JP2008185183A - 高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、Ni:17.0〜22.0%、Cr:0.1〜4.0%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%を超え20.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下(0は含まない)を含有するマルエージング鋼帯を素材とし、該素材をフッ素化合物を含むガス雰囲気下に加熱、保持することによってその表面に形成している酸化皮膜を除去した後、400〜500℃の温度で、NH3/H2ガス組成比率の値が1〜3となるよう調整した窒化ガス中で窒化処理を行なう高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法。
【選択図】 なし
Description
そして、マルエージング鋼は、強化元素として、Co、Mo、Tiを適量含んでおり、時効処理を行なうことによって、Ni3Mo、Ni3Ti、Fe2Mo等の金属間化合物を析出させて高強度を得ることのできる鋼である。また、特に自動車エンジンの無段変速機用部品に使用される鋼帯においては、特に高サイクル域での疲労強度が重要な要求特性であるため、高強度を有するマルエージング鋼の内部に存在するTiN等の非金属介在物をできるだけ微細化することが必要とされている。
また、疲労現象は、本質的に局部的な塑性変形によるものであるため疲労強度は降伏応力、ないしは引張強さ、硬さの増大とともに上昇する。このように窒化処理は残留応力、硬さの何れも大きくする効果があるため、疲労強度向上の有効な手段である。
この窒化処理方法としてはガス窒化、ガス軟窒化、またはこれらをベースとして前処理を施した窒化処理が行なわれている。(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、特許文献2に開示されるマルエージング鋼の窒化処理方法は、窒化処理温度を430〜480℃とすることでマルテンサイトからオーステナイト逆変態を抑え、素材の強度低下を抑制し、またガス窒化処理に用いられるアンモニアガス濃度を時間とともに変化させることで、素材表面に、疲労強度低下を招く窒化物の生成を抑制することができ、その結果、マルエージング鋼の疲労強度および耐磨耗性を向上させている。
また、特許文献3に開示されるマルエージング鋼の窒化処理方法は、窒化を阻害する素材の酸化被膜をハロゲン化合物ガスによりハロゲン化物被膜に置換した後に、真空または減圧雰囲気下で加熱することで該ハロゲン化物被膜を除去し、その後、アンモニアガスの存在下に加熱することで素材表面に疲労強度低下の原因となる欠陥が生じない窒化処理方法を提供している。
しかしながら従来のマルエージング鋼では活性なTiを含むことから、これが疲労特性に対して有害となるTiNを素材中に形成するために、上述した窒化処理を用いても窒化による疲労特性向上だけでは限界があった。また、疲労特性強度向上に有害な介在物であるTiNを低減するためには、Tiを低く抑える必要があるが、Tiを減じたことによる強度低下をその他の元素で代替する必要がある。
本発明の目的は、従来、強化元素として含有されていたTiを低減したマルエージング鋼において、化学成分の最適化と窒化処理の最適化により、Tiを含有するマルエージング鋼と同等以上の高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法を提供する。
本発明では、上述の基本組成を有するマルエージング鋼帯の強度を更に高めることができる弟一の最適成分と、弟二の最適成分とがある。
その第一の最適成分は、上述の基本組成を有するマルエージング鋼帯成分に加えて、更に、質量%で、Al:0.15を超え2.5%を含有し、Cr:0.1〜3.0%、Co/3+Mo+4Alが8.0〜15.0を満足するものである。
その第二の最適成分は、上述の基本組成を有するマルエージング鋼帯成分に加えて、更に、質量%で、Co:10.0を超え20.0%以下、Ti:0.05%以下、Al:0.1%未満、Al+Tiが0.1%未満、Co/3+Moが8.0〜15.0を満足する高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法である。
また本発明では、更に、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.005%以下、Zr:0.01%以下の1種以上を含有してもよい。
本発明の製造方法を適用したマルエージング鋼帯は、平均応力617MPa、最大応力1176MPaの繰返し曲げ疲労試験で評価した時、破断繰返し数が107回以上の高疲労強度を得ることができる。
自動車用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのリング製品のような高疲労強度が要求されるマルエージング鋼帯の製造方法として最適である。
先ず、本発明で規定する化学成分について説明する。
本発明のマルエージング鋼帯において、以下の範囲で各化学組成を規定した理由は以下の通りである。なお、特に記載のない限り質量%として記す。
Niは、マルエージング鋼の基地組織である低Cマルテンサイト組織を安定して形成させるため、少なくとも17.0%は必要であるが、22.0%を超えるとオーステナイト組織が安定化し、マルテンサイト変態を起こし難くなることから、Niは17.0〜22.0%とした。Niの好ましい範囲は18.0%を超え22.0%以下である。
Cr:0.1〜4.0%
Crは窒化を行なう場合にNとの親和力が強く、窒化深さを浅くし、窒化硬さを高めたり、窒化表面の圧縮残留応力を増加させたりする元素であるため、必須で添加する。しかし、0.1%より少ないと効果がなく、一方、4.0%を越えて添加してもより一層の向上効果がみられず、また、時効処理後の強度が大きく低下することから、Crは0.1〜4.0%とした。
Moは、時効処理時にNi3Mo、Fe2Mo等の微細な金属間化合物を形成し、析出強化に寄与する重要な元素である。また、Moは窒化による表面の硬さ及び圧縮残留応力を大きくするために有効な元素である。このためのMoは、3.0%より少ないと引張強度が不十分であり、一方、7.0%より多いとFe、Moを主要元素とする粗大な金属間化合物を形成しやすくなるため、Moは3.0〜7.0%とした。Moの好ましい範囲は、5.0%を超え7.0%以下である。
Co:7.0%を超え20.0%以下
Coは、マトリックスのマルテンサイト組織の安定性に大きく影響することなく、固溶化処理温度でMo、Al等の時効析出物形成元素の固溶度を増加させ、時効析出温度域でのMo、Alの固溶度を低下させることによってMo、Alを含む微細な金属間化合物の析出を促進し、時効析出強化に寄与する重要な元素であり、強度面、靭性面から多く添加することが必要である。
Coは、7.0%以下ではTiを低減したマルエージング鋼では十分な強度が得られ難く、一方20.0%を超えて添加するとオーステナイトが安定化するため、マルテンサイト組織が得られ難くなることから、10.0%を超え20.0%以下とした。好ましいCoの範囲は8.0%を超え20.0%以下である。
Tiは、本来、マルエージング鋼における重要な強化元素の一つであるが、同時に介在物であるTiNまたはTi(C、N)を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低下させる有害元素でもあるので、疲労強度を重視する場合には、不純物として低く抑える必要がある。そのためTiは、0.1%より多いとTiNまたはTi(C、N)の低減に十分な効果が得られず、また安定な酸化膜を表面に形成し易くなることから、Tiは0.1%以下とした。望ましくは0.05%以下が良い。
B:0.01%以下(0は含まない)
Bは、冷間加工後に固溶化処理を行なったときの旧オーステナイト結晶粒を微細化して強化に寄与すると共に表面肌荒れを抑制する効果をもつ元素であり、必須添加する。Bが0.01%より多いと靭性が低下することから、Bは0.01%以下(0%は含まず)とした。望ましくは、0.005%以下(0%は含まず)が良い。旧オーステナイト結晶粒をより確実に微細化できる好ましいBの下限は0.0002%であり、更に好ましい下限は0.0003%である。
Tiを低減した本発明のマルエージング鋼において、Alは強度を補う元素であり時効処理時にNiと共に金属間化合物を形成して強化に寄与する元素であるが一方で、窒化によりAlNを形成し、窒化硬さを増加させる元素でもある。また、強度を補う元素としてはCoやMoも同様の効果が得られる元素である。
そのためAlの含有量は二つの場合を想定して、含有を調整することが重要である。
先ず、Alを積極添加させることにより、強度を更に高めることができる第一の最適成分について説明する。
Alを積極添加する場合、Alを添加することにより、強度の向上および優れた窒化性を得ることができる。そのための含有量は、0.15%を超え2.5%以下とすることが望ましい。Alが0.15%より少ないと上述した効果は得られず、2.5%より多いと時効硬化が大きくなり強度が増す一方、延性や靭性が大きく低下するだけでなく、AlN、Al2O3介在物を多く形成して疲労強度を低下させてしまう。そのため、Alは0.15を超えて2.5%の範囲とする。好ましくは0.2〜1.5%である。
また、Alの添加は、その他元素とのバランスを考慮する必要があり、強度低下を補う場合、Co、Moとの和で管理することが重要である。しかし、その各元素の強化への寄与は同じではなく、Co及びAlによる強化分はMoによる強化分のそれぞれ1/3及び4倍である。
従って、Co、Mo、Alによる強化はCo/3+Mo+4Alで整理できる。質量%でCo/3+Mo+4Alの値が8.0%より少ないと強度が十分でなく、一方、15.0%を超えると強度が高くなりすぎ、靭性低下の惧れがあることから、Co/3+Mo+4Alは、8.0〜15.0%とした。好ましくは8.0〜14.0%である。
Al以外の元素で十分に強度および窒化性を得ることが可能な場合は、疲労特性を低下させてしまう非金属介在物を形成するAlやTiを低く制限するべきである。そのため、AlとTiの含有量は、非金属介在物を極力形成しない範囲とするのが良い。そのために望ましいTiは0.05%以下、Alは0.1%未満の範囲であり、且つAl+Tiを0.1%以下の範囲である。
この第二の最適成分の場合、強度を補うためには、Co:10.0を超え20.0%以下、Co/3+Moが、8.0〜15.0%を満たすようCoおよびMoを調整する。
Co:10.0%を超え20.0%以下としたのは、Alを不純物レベルに低減した場合において、Co含有量が10.0%以下であると、Coによる強度を補う効果が得にくく、20.0%を超えて添加するとオーステナイトが安定化するため、マルテンサイト組織が得られ難くなり、疲労強度が低下するためである。
また、Co/3+Moが、8.0〜15.0%としたのは、8.0%より少ないと強度が十分でなく、一方、15.0%を超えると強度が高くなりすぎ、靭性低下の惧れがあることから、Co/3+Mo+4Alは、8.0〜15.0%とした。好ましくは8.0〜14.0%である。
C:0.01%以下
Cは、Moと炭化物を形成して、析出すべき金属間化合物を減少させて強度を低下させるため、低く抑えるのが望ましい。また、Cを積極添加すると、例えば無断変速機部品に必要とされる溶接性が低下する危険性が高くなる。このような理由からCは0.01%以下とした。好ましくは、0.008%以下である。
Si:0.1%以下
Siは、時効処理時に析出する金属間化合物を微細化したり、Niとともに金属間化合物を形成したりすることでTi低下による強度低下分を補うことができる元素であるが、靭性を低下させる惧れがあることから、靭性、延性を確保するために、本発明においては低く抑えるのが望ましい。0.1%を超えて添加すると靭性、延性が低下することから、Siは0.1%以下とした。靭性、延性の確保をより確実に行なうための好ましい範囲は0.05%以下である。
Mn:0.1%以下
Mnは、時効処理時にNiと共に金属間化合物を形成し、時効硬化に寄与する元素であることから、Ti低下による強度低下分を補うためことができる元素であるが、靭性を低下させる惧れがあることから、靭性、延性を確保するために、本発明においては低く抑えるのが望ましい。0.1%を超えて添加すると靭性、延性が低下することから、Mnは0.1%以下とした。靭性、延性の確保をより確実に行なうための好ましい範囲は0.05%以下である。
P、Sは、旧オーステナイト粒界に偏析したり、介在物を形成したりすることで、マルエージング鋼を脆化させ、疲労強度を低下させる有害な元素であるため、Pは0.01%以下、Sは0.005%以下とした。好ましくは、Pについては0.005%以下、Sについては0.004%以下の範囲である。
N:0.03%以下
Nは、Tiと結合してTiNまたはTi(C、N)の介在物を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低下させる不純物元素である。Tiを含むマルエージング鋼では、粗大なTiNまたはTi(C、N)の形成を防ぐため、Nを大幅に低く抑えるのが望ましい。しかし、Tiを殆ど含まないマルエージング鋼では形成されるTiN少なく且つ、微細化されるため、悪影響が少ないことからNはやや多くても許容される。
Nは0.03%を超えるとAl、Cr等の窒化物が多くなることからNは0.03%以下とした。望ましくは、0.01%以下が良い。更に望ましくは、0.005%以下が良い。
O:0.005%以下
Oは、酸化物系介在物を形成して靭性、疲労強度を低下させる不純物元素であるので、0.005%以下に制限した。望ましくは、0.003%以下が良い。
本発明のマルエージング鋼は、真空誘導溶解または、真空誘導溶解の後、さらに真空アーク再溶解あるいはエレクトロスラグ再溶解を行なう等の真空雰囲気中での溶解によってインゴットを製造することができる。本発明の組成の合金は極力非金属介在物が形成されないような元素の範囲としているが、これら真空雰囲気中での溶解を行なっても、完全に非金属介在物を無くすことは技術的に困難である。
中でも、例えば25μmを超えるような粗大で硬質なAl2O3介在物が形成する可能性や、Al2O3がクラスター化したりする可能性がある。Al2O3介在物は硬質・高融点であり、例えば熱間塑性加工中でも殆ど変形することがない。そのため、例えば冷間圧延時のロールに疵を発生させてマルエージング鋼の表面欠陥を生じる可能性が有る。そのため、Al2O3介在物を複合介在物として、硬さを低下させたり、融点を下げたりするのが良い。また、それと同時にクラスター化を防止できる元素を添加して、介在物欠陥を防止するのが好ましい。
そのため、本発明においては、Ca:0.01%以下、Mg:0.005%以下を含有するとした。
なお、このCaとMgの効果を確実に得るには、Caは0.001%、Mgは0.0001%を下限とすると良い。
また、Zrは、脱酸、脱硫等の目的で0.01%以下であれば添加しても良い。0.01%よりも多いと粗大な酸化物や硫化物を形成し、疲労強度低下を招く惧れがあるため0.01%以下とした。
以上、説明する元素以外の残部は、実質的にFeとする。しかし、不可避的不純物は当然含有される。
そして、このマルエージング鋼帯の窒化処理条件を以下のように規定した理由は以下の通りである。
高い疲労強度を得るには厚さにムラの無い均一な窒化層の形成が不可欠であり、そのためには本発明に適用するマルエージング鋼帯の表面に不可避的に形成している酸化皮膜を除去することが必要となる。
本発明に適用するマルエージング鋼は特にNiを多く含有するだけでなく、Crも含有することから、その表面に形成している酸化皮膜は窒化処理中に還元しづらく、窒化ガスであり還元ガスであるNH3濃度を高くしなければその酸化皮膜を還元することが難しいが、この場合素材表面に脆弱なFe3NやFe4N等の窒化化合物層を形成し易くなることから、上記のような脆弱な窒化化合物層を形成させずに安定的に均一な窒化層を形成させることは極めて困難であるといえる。
そこで、本発明では上記の酸化皮膜を除去する方法としてフッ素化化合物を含むガス雰囲気で加熱するフッ化処理工程を用いる。これにより表面の酸化皮膜は窒化処理時に還元が容易なフッ化膜に置換することができるからである。
このとき使用するフッ素化合物については特に規定しないが、反応性、取扱性の面からNF3ガスが好適であり、NF3ガスをN2ガスで希釈したガスがより好適に使用できる。
上記のフッ化処理を行なった場合、素材表面に形成するフッ化膜は非常に薄く、その還元反応によって発生するフッ化水素ガスは非常に微量であり、窒化ガスを炉内に送ることによって窒化工程中に完全に炉外に排出することができるため、特許文献3に記されているように、窒化処理前に予めフッ化膜を除去するような工程を加えずとも、素材表面の欠陥を生じるような問題は生じない。
上記のフッ化処理工程で形成させたフッ化膜は、窒化処理時に窒化ガス中に含まれるNH3ガスの分解によって発生する活性な水素によって容易に還元されることから通常のガス窒化処理温度よりも低い温度域でも均一な窒化層を形成させることが可能である。
ただし窒化処理温度が400℃未満では目的とする疲労強度を達成するのに十分な窒化層厚さを得るためには処理時間が長くなること、また素材中に固溶、拡散できる窒素濃度が低くなり、窒化処理によって発生する圧縮応力が低下することによって疲労強度の向上が少ないことから、窒化処理温度の下限は400℃とする。より好ましくは430℃以上である。
また窒化処理温度が500℃を超える温度では素材への窒素の固溶可能量は増加するが、素材内部への窒素の拡散速度が速くなり、素材内部へ向かってなだらかな硬度勾配を形成することによって表面に発生する圧縮応力が低下すること、更に窒化処理時の温度付加によって素材が過時効となり素材の強度低下を招く危険性があることから、窒化処理温度の上限は500℃とする。より好ましくは480℃以下である。
高い疲労強度を達成するためには、脆弱なFe3NやFe4N等の窒化化合物層を形成させない範囲で、できる限り表面の窒素の固溶量を多くする必要がある。そのためには窒素源となるNH3の分解を正確に制御する必要がある。その制御方法として本発明では窒化ガスとしてNH3ガスとH2ガスを含む混合ガスを用いる。NH3ガスとH2ガス以外の成分としてはNH3ガス及びH2ガスと窒化処理温度で反応性の無いガスを使用することが好ましく、N2ガスとの混合ガスを用いるのがより好ましい。
NH3ガスの分解反応はH2ガス発生反応であることから窒化ガス中にH2ガスを添加することによってNH3ガスの分解が抑制されることを利用する。すなわちNH3ガスの分解率は処理温度によって制御するのが一般的な方法であるが、上記の方法を用いることによって処理温度を変化させた場合でも、ガス組成を同時に制御することによって、当該マルエージング鋼の窒化処理に最適なNH3ガスの分解率を設定することが可能となる。
上述した理由によってNH3ガスの分解率を抑制した場合でも均一な窒化層の形成が可能であるが、本発明のマルエージング鋼を窒化処理する場合のNH3/H2ガス組成比率の下限値は1とする。1未満の場合にはNH3ガスの分解が抑制され過ぎ、表面から侵入する窒素濃度が低く、残留応力の上昇が十分でないからである。
またNH3/H2ガス組成比率の上限値は3とする。3を超える場合には、本発明のマルエージング鋼の表面から窒素が侵入する速度と内部へ拡散する速度のバランスから、表面に窒素が濃化し上述した脆弱な窒化化合物層を形成し、疲労強度を大きく低下させる原因となる危険性が高いからである。
すなわち、NH3ガスの分解率は温度に大きく依存するため、上記のガス組成比率の範囲内で窒化処理温度によって最適なガス組成比率を適用するのである。
本発明のマルエージング鋼帯は、主に自動車用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのリング製品として使用されることから、疲労特性を向上させた動力伝達用ベルトのリング素材として最適である。
本発明および比較例のマルエージング鋼帯を作製するために真空誘導溶解炉により10kgのインゴットを作製し、均質化焼鈍を実施後、熱間鍛造した。さらに熱間圧延、冷間圧延によって約0.18mm厚さのマルエージング鋼帯を作製した。作製した7種(No.1〜No.7)のマルエージング鋼帯の化学成分(質量%)を図1に示す。なお、No.4およびNo.5にはCaおよびZrをそれぞれ添加した。含有量はそれぞれ、No.4のCaが23ppm、No.5のZrが25ppmであった。
表1に各試料の窒化処理後の内部硬さ、表面硬さ、窒化深さを示す。ここで、表1中の残留応力の符号は、+が引張、−が圧縮を表しており、全て圧縮残留応力である。
なお、表1には示さないが、上記の本発明及び比較例のマルエージング鋼帯の断面にて、電子顕微鏡とエックス線分析装置を用いて、微細介在物の観察、分析を行ない、全ての試験片でTiNやTi(C、N)の介在物の量が極めて少ない量であったことを確認した。また、本発明No.1〜5については、1000倍で10視野の電子顕微鏡による断面観察を行なったが、Al2O3介在物は観察できなかった。
Claims (5)
- 質量%で、Ni:17.0〜22.0%、Cr:0.1〜4.0%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%を超え20.0%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下(0は含まない)を含有するマルエージング鋼帯を素材とし、該素材をフッ素化合物を含むガス雰囲気下に加熱、保持することによってその表面に形成している酸化皮膜を除去した後、400〜500℃の温度で、NH3/H2ガス組成比率の値が1〜3となるよう調整した窒化ガス中で窒化処理を行なうことを特徴とする高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法。
- マルエージング鋼帯は、更に質量%で、Al:0.15を超え2.5%を含有し、Cr:0.1〜3.0%、Co/3+Mo+4Alが8.0〜15.0を満足することを特徴とする請求項1に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法。
- マルエージング鋼帯は、更に質量%で、Co:10.0を超え20.0%以下、Ti:0.05%以下、Al:0.1%未満、Al+Tiが0.1%未満、Co/3+Moが8.0〜15.0を満足することを特徴とする請求項1に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法。
- 質量%で、C:0.01%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%以下、P:0.01%以下、S:0.005%以下、N:0.03%以下、O:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法。
- 質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.005%以下、Zr:0.01%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼帯の製造方法。
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