JP2008210549A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】液体燃料を用いた燃料電池において、膜電極接合体(燃料電池セル)に対して加えられる押圧力を最適化し、出力を向上させかつ出力の長期安定性に高める。
【解決手段】燃料電池1は、燃料電池セル2と燃料収容室3と燃料気化部4とから構成されている。燃料電池セル2は、アノード触媒層5とアノードガス拡散層6とを有するアノードと、カソード触媒層7とカソードガス拡散層8とを有するカソード、およびアノード触媒層5とカソード触媒層7とで挟持されたプロトン伝導性の電解質膜9とから構成されるMEAを有している。そして、MEAに対する押圧力が0.3〜1.3MPaとなり、かつこの押圧力の面内のばらつきが1.0MPa以下となるように調整されている。
【選択図】図1

Description

本発明は液体燃料を用いた燃料電池に関する。
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して特に有利である。パッシブ型DMFCにおいては、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(燃料電池セル)を、樹脂製の箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。燃料収容部から気化した燃料を直接燃料電池セルに供給する場合、燃料電池の出力の制御性を高めることが重要となる。
一方、DMFCの燃料電池セルと燃料収容部とを流路を介して接続することが検討されている。また、燃料収容部から流路にポンプ等を用いて液体燃料を供給することも検討されている(特許文献2〜4参照)。
国際公開第2005/112172号パンフレット 特表2005−518646号公報 特開2006−085952号公報 米国特許公開第2006/0029851号公報
本発明の目的は、膜電極接合体(燃料電池セル)に対して加えられる押圧力を最適化することにより、高出力でかつ出力の長期安定性に優れた燃料電池を提供することにある。
本発明の一態様に係る燃料電池は、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構とを具備し、前記膜電極接合体に対して厚さ方向に加えられている押圧力が、0.3〜1.3MPaであることを特徴としている。
また、本発明の別の態様に係る燃料電池は、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構とを具備し、前記膜電極接合体に対して厚さ方向に加えられている押圧力の面内各部のばらつきが、1.0MPa以下であることを特徴としている。
本発明の態様に係る燃料電池においては、膜電極接合体を構成する各層に対して厚さ方向に加えられている圧力(押圧力)が最適化されているので、発電反応および集電を効率的に行うことができ、高出力が得られる。また、各層にかかる押圧力が適度となるため、劣化や破壊が生じにくく、長期的に安定した高い出力が維持される。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定されるものではない。
図1は、本発明の燃料電池をパッシブ型(内部気化型)DMFCに適用した第1の実施形態の構成を示す断面図である。図1に示す燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル2と、液体燃料Fを収容する燃料収容室3と、これらの間に介在された燃料気化部4とから主として構成されている。燃料電池セル2は、アノード触媒層5とアノードガス拡散層6とを有するアノード(燃料極)と、カソード触媒層7とカソードガス拡散層8とを有するカソード(酸化剤極/空気極)と、アノード触媒層5とカソード触媒層7とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜9とから構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有している。
アノード触媒層5やカソード触媒層7に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層5には、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層7には、PtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は、炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜9を構成するプロトン伝導性材料としては、例えば、スルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜9はこれらに限られるものではない。
アノード触媒層5に積層されるアノードガス拡散層6は、アノード触媒層5に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層5の集電体としての役割も兼ねている。カソード触媒層7に積層されるカソードガス拡散層8は、カソード触媒層7に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層7の集電体としての役割も兼ねている。アノードガス拡散層6およびカソードガス拡散層8は、いずれも導電性物質から構成されている。導電性物質としては、公知の材料を用いることができるが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために、多孔質のカーボン織布またはカーボンペーパの使用が好ましい。
このように構成されるMEAのアノードガス拡散層6にはアノード導電層10が積層され、カソードガス拡散層8にはカソード導電層11が積層されている。アノード導電層10およびカソード導電層11は、例えば金などの導電性金属材料からなるメッシュや多孔質膜、あるいは薄膜等で構成されている。また、アノード導電層10およびカソード導電層11には、それぞれ例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような耐熱性プラスチックからなる多孔性のプレート(アノード側プレート12およびカソード側プレート13)がそれぞれ積層されている。
そして、電解質膜9とアノード導電層10との間、および電解質膜9とカソード導電層11との間には、矩形枠状を有するシール材(例えばゴム製のOリング)14、15が介在されており、これによってMEAからの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。なお、シール材の形状は、矩形枠状に限定されず、燃料電池1の外縁形に対応するように適宜に構成される。
また、液体燃料Fを収容する燃料収容室3の開口部を覆うように気液分離層16が配設され、この気液分離層16上に、燃料電池1の外縁形に対応した形状のフレーム17が配設されている。そして、このアノード側フレーム17の一方の面にアノード側プレート12が接するように、上記MEAが配置されており、燃料気化部4が形成されている。この燃料気化部4は、気液分離層16を透過してきた液体燃料Fの気化成分を一時的に収容し、さらに気化成分における燃料の濃度分布を均一にする空間として機能する。気液分離層16は、シリコーンゴム、フッ素樹脂などの材料で構成され、液体燃料Fの気化成分と液体燃料Fとを分離し、気化成分をアノード側に透過させるものである。
燃料収容室3内に貯留される液体燃料Fは、濃度が50モル%を超えるメタノール水溶液、または純メタノールである。純メタノールの純度は、95重量%以上100重量%以下にすることが好ましい。液体燃料Fの気化成分とは、液体燃料として液体のメタノールを使用した場合には、気化したメタノールを意味し、液体燃料としてメタノール水溶液を使用した場合には、メタノールの気化成分と水の気化成分からなる混合気を意味する。
燃料電池セル2のカソード側プレート13の上には、必要に応じて保湿層が配置され、その上に、酸化剤である空気を取り入れるための開口(図示を省略。)を有するカバープレート18が積層されている。保湿層は、カソード触媒層7で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層7への空気の均一拡散を促進するものであり、例えば多孔質構造の部材で構成される。カバープレート18は、MEAを含む積層体を加圧してその密着性を高める役割も果たしており、例えばSUS304のような金属で形成される。
そして、燃料収容室3上に、気液分離層4を有する燃料気化部4、燃料電池セル2、カバープレート18等を順に積層して配置し、さらにその上から例えばステンレス製のカバー(図示を省略。)を被せて全体を保持することによって、実施形態のパッシブ型DMFC1が構成されている。
第1の実施形態においては、燃料セル2すなわちMEAに対して厚さ方向に加えられている押圧力が、0.3〜1.3MPaとなっている。さらに、このような押圧力の面内方向の分布のばらつきが、1.0MPa以下より好ましくは0.5MPa以下となっている。
なお、前記押圧力は、MEAを構成する各層(アノードガス拡散層6、アノード触媒層5、電解質膜9、カソード触媒層7、カソードガス拡散層8)に対して、それぞれ厚さ方向の加圧力として作用している。例えば、以下に示す方法により測定することができる。
すなわち、MEAのカソードガス拡散層8とカソード導電層11との間に圧力測定フィルム(例えばプレスケール;富士フィルム(株)の商品名)を挟み込んで燃料セル2を組み立て、さらに燃料収容室3からカバープレート18までを装着し、厚さ方向に所定のトルクで締め付けて燃料電池1の試験体を作製する。このとき、厚さが所定の値になるように締め付けることもできる。その後、試験体を解体して圧力測定フィルムを取り出し、得られた圧力チャートから加圧力を算定し、この値をMEAに対して厚さ方向に加えられている押圧力とする。
また、既に組み立てられた燃料電池1の押圧力を測定するには、この燃料電池1の厚さ(例えば、燃料収容室3の下面からカバープレート18の上面までの厚さ)を測定した後、燃料電池1を解体する。そして、解体後のカソードガス拡散層8とカソード導電層11との間に前記した圧力測定フィルムを挟み込んだ後、先に測定した厚さの値に圧力測定フィルムの厚さを加えた寸法になるように、再度上下両側から締め付けて組み立てる。その後、さらに解体して圧力測定フィルムを取り出し、得られた圧力チャートから加圧力を算定する。
上述した構成を有するパッシブ型DMFC1においては、燃料収容室3内のメタノール燃料等の液体燃料Fが気化し、この気化成分が気液分離層4を透過して燃料電池セル2に供給される。燃料電池セル2内において、メタノール燃料Fの気化成分はアノードガス拡散層6で拡散されてアノード触媒層5に供給される。アノード触媒層5に供給された気化成分は、下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応を生じさせる。
CHOH+HO → CO+6H++6e- ………(1)
なお、メタノール燃料Fとして純メタノールを使用した場合には、燃料収容室3から水蒸気が供給されないため、カソード触媒層7で生成した水や電解質膜9中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起するか、あるいは上記した(1)式の内部改質反応によらず、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
内部改質反応で生成されたプロトン(H+)は電解質膜9を伝導し、カソード触媒層7に到達する。カバープレート18の空気取入れ口から取り入れられた空気(酸化剤)は、保湿層、カソード側プレート13、カソードガス拡散層8を拡散して、カソード触媒層7に供給される。カソード触媒層7に供給された空気は、次の(2)式に示す反応を生じさせる。この反応によって、水の生成を伴う発電反応が生じる。
6e-+6H++(3/2)O → 3HO ………(2)
上述した燃料電池1の発電反応において、発電する電力を増大させるためには触媒反応を円滑に行わせると共に、燃料電池セル2の電極全体をより有効に発電に寄与させ、さらに発電された電気を効率的に集めることが重要となる。このような点に関して、第1の実施形態においては、MEAに対して厚さ方向に加えられている押圧力(以下、単に押圧力と示す。)が0.3〜1.3MPaとなっており、アノード側およびカソード側において、ガス拡散層と導電層(アノードガス拡散層6とアノード導電層10、カソードガス拡散層8とカソード導電層11)との間に適度の押圧力が加えられているので、十分な集電がなされる結果、高い出力が得られる。また、MEAの電解質膜9や触媒層5,7にかかる押圧力も適度となるため、長期運転性能も良好であり、出力の長期安定性に優れている。
MEAに対する押圧力が0.3MPa未満である場合には、アノード側およびカソード側においてガス拡散層と導電層との接触圧が低くなるため、十分な集電がなされない。その結果、低い出力しか得られない。
反対にMEAに対する押圧力が1.3MPaを超えると、ガス拡散層と導電層との接触圧が高くなるため集電が良好で高い出力が得られるが、発電時の電解質膜9の膨張により、触媒層(アノード触媒層5およびカソード触媒層7)に過大な押圧力がかかる。そのため、MEAの触媒層内部あるいはその界面に破壊が生じ、長期間の運転に耐えられない。
さらに、実施形態においては、このようにMEAに対して加えられている押圧力の面内各部の分布のばらつきが1.0MPa以下となっているので、十分な集電がなされる結果高い出力が得られるうえに、長期運転性能も良好である。押圧力の面内ばらつきが1.0MPaを超えると、MEAの面方向の一部で接触圧が低すぎて十分に集電がなされない部分が生じやすい。集電がなされない部分は出力に寄与しないため、全体として高い出力が得られない。また、MEAの面内の一部では接触圧が高いため、面内の発電度合いが不均一になるため、不均一に劣化が生じる。さらに、発電時には電解質膜9の膨張、収縮が起こるが、押圧力の面内ばらつきが大きすぎると、触媒層の面内で過大な押圧力がかかる部分が生じるため、この部分で触媒層の内部あるいは界面に破壊が生じやすい。したがって、長期運転に耐えられない。
なお、押圧力の面内各部のばらつきを前記範囲に抑えるには、MEAをアノード側およびカソード側の両側から押えるプレート(アノード側プレート12およびカソード側プレート13)の剛性が適度であることが必要である。すなわち、MEAに対する押圧力は、面内周辺部分を厚さ方向に押圧・締め付けることにより行われるため、アノード側プレート12およびカソード側プレート13の剛性が高すぎる場合には、MEAの面内中央部分の押圧力が周辺部分に比べて大きくなり、押圧力の面内ばらつきが大きくなる。そのため、高出力が得られない。反対に、アノード側プレート12およびカソード側プレート13の厚さが薄すぎるなどの理由で剛性が低すぎる場合には、MEAの中央部分が浮いた状態となり十分な押圧力がかからない。この場合も、押え圧の面内ばらつきが大きくなるため、高出力が得られない。
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。図2に示す燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル2と、この燃料電池セル2に燃料を供給する燃料分配機構19と、液体燃料を収容する燃料収容室3と、これら燃料分配機構19と燃料収容室3とを接続する流路20、およびこの流路20の途中に介挿されたポンプPを備えている。図2において、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、MEAに対して厚さ方向に加えられている押圧力は0.3〜1.3MPaとなっている。さらに、このような押圧力の面内各部のばらつきは、1.0MPa以下より好ましくは0.5MPa以下となっている。
そして、燃料電池セル2のアノード(燃料極)側には、燃料分配機構19が配置されている。燃料分配機構19は配管のような液体燃料の流路20を介して燃料収容室3と接続されている。燃料分配機構19には燃料収容室4から流路20を介して液体燃料Fが導入される。流路20は燃料分配機構19や燃料収容室3と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構19と燃料収容室3とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。
燃料分配機構19は、液体燃料が流路20を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口21と、液体燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口22とを有する燃料分配板23を備えている。燃料分配板23の内部には、燃料注入口21から導かれた液体燃料の通路となる空隙部24が設けられている。複数の燃料排出口22は燃料通路として機能する空隙部24にそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口21から燃料分配機構19に導入された液体燃料は空隙部24に入り、この燃料通路として機能する空隙部24を介して複数の燃料排出口22にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口22には、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、燃料電池セル2のアノード(燃料極)には液体燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は,燃料分配機構19とアノードとの間に気液分離膜等として設置してもよい。液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口22からアノードの複数個所に向けて排出される。
燃料排出口22は燃料電池セル2の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板23のアノードと接する面に複数設けられている。燃料分配機構19の空隙部24はバッファとして機能するため、複数の燃料排出口22からそれぞれ規定濃度の燃料が排出される。そして、複数の燃料排出口22は燃料電池セル2の全面に燃料が供給されるように配置されているため、燃料電池セル2に対する燃料供給量を均一化することができる。
すなわち、アノード(燃料極)の面内における燃料の分布が平準化され、燃料電池セル2での発電反応に必要とされる燃料を全体的に過不足なく供給することができる。したがって、燃料電池1の大型化や複雑化等を招くことなく、燃料電池セル2で効率的に発電反応を生起させることができので、燃料電池1の出力を向上させることが可能となる。言い換えると、燃料を循環させない燃料電池1の利点を損なうことなく、出力やその安定性を高めることができる。
流路20に介挿されたポンプPは、燃料を循環される循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容室3から燃料分配機構19に液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。このようなポンプPで必要時に液体燃料を送液することによって、燃料供給量の制御性を高めることができる。
第2の実施形態の燃料電池1において、燃料分配機構19から燃料電池セル2に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容室3に戻されることはない。すなわち、この燃料電池1は燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプPを使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なるため、例えばセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
ポンプPの種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
第2の実施形態の燃料電池1においては、必要時にポンプPを動作させて燃料収容室3から燃料分配機構19に液体燃料を供給する。燃料分配機構19に導入された液体燃料は、複数の燃料排出口22から燃料電池セル2の全面に対して燃料が供給されて発電反応が生起される。
このように、ポンプPで燃料収容室3から送液された液体燃料を、燃料分配機構19を介して燃料電池セル2に供給するセミパッシブ型の燃料電池1においても、MEAに対して厚さ方向に加えられている押圧力が0.3〜1.3MPaとなっており、ガス拡散層と導電層との間に適度の押圧力が加えられているので、十分な集電がなされる結果、高い出力が得られる。また、MEAの電解質膜9や触媒層5,7にかかる押圧力も適度となるため、長期運転性能も良好であり、出力の長期安定性に優れている。さらに、燃料分配機構19により、燃料電池セル2に対する燃料供給量を均一化することが可能となる。
上述した第2の実施形態において、液体燃料を燃料収容室3から燃料分配機構19まで送る機構は特に限定されるものではない。例えば、使用時の設置場所が固定される場合には、重力を利用して液体燃料を燃料収容室3から燃料分配機構19まで落下させて送液することができる。また、多孔体等を充填した流路20を用いることによって、毛細管現象で燃料収容室3から燃料分配機構19まで送液することができる。また、燃料分配機構19からMEAへの燃料供給が行われる構成であれば、ポンプPに代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路20による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
なお、上記した第1および第2の実施形態では、液体燃料に、メタノール水溶液、または純メタノールを使用した直接メタノール型の燃料電池について説明したが、液体燃料は、これらに限られるものではない。例えば,エタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、もしくはその他の液体燃料であってもよい。
次に、本発明の実施例について記載する。
実施例1〜4、比較例1〜3
MEAに対する厚さ方向の押圧力が、0.3MPa(実施例1)、0.7MPa(実施例2)、0.9MPa(実施例3)、1.3MPa(実施例4)、0.25MPa(比較例1)、1.35MPa(比較例2)、および0.25〜1.35MPaで面内不均一(比較例3)となるようにそれぞれ加圧し、図1に示すパッシブ型燃料電池1を作製した。MEAのサイズおよび形状は、40mm×30mmの矩形とし、また液体燃料としては100%濃度のメタノールを使用した。なお、押圧力は、前記したように、MEAのカソードガス拡散層8とカソード導電層11との間に圧力測定フィルム(極超低圧用プレスケール)を挟み込んで燃料セル2を組み立てた後、解体して圧力測定フィルムを取り出し、その圧力チャートから算定した値である。
こうして実施例1〜4および比較例1〜3で得られた燃料電池1の電流値を変化させ、電圧および出力密度(単位面積当りの出力)をそれぞれ測定した。出力密度(単位面積当りの出力)のグラフを図3に、電圧変化のグラフを図4にそれぞれ示す。なお、これらのグラフにおいて、横軸は電流密度(mA/cm)であり、縦軸は燃料電池の出力密度および電圧を相対値(%)で示したものである。ここで、図3における縦軸は、加圧力0.7MPaの最高出力密度を100とした場合の相対出力密度を示し、図4における縦軸は、加圧力0.7MPaの初期電圧を100とした場合の相対電圧を示している。
また、最大出力密度を測定し、実施例2の燃料電池における最大出力密度を100%とする比率を算定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2008210549
表1並びに図3および図4のグラフから、MEAに対して厚さ方向に加えられている押圧力が0.3〜1.3MPaの範囲にある実施例1〜4の燃料電池においては、押圧力が0.3MPa未満である比較例1の燃料電池、および押圧力が1.3MPaを超える比較例2の燃料電池に比べて、安定した高い出力が得られていることがわかる。また、実施例1〜4の燃料電池は、面内の押圧力が不均一である比較例3の燃料電池に比べても、出力が大幅に向上していることがわかる。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、MEAに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合せたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。 実施例1〜4および比較例1〜3で得られた燃料電池において、電流値を変化させて出力密度を測定した結果と示すグラフである。 実施例1〜4および比較例1〜3で得られた燃料電池において、電流値を変化させて電圧の変化を測定した結果と示すグラフである。
符号の説明
1…燃料電池、2…燃料電池セル、3…燃料収容室、4…燃料気化部、5…アノード触媒層、6…アノードガス拡散層、7…カソード触媒層、8…カソードガス拡散層、9…電解質膜、10…アノード導電層、11…カソード導電層、12…アノード側プレート、13…カソード側プレート、16…気液分離層、18…カバープレート、19…燃料分配機構、20…流路、21…燃料注入口、22…燃料排出口、23…燃料分配板、24…空隙部。

Claims (8)

  1. 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体の前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構
    とを具備し、
    前記膜電極接合体に対して厚さ方向に加えられている押圧力が、0.3〜1.3MPaであることを特徴とする燃料電池。
  2. 前記押圧力の面内各部のばらつきが1.0MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
  3. 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体の前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構
    とを具備し、
    前記膜電極接合体に対して厚さ方向に加えられている押圧力の面内各部のばらつきが、1.0MPa以下であることを特徴とする燃料電池。
  4. 前記燃料供給機構は、前記膜電極接合体の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に向けて開口された燃料収容部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃料電池。
  5. 前記燃料供給機構は、液体燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部と流路を介して接続され、前記膜電極接合体の前記燃料極の面方向に燃料を分配しつつ供給する燃料分配機構とを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃料電池。
  6. さらに、前記流路に設けられた燃料供給ポンプを具備することを特徴とする請求項5記載の燃料電池。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項記載の燃料電池において、
    前記燃料はメタノール燃料であることを特徴とする燃料電池。
  8. 請求項7記載の燃料電池において、
    前記メタノール燃料はメタノール濃度が80%以上のメタノール水溶液または純メタノールであることを特徴とする燃料電池。
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