JP2008210857A - 超電導磁石装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】コイル容器の重量を軽減し、装置の軽量化を図ると共に、超電導コイルと容器外部とのアクセスの自由度を高めた超電導磁石装置を得る。
【解決手段】高温超電導線材を巻回した高温超電導コイル1をコイル容器2に収容し、それらを輻射熱シールド板3で包囲し、更に全体を真空の外槽4に収納し、高温超電導コイル1をコイル支持部材5によって外槽に固定する超電導磁石装置21であって、高温超電導線材として、補強高温超電導線材を使用し、コイル容器2は、コイル支持部材5の近傍に限定して部分的に設け、コイル容器2を介して高温超電導コイル1をコイル支持部材5に保持し外槽1に固定するように構成した。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えば、磁気浮上式鉄道に使用される超電導磁石装置に関し、特に高温超電導コイルを包囲収容したコイル容器に関するものである。
磁気浮上式鉄道に使用される超電導磁石装置において、従来の超電導材料に替えて、高温超電導材料を用いた超電導磁石装置の研究開発が進められている。高温超電導磁石装置の高温超電導コイルは、従来の液体ヘリウム温度(4K)で使用されてきた、いわゆる低温超電導コイルに較べ、その臨界温度が高い。例えば、ビスマス系の線材では、液体水素温度(20K)での利用ができるようになってきた。また、伝熱経路を介して冷凍機により冷却される伝導冷却型の高温超電導コイルが一般的で、臨界温度以下の予め定められた温度でも運転ができるようになってきた。
高温超電導コイルを利用した超電導磁石装置としては、例えば、冷凍機を備えた真空容器で包囲形成された熱輻射シールドと、この熱輻射シールドに収容し、コイル容器で包囲収容した高温超電導コイルと、冷凍機とコイル容器とを互いに接続させる伝熱体とを備えた高温超電導マグネットの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−126916号公報(第2頁、図7)
現在広く利用されている高温超電導線材は、テープ状で、その線材に働く応力に対する臨界電流密度の劣化が大きい。例えば、磁気浮上式鉄道では、コイル自身の起磁力が大きく運用時には過大なフープ応力を生じる。また、走行時には地上コイルとの間で電磁力が作用するため過大な振動に耐え得る構成が必要である。上記特許文献1に示す高温超電導マグネットにおいても、高温超電導コイルは、全周にわたって堅牢なコイル容器で包囲収容されている。このため、コイル容器が重量物になり、装置全体の重量が増すと共に、冷凍機から接続される伝導冷却部材のコイル面への接続、コイル電流リードの外部への引き出しなど、超電導コイルと容器外部とのアクセスが複雑になるという問題点があった。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、コイル容器の重量を軽減し、装置の軽量化を図ると共に、超電導コイルと容器外部とのアクセスの自由度を高めた超電導磁石装置を得ることを目的とする。
この発明に係わる超電導磁石装置は、高温超電導線材を巻回して形成された高温超電導コイルと、高温超電導コイルを収容するコイル容器と、高温超電導コイル及びコイル容器を包囲して設けられ輻射熱の侵入を防ぐ輻射熱シールド板と、輻射熱シールド板を包囲して設けられ内部を真空断熱する外槽と、高温超電導コイルを保持して外槽に固定するコイル支持部材とを備えた超電導磁石装置において、
高温超電導線材は、補強高温超電導線材を使用し、コイル容器は、コイル支持部材の近傍に限定して設け、コイル容器を介して高温超電導コイルをコイル支持部材に保持するようにしたものである。
この発明の超電導磁石装置によれば、高温超電導コイルの線材に補強高温超電導線材を使用し、コイル支持部材の近傍に限定してコイル容器を設け、そのコイル容器を介して高温超電導コイルをコイル支持部材に保持して外槽に支持固定するようにしたので、コイル容器を高温超電導コイルの全周ではなく部分的に設けたことにより超電導磁石装置を軽量化できると共に、コイル容器のない高温超電導コイルの裸部分に冷凍機からの伝導冷却部材や電流リードを接続できるため、超電導コイルと外部とのアクセスの自由度に優れた超電導磁石装置を得ることができる。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による超電導磁石装置を示す図で、真空容器である外槽の内側を正面から見たときの構成図であり、図2は図1の矢印II−II方向から見た断面図である。
超電導磁石装置を説明する前に、本発明の超電導磁石装置が適用される磁気浮上式鉄道について間単に説明する。図5は、一般的な磁気浮上式鉄道の概略図である。
図5に示すように、超電導磁石装置21は、車両22の下部に配置された台車23の両側に取り付けられている。地上側に敷設されたU字型のガイドウェイ24の内壁面に、台車23側の超電導磁石装置21と対向するように、地上コイル25が設置されている。この地上コイル25と超電導磁石装置21とが電磁気的に作用することにより、車両22を浮上走行させるように構成されている。
次に、図1、2に戻り本発明の超電導磁石装置について説明する。
図1の構成図において、超電導磁石装置21は、後述の補強高温超電導線材をレーストラック状に巻回して形成した高温超電導コイル1と、高温超電導コイル1を部分的に包囲収容するコイル容器2と、高温超電導コイル1及びコイル容器2を収容し外部からの輻射熱の侵入を抑制する輻射熱シールド板3と、その外側にあって外部の常温部からの熱の侵入を防止するため内部を真空断熱した外槽4と、高温超電導コイル1を保持し外槽4に結合して固定するコイル支持部材5とを備えている。更に、外槽4の外側には高温超電導コイル1を冷却するための冷凍機6が設けられ、この冷凍機6と高温超電導コイル1および輻射熱シールド板3との間に伝導冷却部材7を介在させて伝導冷却している。また、高温超電導コイル1に外部から電流を供給する電流リード8を備えている。
図2の断面図により、高温超電導コイル1について更に詳しく説明する。
高温超電導コイル1は、図2中の拡大図に示すように、テープ状をした高温超電導線材を複数層、複数列、レーストラック状に巻回して構成している。本実施の形態の発明では、この高温超電導線材として補強高温超電導線材11を使用しているところに特徴を有する。補強高温超電導線材11は、例えば、ビスマス系の酸化物高温超電導体からなる高温超電導体素材12を基材の中に埋め込んで平たく形成し、その両面から補強材としてSUSテープでサンドイッチ状に挟みハンダ付けして3層構造とし、それを被覆層で被覆してテープ状の線材としたものである。
補強高温超電導線材11は、補強のない高温超電導線材に比べ、強度的に優れているため、ハンドリング性が向上し、コイル巻き時の作業が容易となる。
コイル容器2は、高温超電導コイル1の全体を覆うように形成するのではなく、コイル支持部材5の近傍に限定して部分的に形成している。そして、コイル容器2をコイル支持部材5に連結して保持し、そのコイル支持部材5を外槽1に結合することによって、高温超電導コイル1を外槽4に支持固定している。コイル容器2及びコイル支持部材5の支持位置は図の位置に限定するものではなく、高温超電導コイル1の大きさによって適宜決めればよい。
伝導冷却部材7及び電流リード8と高温超電導コイル1との接続は、コイル容器2がなく高温超電導コイル1が露出している部分で行っているので、接続構造が簡単となる。
このように、本発明は、高温超電導コイル1の高温超電導線材に補強高温超電導線材11を適用することにより、コイル容器2をコイル支持部材5近傍にのみ限定して使用することを可能としたものであるが、次に、強度的にこのようなコイル容器2の形状を可能とした理由について説明する。
従来の補強無し高温超電導線材を使用した高温超電導コイルの場合は、線材に働く応力に対する臨界電流密度の劣化が大きいので、コイルとして成形する段階で、線材発生応力を極力低減する必要があり、このため、コイル全周にわたって堅牢な厚肉のコイル容器で包囲収容する必要があった。
磁気浮上式鉄道に使用する超電導磁石装置として、低温超電導線材を用いた超電導コイル(以下、従来コイルと称する)は実用レベルに達しており、実際に使用される超電導磁石装置としての大きさもほぼ固まってきている。そこで、従来コイルを高温超電導コイルに代替することを考慮し、本発明による高温超電導コイルを従来コイルとほぼ同等の大きさに構成した場合、従来コイルと同等以上の強度を得るためのコイル強度について以下に説明する。
低温超電導線材を用いた従来コイルも、超電導コイル全体をコイル容器に収納しているので、コイル容器に収納した従来コイルと、コイル容器無しの本発明の高温超電導コイルとを比較する。
図3は高温超電導コイルのコイル等価ヤング率とコイル断面曲げ剛性の関係をグラフに表した図である。図を説明する前に、横軸の「コイル等価ヤング率」という言葉について説明する。高温超電導コイル1は、図2の拡大図に示すように、補強高温超電導コイル線材11以外に層間や列間に挿入した絶縁物や接着ワニス等を含む複合材料で成り立っているので、複合材としてのコイルのヤング率を「コイル等価ヤング率」と称している。
従来コイルと同等の断面積とした場合の、本発明の高温超電導コイル1のコイル断面曲げ剛性とコイル等価ヤング率との関係を、図中に実線で示している。コイル断面は、高さ方向(図2の断面図では上下方向)が大きい矩形状をしており、上側の実線は高さ方向の曲げ剛性、下側の実線は幅方向の曲げ剛性である。
これに対し、所定の大きさの従来コイルの超電導コイルとコイル容器とを合成したコイル断面曲げ剛性を、図中のX軸方向に破線で示している。すなわち、従来コイルの高さ方向の曲げ剛性(E×I)は、4.6×1011(Nmm)、幅方向の曲げ剛性は、2.3×1011(Nmm)である。
グラフから、本発明の高温超電導コイル1のコイル等価ヤング率を55GPa以上とすれば、高さ方向及び幅方向共に、従来コイルの曲げ剛性と同等以上の曲げ剛性を得られることが分かる。
入手可能な範囲の補強高温超電導線材を利用して、コイル等価ヤング率を55GPa以上に構成するために、所定の大きさの断面に占める補強高温超電導線材11の割合、すなわち線材占積率をどの程度にすればよいかについて説明する。
図4は、補強高温超電導線材11を使用した場合の、線材占積率とコイル等価ヤング率の関係を示す図である。線材として3種類を用意して検討した。線材Aはヤング率E=80GPa、線材Bはヤング率E=70GPa、線材Cはヤング率E=60GPaである。この図から、例えば、線材Aを使用する場合は占積率を約70%以上、線材Bでは約80%以上とすれば良いことが分かる。
以上の結果より、例えば補強高温超電導線材11としてヤング率80GPaのものを選定し線材占積率を70%以上で高温超電導コイル1を構成すれば、従来コイルの(超電導コイル+コイル容器)の曲げ剛性と同等の曲げ剛性を得ることができる。
従って、そのような構成にすれば、実運用において高温超電導コイルがフープ応力を生じても従来コイル並の曲げ剛性を有しているため、従来コイルと同様に使用にすることができる。また、走行時に地上コイルとの間で作用する電磁力に関しては、コイル支持部材との力の伝達に必要な箇所(荷重伝達部)がコイル容器と接続されていればよい。
コイル容器2は、高温超電導コイル1の外槽4への荷重伝達部となるコイル支持部材5近傍に部分的に残す構成としたが、上記のように、本発明の高温超電導コイル1は従来コイル並の等価ヤング率を有しており、コイル容器で包囲収容することによる補強が不要であるため、コイル支持が可能な構成であれば、コイル容器は必ずしも残す必要はない。
以上にように、本実施の形態の超電導磁石装置によれば、高温超電導コイルの線材に補強高温超電導線材を適用し、コイル支持部材の近傍に限定してコイル容器を設け、そのコイル容器を介して高温超電導コイルをコイル支持部材に保持して外槽に支持固定するようにしたので、コイル容器を高温超電導コイルの全周ではなく部分的に設けたことにより超電導磁石装置を軽量化でき、また、伝導冷却部材は、高温超電導コイルの露出部と容易に取合うことができ、高温超電導コイルを励磁する電流リードの引き出しも容易になり、引き出し部位や施工に自由度が増す超電導磁石装置を得ることができる。
また、高温超電導コイルの等価ヤング率を55GPa以上としたので、従来の低温超電導磁石装置の場合の超電導コイル全体をコイル容器に収納したものと同等のコイル断面曲げ剛性を得ることができ、実運用に耐えられる超電導磁石装置を得ることができる。
この発明の実施の形態1による超電導磁石装置を示す構成図である。 図1の矢印II−II方向から見た断面図である。 この発明の実施の形態1による超電導磁石装置の、高温超電導コイルのコイル等価ヤング率とコイル断面曲げ剛性の関係を示す図である。 この発明の実施の形態1による超電導磁石装置の、線材占積率とコイル等価ヤング率の関係を示す図である。 一般的な磁気浮上式鉄道の概略図である。
符号の説明
1 高温超電導コイル 2 コイル容器
3 輻射熱シールド板 4 外槽
5 コイル支持部材 6 冷凍機
7 伝導冷却部材 8 電流リード
11 補強高温超電導線材 12 高温超電導体素材
21 超電導磁石装置。

Claims (2)

  1. 高温超電導線材を巻回して形成された高温超電導コイルと、上記高温超電導コイルを収容するコイル容器と、上記高温超電導コイル及び上記コイル容器を包囲して設けられ輻射熱の侵入を防ぐ輻射熱シールド板と、上記輻射熱シールド板を包囲して設けられ内部を真空断熱する外槽と、上記高温超電導コイルを保持して上記外槽に固定するコイル支持部材とを備えた超電導磁石装置において、
    上記高温超電導線材は、補強高温超電導線材を使用し、上記コイル容器は、上記コイル支持部材の近傍に限定して設け、上記コイル容器を介して上記高温超電導コイルを上記コイル支持部材に保持するようにしたことを特徴とする超電導磁石装置。
  2. 請求項1記載の超電導磁石装置において、上記高温超電導コイルのコイル等価ヤング率を55GPa以上としたことを特徴とする超電導磁石装置。
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