JP2008184426A - リン酸化澱粉糖を含んでなる細胞性免疫増強剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】アレルゲンの問題がなく、優れた細胞性免疫増強作用を有するリン酸化誘導体を含有する医薬組成物、動物薬、食品または飼料の提供。
【解決手段】細胞性免疫増強作用を有するリン酸化誘導体としてリン酸化澱粉糖、特に結合リン酸含量が0.5質量%以上である細胞性免疫増強剤、該誘導体を含有する医薬、動物薬、食品または飼料。該リン酸化澱粉糖を含む組成物は、細胞性免疫増強剤、マクロファージ活性化剤、樹状細胞活性化剤、ナチュラルキラー細胞活性化剤及びサイトカイン(特に、IL−12及び/又はIFN−γ)の発現増強剤として有用である。
【選択図】図1
【解決手段】細胞性免疫増強作用を有するリン酸化誘導体としてリン酸化澱粉糖、特に結合リン酸含量が0.5質量%以上である細胞性免疫増強剤、該誘導体を含有する医薬、動物薬、食品または飼料。該リン酸化澱粉糖を含む組成物は、細胞性免疫増強剤、マクロファージ活性化剤、樹状細胞活性化剤、ナチュラルキラー細胞活性化剤及びサイトカイン(特に、IL−12及び/又はIFN−γ)の発現増強剤として有用である。
【選択図】図1
Description
本発明は、リン酸化澱粉糖を含んでなる細胞性免疫増強剤に関する。
大谷らは、特定のリン酸化糖が免疫増強効果を有することを見出し、特許出願をしている(特許文献1、特許文献2)。特許文献1では、澱粉を化学的にリン酸化して得られるリン酸化澱粉に培養細胞系において免疫グロブリン(IgA)の産生を増強する作用のあることを見出している。また、澱粉を低分子化して得られたデキストリンをリン酸化して生じるリン酸化デキストリンにも培養細胞系でIgAの産生を増強する作用のあることを見出している。更に、特許文献2では、前記のリン酸化デキストリンを含む飼料で飼育したマウスにおいて、糞便及び腸管内のIgAの産生が増加することを見出し、リン酸化デキストリンの粘膜免疫賦活作用を開示している。
特許文献1及び2では、リン酸化糖の製法として、澱粉を酵素で低分子化して得られるデキストリンをリン酸化する方法が採用されている。特許文献1及び2では、焙焼条件として、140℃で24時間の加熱条件が提示されており、このような長時間の反応は実験室では可能であるが、工業生産では生産性の関係から、焙焼時間を30分〜4時間程度に収める必要性がある。従って、工業的なリン酸化反応の条件は更に高い温度で焙焼されており、140〜200℃が用いられる。特許文献1の発明のように、結合するリン酸基の多いリン酸化デキストリン(4.5有機リン酸mol/デキストリンmol=結合リン含量4.4質量%)を得るには、工業的には170℃前後の温度が必要となる。このような温度で焙焼すると、デキストリンとリン酸ナトリウムの混合物は激しく着色し、濃褐色の粉体となる。
以上の問題点を改善し、着色の問題がなく、かつ工業的により大量生産できるリン酸化糖アルコール類が優れた免疫増強作用を有することを見出し特許出願している(特許文献3)。
しかしながら、特許文献1〜3はいずれも獲得液性免疫系におけるIgAの産生が増加することによる粘膜免疫賦活作用に関するものであり、細胞性免疫系における免疫増強作用については言及しておらず、示唆する記載もない。
液性免疫増強作用のみでは、感染症に対する抵抗力を増進させることはできるが、抗腫瘍効果は期待できない。
細胞性免疫増強剤としては、特許文献4には、卵白を含むマクロファージ及び好中球活性化剤が抗腫瘍作用を有することが記載されており、特許文献5には、flt3−リガンドを含む、患者の樹状細胞数を増加させるための組成物が抗腫瘍作用を有することが記載されており、特許文献6には、乳酸菌由来リン酸化多糖類を含むナチュラルキラー(NK)細胞活性化剤が癌の予防、進行の防止に寄与することが記載されている。
しかしながら、リン酸化澱粉糖が細胞性免疫増強作用を有することは知られていない。
本発明は、リン酸化澱粉糖を含む細胞性免疫増強剤、マクロファージ活性化剤、樹状細胞活性化剤、ナチュラルキラー細胞活性化剤及びサイトカイン発現増強剤を提供することを目的とする。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなる細胞性免疫増強剤。
(2)リン酸化澱粉糖の結合リン含量が0.5質量%以上である前記(1)に記載の細胞性免疫増強剤。
(3)医薬又は動物薬として用いられる前記(1)又は(2)に記載の細胞性免疫増強剤。
(4)食品又は飼料として用いられる前記(1)又は(2)に記載の細胞性免疫増強剤。
(5)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるマクロファージ活性化剤。
(6)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなる樹状細胞活性化剤。
(7)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるナチュラルキラー細胞活性化剤。
(8)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるサイトカイン発現増強剤。
(9)サイトカインがIL−12及び/又はIFN−γである前記(8)に記載のサイトカイン発現増強剤。
(1)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなる細胞性免疫増強剤。
(2)リン酸化澱粉糖の結合リン含量が0.5質量%以上である前記(1)に記載の細胞性免疫増強剤。
(3)医薬又は動物薬として用いられる前記(1)又は(2)に記載の細胞性免疫増強剤。
(4)食品又は飼料として用いられる前記(1)又は(2)に記載の細胞性免疫増強剤。
(5)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるマクロファージ活性化剤。
(6)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなる樹状細胞活性化剤。
(7)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるナチュラルキラー細胞活性化剤。
(8)リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるサイトカイン発現増強剤。
(9)サイトカインがIL−12及び/又はIFN−γである前記(8)に記載のサイトカイン発現増強剤。
本発明の細胞性免疫増強剤はマクロファージ活性化作用、樹状細胞活性化作用、ナチュラルキラー細胞活性化作用及びサイトカイン発現増強作用を有し、感染症に対する抵抗力を増進させるだけでなく、癌の予防、進行の防止に寄与すると考えられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「澱粉糖」とは、澱粉を酵素又は酸を用いて分解、酵素転移、酵素結合、あるいはこれらを組み合わせて得られる単糖(ぶどう糖)、オリゴ糖、デキストリン及びそれらの還元物(糖アルコール類)の総称であり、これらの澱粉糖のリン酸化物を「リン酸化澱粉糖」という。
本明細書において、「澱粉糖」とは、澱粉を酵素又は酸を用いて分解、酵素転移、酵素結合、あるいはこれらを組み合わせて得られる単糖(ぶどう糖)、オリゴ糖、デキストリン及びそれらの還元物(糖アルコール類)の総称であり、これらの澱粉糖のリン酸化物を「リン酸化澱粉糖」という。
本明細書において、構成するぶどう糖の重合度が11以上の糖類をデキストリンと称し、構成するぶどう糖の重合度が10以下の糖類をオリゴ糖と称する。
本発明に用いるリン酸化澱粉糖を含む組成物(以下「リン酸化澱粉糖組成物」という。)としては、リン酸化澱粉糖を含むものであれば、その純度及び製法は問われない。原料としては、通常、糖質の中で最も安価で大量に消費されている澱粉又は糖アルコール類を用い、またリン酸化の技術も広く一般に利用されている焙焼法を用いる。原料が澱粉の場合、得られたリン酸化澱粉を低分子化するに必要な酵素としては、通常、澱粉糖化工業で食品用として最も広く大量に使用されているα−アミラーゼが使用される。すなわち、得られるリン酸化澱粉糖組成物は他のリン酸化糖では得られないコスト面での優位性を持っている。
また糖アルコール類を原料とした場合、得られるリン酸化糖アルコール類としては、糖アルコール類の少なくとも1つの水酸基がリン酸化された構造を有するものを含有するものであれば、その純度及び製法は問われない。また前記焙焼法で行っても、着色の問題がなく、かつ工業的により大量生産できる。
本発明に用いるリン酸化澱粉糖組成物の一般的な製造方法においては先ず澱粉をリン酸化する。ここで原料として使用される澱粉は特に限定されず、一般に利用されている植物由来の澱粉だけでなく、いずれの起源の澱粉でも使用できる。例えばコーンスターチ、ハイアミロース・コーンスターチ、ワキシー・コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等が用いられる。また、澱粉を物理的に一次処理した澱粉、例えば、ドラムドライヤーやエクストルーダー処理した糊化澱粉、又は酸やアルカリで化学的に処理して得られる澱粉も原料として使用できる。
リン酸化に使用されるリン酸化試薬としては、リン酸、リン酸のナトリウム塩である第一リン酸ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、第二リン酸ナトリウム(リン酸水素二ナトリウム)、第三リン酸ナトリウム(リン酸三ナトリウム)、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、更にリン酸のカリウム塩である第一リン酸カリウム(リン酸二水素カリウム)、第二リン酸カリウム(リン酸水素二カリウム)、第三リン酸カリウム(リン酸三カリウム)、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸カリウム、又、オキシ塩化リンなどが挙げられる。
リン酸化試薬は、澱粉に対して、通常、リンとして0.2質量%以上の添加量で添加することによりリン酸含浸澱粉(澱粉とリン酸化試薬の混合物)を調製することができる。リン酸化試薬の添加は、水分を含んだ澱粉スラリーに粉末のリン酸化試薬を添加する方法や澱粉の乾粉に液体のリン酸化試薬を添加する方法を適宜選択することができる。生じたリン酸含浸澱粉のpHは通常4〜10に、好ましくは5〜7に調整される。pHを調整するために澱粉とリン酸化試薬との混合液に酸やアルカリを添加することができる。酸としては、当然リン酸を用いることができ、リン酸以外に塩酸、硫酸、亜硫酸などを用いてもよい。アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができる。
澱粉の乾粉と粉末のリン酸化試薬を混合すれば、乾燥状態のままで加熱焙焼することもできるが、少なくとも澱粉か、リン酸化試薬のいずれかを、液体又は水を含んだ流動体の状態で混合することが好ましい。混合直後のリン酸含浸澱粉は、そのままでは流動性が極めて悪く操業困難であり、流動性を改善するため乾燥が必要となる。リン酸含浸澱粉の水分を15質量%未満にすれば、流動性がかなり改善され、更に10質量%未満にまで乾燥されると操業が容易となる場合が多い。リン酸含浸澱粉の乾燥は、澱粉の乾燥装置として汎用されているフラッシュ・ドライヤーで水分を容易に10質量%未満に減らすことができる。しかしながら、高い結合リン含量を得るためリン酸化試薬を大量に添加すると、リン酸含浸澱粉の流動性が更に悪くなる場合があり、フラッシュ・ドライヤーによる乾燥が困難となる。このような場合には、特開平11−255803号公報に開示されているドラムドライヤーやエクストルーダーによる糊化・乾燥法が流動性に優れた乾燥状態のリン酸含浸澱粉を生成させるのに適した方法である。
澱粉とリン酸化試薬との混合については、多くの場合、前述のように、澱粉スラリーにリン酸化試薬を添加する方法、あるいはリン酸化試薬溶液に澱粉を分散させる方法が取られ、得られたリン酸含浸澱粉を濾過機で脱水回収する方法が採用されている。また所定の攪拌・混合能力を備えた混合機を用いて、例えばタービュライザ、フロージェットミキサーやピンミキサーなどの混合機で乾燥された澱粉粉末にリン酸化試薬溶液を混合したり、あるいは、澱粉スラリーを濾過機にかけて得られる澱粉の脱水ケーキにリン酸化試薬の粉末を加えて、リボンブレンダーやレディゲミキサーのような所定の攪拌・混合能力を備えた混合機で混合してから乾燥しても、リン酸含浸澱粉を得ることができる。
水分15質量%未満に乾燥されたリン酸含浸澱粉は、焙焼装置で加熱処理される。加熱処理の条件としては、リン酸含浸澱粉を焙焼装置に投入して熱風で流動加熱し、昇温して品温を通常100〜250℃、好ましくは150〜190℃の一定温度に維持した後、冷却してから製品を排出する。昇温又は冷却・排出に要する時間は、通常10〜60分程度であるが、装置の大きさや原料の搬送能力によって大きく異なり、又リン酸含浸澱粉の流動性が低下すれば長時間を要することとなる。一定温度に維持する加熱時間は通常5分〜4時間、好ましくは30〜180分である。
リン酸化反応の焙焼は工業的な焙焼設備では、一般にリン酸化率の高いリン酸化澱粉を製造することは困難である。結合リンの多いリン酸化澱粉を得ようとすれば、リン酸化反応が脱水縮合反応であるため、リン酸化により発生する水分子も多く、この水分子がリン酸化反応を妨げるだけでなく、製品の着色を著しく進める要因となる。そこで流動層の熱風を系外に排出することにより、層内のリン酸含浸澱粉の水分減少が速やかとなり、リン酸化が促進される。加熱焙焼工程で脱水縮合反応により発生する水分子を系外に取り出す方法により、70%以上と高いリン酸化率のリン酸化澱粉が得られ、また結合リンが0.5質量%以上と結合リンの多いリン酸化澱粉においても70%以上の高いリン酸化率が得られる。このような方法によれば、高いリン酸化率が得られるだけでなく、従来の製造方法に比べて、脱塩の精製負荷が少なく、着色度の低いリン酸化澱粉を製造することが可能となる。
得られたリン酸化澱粉は、次に酵素で分解して低分子化される。本発明に用いるリン酸化澱粉糖組成物は、好ましくは、前述の方法で得られたリン酸化澱粉をα−アミラーゼで分解して低分子化することにより得られ、リン酸基の結合したオリゴ糖やデキストリンのリン酸化糖と、リン酸基を含まないぶどう糖、オリゴ糖やデキストリンで構成されている。低分子化により粘度が低下するため、医薬、動物薬、食品、飼料などへの利用用途が拡大される。分解に用いる酵素は澱粉をランダムに切断するα−アミラーゼであれば全て用いることができ、当然2種以上の酵素を混合して用いることもできる。
α−アミラーゼとしては、工業的な澱粉の分解(以下「液化」ともいう)に多用されている耐熱性液化型α−アミラーゼの他に、中温性液化型α−アミラーゼ、糖化型α−アミラーゼ、糖転移酵素のCGTase(Cyclomaltodextrin glucanotransferase)やTVA(Thermoactinomyces vulgarisのα−アミラーゼ)などが使用できる。しかし、工業生産に適応した酵素としては耐熱性液化型α−アミラーゼが分解能力及び澱粉の溶解力において優れている。リン酸化澱粉にα−アミラーゼを作用させる条件は、酵素の種類により異なるが、通常用いられている酵素の作用温度条件を採用することができる。用いる酵素は80〜110℃で有効に作用する耐熱性液化型α−アミラーゼが好ましく、いずれの起源のものでも使用できる。具体的には、細菌起源の高耐熱性α−アミラーゼであるターマミル(ノボザイムズ ジャパン製)、ネオスピターゼPG2(ナガセ生化学工業製)、クライスターゼT(大和化成製)などの市販酵素を用いることができる。
リン酸化澱粉は10〜30質量%濃度のスラリーとし、水酸化カルシウム及び/又は水酸化ナトリウムを加えて、通常pH4〜7に調整する。耐熱性α−アミラーゼは安定剤として50ppm以上のカルシウムイオンを必要とする。酵素添加量は使用する酵素によって大きく異なるが、通常0.0001〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.2質量%(対固形分)である。反応のpHも使用する酵素によって異なるが、通常pH4〜7である。工業生産における澱粉分解反応(液化反応)では、澱粉の老化を防ぐため、α−アミラーゼ添加後の反応開始温度を100〜110℃に高めて2〜15分、クッカー処理した後、90〜100℃の高温で30分〜5時間程度酵素分解を進めて行われている。
更に本発明者らは、結合リンの多いリン酸澱粉(結合リン含量0.5質量%以上)を原料とするリン酸化澱粉糖組成物の製造法を検討し、α−アミラーゼによるリン酸化澱粉の分解を効果的に進め、リン酸化澱粉の分散性を改善するためのジェットクッカー処理と酵素二段添加処理法を開発している。
この方法は、α−アミラーゼを二段階に分けて添加する酵素処理とジェットクッカー処理との組み合わせによりリン酸化澱粉を低分子化する方法であって、原料リン酸化澱粉の水分散液に耐熱性α−アミラーゼ、好ましくは耐熱性液化型α−アミラーゼを添加して最初の酵素分解処理を行い酵素分解処理液を得る工程、該酵素分解処理液をジェットクッカーで100〜130℃の温度下、加圧条件で処理して分散処理液を得る工程、及び該ジェットクッカーによる分散処理液に更に耐熱性α−アミラーゼを添加し、100℃未満の温度で30分〜15時間追加の酵素分解処理を行って第二の酵素分解処理液を得る工程を有することを特徴とするものである。
前記の酵素二段添加処理によって得られたリン酸化澱粉の酵素処理液には、リン酸化糖の他にリン酸の結合していないオリゴ糖やぶどう糖等の糖類、リン酸等の塩類、未反応残渣等が含まれているので、必要に応じて精製される。精製方法としては、不溶物の濾過除去、脱色、脱塩などがあり、順序は特に限定されない。具体的には、酵素反応終了液に粉末活性炭を固形分当たり0.5〜20質量%、好ましくは3〜10質量%添加し、50〜60℃で1〜2時間処理する。処理pHは酸性側の方が脱色効率がよいため、pH2〜5が望ましい。活性炭処理液はセラミックフィルター(ポアサイズ0.2μm)等で濾過することにより、不溶性残渣と活性炭を除き透明な液を得ることができる。
脱色して得られるリン酸化糖液には塩分、遊離の無機リンが存在する。濾過後の液をpH調整後、除菌濾過、乾燥することでも製品になりうるが、遊離の無機リンを減らしたい場合の脱塩の方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法が糖類の精製法として広く採用されているが、膜処理や電気透析なども利用できる。分子量が比較的大きいリン酸化デキストリンの精製には、膜処理が有効であり、NTR−7450(日東電工社製)のようなNF膜で遊離の無機リンを減少させることができる。脱塩して得られた糖液を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等でpH6〜7に調整後、除菌フィルター(ポアサイズ0.2〜0.45μm)で濾過し、スプレードライヤーや凍結乾燥機で乾燥することにより無機リンの少ないリン酸化澱粉糖組成物の粉末を得ることができる。
本発明において、「細胞免疫増強剤」とは、細胞性免疫増強活性を有する剤のことであり、その用途は医薬、動物薬に限らず、食品や飼料等に配合され、利用されるものである。また、本発明において、「細胞性免疫増強活性を有する」とは、ヒトを含む動物において、細胞性免疫に関与する脾臓細胞のマクロファージ、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞(以下「NK細胞」という。)の細胞数の増加及びそれら細胞の重要な一部のサイトカインの発現増強作用を有していることをいう。
本発明の細胞性免疫増強剤は、医薬、動物薬等の用途の他、食品又は飼料に配合して用いることができる。医薬として用いる場合には、リン酸化糖類は水溶性に富むことから、投与経路に応じて適当な剤形とされ得る。具体的には、主として静注、筋注等の注射剤、又はカプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、糖衣錠、トローチ錠、チュアブル錠等の経口剤、直腸投与剤、坐剤等のいずれかの製剤形態に調製することができる。更に、細胞性免疫増強剤は必要に応じて、液剤、懸濁剤、液剤封入カプセル剤等の形態であってもよい。
これらの製剤は、通常用いられる賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等の薬学的に許容される製剤用添加剤を、必要に応じて配合し、常法により製造することができる。すなわち、本発明の細胞性免疫増強剤は、薬学的に許容される製剤用添加剤を更に含むものであってもよい。
使用可能な前記添加剤としては、乳糖、果糖、ぶどう糖、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
食品として用いる場合には、本発明の細胞性免疫増強剤は、広く加工食品や飲料、乳製品、菓子類などに用いることができる。食品の形態で提供される本発明の細胞性免疫増強剤は、体力的に劣る幼年者や老年者、病中病後の患者等の栄養補給や健康増進等の他、癌の予防、進行の防止を図る上で有利である。
飼料として用いる場合には、本発明の細胞性免疫増強剤は、養豚用飼料、養牛用飼料、養鶏用飼料等の家畜飼料、ペットフード、各種配合飼料などの形で提供することができる。細胞性免疫増強剤を投与する方法としては、飼料等に配合して経口的に摂取させる方法が一般的である。更に、本発明に用いるリン酸化澱粉糖は水溶性であり、水などの飲料に加えて摂取する方法も選択できる。
本発明の細胞性免疫増強剤は、動物に摂取させることによって細胞性の免疫力を増強し、感染症に対する抵抗力を増進させて、動物の成長阻害要因を除去し、成長を促進させることが期待される。本発明でいう感染症の種類としては制限がなく、病原体である微生物が動物の体表もしくは体内に侵入し定着、増殖する病気の全てをいう。
家畜等の感染症は、病原体、宿主、環境などの種々の因子が相互に関係して起こるとされている。感染症を予防して家畜等の成育の増進を図るため、飼料に免疫増強物質を添加することは従来から行われており、各種のアミノ酸や牛乳カゼインホスホペプチド(CPP)などが有効な物質であることが知られている。しかし、蛋白性の物質はアレルゲンとなる可能性があり、より安価で安全性に優れた免疫増強物質が望まれている。この点、本発明に用いるリン酸化澱粉糖は、安価な原料である澱粉をリン酸化し、分解して得られる糖質であり、アレルゲンとはなり難く、安全性に優れた物質であり、CPPと同様にカルシウムなどの可溶化を促進する物質である。
本発明の細胞性免疫増強剤は、細胞性の免疫力を増強するものであり、感染症に対する抵抗力を増進させるだけでなく、癌の予防、進行の防止に寄与すると考えられる。
また、本発明の対象とされる動物はヒトや他の家畜、例えば豚、牛、馬、羊、鶏なども含まれる。更に、犬、猫などのようなペット動物等も本発明の対象に含まれる。
本発明の細胞性免疫増強剤を配合する飼料等については、特に限定されたものは必要なく、動物の種類やその成長に見合って適切なものを選択すればよい。投与量についても、動物の種類、年齢、体重、性別、給餌する環境等を考慮して適宜決定されるが、一例として、一般に使用されている豚用飼料100質量部に対して0.01〜5質量部程度、好ましくは0.02〜1質量部程度を均一に混合する。選定された飼料は一定期間、好ましくは出荷時まで継続して動物に投与することが好ましい。しかしながら、投与の方法として連続投与だけでなく、間欠投与も選択可能である。
本発明の細胞性免疫増強剤は、脾臓細胞のマクロファージ、樹状細胞及びNK細胞の増加、またそれら細胞の一部のサイトカイン(例えば、IL−12、IFN−γ)の発現増強作用などの免疫賦活作用に優れている。
したがって、本発明は、マクロファージ活性化剤、樹状細胞活性化剤、ナチュラルキラー細胞活性化剤及びサイトカイン発現増強剤をも提供するものである。
これらの使用目的としては、前述した感染症に対する抵抗力の増進、癌の予防、進行の防止他、C型慢性肝炎の治療、エイズのようなIL−12産生能の低下がみられる免疫不全患者の治療等が挙げられる。
本発明の細胞性免疫増強剤は、細胞性の免疫機能が低下したヒトや動物に対して、免疫増強作用を付与するための食品素材、医薬品素材、あるいは飼料素材として有用である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例において、(a)リン酸化澱粉の結合リンの測定、(b)リン酸化率の算出、(c)リン酸化澱粉糖の結合リン測定及び(d)リン酸化澱粉糖の平均重合度の算出は以下の方法で行った。なお、別に断らない限りリン含量の質量%は乾物質量に対する%として表示した。
実施例において、(a)リン酸化澱粉の結合リンの測定、(b)リン酸化率の算出、(c)リン酸化澱粉糖の結合リン測定及び(d)リン酸化澱粉糖の平均重合度の算出は以下の方法で行った。なお、別に断らない限りリン含量の質量%は乾物質量に対する%として表示した。
(a)リン酸化澱粉の結合リン測定
リン含量は澱粉・関連糖質実験法(学会出版センター、中村道徳ら)に記載の方法に準じて測定した。すなわち、リン酸化澱粉のリン含量を測定するため、試料にα−アミラーゼ(ターマミル120L,ノボザイムズ ジャパン製)0.1質量%(対乾燥試料)を加えて95℃、10分間加熱分解して均一な溶液を調製した。直ちに水道水で冷却し、塩酸を加えてpHを2に調整してからFiske-Subbarow法で無機リンを測定した。なお、これらの酵素分解反応では結合リンが無機リンとして遊離しないことを確認している。また、比色分析の発色時に濁りが認められるものは、遠心分離(3000rpm,3分間)して上清の吸光度を測定した。全リン含量は無機リン測定時にpH2に調整した試料を湿式灰化処理して無機リンとしてから、同様にFiske-Subbarow法で測定した。リン酸化澱粉の結合リン含量(質量%)は下記の式で算出した。
結合リン含量(質量%)=全リン含量(質量%)−無機リン含量(質量%)
リン含量は澱粉・関連糖質実験法(学会出版センター、中村道徳ら)に記載の方法に準じて測定した。すなわち、リン酸化澱粉のリン含量を測定するため、試料にα−アミラーゼ(ターマミル120L,ノボザイムズ ジャパン製)0.1質量%(対乾燥試料)を加えて95℃、10分間加熱分解して均一な溶液を調製した。直ちに水道水で冷却し、塩酸を加えてpHを2に調整してからFiske-Subbarow法で無機リンを測定した。なお、これらの酵素分解反応では結合リンが無機リンとして遊離しないことを確認している。また、比色分析の発色時に濁りが認められるものは、遠心分離(3000rpm,3分間)して上清の吸光度を測定した。全リン含量は無機リン測定時にpH2に調整した試料を湿式灰化処理して無機リンとしてから、同様にFiske-Subbarow法で測定した。リン酸化澱粉の結合リン含量(質量%)は下記の式で算出した。
結合リン含量(質量%)=全リン含量(質量%)−無機リン含量(質量%)
(b)リン酸化澱粉のリン酸化率の算出
リン酸化澱粉のリン酸化率は下記の式で算出した。
リン酸化率(%)={結合リン含量(質量%)÷全リン含量(質量%)}×100
リン酸化澱粉のリン酸化率は下記の式で算出した。
リン酸化率(%)={結合リン含量(質量%)÷全リン含量(質量%)}×100
(c)リン酸化澱粉糖の結合リン測定
可溶性のリン酸化澱粉糖は、試料を適宜、溶解してそのまま、前述のFiske-Subbarow法で無機リン含量を測定した。全リン含量は試料を湿式灰化処理して無機リンとしてから、同様にFiske-Subbarow法で測定した。可溶性のリン酸化澱粉糖結合リン含量(質量%)は下記の式で算出した。
結合リン含量(質量%)=全リン含量(質量%)−無機リン含量(質量%)
可溶性のリン酸化澱粉糖は、試料を適宜、溶解してそのまま、前述のFiske-Subbarow法で無機リン含量を測定した。全リン含量は試料を湿式灰化処理して無機リンとしてから、同様にFiske-Subbarow法で測定した。可溶性のリン酸化澱粉糖結合リン含量(質量%)は下記の式で算出した。
結合リン含量(質量%)=全リン含量(質量%)−無機リン含量(質量%)
(d)リン酸化澱粉糖の平均重合度の算出
糖分析は、還元糖の定量法(学会出版センター発行)に準じて行った。全糖はフェノール−硫酸法で、還元糖はSomogyi-Nelson法で、それぞれ測定し、ぶどう糖換算(mg/ml)で算出した。平均重合度は次式により算出した。
平均重合度=全糖(mg/ml)÷還元糖(mg/ml)
糖分析は、還元糖の定量法(学会出版センター発行)に準じて行った。全糖はフェノール−硫酸法で、還元糖はSomogyi-Nelson法で、それぞれ測定し、ぶどう糖換算(mg/ml)で算出した。平均重合度は次式により算出した。
平均重合度=全糖(mg/ml)÷還元糖(mg/ml)
実施例1
コーンスターチ(王子コーンスターチ製、水分13質量%)1200kgを一定の流速でタービュライザに導入し、同時に第一リン酸ナトリウム・2水塩176kgと無水第二リン酸ナトリウム32kgを水に溶解して全量655kgのリン酸溶液(pH6.0)を一定の流速で添加して均一に混合した。このリン酸混合澱粉をフラッシュ・ドライヤーで水分6質量%となるまで乾燥し、得られたリン酸含浸澱粉(リン含量3.5質量%、pH5.6)全量を再度タービュライザに導入し、同時に第一リン酸ナトリウム・2水塩176kgと無水第二リン酸ナトリウム32kgを水に溶解して全量655kgのリン酸溶液(pH6.0)を一定の流速で再度添加して均一に混合した。このリン酸混合澱粉をフラッシュ・ドライヤーで水分6質量%となるまで乾燥し、得られたリン酸含浸澱粉(リン含量6.1質量%、pH5.7)500kgを流動層加熱機(王子コーンスターチ製)に投入した。熱風を供給して流動加熱し、排気される熱風は流動層の系外に排出した。加熱開始後、30分で175℃まで昇温し、熱風の排気はそのまま系外に排出し続けて、175℃で150分加熱反応した。加熱反応終了後、送風を冷風に切り替え、更に熱風の排気を系外に排出し続けて、品温を100℃以下にまで冷却した。回収されたリン酸化澱粉(結合リン含量5.0質量%、リン酸化率82%)は450kgであった。
コーンスターチ(王子コーンスターチ製、水分13質量%)1200kgを一定の流速でタービュライザに導入し、同時に第一リン酸ナトリウム・2水塩176kgと無水第二リン酸ナトリウム32kgを水に溶解して全量655kgのリン酸溶液(pH6.0)を一定の流速で添加して均一に混合した。このリン酸混合澱粉をフラッシュ・ドライヤーで水分6質量%となるまで乾燥し、得られたリン酸含浸澱粉(リン含量3.5質量%、pH5.6)全量を再度タービュライザに導入し、同時に第一リン酸ナトリウム・2水塩176kgと無水第二リン酸ナトリウム32kgを水に溶解して全量655kgのリン酸溶液(pH6.0)を一定の流速で再度添加して均一に混合した。このリン酸混合澱粉をフラッシュ・ドライヤーで水分6質量%となるまで乾燥し、得られたリン酸含浸澱粉(リン含量6.1質量%、pH5.7)500kgを流動層加熱機(王子コーンスターチ製)に投入した。熱風を供給して流動加熱し、排気される熱風は流動層の系外に排出した。加熱開始後、30分で175℃まで昇温し、熱風の排気はそのまま系外に排出し続けて、175℃で150分加熱反応した。加熱反応終了後、送風を冷風に切り替え、更に熱風の排気を系外に排出し続けて、品温を100℃以下にまで冷却した。回収されたリン酸化澱粉(結合リン含量5.0質量%、リン酸化率82%)は450kgであった。
次に、得られたリン酸化澱粉の低分子化を進めた。70℃の水71Lに塩化カルシウム二水和物34gを溶解した後、攪拌しながら前述のリン酸化澱粉8kgを徐々に添加しながら溶解した。水酸化ナトリウムでpH6.0とした後、ターマミル(Termamyl Classic、ノボザイムズ社製)を対澱粉0.05質量%添加し、5分間保持した。粘度が下がり始めると同じリン酸化澱粉4.5kgを徐々に追加添加した。水酸化ナトリウムでpH6.0に再調整後、追加した澱粉に対してターマミルを0.05質量%添加して10分保持した。次に、調製したリン酸化澱粉分散液をジェットクッカーにて温度110℃、滞留時間5分の条件で処理した。この操作を4回繰り返して、50kgのリン酸化澱粉を処理した。ジェットクッカー処理した液をタンクに集め、60℃まで冷却後、ターマミルを対澱粉0.05質量%追加添加し、60℃、3時間反応させた。酵素反応は塩酸でpH3.5に調整し、終了させた。
得られた酵素分解液に粉末活性炭(PM−KIとPM−SXの等量混合物、三倉化成社製)を対固形分10質量%添加し、60℃、2時間攪拌保持した。その後、セラミック濾過機(0.2μm、トライテック社製)で残渣と活性炭を除去した。濾液には無機リンが多く含まれているので、UF膜(OSMONICS社製、G−20)で脱塩・濃縮処理を行い、無機リン比率を減少させた。更に、水酸化ナトリウムでpH6.2(1質量%溶液で測定)に調整してから、0.45μmのポリスルフォンのメンブレンフィルター(ロキテクノ社製)で濾過後、スプレードライヤー(ニロ社製)で乾燥粉末化して、リン酸化澱粉糖組成物29kgを得た。得られたリン酸化澱粉糖組成物は結合リン含量5.0質量%、無機リン含量0.1質量%、平均重合度31であった。
実施例2
実施例1で得たリン酸化澱粉糖組成物のマウス脾臓細胞中のCD11b陽性細胞(マクロファージ、樹状細胞)及びCD49b陽性細胞(NK細胞)の増加割合を調べた。マウス脾臓細胞は6週齢のC3H/HeN系雄マウスから無菌的に採取し、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5%牛胎児血清を含むRPMI−1640培地で生細胞数が5×106個/mlとなるように調整し、脾臓細胞懸濁液とした。これを培養用ペトリディッシュに3mlずつ分注し、リン酸化澱粉糖組成物の濃度が最終的に0、3、15μM/mlになるように、0.15M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)で溶解したリン酸化澱粉糖組成物溶液300μlを加えて5%CO2存在下、37℃で3時間培養した。
実施例1で得たリン酸化澱粉糖組成物のマウス脾臓細胞中のCD11b陽性細胞(マクロファージ、樹状細胞)及びCD49b陽性細胞(NK細胞)の増加割合を調べた。マウス脾臓細胞は6週齢のC3H/HeN系雄マウスから無菌的に採取し、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5%牛胎児血清を含むRPMI−1640培地で生細胞数が5×106個/mlとなるように調整し、脾臓細胞懸濁液とした。これを培養用ペトリディッシュに3mlずつ分注し、リン酸化澱粉糖組成物の濃度が最終的に0、3、15μM/mlになるように、0.15M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)で溶解したリン酸化澱粉糖組成物溶液300μlを加えて5%CO2存在下、37℃で3時間培養した。
CD11b陽性細胞及びCD49b陽性細胞の割合はGuava Personal Cell Function Analyzer(Guava Technologies,CA,USA)を用いて調べた。すなわち、72時間培養後の脾臓細胞を5×106個/100μl濃度になるように調整し、CD11b(clone M1/70)又はCD49b(clone DX5)に対するビオチン標識抗マウスモノクローナル抗体(mAb)と4℃で15分間反応後、細胞をリン酸緩衝液で3回洗浄した。次いで、その細胞にフィコエリスリン/シアニン5(PE/Cy5)標識ストレプトアビジンを加えて4℃で15分間反応後、Guava Personal Cell Function Analyzerに供した。
CD11b陽性細胞及びCD49b陽性細胞の割合の結果を図1に示した。リン酸化澱粉糖組成物は細胞性免疫系に関与するいずれの細胞も有意に増加させた。
CD11b陽性細胞及びCD49b陽性細胞の割合の結果を図1に示した。リン酸化澱粉糖組成物は細胞性免疫系に関与するいずれの細胞も有意に増加させた。
実施例3
実施例1で得たリン酸化澱粉糖組成物のマウス脾臓細胞中のサイトカインmRNAの発現増強作用を調べた。マウス脾臓細胞は6週齢のC3H/HeN系雄マウスから無菌的に採取し、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5%牛胎児血清を含むRPMI−1640培地で生細胞数が5×106個/mlとなるように調整し、脾臓細胞懸濁液とした。これを培養用ペトリディッシュに3mlずつ分注し、リン酸化澱粉糖組成物の濃度が最終的に0、15μM/mlになるように、0.15M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)で溶解したリン酸化澱粉糖組成物溶液300μlを加えて5%CO2存在下、37℃で3時間培養した。
実施例1で得たリン酸化澱粉糖組成物のマウス脾臓細胞中のサイトカインmRNAの発現増強作用を調べた。マウス脾臓細胞は6週齢のC3H/HeN系雄マウスから無菌的に採取し、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、5%牛胎児血清を含むRPMI−1640培地で生細胞数が5×106個/mlとなるように調整し、脾臓細胞懸濁液とした。これを培養用ペトリディッシュに3mlずつ分注し、リン酸化澱粉糖組成物の濃度が最終的に0、15μM/mlになるように、0.15M塩化ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.2)で溶解したリン酸化澱粉糖組成物溶液300μlを加えて5%CO2存在下、37℃で3時間培養した。
3時間培養後のマウス脾臓細胞培養液を2000rpm、10分間の遠心分離に供して細胞回収後、リン酸緩衝液で2回遠心洗浄を行った。その細胞を1mlのTRIzol試薬に懸濁して室温で5分間静置後、クロロホルム200μlを加えて15秒間振とうし、3分間室温で静置してから13000rpm、15分遠心分離して水層を回収した。回収した水層にイソプロパノール500μlを加えて15秒振とう後、10分間室温で静置し13000rpm、15分間の遠心分離を行い沈殿物を回収した。回収した沈殿物に75%エタノール−25%ジエチルピロカーボネート処理水1mlを加えて13000rpm5分間遠心分離を行い、沈殿を回収して総RNAとした。ジエチルピロカーボネート処理水20μlに溶解して分析に供した。なお、RNA濃度は260nmでの吸光度から、以下の公式により算出した。
RNA濃度(μg/μl)=260nmにおける吸光値×0.04×希釈倍率
RNA濃度(μg/μl)=260nmにおける吸光値×0.04×希釈倍率
総RNA1μgに対してジエチルピロカーボネート処理水3.5μlと2.5mMオリゴdT0.5μlを加えて65℃で5分間加熱後、直ちに氷冷した。氷冷後、First strand buffer2μl、0.1M DTT0.5μl及び10mM dNTP Mix0.5μlに溶解したM−MLV逆転写酵素0.5μlを加えて逆転写反応を行った。なお、逆転写反応にはPTC−200Peltie Thermal Cycler(エムジェイジャパン(株))を用い、65℃で5分間、38℃で50分間及び75℃で15分間行った。次いで、その溶液1μlにポリメラーゼ連鎖反応用緩衝液1μl、dNTP0.8μl、TaqDNAポリメラーゼ0.05μlを溶解した超純水溶液5.2μl、サイトカインのプライマーForward溶液1μl及びサイトカインReverse溶液1μlを混合し、ポリメラーゼ連鎖反応を行った。なお、ポリメラーゼ連鎖反応にはPTC−200Peltie Thermal Cycler(エムジェイジャパン(株))を用い、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で2分間の処理を1サイクルとして同サイクルを30回繰り返した。ポリメラーゼ連鎖反応後の試料は後述するアガロースゲル電気泳動に供し、サイトカインmRNAの発現の有無の確認を行った。
アガロースゲル電気泳動は1mM EDTAを含む40mMトリス酢酸緩衝液(TAE緩衝液:pH8.0)を用いて調製した2%アガロースゲルを支持体として、ミューピッド−3装置(コスモバイオ)を用いて行った。なお、泳動用緩衝液にはTAE緩衝液を用いた。また、泳動後のゲルは10μg/mlエチジウムブロマイド溶液に15分間浸した後、蒸留水に5分間浸して染色した。染色したゲルはATTOプリントグラフFX AE−6911FXFD(アトー(株))に供し、ATTO Densitograph Software Library Lane Analyzer AE−6920WLA型Ver.3.04bを用いてバンドの積算値を算出した。
脾臓細胞のサイトカインIL−12mRNAの発現及びIFN−γmRNAの発現結果を図2に示した。リン酸化澱粉糖組成物は細胞性免疫系細胞が産生に関与するいずれのサイトカインmRNAの発現を増強させた。
Claims (9)
- リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなる細胞性免疫増強剤。
- リン酸化澱粉糖の結合リン含量が0.5質量%以上である請求項1記載の細胞性免疫増強剤。
- 医薬又は動物薬として用いられる請求項1又は2記載の細胞性免疫増強剤。
- 食品又は飼料として用いられる請求項1又は2記載の細胞性免疫増強剤。
- リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるマクロファージ活性化剤。
- リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなる樹状細胞活性化剤。
- リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるナチュラルキラー細胞活性化剤。
- リン酸化澱粉糖を含む組成物を含んでなるサイトカイン発現増強剤。
- サイトカインがIL−12及び/又はIFN−γである請求項8記載のサイトカイン発現増強剤。
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JP2007019365A JP2008184426A (ja) | 2007-01-30 | 2007-01-30 | リン酸化澱粉糖を含んでなる細胞性免疫増強剤 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013255464A (ja) * | 2012-06-13 | 2013-12-26 | Sapporo Breweries Ltd | 麦類原料液及び飲料並びにこれらに関する方法 |
JP2018201456A (ja) * | 2017-06-08 | 2018-12-27 | 株式会社サナス | 澱粉糖の製造方法 |
-
2007
- 2007-01-30 JP JP2007019365A patent/JP2008184426A/ja active Pending
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