JP2008186905A - 低温焼成配線基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温焼成基板を絶縁基板とする配線基板において、基板が大型化、厚型化した場合においても、十分な寸法精度が得られ、かつ製造コストの増加を最小限に抑制できる配線基板を提供する。
【解決手段】配線シート積層体11の両主面に、グリーンシート1の焼成温度では緻密化しない難焼結性材料と有機バインダーとを含む拘束シート3を積層した複合積層体15を焼成する低温焼成配線基板33の製造方法において、グリーンシート1の熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であり、焼成により、絶縁層21の熱膨張係数差が2×10−6/℃を超える拘束シート3を用いる。
【選択図】図4
【解決手段】配線シート積層体11の両主面に、グリーンシート1の焼成温度では緻密化しない難焼結性材料と有機バインダーとを含む拘束シート3を積層した複合積層体15を焼成する低温焼成配線基板33の製造方法において、グリーンシート1の熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であり、焼成により、絶縁層21の熱膨張係数差が2×10−6/℃を超える拘束シート3を用いる。
【選択図】図4
Description
本発明は、多層配線基板及び半導体素子収納用パッケージなどに適した低温焼成配線基板の製造方法に関するものである。
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、従来のアルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線回路層としてCuなどの低抵抗金属を用いることができることから、ガラス、またはガラスとセラミックフィラーとの混合物、あるいはセラミックフィラーと助剤成分との混合物からなり、焼成温度が1000℃以下のいわゆる低温焼成セラミック材料を絶縁基板とした低温焼成セラミック配線基板が一層注目されている。
このような低温焼成セラミック配線基板、特に低温焼成配線基板において、配線導体層を形成する手法としてはAu、Ag、Cu等の金属を主成分とする導体ペーストを、低温焼成セラミック組成物をシート状に成形したグリーンシートの表面にスクリーン印刷法等によって印刷した後に焼成する方法が行なわれている。
しかし、このような印刷手法を用いた場合、配線幅100μm以下を形成するのが困難であり、今後必要とされる更なる高密度化、小型軽量化の達成を阻む原因となっていた。また、電気抵抗についても金属粉末を主導体とする導体ペーストで配線導体層を形成するために焼成後の配線回路層内に空隙が多く存在する結果、配線導体層の低抵抗化が困難という問題があった。
この問題を解決する手法として、ガラスセラミックグリーンシートにおける配線回路層を、金属箔のエッチングによって形成する手法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、配線回路層を微細化することはできるものの、金属箔とガラスセラミックを同時焼成すると、金属箔自体が実質的に緻密質であってほとんど収縮しないために、基板に反り、クラックが発生するという新たな問題が発生していた。
この問題に対して、ガラスセラミックグリーンシートの積層体の両面に、焼成温度では焼結しない難焼結性のセラミック材料からなるセラミックシート(以下、拘束シートと称す)を積層した後、前記積層体と拘束シートとを積層したまま、焼成することで配線基板における平面方向の収縮を抑制して、金属箔とガラスセラミックスとの同時焼成を可能とする手法が報告されている(例えば、特許文献2を参照。)。
この平面方向の収縮を抑制する焼成方法は、金属箔を使用しない場合においても、焼成収縮による寸法バラツキを抑制することが可能であり、より寸法精度の優れたセラミック配線基板を得ることができる。
特開昭63−14493号公報
特開平7−86743号公報
しかしながら、拘束シートは、焼成温度では緻密化しないため、絶縁基板としては機能せず、焼成後に超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウエットブラスト等の方法で除去する工程が必要となる。そのため、除去工程における製造コストが増加するという問題があった。
したがって本発明は、除去工程の省力化による製造コストの増加を抑えることのできる低温焼成配線基板の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の低温焼成配線基板の製造方法は、セラミック粉末と有機バインダーとを含有し、焼成により絶縁層となるグリーンシートの表面に、焼成により配線層となる導体パターンを形成して配線シートを作製する工程と、前記配線シートを複数積層して、焼成により低温焼成配線基板となる配線シート積層体を作製する工程と、前記配線シート積層体の両主面に、前記グリーンシートの焼成温度では緻密化しない難焼結性材料と有機バインダーとを含み、前記グリーンシートとの0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であり、焼成により前記絶縁層との0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃を超える拘束層となる拘束シートを積層して複合積層体を作製する工程と、前記複合積層体から有機成分を除去し、ついで1000℃以下の温度で焼成して低温焼成配線基板の両主面に拘束層が配置された複合焼結体を作製する工程と、前記複合焼結体から拘束層を除去する工程とを具備することを特徴とする。
また、本発明の低温焼成配線基板の製造方法は、前記難焼結性材料として溶融シリカ粉末を用い、焼成によって、前記拘束層を形成する溶融シリカの少なくとも一部を結晶化させることが望ましい。
また、本発明の低温焼成配線基板の製造方法は、アルカリ金属元素を含有する前記拘束シートを用いることが望ましい。
本発明の低温焼成配線基板の製造方法によれば、配線シート積層体の両主面に、配線シート積層体を構成するグリーンシートの焼成温度では緻密化しない難焼結性材料と有機バインダーとを含む拘束シートを積層して複合積層体を作製した後、この複合積層体を加熱して複合積層体から有機成分を除去し、ついで焼成して低温焼成配線基板の両主面に拘束層が配置された複合焼結体を作製し、さらに複合焼結体から拘束層を除去する低温焼成配線基板の製造方法において、グリーンシートと絶縁層および絶縁層と拘束シートとの熱膨張係数差を特定の関係とすることで、平面方向の収縮、反りが抑制された、高寸法精度の低温焼成配線基板を提供することができるとともに、拘束層の除去が格段に容易となる。
なお、前記難焼結性材料として溶融シリカ粉末を用いたときには、焼成によって、前記拘束層を形成する溶融シリカの少なくとも一部を結晶化することにより、容易に、拘束シートの熱膨張率と拘束層の熱膨張率とに差を設けることができる。
なお、溶融シリカ粉末とアルカリ金属元素とを用いたときには、溶融シリカ粉末の結晶への変化を促進することができる。
本発明の低温焼成配線基板の製造方法は、セラミック粉末と有機バインダーとを含有し、焼成により絶縁層となるグリーンシートの表面に、焼成により配線層となる導体パターンを形成して配線シートを作製する工程と、前記配線シートを複数積層して、焼成により低温焼成配線基板となる配線シート積層体を作製する工程と、前記配線シート積層体の両主面に、前記グリーンシートの焼成温度では緻密化しない難焼結性材料と有機バインダーとを含み、前記グリーンシートとの0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であり、焼成により前記絶縁層との0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃を超える拘束層となる拘束シートを積層して複合積層体を作製する工程と、前記複合積層体から有機成分を除去し、ついで1000℃以下の温度で焼成して低温焼成配線基板の両主面に拘束層が配置された複合焼結体を作 製する工程と、前記複合焼結体から拘束層を除去する工程とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、グリーンシートと拘束シートとの熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であることが重要である。これにより、グリーンシートが緻密化する前にグリーンシートから拘束シートが剥離し、収縮量が増大し寸法バラツキが増大することを防止できる。
また、焼成によってグリーンシートは絶縁層となり、拘束シートは拘束層となるが、この焼成によって絶縁層と拘束層との熱膨張係数差が2×10−6/℃を超えることが本発明の大きな特徴であり、これによって、焼成前にグリーンシートから拘束シートが剥離することがなく、かつ、焼成後は熱膨張係数差による冷却時に発生する熱応力により拘束層の剥離が起こり、拘束層を容易に除去することが可能となるのである。
以下に本発明の低温焼成配線基板の製造方法に用いるグリーンシートおよび拘束シートについて説明する。
まず、所定の原料粉末を混合してセラミック粉末を調製し、その混合物に有機バインダー、可塑剤、有機溶剤等を加えてスラリーを調製した後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などによりシート状に成形して、図1(a)に示すような厚さ50〜500μmのグリーンシート1を作製する。
このグリーンシート1に用いるセラミック粉末は、例えば、ガラス粉末単体、ガラス粉末とセラミックフィラーとの混合粉末やセラミックフィラーと助剤成分との混合粉末を用いることができ、このグリーンシート1を1000℃以下の温度で焼成した際に、相対密度95%以上に緻密化する組成のものを用いることが好ましい。特に、様々な特性を発現させることができるガラス粉末とセラミックフィラーとの混合粉末からなるセラミック粉末を用いることがより望ましい。これにより、Au、Ag、Cuなどの低抵抗金属を配線として用いることが可能となる。
ガラス粉末は、SiO2、B2O3、Al2O3、ZnO、PbO、Bi2O3、ZrO2、TiO2、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物および希土類酸化物の群から少なくとも一種を含有するガラスが望ましく、特に上記成分を3種類以上含有する多成分系ガラスであることが望ましい。
セラミックフィラーとしては、SiO2、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、MgAl2O4、ZnAl2O4、MgSiO3、Mg2SiO4、Zn2SiO4、Zn2TiO4、SrTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaTiO3、CaMgSi2O6、SrAl2Si2O8、BaAl2Si2O8、CaAl2Si2O8、Mg2Al4Si5O18、Zn2Al4Si5O18、AlN、Si3N4、SiCおよびムライト等を用いることが望ましく、用途に合わせて選択することができる。
また、助剤成分としては、SiO2、B2O3、ZnO、MnO2、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物および希土類酸化物等を用いることが望ましく、用途に合わせて選択することができる。
なお、セラミック粉末を構成する成分としては、上述したガラス、セラミックフィラー、助剤成分に限定されるものではない。
有機バインダーとしては、従来から、セラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えば、アクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルブチラール系、ポリビニルアルコール系、アクリル−スチレン系、ポリプロピレンカーボネート系、セルロール系等の単独重合体および共重合体が挙げられる。
また、本発明の低温焼成配線基板の製造方法において用いる拘束シートは、所定の難焼結性材料粉末を調整し、前記グリーンシート1と同様の方法にて、図1(b)に示すようにシート状に作製することができる。
この拘束シート3に用いる難焼結性材料は、グリーンシート1の焼成温度、特に1000℃程度、最適には1100℃程度の温度では実質的に収縮しない材料であり、さらに拘束シート3とグリーンシート1との0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であり、焼成後の拘束層と絶縁層との0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃を超えることが重要である。
ここで、実質的に収縮しないとは、焼成の前後における拘束シート3の収縮が1%以下であることを指し、特に0.8%以下、最適には0.5%以下であることが望ましい。
このような難焼結性材料の例としては、平均粒径1〜20μm、特に3〜10μmのAl2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O4、ZnAl2O4およびMg2SiO4の群から選ばれる少なくとも1種、特にAl2O3、SiO2が挙げられ、グリーンシート1の焼成温度を考慮して適宜選択して用いればよい。
特に、溶融シリカ粉末を用いることが、拘束シート3およびこの拘束シート3が焼成されることにより形成される拘束層との間で熱膨張係数の変化を発生させやすい点で望ましい。なお、この溶融シリカは、石英ガラスと呼称されることもある。この溶融シリカ粉末は、非晶質のSiO2からなるため、仮に成分がグリーンシート1側に拡散したとしても影響が非常に小さいという利点もある。
ただし、高純度の溶融シリカ粉末は非常に高価でありかつ反応性に乏しいため、不純物の含有量の多い低純度の溶融シリカ粉末を用いるか、あるいは単独で用いるよりも、溶融シリカ粉末と他の難焼結材料とを組合せた方が経済的、あるいは焼成により熱膨張係数を変化させるためには有利である。特に、低純度の溶融シリカ粉末と結晶のシリカ粉末との組合せは、拘束シート3に占めるシリカ成分の量を大きくすることができる点で望ましい。また、この組合せでは溶融シリカの少なくとも一部を結晶化させることが容易となる点でも望ましい。
また、拘束シート3中には、ガラス粉末が含まれていてもよく、その場合には後述するグリーンシート1を積層して作製される配線シート積層体の焼成温度以下の軟化点を備えたガラス粉末を用いることが望ましい。また軟化点が拘束シート3中の有機成分の分解揮散温度よりも高いことが望ましい。
具体的には、拘束シート3中のガラスの軟化点は450〜900℃、特に550〜880℃、最適には600〜850℃程度であることが好ましい。ガラスの軟化点が450℃よりも低い場合には配線シート積層体からの有機成分の除去時に軟化したガラスが分解、蒸発した有機成分の除去経路を塞ぐことになり、有機成分を完全に除去できないおそれがある。一方、ガラスの軟化点が900℃を超える場合には、通常の配線シート積層体の焼成条件では配線シート積層体と拘束シート3間の結合材として作用しなくなるおそれがある。
ここで、配線シート積層体と接触する拘束シート3におけるガラスの含有量は、配線シート積層体の焼成時に、拘束シート3を前記配線シート積層体と結合させ、かつ拘束シート3をその面内で実質的に収縮させない量であることが望ましい。
また、ガラスの含有量は、拘束シート3中の全無機成分の0.5〜15体積%、特に1〜13体積%、最適には2〜10体積%であることが望ましい。これは、ガラスの含有量が0.5体積%よりも少ないと、拘束シート3によるグリーンシート1の焼成収縮の拘束力が小さくなり、高い寸法精度が得られにくくなるためであり、さらには焼成工程で配線シート積層体からのガラス成分の拡散が顕著となり、焼結後の低温焼成セラミック絶縁基板の表面にボイドが多数発生し焼結不足となり、また、収縮バラツキが大きくなるおそれがあるためである。
また、ガラスの含有量が15体積%よりも多いと、拘束シート3が焼結しはじめてしまい、配線シート積層体の収縮を拘束することが困難となるとともに、焼成後に拘束シート3を低温焼成配線基板から除去することが困難となるためである。
また、ガラス粉末には、非晶質の溶融シリカの結晶化を促進することができるため、アルカリ金属元素が含まれていることが望ましく、特に、Liを含有することが望ましい。
なお、本発明におけるグリーンシート1および拘束シート3の0〜100℃における熱膨張係数は、以下に示す複合材料の熱膨張係数を各成分の熱膨張係数と剛性率、体積分率から予測する式であるターナーの式を用いて算出することができる。
α= ΣαiKiVi / ΣKiVi
(α:熱膨張係数、K:剛性率、V:体積分率、i:i番目の成分を指す添字。)
また、絶縁層および拘束層の0〜100℃における熱膨張係数は、グリーンシート1および拘束シート3をそれぞれ複数枚積層して、5mm×2mm×10mmの成形体を作製し、さらに、これらの成形体を所定の温度で焼成して得られた絶縁層および拘束層を昇温速度10℃の条件で、大気中で加熱して測定したものである。
(α:熱膨張係数、K:剛性率、V:体積分率、i:i番目の成分を指す添字。)
また、絶縁層および拘束層の0〜100℃における熱膨張係数は、グリーンシート1および拘束シート3をそれぞれ複数枚積層して、5mm×2mm×10mmの成形体を作製し、さらに、これらの成形体を所定の温度で焼成して得られた絶縁層および拘束層を昇温速度10℃の条件で、大気中で加熱して測定したものである。
なお、拘束層の一部についてはガラス成分や助剤の量が少ないために焼成後に形状を維持できない場合があるので、その場合には、まず焼成して得られた拘束層の粉末と硬化性樹脂とを所定の割合で混合し、さらに硬化させて拘束層の粉末を含有する複合体を作製する。
そして、この複合体の0〜100℃における熱膨張係数を昇温速度10℃の条件で、大気中で加熱して測定し、この測定結果と、予め、測定しておいた硬化した硬化性樹脂の剛性および体積分率、0〜100℃における熱膨張係数とから上述のターナーの式を用いて、拘束層の熱膨張係数を算出することができる。
この複合体の作製にあたっては、拘束層の粉末と硬化性樹脂として熱硬化性樹脂、あるいは主剤と硬化剤とを混合する2液混合硬化性樹脂とを混合した後、真空脱泡器を用いて泡を除去することが望ましい。また、上述の樹脂の体積分率を50〜90体積%とすることが望ましい。
なお、用いる熱硬化性樹脂あるいは2液混合硬化性樹脂は、特殊なものである必要は無く、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、スチレン樹脂などが例示できる。例示した樹脂のように剛性が低いものを用いれば、樹脂が容易に変形して、硬化性樹脂に比べ剛性の高い拘束層の粉末が複合体の熱膨張係数を支配するため、1〜2%程度の誤差は生じるものの、複合体の熱膨張係数を拘束層の熱膨張係数として評価しても実質的な問題はない。
本発明の低温焼成配線基板の製造方法においては、以上説明したグリーンシート1および拘束シート3が好適に用いられる。
まず、図2(a)に示すように、グリーンシート1にレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、直径30〜200μmの貫通孔4を形成し、図2(b)に示すように、貫通孔4の内部に導体ペーストを充填することにより、導通ビアホール5を形成する。
この導体ペーストは、Au、Ag、Cu、PdおよびPtの群から選ばれる少なくとも一種を主成分とする金属粉末以外に、アクリル樹脂などからなる有機バインダーとトルエン、イソプロピルアルコール、アセトンなどの有機溶剤とを均質混合して作製することができる。
用いる有機バインダーは、金属成分100重量部に対して、0.5〜15.0重量部、有機溶剤は、固形成分及び有機バインダー100重量部に対して、5〜100重量部の割合で混合されることが望ましい。なお、この導体ペースト中には若干のガラス粉末や酸化物粉末等の無機成分を添加してもよい。
続いて、図2(c)に示すように、この導通ビアホール5を形成したグリーンシート1の表面に導体パターン7を印刷法や転写法により形成する。
印刷法による導体パターン7の形成方法としては、スクリーン印刷法や、グラビア印刷法等の公知の印刷手法を用いて導体ペーストをグリーンシート1の表面に形成する。なお、導体ペーストは、導通ビアホール5用の導体ペーストと同様の手法により作製され、必要に応じて成分や配合比率を変更することにより作製する。
なお、上記印刷法により形成した導体パターン7は、焼成後、金属焼結体からなる配線となる。
一方、転写法による導体パターン7の形成方法としては、まず、高分子材料等からなる転写フィルム上に高純度金属導体、特に金属箔を接着した後、この金属導体の表面に鏡像のレジストを回路パターン状に塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行って鏡像の配線回路層を形成し、鏡像の配線回路層を形成した転写フィルムを前記導通ビアホール5が形成されたグリーンシート1の表面に位置合わせして積層圧着した後、転写フィルムを剥がすことにより、導通ビアホール5と接続した導体パターン7を具備する配線シートとしてのグリーンシート1を形成することができる。
なお、上記転写法により形成した導体パターン7は、焼成後、金属箔からなる配線となる。
なお、上記印刷法と転写法による導体パターンは、いずれか一方のみでも、両者が混在していても差し支えない。特に、グランド層などの面積の大きい導体パターンは焼成前の脱脂工程を容易に行うために印刷法で形成することが望ましい。
次に、図2(a)〜(c)に示した工程で同様にして得られた、導通ビアホール5や導体パターン7を備えた複数のグリーンシート1を、図3(a)に示すように、加圧積層して配線シート積層体11を作製する。このグリーンシート1の積層には、積み重ねられたグリーンシート1に熱と圧力を加えて熱圧着する方法、有機バインダー、可塑剤および溶剤等からなる接着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。
さらに、上記導体パターン7は、いずれの形成法においても、パターン形成後に導体形成面に対して圧力を印加することにより、グリーンシート1表面内に埋設することが望ましい。これは、特に金属箔などの剛性の高い導体パターンの厚み分によって、導体パターン7の端部において拘束シート3と配線シート積層体11表面との間に隙間が発生しやすくなり、このような隙間が生じると、その部分における拘束シート3と配線シート積層体11との接着力が低下し、導体パターン7付近における拘束シート3による拘束力が不均一となってしまう結果、焼成時に導体パターン7の端部が剥がれたり、収縮バラツキが大きくなるおそれがあるためである。
導体パターン7を埋設するには、10MPa以上の圧力を印加することが望ましい。この圧力によって導体パターン7を強制的に埋設することができる。なお、上記圧力の印加は、配線シート積層体11上に拘束シート3を積層する際に一括で行うこともできる。
次に、平面方向の収縮を抑制するため、図3(b)に示すように、拘束シート3を配線シート積層体11の両面に配線シート積層体11の積層方法と同様の手法にて加圧積層して複合積層体15を作製する。
また、配線シート積層体11に積層される拘束シート3の厚さは片面だけで配線シート積層体11の厚さに対して10%以上、特に20%以上、最適には25%以上であるのが好ましく、これよりも薄いと拘束シート3の拘束力が低下するおそれがある。また有機成分の揮散を容易にしかつ低温焼成絶縁基板17からの拘束シート3の除去性を考慮すれば、拘束シート3の厚さは800μm以下、特に600μm以下、最適には400μm以下であることが望ましい。
続いて、この複合積層体15を100〜800℃、特に400〜750℃で加熱処理して複合積層体15中の有機成分を分解除去した後、800〜1000℃で同時焼成する。このとき、導体パターンおよびビアホール導体がCuを主成分とするものである場合には窒素雰囲気中で焼成する必要があり、Au、Ag、PdおよびPtを主成分とした場合には、焼成雰囲気は大気中でおこなうことができる。
このとき、通常のセラミック材料では焼成後のX−Y−Z方向の収縮は、70〜90%程度であるのに対して、本発明によれば平面方向の収縮が抑制され、厚さ方向のみ収縮するため、平面方向の収縮は1.0%以下、厚さ方向の収縮は35〜75%程度となる。
ここで、焼成後の冷却速度が早すぎると、絶縁層と配線層との熱膨張差によるクラックが発生するために、冷却速度は、400℃/時間以下であることが望ましい。
また、焼成時には反りを防止するために複合積層体15上面に重しを載せる等して、荷重をかけてもよい。荷重は50Pa〜1MPaが適当である。
そして、この焼成により、図4(a)に示すように、グリーンシート1が焼結した絶縁層21と、この絶縁層21を貫通して設けられた貫通導体23と、絶縁層21の表面に形成された配線層25からなるガラスセラミック基板27の主面に拘束層29が配置された複合焼結体31を作製する。
次に、ガラスセラミック基板27の主面から拘束層29を除去することで、図4(b)に示す低温焼成配線基板33を得る。本発明によれば、焼成後の絶縁層21と拘束層29との熱膨張係数の差が2×10−6/℃を超えることを大きな特徴とする。これより、冷却時の熱応力により拘束層29が絶縁層21から自然に剥離し、除去工程の省力化を図ることができる。除去の方法としては、手でも十分に剥離することができる。
さらに、得られる低温焼成配線基板33は、焼成時の収縮が拘束シート3によって厚さ方向だけに抑えられているので、その積層面内の収縮を1.0%以下に抑えることが可能となる。
これより、基板が大型化、厚型化した場合においても、十分な寸法精度が得られ、かつ製造コストの増加を最小限に抑制できる低温焼成配線基板33を提供することができる。
先ず、平均粒径が2μmの表1に示す組成の結晶化ガラスと、表2に示す平均粒径が2μmのセラミック粉末とを表2に示す割合で秤量し、これにバインダーとしてアクリル樹脂、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコールを加えて調製したスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ500μmのグリーンシートを作製した。表2に、このグリーンシートの焼成前の熱膨張係数と、900℃で1時間焼成して得られた絶縁層の0〜100℃の熱膨張係数を示す。
次に、平均粒径が5μmのCu粉末に有機バインダーとしてアクリル樹脂を、溶媒としてジブチルフタレートを添加混練し、ペースト状の導体用ペーストを作製した。尚、導体ペースト中の有機バインダー量は、Cu粉末100重量部に対して5重量部であり、Cu粉末に対して15重量部の割合で溶剤を加えた。そしてグリーンシートの所定個所にビアホールを形成し、そのビアホール内に先の導体ペーストを充填し、ビアホール導体とした。
次に、高分子フィルム表面に厚みが18μmの純度99.9%以上のCu箔を接着し、エッチングを行って、配線パターンを形成し、転写シートを作製した。配線幅は50μmとしたが、エッチングによる形成のため従来のスクリーン印刷法と比較して、非常に微細な配線パターンを形成することができた。
そして、ビアホール導体を形成したグリーンシートに位置あわせを行いながら転写シートの配線パターンが形成された側の面を向かい合わせて積層し、60℃、15MPaで熱圧着した。その後、転写シートの高分子フィルムを剥がすことにより、ビアホール導体を接続した配線回路層を具備する一単位の配線層を形成することができた。
また、同様にしてグリーンシートの表面に配線層を形成した5枚の配線シートを作製し、さらに、これらを積層し、配線シート積層体を作製した。
次に、表1に示すガラス粉末と、表3に示す平均粒径2μmの難焼結性材料とを表3に示す割合で含有する厚さ150μmの拘束シートをドクターブレード法により作製した。なお、拘束シート作製時の有機バインダー、可塑材、溶剤などはグリーンシートと同様とした。
表3に、この拘束シートの焼成前の熱膨張係数と、900℃で1時間焼成した後に得られた拘束層の0〜100℃の熱膨張係数を示す。
なお、グリーンシートおよび拘束シートの焼成前の熱膨張係数、拘束層の熱膨張係数は前述のように各成分の熱膨張係数と剛性率、体積分率から予測する式であるターナーの式α= ΣαiKiVi / ΣKiVi(α:熱膨張係数、K:剛性率、V:体積分率、i:添字・・・i番目の成分を指す。)を用いて算出したものである。
また、焼成後の絶縁層の熱膨張係数は、大気中で熱機械分析(TMA)にて昇温速度10℃/分の条件で測定したものである。
このようにして得られた拘束シートを、表4に示す組合せで、先に作製した配線シート積層体の両面に載置し、60℃、圧力20MPaで圧着して複合積層体を得た。
次いで、この複合積層体を、Al2O3セッターに載置して、有機バインダー等の有機成分を分解除去するために、水蒸気含有窒素雰囲気中、700℃で焼成し、さらに窒素雰囲気中、900℃で1時間、焼成して複合焼結体を作製した。なお、焼成後の冷却速度は300℃/時間とした。
その後、拘束シートを手で除去し、低温焼成配線基板を作製した。その際、拘束シートが自然にあるいは容易に剥離したものを剥離有り、剥離しないものを剥離無しとして表4に示し、剥離有りを合格とした。
この低温焼成配線基板の収縮率を絶縁基板の未焼成時の外辺をマイクロメーターで測定し、焼成後の外辺を同様にマイクロメーターで測定して算出した。なお、収縮率1%以下を合格とした。
上記試料を200個作製し、外辺をマイクロメーターにて測定し、寸法バラツキを測定して、バラツキが±0.1%以下を合格とした。
表4に示すように、グリーンシートと拘束シートの熱膨張係数差が2×10−6/℃を超えた試料No.1〜5、7〜9、11〜13、15〜19、21〜23では、拘束力が弱いため、絶縁基板の収縮率が大きくなった。
また、焼成前のグリーンシートと拘束シートの熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であって、絶縁層と拘束層の熱膨張係数差が2×10−6/℃以下である試料No.6、14では、拘束力は発生しているものの、絶縁層と拘束層との間で剥離が十分に起こらず、拘束層を除去する手間を削減するには至らなかった。
一方、本発明の試料No.10、20、24〜26では、十分に拘束力が発現し、平面方向の収縮率ならびに寸法バラツキが小さくなり、いずれもガラスセラミック基板の収縮率が1.0%以下、収縮バラツキが±0.1%以下となり、焼成後に拘束層が絶縁層から剥離することにより、拘束層を容易に除去することができた。
1・・・グリーンシート
3・・・拘束シート
7・・・導体パターン
11・・配線シート積層体
15・・複合積層体
21・・・絶縁層
25・・・配線層
27・・・低温焼成配線基板
29・・・拘束層
31・・・複合焼結体
3・・・拘束シート
7・・・導体パターン
11・・配線シート積層体
15・・複合積層体
21・・・絶縁層
25・・・配線層
27・・・低温焼成配線基板
29・・・拘束層
31・・・複合焼結体
Claims (3)
- セラミック粉末と有機バインダーとを含有し、焼成により絶縁層となるグリーンシートの表面に、焼成により配線層となる導体パターンを形成して配線シートを作製する工程と、前記配線シートを複数積層して、焼成により低温焼成配線基板となる配線シート積層体を作製する工程と、前記配線シート積層体の両主面に、前記グリーンシートの焼成温度では緻密化しない難焼結性材料と有機バインダーとを含み、前記グリーンシートとの0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃以下であり、焼成により前記絶縁層との0〜100℃における熱膨張係数差が2×10−6/℃を超える拘束層となる拘束シートを積層して複合積層体を作製する工程と、前記複合積層体から有機成分を除去し、ついで1000℃以下の温度で焼成して低温焼成配線基板の両主面に拘束層が配置された複合焼結体を作製する工程と、前記複合焼結体から拘束層を除去する工程とを具備することを特徴とする低温焼成配線基板の製造方法。
- 前記難焼結性材料として溶融シリカ粉末を用い、焼成によって、前記拘束層を形成する溶融シリカの少なくとも一部を結晶化させることを特徴とする請求項1に記載の低温焼成配線基板の製造方法。
- アルカリ金属元素を含有する前記拘束シートを用いることを特徴とする請求項2に記載の低温焼成配線基板の製造方法。
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CN107946010A (zh) * | 2017-11-15 | 2018-04-20 | 江苏苏杭电子有限公司 | 基于线路板生产工艺加工热敏电阻半导体的加工工艺 |
US20200247721A1 (en) * | 2019-02-05 | 2020-08-06 | Shinko Electric Industries Co., Ltd. | Composite green sheet and ceramic member |
-
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