JP2008201725A - 抗う蝕剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃糖蜜の有効利用のために、廃糖蜜中から生理活性等を有する有用な化合物とその用途を提供する。
【解決手段】サトウキビ廃糖蜜85gを、800mlの水に溶解させ、これを遠心分離(8000rpm,20分)し、上澄液を得る。これをアンバーライト(Amberlite)XDA−1180を300ml充填したオープンカラム(6.0×65cm)に通液し、活性物質を吸着させる。これから、デハイドロジコニフェリルアルコール−9'−β−D−グルコピラノシド(Dehydrodiconiferylalcohol-9'-β-D-glucopyranoside)、またはイソオリエンチン−7,3'−O−ジメチルエーテル(Isoorientin-7,3'-O-dimethyl ether)を有効成分とする抗う蝕剤を得る。
【選択図】なし
【解決手段】サトウキビ廃糖蜜85gを、800mlの水に溶解させ、これを遠心分離(8000rpm,20分)し、上澄液を得る。これをアンバーライト(Amberlite)XDA−1180を300ml充填したオープンカラム(6.0×65cm)に通液し、活性物質を吸着させる。これから、デハイドロジコニフェリルアルコール−9'−β−D−グルコピラノシド(Dehydrodiconiferylalcohol-9'-β-D-glucopyranoside)、またはイソオリエンチン−7,3'−O−ジメチルエーテル(Isoorientin-7,3'-O-dimethyl ether)を有効成分とする抗う蝕剤を得る。
【選択図】なし
Description
本発明は抗う蝕剤に関し、更に詳細には、サトウキビ廃糖蜜から得られた物質を有効成分とする抗う蝕剤に関する。
サトウキビ廃糖蜜は、分蜜糖の製糖時に得られる副産物の一つである。この廃糖蜜は、現在その一部がバイオエタノールの製造や、うま味調味料の発酵原料として用いられているが、大部分は廃棄されている。
この廃糖蜜の成分は、水分、ショ糖、カリウムなどのミネラルでその大半が占められているが、量的には少ないものの様々な有機物が二次代謝物として存在することも知られている。しかしながら、この廃糖蜜中に含まれる微量有機物については、一部についてはその性質や構造の解明がなされているが、大部分のものについては未解明のままであり、有効利用されるには至っていなかった。
従って、廃糖蜜の有効利用のために、廃糖蜜中から生理活性等を有する有用な化合物を見出し、これを利用する手段を開発することが強く求められており、本発明はこのような有用物質およびその用途を見出すことをその課題とするものである。
本発明者らは、種々の分離手段を組み合わて廃糖蜜中から微量有機化合物を分離し、その生理活性を調べていたところ、特定の化合物は、ストレプトコッカス・ミュータンスや、ストレプトコッカス・ソブリナス等に対する抗菌活性を有し、抗う蝕剤の有効成分として利用しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明の式(I)または(II)で表される化合物は、サトウキビという食品素材より得られた天然に存在する成分であるため、本発明の抗う蝕剤は安全性の高いものである。また、現在その大部分が廃棄されている糖廃蜜の有効利用ともなる。
本発明の抗う蝕剤の有効成分である式(I)および式(II)の化合物は、共に公知の化合物であるが、サトウキビ廃糖蜜中から、いくつかの分離精製法を組み合わせることにより得られるものである。より具体的には、廃糖蜜に水等を加え、希釈した後、スチレン系合成吸着剤処理、ゲルろ過処理、シリカゲルカラムクロマトグラフ処理、液体クロマトグラフ処理等の精製処理の少なくとも2以上で処理することにより得ることができる。
上記精製処理において、抗う蝕活性を有するフラクションは、各画分にストレプトコッカス・ミュータンス(S.ミュータンス)や、ストレプトコッカス・ソブリナス(S.ソブリナス)を植菌し、これらの生育状況を濁度あるいは適切な波長で観察することにより選択することができる。
本発明の抗う蝕剤は、前記のようにして得られる抗う蝕物質(I)または(II)を、従来用いられている各種成分と共に配合することにより調製される。
本発明の抗う蝕剤の好ましい剤形としては、まず、歯磨、洗口液、トローチ等の口腔衛生剤が挙げられる。そして、これら口腔衛生剤の製造にはその種類に応じて通常使用される適宣な成分を使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダ、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ブチル、ヒノキチオール、アラントイン、グリチルリチン、アルコール、アラビアゴム、デンプン、コーンスターチ、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ブドウ糖、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、メントール、ユーカリ油、ペッパーミント、スペアミント、色素等の他、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、塩化リゾチーム、アズレン等の抗炎症剤、塩化ナトリウム等を適宣配合することができる。
また、本発明の抗う蝕剤は、食品に添加する形態とすることができる。添加される食品としては、砂糖等の甘味料、練りあん、カステラ、水ようかん、どら焼きの皮、スポンジケーキ、バターケーキ、ババロア、カスタードクリーム、バタークリーム、カスタードプディング、クッキー、菓子パン、蒸しパン、ジャム、乳酸菌飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料、コーヒーゼリー、キャラメル、アイスクリーム、チューインガム、ジュース、キャンディー、チョコレート等の食品を挙げることができる。
この食品添加剤の形態である抗う蝕剤では、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等、通常の食品原料として使用されているものを適宜配合してもよい。
本発明の抗う蝕剤においては、前記の抗う蝕物質(I)または(II)を、4mg/mlないし100mg/l程度の濃度、好ましくは20ないし50となるよう口腔内に投与すればよい。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
実 施 例 1
抗う蝕性物質の取得:
サトウキビ廃糖蜜85gを、800mlの水に溶解させ、これを遠心分離(8000rpm,20分)し、上澄液を得た。これをアンバーライト(Amberlite)XDA−1180を300ml充填したオープンカラム(6.0×65cm)に通液し、活性物質を吸着させた。
抗う蝕性物質の取得:
サトウキビ廃糖蜜85gを、800mlの水に溶解させ、これを遠心分離(8000rpm,20分)し、上澄液を得た。これをアンバーライト(Amberlite)XDA−1180を300ml充填したオープンカラム(6.0×65cm)に通液し、活性物質を吸着させた。
カラムを精製水600mlで洗浄した後、引き続き25%メタノール、50%メタノールおよび100%メタノールの各600mlで溶出した。得られたそれぞれの溶出画分について、それぞれのS.ミュータンスおよびS.ソブリナスに対する抗菌作用を調べた。
両方の微生物に抗菌作用を持つ100%メタノール溶出画分は、更に、トヨパール(Toyopearl)HW−40Cを充填したガラスカラム(2×80cm)で分離操作を行った。溶出液は50%メタノールとし、フラクションコレクターによって1画分4gずつとして120分画の分取を行った。
このうち、フラクション55から63の画分として得られたFr4は、更にシリカゲル(Wako gel C-200)を充填したガラスカラム(1.2×50cm)を用いるカラムクロマトグラフィーに付した。溶出液は、酢酸エチル/メタノールとし、これらの混合比が10/0、9/1、8/2、7/3、5/5、0/10である混液各40mlを用い、ステップワイズで溶出してこの溶出液を4gずつ分画した。
分画したそれぞれの吸光度を測定することで、5つの画分にまとめた画分のうちから抗菌活性が強い画分を、Fr4−2(フラクション13〜25)とFr4−3(フラクション26〜32)画分として得た。
得られたFr4−2とFr4−3は、それぞれ以下のようにして更に精製した。
まず、Fr4−2は、リクロプレップ(LiChroprep)RP−8カラムを用いる低圧分取カラムクロマトグラフィーに付し、溶出液として30%から50%のメタノール(0.1%ギ酸添加)をステップワイズにより溶出した。溶出液は4gずつ分画し、それらの270nmと300nmの吸光度を測定し、ピークごとにまとめて4つの画分とした。このうち最も活性の高いFr4−2−1を化合物Aとした。
一方Fr4−3は、セプ−パック(Sep-Pak)C18 カートリッジ(Waters社)に供し、30%MeOHで溶出させた後、100%MeOHで溶出させることで精製し、化合物Bを得た。
これらの一連の分離、精製操作のフローを、図1に示す。
実 施 例 2
抗う蝕活性の測定法
S.ミュータンス(ATCC25175)とS.ソブリナス(ATCC27352)に対する抗う蝕活性は、濁度法に代え、生育培地を550nmの吸光度を測定することで評価した。すなわち、5mlのブレイン・ハート・インフージョン(BHI)斜面培地で、37℃、24時間上記両微生物を培養した。
抗う蝕活性の測定法
S.ミュータンス(ATCC25175)とS.ソブリナス(ATCC27352)に対する抗う蝕活性は、濁度法に代え、生育培地を550nmの吸光度を測定することで評価した。すなわち、5mlのブレイン・ハート・インフージョン(BHI)斜面培地で、37℃、24時間上記両微生物を培養した。
25ml容のメジューム瓶に、BHI液体培地(Difco社製)9.9ml及び50%MeOHで5〜40mg/mlに調製した試料溶液0.1mlを加え、さらに上記培養物1mlを植菌し、37℃暗所にて培養した。培養は5% CO2濃度のインキュベーターで行った。
培養液は、培養開始後、0から40時間の間経時的に分光光度計を用いて550nmの吸光度を測定し、この吸光度変化の少ないものをより高い抗菌活性を有するものと判断した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィー後の各分画の抗菌活性を図2に、リクロプレップ RP−8カラムを用いる低圧分取カラムクロマトグラフィー後の各分画の抗菌活性を図3に示す。なお、図2での各試料濃度は0.01%であり、図3での各試料濃度は、0.005%である。
実 施 例 3
抗う蝕性物質A、Bの構造解析:
精製した化合物AおよびBについて、UV、IR、ESI−MSおよび1D−,2D−NMRのスペクトルにより構造を解析した。この結果、化合物Aが式(I)で示されるデハイドロジコニフェリルアルコール−9'−β−D−グルコピラノシド(Dehydrodiconiferylalcohol-9'-β-D-glucopyranoside)と、また化合物Bは式(II)で示されるイソオリエンチン−7,3'−O−ジメチルエーテル(Isoorientin-7,3'-O-dimethyl ether)と同定された。
抗う蝕性物質A、Bの構造解析:
精製した化合物AおよびBについて、UV、IR、ESI−MSおよび1D−,2D−NMRのスペクトルにより構造を解析した。この結果、化合物Aが式(I)で示されるデハイドロジコニフェリルアルコール−9'−β−D−グルコピラノシド(Dehydrodiconiferylalcohol-9'-β-D-glucopyranoside)と、また化合物Bは式(II)で示されるイソオリエンチン−7,3'−O−ジメチルエーテル(Isoorientin-7,3'-O-dimethyl ether)と同定された。
実 施 例 4
歯 磨 剤:
下記組成で、常法に従って歯磨剤を調製した
歯 磨 剤:
下記組成で、常法に従って歯磨剤を調製した
( 組 成 ) (質量%)
第二リン酸カルシウム 40
グリセリン 18
カラギーナン 1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
サッカリンナトリウム 1
化合物(I)または(II) 0.05
香 料 適 量
水 残 部
第二リン酸カルシウム 40
グリセリン 18
カラギーナン 1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
サッカリンナトリウム 1
化合物(I)または(II) 0.05
香 料 適 量
水 残 部
実 施 例 5
洗 口 液:
下記組成で、常法に従って洗口剤を調製した。
洗 口 液:
下記組成で、常法に従って洗口剤を調製した。
( 組 成 ) (重量部)
ラウリル硫酸ナトリウム 1
グリセリン 7
ソルビトール 5
サッカリンナトリウム 0.1
エチルアルコール 15
1−メントール 0.05
化合物(I)または(II) 0.05
香 料 適 量
水 残 量
ラウリル硫酸ナトリウム 1
グリセリン 7
ソルビトール 5
サッカリンナトリウム 0.1
エチルアルコール 15
1−メントール 0.05
化合物(I)または(II) 0.05
香 料 適 量
水 残 量
本発明の抗う蝕剤は、抗う蝕物質(I)または(II)の有するS.ミュータンス等に対する抗菌活性を利用するものである。
従来より、抗菌活性を有する物質を利用して抗う蝕剤を得ることは広く行われているが、抗菌活性を有する物質を得るまでにコストがかかり、経済性に問題があった。
これに対し、本発明では、本来利用価値の少ない農産廃棄物である廃糖蜜から抗う蝕性物質を得るため、コスト面での優位性が高く、産業上の価値が高いものである。
Claims (6)
- 口腔衛生剤の剤形である請求項第1項記載の抗う蝕剤。
- 食品添加剤の剤形である請求項第1項記載の抗う蝕剤。
- 式(I)または(II)で表される化合物が、サトウキビ廃糖蜜から得られたものである請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の抗う蝕剤。
- 式(I)または(II)で表される化合物が、サトウキビ廃糖蜜を、スチレン系合成吸着剤処理、ゲルろ過処理、シリカゲルカラムクロマトグラフ処理および液体クロマトグラフ処理から選ばれた精製処理の少なくとも2つの組み合わせた処理により得られたものである請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の抗う蝕剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007040006A JP2008201725A (ja) | 2007-02-20 | 2007-02-20 | 抗う蝕剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007040006A JP2008201725A (ja) | 2007-02-20 | 2007-02-20 | 抗う蝕剤 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008201725A true JP2008201725A (ja) | 2008-09-04 |
Family
ID=39779597
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2007040006A Pending JP2008201725A (ja) | 2007-02-20 | 2007-02-20 | 抗う蝕剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008201725A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104650052A (zh) * | 2015-02-13 | 2015-05-27 | 宁波杰顺生物科技有限公司 | 一种从竹叶中制备异荭草素提取物的方法 |
CN108484700A (zh) * | 2018-04-04 | 2018-09-04 | 新疆维吾尔自治区药物研究所 | 荭草素2′′-O-β-L-半乳糖苷及其制备方法和应用 |
-
2007
- 2007-02-20 JP JP2007040006A patent/JP2008201725A/ja active Pending
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