JP2001240943A - 高疲労強度を有するマルエージング鋼ならびにそれを用いたマルエージング鋼帯 - Google Patents

高疲労強度を有するマルエージング鋼ならびにそれを用いたマルエージング鋼帯

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高疲労強度を有し、且つ安価なマルエージン
グ鋼及びそれを用いたマルエージング鋼帯を提供する。 【解決手段】 質量%にて、C:0.008%以下、Si:2.0%以
下、Mn:3.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12
〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.1%以下、Al:
2.0%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜1
3.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部は実質的にFe
からなる高疲労強度を有するマルエージング鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用無段変速
機等に使用される動力伝達用ベルトのような高疲労強度
が要求される部材に使用されるのに適した高疲労強度を
有するマルエージング鋼及びそれを用いたマルエージン
グ鋼帯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】マルエージング鋼は、2000MPa前後の非
常に高い引張強さをもつため、高強度が要求される部
材、例えば、ロケット用部品、遠心分離機部品、航空機
部品、自動車エンジンの無段変速機用部品、金型等種々
の用途に使用されている。その代表的な組成には、18%N
i-8%Co-5%Mo-0.4%Ti-0.1%Al-bal.Feが挙げられる。そし
て、マルエージング鋼は、強化元素として、Mo、Tiを適
量含んでおり、時効処理を行うことによって、Ni3Mo、N
i3Ti、Fe2Mo等の金属間化合物を析出させて高強度を得
ることのできる鋼である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、マルエージン
グ鋼は、非常に高引張強度が得られる一方、疲労強度に
関しては必ずしも高くない。疲労強度は一般に、硬さ、
引張強さに比例して上昇する傾向があるが、硬さが約40
0HV以上、引張強さが約1200MPa以上の高強度材では、硬
さ、引張強さが上昇しても疲労強度は上昇しなくなる。
この傾向はマルエージング鋼も例外ではない。そこで高
い疲労強度が得られるマルエージング鋼が望まれてい
た。また、マルエージング鋼は通常、高価な元素である
Coを多量に含むことから、素材が非常に高価であり、よ
り安価なマルエージング鋼が望まれていた。本発明は、
高疲労強度を有し、且つ安価なマルエージング鋼及びそ
れを用いたマルエージング鋼帯を提供することを目的と
するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上述したマルエージング
等の従来の高強度鋼では、例えば日本機械学会論文集A6
4巻2536〜2541頁に開示されるように、低サイクル域で
疲労破壊する場合には、疲労破壊は表面を起点としたき
裂発生、伝播によって起こることが知られている。ま
た、従来、疲労限と考えられていた10の7乗回を超える
超高サイクル域においては、疲労破壊は表面を起点とせ
ず、内部の介在物を起点として起こることが知られてい
る。表面起点の破壊による疲労強度は、表面に圧縮残留
応力を与えることによって改善することができ、また、
内部起点の破壊による疲労強度は介在物を微細化するこ
とで改善できると考えられる。
【0005】本発明者は上述した問題を解決すべく、鋭
意研究を行なった結果、表面起点の疲労強度向上には、
適切な窒化処理を施し、表面に大きな圧縮残留応力与え
ることが有効であると判断した。また、本発明者は従来
のマルエージング鋼の内部起点の疲労破壊の起点を詳細
に分析を行った結果、起点となった箇所に介在物の存在
を確認し、その介在物はTiN(またはTi(C、N))であるこ
とを知見した。この結果、TiN(またはTi(C、N))の介在
物を無くすことが疲労強度向上に有効であると判断し
た。しかしながら、TiNを無くすには、TiまたはNを低減
することが有効であるが、極端なNの低減は量産溶解設
備では限界があり、また製造コストも大きく上昇する可
能性がある。
【0006】一方、Tiを大幅に低減すればTiNを低減で
き、TiN量の減少、微細化が達成できると考えられる。
しかし、Tiはマルエージング鋼の重要な強化元素であ
り、単純にTi量を低下させると、強度が大きく低下して
しまう。このTiを低減したマルエージング鋼としては、
特開平10-152759号に開示される靭性に優れたマルエー
ジング鋼、特開平1-142052号に開示される継目無金属ベ
ルト及びその製造方法が知られている。しかし、特開平
10-152759号では、Nを靭性向上のために0.005〜0.03%の
範囲で、むしろ積極的に添加している。また、特開平1-
142052号では、Co量が8〜15%の範囲を提案しており、既
存のTiを含むマルエージング鋼と同レベルであり、素材
が高価なものとなる。
【0007】本発明者は、疲労強度向上に有害な介在物
TiN低減のためにTi、Nをともに低く抑え、かつ安価にす
るためにCoを低くしたマルエージング鋼において、Tiお
よびCo低減による引張強度低下をSi、Mn、Al等の少量添
加、およびこれらの元素の適量添加とするために、3Si+
1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値を適正範囲に限定するこ
とによって補うことができる第一の知見を見出した。ま
た、本発明者は、引張強度、疲労強度を向上させるた
め、結晶粒微細化が有効であるが、Bの微量添加およびB
とともにNb、Ta、W等を同時に適量添加することによっ
て、Si、Mn、Mo等の析出強化元素を含む低Ti、低Coマル
エージング鋼の結晶粒を微細化できる第二の知見を見出
した。また、更に本発明者は、Ti量は窒化処理後の表面
硬さに対してあまり影響を及ぼさないが、窒化による表
面圧縮残留応力の絶対値はTi量が少ない方が大きくなる
第三の知見を新規に見出し、更に本発明者は、Crを適量
添加することによって窒化による表面圧縮残留応力の絶
対値を増加させることができる第四の知見を見出し、本
発明に到ったものである。
【0008】すなわち、本発明の第1発明は、質量%に
て、C:0.008%以下、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.01
0%以下、S:0.005%以下、Ni:12〜22%、Mo:3.0〜7.0%、C
o:7.0%未満、Ti:0.1%以下、Al:2.0%以下、3Si+1.8Mn+
Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜13.0%、N:0.005%未満、O:
0.003%以下、残部は実質的にFeからなることを特徴とす
る高疲労強度を有するマルエージング鋼である。
【0009】第2発明は、質量%にて、C:0.008%以下、
Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以
下、Ni:12〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.05
%以下、Al:0.2%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4
Al:8.0〜13.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部は
実質的にFeからなることを特徴とする高疲労強度を有す
るマルエージング鋼である。
【0010】また、第3発明は、質量%にて、Crを4.0%
以下含む上記マルエージング鋼であり、第4発明は、質
量%にて、B:0.01%以下を含むことを特徴とする上記マ
ルエージング鋼である。また、第5発明は、質量%に
て、Nb:1.0%以下、Ta:2.0%以下、W:2.0%以下の1種以
上を、第6発明は、質量%にて、Nb、Ta、Wの1種また
は2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする上
記マルエージング鋼である。また、上述したマルエージ
ング鋼は、結晶粒度をASTM No.で9以上の細粒にするこ
とができ、これが本発明の第七である。また、上述した
マルエージング鋼を用いてなる本発明のマルエージング
鋼帯は、適正な窒化処理によって表面に窒化層を形成さ
せ、表面に圧縮残留応力を付与することができ、これが
本発明の第八である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、上述の第一から第四の
新規な知見に基づいてなされたものであり、以下に本発
明における各元素の作用について述べる。Cは、Ti、Mo
と炭化物、炭窒化物を形成して、析出すべき金属間化合
物を減少させて強度を低下させるため、低く抑える必要
がある。このような理由からCは0.008%以下とした。Si
は、時効処理時に析出する金属間化合物を微細化した
り、Niとともに金属間化合物を形成したりすることで強
度の向上に寄与する元素であることから、Ti、Coの低下
による強度低下分を補うために添加する。しかし、2.0%
を越えて添加すると靭性、延性が低下することから、Si
は2.0%以下とした。望ましくは1.0%以下がよい。Mnは、
時効処理時にNiとともに金属間化合物を形成し、時効硬
化に寄与する元素であることから、Ti、Coの低下による
強度低下分を補うために添加する。しかし、3.0%を越え
て添加すると靭性、延性が低下することから、Mnは3.0%
以下とした。望ましくは2.0%以下がよい。
【0012】P、Sは、旧オーステナイト粒界に偏析した
り、介在物を形成したりすることで、マルエージング鋼
を脆化させ、疲労強度を低下させる有害な元素であるた
め、Pは0.01%以下、Sは0.005%以下とした。Niは、マル
エージング鋼の基地組織である低Cマルテンサイト組織
を形成させるため、少なくとも12%は必要であるが、22%
を超えるとオーステナイト組織が安定化し、マルテンサ
イト変態を起こしにくくなることから、Niは12〜22%と
した。
【0013】Moは、時効処理時にNi3Mo、Fe2Mo等の微細
な金属間化合物を形成し、析出強化に寄与する重要な元
素である。また、Moは窒化による表面の硬さおよび圧縮
残留応力を大きくするために有効な元素である。このた
めのMoは、3.0%より少ないと引張強度が不十分であり、
一方、7.0%より多いとFe、Moを主要元素とする粗大な金
属間化合物を形成しやすくなるため、Moは3.0〜7.0%と
した。
【0014】Coは、マトリックスのマルテンサイト組織
の安定性に大きく影響することなく、時効析出温度域で
のMoの固溶度を低下させることによって微細なMoを含む
金属間化合物の析出を促進し、時効強化に寄与する重要
な元素であり、強度面、靭性面から多く添加することが
望ましく、通常、8〜13%程度添加されている。一方でCo
は高価な元素であることから、経済的な面から低い方が
望ましい。Coによる強化分を本発明で規定する他の強化
元素に置換することによりCo量は7.0%未満に抑えること
ができる。
【0015】Tiは、本来、マルエージング鋼における重
要な強化元素の一つであるが、同時に介在物であるTiN
またはTi(C、N)を形成して、特に超高サイクル域での疲
労強度を低下させる有害元素でもあるので、疲労強度を
重視する場合には、不純物として低く抑える必要があ
る。また、Tiは表面に薄くて安定な酸化膜を形成しやす
く、この酸化膜が形成されると窒化反応を阻害するた
め、十分な窒化表面の圧縮残留応力が得られにくくな
る。窒化を容易に行うために、また窒化後の表面の圧縮
残留応力を大きくするために、Tiは有害な不純物元素で
あり、低く抑える必要がある。Tiは、0.1%より多いとTi
NまたはTi(C、N)の低減に十分な効果が得られず、また
安定な酸化膜を表面に形成しやすくなることから、Tiは
0.1%以下とした。望ましくは0.05%以下がよく、さらに
望ましくは0.01%以下がよい。
【0016】Alは、通常、脱酸のために少量添加される
が、本来、時効処理時にNiとともに金属間化合物を形成
して強化に寄与する元素である。本発明においては、T
i、Coの強化分を補うために必要に応じて添加する。2.0
%より多いとAl2O3介在物を多く形成して疲労強度を低下
させたり、表面に薄くて安定な酸化膜を形成して窒化反
応を阻害したりすることから、Alは2.0%以下とした。し
かし、強度が他の添加元素によって十分確保できる場合
やAl2O3介在物を特に低く抑えたい場合には、脱酸のた
めに必要な0.2%以下に留めても良い。
【0017】Co、MoおよびTiは、ともにマルエージング
鋼における主要な強化元素であり、またSi、Mn、Alもま
たマルエージング鋼の時効強化に寄与する元素である。
TiおよびCoを低く抑えると、TiおよびCoによる強度の低
下分をSi、Mn、Mo、Alの添加量を増すことによって補う
必要がある。しかし、その各元素の強化への寄与は同じ
ではなく、Si、Mn、Co、TiおよびAlによる強化分はMoに
よる強化分のそれぞれ3、1.8、1/3、2.6、および4倍で
ある。したがって、Si、Mn、Co、Mo、Alによる強化は3S
i+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alで整理できる。質量%
で3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値が8.0%より少
ないと強度が十分でなく、一方、13.0%を超えると強度
が高くなりすぎ、靭性低下の恐れがあることから、3Si
+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alは、8.0〜13.0%とし
た。
【0018】Nは、Tiと結合してTiNまたはTi(C、N)の介
在物を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低
下させる不純物元素である。Tiを含むマルエージング鋼
では、粗大なTiNまたはTi(C、N)の形成を防ぐため、Nを
大幅に低く抑える必要がある。しかし、Tiをほとんど含
まないマルエージング鋼ではNは通常の真空溶解で混入
する量でも悪影響が少ないことから、0.005%未満とし
た。望ましくは、0.004%以下がよい。さらに望ましく
は、0.002%以下がよい。
【0019】Oは、酸化物系介在物を形成して靭性、疲
労強度を低下させる不純物元素であるので、0.003%以下
に制限した。Crは窒化を行う場合にNとの親和力が強
く、窒化深さを浅くし、窒化硬さを高めたり、窒化表面
の圧縮残留応力を増加させたりする元素であるが、4.0%
を越えて添加してもより一層の向上効果がみられず、ま
た、時効後の強度が大きく低下することから、Crは4.0%
以下とした。望ましくは2.0%以下がよい。Bは、冷間加
工後に固溶化処理を行ったときの旧オーステナイト結晶
粒を微細化して強化に寄与するとともに表面肌荒れを抑
制する効果をもつ元素であり、必要に応じて添加する。
Bが0.01%より多いと靭性が低下することから、Bは0.01%
以下とした。
【0020】Nb、Ta、Wは、B、C、Nとともに微細な化合
物を形成することにより、冷間加工後に固溶化処理を行
ったときの旧オーステナイト結晶粒を微細化して強化に
寄与するとともに表面肌荒れを抑制する効果をもつ元素
であり、特にBとともに添加するとその効果が大きい。B
単独添加の場合に比べて、BとともにNb、Ta、Wを同時に
含むと、より高温の固溶化処理温度まで結晶粒を微細に
維持することができる。したがって結晶粒を粗大化させ
ることなく固溶化処理温度を高温化することができるた
め、固溶化処理時に析出強化元素を高温で十分固溶させ
ることによってその後の時効処理により十分時効硬化さ
せることができる。Nbは1.0%を超えて、Ta、Wは2.0%を
超えて添加すると、靭性が低下することから、Nbは1.0%
以下、Ta、Wは2.0%以下とした。望ましくは、Nbは0.5%
以下、Ta、Wは1.0%以下がよく、さらに望ましくは、N
b、Ta、Wの1種または2種以上を合計で0.5%以下とするの
がよい。
【0021】本マルエージング鋼は、10%以上の冷間加
工後、組成に応じた適当な温度、例えば800〜1000℃程
度の温度で固溶化処理することによって旧オーステナイ
ト結晶粒(ここで、マルエージング鋼の場合、結晶粒と
は旧オーステナイト結晶粒を指す)をASTM No.9以上に細
粒化することができる。本マルエージング鋼では、結晶
粒を細粒化することにより、硬さ、引張強度、疲労強
度、衝撃靭性等を安定して高めにすることができたり、
鋼帯においては表面肌荒れを軽微にすることができるな
どの効果が期待できる。
【0022】本マルエージング鋼は、窒化を阻害する可
能性のある安定な酸化膜を表面に形成するTiをほとんど
含まないため、通常のガス窒化、ガス軟窒化、浸硫窒
化、イオン窒化、塩浴窒化、等の種々の窒化処理が容易
にできる。また、上述の本発明で規定する化学組成範囲
内に調整されたマルエージング鋼を、例えば自動車エン
ジンの無段変速機用部品に適用できるように、帯状に形
成し、本マルエージング鋼帯に適当な条件で窒化処理を
行うと、窒化物をほとんど形成することなく表面に20〜
40μm程度の薄い窒化層を形成でき、表面に大きな圧縮
残留応力を付与でき、十分な疲労強度を得ることができ
る。なお、表面の圧縮残留応力は高い方が好ましいが、
そのコントロールは窒化層の厚みを適宜調整することで
可能である。
【0023】
【実施例】本発明鋼および比較鋼を真空誘導溶解炉で溶
解し、10kgのインゴットを作製し、熱間鍛造した。さら
に熱間圧延、冷間圧延によって約0.3mm厚さの鋼帯を作
製した。その後、825℃〜960℃の適当な温度で固溶化処
理を行ない、さらに490℃で時効処理を行なった後に、4
50〜470℃において窒化深さが20〜40μmとなるような条
件でガス軟窒化を行った。表1に本発明鋼No.1〜16、比
較鋼No.21〜24の化学組成を示す。また、表2に各試料
を時効した後の旧オーステナイト結晶粒度、内部硬さ、
窒化処理後の表面硬さ、および窒化処理後の表面の残留
応力を示す。ここで、表2中の残留応力の符号は、+が
引張、−が圧縮を表しており、全て圧縮残留応力であ
る。なお、表には示さないが、上記の本発明鋼および比
較鋼の断面にて、電子顕微鏡とエックス線分析装置を用
いて、微細介在物の観察、分析を行い、比較鋼No.22を
除いた全ての試験片でTiNやTi(C、N)の介在物の量が極
めて少ない量であったことを確認した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】表2より、本発明鋼No.1〜16はいずれも時
効後の内部硬さが500HV以上であり、マルエージング鋼
として十分な強度をもっており、かつ、窒化によって高
い表面硬さと大きな表面圧縮残留応力をもつことがわか
る。また、BとともにNb、Ta、W等を添加した発明鋼No.1
0〜16は、固溶化処理温度が900℃以上と高いにもかかわ
らず、旧オーステナイト結晶粒度がASTM No.9以上の細
粒を維持している。一方、Co量が高く、Mo量と3Si+1.8
Mn+Co/3+Mo+2.6T+4Alの値が低い比較鋼No.21および
3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値が低い比較鋼N
o.24は、時効後の内部硬さおよび窒化処理後の表面硬さ
が低く、強度がやや不十分である。また、Mo、Co量およ
び3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値がともに高い
比較鋼No.23およびMo、Co、Ti量が高い比較鋼No.22は、
窒化処理後の圧縮残留応力が小さく、大きな圧縮残留応
力を得ることが難しいことがわかる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明のマルエージ
ング鋼は、高強度と窒化処理後の表面の高硬度および大
きな圧縮残留応力を得ることができることから、自動車
用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのような
高疲労強度が要求される部材に使用されると、長い疲労
寿命を有することができる等、工業上顕著な効果をもつ
ことが期待される。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%にて、C:0.008%以下、Si:2.0%以
    下、Mn:3.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12
    〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.1%以下、Al:
    2.0%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜1
    3.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部は実質的にFe
    からなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエー
    ジング鋼。
  2. 【請求項2】 質量%にて、C:0.008%以下、Si:1.0%以
    下、Mn:2.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12
    〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.05%以下、A
    l:0.2%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜
    13.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部は実質的にF
    eからなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエ
    ージング鋼。
  3. 【請求項3】 質量%にて、Cr:4.0%以下を含むことを
    特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載の高疲労強度
    を有するマルエージング鋼。
  4. 【請求項4】 質量%にて、B:0.01%以下を含むことを
    特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の高疲労強度
    を有するマルエージング鋼。
  5. 【請求項5】 質量%にて、Nb:1.0%以下、Ta:2.0%以
    下、W:2.0%以下の1種以上を含むことを特徴とする請求
    項4に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
  6. 【請求項6】 質量%にて、Nb、Ta、Wの1種または2
    種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする請求項
    4に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
  7. 【請求項7】 結晶粒度がASTM No.で9以上の細粒であ
    ることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の高疲
    労強度を有するマルエージング鋼。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7の何れかに記載のマルエ
    ージング鋼の表面に窒化層が形成され、且つ表面に圧縮
    残留応力を付与したことを特徴とするマルエージング鋼
    帯。
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