JP2004269981A - 棒鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鍛造品と同等の靭性を有する棒鋼を分塊圧延で製造する方法を提供する。
【解決手段】熱間ダイス鋼から成り、直径が170〜250mmである棒鋼を製造する方法において、C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る鋼種の鋼塊を鋳造する工程;得られた鋼塊に対し、鋼種の状態図における固相線温度未満固相線温度−100℃以上の温度域で、
(i)目的とする棒鋼の直径が170〜200mmである場合には25時間以上、
(ii)目的とする棒鋼の直径が200〜250mmである場合には50時間以上
の均熱処理を施す工程;および、得られた処理材を分塊圧延して目的とする直径に整形する工程;を備えている棒鋼の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】熱間ダイス鋼から成り、直径が170〜250mmである棒鋼を製造する方法において、C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る鋼種の鋼塊を鋳造する工程;得られた鋼塊に対し、鋼種の状態図における固相線温度未満固相線温度−100℃以上の温度域で、
(i)目的とする棒鋼の直径が170〜200mmである場合には25時間以上、
(ii)目的とする棒鋼の直径が200〜250mmである場合には50時間以上
の均熱処理を施す工程;および、得られた処理材を分塊圧延して目的とする直径に整形する工程;を備えている棒鋼の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は棒鋼の製造方法に関し、更に詳しくは、熱間ダイス鋼から成る太丸棒鋼を分塊圧延で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間ダイス鋼の中でも、SKD61は工具特性のバランスが優れていて、例えばAl押出しダイス、AlやCuのダイカスト用金型、鍛造用の型などの素材として多用されている。
これらのうち、例えばAl押出しダイスは、通常、成分調整された所定鋼種の棒鋼から製造され、耐衝撃性に優れていることが必要とされている。とりわけ、Al素材を押出し成形する中心箇所では靭性の高いことが必要とされる。
【0003】
そして、例えばAl押出しダイスの素材として使用される棒鋼は、一般に、次のようにして製造されている。
まず、例えばレードルファーネス法により、取鍋内に装入された原料を溶解・精錬して溶鋼を溶製し、その溶鋼を鋳型に注入したのち、冷却・凝固して所定鋼種の鋼塊(インゴット)を鋳造する。
【0004】
このときの鋳型としては、通常、上部側の方が底部側よりも順次大径になっていくテーパを有するものが使用される。したがって、得られた鋼塊は、上部外径が大きく、底部外径が小さく、高さ方向にはテーパがついた形状になっている。そして、形状によっても異なるが、例えばSKD61はV,Cr,Moなどの偏析元素の含有量が多いので、最終凝固部である鋼塊中心部の組織には中心偏析と2次パイプと呼ばれる空隙などが多数発生し、また外周と中心部の間に位置する組織には逆V偏析も発生し、更には鋼塊の頂部に頭部偏析が発生することがある。
【0005】
ついで、この鋼塊を均熱炉に装入し、所定の温度で所定時間保持する均熱処理を行って、鋼塊の鋳造組織を均質な組織にする。
そして、均熱炉から鋼塊を抽出し、ただちに所定の加工度で熱間加工を行って目的とする直径にまで細径化して棒鋼にする。
この熱間加工によって鋼塊の鋳造組織が鍛錬され、鋼塊の中心偏析や空隙の周囲に存在していた組織は圧着され、全体が加工組織に変化する。
【0006】
しかしながら、熱間加工時の加工度が不足する場合には、中心偏析や空隙などが存在する中心部は未圧着の状態になる。このような状態になっていると、製造した棒鋼の、とりわけその中心部の靭性が大幅に低下する。
とくに、鋼塊が大型形状である場合には、鋳造時に偏析や2次パイプが発生しやすくなるので、熱間加工を行っても中心部は未圧着状態になりやすく、製造した棒鋼の靭性低下が起こりやすい。
【0007】
このようなことから、目的とする直径が大径(太丸)の棒鋼を製造する場合の熱間加工としては、通常、鋼塊の中心部にまで大きな加工エネルギーを注入することができ、大きな加工度で鍛錬することができる熱間鍛造が採用されている。
このような熱間加工を終えたのち、焼きなましを行って加工歪みを除去し、棒鋼は次の加工工程に移送される。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−64755号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2002−45901号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鍛造と圧延を対比すると、一般に、後者を採用した方が、加工時間の短縮、高い量産性を実現することができ、製造コストの低減が可能である。
したがって、棒鋼の製造に際しても熱間圧延を採用することの方が工業的には有利であるといえる。
【0011】
しかしながら、太丸の棒鋼の製造に際して圧延を採用すると、その棒鋼の中心部には前記した未圧着状態が残りやすく、そのため、鍛造で製造した棒鋼に比べて中心部の靭性が低下するという問題がある。
本発明は、上記したような問題を解決し、目的とする棒鋼が大径(太丸)であったとしても、その中心部の靭性は鍛造で製造した棒鋼の場合と同等である棒鋼を分塊圧延によって製造する方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成するための研究過程で、シャルピー衝撃値測定後の試験片の破面を観察したところ、シャルピー衝撃値が低い(低靭性)の試験片の割れ起点部には炭化物の存在が認められたが、シャルピー衝撃値が高い(高靭性)の試験片には認められないという事実を見出した。そして、両試験片の履歴を調べたところ、両者の大きな相違点は均熱処理時の保持時間の長短にあることが判明した。
【0013】
これらの知見を基礎にして、本発明者らは、鋳造組織の偏析は均熱処理時に熱拡散挙動を起こし、保持時間が長くなると、中心部の偏析は拡散してしまい、そのため、得られた試験片のシャルピー衝撃値が高くなるとの着想を得た。
そして、この着想に基づいて、鋼塊の均熱処理時における保持時間とシャルピー衝撃値との関係について鋭意研究を重ねた結果、本発明の棒鋼の製造方法を開発するに至った。
【0014】
すなわち、本発明においては、熱間ダイス鋼から成り、直径が170〜250mmである棒鋼を製造する方法において、
C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る鋼種の鋼塊を鋳造する工程;
前記鋼塊に対し、前記鋼種の状態図における固相線温度未満固相線温度−100℃以上の温度域で、
(i)目的とする棒鋼の直径が170〜200mmである場合には25時間以上、
(ii)目的とする棒鋼の直径が200〜250mmである場合には50時間以上の均熱処理を施す工程;および、
得られた処理材を分塊圧延して目的とする直径に整形する工程;
を備えていることを特徴とする棒鋼の製造方法が提供される。
【0015】
好ましくは、更に、前記均熱処理工程と前記分塊圧延工程の中間に、前記処理材に対する軽圧下処理工程が配置され、また、前記分塊圧延工程に続けて焼きなまし工程が配置される棒鋼の製造方法が提供される。
更には、上部外径をD1(mm)、底部外径をD2(mm)、平均直径をD3(mm)、高さをH(mm)としたとき、次式:H/D3で示される高径比が3.0〜3.8、(D1−D2)×1000/H×2で示されるテーパ(片側)が45〜70mm/mになっている鋼塊を用いる棒鋼の製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記した組成の熱間ダイス鋼に分塊圧延を行って、直径が170〜250mmであり、靭性が鍛造で製造した棒鋼と略同等である棒鋼を製造する方法である。その場合、目標とする靭性は、シャルピー衝撃値で17J/cm2以上に設定される。
【0017】
本発明は、所定鋼種の溶鋼を製造して所定形状の鋼塊にする鋳造工程、その鋼塊に均熱処理を施す均熱処理工程、および処理材に分塊圧延を行って目的とする直径の棒鋼に熱間加工する分塊圧延工程をこの順序で直列に配置して実施される。そして、好ましくは、均熱処理工程と分塊圧延工程の中間に後述する軽圧下処理工程が配置される。
【0018】
なお、上記した一連の工程の後に、焼きなまし工程を配置することにより、分塊圧延工程で棒鋼に蓄積した加工歪みを解放させることは従来と変わらない。
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)鋳造工程
この工程では、所定組成の鋼種から成る鋼塊が鋳造される。
【0019】
本発明が対象とする鋼種は、JIS規格のSKD61相当品である。具体的には、C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る。
まず、所定のスクラップを例えば取鍋に装入してアーク加熱を行い、合成スラグを添加し、溶鋼をArで撹拌しながら取鍋の中を強還元雰囲気に維持した状態でサブマージドアーク精錬を行って、所定組成の溶鋼を溶製する。
【0020】
なお、この精錬時には、できるだけPやSが溶鋼に混入しないようにすることが好ましい。例えば、Pは、鋼塊に劈開型の低温脆性を助長させる原因となり、また凝固時に結晶粒界に偏析して粒界破壊を起こさせる原因となるからであり、Sは後述する分塊圧延工程を実施したときに、粒界割れを助長し、また他の成分との間で生成する硫化物が亀裂発生源となって棒鋼の延性を低下させるからである。このようなことから、PやSの含有量が少ないほど、棒鋼の靭性は向上するが、シャルピー衝撃の目標値を17J/cm2以上に設定していることからすれば、Pは0.030質量%以下、Sは0.030質量%以下に制御することが好ましい。
【0021】
精錬された溶鋼を次に鋳型に注入し、冷却・凝固して鋼塊を鋳造する。
このとき、鋳造組織が形成されると同時に、鋼塊には中心偏析や2次パイプ、逆V偏析などが発生する。これらの偏析は、いずれも、構成成分のCr,Mo,Vの炭化物を主体とするものであって、縞模様をなして生成し、靭性低下の最大要因となる。また、中心部の2次パイプも、分塊圧延工程で完全に圧着されない場合は、やはり棒鋼の靭性を大幅に低下させる。
【0022】
鋳造された鋼塊の組織内におけるこのような偏析の発生状況は、当該鋼塊の上部外径をD1(mm)、底部外径D2(mm)、平均径をD3(mm)、高さをH(mm)としたときに、次式:H/D3で示される高径比と、次式:(D1−D2)/Hで示されるテーパとの相関で大きく左右されるということが知られている。すなわち、高径比が大きすぎても小さすぎてもその鋼塊では偏析が起こりやすく、またテーパが小さすぎると同じく偏析が起こりやすいとされている(特許文献1を参照)。
【0023】
以上のことを考慮して、鋳造工程においては、高径比が3.0〜3.8であり、またテーパが45〜70mm/mである鋼塊を鋳造することが好ましい。
(2)均熱処理工程
この工程は、鋳造工程で鋳造した鋼塊に均熱処理を施すことにより偏析を拡散させて組織を均質にし、同時に分塊圧延工程における変形抵抗を低くして圧延性を確保するために行われる。具体的には、鋼塊を均熱炉に装入し、一定の温度で加熱し、その温度で所定の時間保持する。
【0024】
この均熱処理時に採用する温度は、鋼塊の鋼種との関係で設定される。具体的には、対象とする鋼塊の鋼種の状態図において、当該鋼種の固相線温度をTs(℃)とした場合、処理温度(T℃とする)は、次式:
Ts−100≦T<Ts
を満足する温度域に設定される。
【0025】
温度Tが温度Ts以上である場合には、比較的低融点である炭化物を主体とする偏析が溶融してしまい、鋼塊の組織内には新たに空隙が分散して形成され、靭性低下が引き起こされるからである。また、温度Tが温度Ts−100より低い場合には、変形抵抗が大きくなって、続けて行う分塊圧延工程における分塊圧延が円滑に進まず、中心部の未圧着状態が残存したり、割れなどが発生するようになるからである。
【0026】
ところで、鋼塊の内部組織における偏析の発生状況は、前記したように、鋼塊の形状によって異なり、一般に、大型形状の鋼塊であればあるほど、偏析の発生個数は多くなり、また大きくなる傾向を示す。したがって、太丸棒材の製造が目的とされる場合には、細径の棒材の場合に比べて偏析の拡散を実現するための保持時間は長くすることが必要である。
【0027】
このようなことから、本発明においては、製造目的の棒材の直径との関係で均熱処理時における保持時間を変化させる。すなわち、
(i)製造目的の棒材の直径が170〜200mmである場合には、上記した温度Tにおける保持時間を25時間以上に設定し、
(ii)製造目的の棒材の直径が200〜250mmである場合には、上記した温度Tにおける保持時間を50時間以上に設定する。
【0028】
上記した条件が満たされていない場合は、鋼塊に偏析などが残存していて、分塊圧延工程の終了後にあっても、シャルピー衝撃値17J/cm2以上という目標の靭性を実現することができない。
偏析の拡散と解消という点では、この保持時間が長ければ長いほどよいのであるが、それは熱エネルギーロスを増大させることになるので、(i),(ii)のいずれの場合においても、保持時間は最長でも上記した各保持時間の1.5倍程度に設定すれば充分である。
【0029】
(3)分塊圧延工程
この工程では、均熱炉から抽出された鋼塊をただちに分塊圧延して未圧着部は圧着し、目的直径の棒鋼に整形する。
その場合、目的直径との関係で圧延ロールに通すパス回数を変化させる。例えば、細径の棒鋼の製造時にはパス回数は増加させる。そして、目的直径が200〜250mmの太丸である場合には、通常、数回、例えば3パスに設定することが好ましい。
【0030】
また、各パス時の減面率は、目的直径との関係で適宜選定されるが、例えば目的直径が230mmの棒鋼を対象とする場合には、パス回数を3回とし、1回目パスで減面率8〜13%、2回目パスで減面率18〜23%、3回目パスで減面率7〜12%に設定することが好ましい。
なお、この分塊圧延は、前記した均熱処理温度1230〜1260℃程度で開始される。そして、圧延は、鋼塊の温度がその固相線温度(Ts)よりも200〜300℃程度低い温度にまで降温する間で終了する。そのような温度域にあるとき、鋼塊は適正な圧延性を備えているからである。
【0031】
(4)焼きなまし工程
この工程は、分塊圧延によって棒鋼に蓄積された加工歪みを除去する工程であり、例えば820〜870℃の温度条件下で実施すればよい。
本発明においては、上記した均熱処理工程と分塊圧延工程の中間に軽圧下処理工程を配置することが好ましい。とくに、目的直径が大きい棒鋼を製造する際に、この軽圧下処理を施すと、鋼塊の中心部は、後段の分塊圧延時に先立って鍛錬され、そのことによって中心部の圧着を事前にある程度進行させることができるので好適である。
【0032】
この軽圧下処理工程としては、特許文献2のインラインプレス工程をそのまま転用すればよい(特許文献2を参照)。
具体的には、均熱炉から抽出した鋼塊の一端をマニプレータで把持し、その状態で、鋼塊を一対のタップの間に挿入し、鋼塊をある角度で小刻みに回転させ、同時に鋼塊を軸方向に往復動させながら、鋼塊の腹を前記一対のタップで圧下する。
【0033】
鋼塊にはその全長に亘って中心部へ加工エネルギーが注入され、ここに中心部における圧着が実現する。
この軽圧下処理工程が配置されることにより、後段の分塊圧延工程における圧延ロールの負荷は軽減されることになる。
なお、軽圧下処理時に鋼塊の温度は低下するので、軽圧下処理後に鋼塊を再度加熱して前記した圧延開始温度にまで昇温してから分塊圧延工程に移送することが好ましい。
【0034】
【実施例】
1.鋳造工程
レードルファーネス法でSKD61相当の鋼種を溶製し、その溶鋼を鋳造して下記諸元の鋼塊を3本鋳造した。
上部外径(D1):664mm、底部外径(D2):479mm、平均直径(D3):572mm、高さ(H):2050mm、高径比:3.6、テーパ(片側):45.1mm/m、重量:4070kg。
【0035】
この鋼種の固相線温度(Ts)は1320℃である。
2.均熱処理工程
鋼塊の均熱処理には、炉内温度が1250±10℃に管理されている均熱炉を用いた。
鋼塊のうちの2本は、目標直径が230mmである棒鋼A1,A2を製造するための素材とし、また残りの1本は目標直径が200mmである棒鋼Bを製造するための素材とした。
【0036】
各鋼塊を上記均熱炉に装入し、目標とする棒鋼に対応して保持時間を次のように変化させた。
棒鋼A1用の素材:52時間、棒鋼A2用の素材:25時間、棒鋼Bの素材:25時間。
3.軽圧下工程
均熱炉から抽出した平均直径572mmの鋼塊の一端をマニプレータで把持し、送り:150mm/ショット、プレス速度:45ショット/分の条件で鍛伸を行った。すなわち、
1回目鍛伸で縦450mm、幅750mmの断面形状とし、2回目鍛伸で縦550mm、幅550mmの断面形状(圧下量200mm)とし、3回目鍛伸で縦410mm、幅620mmの断面形状(圧下量140mm)とした。
【0037】
鍛伸終了後における各棒鋼の表面温度は約1150℃であった。
4.分塊圧延工程
軽圧下工程終了後の各棒鋼を再度均熱炉で加熱したのち、分塊圧延し、その後、表1に示す態様の丸製品圧延を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
5.焼きなまし工程
以上の工程終了後の各棒鋼に対して温度860℃の条件で焼きなましを行い、棒鋼A1,A2,Bを製造した。
6.特性の評価
各棒鋼の中心部から、圧延方向と直交する方向に試験片を採取し、硬さ(HRC)を変化させたときのシャルピー衝撃値を測定した。その結果を図1に示した。
【0040】
図1から次のことが明らかである。
(1)直径230mmの棒鋼を製造する場合、その鋼塊に対する均熱処理時の保持時間が25時間であると、得られた棒鋼A2のシャルピー衝撃値は硬さ(HRC)が40〜48の範囲内で目標値に達しないことがある。
しかし、保持時間を52時間にすると、得られた棒鋼A1は、そのシャルピー衝撃値が硬さ(HRC)40〜48の範囲内で全て目標値(17J/cm2)よりも大きくなっている。
【0041】
(2)直径200mmの棒鋼Bの場合、その鋼塊に対する均熱処理時の保持時間が25時間であっても、シャルピー衝撃値は充分に目標値以上になっている。
(3)このようなことから、シャルピー衝撃値が目標値(17J/cm2)以上の棒鋼を製造しようとする場合、素材である鋼塊の直径に対応して均熱処理時の保持時間を変化させることが必要であることがわかる。
【0042】
次に、偏析に対する保持時間の影響を調べるために、棒鋼A1と棒鋼A2の中心部に対して、代表的な偏析元素であるCrに関する電子線プローブ微量分析法(EPMA)を行った。その結果、棒鋼A2の場合は、Cr炭化物を主体とする多数の偏析帯が観察された。しかしながら、棒鋼A1の場合は、偏析帯の数は減少していた。すなわち、均熱処理時の保持時間が長くなると、明らかに、Cr炭化物は拡散して組織内の偏析が軽減している。
【0043】
このように、棒鋼A1の場合、長時間の均熱処理を行った鋼塊から製造されているので、中心部の偏析が拡散除去され、その結果、棒鋼A2に比べて高いシャルピー衝撃値を示していると考えてよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明方法によれば、熱間ダイス鋼を分塊圧延してシャルピー衝撃値が17J/cm2以上と高靭性である太丸棒鋼の製造が可能である。本発明方法は、とくにAl押出しダイス用の棒鋼を安価に、短時間で量産する方法としてその工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】棒鋼のシャルピー衝撃値の測定結果を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は棒鋼の製造方法に関し、更に詳しくは、熱間ダイス鋼から成る太丸棒鋼を分塊圧延で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間ダイス鋼の中でも、SKD61は工具特性のバランスが優れていて、例えばAl押出しダイス、AlやCuのダイカスト用金型、鍛造用の型などの素材として多用されている。
これらのうち、例えばAl押出しダイスは、通常、成分調整された所定鋼種の棒鋼から製造され、耐衝撃性に優れていることが必要とされている。とりわけ、Al素材を押出し成形する中心箇所では靭性の高いことが必要とされる。
【0003】
そして、例えばAl押出しダイスの素材として使用される棒鋼は、一般に、次のようにして製造されている。
まず、例えばレードルファーネス法により、取鍋内に装入された原料を溶解・精錬して溶鋼を溶製し、その溶鋼を鋳型に注入したのち、冷却・凝固して所定鋼種の鋼塊(インゴット)を鋳造する。
【0004】
このときの鋳型としては、通常、上部側の方が底部側よりも順次大径になっていくテーパを有するものが使用される。したがって、得られた鋼塊は、上部外径が大きく、底部外径が小さく、高さ方向にはテーパがついた形状になっている。そして、形状によっても異なるが、例えばSKD61はV,Cr,Moなどの偏析元素の含有量が多いので、最終凝固部である鋼塊中心部の組織には中心偏析と2次パイプと呼ばれる空隙などが多数発生し、また外周と中心部の間に位置する組織には逆V偏析も発生し、更には鋼塊の頂部に頭部偏析が発生することがある。
【0005】
ついで、この鋼塊を均熱炉に装入し、所定の温度で所定時間保持する均熱処理を行って、鋼塊の鋳造組織を均質な組織にする。
そして、均熱炉から鋼塊を抽出し、ただちに所定の加工度で熱間加工を行って目的とする直径にまで細径化して棒鋼にする。
この熱間加工によって鋼塊の鋳造組織が鍛錬され、鋼塊の中心偏析や空隙の周囲に存在していた組織は圧着され、全体が加工組織に変化する。
【0006】
しかしながら、熱間加工時の加工度が不足する場合には、中心偏析や空隙などが存在する中心部は未圧着の状態になる。このような状態になっていると、製造した棒鋼の、とりわけその中心部の靭性が大幅に低下する。
とくに、鋼塊が大型形状である場合には、鋳造時に偏析や2次パイプが発生しやすくなるので、熱間加工を行っても中心部は未圧着状態になりやすく、製造した棒鋼の靭性低下が起こりやすい。
【0007】
このようなことから、目的とする直径が大径(太丸)の棒鋼を製造する場合の熱間加工としては、通常、鋼塊の中心部にまで大きな加工エネルギーを注入することができ、大きな加工度で鍛錬することができる熱間鍛造が採用されている。
このような熱間加工を終えたのち、焼きなましを行って加工歪みを除去し、棒鋼は次の加工工程に移送される。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−64755号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2002−45901号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鍛造と圧延を対比すると、一般に、後者を採用した方が、加工時間の短縮、高い量産性を実現することができ、製造コストの低減が可能である。
したがって、棒鋼の製造に際しても熱間圧延を採用することの方が工業的には有利であるといえる。
【0011】
しかしながら、太丸の棒鋼の製造に際して圧延を採用すると、その棒鋼の中心部には前記した未圧着状態が残りやすく、そのため、鍛造で製造した棒鋼に比べて中心部の靭性が低下するという問題がある。
本発明は、上記したような問題を解決し、目的とする棒鋼が大径(太丸)であったとしても、その中心部の靭性は鍛造で製造した棒鋼の場合と同等である棒鋼を分塊圧延によって製造する方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成するための研究過程で、シャルピー衝撃値測定後の試験片の破面を観察したところ、シャルピー衝撃値が低い(低靭性)の試験片の割れ起点部には炭化物の存在が認められたが、シャルピー衝撃値が高い(高靭性)の試験片には認められないという事実を見出した。そして、両試験片の履歴を調べたところ、両者の大きな相違点は均熱処理時の保持時間の長短にあることが判明した。
【0013】
これらの知見を基礎にして、本発明者らは、鋳造組織の偏析は均熱処理時に熱拡散挙動を起こし、保持時間が長くなると、中心部の偏析は拡散してしまい、そのため、得られた試験片のシャルピー衝撃値が高くなるとの着想を得た。
そして、この着想に基づいて、鋼塊の均熱処理時における保持時間とシャルピー衝撃値との関係について鋭意研究を重ねた結果、本発明の棒鋼の製造方法を開発するに至った。
【0014】
すなわち、本発明においては、熱間ダイス鋼から成り、直径が170〜250mmである棒鋼を製造する方法において、
C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る鋼種の鋼塊を鋳造する工程;
前記鋼塊に対し、前記鋼種の状態図における固相線温度未満固相線温度−100℃以上の温度域で、
(i)目的とする棒鋼の直径が170〜200mmである場合には25時間以上、
(ii)目的とする棒鋼の直径が200〜250mmである場合には50時間以上の均熱処理を施す工程;および、
得られた処理材を分塊圧延して目的とする直径に整形する工程;
を備えていることを特徴とする棒鋼の製造方法が提供される。
【0015】
好ましくは、更に、前記均熱処理工程と前記分塊圧延工程の中間に、前記処理材に対する軽圧下処理工程が配置され、また、前記分塊圧延工程に続けて焼きなまし工程が配置される棒鋼の製造方法が提供される。
更には、上部外径をD1(mm)、底部外径をD2(mm)、平均直径をD3(mm)、高さをH(mm)としたとき、次式:H/D3で示される高径比が3.0〜3.8、(D1−D2)×1000/H×2で示されるテーパ(片側)が45〜70mm/mになっている鋼塊を用いる棒鋼の製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記した組成の熱間ダイス鋼に分塊圧延を行って、直径が170〜250mmであり、靭性が鍛造で製造した棒鋼と略同等である棒鋼を製造する方法である。その場合、目標とする靭性は、シャルピー衝撃値で17J/cm2以上に設定される。
【0017】
本発明は、所定鋼種の溶鋼を製造して所定形状の鋼塊にする鋳造工程、その鋼塊に均熱処理を施す均熱処理工程、および処理材に分塊圧延を行って目的とする直径の棒鋼に熱間加工する分塊圧延工程をこの順序で直列に配置して実施される。そして、好ましくは、均熱処理工程と分塊圧延工程の中間に後述する軽圧下処理工程が配置される。
【0018】
なお、上記した一連の工程の後に、焼きなまし工程を配置することにより、分塊圧延工程で棒鋼に蓄積した加工歪みを解放させることは従来と変わらない。
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)鋳造工程
この工程では、所定組成の鋼種から成る鋼塊が鋳造される。
【0019】
本発明が対象とする鋼種は、JIS規格のSKD61相当品である。具体的には、C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る。
まず、所定のスクラップを例えば取鍋に装入してアーク加熱を行い、合成スラグを添加し、溶鋼をArで撹拌しながら取鍋の中を強還元雰囲気に維持した状態でサブマージドアーク精錬を行って、所定組成の溶鋼を溶製する。
【0020】
なお、この精錬時には、できるだけPやSが溶鋼に混入しないようにすることが好ましい。例えば、Pは、鋼塊に劈開型の低温脆性を助長させる原因となり、また凝固時に結晶粒界に偏析して粒界破壊を起こさせる原因となるからであり、Sは後述する分塊圧延工程を実施したときに、粒界割れを助長し、また他の成分との間で生成する硫化物が亀裂発生源となって棒鋼の延性を低下させるからである。このようなことから、PやSの含有量が少ないほど、棒鋼の靭性は向上するが、シャルピー衝撃の目標値を17J/cm2以上に設定していることからすれば、Pは0.030質量%以下、Sは0.030質量%以下に制御することが好ましい。
【0021】
精錬された溶鋼を次に鋳型に注入し、冷却・凝固して鋼塊を鋳造する。
このとき、鋳造組織が形成されると同時に、鋼塊には中心偏析や2次パイプ、逆V偏析などが発生する。これらの偏析は、いずれも、構成成分のCr,Mo,Vの炭化物を主体とするものであって、縞模様をなして生成し、靭性低下の最大要因となる。また、中心部の2次パイプも、分塊圧延工程で完全に圧着されない場合は、やはり棒鋼の靭性を大幅に低下させる。
【0022】
鋳造された鋼塊の組織内におけるこのような偏析の発生状況は、当該鋼塊の上部外径をD1(mm)、底部外径D2(mm)、平均径をD3(mm)、高さをH(mm)としたときに、次式:H/D3で示される高径比と、次式:(D1−D2)/Hで示されるテーパとの相関で大きく左右されるということが知られている。すなわち、高径比が大きすぎても小さすぎてもその鋼塊では偏析が起こりやすく、またテーパが小さすぎると同じく偏析が起こりやすいとされている(特許文献1を参照)。
【0023】
以上のことを考慮して、鋳造工程においては、高径比が3.0〜3.8であり、またテーパが45〜70mm/mである鋼塊を鋳造することが好ましい。
(2)均熱処理工程
この工程は、鋳造工程で鋳造した鋼塊に均熱処理を施すことにより偏析を拡散させて組織を均質にし、同時に分塊圧延工程における変形抵抗を低くして圧延性を確保するために行われる。具体的には、鋼塊を均熱炉に装入し、一定の温度で加熱し、その温度で所定の時間保持する。
【0024】
この均熱処理時に採用する温度は、鋼塊の鋼種との関係で設定される。具体的には、対象とする鋼塊の鋼種の状態図において、当該鋼種の固相線温度をTs(℃)とした場合、処理温度(T℃とする)は、次式:
Ts−100≦T<Ts
を満足する温度域に設定される。
【0025】
温度Tが温度Ts以上である場合には、比較的低融点である炭化物を主体とする偏析が溶融してしまい、鋼塊の組織内には新たに空隙が分散して形成され、靭性低下が引き起こされるからである。また、温度Tが温度Ts−100より低い場合には、変形抵抗が大きくなって、続けて行う分塊圧延工程における分塊圧延が円滑に進まず、中心部の未圧着状態が残存したり、割れなどが発生するようになるからである。
【0026】
ところで、鋼塊の内部組織における偏析の発生状況は、前記したように、鋼塊の形状によって異なり、一般に、大型形状の鋼塊であればあるほど、偏析の発生個数は多くなり、また大きくなる傾向を示す。したがって、太丸棒材の製造が目的とされる場合には、細径の棒材の場合に比べて偏析の拡散を実現するための保持時間は長くすることが必要である。
【0027】
このようなことから、本発明においては、製造目的の棒材の直径との関係で均熱処理時における保持時間を変化させる。すなわち、
(i)製造目的の棒材の直径が170〜200mmである場合には、上記した温度Tにおける保持時間を25時間以上に設定し、
(ii)製造目的の棒材の直径が200〜250mmである場合には、上記した温度Tにおける保持時間を50時間以上に設定する。
【0028】
上記した条件が満たされていない場合は、鋼塊に偏析などが残存していて、分塊圧延工程の終了後にあっても、シャルピー衝撃値17J/cm2以上という目標の靭性を実現することができない。
偏析の拡散と解消という点では、この保持時間が長ければ長いほどよいのであるが、それは熱エネルギーロスを増大させることになるので、(i),(ii)のいずれの場合においても、保持時間は最長でも上記した各保持時間の1.5倍程度に設定すれば充分である。
【0029】
(3)分塊圧延工程
この工程では、均熱炉から抽出された鋼塊をただちに分塊圧延して未圧着部は圧着し、目的直径の棒鋼に整形する。
その場合、目的直径との関係で圧延ロールに通すパス回数を変化させる。例えば、細径の棒鋼の製造時にはパス回数は増加させる。そして、目的直径が200〜250mmの太丸である場合には、通常、数回、例えば3パスに設定することが好ましい。
【0030】
また、各パス時の減面率は、目的直径との関係で適宜選定されるが、例えば目的直径が230mmの棒鋼を対象とする場合には、パス回数を3回とし、1回目パスで減面率8〜13%、2回目パスで減面率18〜23%、3回目パスで減面率7〜12%に設定することが好ましい。
なお、この分塊圧延は、前記した均熱処理温度1230〜1260℃程度で開始される。そして、圧延は、鋼塊の温度がその固相線温度(Ts)よりも200〜300℃程度低い温度にまで降温する間で終了する。そのような温度域にあるとき、鋼塊は適正な圧延性を備えているからである。
【0031】
(4)焼きなまし工程
この工程は、分塊圧延によって棒鋼に蓄積された加工歪みを除去する工程であり、例えば820〜870℃の温度条件下で実施すればよい。
本発明においては、上記した均熱処理工程と分塊圧延工程の中間に軽圧下処理工程を配置することが好ましい。とくに、目的直径が大きい棒鋼を製造する際に、この軽圧下処理を施すと、鋼塊の中心部は、後段の分塊圧延時に先立って鍛錬され、そのことによって中心部の圧着を事前にある程度進行させることができるので好適である。
【0032】
この軽圧下処理工程としては、特許文献2のインラインプレス工程をそのまま転用すればよい(特許文献2を参照)。
具体的には、均熱炉から抽出した鋼塊の一端をマニプレータで把持し、その状態で、鋼塊を一対のタップの間に挿入し、鋼塊をある角度で小刻みに回転させ、同時に鋼塊を軸方向に往復動させながら、鋼塊の腹を前記一対のタップで圧下する。
【0033】
鋼塊にはその全長に亘って中心部へ加工エネルギーが注入され、ここに中心部における圧着が実現する。
この軽圧下処理工程が配置されることにより、後段の分塊圧延工程における圧延ロールの負荷は軽減されることになる。
なお、軽圧下処理時に鋼塊の温度は低下するので、軽圧下処理後に鋼塊を再度加熱して前記した圧延開始温度にまで昇温してから分塊圧延工程に移送することが好ましい。
【0034】
【実施例】
1.鋳造工程
レードルファーネス法でSKD61相当の鋼種を溶製し、その溶鋼を鋳造して下記諸元の鋼塊を3本鋳造した。
上部外径(D1):664mm、底部外径(D2):479mm、平均直径(D3):572mm、高さ(H):2050mm、高径比:3.6、テーパ(片側):45.1mm/m、重量:4070kg。
【0035】
この鋼種の固相線温度(Ts)は1320℃である。
2.均熱処理工程
鋼塊の均熱処理には、炉内温度が1250±10℃に管理されている均熱炉を用いた。
鋼塊のうちの2本は、目標直径が230mmである棒鋼A1,A2を製造するための素材とし、また残りの1本は目標直径が200mmである棒鋼Bを製造するための素材とした。
【0036】
各鋼塊を上記均熱炉に装入し、目標とする棒鋼に対応して保持時間を次のように変化させた。
棒鋼A1用の素材:52時間、棒鋼A2用の素材:25時間、棒鋼Bの素材:25時間。
3.軽圧下工程
均熱炉から抽出した平均直径572mmの鋼塊の一端をマニプレータで把持し、送り:150mm/ショット、プレス速度:45ショット/分の条件で鍛伸を行った。すなわち、
1回目鍛伸で縦450mm、幅750mmの断面形状とし、2回目鍛伸で縦550mm、幅550mmの断面形状(圧下量200mm)とし、3回目鍛伸で縦410mm、幅620mmの断面形状(圧下量140mm)とした。
【0037】
鍛伸終了後における各棒鋼の表面温度は約1150℃であった。
4.分塊圧延工程
軽圧下工程終了後の各棒鋼を再度均熱炉で加熱したのち、分塊圧延し、その後、表1に示す態様の丸製品圧延を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
5.焼きなまし工程
以上の工程終了後の各棒鋼に対して温度860℃の条件で焼きなましを行い、棒鋼A1,A2,Bを製造した。
6.特性の評価
各棒鋼の中心部から、圧延方向と直交する方向に試験片を採取し、硬さ(HRC)を変化させたときのシャルピー衝撃値を測定した。その結果を図1に示した。
【0040】
図1から次のことが明らかである。
(1)直径230mmの棒鋼を製造する場合、その鋼塊に対する均熱処理時の保持時間が25時間であると、得られた棒鋼A2のシャルピー衝撃値は硬さ(HRC)が40〜48の範囲内で目標値に達しないことがある。
しかし、保持時間を52時間にすると、得られた棒鋼A1は、そのシャルピー衝撃値が硬さ(HRC)40〜48の範囲内で全て目標値(17J/cm2)よりも大きくなっている。
【0041】
(2)直径200mmの棒鋼Bの場合、その鋼塊に対する均熱処理時の保持時間が25時間であっても、シャルピー衝撃値は充分に目標値以上になっている。
(3)このようなことから、シャルピー衝撃値が目標値(17J/cm2)以上の棒鋼を製造しようとする場合、素材である鋼塊の直径に対応して均熱処理時の保持時間を変化させることが必要であることがわかる。
【0042】
次に、偏析に対する保持時間の影響を調べるために、棒鋼A1と棒鋼A2の中心部に対して、代表的な偏析元素であるCrに関する電子線プローブ微量分析法(EPMA)を行った。その結果、棒鋼A2の場合は、Cr炭化物を主体とする多数の偏析帯が観察された。しかしながら、棒鋼A1の場合は、偏析帯の数は減少していた。すなわち、均熱処理時の保持時間が長くなると、明らかに、Cr炭化物は拡散して組織内の偏析が軽減している。
【0043】
このように、棒鋼A1の場合、長時間の均熱処理を行った鋼塊から製造されているので、中心部の偏析が拡散除去され、その結果、棒鋼A2に比べて高いシャルピー衝撃値を示していると考えてよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明方法によれば、熱間ダイス鋼を分塊圧延してシャルピー衝撃値が17J/cm2以上と高靭性である太丸棒鋼の製造が可能である。本発明方法は、とくにAl押出しダイス用の棒鋼を安価に、短時間で量産する方法としてその工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】棒鋼のシャルピー衝撃値の測定結果を示すグラフである。
Claims (4)
- 熱間ダイス鋼から成り、直径が170〜250mmである棒鋼を製造する方法において、
C:0.32〜0.42質量%,Si:0.8〜1.2質量%,Cr:4.5〜5.5質量%,Mo:1.0〜1.5質量%,V:0.8〜1.2質量%,残部がFeと不可避的不純物から成る鋼種の鋼塊を鋳造する工程;
前記鋼塊に対し、前記鋼種の状態図における固相線温度未満固相線温度−100℃以上の温度域で、
(i)目的とする棒鋼の直径が170〜200mmである場合には25時間以上、
(ii)目的とする棒鋼の直径が200〜250mmである場合には50時間以上の均熱処理を施す工程;および、
得られた処理材を分塊圧延して目的とする直径に整形する工程;
を備えていることを特徴とする棒鋼の製造方法。 - 前記均熱処理工程と前記分塊圧延工程の中間に、前記処理材に対する軽圧下処理工程が配置される請求項1の棒鋼の製造方法。
- 前記分塊圧延工程に続けて焼きなまし工程が配置される請求項1または2の棒鋼の製造方法。
- 前記鋼塊は、上部外径をD1(mm)、底部外径をD2(mm)、平均直径をD3(mm)、高さをH(mm)としたとき、次式:H/D3で示される高径比が3.0〜3.8、(D1−D2)×1000/H×2で示されるテーパ(片側)が45〜70mm/mになっている請求項1〜3のいずれかの棒鋼の製造方法。
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2003
- 2003-03-10 JP JP2003063701A patent/JP2004269981A/ja active Pending
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