JP2008190403A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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由人 北山
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山口  聡
Mamoru Hasegawa
衛 長谷川
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英樹 坂本
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Abstract

【課題】 燃料の着火性に影響を与える種々のパラメータを総合的に考慮して、制御のための演算を簡略化し、しかも燃焼状態の不安定化を招くことなく、正確な燃料噴射制御を行うことができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 筒内圧PCYL、筒内ガス温度TCYL、エンジン回転数NE、総燃料噴射量QIT、燃焼室壁面温度TWALL、及び吸入空気流量GAに応じて、燃焼室内の燃料の着火性を示す着火性パラメータIGを算出する。着火性パラメータIGは、燃料の性状を示すパラメータを、燃料の着火遅れを示すパラメータで除算した値に比例するパラメータとして定義される。着火性パラメータIGに応じて燃料噴射パラメータを設定するとともに、検出される着火時期CAFMの補正量DIGを算出する。補正された着火時期CAFMCに基づいて、使用している燃料のセタン価CETLRNが推定される。
【選択図】 図6

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に燃焼室内の混合気を圧縮することにより燃料を燃焼させる内燃機関の制御装置に関する。
特許文献1には、予混合燃焼を行う圧縮着火内燃機関の制御装置が示されている。この装置によれば、予混合燃焼中に燃料の実着火時期を検出し、予め設定された標準燃料着火時期との差である着火時期誤差及び該着火時期誤差のばらつきに応じて、使用中の燃料の性状が判定される。
また特許文献2には、圧縮着火内燃機関において、燃焼室内(筒内)の混合気を圧縮したときの筒内状態(温度及び圧力)を、着火する前に推定し、推定した筒内状態に応じて着火時期を制御する手法が示されている。具体的には、吸気温度及び吸気圧力に応じて燃焼室内の圧縮端温度及び圧縮端圧力が簡易的な数式で算出され、圧縮端温度または圧縮端圧力が、燃料の着火範囲を温度と圧力の関係で表した場合に示される冷炎領域を通過するように、排気還流量及び吸排気弁の開閉時期が制御される。
特開2005−171818号公報 特開2001−20765号公報
予混合燃焼を行う機関運転領域は、機関運転領域の全体からみると比較的狭い。そのため、特許文献1に示された手法では、燃料性状の判定の実行時期が遅れて、燃料噴射時期が燃料性状に適していない設定となり、失火が発生する可能性があった。
そこで本願出願人は予混合燃焼を行う機関運転領域だけでなく、機関のアイドル状態を含む低負荷運転状態で燃料性状の判定を行うべく検討を行った結果、低負荷運転状態へ移行する直前の機関運転状態、あるいは吸気温や機関冷却水温などに依存して、燃料性状の判定結果が変動することが確認された。
また特許文献2に示された手法では非常に簡易的な数式を用いて圧縮端温度及び圧縮端圧力が推定されるため、制御対象となる機関やセンサの特性ばらつきや、冷炎領域の経時変化などに対応することは困難である。したがって、推定された筒内状態と、実際の筒内状態とのずれが大きくなり、燃料の着火時期を正確に制御できない可能性がある。
上述したように圧縮着火内燃機関では、燃料の性状以外にも、燃料の着火性(着火時期)に影響を与えるパラメータが多数あるため、それらのパラメータをすべてに対応して検出される燃料噴射時期や燃料噴射量の補正を行うと、補正のための演算が複雑化する。そのため、燃料の着火性に影響を与えるパラメータを総合的に考慮して燃料噴射制御を行うことが望まれていた。
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、燃料の着火性に影響を与える種々のパラメータを総合的に考慮して、制御のための演算を簡略化し、しかも燃焼状態の不安定化を招くことなく、正確な燃料噴射制御を行うことができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段(6)を備え、前記燃焼室内の混合気を圧縮することにより前記燃料を燃焼させる内燃機関の制御装置において、前記燃料の燃料性状を示すパラメータ(100−CET)を、前記燃焼室内に噴射された燃料の着火遅れを示すパラメータ(TDFM−TC)で除算した値に比例するパラメータとして定義され、前記燃料の着火性を示す着火性パラメータ(IG)を算出する着火性パラメータ算出手段と、算出した着火性パラメータ(IG)を用いて、前記燃料噴射手段(6)による燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射手段により噴射された燃料の実着火時期(CAFM)を検出する着火時期検出手段と、前記実着火時期(CAFM)に基づいて前記燃料の燃料性状(CET)を推定する燃料性状推定手段とをさらに備え、前記燃料性状推定手段は、前記着火性パラメータ(IG)に応じて前記実着火時期(CAFM)の補正を行い、補正された着火時期(CAFMC)に基づいて前記推定を行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射手段により噴射された燃料の実着火時期(CAFM)を検出する着火時期検出手段をさらに備え、前記燃料噴射制御手段は、前記着火性パラメータ(IG)に応じて、前記燃料噴射手段により噴射された燃料の予測着火時期(CAFP)を算出する予測着火時期算出手段と、前記機関の運転状態に応じて目標着火時期(CAFMM)を算出する目標着火時期算出手段と、前記実着火時期(CAFM)が前記目標着火時期(CAFMM)に一致するように燃料噴射時期(CAIB)の補正量(DCAIB)を算出する補正量算出手段と、前記予測着火時期(CAFP)及び実着火時期(CAFM)に応じて、前記補正量の修正量(DCM)を算出する修正量算出手段と、前記修正量(DCM)により前記補正量(DCAIB)を修正し、修正した補正量(DCAI)を用いて前記燃料噴射時期(CAIB)を補正する補正手段と、補正された燃料噴射時期(CAIM)に応じて前記燃料噴射手段による燃料噴射を実行する燃料噴射実行手段とを備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置において、前記着火性パラメータ算出手段は、前記燃焼室内のガスの温度(TCYL)、圧力(PCYL)、及び流速に関わる流速パラメータ(NE,QIT)、前記燃焼室の壁面温度(TWALL)、並びに前記燃焼室に供給される新気の流量(GA)を入力パラメータとして定義される着火性モデルを用いて前記着火性パラメータ(IG)を算出することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、前記機関は排気の一部を吸気系に還流する排気還流手段(25,26,28,29,30)を備え、前記壁面温度(TWALL)は、前記機関の回転数(NE)、前記燃料噴射手段による燃料噴射量(QIT)、前記機関の冷却水温度(TW)、前記機関に吸入される空気の温度(TA)、及び前記排気還流手段により還流される排気の温度(TEGR)に応じて算出されることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、燃料性状を示すパラメータを、燃料の着火時遅れを示すパラメータで除算した値に比例するパラメータとして定義される着火性パラメータが算出され、算出された着火性パラメータを用いて燃料噴射が制御される。この着火性パラメータは、燃料性状以外の、着火時期に影響を与える要因の影響が総合的に反映された、燃料の着火性を示すパラメータであると考えられるので、このように定義される着火性パラメータを用いることにより、燃焼の不安定化を招くことなく適切な燃料噴射制御を行うことが可能となる。また燃料性状を示すパラメータを着火性パラメータで除算することにより、着火遅れを示すパラメータを算出し、着火遅れパラメータから着火時期を予測することができる。したがって、着火性パラメータに応じて予測される着火時期と実際の着火時期との偏差によって着火性パラメータの精度を監視し、燃料噴射制御の精度を維持することが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、着火性パラメータに応じて燃料の実着火時期が補正され、補正された着火時期に基づいて使用中の燃料の燃料性状が推定される。着火性パラメータには、燃料性状以外の着火時期に影響を与えるパラメータが総合的に反映されているため、着火性パラメータに応じて実着火時期を補正することにより、機関運転状態などの影響で燃料性状の推定結果が変動することが無くなり、正確な推定を行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、着火性パラメータに応じて、噴射された燃料の予測着火時期が算出されるとともに、噴射された燃料の実着火時期が検出され、検出された実着火時期が目標着火時期に一致するように燃料噴射時期の補正量が算出される。さらに予測着火時期及び実着火時期に応じて、前記補正量の修正量が算出され、この修正量により前記補正量が修正され、修正された補正量を用いて燃料噴射時期が補正される。予測着火時期と実着火時期との偏差に応じて修正量を算出することにより、機関特性の経年変化に起因する着火性パラメータの精度低下の影響を抑制し、長期間に亘って正確な着火時期制御を行うことができる。
請求項4に記載の発明によれば、燃焼室内のガスの温度、圧力、及び流速に関わる流速パラメータ、燃焼室の壁面温度、並びに燃焼室に供給される新気の流量を入力パラメータとして定義される着火性モデルを用いて、着火性パラメータが算出されるので、燃焼室内の状態を示すパラメータが総合的に着火性モデルに組み込まれ、噴射された燃料の着火性を精度良く示す着火性パラメータを得ることができる。
請求項5に記載の発明によれば、壁面温度は、機関の回転数、燃料噴射量、冷却水温度、吸入空気温度、及び還流排気温度に応じて算出されるので、燃焼室内で発生する熱量、外部に放出される熱量、及び外部気体との熱交換による熱量が総合的に考慮され、正確な壁面温度を得ることができる。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明の一実施形態にかかる内燃機関と、その制御装置の構成を示す図である。以下両図を合わせて参照して説明する。内燃機関(以下「エンジン」という)1は、シリンダ内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、各気筒に燃料噴射弁6が設けられている。燃料噴射弁6は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)4に電気的に接続されており、燃料噴射弁6の開弁時期及び開弁時間は、ECU4により制御される。
エンジン1は、吸気管7,排気管8、及びターボチャージャ9を備えている。ターボチャージャ9は、排気の運動エネルギにより回転駆動されるタービンと、タービンとシャフトを介して連結されたコンプレッサとを備えている。ターボチャージャ9は、エンジン1に吸入される空気の加圧(圧縮)を行う。
吸気管7のコンプレッサ下流側にはインタークーラ21が設けられ、さらにインタークーラ21の下流側には、スロットル弁22が設けられている。スロットル弁22は、アクチュエータ23により開閉駆動可能に構成されており、アクチュエータ23はECU4に接続されている。ECU4は、アクチュエータ23を介して、スロットル弁22の開度制御を行う。
吸気管7は、スロットル弁22の下流側において吸気管7A,7Bに分岐し、さらに各気筒に対応して分岐する。なお、図1には1つの気筒に対応する構成のみが示されている。エンジン1の各気筒には、2つの吸気弁(図示せず)及び2つの排気弁(図示せず)が設けられている。2つの吸気弁により開閉される吸気口(図示せず)はそれぞれ吸気管7A,7Bに接続されている。
また、吸気管7B内には、当該吸気管7Bを介して吸入される空気量を制限してエンジン1の燃焼室にスワールを発生させるスワール制御弁(以下「SCV」という)19が設けられている。SCV19は、アクチュエータ(図示せず)によって駆動されるバタフライ弁であり、その弁開度はECU4により制御される。
排気管8と吸気管7との間には、排気を吸気管7に還流する排気還流通路25が設けられている。排気還流通路25には、還流させる排気を冷却する還流排気クーラ30と、還流排気クーラ30をバイパスするバイパス通路29と、還流排気クーラ30側とバイパス通路29側との切り換えを行う切換弁28と、排気還流量を制御するための排気還流制御弁(以下「EGR弁」という)26とが設けられている。EGR弁26は、ソレノイドを有する電磁弁であり、その弁開度はECU4により制御される。排気還流通路25、還流排気クーラ30、バイパス通路29、切換弁28、及びEGR弁26より、排気還流機構が構成される。EGR弁26には、その弁開度(弁リフト量)LACTを検出するリフトセンサ27が設けられており、その検出信号はECU4に供給される。
吸気管7には、吸入空気流量GAを検出する吸入空気流量センサ33、吸気温TAを検出する吸気温センサ34、及び吸気圧PIを検出する吸気圧センサ35が設けられ、排気還流通路25には還流排気温度TEGRを検出する還流排気温度センサ36が設けられている。これらのセンサ33〜36は、ECU4と接続されており、センサ33〜36の検出信号は、ECU4に供給される。
排気管8の、タービンの下流側には、排気ガス中に含まれる炭化水素などの酸化を促進する触媒コンバータ31と、粒子状物質(主としてすすからなる)を捕集する粒子状物質フィルタ32とが設けられている。
エンジン1の各気筒には、筒内圧(燃焼圧力)を検出する筒内圧センサ2が設けられている。本実施形態では、筒内圧センサ2は、各気筒に設けられるグロープラグと一体に構成されている。筒内圧センサ2の検出信号は、ECU4に供給される。なお、筒内圧センサ2の検出信号は、実際には、筒内圧PCYLのクランク角度(時間)に対する微分信号(圧力変動)に相当するものであり、筒内圧PCYLは、筒内圧センサ出力を積分することにより得られる。
またエンジン1には、クランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ3が設けられている。クランク角度位置センサ3は、クランク角1度毎にパルスを発生し、そのパルス信号はECU4に供給される。クランク角度位置センサ3は、さらに特定気筒の所定クランク角度位置で気筒識別パルスを生成して、ECU4に供給する。
ECU4には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの操作量APを検出するアクセルセンサ37、エンジン1の冷却水温TWを検出する冷却水温センサ38、エンジン1の潤滑油の温度TOILを検出する油温センサ39、及び排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(図示せず)などが接続されており、これらのセンサの検出信号がECU4に供給される。
ECU4は、エンジン1の各気筒の燃焼室に設けられた燃料噴射弁6の制御信号を駆動回路5に供給する。駆動回路5は、燃料噴射弁6に接続されており、ECU4から供給される制御信号に応じた駆動信号を、燃料噴射弁6に供給する。これにより、ECU4から出力される制御信号に応じた燃料噴射時期において、前記制御信号に応じた燃料噴射量だけ燃料が、各気筒の燃焼室内に噴射される。ECU4は、通常は1つの気筒についてパイロット噴射及び主噴射を実行する。
ECU4は、増幅器10と、A/D変換部11と、パルス生成部13と、CPU(Central Processing Unit)14と、CPU14で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)15と、CPU14が演算結果などを格納するRAM(Random Access Memory)16と、入力回路17と、出力回路18とを備えている。筒内圧センサ2の検出信号は、増幅器10に入力される。増幅器10は、入力される信号を増幅する。増幅器10により増幅された信号は、A/D変換部11に入力される。また、クランク角度位置センサ3から出力されるパルス信号は、パルス生成部13に入力される。
A/D変換部11は、バッファ12を備えており、増幅器10から入力される筒内圧センサ出力をディジタル値(以下「圧力変化率」という)dp/dθに変換し、バッファ12に格納する。より具体的には、A/D変換部11には、パルス生成部13から、クランク角1度周期のパルス信号(以下「1度パルス」という)PLS1が供給されており、この1度パルスPLS1の周期で筒内圧センサ出力をサンプリングし、ディジタル値に変換してバッファ12に格納する。筒内圧PCYLは、圧力変化率dp/dθを積算することにより算出される。
一方、CPU14には、パルス生成部13から、クランク角6度周期のパルス信号PLS6が供給されており、CPU14はこの6度パルスPLS6の周期でバッファ12に格納されたディジタル値を読み出す処理を行う。すなわち、本実施形態では、A/D変換部11からCPU14に対して割り込み要求を行うのではなく、CPU14が6度パルスPLS6の周期で読出処理を行う。
入力回路17は、各種センサの検出信号をディジタル値に変換し、CPU14に供給する。なお、エンジン回転数NEは、6度パルスPLSの周期から算出される。またエンジン1の要求トルクTRQは、アクセルペダル操作量APに応じて算出される。
CPU14は、エンジン運転状態に応じて目標排気還流量GEGRを算出し、目標排気還流量GEGRに応じてEGR弁26の開度を制御するデューティ制御信号を、出力回路18を介してEGR弁26に供給する。さらにCPU14は、以下に説明するように使用中の燃料のセタン価を推定する処理を実行し、推定したセタン価に応じた燃料噴射制御を行う。
図3(a)は、燃焼室内に噴射された燃料の着火時期CAFMと、エンジン冷却水温TWとの関係を示す図であり、冷却水温TWが高くなるほど、着火時期CAFMは進角する。また同図(b)は、着火時期を検出するために実行される予混合燃焼の開始時刻t0からの着火時期CAFMの推移を示すタイムチャートであり、ラインL1は、時刻t0以前において排気還流を実行しかつ還流される排気の冷却を行わなかった場合に対応し、ラインL2は時刻t0以前において排気還流を実行しかつ還流される排気の冷却を行った場合に対応する。この図から明らかなように、還流排気の冷却を行った場合には、行わない場合に比べて着火時期が遅角する。また同図(c)は、同図(b)と同様に予混合燃焼の開始時刻t0からの着火時期CAFMの推移を示すタイムチャートであり、ラインL3は、予混合燃焼の開始時刻t0以前において、エンジン1により駆動される車両が時速40km/hで走行し排気還流を行った場合に対応し、ラインL4は、予混合燃焼の開始時刻t0以前において、当該車両が時速40km/hで走行し排気還流を行わなかった場合に対応する。この図から明らかなように、排気還流を行った場合には行わなかった場合に比べて、着火時期が進角し、時間経過とともに排気還流を行わなかった場合の着火時期に近づいていく。このように、燃焼室内に噴射された燃料の着火性(着火し易さ)は、エンジンの温度、燃焼室内に吸入されるガスの温度などの影響を受ける。また、排気還流を行うと、燃焼室内に吸入される酸素量(新気量)が減少するため、着火時期が遅角する。
また、燃焼室内に噴射された燃料の着火性は、燃焼室内のガス(空気、気化燃料、還流排気)が流動するときの流速、燃料の霧化特性及び蒸発特性にも依存して変化する。また、排気還流を行うと、燃焼室内に吸入される酸素量(新気量)が減少するため、着火時期が遅角する。すなわち、燃料の着火性は、吸入酸素量にも依存して変化する。
そこで本実施形態では、下記式(1a)及び(1b)により、着火性モデルを定義し、燃料の着火性を示す着火性パラメータIGを算出する。着火性パラメータIGは、定数(100)から燃料のセタン価CETを減算した値を、着火遅れ時間TDFMから所定時間TCを減算した値で除算することにより算出されるパラメータである。着火性パラメータIGは、燃料噴射直前の着火性を示すパラメータであり、値が大きいほど着火性が高いことを示す。着火性パラメータIGの算出に用いるパラメータの検出時期は、燃料噴射の実行指令時期であり、これは実際の燃料噴射時期の直前の時期に対応する。実際の燃料噴射は、燃料噴射の実行指令時点から若干遅れを伴って実行されるからである。また着火遅れ時間TDFMは、燃料噴射時期から着火時期までの遅れ時間[ミリ秒]である。
IG=(100−CET)/(TDFM−TC) (1a)
=α・PCYL+β・TCYL+γ・TWALL
+δ・NE+ζ・QIT+ξ・GA+ε (1b)
ここで、セタン価CETは市場で流通している燃料に対応する値、すなわち40以上60以下の値をとる。所定時間TCは、最小の着火遅れ時間に相当し、燃料噴射弁の応答性に依存するパラメータであり、例えば0.4ミリ秒に設定される。PCYLは燃料噴射前の筒内圧、TCYLは燃料噴射前の燃焼室内(筒内)ガス温度、TWALLは燃焼室の壁面温度、NEはエンジン回転数、QITはエンジン運転の1サイクル当たりの燃料噴射量(以下「総噴射量」という)、GAは吸入空気流量である。上記した燃焼室内のガス流速及び燃料の霧化/蒸発特性は、エンジン回転数NE及び総噴射量QITに依存するので、上記式(1)のエンジン回転数NEに依存する項及び総噴射量QITに依存する項で考慮されている。また、燃焼室に吸入される酸素量は、吸入空気流量GAにより考慮されている。
また式(1b)のα〜ζ及びξは、実験より決定されるモデルパラメータである。すなわち、セタン価CETが既知の燃料を使用して、エンジン回転数NE及び総噴射量QITを変化させつつ、着火遅れ時間TDFMを検出するとともに、筒内圧PCYL、筒内温度TCYL、壁面温度TWALL及び吸入空気流量GAの検出また推定を行って、多数のデータを取得し、最小二乗法を用いて、モデルパラメータα〜ζ及びξを決定する。
本実施形態では、筒内圧PCYLは検出されるが、筒内圧センサが設けられていない場合は、吸気圧センサ35により検出される吸気圧PIを下記式(2)に適用して算出することができる。
PCYL=PI×(V1/VCYL(θ))n (2)
ここでV1は、ピストンが下死点に位置するときの燃焼室容積であり、VCYL(θ)はクランク角度がθであるときの燃焼室容積、nはポリトロープ指数である。ポリトロープ指数nは、例えば1.3〜1.5程度の値に設定される。
筒内ガス温度TCYLは、気体の状態方程式に基づく下記式(3)により算出される。
TCYL=PCYL×VCYL(θ)/(m×R) (3)
ここでmは燃焼室内のガスの質量であり、吸入空気流量GA、還流排気温度TEGR、及びEGR率から算出される。Rは、ガス定数(287J/(kg・K))である。質量mは、厳密には燃焼室に吸入された新気の質量、還流排気の質量、及び燃焼室内残留ガスの質量の和として算出されるが、残留ガス質量は、エンジン運転状態によって大きく変化しないので、固定値として扱うようにしてもよい。
なお、筒内圧センサが設けられていない場合には、燃焼室に吸入される直前のガス(新気+還流排気)の温度TIを検出し、下記式(4)により筒内ガス温度TCYLを算出することができる。
TCYL=TI×(V1/VCYL(θ))n-1 (4)
壁面温度TWALLは、ピストン、シリンダヘッド、シリンダ壁面などを1つの熱面としてモデル化して算出する。すなわち、図4に示すようにエンジンにおける燃焼により熱面に流入する熱量QEG,熱面からエンジン冷却系に放出される熱量QCD,及び熱面と外部気体との間で放熱/受熱される熱量QOGを考慮すると、壁面温度TWALLは、下記式(5)で与えられる。
TWALL=TEG+TCD+TOG (5)
TEGは熱量QEGに対応する発熱項であり、TCDは熱量QCDに対応する放熱項であり、TOGは熱量QOGに対応する放熱/受熱項である。
より具体的には、演算周期をΔTとし、その間の温度変化に着目すると、下記式(6)が成立する。
(TWALL(k+kdelay)−TWALL(k))/ΔT
=A・NE(k)+B・QIT(k)+C・(TWALL(k)−TW(k))
+D・(TWALL(k)−TA(k))+E・(TWALL(k)−TEGR(k))
(6)
ここで、kは演算周期ΔTで離散化した離散化時刻、kdelayは例えば100に設定される離散化遅れ時間、NEはエンジン回転数、QITは総噴射量、TWはエンジン冷却水温、TAは吸気温度、TEGRは還流排気温度、A〜Eは熱面モデルパラメータである。式(6)の右辺第1項及び第2項が、発熱項TEGに対応し、第3項が放熱項TCDに対応し、第4項及び第5項が放熱/受熱項TOGに対応する。熱面モデルパラメータA〜Eは、予め実験により求めたものを適用する。
式(6)を変形すると、下記式(7)が得られる。この式を逐次適用することにより、壁面温度TWALLを算出することができる。
TWALL(k+kdelay)=NE(k)・A・ΔT+QIT(k)・B・ΔT
+TWALL(k)・(C・ΔT+D・ΔT+E・ΔT+1)
−TW(k)・C・ΔT−TA(k)・D・ΔT−TEGR(k)・E・ΔT
(7)
図5(a)は、セタン価CETが42.8の燃料を使用した場合における、着火性パラメータIGと実測した着火遅れ時間TDFMとの関係を示す。図中の「○」が実測データを示し、曲線L11は実測データから予測される関係を示す。着火性パラメータIGの値が増加するほど、曲線L11の傾きの絶対値は減少する。図5(b)は、同じ燃料を使用した場合における、着火性パラメータIGと、式(1a)及び(1b)を用いて算出される着火遅れ時間TDFMとの関係を示す。同図中の「○」が式(1a)による算出データを示し、「□」が式(1b)による算出データを示す。両者がよく一致し、また算出データから実測データ(図5(a))を推測可能であることが確認される。
またセタン価CETの異なる燃料についても着火遅れ時間TDFMを計測することにより、図5(c)に示すように、セタン価CETが増加するほど、着火遅れ時間TDFMが減少する関係が得られる。図5(c)において、曲線L21〜L23は、それぞれセタン価CET1,CET2,CET3の燃料に対応し、CET1<CET2<CET3なる関係を有する。
次に上述した着火性パラメータIGを適用例を説明する。以下に説明する適用例では、式(1b)による着火性パラメータIGの算出は、1サイクル前の燃料噴射指示時期に検出されたデータを用いて行う。また、実際に適用する着火性パラメータIGは、10サイクル程度の期間の移動平均値を用いることが望ましい。また、本実施形態では、全気筒に筒内圧センサが設けられているので、実際に適用する着火性パラメータIGは、気筒毎に算出される値の平均値である。
図6は、着火性パラメータIGを算出し、算出した着火性パラメータを用いて使用中の燃料のセタン価推定を行うセタン価推定モジュールの構成を示すブロック図であり、この図に示す各ブロックの機能はCPU14により実行される処理により実現される。
図6に示すセタン価推定モジュールは、燃料噴射制御部40と、セタン価学習値算出部50とからなる。燃料噴射制御部40は、着火性推定部41と、壁面温度算出部42と、燃料噴射パラメータ算出部43とからなる。
壁面温度算出部42は、エンジン回転数NE、冷却水温TW、吸気温度TA、及び還流排気温度TEGRを、上記式(7)に適用し、壁面温度TWALLを算出する。着火性推定部41は、筒内圧PCYL、筒内ガス温度TCYL、エンジン回転数NE、総噴射量QIT、及び壁面温度TWALLを、上記式(1b)に適用し、着火性パラメータIGを算出する。
燃料噴射パラメータ算出部43は、着火性パラメータIG,要求トルクTRQ,及びエンジン回転数NEに応じて、セタン価推定時に適用する燃料噴射時期CAIM、燃料噴射量QINJ及び追加噴射量QTRQを算出する。具体的には、複数の所定エンジン回転数NEXに対応して設けられ、着火性パラメータIG及び要求トルクTRQに応じて設定された燃料噴射時期マップ及び燃料噴射量マップを検索することにより、燃料噴射時期CAIM及び燃料噴射量QINJが算出される。燃料噴射時期マップは、要求トルクTRQが増加するほど、また着火性パラメータIGが増加するほど、燃料噴射時期CAIMが遅角するように設定される。また燃料噴射量マップは、着火性パラメータIGが増加するほど、燃料噴射量QINJが減少するように設定される。
追加噴射量QTRQは、セタン価推定のための燃料噴射実行後に発生トルクの低下を防止する目的で行われる追加噴射の燃料噴射量であり、要求トルクTRQに応じて算出される要求燃料噴射量QTOTALから燃料噴射量QINJを減算することにより算出される(QTRQ=QTOTAL−QINJ)。
後述する図9の処理においてセタン価推定処理の実行条件が成立したとき、算出された燃料噴射時期CAIM及び燃料噴射量QINJに基づくセタン価推定のための燃料噴射(及び追加噴射量QTRQに基づく追加燃料噴射)が、所定の1つの気筒で実行される。なお、他の気筒では通常の燃料噴射が行われる。
セタン価学習値算出部50は、IG補正量算出部51、経過時間補正量算出部52、加算部53、着火時期検出部54、減算部55,56、スイッチ部57、セタン価推定部58、及び診断部59からなる。
着火時期検出部54は、筒内圧センサ2の出力信号をディジタル値に変換した圧力変化率dp/dθに応じて着火時期CAFMを検出する。具体的には、下記式(8)により熱発生率HRR[J/deg]を算出し、燃料噴射時期CAIMから、熱発生率HRRの積算値IHRRを算出する。そして、積算値IHRRが着火判定閾値IHRRTH(例えば総発熱量の50%に相当する値に設定される)に達した時期を、着火時期CAFMと判定する。
HRR=κ/(κ−1)×PCYL×dV/dθ
+1/(κ−1)×VCYL×dp/dθ (8)
ここで、κは混合気の比熱比、PCYLは検出筒内圧、dV/dθは筒内容積増加率[m3/deg]、VCYLは気筒容積、dp/dθは圧力変化率[kPa/deg]である。
IG補正量算出部51は、着火性パラメータIGに応じて着火時期CAFMの補正量(以下「IG補正量」という)DIGを算出する。IG補正量DIGは、着火性パラメータIGが増加するほど増加するように設定される。
経過時間補正量算出部52は、セタン価推定処理開始時点からの経過時間TMを下記式(9)に適用し、経過時間補正量DTMを算出する。
DTM=KA×(SB-TM−1) (9)
ここで、KAは、排気還流を停止する直前の還流排気温度TEGRに応じて図7(a)に示すKAテーブルを検索することにより算出される係数である。KAテーブルは、還流排気温度TEGRが高くなるほど、係数KAが増加するように設定されている。SBは、経過時間TMに応じて経過時間補正量DTMが減少する速度を決定する速度パラメータであり、エンジン回転数NEに応じて図7(b)に示すSBテーブルを検索することにより算出される。SBテーブルは、エンジン回転数NEが高くなるほど速度パラメータSBが増加するように設定されている。速度パラメータSBは、最小値が例えば1.005程度に設定されるため、経過時間補正量DTMは常に負の値をとる。
加算部53は、IG補正量DIG及び経過時間補正量DTMを加算して、着火時期補正量DCを算出する。減算部55は、検出された着火時期CAFMから着火時期補正量DCを減算することにより、補正着火時期CAFMCを算出する。減算部56は、燃料噴射時期CAIMから補正着火時期CAFMCを減算することにより、着火遅れ角DCAMを算出する。
スイッチ部57は、後述する図9の処理で設定される切換制御信号SCTLにより切換制御され、切換制御信号SCTLが「0」のときオフ状態であり、「1」のときオン状態となる。切換制御信号SCTLは、セタン価推定の実行条件が成立したとき、「1」に設定される。
セタン価推定部58は、着火遅れ角DCAMをエンジン回転数NEを用いて、着火遅れ時間TDFMに変換し、着火遅れ時間TDFMに応じて図8に示すCETテーブルを検索し、セタン価CETを算出する。
診断部59は、セタン価CETを下記式(10)に適用し、セタン価学習値CETLRNを算出するとともに、算出されるセタン価CETのばらつきに基づいて、算出されたセタン価CETの妥当性を診断し、安定した推定セタン価が得られていないと診断したときは、推定処理の再実行を要求する要求信号SREQを出力する。要求信号SREQが出力されると、再度推定処理が実行される。安定した推定セタン価が得られたと診断したときは、セタン価学習値CETLRNを出力する。
CETLRN=α×CET+(1−α)×CETLRN (10)
ここで、αは0から1の間の値に設定されるなまし係数、右辺のCETLRNは、前回算出値である。
なお、セタン価推定処理が実行されないときは、記憶されている最新のセタン価学習値CETLRNが、診断部59から出力される。
着火性パラメータIGを算出し、算出した着火性パラメータIGに応じて燃料噴射時期CAIM及び燃料噴射量QINJを設定することにより、セタン価推定処理を実行するときに、失火が発生したり、燃焼が不安定化すること確実に防止することができる。また、着火性パラメータIGに応じて実着火時期CAFMを補正することにより、セタン価推定処理を開始する直前のエンジン運転状態や冷却水温TWなどの影響を排除して、正確なセタン価の推定を行うことができる。またセタン価推定処理を開始した時点から時間が経過し、セタン価推定処理を開始する前に行っていた排気還流の影響度合が減少するにつれて、着火時期が変化するが(図3(b)(c)参照)、経過時間補正量DTMを適用することにより、この着火時期の変化を補正して、比較的長時間に亘って正確なセタン価の推定を行うことができる。
図9は、セタン価推定処理の実行条件の判定及び切換制御信号SCTLの設定を行う処理の手順を示すフローチャートである。図9に示す処理は、CPU14において所定時間毎に実行される。
ステップS11では、エンジン1がアイドル状態にあるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、セタン価推定を安定して実行するための所定実行条件が成立するか否かを判別する。この所定実行条件は、例えば還流排気温度TEGRが所定温度TE0(例えば約90℃)以上であり、かつエンジン1の暖機状態を示す冷却水温TWまたは油温TOILが所定温度TWUP(例えば80℃)以上であるとき成立する。所定実行条件が成立した時点が、「所定運転状態に移行した時点」に相当する。
ステップS11またはS12の答が否定(NO)であるときは、切換制御信号SCTLを「0」に設定する(ステップS15)。
ステップS12で所定実行条件が成立するときは、EGR弁26を閉弁し、排気還流を停止する(ステップS13)。これにより、還流される排気の影響で着火時期が変化することが防止され、セタン価の推定精度を高めることができる。ステップS14では、切換制御信号SCTLを「1」に設定し、本処理を終了する。
図10は、算出された着火性パラメータIGに応じて、燃料噴射時期CAIMのフィードバック制御を行う燃料噴射制御モジュールの構成を示す図である。この図に示す各ブロックの機能は、CPU14の演算により実現される。
図10に示す燃料噴射制御モジュールは、基本噴射時期算出部71と、目標着火時期算出部72と、着火時期検出部73と、予測着火時期算出部74と、減算部75と、基本補正量算出部76と、修正量算出部77と、加算部78,79とを備えている。
基本噴射時期算出部71は、要求トルクTRQ、エンジン回転数NE、着火性パラメータIG、及びセタン価学習値CETLRNに応じて、基本燃料噴射時期CAIBを算出する。基本燃料噴射時期CAIBは、着火性パラメータIGが増加するほど、またセタン価学習値CETLRNが増加するほど、遅角するように設定される。ここで着火性パラメータIGに応じて基本燃料噴射時期CAIBを算出することは、従来の制御におけるエンジン冷却水温や大気圧に応じた補正に対応する演算を同時に行っていることに相当する。
目標着火時期算出部72は、要求トルクTRQ、エンジン回転数NE、着火性パラメータIG、及びセタン価学習値CETLRNに応じて、目標着火時期CAFMMを算出する。着火時期検出部73は、図6に示した着火時期検出部54と同様に着火時期CAFMを検出する。減算部75は、目標着火時期CAFMMから検出着火時期CAFMを減算し、着火時期偏差DCAFMを算出する。
予測着火時期算出部74は、着火性パラメータIG及びセタン価学習値CETLRNを下記式(11)に適用して、予測着火遅れ時間TDFMPを算出し、予測着火遅れ時間TDFMPをエンジン回転数NEに応じて予測着火遅れ角DCAFMPに変換し、最終的に算出される燃料噴射時期CAIM(前回値)から予測着火遅れ角DCAFMPを減算することにより(下記式(12))、予測着火時期CAFPを算出する。
TDFMP=(100−CETLRN)/IG+TC (11)
CAFP=CAIM−DCAFMP (12)
基本補正量算出部76は、着火性パラメータIG及びセタン価学習値CETLRNに応じて、着火時期偏差DCAFMを「0」に収束させるように基本補正量DCAIBを算出する。より具体的には、複数の所定セタン価CETXに対応して、図11に示すようなDCAIBマップが設けられており、基本補正量DCAIBは、着火時期偏差DCAFM及び着火性パラメータIGに応じてDCAIBマップを検索し、さらにセタン価学習値CETLRNに応じた補間演算を行うことにより算出される。DCAIBマップは、着火時期偏差DCAFMが増加するほど、また着火性パラメータIGが減少するほど、基本補正量DCAIBが増加するように設定されている。図11に示す曲線L31及びL32は、それぞれ着火性パラメータIGの第1の値IG1及び第2の値IG2に対応し、IG1<IG2なる関係を有する。
修正量算出部77は、図12に示す処理を実行し、予測着火時期CAFPと検出着火時期CAFMとの差である予測偏差DCAFP(=CAFM−CAFP)に応じて、修正量DCMを算出する。
加算部78は、基本補正量DCAIBに修正量DCMを加算することにより、補正量DCAIを算出する。加算部79は、基本燃料噴射時期CAIBに補正量DCAIを加算することにより、燃料噴射時期CAIMを算出する。
図12は、修正量算出部77における処理を示すフローチャートである。この図に示す処理は、各気筒に対応して燃焼サイクル周期で実行されるが、修正量DCMは全気筒共通の1つのパラメータとして算出される。したがって、何れか1つの気筒に対応する処理で、修正量DCMが更新されると、他の気筒に対応する処理の修正量DCMも同様に更新される。
ステップS21では、検出着火時期CAFMから予測着火時期CAFPを減算することにより、予測偏差DCAFPを算出する。ステップS22では、直近の200サイクル程度の期間における、予測偏差DCAFPの移動平均値DCAFPAVを算出する。
ステップS23では、移動平均値DCAFPAVが所定偏差DCATH(例えば3度)より大きいか否かを判別する。ステップS23の答が否定(NO)であるときは、減算修正カウンタCSMの値を「0」に設定し(ステップS24)、ステップS28に進む。
ステップS23で、DCAFPAV>DCATHであるときは、減算修正カウンタCSMを「1」だけインクリメントし(ステップS25)、減算修正カウンタCSMの値が所定値CMX(例えば500)以上であるか否かを判別する(ステップS26)。この答が否定(NO)であるときは、直ちにステップS28に進む。ステップS26で、減算修正カウンタCSMの値が所定値CMXに達すると、ステップS27に進み、修正量DCMを所定角度DCAX(例えば2度)だけ減少方向に更新する。その後ステップS28に進む。
ステップS28では、移動平均値DCAFPAVが所定偏差DCATHに負号をつけた値より小さいか否かを判別する。ステップS28の答が否定(NO)であるときは、加算修正カウンタCAMの値を「0」に設定し(ステップS29)、本処理を終了する。
ステップS28で、DCAFPAV<−DCATHであるときは、加算修正カウンタCAMを「1」だけインクリメントし(ステップS30)、加算修正カウンタCAMの値が所定値CMX以上であるか否かを判別する(ステップS31)。この答が否定(NO)であるときは、直ちに本処理を終了する。ステップS31で、加算修正カウンタCAMの値が所定値CMXに達すると、ステップS32に進み、修正量DCMを所定角度DCAXだけ増加方向に更新する。その後本処理を終了する。
図13は、図12の処理を説明するためのタイムチャートである。予測偏差DCAFPの移動平均値DCAFPAVが所定偏差DCATHを超えると(時刻t1)、減算修正カウンタCSMのカウントアップが開始される。減算修正カウンタCSMの値が所定値CMXに達すると(時刻t2)、修正量DCMが所定角度DCAXだけ減少方向に更新される。時刻t1からt2までの期間TDETが、修正量DCMを更新するか否かを判定する判定期間に相当する。
修正量DCMが減少方向に更新されると、移動平均値DCAFPAVは徐々に減少する。その後移動平均値DCAFPAVが所定偏差−DCATHを下回ると(時刻t3)、加算修正カウンタCAMのカウントアップが開始される。加算修正カウンタCAMの値が所定値CMXに達すると(時刻t4)、修正量DCMが所定角度DCAXだけ増加方向に更新される。時刻t3からt4までの期間TDETが、修正量DCMを更新するか否かを判定する判定期間に相当する。
修正量DCMは、エンジン停止後もその値が保持され、つぎにエンジンが始動されたときに保持された値が適用される。式(1b)で定義されるモデルが、実際の着火性を精度よく近似しているときは、予測偏差DCAFPは「0」近傍の値をとるため、修正量DCMは「0」を維持する。経時変化により、モデルの特性と、実際のエンジンの特性とにずれが生じてくると、予測偏差DCAFPの絶対値が増加し、修正量DCMが増加方向または減少方向に更新され、モデルの特性ずれの影響が低減される。
図10に示した燃料噴射制御モジュールにより、実着火時期CAFMが目標着火時期CAFMMと一致するように制御が行われる。着火性パラメータIGに応じて予測着火時期CAFPを算出し、予測着火時期CAFPと、実着火時期CAFMとの偏差DCAFPに応じて、基本補正量DCAIBを修正し、最終的な補正量DCAIを算出するようにしたので、エンジン特性の経年変化に起因する着火性パラメータIGの精度低下の影響を抑制し、長期間に亘って正確な着火時期制御を行うことができる。
本実施形態では、燃料噴射弁6が燃料噴射手段に相当し、排気還流通路25、EGR弁26、還流排気クーラ30、バイパス通路29、及び切換弁28が排気還流手段を構成し、筒内圧センサ2が着火時期検出手段の一部を構成する。また、ECU4が着火性パラメータ算出手段、着火時期検出手段の一部、燃料噴射制御手段、燃料性状推定手段、予測着火時期算出手段、目標着火時期算出手段、補正量算出手段、修正量算出手段、補正手段、及び燃料噴射実行手段を構成する。より具体的には、図6の着火性推定部41が着火性パラメータ算出手段に相当し、着火時期検出部54が着火時期検出手段に相当し、IG補正量算出部51、経過時間補正量算出部52、加算部53,減算部55,56、スイッチ部57、セタン価推定部58、及び診断部59が燃料性状推定手段に相当する。また図6の燃料噴射パラメータ算出部43、及び図10に示す燃料噴射制御モジュールが燃料噴射制御手段に相当し、予測着火時期算出部74が予測着火時期算出手段に相当し、目標着火時期算出部72が目標着火時期算出手段に相当し、基本補正量算出部76及び加算部78が補正量算出手段に相当し、修正量算出部77が修正量算出手段に相当し、加算部79が補正手段に相当する。
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、全気筒に筒内圧センサ2が設けられている例を示したが、一部の気筒にのみ筒内圧センサ2を設けるようにしてもよい。その場合には、着火性パラメータIGは、筒内圧センサ2が設けられている気筒について算出した値を平均化したもの(単一気筒の設けられている場合にはその気筒について算出されたもの)を用いる。
また着火性パラメータIGは、式(1a)に代えて、定数KIGを含む下記式(1c)により定義するようにしてもよい。
IG=KIG×(100−CET)/(TDFM−TC) (1c)
また上述した実施形態では、エンジン1のアイドル状態でセタン価推定処理を実行するようにしたが、予混合燃焼を行うエンジン運転領域において行うようにしてもよい。
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御にも適用が可能である。
本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。 図1に示す制御装置の一部の構成をより具体的に示す図である。 燃料の着火時期(CAFM)に影響を与える要因を説明するための図である。 燃焼室の壁面温度を算出する手法を説明するための図である。 着火性パラメータ(IG)と、着火遅れ時間(TDFM)との関係を示す図である。 着火性パラメータを用いて燃料性状の推定を行うモジュールの構成を示すブロック図である。 経過時間補正量(DTM)の算出に使用されるテーブルを示す図である。 着火遅れ時間(TDFM)をセタン価に変化するテーブルを示す図である。 セタン価推定処理の実行条件を判定する処理のフローチャートである。 着火性パラメータを用いて燃料噴射時期の制御を行うモジュールの構成を示すブロック図である。 図10に示すモジュールで使用されるマップを示す図である。 図10に示す修正量算出部における処理のフローチャートである。 図12に示す処理を説明するためのタイムチャートである。
符号の説明
1 内燃機関
2 筒内圧センサ(着火時期検出手段)
3 クランク角度位置センサ(着火時期検出手段)
4 電子制御ユニット(着火性パラメータ算出手段、着火時期検出手段、燃料噴射制御手段、燃料性状推定手段、予測着火時期算出手段、目標着火時期算出手段、補正量算出手段、修正量算出手段、補正手段、燃料噴射実行手段)
6 燃料噴射弁(燃料噴射手段)
41 着火性推定部(着火性パラメータ算出手段)
51 IG補正量算出部(燃料性状推定手段)
52 、経過時間補正量算出部(燃料性状推定手段)
53 加算部(燃料性状推定手段)
55,56 減算部(燃料性状推定手段)
57 スイッチ部(燃料性状推定手段)
58 セタン価推定部(燃料性状推定手段)
72 目標着火時期算出部(目標着火時期算出手段)
74 予測着火時期算出部(予測着火時期算出手段)
76 基本補正量算出部(補正量算出手段)
77 修正量算出部(修正量算出手段)
78 加算部(補正量算出手段)
79 加算部(補正手段)

Claims (5)

  1. 内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射手段を備え、前記燃焼室内の混合気を圧縮することにより前記燃料を燃焼させる内燃機関の制御装置において、
    前記燃料の燃料性状を示すパラメータを、前記燃焼室内に噴射された燃料の着火遅れを示すパラメータで除算した値に比例するパラメータとして定義され、前記燃料の着火性を示す着火性パラメータを算出する着火性パラメータ算出手段と、
    算出した着火性パラメータを用いて、前記燃料噴射手段による燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段とを備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記燃料噴射手段により噴射された燃料の実着火時期を検出する着火時期検出手段と、前記実着火時期に基づいて前記燃料の燃料性状を推定する燃料性状推定手段とをさらに備え、前記燃料性状推定手段は、前記着火性パラメータに応じて前記実着火時期の補正を行い、補正された着火時期に基づいて前記推定を行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記燃料噴射手段により噴射された燃料の実着火時期を検出する着火時期検出手段をさらに備え、
    前記燃料噴射制御手段は、
    前記着火性パラメータに応じて、前記燃料噴射手段により噴射された燃料の予測着火時期を算出する予測着火時期算出手段と、
    前記機関の運転状態に応じて目標着火時期を算出する目標着火時期算出手段と、
    前記実着火時期が前記目標着火時期に一致するように燃料噴射時期の補正量を算出する補正量算出手段と、
    前記予測着火時期及び実着火時期に応じて、前記補正量の修正量を算出する修正量算出手段と、
    前記修正量により前記補正量を修正し、修正した補正量を用いて前記燃料噴射時期を補正する補正手段と、
    補正された燃料噴射時期に応じて前記燃料噴射手段による燃料噴射を実行する燃料噴射実行手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記着火性パラメータ算出手段は、前記燃焼室内のガスの温度、圧力、及び流速に関わる流速パラメータ、前記燃焼室の壁面温度、並びに前記燃焼室に供給される新気の流量を入力パラメータとして定義される着火性モデルを用いて前記着火性パラメータを算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記機関は排気の一部を吸気系に還流する排気還流手段を備え、
    前記壁面温度は、前記機関の回転数、前記燃料噴射手段による燃料噴射量、前記機関の冷却水温度、前記機関に吸入される空気の温度、及び前記排気還流手段により還流される排気の温度に応じて算出されることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
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