JP2008195885A - 高導電率熱発泡性マイクロスフェアー及びその組成物と、該組成物中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率の測定方法 - Google Patents

高導電率熱発泡性マイクロスフェアー及びその組成物と、該組成物中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材と混合した後の組成物中においても、その含有率を測定することが可能な熱発泡性マイクロスフェアーの提供。
【解決手段】重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーであって、下記工程1及び2:(1)25℃の温度で、熱発泡性マイクロスフェアー5gを、pHが7で導電率がσ1のイオン交換水20g中に分散させて、分散液を調整する工程1;及び(2)同温度で、該分散液を30分間振とうして、水抽出処理を行う工程2;により得られた水抽出液について、25℃で測定した導電率をσ2としたとき、σ2とσ1との差σ2−σ1が1mS/cmよりも大きい熱発泡性マイクロスフェアー、及び、その組成物を提供する。さらに、該組成物の導電率に基づいて、該組成物中の熱発泡性マイクロスフィア含有率を推計する測定方法を提供する。
【選択図】図3

Description

本発明は、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーに関する。より詳しくは、高導電率熱発泡性マイクロスフェアー及びその組成物と、該組成物中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率の測定方法に関する。
熱発泡性マイクロスフェアーは、揮発性の発泡剤を重合体によりマイクロカプセル化したものであり、熱膨張性マイクロカプセルまたは熱膨張性微小球とも呼ばれている。熱発泡性マイクロスフェアーは、一般に、水系分散溶媒中で、少なくとも重合性単量体と発泡剤を含有する重合性単量体混合物を懸濁重合する方法により製造することができる(特許文献1及び2参照)。重合反応が進むにつれて、生成する重合体により外殻(シェル)が形成され、その外殻内に発泡剤が包み込まれるようにして封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーが得られる。
外殻を形成する重合体としては、一般に、ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂が用いられている。外殻を形成する重合体は、加熱により軟化する。発泡剤としては、加熱によりガス状になる炭化水素などの低沸点化合物が用いられている。熱発泡性マイクロスフェアーを加熱すると、発泡剤が気化して膨張する力が外殻に働くが、同時に外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少する。そのため、ある温度を境にして、急激な膨張が起きる。この温度を発泡開始温度という。熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡開始温度以上の温度に加熱すると、それ自体が膨張して、発泡体粒子(独立気泡体)を形成する。
熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡体粒子を形成する特性を利用して、意匠性付与剤、機能性付与剤、軽量化剤などとして、合成樹脂(熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)やゴムなどの高分子材料、塗料、インク、粘着剤など様々な基材に添加され、熱発泡性マイクロスフェアー組成物として用いられている。
熱発泡性マイクロスフェアーを基材に添加する際には、熱発泡性マイクロスフェアーに基づく断熱性や防音性といった各種機能を、所望のレベルに設定するため、組成物中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率を適切に制御することが必要となる。
特開2002-012693号公報 特開2002-363537号公報
従来、組成物中の熱発泡性マイクロスフェアーの含有率は、予め計量しておいた熱発泡性マイクロスフェアーを一定量の基材と混合することにより制御している。
しかしながら、このような熱発泡性マイクロスフェアーを予め計量する方法では、一旦熱発泡性マイクロスフェアーを基材と混合した後には、組成物中の熱発泡性マイクロスフェアーの含有率を知ることができず、組成物の品質管理上問題を生じていた。
そこで、本発明は、基材と混合した後の組成物中においても、その含有率を測定することが可能な熱発泡性マイクロスフェアーを提供することを主な目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、まず、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーであって、下記工程1及び2:
(1)25℃の温度で、熱発泡性マイクロスフェアー5g(ドライ換算)を、pHが7で導電率がσ1のイオン交換水20g中に分散させて、分散液を調整する工程1;及び
(2)同温度で、該分散液を30分間振とうして、水抽出処理を行う工程2;
により得られた水抽出液について、25℃で測定した導電率をσ2としたとき、σ2とσ1との差σ2−σ1が1mS/cmよりも大きい熱発泡性マイクロスフェアーを提供する。
また、高分子材料、塗料、粘着剤、インク又は水のいずれか1つから選択される媒体中に、請求項1記載の熱発泡性マイクロスフェアーまたはその発泡体が分散している組成物を提供する。
さらに、該組成物または該組成物の水抽出液の導電率に基づいて、該組成物中の熱発泡性マイクロスフィア含有率を推計する測定方法を提供する。
本発明に係る熱発泡性マイクロスフェアーを用いることにより、熱発泡性マイクロスフェアーを基材と混合した後の組成物中において、熱発泡性マイクロスフェアー含有率を測定することが可能となる。
上述したように、熱発泡性マイクロスフェアーは、水系分散溶媒中で、少なくとも重合性単量体と発泡剤を含有する重合性単量体混合物を懸濁重合する方法により製造されている。水系分散媒体は、重合性混合物を安定かつ均一な液滴として懸濁させるために、一般に、イオン交換水などの水系分散媒体に、分散安定剤や分散補助剤等の助剤を添加して調製されている。
具体的には、例えば、水系分散媒体中に分散安定剤として、水酸化マグネシウムコロイドを含有させると、粒径分布がシャープな熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。また、水系分散媒体中に補助安定剤として、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有させると、より均一な粒子形状を有する熱発泡性マイクロスフェアーを得ることができる。水系分散媒体中に重合補助剤として、亜硝酸ナトリウムを含有させると、重合時に重合体粒子同士の凝集を防ぎ、かつ、重合缶壁へのスケールの付着を防ぐことができる。
これら分散および補助安定剤や重合補助剤等の助剤は、水系分散溶媒中においてイオン状態で存在し、重合性単量体混合物の懸濁重合後に得られる熱発泡性マイクロスフェアー中にもイオン性物質として混入して存在している。通常は、これらの分散および補助安定剤や重合補助剤等は重合後の洗浄工程で取り除かれる。
しかし、熱発泡性マイクロスフェアーを、例えばイオン交換水等の媒体に分散させると、熱発泡性マイクロスフェアーに混入していたイオン性物質がイオン交換水中に溶出されるため、該媒体の導電率が増加するという現象が起こる。
本願発明者は、この現象を利用して、熱発泡性マイクロスフェアーの分散時のイオン性物質による媒体の導電率の増加値に基づいて、媒体中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率を推計するという新規な着想を得て、本願発明を完成させるに到った。
なお、イオン性物質としては、上述のように分散および補助安定剤や重合補助剤等の助剤として熱発泡性マイクロスフェアーの製造工程において、重合性単量体混合物(重合スラリー)中に添加されたもののみならず、熱発泡性マイクロスフェアーの製造後に添加されるものであってもよい。このような熱発泡性マイクロスフェアーの製造後に添加されるイオン性物質としては、特に限定されず、分散および補助安定剤や重合補助剤等の助剤と同様の化合物を使用することもできる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
まず、熱発泡性マイクロスフェアーを分散させる媒体の導電率(θ1)を予め測定する。次に、媒体に一定量(α)の熱発泡性マイクロスフェアーを分散させた後、再度媒体の導電率(θ2)を測定する。このときの両導電率の差分(θ2−θ1)をΔθとして、これらの関係を図示すると図1のようになる。すなわち、θ2は、熱発泡性マイクロスフェアー中に存在するイオン性物質の溶媒への溶出に伴って、θ1に比してΔθだけ増加する。
さらに、媒体に倍量(2α)の熱発泡性マイクロスフェアーを分散させた場合には、媒体へ溶出するイオン性物質も倍量となるため、媒体の導電率(θ2(2))は、θ1に比して2Δθだけ増加することとなる(図1参照)。
熱発泡性マイクロスフェアーを分散させた際の媒体の導電率の増加を、図2に示す。図2の横軸は、媒体に分散させた熱発泡性マイクロスフェアー量、縦軸は媒体の導電率をそれぞれ示す。
図1で説明した、熱発泡性マイクロスフェアーを分散させる前の媒体の導電率(θ1)、一定量(α)の熱発泡性マイクロスフェアーを分散させた後の導電率(θ2)、倍量(2α)の熱発泡性マイクロスフェアーを分散させた後の導電率(θ2(2))は、図2中直線Aで示される。
このように、媒体の導電率と分散させる熱発泡性マイクロスフェアー量は、一次直線の関係となるため、媒体の導電率yと熱発泡性マイクロスフェアー量(含有率)xは関係式y=ax+bで示される(式中a及びbはパラメーターである)。従って、予めこの関係式を求めておくことにより、媒体の導電率yから該媒体中の熱発泡性マイクロスフェアー量(含有率)xを推定することが可能となる。
上記関係式の各パラメーターは、重合に使用する重合性単量体の種類、分散および補助安定剤や重合補助剤の種類と量などに応じて変化する。そのため、これらのパラメーターは重合条件に応じて決定される。
ここで、重合条件により、熱発泡性マイクロスフェアー中に存在するイオン性物質の量が多い場合には、媒体の導電率の増加は大きくなる(図2直線B参照)。ところが、逆に、熱発泡性マイクロスフェアー中に存在するイオン性物質の量が少ないと、多量の熱発泡性マイクロスフェアーを分散させても、媒体の導電率が増加しないため(図2直線C参照)、媒体の導電率から該媒体中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率を推定することが不可能となる。
従って、媒体の導電率から該媒体中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率を正確に推計するためには、熱発泡性マイクロスフェアーが一定量以上のイオン性物質を含んでいることが必要である。
本願発明者らは、このような熱発泡性マイクロスフェアーの条件として
(1)25℃の温度で、熱発泡性マイクロスフェアー1質量部を、pHが7で導電率がσ1のイオン交換水4質量部中に分散させて、分散液を調整する工程1;及び
(2)同温度で、該分散液を30分間振とうして、水抽出処理を行う工程2;
により得られた水抽出液について、25℃で測定した導電率をσ2としたとき、σ2とσ1との差σ2−σ1が1mS/cmよりも大きいことという条件を見出した。
好ましくはσ2−σ1は、好ましくは3mS/cm以上、より好ましくは5mS/cm以上、さらに好ましくは10mS/cm以上である。導電率が1mS/cm以下では、後述するように、熱発泡性マイクロスフェアーの分散に伴う媒体の導電率の増加が小さく、測定誤差との区別が難しくなる。
上記条件を満たす熱発泡性マイクロスフェアーは、図2直線A又はBに示すように、分散量に比例して媒体の導電率を増加させる特性を示す。従って、上述の関係式y=ax+bに基づいて、媒体の導電率から該媒体中の熱発泡性マイクロスフェアー含有率を推定することが可能となる。
ここで、熱発泡性マイクロスフェアーを分散させる媒体には、イオン交換水等の水系媒体のみならず、高分子材料や塗料、インク、粘着剤等の媒体を特に限定されず採用することが可能であり、様々な熱発泡性マイクロスフェアー組成物において、熱発泡性マイクロスフェアーの分散量に比例した導電率の増加を測定して、熱発泡性マイクロスフィア含有率を推計することが可能である。また、組成物の導電率の測定は、該組成物を水抽出処理した後に、得られた水抽出液を用いて測定することもできる。
最後に、本発明において使用することができる重合性単量体、発泡剤、助剤について説明する。これらは特に限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。すなわち、本発明は、あらゆるタイプの熱発泡性マイクロスフェアーに適用することが可能である。
重合性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル及びアクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル及びメタクリル酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、α−メチルスチレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエン、N−置換マレイミドなどが挙げられる。これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
発泡性マイクロスフェアーは、外殻を形成する重合体が熱可塑性で、かつ、ガスバリア性を有するものが好ましい。この観点から、塩化ビニリデンを含む共重合体、及び(メタ)アクリロニトリルを含む共重合体は、外殻を形成する重合体として好ましい。ただし、塩化ビニリデン等のハロゲンを含む重合性単量体は脱ハロゲンを起こしハロゲンイオンを生成するので、できれば使用しない方が好ましい。
前記の如き重合性単量体と共に、発泡特性及び耐熱性を改良するために架橋性単量体を併用することができる。架橋性単量体としては、通常、2以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物が用いられる。
より具体的には、架橋性単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸アリル、イソシアン酸トリアリル、トリアクリルホルマール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸1,3−ブチルグリコール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。架橋性単量体の使用割合は、重合性単量体の通常0〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、使用する重合性単量体に可溶の油溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。より具体的には、メチルエチルパーキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジ−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。重合開始剤は、重合性単量体基準で、通常、0.0001〜5重量%の割合で使用される。
発泡剤は、通常、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質を少なくとも1種以上含む。このような発泡剤としては、低沸点有機溶剤が好適であり、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、石油エーテルなどの炭化水素;CCl3F、CCl22、CClF3、CClF2−CCl22等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシランなどのテトラアルキルシラン;などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、石油エーテル、及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。また、所望により、加熱により熱分解してガス状になる化合物を使用してもよい。
分散安定剤は、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蓚酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
分散安定剤としては、水溶性多価金属化合物(例えば、塩化マグネシウム)と水酸化アルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム)との水相中での反応により得られる難水溶性金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)のコロイドを用いることができる。また、リン酸カルシウムは、リン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの水相中での反応生成物を使用することが可能である。乳化剤として、陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
この他に共安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等を使用することができる。
分散安定剤を含有する水系分散媒体は、通常、分散安定剤や共安定剤を脱イオン水に配合して調製する。重合時の水相のpHは、使用する分散安定剤や共安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境で重合が行われる。水系分散媒体を酸性にするには、必要に応じて酸を加えて、系のpHを約3〜4に調整する。水酸化マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性環境の中で重合させる。
分散安定剤及び共安定剤の好ましい組み合わせの一つとして、コロイダルシリカと縮合生成物の組み合わせがある。縮合生成物は、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸の縮合生成物が好ましい。縮合物は、その酸価によって規定される。好ましくは、酸価が60以上95未満のものである。特に好ましくは、酸価が65以上90以下の縮合物である。さらに、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加すると、より均一な粒子形状を有する発泡性マイクロスフェアーが得られやすくなる。無機塩としては、食塩が好適に用いられる。
コロイダルシリカの使用量は、望む粒子径によっても変わるが、通常、重合性単量体100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の割合で使用される。縮合生成物は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05〜2重量部の割合で使用される。無機塩は、重合性単量体100重量部に対して、0〜100重量部程度の割合で使用する。
他の分散安定剤及び共安定剤の好ましい組み合わせは、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物の組み合わせが挙げられる。水溶性窒素含有化合物の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミンが挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカとポリビニルピロリドンの組み合わせが特に好適に用いられる。
さらに、分散安定剤及び共安定剤として、水酸化マグネシウム及び/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせも好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
導電率の測定方法
(1)導電率計:堀場製作所D−24SE型
(2)水抽出液の導電率測定:熱発泡性マイクロスフェアーの水抽出液の測定は、下記の手順によって測定した。25℃の温度で、熱発泡性マイクロスフェアー(ドライ換算)5gをpHが7で導電率がσ1のイオン交換水20g中に分散させて、分散液を調整する工程1;及び同温度で、該分散液を30分間振とうして、水抽出処理を行う工程2;により得られた水抽出液について、25℃で測定した導電率をσ2としたとき、σ2とσ1の差σ2−σ1を求めた。
(3)水性EVAエマルジョンの導電率測定:25℃の温度で、水性EVAエマルジョンのみの導電率θ1を測定し、水性EVAエマルジョン100部に対して熱発泡性マイクロスフェアー添加量α部を分散させた後、25℃の温度で、導電率θ2を測定した。
[実施例1]
攪拌機付きの重合缶(1.5L)にコロイダルシリカ11g(固形分40重量%のシリカ分散液27.5g)、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合生成物(酸価78mgKOH/g)1.28g(50%溶液で2.56g)、食塩195.4g、亜硝酸ナトリウム0.32g、水を合計で868gになるように仕込み、水系分散媒体を調製した。この水系分散媒体のpHが3.2になるように、塩酸を添加して調製した。
一方、アクリロニトリル147.4g、メタクリロニトリル68.2g、メタクリル酸メチル4.4g、ジエチレングリコールジメタクリレート3.3g、イソペンタン66g、アゾビスイソブチロニトリル2.64gからなる油性混合物を調製した。この油性混合物と前記で調製した水系分散媒体とを回分式高速回転高せん断型分散機で攪拌混合して、油性混合物の微小な液滴を造粒した。
この油性混合物の微小な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(1.5L)に仕込み、温水バスを用いて60℃で15時間その後70℃で10時間反応させた。得られた反応生成物を吸引濾過し、粒径が35μm、導電率(σ2−σ1)が19.0mS/cmの熱発泡性マイクロスフェアーを得た。
導電率(θ1)が7.1mS/cmの水性EVAエマルジョン(デンカ製エバテックス#70)と、上記の熱発泡性マイクロスフェアーの添加量(α)を変化させて、混合液の導電率(θ2)を測定した結果を表1(A)に示す。
Figure 2008195885
熱発泡性マイクロスフェアーの添加量(α)を0から20にまで増加させると、混合液の導電率(θ2)も増加している。これをグラフ化したものを図3直線(A)に示す。
直線(A)において、混合液の導電率y(=θ2)と熱発泡性マイクロスフェアー含有率x(=α)は、y = 0.2157x + 7.1072(相関係数R2 = 0.9998)の関係式で示される。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアー含有率xと混合液の導電率yには相関があり、混合液の導電率yを測定すれば、熱発泡性マイクロスフェアーの含有率xを推定することが可能であることがわかる。
[実施例2]
実施例1で得られた熱発泡性マイクロスフェアーを、吸引ろ過後、さらに水洗することにより、導電率(σ2−σ1)が10mS/cm,5mS/cm,0.5mS/cmの熱発泡性マイクロスフェアーを得た。
これら導電率(σ2−σ1)の異なる熱発泡性マイクロスフェアーを、導電率(θ1)が7.1mS/cmの水性EVAエマルジョン(デンカ製エバテックス#70)と、実施例1と同様の添加量(α)で混合した混合液の導電率(θ2)を表1(B)〜(C)に示す。
導電率(σ2−σ1)が0.5mS/cmの熱発泡性マイクロスフェアーを混合した混合液では、熱発泡性マイクロスフェアーの添加量(α)を0から20にまで増加させても、混合液の導電率(θ2)は変化しない。これをグラフ化したものを図3直線(D)に示す。
直線(D)において、混合液の導電率y(=θ2)と熱発泡性マイクロスフェアー含有率x(=α)は、y = 0.0035x + 7.1346(相関係数R2 = 0.276)の関係式で示される。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアー含有率xと混合液の導電率yは相関しないため、混合液の導電率yに基づいて、熱発泡性マイクロスフェアーの含有率xを推定することはできなかった。
また、導電率(σ2−σ1)が10mS/cm,5mS/cmの熱発泡性マイクロスフェアーを混合した混合液(表1(B)(C)及び図3(B)(C)参照)では、混合液の導電率y(=θ2)と熱発泡性マイクロスフェアー含有率x(=α)を表す関係式の相関係数R2 は、それぞれ0.9995,0.9794となり(表1参照)、混合液の導電率yに基づいて、熱発泡性マイクロスフェアーの含有率xを推定することが可能であった。なお、この場合において、熱発泡性マイクロスフェアーの導電率(σ2−σ1)が10mS/cm以上である場合、相関係数R2 >0.999となり、より精度良く熱発泡性マイクロスフェアーの含有率xを推定することが可能であった。
本発明に係る熱発泡性マイクロスフェアーは、合成樹脂(熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)やゴムなどの高分子材料、塗料、インク、粘着剤、水など様々な溶媒に添加され、熱発泡性マイクロスフェアー組成物として使用することができる。また、本発明に係る熱発泡性マイクロスフェアーは、組成物中の含有率を測定することが可能であるため、組成物の品質管理を精緻に行なうことが可能である。
熱発泡性マイクロスフェアーの分散による媒体の導電率の増加を説明する図である。 熱発泡性マイクロスフェアーの分散量と媒体の導電率の増加の関係を表す図である。 熱発泡性マイクロスフェアー含有率(添加量)xと混合液の導電率yの関係式を示す図である。

Claims (3)

  1. 重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーであって、下記工程1及び2:
    (1)25℃の温度で、熱発泡性マイクロスフェアー5gを、pHが7で導電率がσ1のイオン交換水20g中に分散させて、分散液を調整する工程1;及び
    (2)同温度で、該分散液を30分間振とうして、水抽出処理を行う工程2;
    により得られた水抽出液について、25℃で測定した導電率をσ2としたとき、σ2とσ1との差σ2−σ1が1mS/cmよりも大きい熱発泡性マイクロスフェアー。
  2. 高分子材料、塗料、粘着剤、インク又は水のいずれか1つから選択される媒体中に、請求項1記載の熱発泡性マイクロスフェアーまたはその発泡体が分散している組成物。
  3. 請求項2記載の組成物または該組成物の水抽出液の導電率に基づいて、該組成物中の熱発泡性マイクロスフィア含有率を推計する測定方法。
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