JP2004152903A - 多層配線基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックグリーンシート表面に、転写シートからの転写によって配線回路層を形成する際、配線回路層の転写不良がなく、焼成後においても配線回路層のデラミネーションなどの発生を抑制する。
【解決手段】転写シート4表面に金属箔からなる配線回路層3を形成してなる転写シート4を準備し、セラミックグリーンシート1表面に前記転写シート4から前記配線回路層3を転写形成した後、該グリーンシート1を複数積層し、前記配線回路層3を形成する金属の融点より低い温度で焼成してなる多層配線基板の製造方法において、前記転写シート4における配線回路層3表面に、プラズマを照射した後に、グリーンシート1表面に転写する。
【選択図】図1
【解決手段】転写シート4表面に金属箔からなる配線回路層3を形成してなる転写シート4を準備し、セラミックグリーンシート1表面に前記転写シート4から前記配線回路層3を転写形成した後、該グリーンシート1を複数積層し、前記配線回路層3を形成する金属の融点より低い温度で焼成してなる多層配線基板の製造方法において、前記転写シート4における配線回路層3表面に、プラズマを照射した後に、グリーンシート1表面に転写する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線基板及び半導体素子収納用パッケージなどに適した多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される多層配線基板として、比較的高密度の配線が可能な多層セラミック配線基板が多用されている。この多層セラミック配線基板は、アルミナやガラスセラミックなどの絶縁基板と、その表面に形成されたWやMo、Cu、Ag等の金属からなる配線導体とから構成されるもので、この絶縁基板の一部にキャビティが形成され、このキャビティ内に半導体素子が収納され、蓋体によってキャビティを気密に封止されるものである。
【0003】
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線回路層としてCu等の低抵抗金属を用いることができることから、焼成温度が1000℃以下のいわゆるガラスセラミック配線基板が一層注目されている。
【0004】
ところが、このようなガラスセラミック配線基板において、配線回路層を形成する手法としては、Cu、Ag等の金属からなる配線導体を主成分とするメタライズペーストを、スクリーン印刷法等によって絶縁基板上に印刷する。しかし、このような手法を用いた場合、配線幅100μm以下を形成するのが困難であり、今後必要とされる更なる高密度化、小型軽量化の達成を阻む原因であった。電気抵抗についてもペーストで配線回路層を形成させるために空隙が多く存在し、低抵抗化が困難という問題があった。
【0005】
この問題を解決する手法としては、ガラスセラミックグリーンシートにおける配線回路層を、エッチングした金属箔によって形成する手法が知られている(特開昭63−14493号公報)。しかし、金属箔とガラスセラミックを同時焼成すると、金属箔が収縮しないために、基板に反り、クラックが発生し、実用化が困難という問題があった。
【0006】
そこで、ガラスセラミック配線基板の両面に、該配線基板の焼成温度では焼結しない無機組成物の層からなる拘束シートを形成した後、同時焼成し、該配線基板における平面方向の収縮を抑制することで、金属箔とガラスセラミックの同時焼成を可能とする方法が提案されている(特開平7−86743号公報)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−14493号公報
【特許文献2】
特開平7−86743号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開平7−86743号公報において、金属箔によって形成された配線パターンとガラスセラミックグリーンシートを接着する方法は、主に熱圧着法を用いている。しかし、この熱圧着法のみでは、金属箔からなる配線パターンとガラスセラミックグリーンシート間とは接着力が弱く、配線パターンの剥がれが発生し易く、焼成後においてデラミネーションが発生する等の問題があった。
【0009】
また、ガラスセラミックグリーンシート中には、有機成分を5〜20重量%含有しているため、加熱することによってこの有機成分を接着剤として機能させて転写性を高めることも考えられるが、あまり高い温度(80℃以上)をかけると有機成分が軟化してしまい、グリーンシートが変形したり、伸びるなどによって寸法精度が低下し、歩留りが大きく低下するといった問題があった。
【0010】
また、従来の金属箔を用いて配線回路層を形成した場合、セラミックグリーンシートと金属箔との密着性が充分ではないために、焼成後に熱サイクル試験など行った場合に、金属箔からなる配線回路層のセラミック基板への接着強度の低下や、積層構造において配線回路形成部分で層剥離(デラミネーション)が発生し、長期信頼性の点で問題があった。
【0011】
本発明の目的は、セラミックグリーンシート表面に、転写シートからの転写によって金属箔からなる配線回路層を形成した場合に、焼成後に熱サイクル等が印加された場合においても、配線回路層の密着強度の低下や、デラミネーションなどが発生するのを防止した信頼性の高い多層配線基板の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について検討した結果、該転写シート表面の金属箔からなる配線回路層をセラミックグリーンシートに転写する前に、配線回路層表面にプラズマを照射すると、セラミックグリーンシートへの転写後の配線回路層において剥がれの発生や、焼成後のデラミネーションの発生がなく、安定して配線回路層を形成することができることを見いだした。
【0013】
即ち、本発明の多層配線基板の製造方法は、転写シート表面に金属箔からなる配線回路層を形成してなる転写シートを準備し、セラミックグリーンシート表面に前記転写シートから前記配線回路層を転写形成した後、該グリーンシートを複数積層し、前記配線回路層を形成する金属の融点より低い温度で焼成してなる多層配線基板の製造方法において、前記転写シートにおける前記金属箔からなる配線回路層の表面に、プラズマを照射した後に転写することを特徴とするものである。
【0014】
また、前記金属箔がCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt、Pdから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1の本発明多層配線基板の製造方法についての一例を示す工程図を基に説明する。
【0016】
ここでは、低温焼成のセラミック材料として、ガラスセラミックスを例として以下に説明する。まず、平均粒径0.5〜10μm、特に1〜5μmのガラス粉末と平均粒径0.5〜10μm、特に平均粒径1〜5μmのセラミックフィラー粉末とを準備する。
【0017】
用いられるガラス成分としては、少なくともSiO2を含み、Al2O3、B2O3、ZnO、PbO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種以上を含有したものであって、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)等のホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Ba系ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。
【0018】
これらのガラスは焼成処理することによっても非晶質ガラスであるもの、また焼成処理によって、アルカリ金属シリケート、クォーツ、クリストバライト、コージェライト、ムライト、エンスタタイト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ディオプサイド、イルメナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種を析出するものが用いられる。
【0019】
また、セラミックフィラーとしては、クォーツ、クリストバライト等のSiO2や、Al2O3、ZrO2、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、マグネシアの群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
【0020】
上記ガラス粉末とセラミック粉末とを、特に、ガラス成分10〜90重量%、特に50〜80重量%と、セラミックフィラー成分10〜90重量%、特に20〜50重量%の割合で混合する。その混合物に有機バインダー等を加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などによりシート状に成形して厚さ約50〜500μmのグリーンシート1を作製する。
【0021】
次に、このグリーンシート1にレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、直径80〜200μmの貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体2を形成する(a)。導体ペースト中には、Cu、Ag、Au等の金属成分と、それ以外にアクリル樹脂などの有機バインダー、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトンなどの有機溶剤とを混合して形成される。有機バインダーは金属成分100重量部に対して0.5〜15.0重量部、有機溶剤は固形成分及び有機バインダー100重量部に対して5〜100重量部の割合で混合されることが望ましい。なお、この導体ペースト中にはガラスセラミック材料との焼成収縮を合わせるため、若干のガラス成分等を添加してもよい図1(1)。
【0022】
次に、このグリーンシート1の表面に、配線回路層3を形成する。配線回路層3としては、従来より上述のビアホール導体2を形成するための金属導体粉末を含有する導体ペーストを用いて印刷法等により形成することが行われているが、配線回路層3の幅が75μm以下、特に50μm以下、かつ配線回路層3のピッチが150μm以下、特に100μm以下の微細配線化するために、本発明によれば、金属箔によって形成する。金属箔としては、特にCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt、Pdの群から選ばれる少なくとも1種の純度99.5重量%以上の高純度金属からなることが望ましい。
【0023】
このような金属箔からなる配線回路層3は、グリーンシートの表面に金属箔を接着した後に周知のフォトエッチング法等の手法によって所望の回路を形成する方法が知られているが、かかる方法ではエッチング液によってグリーンシートを変質させてしまうため、本発明においては転写法にて形成する。
【0024】
転写法による配線回路層3の形成方法としては、まず、PETなどの樹脂からなる転写フィルム4の一面に金属箔を熱可塑性樹脂からなる接着剤(図示せず)により接着する。そして、この金属箔の表面にレジストを鏡像の回路パターン状に塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行う方法によって、転写フィルム4表面に配線回路層3を形成することができる(b)。
【0025】
次に、本発明によれば、この転写フィルム4表面に形成された配線回路層3形成面に、プラズマを照射する。プラズマを照射する方法としては、例えば、図3に示すように、ベルトコンベア7のベルト8上に、表面に金属箔からなる配線回路層3が形成された転写フィルム4を載置し、プラズマ照射装置6によって、大気プラズマ又はN2プラズマを室温、常圧下にて照射するか、CF4プラズマを密閉容器内にて照射する方法があげられる。
【0026】
例えば、大気プラズマの場合、ON/OFF切り替え周期10〜12ms、周波数75Hz〜100Hz、電極に印加する電圧のデューティー比を40〜50%の条件で照射するのが適当である。
【0027】
このようにして、配線回路層3の表面にプラズマを照射すると、(1)配線回路層3表面に付着している汚れに対してプラズマ粒子が結合し汚れを取り除く洗浄効果、(2)配線回路層3表面にプラズマ粒子が衝突し原子レベルの凹凸ができる粗面効果、(3)配線回路層3表面にプラズマ粒子が衝突し表面の分子結合状態を変化させる活性効果、の以上3種の効果が単独、あるいは複合して現れることにより、配線回路層3表面が改質される。
【0028】
このようにしてプラズマ照射により表面改質された配線回路層3を用いることにより、セラミック基板と配線回路層の接着性が向上し、配線回路層の剥がれの発生や、焼成後のデラミネーションの発生がなく、安定して配線回路層を形成するばかりでなく、焼成後に熱サイクル等が印加された場合においても、配線回路層の密着強度が低下したり、デラミネーションなどが発生するのを防止した信頼性の高い多層配線基板の製造方法を提供することが可能となる。
【0029】
また、プラスマ処理した配線回路層3の表面に、転写性を高めるために、有機樹脂を含有する接着層を塗布してもよい。この場合、プラズマ処理を施さない場合に比較して配線回路層へのぬれ性が改善され、接着の均一性を図ることができる。
【0030】
次に、前記ビアホール導体2が形成されたグリーンシート1の表面に、転写フィルム4上に形成された表面がプラズマ処理された配線回路層3を位置合わせして積層圧着した後(c)、転写フィルム4を剥がすことにより、ビアホール導体2と接続した配線回路層3を具備する配線ユニットAを形成することができる(d)。
【0031】
なお、グリーンシート1への転写性を高めるために配線回路層3と転写フィルム4との間の接着強度は、200g/10mm以下(JIS Z0237による)であることが望ましい。また、転写フィルム4を剥がす際は、30〜50℃の熱をかけながら剥がすことで、配線回路層3と転写フィルム4間に存在する熱可塑性の粘着層を軟化させるなどの処理によって転写不良を防止することができる。
【0032】
その後、同様にして得られた配線ユニットA1〜A3を積層圧着して積層体を形成する(e)。配線ユニットA1〜A3の積層は、積み重ねられた配線ユニットに熱と圧力を加えて熱圧着したり、有機バインダー、可塑剤、溶剤等からなる接着剤をシート間に塗布して圧着することもできる。
【0033】
次に、金属箔で配線回路層を形成する場合、金属箔の配線回路層自体が焼成収縮しないために、平面方向の収縮を抑制しながら焼成する必要がある。そのため、配線ユニットA1〜A3の積層体の焼成温度では難焼結性のセラミック材料を主成分とする拘束シート9を配線ユニットA1〜A3の積層体の両面又は片面に加圧積層して積層体を作製する(f)。
【0034】
この拘束シート9は、難焼結性セラミック材料を主体とする無機成分に、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えたスラリーをシート状に成形して得られる。難焼結性セラミック材料としては、具体的には1000℃以下の温度で緻密化しないようなセラミック組成物から構成され、具体的には平均粒径1〜20μm、特に3〜10μmのAl2O3、SiO2、MgO、ZrO2、BN、TiO2の群から選ばれる少なくとも1種および/またはこれらの複合酸化物(例えばフォルステライト(Mg2SiO4)、エンスタタイト(MgSiO3))等の粉末が挙げられる。
【0035】
また、この拘束シート9中にはガラス成分、言い換えれば非晶質成分を0.5〜15重量%、特に1〜12重量%含有することが望ましく、それによって焼成収縮の拘束力を高め、また、拘束シートと接する部分のガラスの移動を抑制し焼結不良などの発生を防止することができる。拘束シート9中に含まれるガラス成分は、ガラスセラミックグリーンシート1中に含まれるガラス成分はガラスセラミックグリーンシート1中のガラスの拡散を防止するうえでは同一のガラスを用いることが望ましい。
【0036】
次に、上記配線ユニットA1〜A3と拘束シート9との積層体を100〜850℃、特に400〜750℃の酸化性または弱酸化性雰囲気中で加熱処理してグリーンシート1内やビアホール導体ペースト中の有機成分を分解除去する。この時の条件としては、グリーンシート中の有機成分を除去するとともに、配線回路層を転写形成する場合に配線回路層表面に形成された接着層を分解除去できる条件に設定する。熱分解性に優れたアクリル系樹脂を用いた場合には、500〜800℃窒素雰囲気中で同時焼成する。なお、焼成条件としては、配線回路層としてCu等の酸化しやすい導体を用いる場合、窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気で行う必要があり、配線回路層としてAg等の酸化しない導体を用いる場合、大気等の酸化性雰囲気で行うことができる。
【0037】
その後、拘束シート9を、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2から選ばれる少なくとも1種を含む砥粒を空気と共に0.05〜0.5MPaの圧力で吹き付けるなどの手法によって除去することによって本発明の多層配線基板Aを作製することができる(g)。
【0038】
このように拘束シートを用いて焼成することによって、焼成時の収縮が拘束シート9によって厚さ方向だけに抑えられているので、積層体一辺の長さの収縮率を0.5%以下に抑えることができる。
【0039】
【実施例】
先ず、平均粒径が5μmのSiO2−Al2O3−BaO−MgO系結晶化ガラス粉末と、平均粒径が5μmのSiO2・MgOからなるセラミックフィラー粉末とを秤量し、これにバインダーとしてアクリル系樹脂(主にメタクリル酸系)と、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコールを加えて混合、調製したスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ500μmのグリーンシートを作製した。
【0040】
次に、平均粒径が5μmのCu粉末に対して、フィラー成分としてSiO2粉末を8重量%と、これら無機成分に対して有機バインダーとしてアクリル系樹脂を2重量部と、溶媒としてアセトンを75重量部との比率で添加混練し、ペースト状のビアホール導体用ペーストを作製した。そして、上記グリーンシートの所定個所にビアホールを形成し、そのビアホール内に上記ビアホール用ペーストを充填した。
【0041】
一方、PETフィルムに、純度99.5%以上、厚み9μmの表1に示す金属箔をアクリル系樹脂からなる接着剤(JIS Z0237による接着強度160g/10mm)により接着し、レジスト塗布、現像、エッチング、レジスト除去を行って所定のパターンの配線回路層を形成した。配線幅は40μm、配線回路層ピッチ100μmとしたが、エッチングによる形成のため従来のスクリーン印刷法と比較して、非常に微細な配線回路層を形成することができた。
【0042】
次に、上記転写シートの配線回路層表面に対してプラズマを照射した。
照射方法としては、毎秒1cmの速度で動くベルトコンベア上に金属箔からなる配線回路層が形成された転写シートを供給し、長さ2cm、幅3cmの常圧プラズマ照射装置をベルトコンベア上部に10個交互に載置し、転写シートの配線回路層表面にプラズマを照射した。
【0043】
なお、プラズマの条件は、周波数100Hz、電極に印加する電圧のデューティー比を50%、ON/OFFの切り替えが10msのパルス出力とし、常温、常圧の雰囲気下で、大気プラズマを照射した。
【0044】
次に、ビアホールが形成されたグリーンシートにビアホールの位置にあわせながら、上記転写シートにおけるプラズマ処理された配線回路層表面をグリーンシートに接着させて積層し、60℃、15MPaで熱圧着して配線回路層をグリーンシート表面に形成した。その後、40℃の温度をかけながら転写シートを剥がすことにより、ビアホール導体を接続した配線回路層を具備する一単位の配線ユニットを形成した。また、同様にして4つの配線ユニットを形成し、5枚の配線ユニットを積層し、積層体を形成した。
【0045】
他方、平均粒径2μmのアルミナを主成分とするセラミック粉末90質量%と平均粒径5μmのガラス粉末10質量%の組成物からなる厚さ250μmの拘束シートを作製した。なおシート作製時の有機バインダー、可塑剤、溶媒等はグリーンシートと同じ配合量とした。この拘束シートを前記配線ユニットの最表面の両面に50℃、20MPaで加圧積層して積層体を得た。
【0046】
次いで、この積層体を、Al2O3セッターに載置して有機バインダー等の有機成分を分解除去するために、水蒸気含有窒素雰囲気中、700℃に加熱し、さらに窒素雰囲気中、950℃で1時間焼成を行った。なお、焼成後の冷却速度は300℃/hrとした。その後、拘束シートをAl2O3砥粒を空気と共に0.2MPaの圧力で吹き付けることで除去し、多層配線基板を作製した。
【0047】
得られた多層配線基板に対して、転写率、収縮率、熱サイクル後の配線回路層の接着強度、剥がれ、デラミネーションの発生について以下の要領で評価した。(転写率)
得られた多層配線基板について、転写性について転写不良の発生の有無を観察し、試料数50個における転写不良の個数を示した。結果を表1に示した。
(収縮率)
更に、ガラスセラミック絶縁基板の焼成による収縮率を、絶縁基板の焼成前後の一辺の長さを測定して(l1、l2)、収縮率((l1−l2)/l1×100%)を算出した。結果は表1に示した。
(熱サイクル試験)
配線基板を−40℃および125℃の各温度に制御した恒温槽に試験サンプルを15分/15分の保持を1サイクルとして100サイクル繰り返した後に、配線基板表面の2mm□の配線回路層に対してSnめっきを施したCu線を半田付けした後、そのCu線を垂直に引っ張り、Cu線が取れてしまう時の荷重を測定した。また、合わせて配線回路層表面および断面を観察して、試料数10個に配線回路層の剥がれやデラミネーションが認められた個数を示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果から明らかなように、プラズマ処理を施さなかった試料No.1、3、5、7、9、11、13では、転写不良の発生、焼成後の熱サイクル試験においては、接着強度の低下が認められ、また多量に配線回路層の剥がれ、デラミネーションが認められた。これに対して、プラズマ処理を施した試料は、転写性の向上、熱サイクル試験後においても高い接着強度を示し、デラミネーションや剥離の発生も見られなかった。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、転写シート上のグリーンシートに接する配線回路層表面にプラズマを照射することで、転写性、焼成後の熱サイクル後における接着強度の低下、剥がれ、デラミネーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】本発明のプラズマを照射する工程を示した図である。
【符号の説明】
1 グリーンシート
A1〜A4 配線ユニット
2 ビアホール導体
3 配線回路層
4 転写シート
5 拘束シート
6 常圧プラズマ照射装置
7 ベルトコンベア
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線基板及び半導体素子収納用パッケージなどに適した多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、配線基板、例えば、半導体素子を収納するパッケージに使用される多層配線基板として、比較的高密度の配線が可能な多層セラミック配線基板が多用されている。この多層セラミック配線基板は、アルミナやガラスセラミックなどの絶縁基板と、その表面に形成されたWやMo、Cu、Ag等の金属からなる配線導体とから構成されるもので、この絶縁基板の一部にキャビティが形成され、このキャビティ内に半導体素子が収納され、蓋体によってキャビティを気密に封止されるものである。
【0003】
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線回路層としてCu等の低抵抗金属を用いることができることから、焼成温度が1000℃以下のいわゆるガラスセラミック配線基板が一層注目されている。
【0004】
ところが、このようなガラスセラミック配線基板において、配線回路層を形成する手法としては、Cu、Ag等の金属からなる配線導体を主成分とするメタライズペーストを、スクリーン印刷法等によって絶縁基板上に印刷する。しかし、このような手法を用いた場合、配線幅100μm以下を形成するのが困難であり、今後必要とされる更なる高密度化、小型軽量化の達成を阻む原因であった。電気抵抗についてもペーストで配線回路層を形成させるために空隙が多く存在し、低抵抗化が困難という問題があった。
【0005】
この問題を解決する手法としては、ガラスセラミックグリーンシートにおける配線回路層を、エッチングした金属箔によって形成する手法が知られている(特開昭63−14493号公報)。しかし、金属箔とガラスセラミックを同時焼成すると、金属箔が収縮しないために、基板に反り、クラックが発生し、実用化が困難という問題があった。
【0006】
そこで、ガラスセラミック配線基板の両面に、該配線基板の焼成温度では焼結しない無機組成物の層からなる拘束シートを形成した後、同時焼成し、該配線基板における平面方向の収縮を抑制することで、金属箔とガラスセラミックの同時焼成を可能とする方法が提案されている(特開平7−86743号公報)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−14493号公報
【特許文献2】
特開平7−86743号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開平7−86743号公報において、金属箔によって形成された配線パターンとガラスセラミックグリーンシートを接着する方法は、主に熱圧着法を用いている。しかし、この熱圧着法のみでは、金属箔からなる配線パターンとガラスセラミックグリーンシート間とは接着力が弱く、配線パターンの剥がれが発生し易く、焼成後においてデラミネーションが発生する等の問題があった。
【0009】
また、ガラスセラミックグリーンシート中には、有機成分を5〜20重量%含有しているため、加熱することによってこの有機成分を接着剤として機能させて転写性を高めることも考えられるが、あまり高い温度(80℃以上)をかけると有機成分が軟化してしまい、グリーンシートが変形したり、伸びるなどによって寸法精度が低下し、歩留りが大きく低下するといった問題があった。
【0010】
また、従来の金属箔を用いて配線回路層を形成した場合、セラミックグリーンシートと金属箔との密着性が充分ではないために、焼成後に熱サイクル試験など行った場合に、金属箔からなる配線回路層のセラミック基板への接着強度の低下や、積層構造において配線回路形成部分で層剥離(デラミネーション)が発生し、長期信頼性の点で問題があった。
【0011】
本発明の目的は、セラミックグリーンシート表面に、転写シートからの転写によって金属箔からなる配線回路層を形成した場合に、焼成後に熱サイクル等が印加された場合においても、配線回路層の密着強度の低下や、デラミネーションなどが発生するのを防止した信頼性の高い多層配線基板の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について検討した結果、該転写シート表面の金属箔からなる配線回路層をセラミックグリーンシートに転写する前に、配線回路層表面にプラズマを照射すると、セラミックグリーンシートへの転写後の配線回路層において剥がれの発生や、焼成後のデラミネーションの発生がなく、安定して配線回路層を形成することができることを見いだした。
【0013】
即ち、本発明の多層配線基板の製造方法は、転写シート表面に金属箔からなる配線回路層を形成してなる転写シートを準備し、セラミックグリーンシート表面に前記転写シートから前記配線回路層を転写形成した後、該グリーンシートを複数積層し、前記配線回路層を形成する金属の融点より低い温度で焼成してなる多層配線基板の製造方法において、前記転写シートにおける前記金属箔からなる配線回路層の表面に、プラズマを照射した後に転写することを特徴とするものである。
【0014】
また、前記金属箔がCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt、Pdから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1の本発明多層配線基板の製造方法についての一例を示す工程図を基に説明する。
【0016】
ここでは、低温焼成のセラミック材料として、ガラスセラミックスを例として以下に説明する。まず、平均粒径0.5〜10μm、特に1〜5μmのガラス粉末と平均粒径0.5〜10μm、特に平均粒径1〜5μmのセラミックフィラー粉末とを準備する。
【0017】
用いられるガラス成分としては、少なくともSiO2を含み、Al2O3、B2O3、ZnO、PbO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種以上を含有したものであって、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)等のホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Ba系ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。
【0018】
これらのガラスは焼成処理することによっても非晶質ガラスであるもの、また焼成処理によって、アルカリ金属シリケート、クォーツ、クリストバライト、コージェライト、ムライト、エンスタタイト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ディオプサイド、イルメナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種を析出するものが用いられる。
【0019】
また、セラミックフィラーとしては、クォーツ、クリストバライト等のSiO2や、Al2O3、ZrO2、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、マグネシアの群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
【0020】
上記ガラス粉末とセラミック粉末とを、特に、ガラス成分10〜90重量%、特に50〜80重量%と、セラミックフィラー成分10〜90重量%、特に20〜50重量%の割合で混合する。その混合物に有機バインダー等を加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などによりシート状に成形して厚さ約50〜500μmのグリーンシート1を作製する。
【0021】
次に、このグリーンシート1にレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、直径80〜200μmの貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体2を形成する(a)。導体ペースト中には、Cu、Ag、Au等の金属成分と、それ以外にアクリル樹脂などの有機バインダー、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトンなどの有機溶剤とを混合して形成される。有機バインダーは金属成分100重量部に対して0.5〜15.0重量部、有機溶剤は固形成分及び有機バインダー100重量部に対して5〜100重量部の割合で混合されることが望ましい。なお、この導体ペースト中にはガラスセラミック材料との焼成収縮を合わせるため、若干のガラス成分等を添加してもよい図1(1)。
【0022】
次に、このグリーンシート1の表面に、配線回路層3を形成する。配線回路層3としては、従来より上述のビアホール導体2を形成するための金属導体粉末を含有する導体ペーストを用いて印刷法等により形成することが行われているが、配線回路層3の幅が75μm以下、特に50μm以下、かつ配線回路層3のピッチが150μm以下、特に100μm以下の微細配線化するために、本発明によれば、金属箔によって形成する。金属箔としては、特にCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt、Pdの群から選ばれる少なくとも1種の純度99.5重量%以上の高純度金属からなることが望ましい。
【0023】
このような金属箔からなる配線回路層3は、グリーンシートの表面に金属箔を接着した後に周知のフォトエッチング法等の手法によって所望の回路を形成する方法が知られているが、かかる方法ではエッチング液によってグリーンシートを変質させてしまうため、本発明においては転写法にて形成する。
【0024】
転写法による配線回路層3の形成方法としては、まず、PETなどの樹脂からなる転写フィルム4の一面に金属箔を熱可塑性樹脂からなる接着剤(図示せず)により接着する。そして、この金属箔の表面にレジストを鏡像の回路パターン状に塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行う方法によって、転写フィルム4表面に配線回路層3を形成することができる(b)。
【0025】
次に、本発明によれば、この転写フィルム4表面に形成された配線回路層3形成面に、プラズマを照射する。プラズマを照射する方法としては、例えば、図3に示すように、ベルトコンベア7のベルト8上に、表面に金属箔からなる配線回路層3が形成された転写フィルム4を載置し、プラズマ照射装置6によって、大気プラズマ又はN2プラズマを室温、常圧下にて照射するか、CF4プラズマを密閉容器内にて照射する方法があげられる。
【0026】
例えば、大気プラズマの場合、ON/OFF切り替え周期10〜12ms、周波数75Hz〜100Hz、電極に印加する電圧のデューティー比を40〜50%の条件で照射するのが適当である。
【0027】
このようにして、配線回路層3の表面にプラズマを照射すると、(1)配線回路層3表面に付着している汚れに対してプラズマ粒子が結合し汚れを取り除く洗浄効果、(2)配線回路層3表面にプラズマ粒子が衝突し原子レベルの凹凸ができる粗面効果、(3)配線回路層3表面にプラズマ粒子が衝突し表面の分子結合状態を変化させる活性効果、の以上3種の効果が単独、あるいは複合して現れることにより、配線回路層3表面が改質される。
【0028】
このようにしてプラズマ照射により表面改質された配線回路層3を用いることにより、セラミック基板と配線回路層の接着性が向上し、配線回路層の剥がれの発生や、焼成後のデラミネーションの発生がなく、安定して配線回路層を形成するばかりでなく、焼成後に熱サイクル等が印加された場合においても、配線回路層の密着強度が低下したり、デラミネーションなどが発生するのを防止した信頼性の高い多層配線基板の製造方法を提供することが可能となる。
【0029】
また、プラスマ処理した配線回路層3の表面に、転写性を高めるために、有機樹脂を含有する接着層を塗布してもよい。この場合、プラズマ処理を施さない場合に比較して配線回路層へのぬれ性が改善され、接着の均一性を図ることができる。
【0030】
次に、前記ビアホール導体2が形成されたグリーンシート1の表面に、転写フィルム4上に形成された表面がプラズマ処理された配線回路層3を位置合わせして積層圧着した後(c)、転写フィルム4を剥がすことにより、ビアホール導体2と接続した配線回路層3を具備する配線ユニットAを形成することができる(d)。
【0031】
なお、グリーンシート1への転写性を高めるために配線回路層3と転写フィルム4との間の接着強度は、200g/10mm以下(JIS Z0237による)であることが望ましい。また、転写フィルム4を剥がす際は、30〜50℃の熱をかけながら剥がすことで、配線回路層3と転写フィルム4間に存在する熱可塑性の粘着層を軟化させるなどの処理によって転写不良を防止することができる。
【0032】
その後、同様にして得られた配線ユニットA1〜A3を積層圧着して積層体を形成する(e)。配線ユニットA1〜A3の積層は、積み重ねられた配線ユニットに熱と圧力を加えて熱圧着したり、有機バインダー、可塑剤、溶剤等からなる接着剤をシート間に塗布して圧着することもできる。
【0033】
次に、金属箔で配線回路層を形成する場合、金属箔の配線回路層自体が焼成収縮しないために、平面方向の収縮を抑制しながら焼成する必要がある。そのため、配線ユニットA1〜A3の積層体の焼成温度では難焼結性のセラミック材料を主成分とする拘束シート9を配線ユニットA1〜A3の積層体の両面又は片面に加圧積層して積層体を作製する(f)。
【0034】
この拘束シート9は、難焼結性セラミック材料を主体とする無機成分に、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えたスラリーをシート状に成形して得られる。難焼結性セラミック材料としては、具体的には1000℃以下の温度で緻密化しないようなセラミック組成物から構成され、具体的には平均粒径1〜20μm、特に3〜10μmのAl2O3、SiO2、MgO、ZrO2、BN、TiO2の群から選ばれる少なくとも1種および/またはこれらの複合酸化物(例えばフォルステライト(Mg2SiO4)、エンスタタイト(MgSiO3))等の粉末が挙げられる。
【0035】
また、この拘束シート9中にはガラス成分、言い換えれば非晶質成分を0.5〜15重量%、特に1〜12重量%含有することが望ましく、それによって焼成収縮の拘束力を高め、また、拘束シートと接する部分のガラスの移動を抑制し焼結不良などの発生を防止することができる。拘束シート9中に含まれるガラス成分は、ガラスセラミックグリーンシート1中に含まれるガラス成分はガラスセラミックグリーンシート1中のガラスの拡散を防止するうえでは同一のガラスを用いることが望ましい。
【0036】
次に、上記配線ユニットA1〜A3と拘束シート9との積層体を100〜850℃、特に400〜750℃の酸化性または弱酸化性雰囲気中で加熱処理してグリーンシート1内やビアホール導体ペースト中の有機成分を分解除去する。この時の条件としては、グリーンシート中の有機成分を除去するとともに、配線回路層を転写形成する場合に配線回路層表面に形成された接着層を分解除去できる条件に設定する。熱分解性に優れたアクリル系樹脂を用いた場合には、500〜800℃窒素雰囲気中で同時焼成する。なお、焼成条件としては、配線回路層としてCu等の酸化しやすい導体を用いる場合、窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気で行う必要があり、配線回路層としてAg等の酸化しない導体を用いる場合、大気等の酸化性雰囲気で行うことができる。
【0037】
その後、拘束シート9を、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2から選ばれる少なくとも1種を含む砥粒を空気と共に0.05〜0.5MPaの圧力で吹き付けるなどの手法によって除去することによって本発明の多層配線基板Aを作製することができる(g)。
【0038】
このように拘束シートを用いて焼成することによって、焼成時の収縮が拘束シート9によって厚さ方向だけに抑えられているので、積層体一辺の長さの収縮率を0.5%以下に抑えることができる。
【0039】
【実施例】
先ず、平均粒径が5μmのSiO2−Al2O3−BaO−MgO系結晶化ガラス粉末と、平均粒径が5μmのSiO2・MgOからなるセラミックフィラー粉末とを秤量し、これにバインダーとしてアクリル系樹脂(主にメタクリル酸系)と、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコールを加えて混合、調製したスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ500μmのグリーンシートを作製した。
【0040】
次に、平均粒径が5μmのCu粉末に対して、フィラー成分としてSiO2粉末を8重量%と、これら無機成分に対して有機バインダーとしてアクリル系樹脂を2重量部と、溶媒としてアセトンを75重量部との比率で添加混練し、ペースト状のビアホール導体用ペーストを作製した。そして、上記グリーンシートの所定個所にビアホールを形成し、そのビアホール内に上記ビアホール用ペーストを充填した。
【0041】
一方、PETフィルムに、純度99.5%以上、厚み9μmの表1に示す金属箔をアクリル系樹脂からなる接着剤(JIS Z0237による接着強度160g/10mm)により接着し、レジスト塗布、現像、エッチング、レジスト除去を行って所定のパターンの配線回路層を形成した。配線幅は40μm、配線回路層ピッチ100μmとしたが、エッチングによる形成のため従来のスクリーン印刷法と比較して、非常に微細な配線回路層を形成することができた。
【0042】
次に、上記転写シートの配線回路層表面に対してプラズマを照射した。
照射方法としては、毎秒1cmの速度で動くベルトコンベア上に金属箔からなる配線回路層が形成された転写シートを供給し、長さ2cm、幅3cmの常圧プラズマ照射装置をベルトコンベア上部に10個交互に載置し、転写シートの配線回路層表面にプラズマを照射した。
【0043】
なお、プラズマの条件は、周波数100Hz、電極に印加する電圧のデューティー比を50%、ON/OFFの切り替えが10msのパルス出力とし、常温、常圧の雰囲気下で、大気プラズマを照射した。
【0044】
次に、ビアホールが形成されたグリーンシートにビアホールの位置にあわせながら、上記転写シートにおけるプラズマ処理された配線回路層表面をグリーンシートに接着させて積層し、60℃、15MPaで熱圧着して配線回路層をグリーンシート表面に形成した。その後、40℃の温度をかけながら転写シートを剥がすことにより、ビアホール導体を接続した配線回路層を具備する一単位の配線ユニットを形成した。また、同様にして4つの配線ユニットを形成し、5枚の配線ユニットを積層し、積層体を形成した。
【0045】
他方、平均粒径2μmのアルミナを主成分とするセラミック粉末90質量%と平均粒径5μmのガラス粉末10質量%の組成物からなる厚さ250μmの拘束シートを作製した。なおシート作製時の有機バインダー、可塑剤、溶媒等はグリーンシートと同じ配合量とした。この拘束シートを前記配線ユニットの最表面の両面に50℃、20MPaで加圧積層して積層体を得た。
【0046】
次いで、この積層体を、Al2O3セッターに載置して有機バインダー等の有機成分を分解除去するために、水蒸気含有窒素雰囲気中、700℃に加熱し、さらに窒素雰囲気中、950℃で1時間焼成を行った。なお、焼成後の冷却速度は300℃/hrとした。その後、拘束シートをAl2O3砥粒を空気と共に0.2MPaの圧力で吹き付けることで除去し、多層配線基板を作製した。
【0047】
得られた多層配線基板に対して、転写率、収縮率、熱サイクル後の配線回路層の接着強度、剥がれ、デラミネーションの発生について以下の要領で評価した。(転写率)
得られた多層配線基板について、転写性について転写不良の発生の有無を観察し、試料数50個における転写不良の個数を示した。結果を表1に示した。
(収縮率)
更に、ガラスセラミック絶縁基板の焼成による収縮率を、絶縁基板の焼成前後の一辺の長さを測定して(l1、l2)、収縮率((l1−l2)/l1×100%)を算出した。結果は表1に示した。
(熱サイクル試験)
配線基板を−40℃および125℃の各温度に制御した恒温槽に試験サンプルを15分/15分の保持を1サイクルとして100サイクル繰り返した後に、配線基板表面の2mm□の配線回路層に対してSnめっきを施したCu線を半田付けした後、そのCu線を垂直に引っ張り、Cu線が取れてしまう時の荷重を測定した。また、合わせて配線回路層表面および断面を観察して、試料数10個に配線回路層の剥がれやデラミネーションが認められた個数を示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果から明らかなように、プラズマ処理を施さなかった試料No.1、3、5、7、9、11、13では、転写不良の発生、焼成後の熱サイクル試験においては、接着強度の低下が認められ、また多量に配線回路層の剥がれ、デラミネーションが認められた。これに対して、プラズマ処理を施した試料は、転写性の向上、熱サイクル試験後においても高い接着強度を示し、デラミネーションや剥離の発生も見られなかった。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、転写シート上のグリーンシートに接する配線回路層表面にプラズマを照射することで、転写性、焼成後の熱サイクル後における接着強度の低下、剥がれ、デラミネーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】本発明のプラズマを照射する工程を示した図である。
【符号の説明】
1 グリーンシート
A1〜A4 配線ユニット
2 ビアホール導体
3 配線回路層
4 転写シート
5 拘束シート
6 常圧プラズマ照射装置
7 ベルトコンベア
Claims (2)
- 転写シート表面に金属箔からなる配線回路層を形成してなる転写シートを準備し、セラミックグリーンシート表面に前記転写シートから前記配線回路層を転写形成した後、該グリーンシートを複数積層し、前記配線回路層を形成する金属の融点より低い温度で焼成してなる多層配線基板の製造方法において、前記転写シートにおける金属箔からなる配線回路層の表面に、プラズマを照射した後に転写することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
- 前記金属箔がCu、Ag、Al、Au、Ni、Pt、Pdから選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項2記載の多層配線基板の製造方法。
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JP2008159839A (ja) * | 2006-12-25 | 2008-07-10 | Hitachi Cable Ltd | 半導体装置実装パッケージ用多層配線板の製造方法 |
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-
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