JP4427772B2 - 高疲労強度を有するマルエージング鋼ならびにそれを用いたマルエージング鋼帯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのような高疲労強度が要求される部材に使用されるのに適した高疲労強度を有するマルエージング鋼及びそれを用いたマルエージング鋼帯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マルエージング鋼は、2000MPa前後の非常に高い引張強さをもつため、高強度が要求される部材、例えば、ロケット用部品、遠心分離機部品、航空機部品、自動車エンジンの無段変速機用部品、金型等種々の用途に使用されている。その代表的な組成には、18%Ni-8%Co-5%Mo-0.4%Ti-0.1%Al-bal.Feが挙げられる。
そして、マルエージング鋼は、強化元素として、Mo、Tiを適量含んでおり、時効処理を行うことによって、Ni3Mo、Ni3Ti、Fe2Mo等の金属間化合物を析出させて高強度を得ることのできる鋼である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、マルエージング鋼は、非常に高引張強度が得られる一方、疲労強度に関しては必ずしも高くない。疲労強度は一般に、硬さ、引張強さに比例して上昇する傾向があるが、硬さが約400HV以上、引張強さが約1200MPa以上の高強度材では、硬さ、引張強さが上昇しても疲労強度は上昇しなくなる。この傾向はマルエージング鋼も例外ではない。そこで高い疲労強度が得られるマルエージング鋼が望まれていた。
また、マルエージング鋼は通常、高価な元素であるCoを多量に含むことから、素材が非常に高価であり、より安価なマルエージング鋼が望まれていた。
本発明は、高疲労強度を有し、且つ安価なマルエージング鋼及びそれを用いたマルエージング鋼帯を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述したマルエージング等の従来の高強度鋼では、例えば日本機械学会論文集A64巻2536〜2541頁に開示されるように、低サイクル域で疲労破壊する場合には、疲労破壊は表面を起点としたき裂発生、伝播によって起こることが知られている。また、従来、疲労限と考えられていた10の7乗回を超える超高サイクル域においては、疲労破壊は表面を起点とせず、内部の介在物を起点として起こることが知られている。
表面起点の破壊による疲労強度は、表面に圧縮残留応力を与えることによって改善することができ、また、内部起点の破壊による疲労強度は介在物を微細化することで改善できると考えられる。
【0005】
本発明者は上述した問題を解決すべく、鋭意研究を行なった結果、表面起点の疲労強度向上には、適切な窒化処理を施し、表面に大きな圧縮残留応力与えることが有効であると判断した。
また、本発明者は従来のマルエージング鋼の内部起点の疲労破壊の起点を詳細に分析を行った結果、起点となった箇所に介在物の存在を確認し、その介在物はTiN(またはTi(C、N))であることを知見した。この結果、TiN(またはTi(C、N))の介在物を無くすことが疲労強度向上に有効であると判断した。
しかしながら、TiNを無くすには、TiまたはNを低減することが有効であるが、極端なNの低減は量産溶解設備では限界があり、また製造コストも大きく上昇する可能性がある。
【0006】
一方、Tiを大幅に低減すればTiNを低減でき、TiN量の減少、微細化が達成できると考えられる。しかし、Tiはマルエージング鋼の重要な強化元素であり、単純にTi量を低下させると、強度が大きく低下してしまう。このTiを低減したマルエージング鋼としては、特開平10-152759号に開示される靭性に優れたマルエージング鋼、特開平1-142052号に開示される継目無金属ベルト及びその製造方法が知られている。
しかし、特開平10-152759号では、Nを靭性向上のために0.005〜0.03%の範囲で、むしろ積極的に添加している。また、特開平1-142052号では、Co量が8〜15%の範囲を提案しており、既存のTiを含むマルエージング鋼と同レベルであり、素材が高価なものとなる。
【0007】
本発明者は、疲労強度向上に有害な介在物TiN低減のためにTi、Nをともに低く抑え、かつ安価にするためにCoを低くしたマルエージング鋼において、TiおよびCo低減による引張強度低下をSi、Mn、Al等の少量添加、およびこれらの元素の適量添加とするために、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値を適正範囲に限定することによって補うことができる第一の知見を見出した。また、本発明者は、引張強度、疲労強度を向上させるため、結晶粒微細化が有効であるが、Bの微量添加およびBとともにNb、Ta、W等を同時に適量添加することによって、
Si、Mn、Mo等の析出強化元素を含む低Ti、低Coマルエージング鋼の結晶粒を微細化できる第二の知見を見出した。
また、更に本発明者は、Ti量は窒化処理後の表面硬さに対してあまり影響を及ぼさないが、窒化による表面圧縮残留応力の絶対値はTi量が少ない方が大きくなる第三の知見を新規に見出し、更に本発明者は、Crを適量添加することによって窒化による表面圧縮残留応力の絶対値を増加させることができる第四の知見を見出し、本発明に到ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1発明は、質量%にて、C:0.008%以下、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.1%以下、Al:2.0%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜13.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエージング鋼である。
【0009】
第2発明は、質量%にて、C:0.008%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.05%以下、Al:0.2%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜13.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエージング鋼である。
【0010】
また、第3発明は、質量%にて、Crを4.0%以下含む上記マルエージング鋼であり、第4発明は、質量%にて、B:0.01%以下を含むことを特徴とする上記マルエージング鋼である。また、第5発明は、質量%にて、Nb:1.0%以下、Ta:2.0%以下、W:2.0%以下の1種以上を、第6発明は、質量%にて、Nb、Ta、Wの1種または2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする上記マルエージング鋼である。
また、上述したマルエージング鋼は、結晶粒度をASTM No.で9以上の細粒にすることができ、これが本発明の第七である。また、上述したマルエージング鋼を用いてなる本発明のマルエージング鋼帯は、適正な窒化処理によって表面に窒化層を形成させ、表面に圧縮残留応力を付与することができ、これが本発明の第八である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、上述の第一から第四の新規な知見に基づいてなされたものであり、以下に本発明における各元素の作用について述べる。
Cは、Ti、Moと炭化物、炭窒化物を形成して、析出すべき金属間化合物を減少させて強度を低下させるため、低く抑える必要がある。このような理由からCは0.008%以下とした。
Siは、時効処理時に析出する金属間化合物を微細化したり、Niとともに金属間化合物を形成したりすることで強度の向上に寄与する元素であることから、Ti、Coの低下による強度低下分を補うために添加する。しかし、2.0%を越えて添加すると靭性、延性が低下することから、Siは2.0%以下とした。望ましくは1.0%以下がよい。
Mnは、時効処理時にNiとともに金属間化合物を形成し、時効硬化に寄与する元素であることから、Ti、Coの低下による強度低下分を補うために添加する。しかし、3.0%を越えて添加すると靭性、延性が低下することから、Mnは3.0%以下とした。望ましくは2.0%以下がよい。
【0012】
P、Sは、旧オーステナイト粒界に偏析したり、介在物を形成したりすることで、マルエージング鋼を脆化させ、疲労強度を低下させる有害な元素であるため、Pは0.01%以下、Sは0.005%以下とした。
Niは、マルエージング鋼の基地組織である低Cマルテンサイト組織を形成させるため、少なくとも12%は必要であるが、22%を超えるとオーステナイト組織が安定化し、マルテンサイト変態を起こしにくくなることから、Niは12〜22%とした。
【0013】
Moは、時効処理時にNi3Mo、Fe2Mo等の微細な金属間化合物を形成し、析出強化に寄与する重要な元素である。また、Moは窒化による表面の硬さおよび圧縮残留応力を大きくするために有効な元素である。このためのMoは、3.0%より少ないと引張強度が不十分であり、一方、7.0%より多いとFe、Moを主要元素とする粗大な金属間化合物を形成しやすくなるため、Moは3.0〜7.0%とした。
【0014】
Coは、マトリックスのマルテンサイト組織の安定性に大きく影響することなく、時効析出温度域でのMoの固溶度を低下させることによって微細なMoを含む金属間化合物の析出を促進し、時効強化に寄与する重要な元素であり、強度面、靭性面から多く添加することが望ましく、通常、8〜13%程度添加されている。一方でCoは高価な元素であることから、経済的な面から低い方が望ましい。Coによる強化分を本発明で規定する他の強化元素に置換することによりCo量は7.0%未満に抑えることができる。
【0015】
Tiは、本来、マルエージング鋼における重要な強化元素の一つであるが、同時に介在物であるTiNまたはTi(C、N)を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低下させる有害元素でもあるので、疲労強度を重視する場合には、不純物として低く抑える必要がある。
また、Tiは表面に薄くて安定な酸化膜を形成しやすく、この酸化膜が形成されると窒化反応を阻害するため、十分な窒化表面の圧縮残留応力が得られにくくなる。窒化を容易に行うために、また窒化後の表面の圧縮残留応力を大きくするために、Tiは有害な不純物元素であり、低く抑える必要がある。
Tiは、0.1%より多いとTiNまたはTi(C、N)の低減に十分な効果が得られず、また安定な酸化膜を表面に形成しやすくなることから、Tiは0.1%以下とした。望ましくは0.05%以下がよく、さらに望ましくは0.01%以下がよい。
【0016】
Alは、通常、脱酸のために少量添加されるが、本来、時効処理時にNiとともに金属間化合物を形成して強化に寄与する元素である。本発明においては、Ti、Coの強化分を補うために必要に応じて添加する。2.0%より多いとAl2O3介在物を多く形成して疲労強度を低下させたり、表面に薄くて安定な酸化膜を形成して窒化反応を阻害したりすることから、Alは2.0%以下とした。しかし、強度が他の添加元素によって十分確保できる場合や
Al2O3介在物を特に低く抑えたい場合には、脱酸のために必要な0.2%以下に留めても良い。
【0017】
Co、MoおよびTiは、ともにマルエージング鋼における主要な強化元素であり、またSi、Mn、Alもまたマルエージング鋼の時効強化に寄与する元素である。TiおよびCoを低く抑えると、TiおよびCoによる強度の低下分をSi、Mn、Mo、Alの添加量を増すことによって補う必要がある。しかし、その各元素の強化への寄与は同じではなく、Si、Mn、Co、TiおよびAlによる強化分はMoによる強化分のそれぞれ3、1.8、1/3、2.6、および4倍である。
したがって、Si、Mn、Co、Mo、Alによる強化は3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alで整理できる。質量%で3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値が8.0%より少ないと強度が十分でなく、一方、13.0%を超えると強度が高くなりすぎ、靭性低下の恐れがあることから、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alは、8.0〜13.0%とした。
【0018】
Nは、Tiと結合してTiNまたはTi(C、N)の介在物を形成して、特に超高サイクル域での疲労強度を低下させる不純物元素である。Tiを含むマルエージング鋼では、粗大なTiNまたはTi(C、N)の形成を防ぐため、Nを大幅に低く抑える必要がある。しかし、Tiをほとんど含まないマルエージング鋼ではNは通常の真空溶解で混入する量でも悪影響が少ないことから、0.005%未満とした。望ましくは、0.004%以下がよい。さらに望ましくは、0.002%以下がよい。
【0019】
Oは、酸化物系介在物を形成して靭性、疲労強度を低下させる不純物元素であるので、0.003%以下に制限した。
Crは窒化を行う場合にNとの親和力が強く、窒化深さを浅くし、窒化硬さを高めたり、窒化表面の圧縮残留応力を増加させたりする元素であるが、4.0%を越えて添加してもより一層の向上効果がみられず、また、時効後の強度が大きく低下することから、Crは4.0%以下とした。望ましくは2.0%以下がよい。
Bは、冷間加工後に固溶化処理を行ったときの旧オーステナイト結晶粒を微細化して強化に寄与するとともに表面肌荒れを抑制する効果をもつ元素であり、必要に応じて添加する。Bが0.01%より多いと靭性が低下することから、Bは0.01%以下とした。
【0020】
Nb、Ta、Wは、B、C、Nとともに微細な化合物を形成することにより、冷間加工後に固溶化処理を行ったときの旧オーステナイト結晶粒を微細化して強化に寄与するとともに表面肌荒れを抑制する効果をもつ元素であり、特にBとともに添加するとその効果が大きい。
B単独添加の場合に比べて、BとともにNb、Ta、Wを同時に含むと、より高温の固溶化処理温度まで結晶粒を微細に維持することができる。したがって結晶粒を粗大化させることなく固溶化処理温度を高温化することができるため、固溶化処理時に析出強化元素を高温で十分固溶させることによってその後の時効処理により十分時効硬化させることができる。
Nbは1.0%を超えて、Ta、Wは2.0%を超えて添加すると、靭性が低下することから、Nbは1.0%以下、Ta、Wは2.0%以下とした。望ましくは、Nbは0.5%以下、Ta、Wは1.0%以下がよく、さらに望ましくは、Nb、Ta、Wの1種または2種以上を合計で0.5%以下とするのがよい。
【0021】
本マルエージング鋼は、10%以上の冷間加工後、組成に応じた適当な温度、例えば800〜1000℃程度の温度で固溶化処理することによって旧オーステナイト結晶粒(ここで、マルエージング鋼の場合、結晶粒とは旧オーステナイト結晶粒を指す)をASTM No.9以上に細粒化することができる。本マルエージング鋼では、結晶粒を細粒化することにより、硬さ、引張強度、疲労強度、衝撃靭性等を安定して高めにすることができたり、鋼帯においては表面肌荒れを軽微にすることができるなどの効果が期待できる。
【0022】
本マルエージング鋼は、窒化を阻害する可能性のある安定な酸化膜を表面に形成するTiをほとんど含まないため、通常のガス窒化、ガス軟窒化、浸硫窒化、イオン窒化、塩浴窒化、等の種々の窒化処理が容易にできる。
また、上述の本発明で規定する化学組成範囲内に調整されたマルエージング鋼を、例えば自動車エンジンの無段変速機用部品に適用できるように、帯状に形成し、本マルエージング鋼帯に適当な条件で窒化処理を行うと、窒化物をほとんど形成することなく表面に20〜40μm程度の薄い窒化層を形成でき、表面に大きな圧縮残留応力を付与でき、十分な疲労強度を得ることができる。
なお、表面の圧縮残留応力は高い方が好ましいが、そのコントロールは窒化層の厚みを適宜調整することで可能である。
【0023】
【実施例】
本発明鋼および比較鋼を真空誘導溶解炉で溶解し、10kgのインゴットを作製し、熱間鍛造した。さらに熱間圧延、冷間圧延によって約0.3mm厚さの鋼帯を作製した。その後、825℃〜960℃の適当な温度で固溶化処理を行ない、さらに490℃で時効処理を行なった後に、450〜470℃において窒化深さが20〜40μmとなるような条件でガス軟窒化を行った。
表1に本発明鋼No.1〜16、比較鋼No.21〜24の化学組成を示す。また、表2に各試料を時効した後の旧オーステナイト結晶粒度、内部硬さ、窒化処理後の表面硬さ、および窒化処理後の表面の残留応力を示す。ここで、表2中の残留応力の符号は、+が引張、−が圧縮を表しており、全て圧縮残留応力である。
なお、表には示さないが、上記の本発明鋼および比較鋼の断面にて、電子顕微鏡とエックス線分析装置を用いて、微細介在物の観察、分析を行い、比較鋼No.22を除いた全ての試験片でTiNやTi(C、N)の介在物の量が極めて少ない量であったことを確認した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表2より、本発明鋼No.1〜16はいずれも時効後の内部硬さが500HV以上であり、マルエージング鋼として十分な強度をもっており、かつ、窒化によって高い表面硬さと大きな表面圧縮残留応力をもつことがわかる。また、BとともにNb、Ta、W等を添加した発明鋼No.10〜16は、固溶化処理温度が900℃以上と高いにもかかわらず、旧オーステナイト結晶粒度がASTM No.9以上の細粒を維持している。一方、Co量が高く、Mo量と3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6T+4Alの値が低い比較鋼No.21および3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値が低い比較鋼No.24は、時効後の内部硬さおよび窒化処理後の表面硬さが低く、強度がやや不十分である。
また、Mo、Co量および3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Alの値がともに高い比較鋼No.23およびMo、Co、Ti量が高い比較鋼No.22は、窒化処理後の圧縮残留応力が小さく、大きな圧縮残留応力を得ることが難しいことがわかる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のマルエージング鋼は、高強度と窒化処理後の表面の高硬度および大きな圧縮残留応力を得ることができることから、自動車用無段変速機等に使用される動力伝達用ベルトのような高疲労強度が要求される部材に使用されると、長い疲労寿命を有することができる等、工業上顕著な効果をもつことが期待される。
Claims (8)
- 質量%にて、C:0.008%以下、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.1%以下、Al:2.0%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜13.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 質量%にて、C:0.008%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ni:12〜22%、Mo:3.0〜7.0%、Co:7.0%未満、Ti:0.05%以下、Al:0.2%以下、3Si+1.8Mn+Co/3+Mo+2.6Ti+4Al:8.0〜13.0%、N:0.005%未満、O:0.003%以下、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 質量%にて、Cr:4.0%以下を含むことを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 質量%にて、B:0.01%以下を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 質量%にて、Nb:1.0%以下、Ta:2.0%以下、W:2.0%以下の1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 質量%にて、Nb、Ta、Wの1種または2種以上を合計で0.5%以下含むことを特徴とする請求項4に記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 結晶粒度がASTM No.で9以上の細粒であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の高疲労強度を有するマルエージング鋼。
- 請求項1乃至7の何れかに記載のマルエージング鋼の表面に窒化層が形成され、且つ表面に圧縮残留応力を付与したことを特徴とするマルエージング鋼帯。
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