外周付近から採取した試験片のシャルピー衝撃値とは、同等である。言い換えれば、複合圧縮鍛造(鍛造比1.2で横方向圧縮鍛造を行った後に、圧下比1.7で軸方向圧縮鍛造をおこなう)による鍛造品と、圧下比2.3の軸方向圧縮鍛造による鍛造品との耐衝撃性は同等である。
第2実施形態は、横方向圧縮鍛造と軸方向圧縮鍛造を連続しておこなっている。すなわち、複合圧縮鍛造をおこなっている。
図10〜図12の第2実施形態では、鍛造比1.2で横方向圧縮鍛造をおこなった後に、圧下比1.7で軸方向圧縮鍛造をおこなっている。
図11における符号1Fは、横方向圧縮鍛造が終了した状態の丸ビレットを示している。
図12で示す工程におけるその他の点については、前述した図2〜図5の工程と同様である。
図12における符号1Gは、軸方向圧縮鍛造が終了した状態のワーク(鍛造品)を示している。
図13における符号Bで示した領域は、デンドライト組織である。デンドライト組織は鋳造時の組織であり、鍛造加工では破壊されずに残存する。なお、デンドライト組織が残存しても、ローラの機能を損なうことはない。
図13における符号Cで示す線は、鍛流線である。この鍛流線Cが生じている領域では、鍛造時の圧縮作用によってポロシティー(空隙)が潰されている。換言すれば、鍛流線Cが生じているということは、ポロシティーによる機械強度の劣化が防止されていることを意味している。
2・・・鍛造型
3・・・ワーク
4・・・打ち抜き工具
5・・・ダイ
6・・・ガイド
7・・・計測装置
8・・・空間
9・・・水素計測装置
10・・・ローラ
21・・・上型
22・・・下型
Claims (3)
- 素材として円筒状の鋼塊を型に設置し、鍛造時に座屈しないように鍛造をおこない、かつ、圧下比および鍛造比が基準値以上となるように鍛造をおこなうことを特徴とする圧縮鍛造方法。
- 鍛造素材の直径に対する全長の比が3以下で、かつ、圧下比が2.3以上で鍛造が行われる請求項1の圧縮鍛造方法。
- 鍛造比が1.2以上で横方向圧縮鍛造をおこない、その後、圧下比が1.7以上で軸方向圧縮鍛造がおこなわれる請求項1の圧縮鍛造方法。
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