JP3091794B2 - 押出し加工性及び鍛造性に優れた自動車用軸部品の製造方法 - Google Patents

押出し加工性及び鍛造性に優れた自動車用軸部品の製造方法

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JP3091794B2 JP04166230A JP16623092A JP3091794B2 JP 3091794 B2 JP3091794 B2 JP 3091794B2 JP 04166230 A JP04166230 A JP 04166230A JP 16623092 A JP16623092 A JP 16623092A JP 3091794 B2 JP3091794 B2 JP 3091794B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車用軸部品、例
えばリヤアクスルシャフト、ギヤシャフト及びプロペラ
シャフト等の軸部の端部に軸部よりも大径の頭部を一体
に成形した軸部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の軸部品、例えばリヤアクスルシ
ャフトは、丸棒に押出し加工を施して所定径の軸部を形
成する工程及び、軸部端面側から鍛造を施し、軸部の所
定領域を軸部よりも大径の頭部とする工程、にて製造す
ることが多い。この製造において問題となるのは、押出
し加工工程では丸棒の軸芯、また鍛造工程では頭部の中
心をそれぞれ起点とする割れ、いわゆるシェブロンクラ
ックが高い頻度で生じることである。特に押出し加工
は、通常の引き抜き加工に比較してより高い減面率でか
つ冷間で行われるためシェブロンクラックが発生し易
く、また押出し加工で発生した微小の割れが、次の鍛造
工程で成長することもある。このシェブロンクラック
は、連続鋳造中の凝固時に生成する鋳片中心部近傍のマ
クロ及びセミマクロ偏析に起因して生じるものである。
【0003】かかる中心偏析の防止策として、例えば2
次冷却帯域における電磁攪拌などが試みられたが、セミ
マクロ偏析までを軽減するには至ってなく、その効果は
十分とはいえない。また鋳片の凝固末期に一対のロール
を用いて大圧下を施す、いわゆるインラインリダクショ
ン法{鉄と鋼 第60年(1974) 第7号 875〜884 頁}の
適用も試みられたが、この方法では、未凝固層の大きい
鋳片領域における圧下が不十分な場合にはC、Mn、P及
びS等の偏析している凝固界面に割れ(以下内部割れと
示す)が発生するという問題があった。
【0004】その他、特開昭49-121738 号公報には、鋳
片の凝固先端部付近でロール対による軽圧下を施して、
該部分の凝固収縮量を圧下により補償する方法が、また
特開昭52-54623号公報には、鍛造金型を用いて鋳片の凝
固完了点近傍を大圧下する方法がそれぞれ提案されてい
る。
【0005】しかしながらロールによる軽圧下の場合に
は、複数対のロールにより数mm/mの圧下を施したとして
も、ロールピッチ間に生じる凝固収縮やバルジングを十
分に防止することができず、中心偏析の軽減及び内部割
れ防止に対する効果は不十分で、また圧下位置が適切で
なければかえって中心偏析の発生を促す不利があった。
他方、鍛造金型を用いて鋳片の凝固完了点近傍を大圧下
する方法は、インラインリダクション法のようなロール
による大圧下に比べて凝固界面が割れにくく、また負偏
析も極力回避することが可能で、セミマクロ偏析まで改
善できることが明らかになっているものの、依然として
未凝固層の大きい鋳片領域における圧下が不十分だと内
部割れが発生し、また未凝固層の小さい領域を圧下して
もその効果が得られないことから、最適な圧下条件を模
索しているのが現状である。
【0006】従って鋳片に生成する中心偏析を飛躍的に
改善するまでには至ってなく、偏析部のC、P及びS等
の濃度を低下するために溶鋼のC濃度の目標値を下げた
り、P及びSを0.005 %未満にしたり、また鋼種や用途
によっては鋳片段階において拡散焼鈍などを施して対処
しているのが実状であり、大幅なコストアップにもなっ
ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の問
題を有利に解決するもので、連続鋳造法を利用する場合
であっても、中心偏析の生成を極力低減し、もって押出
し加工及び鍛造時にシェブロンクラックが生じない、押
出し加工性及び鍛造性に優れた自動車用軸部品の有利な
製造方法について提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわちこの発明は、
C:0.20〜0.8 wt%(以下単に%で示す)、Si:0.1 〜
1.0 %、Mn:0.3 〜2.0 %、Cr:0.1 〜1.0 %、P:0.
005 〜0.050 %及びS:0.005 〜0.050 %を含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物の組成になる溶鋼を連続鋳
造し、その際、鋳片内部溶鋼が凝固を完了するクレータ
エンド近傍にて、取鍋中溶鋼のC含有量(C0)に対する鋳
片軸心部におけるC含有量(C)の比C/C0が0.8 〜1.
1 となる鍛圧加工を施し、次いで押出し加工を施して軸
部を成形し、その後軸部端に鍛造を施して軸部よりも大
径の頭部を一体成形することを特徴とする押出し加工性
及び鍛造性に優れた自動車用軸部品の製造方法(第1発
明)である。
【0009】またこの発明は、上記した第1発明におい
て、素材成分としてさらに、Mo:0.01〜0.5 %、V:0.
005 〜0.050 %、Ti:0.002 〜0.050 %、Nb:0.005 〜
0.050 %、Al:0.002 〜0.100 %及びB:0.0002〜0.00
30%を含有させた、自動車用軸部品の製造方法(第2発
明)である。
【0010】
【作用】まず、この発明において溶鋼の成分組成を上記
の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.20〜0.8 % C量は、主に焼き入れ後の製品の要求強度(表面硬さ、
焼き入れ有効硬化深さ)により決定されるが、C濃度が
高くなればなるほど押出し加工性が低下し、さらにCが
0.8 %を超えると衝撃値低下の問題が生じて実用的では
ないため、0.8%を上限とする。一方Cが0.20%未満で
あれば、十分な加工性を確保できることから、0.20%を
下限とした。
【0011】Si:0.01〜1.0 % Siは、脱酸剤として少なくとも 0.01 %は必要とする。
一方SiはCの活量を上げる作用があり、特に1.0 %を超
えると脱炭層の生成が顕著となり、焼入性及び疲労強度
の低下を招くため、上限は1.0 %とした。
【0012】Mn:0.3 〜2.0 % Mnは、Siと同様、脱酸剤として作用するだけでなく、鋼
の脆化をもたらすSを固定させ、またさらには焼入性を
向上させて強度及び延性を高める上でも有用な元素であ
るが、含有量が 0.3%に満たないとその添加効果に乏し
く、一方 2.0%を超えると高価となるばかりか熱間圧延
後の制御冷却あるいは加工途中の熱処理工程においてミ
クロマルテンサイトの生成を促し、特に冷間での加工性
を害するので、0.3 〜2.0 %の範囲で添加するものとし
た。
【0013】Cr:0.05〜1.0 % Crは焼入れ性を確保するのに不可欠の成分であり、また
冷間押出しにおける変形能を向上する働きもあるため、
0.05%以上の含有が必要である。一方1.0 %をこえると
変形能の向上効果は飽和する上高価な元素でもあるの
で、1.0 %を上限とする。
【0014】Mo:0.01〜0.5 % Moは、焼入れ性の向上に有効な成分であり、また冷間加
工時の変形抵抗も増大させないため、0.01%以上は含有
させる。一方、0.5 %をこえると変形抵抗が大きくなる
上、高価な元素であるところから、0.5 %を上限とす
る。
【0015】 V:0.005 〜0.050 %、Nb:0.005 〜0.050 % V及びNbはそれぞれ、強度の向上に有効に寄与すると共
に、結晶粒径を細かくする作用をもつ。しかしながら含
有量が 0.005%に満たないとその添加効果に乏しく、一
方 0.050%を超えるとその効果は飽和に達するので、そ
れぞれ 0.005〜0.050 %の範囲で含有させるものとし
た。
【0016】Ti:0.002 〜0.050 % Tiは、Alと同様、強脱酸剤であると同時に、結晶粒径を
細かくし、焼入性を制御する作用をもつ。しかしながら
含有量が 0.002%に満たないとその添加効果に乏しく、
一方 0.050%を超えるとその効果は飽和に達するので、
0.002〜0.050%の範囲で含有させるものとした。
【0017】Al:0.002 〜0.100 % Alは、強脱酸剤であると同時に、結晶粒径を細かくし、
焼入性を制御する作用をもつ。しかしながら含有量が
0.002%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.10
0%を超えるとその効果は飽和に達するだけでなく、ア
ルミナ系の非金属酸化物の増加を招くので、 0.002〜0.
100 %の範囲で含有させるものとした。
【0018】B:0.0002〜0.0030% Bは、焼入性の向上に有用な成分であるが、含有量が0.
0002%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.0030
%を超えてもその効果は飽和し、それ以上の効果は望め
ないので、0.0002〜0.0030%の範囲で含有させるものと
した。
【0019】なお一般に焼入れを施して最終製品で所定
の強度とする鋼材は、その他の品質要求(例えば製品使
用時の軟化抵抗等)も含め、適宜上記の成分組成範囲内
で添加量を決定することが好ましい。
【0020】P及びS:0.005 〜0.050 % P及びSは有害元素として極力抑制する必要がある。そ
こで従来は中心偏析又は鋳片内部割れに起因した焼割れ
を防止するために、偏析部のP及びS濃度を0.005 %未
満に抑制していた。しかしながらこの発明に従い鍛圧加
工を施すと、中心偏析の軽減と内部割れの防止とを同時
にはかることができるため、P及びS濃度を0.005 %未
満に抑制する必要はない。しかし0.050 %をこえると、
鍛圧加工を施しても内部割れが発生し、冷間加工時又は
焼入れ時に割れが発生するため、0.050 %を上限とす
る。
【0021】さてこの発明では、上述したような好適成
分組成になる溶鋼の連続鋳造に際し、鋳片の内部溶鋼が
凝固を完了するクレータエンド近傍にて成分濃化防止処
理を施すことによって、取鍋中溶鋼のC含有量(C0)に対
する鋳片軸心部におけるC含有量(C)の比C/C0を0.
8 〜1.1 に制御する。ここに成分濃化防止処理として
は、鍛圧加工がとりわけ有利に適合するけれども、この
発明は、これだけに限るものではなく、C/C0比を0.8
〜1.1 に制御することができるならば、他の手段であっ
ても良い。
【0022】以下、上記した鍛圧加工によってC/C0
の制御が可能な理由について説明する。すなわち内部溶
鋼の凝固末期には、Cの濃化が進んだ溶鋼がクレータエ
ンド近傍に存在するため、そのまま凝固すれば中心偏析
となるわけであるが、凝固前に鍛圧加工を施すと、かよ
うなC濃化溶鋼は上方に押し出される結果、中心部にお
けるC濃度はさほど上昇することはない。従って鍛圧加
工の実施時期をCの濃化程度に応じて調節すれば、鋳片
軸心部におけるC含有量を調整できるわけである。
【0023】ここでC/C0比の上限を1.1 としたのは、
1.1 をこえるとシェブロンクラックが発生するためであ
る。一方C/C0比の下限を0.8 としたのは、焼入れ焼戻
し後の製品の引張り強さが低下し、最終製品に使用上の
不都合が生じるためである。これは鋳片中心部のC/C0
比が0.8 未満の負偏析となり、強度保証に必要なCやMn
の含有量が維持できなくなるからである。
【0024】従ってこの発明では、鍛圧加工の如き成分
濃化防止処理によって制御すべき鋳片軸心部におけるC
/C0比を0.8 〜1.1 の範囲に限定したのである。なお、
好ましい鍛圧加工法としては、発明者らが先に特開昭60
-82257号公報において開示した連続鍛圧法がある。
【0025】
【実施例】表1に示す化学組成になる溶鋼(記号A〜
F)を400 ×560 mmのモールドで連続鋳造し、引き抜き
中の鋳片に対し、鋳片内部の溶鋼が凝固を完了するクレ
ータエンド近傍にて、鋳片軸心部のC/C0比:0.85〜1.
0 を目標として連続的に鍛圧加工を施し、ブルームを製
造した。その後、鋼片ミルによって150 ×150 mmのビレ
ットに熱間圧延した。さらに棒鋼ミルにて34mmφの丸棒
に熱間圧延した。その後この丸棒を1回の押出し加工で
24mmφの軸部を成形し、次いで軸部端面に熱間鍛造を施
して90mmφの頭部を成形した。
【0026】
【表1】
【0027】なお比較例は、従来工程どうり、連続鋳造
後、鍛圧加工を行わずに同様に軸部品とする加工を行っ
た。また出鋼時の溶鋼加熱度はすべて20〜30℃の範囲で
鋳込み、さらに分塊圧延から棒鋼圧延までの熱間圧延温
度は、この発明の実施例及び比較例共に同一温度履歴と
なるよう配慮した。かくして得られた軸部品について、
超音波探傷法によってシェブロンクラックの有無を調べ
た。さらに焼入れ焼戻し後の製品の絞りについても、調
査した。その結果を表2に示すように、この発明に従っ
て得られた軸部品におけるシェブロンクラックの発生は
皆無であった。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】かくしてこの発明に従い、連続鋳造時に
成分濃化防止処理を連続的に付与し鋳片軸心部のC/C0
比を制御することによって、シェブロンクラックを発生
することなしに軸部品を製造できる。また鍛圧加工を施
すことにより、P及び/又はS濃度を0.005 %未満に抑
制することなしに、シェブロンクラックを防止できるた
め、製鋼の精錬コストを低減できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/18 C22C 38/18 38/32 38/32 (56)参考文献 特開 平2−84237(JP,A) 特開 平3−226337(JP,A) 特開 平3−281049(JP,A) 特開 平5−192742(JP,A) 特開 平5−131292(JP,A) 特開 平5−177245(JP,A) 特開 平5−192743(JP,A) 特開 平5−192744(JP,A) 特開 平5−192736(JP,A) 特開 平3−199307(JP,A) 特開 平3−199308(JP,A) 特開 平3−260010(JP,A) 特開 平3−207812(JP,A) 特開 平3−183739(JP,A) 特開 平3−122218(JP,A) 特開 平2−147148(JP,A) 特開 平1−212720(JP,A) 特開 昭50−8713(JP,A) 特公 昭48−40535(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/00 B21C 23/14 B21K 1/06 B22D 11/128 350 C22C 38/00 301 C22C 38/18 C22C 38/32

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.20〜0.8 wt%、 Si:0.01〜1.0 wt%、 Mn:0.3 〜2.0 wt%、 Cr:0.05〜1.0 wt%、 P:0.005 〜0.050 wt%及び S:0.005 〜0.050 wt% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる
    溶鋼を連続鋳造し、その際、鋳片内部溶鋼が凝固を完了
    するクレータエンド近傍にて、取鍋中溶鋼のC含有量(C
    0)に対する鋳片軸心部におけるC含有量(C)の比C/
    C0が0.8 〜1.1 となる、成分濃化防止処理を施し、次い
    で押出し加工による軸部の成形と鍛造による頭部の成形
    とを施し、軸部端に軸部よりも大径の頭部を一体成形す
    ることを特徴とする押出し加工性及び鍛造性に優れた自
    動車用軸部品の製造方法。
  2. 【請求項2】 C:0.20〜0.8 wt%、 Si:0.01〜1.0 wt%、 Mn:0.3 〜2.0 wt%、 Cr:0.05〜1.0 wt%、 P:0.005 〜0.050 wt%及び S:0.005 〜0.050 wt% を含み、さらに Mo:0.01〜0.5 wt%、 V:0.005 〜0.050 wt%、 Ti:0.002 〜0.050wt %、 Nb:0.005 〜0.050 wt%、 Al:0.002 〜0.100 wt%及び B:0.0002〜0.0030wt% のうちから選んだ少なくとも1種を含有し、残部はFeお
    よび不可避的不純物の組成になる溶鋼を連続鋳造し、そ
    の際、鋳片内部溶鋼が凝固を完了するクレータエンド近
    傍にて、取鍋中溶鋼のC含有量(C0)に対する鋳片軸心部
    におけるC含有量(C)の比C/C0が0.8 〜1.1 とな
    る、成分濃化防止処理を施し、次いで押出し加工による
    軸部の成形と鍛造による頭部の成形とを施し、軸部端に
    軸部よりも大径の頭部を一体成形することを特徴とする
    押出し加工性及び鍛造性に優れた自動車用軸部品の製造
    方法。
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