JP2008183855A - 流体噴射装置におけるメンテナンス装置及び流体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】同一の駆動源で駆動される複数の被駆動部品の動作時期が重複することがなく、駆動源を比較的小型にすることが可能である流体噴射装置におけるメンテナンス装置および流体噴射装置を提供する。
【解決手段】メンテナンス装置を構成するスライダ55は、その往復直線運動を行う過程で、位置に応じた4つの状態「状態1」〜「状態4」をとる。キャップ41は、「状態1」・「状態2」においてキャッピング位置に配置され、「状態3」・「状態4」において退避位置に配置される。ワイパ42は、「状態1」〜「状態3」において退避位置に配置され、「状態4」において払拭位置に配置される。さらに、大気開放弁58は、「状態1」において開弁位置に配置され、「状態2」〜「状態4」において閉弁位置に配置される。キャップ41とワイパ42と大気開放弁58は、同時に動作することのない排他的な動作タイミングに設定されている。
【選択図】図20
【解決手段】メンテナンス装置を構成するスライダ55は、その往復直線運動を行う過程で、位置に応じた4つの状態「状態1」〜「状態4」をとる。キャップ41は、「状態1」・「状態2」においてキャッピング位置に配置され、「状態3」・「状態4」において退避位置に配置される。ワイパ42は、「状態1」〜「状態3」において退避位置に配置され、「状態4」において払拭位置に配置される。さらに、大気開放弁58は、「状態1」において開弁位置に配置され、「状態2」〜「状態4」において閉弁位置に配置される。キャップ41とワイパ42と大気開放弁58は、同時に動作することのない排他的な動作タイミングに設定されている。
【選択図】図20
Description
本発明は、インクジェット式記録装置などの流体噴射装置において、流体を噴射する流体噴射ヘッドのクリーニングを行う流体噴射装置におけるメンテナンス装置及び流体噴射装置に関する。
従来より、流体噴射装置の一つとしてインクジェット式記録装置が知られている。インクジェット式記録装置は記録ヘッド(流体噴射ヘッド)を備え、記録ヘッドによる印刷は、記録ヘッドと記録用紙を相対移動させながら、記録ヘッドからインク滴を噴射することにより行われる。記録ヘッドからインク滴を良好に噴射して品質の高い印刷を行うためには、印刷途中や印刷休止中の適宜な時期に、記録ヘッドのノズル孔の目詰まり等の不具合の解消および防止するために記録ヘッドのクリーニングが必要となる。このため、インクジェット式記録装置には、記録ヘッドをクリーニングするメンテナンス装置が装備されている。
メンテナンス装置は、ノズル内のインクの乾燥を防ぐために記録ヘッドをキャッピングするキャップと、キャッピング状態下でノズル開口からインクを強制的に吸引するための負圧を与える吸引ポンプと、弾性素材を短冊状に成形したワイピング部材を有するワイパとを備える。そして、インク吸引動作はキャッピング状態で吸引ポンプを駆動してキャップ内の封止された空間に負圧を与えることにより、記録ヘッドのノズル開口からインクを強制的に吸引し、増粘したインクや気泡等を排出させる。通常、この吸引動作に連続してワイパによるノズル開口面のワイピングが実施され、ノズル開口面に付着したインクや紙粉を掻き取ったりノズル内のインクメニスカスを整えたりすることが行われる。また、印刷休止中や電源遮断中は、記録ヘッドをキャッピングしてノズル内のインクの乾燥を防止するようにしている。
例えば特許文献1には、キャップ(封止壁)とワイパが一体式のメンテナンス装置を備えたインクジェット式記録装置が開示されている。このメンテナンス装置では、キャリッジが移動するときの動力で移動するスライダを備えた動力伝達機構を有し、キャップ及びワイパは、スライダが移動することにより昇降するように構成されていた。
例えば印刷中に増粘したノズル内のインクを廃棄するために印字とは関係のないインク滴をキャップに対して吐出するフラッシングが行われる場合がある。吸引動作終了後、キャップ内にインクが残留していると、フラッシングによりインク滴を吐出した際にキャップ内に残留したインクが跳ねて、ノズル開口面に付着したり、跳ねたインク滴がノズルに付着してノズル内のインクメニスカスを破壊したりする恐れがあった。例えば跳ねたインク滴がノズル周辺に付着した場合、インク滴の噴射方向がその付着インクにより変更されてインク滴の飛行曲がりの原因になる。また、インクメニスカス形状が一定に保たれることでインク滴の吐出量を安定に保っているが、インクメニスカスが破壊されるとインク吐出量が変動する恐れがあった。さらにノズル開口面にインクが付着していると、ワイピング時にインクが飛び散る原因になっていた。このため、吸引動作終了後にキャップ内を大気に開放した状態で吸引ポンプを駆動させることで、キャップ内の残留インクを、ノズルからインクを吸引することなく、吸引除去する空吸引が行われるようになっていた(例えば特許文献2)。特に近年、携帯型の小型プリンタが普及してきており、この種の携帯型のプリンタは、持ち運びされたときに落下等されて、横転状態(傾いた状態で)で強い衝撃が加えられる場合ある。例えばその衝撃でキャップと記録ヘッドとの間に隙間ができると、その隙間からキャップ内のインクが飛び散るという問題も起こりうる。このため、キャップ内の残留インクを除去しておくことは、この種の不都合を回避するうえでも重要である。特許文献2には、空吸引を行うために、キャップ内と連通されて大気との連通路を開閉する大気開放弁を備えたメンテナンス装置が開示されている。
特開2004−142190号公報
特開2003−154686号公報
ところで、特許文献1に記載のメンテナンス装置は、キャップとワイパが一体式なので、キャップとワイパが同時に動作する。このため、ワイピング時にはキャップがノズル開口面から離間しているように、ワイパがキャップより高く位置させる必要がある。このような一体式のキャップとワイパを、特許文献2のように、例えば電動モータにより昇降させる構成とした場合、キャップの退避位置からキャッピング位置までの上昇量を、ワイパの退避位置からワイピング位置までの上昇量よりも長くしなければならずその昇降ストロークが長くなってしまううえ、ワイパとキャップを常に一緒に昇降させなければならないので、電動モータにかかる動作荷重が大きくなり、大きな動力が得られる比較的大型の電動モータを使用する必要があった。電動モータの大型化は、メンテナンス装置の大型化、ひいては記録装置の大型化に繋がるという問題があった。
また、大気開放弁を備えていない構成では、記録ヘッドにキャップをしたまま空吸引できない。そのため、空吸引するためには、吸引動作(吸引クリーニング)終了後、キャップを一旦下降し、キャリッジをクリーニング位置から移動させてから、吸引ポンプを駆動させる必要があった。このように大気開放弁を備えない構成では、空吸引を行うために不要な動作が伴い、クリーニング所要時間が比較的長くなるという問題があった。
また、特許文献2に記載された大気開放弁を備えたメンテナンス装置では、電動モータの動力により円筒カム機構を介して駆動される被駆動部品として、キャップとワイパと大気開放弁とを備えるが、そのうち複数の被駆動部品の動作時期が一部重複するような動作タイミングに設定されていたので、その動作時期が重複するときに電動モータにかかる動作荷重が大きくなっていた。そのため、最大動作荷重に合わせて必要な動力が得られる比較的大型の電動モータを使用する必要があり、これがメンテナンス装置が大型化の原因となっていた。また、円筒カム機構を備えた動力伝達機構は、比較的高さ方向の配設スペースが必要であり、メンテナンス装置の薄型化が比較的困難であるという問題もあった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、同一の駆動源で駆動される複数の被駆動部品の動作時期が重複することがなく、駆動源を比較的小型にすることが可能である流体噴射装置におけるメンテナンス装置および流体噴射装置を提供することにある。
本発明は、流体をノズルから噴射する流体噴射手段を備えた流体噴射装置におけるメンテナンス装置であって、動力源と、前記動力源の動力により往復直線運動を行う駆動部材と、前記流体噴射手段のメンテナンスを行うために用いられる複数の被駆動部品と、前記駆動部材が往復直線運動を行うことにより該駆動部材の移動位置に応じて前記各被駆動部品が同時に動作しない個別のタイミングでそれぞれの作用位置と非作用位置との間を動作するように前記駆動部材と前記各被駆動部品との間にそれぞれ設けられた動力伝達手段とを備えたことを要旨とする。
これによれば、動力源の動力により駆動部材が往復直線運動を行うことにより、流体噴射手段のメンテナンスを行うために用いられる複数の被駆動部品は、駆動部材と各被駆動部品との間にそれぞれ設けられた動力伝達手段を介して、駆動部材の移動位置に応じて同時に動作しない個別のタイミングでそれぞれの作用位置と非作用位置との間を動作する。従って、動力源は同時に二つ以上の被駆動部品を動作させる必要がないので、動力源に必要とされる動力が相対的に小さく済む。よって、動力源の小型化を実現でき、ひいてはメンテナンス装置の小型化を実現することができる。
本発明のメンテナンス装置においては、前記複数の被駆動部品として、前記流体噴射手段に前記ノズルを囲む状態に当接するキャッピング位置と前記流体噴射手段から離間する非キャッピング位置との間を移動可能なキャップと、前記キャップ内と連通状態に接続されるとともに該キャップ内を大気に開放する開弁位置と大気との連通を遮断する閉弁位置とに切り換えられる大気開放弁と、前記流体噴射手段のノズル開口面を払拭可能な払拭位置と払拭不能な非払拭位置間を移動可能なワイパとのうち少なくとも二つを備えることが好ましい。
これによれば、キャップと大気開放弁とワイパのうち少なくとも二つを被駆動部品として備えるメンテナンス装置において、各被駆動部品が個別のタイミングで動作されることから、動力源に必要とされる動力が小さく済み、動力源の小型化を実現できる。
本発明のメンテナンス装置においては、前記被駆動部品として、前記キャップと前記大気開放弁との二つを少なくとも備え、前記キャップがキャッピング位置に配置された状態で、前記大気開放弁が前記閉弁位置と前記開弁位置とに切り換えられる動作タイミングに設定されていることが好ましい。
これによれば、キャップと大気開放弁との二つを被駆動部品として備えるメンテナンス装置であるので、キャップを流体噴射手段にキャッピングした状態かつ大気開放弁を閉弁させた状態でキャップ内に吸引力(負圧)を及ぼすことにより流体噴射手段のノズルから流体を吸引する吸引動作(吸引クリーニング)を行うことができる。そして、吸引動作終了後に大気開放弁を開放してキャップ内を大気に開放した状態でキャップ内に吸引力(負圧)を及ぼす空吸引を行うことで、ノズルからの流体を吸引することなくキャップ内に残留する流体を吸引除去することが可能になる。そして、このようなキャップと大気開放弁を備えたメンテナンス装置において、被駆動部品が個別のタイミングで動作することにより、動力源の小型化を実現できる。また、キャップがキャッピング位置に配置された状態で、大気開放弁が開閉可能な動作タイミングに設定されているので、キャップをキャッピング位置に配置したまま、大気開放弁の開閉の切り換えにより、吸引動作と空吸引とを行うことができる。
本発明のメンテナンス装置においては、前記被駆動部品として、前記キャップと前記ワイパとの二つを少なくとも備え、前記キャップが退避位置に配置された状態で、前記ワイパが前記払拭位置と前記非払拭位置との間を移動する動作タイミングに設定されていることが好ましい。
これによれば、キャップをキャッピング位置に配置した状態で吸引動作を行うとともに、吸引動作後に流体噴射手段においてノズルが開口するノズル開口面をワイパで払拭することが可能になる。また、吸引動作終了後にキャップがキャッピング位置から非キャッピング(退避位置)へ退避した後、ワイパを払拭位置(作用位置)へ移動させることができ、さらに払拭動作終了後にワイパを退避位置(非作用位置)に移動(退避)させることができる。このときキャップは動作しないので、ワイパの動作時にキャップの不要な動作を伴わなくて済み、ワイパ動作時における駆動部材の移動量を少なく済ませられる。
本発明のメンテナンス装置においては、前記複数の被駆動部品のうち前記流体噴射手段の保守を行う保守部品は、前記駆動部材の往復直線運動方向と略直交する所定方向へ移動可能に設けられ、前記動力伝達手段は、前記駆動部材の往復直線運動を前記保守部品の前記所定方向への往復直線運動に変換するカム機構であることが好ましい。
これによれば、保守部品は、駆動部材の往復直線運動方向と略直交する所定方向へ移動可能であるので、駆動部材の移動方向と同一方向に保守部品の移動を許容するスペースを確保する必要はなく、駆動部材の移動方向に略直交する方向に保守部品の移動を許容するスペースと確保すればよい。この結果、メンテナンス装置の小型化を実現しやすい。
本発明のメンテナンス装置においては、前記カム機構は、前記駆動部材と前記被駆動部品とのうち一方に設けられた凹状のカムと、前記カムの凹内に係入された状態で他方に設けられた凸状のカムフォロアとを有することが好ましい。ここで、凹状のカムとは、孔、凹部、切欠のいずれか一つからなればよく、凸状のカムフォロアを案内する内壁面(案内面)を有するものであればよい。
これによれば、カム機構は、駆動部材と被駆動部品とのうち一方に設けられた凹状のカムと、カムの凹内に係入された状態で他方に設けられた凸状のカムフォロアとから構成されるので、カム機構を簡単な構成で実現できる。
本発明のメンテナンス装置においては、前記被駆動部品としてキャップと大気開放弁を備え、前記大気開放弁は前記キャップ内と連通するとともに端部が開口する弁口部と、該弁口部に当接したときに前記開口を閉じる閉弁位置と前記弁口部から離間したときに前記開口を開放する開弁位置とに配置される弁体と、該弁体を前記弁口部に近づく方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記弁体と前記弁口部とのうち一方が両者を前記閉弁位置と開弁位置の位置関係に配置しうるように前記駆動部材の移動によって変位するように設けられ、前記弁体又は前記弁口部の移動方向が前記駆動部材の直線運動方向と略平行に設定されるとともに、前記駆動部材が前記付勢手段を付勢力に抗して前記弁体又は前記弁口部を変位させることのない第一位置と、前記駆動部材を前記第一位置から前記付勢手段による付勢方向と反対の方向に移動させて前記弁体又は前記弁口部を前記付勢手段の付勢力に抗して変位させる第二位置とに配置されることで前記大気開放弁の開閉が切り換えられるように構成されていることが好ましい。
これによれば、駆動部材が付勢手段を付勢力に抗して弁体又は弁口部を変位させることのない第一位置と、駆動部材を第一位置から付勢手段による付勢方向と反対の方向に移動させて弁体又は弁口部を付勢手段の付勢力に抗して変位させる第二位置とに配置されることで、大気開放弁の開閉が切り換えられる。よって、大気開放弁の開閉の切り換えも駆動部材の移動によって実現できる。
本発明は、流体噴射手段を備えた流体噴射装置であって、上記発明のメンテナンス装置を備えていることを要旨とする。これによれば、上記メンテナンス装置の発明と同様の効果を得ることができる。
本発明の流体噴射装置においては、前記流体噴射ヘッドのノズルから流体が噴射される対象である媒体を、前記流体噴射ヘッドに対して流体噴射方向と対向する位置を通るように搬送する搬送手段を更に備え、前記メンテナンス装置は、前記駆動部材の移動方向が前記媒体の搬送方向と略平行となる向きに配置されていることが好ましい。
これによれば、メンテナンス装置は、駆動部材の移動方向が媒体の搬送方向と略平行となる向きに配置されているので、流体噴射装置における媒体の搬送方向と略直交する方向の寸法を短くして、流体噴射装置の小型化を実現しやすい。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図21に従って説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の基本構成を示す平面図である。なお、図1では、上側の外装ケースを取り外した状態を示す。また、図1における下側が記録装置の前側、上側が背面側となり、左右方向が記録装置の幅方向となる。
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の基本構成を示す平面図である。なお、図1では、上側の外装ケースを取り外した状態を示す。また、図1における下側が記録装置の前側、上側が背面側となり、左右方向が記録装置の幅方向となる。
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(以下、プリンタ11と称す)は、上方側(図面における紙面手前側)が開放された薄型の四角箱状の本体フレーム12を有している。本体フレーム12内には、キャリッジ13が、図1における左右方向(プリンタ幅方向)に沿って延びるように架設されたガイド軸14に案内されて主走査方向(同図におけるX方向)に沿って往復移動自在に設けられている。本体フレーム12内の図1における右側背面寄り位置にはキャリッジモータ15が配設されている。キャリッジモータ15の出力軸は、ガイド軸14に沿って平行に延びる無端状のタイミングベルト16が巻き掛けられた一対のプーリ(図示せず)のうち一方に連結されている。キャリッジ13はその背面側でタイミングベルト16と固定されており、キャリッジモータ15が正逆転駆動されることにより、キャリッジ13はガイド軸14に沿って主走査方向Xに往復移動するように構成されている。キャリッジ13の下部には、流体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド17と称す)が設けられている。
また、図1に示すように、プリンタ11の背面側には、多数枚の用紙(図示せず)を積重できる給紙トレイ20aを有するとともに、給紙トレイ20aに積重された用紙のうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向(図1におけるY方向)の下流側に給紙する給紙装置20(Auto Sheet Feeder)とが設けられている。また、本体フレーム12内において、キャリッジ13の移動経路に沿ったその下方には、用紙と記録ヘッド17間の隙間(ギャップ)を規定する平板状のプラテン21が、キャリッジ13の印刷時における移動経路ほぼ全域(印刷領域)に渡って延びるように配置されている。本体フレーム12内には、プラテン21を挟んで紙送り方向(副走査方向Y)の上流側と下流側に、紙送りローラ22と排紙ローラ23とがそれぞれ軸回転可能な状態で設けられている。紙送りローラ22及び排紙ローラ23は、用紙を挟持する一対の駆動ローラと従動ローラからそれぞれ構成される。紙送りローラ22は給紙装置20から給紙された用紙を印刷開始位置に頭出ししたり印字中に用紙を紙送りしたりするために用いられる。排紙ローラ23は印字中の用紙の紙送りと、印字された用紙を図示しない排出口へ排出するために用いられる。
本体フレーム12内において、図1における左側背面寄り位置には紙送りモータ25が配設されている。紙送りモータ25の出力軸は、本体フレーム12内における同図左側にY方向に沿って配置された複数のギヤからなる輪列26の入力ギヤと動力伝達可能な状態で連結されている。紙送りモータ25の動力は、輪列26を介して紙送りローラ22(駆動ローラ)に伝達されるとともに排紙ローラ23(駆動ローラ)に伝達され、紙送りローラ22と排紙ローラ23がそれぞれ回転駆動することで、用紙は副走査方向Yの下流側へ搬送される。なお、図1では排紙ローラ23を構成する排紙従動ローラ23bを一部示している。排紙従動ローラ23bは、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が用紙の記録面に点接触するように鋭角的に尖った歯付きローラとなっており、それぞれ個々に排紙駆動用ローラ23a側に弱い力で付勢され、用紙が排紙駆動用ローラ23aの回転により排出される際に、その付勢力によって用紙に接した状態で用紙の排出に従動して回転する。
また、紙送りローラ22は図1における左寄り位置でクラッチ機構27を介してその回転力が給紙駆動軸28に伝達されるように構成されている。キャリッジ13がその移動経路上の図1における左端位置に移動してトリガレバー(図示せず)を操作すると、クラッチ機構27が切断状態から接続状態に切り換えられる。そして、紙送りローラ22の回転力が接続状態に切り換えられたクラッチ機構27を介して給紙駆動軸28に伝達されることで、給紙駆動軸28の軸方向略中央位置に固定された給紙ローラ29が回転駆動し、用紙の給紙が行われるように構成されている。
本実施形態におけるプリンタ11は、インクカートリッジが本体フレーム12側に装填される、いわゆるオフキャリッジタイプである。図2に示すように、本体フレーム12の裏面略中央箇所に凹設されたカートリッジ取付凹部31に、四角板状のインクカートリッジ32が装填されている。インクカートリッジ32には、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクがそれぞれ個別に収容された図示しない4つのインクパックが内蔵されている。インクカートリッジ32が装填された状態では、インクカートリッジ32にインク色毎に設けられた各インク供給部が、図1に示すカートリッジホルダ33の各インク色に対応する供給針(図示せず)に差し込まれ、図1における本体フレーム12内においてキャリッジ13の移動に追従可能なフレキシブル板34に支持された複数本のインクチューブ(図示せず)を介してキャリッジ13に各色のインクが供給される。詳しくはインクカートリッジ32内において各インクパックは機械的与圧(バネ付勢又は磁石の磁力付勢)又は空気加圧により外側から加圧される構成となっており、所定圧に加圧されたインクがインクチューブを介してキャリッジ13に供給される。キャリッジ13は差圧弁又は自己封止弁などの弁手段を(図示せず)を内蔵し、弁手段がその上流側と下流側(記録ヘッド17側)との差圧に応じて開閉することで、記録ヘッド17へは所定圧のインクが供給されるようになっている。
記録ヘッド17にはノズル毎に加圧素子(圧電素子、静電素子、発熱素子等)が内蔵され、加圧素子に所定の電圧が印加されることで対応するノズルからインクが噴射(吐出)される構成となっている。そして、キャリッジ13を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド17のノズルから用紙に向かってインクを噴射(吐出)する印字動作と、用紙を副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する搬送動作(紙送り動作)とが交互に繰り返されることで、用紙への印刷が行われる。なお、フレキシブル板34には、記録ヘッド17にデータや制御信号を送信する電気配線が形成されたフレキシブル配線基板も設けられている。
図1においてキャリッジ13は、いわゆるホームポジション(クリーニング位置)に停止した状態にある。ホームポジションは、記録実行時の移動範囲である印刷領域の外側に設定された停止位置であり、記録非実行時のキャリッジ13の待機位置となる。記録ヘッド17のノズルの目詰まりを予防・解消するためのクリーニング等のメンテナンスは、キャリッジ13がホームポジションに停止した状態で行われる。このため、ホームポジションに位置するキャリッジ13の下側に相当する位置には、メンテナンス装置40が配設されている。メンテナンス装置40は、記録ヘッド17のノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する略四角形状のキャップ41と、記録ヘッド17のノズル開口面17a(ノズル形成面)(図11参照)を払拭するためのワイパ42と、キャップ41に負圧を導入する吸引ポンプ43と、キャップ41及びワイパ42を昇降駆動させる動力源としての電動モータ44とを備えている。キャリッジ13がホームポジションに移動して記録ヘッド17が直上に位置した時にキャップ41が上昇することで、記録ヘッド17はキャッピングされる。キャップ41は、上記のノズル開口の乾燥を防ぐ目的の蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド17をキャップしてその封止された空間に吸引ポンプ43からの負圧を与えてノズルからインクを吸引することでノズル等をクリーニングする流体吸引手段の一部としての機能も備えている。なお、吸引ポンプ43に吸引された廃液(廃インク)はチューブ48(図3,図4を参照)を通じて図示しない廃液タンクに排出されるようになっている。なお、廃液タンクを廃止し、廃液をインクカートリッジ32内におけるインクパック外側の空間内に廃棄する構成も採用できる。
また、ワイパ42はキャップ41の印刷領域側に隣接した位置に配置され、昇降可能に設けられている。記録ヘッド17の吸引動作(クリーニング)終了後、キャリッジ13がホームポジションから印刷領域側へ移動する過程で、上昇して待機するワイパ42が記録ヘッド17の下面に摺接することでワイピングは行われる。
図1に示すように、プリンタ11の右側背面寄りの位置には制御基板36が配置され、制御基板36上にはICチップからなる制御部37(コントローラ)が設けられている。各モータ15,25,44は制御部37により駆動制御される。また、制御部37は、キャリッジ13の移動位置を例えば光学的に検知するエンコーダ(図示せず)と電気的に接続され、エンコーダからキャリッジ13の移動速度に比例する周波数のパルスをもつ検出信号を入力する。制御部37は、エンコーダから入力した位相が90度ずれた2種類(A相、B相)のパルスに基づきキャリッジ13の移動方向及び移動位置を認識する。よって、制御部37は、キャリッジ13を位置制御できるとともにキャリッジ13の移動位置を検出でき、例えばキャリッジ13がメンテナンス位置であるホームポジションに到達したことを検出できる。
また、制御部37は、設定時間を計時するタイマ(図示せず)を内蔵し、タイマが予めクリーニングの種別(フラッシング、吸引動作等)毎に設定された設定時間を計時したときに、その計時した設定時間に応じた種別のクリーニングを行う。設定時間の1つとして、例えば印刷実行中に印刷と関係のないインク滴を吐出するフラッシングを実行する時間間隔(例えば10秒)がある。制御部37は、印刷実行中にその設定時間が経過した旨の通知をタイマから受けると、キャリッジ13を所定位置(本例ではホームポジション)に移動させてフラッシングを実行させる。また、他の設定時間として、インク吸引動作を実行する時間間隔(例えば数時間〜1週間)がある。制御部37は、前回の吸引動作からの計時時間がこの設定時間を超えると、その超えた時またはその後の最初の電源投入時に、その超えた設定時間に応じた強さでインク吸引動作を実行させる。また、クリーニングスイッチのオン操作によるオン信号を入力したときにも、制御部37はインク吸引動作を実行する。
<メンテナン装置>
次に、上述のプリンタ11に装備されたメンテナンス装置40の構成について、図3〜図21に基づいて説明する。図3はメンテナンス装置の斜視図、図4はその平面図である。なお、以下の説明では、キャリッジ移動方向(X方向)を前後方向とし、キャリッジがホームポジションに近づく方向(図4における下方)を前方とする。また、副走査方向(Y方向)を左右方向とする。
次に、上述のプリンタ11に装備されたメンテナンス装置40の構成について、図3〜図21に基づいて説明する。図3はメンテナンス装置の斜視図、図4はその平面図である。なお、以下の説明では、キャリッジ移動方向(X方向)を前後方向とし、キャリッジがホームポジションに近づく方向(図4における下方)を前方とする。また、副走査方向(Y方向)を左右方向とする。
図3,図4に示すように、メンテナンス装置40は、上方側が開放された平面視長方形の箱状に形成されたベースフレーム(以下、フレーム51という)を有している。このフレーム51が本体フレーム12にネジ(図示せず)を用いて取付固定されることで、メンテナンス装置40は、本体フレーム12内のホームポジションに相当の位置に配置される。
フレーム51の図3,図4における左側位置には、吸引ポンプ43が配設されている。本実施形態においては、吸引ポンプ43の入力軸(図示せず)は排紙ローラ23(排紙駆動ローラ22a)と動力伝達可能に連結されている。すなわち、吸引ポンプ43は、紙送りモータ25の動力が輪列26及び排紙ローラ23を介して入力されるように排紙ローラ23と不図示の歯車列を介して接続され、紙送りモータ25の動力に基づき駆動される構成となっている。
吸引ポンプ43は、本実施形態ではチューブポンプにより構成されている。すなわち、吸引ポンプ43は、略円筒状のケース43a内に回転自在に収容された回転体(図示せず)と、該回転体に半回転以上1回転以下の所定量で巻き掛けられるとともに両端部がケース43aの外側へ引き出されたチューブ48と、チューブ48を押し潰し可能に回転体に設けられたローラ(図示せず)とを有している。ローラは、例えば回転体に形成された円弧状のガイド孔に軸支され、吸引ポンプ43が正転駆動されて回転体が正転する際に半径方向外側へ案内されてチューブ48をケース43aの内壁面との間で押し潰すとともに、吸引ポンプ43が逆転駆動されて回転体が逆転する際にチューブ48を押し潰さない退避位置に配置される。よって、吸引ポンプ43の正転駆動時には、チューブ48がローラにより一方向に順次押し潰され、チューブ48内の空気やインク等が下流側のチューブ48bへ押し出されるとともに、吸引ポンプ43より上流側のチューブ48a内に負圧が発生する。本実施形態では、排紙ローラ23の排紙時の回転方向が吸引ポンプ43の逆転方向に設定されており、排紙等のために排紙ローラ23が正転駆動される際は、吸引ポンプ43は負圧を発生しないレリース状態となる。
吸引ポンプ43から延出する上流側(吸引側)のチューブ48aは、キャップ41に接続されており、吸引ポンプ43がポンプ駆動(正転駆動)されることにより、キャップ41内に負圧が導入される構成となっている。なお、吸引ポンプ43は、チューブポンプに限定されず、例えばギヤポンプやダイヤフラム式ポンプ等を採用することもできる。
フレーム51において吸引ポンプ43の前方位置には、電動モータ44がフレーム51に組み付けられた支持部材52にネジ53で固定されている。フレーム51内には、スライダ55がフレーム51の長手方向(Y方向)に相対移動可能な状態に組み付けられている。スライダ55は電動モータ44の正逆転駆動によりフレーム51の長手方向に沿って往復直線運動可能に構成されている。スライダ55は、平面視略長方形状でその内側に所定広さの開口面積を有する収容孔55aが形成され、かつその長手方向基端側(図3,図4における左端部)が切欠を挟んで対向するように二股に分かれた部分を有する枠型形状を有している。収容孔55aは、スライダ55の短手方向にキャップ41の幅より若干広い幅を有し、かつ長手方向(スライダ移動方向)にキャップ41の幅より十分に長い所定の幅寸法を有する開口形状に形成されている(図8,図13を参照)。
キャップ41は、フレーム51内において電動モータ44と反対側となる右寄りの位置に、スライダ55の収容孔55a内に収容された状態に配置されている。キャップ41は、フレーム51の内底面51aから上方へ立設する複数の規制板51bによりスライダ移動方向(Y方向)にずれないように位置規制されるとともに、収容孔55aの内壁面のうちスライダ55の短手方向に対向する二つの内壁面と若干の隙間を隔てるか摺接する状態に配置され、X方向にずれないようにガイドされている。
また、キャップ41には、吸引用のチューブ48aと略平行に並設された大気開放用のチューブ57の一端部が接続されており、チューブ57の他端部は大気開放弁58に接続されている。大気開放弁58は、吸引ポンプ43と電動モータ44間に配置され、支持部材52を介してフレーム51に組み付けられている。本実施形態では、キャップ41が記録ヘッド17に当接した状態で吸引ポンプ43が駆動されることで、ノズル17b(図11を参照)からインクを吸引する吸引動作(吸引クリーニング)が行われる。大気開放弁58は吸引動作時には閉弁され、吸引動作終了後に開弁される。大気開放弁58が開弁されることでキャップ41内は大気に開放される。その大気開放状態で、吸引ポンプ43が引き続き駆動されることにより、キャップ41がキャッピング状態にあってもノズル17bからインクを吸引することなく、キャップ41内に溜まったインクのみを排出する空吸引が行われる。
フレーム51内において、キャップ41に対して図3,図4における右寄り上側位置には、スライダ55の左側面(同図における上側側面)を摺動可能にガイドする例えば金属製のプレート59が配置されている。フレーム51内においてプレート59を挟んでキャップ41と反対側の領域には、細長形状に開口する収容部60がプレート59によって区画されている。収容部60内においてX方向にキャップ41と隣り合う位置には、ワイパ42が昇降可能な状態で収容されている。
以下、メンテナンス装置40におけるキャップ41の昇降機構、ワイパ42の昇降機構、大気開放弁58の開閉機構について詳細に説明する。図5〜図7は、メンテナンス装置のフレームを取り外した状態を示し、図5は右側面図、図6は図5におけるA−A線断面図(底面図)、図7は背面図である。
図5,図6に示すように、電動モータ44の出力軸44aに連結されたモータ歯車61は、フレーム51上に回転可能に配置された二段歯車62の大径歯車62aと噛合し、その小径歯車(以下、ピニオン62bという)(図6に示す)が、スライダ55の基部(左端部)に形成されたラック63と噛合している。よって、電動モータ44が正逆転駆動されると、互いに噛合するピニオン62bとラック63とからなるラックアンドピニオン機構を介して、二段歯車62の回転がスライダ55の往復直線運動に変換されるようになっている。
<キャッピング機構>
次にキャッピング機構について詳細に説明する。図8はスライダ及びキャップを示す分解斜視図、図9はキャップの平面図、図10はスライダのカム溝の部分を示す要部側面図、図11はキャップの昇降動作を説明する模式側面図である。
次にキャッピング機構について詳細に説明する。図8はスライダ及びキャップを示す分解斜視図、図9はキャップの平面図、図10はスライダのカム溝の部分を示す要部側面図、図11はキャップの昇降動作を説明する模式側面図である。
図8,図9に示すように、キャップ41は、上側が開放された略四角箱状のキャップホルダ65と、キャップホルダ65の上面にキャップ41の内側を囲むようにその周縁に沿うようにキャップホルダ65と一体に形成された略四角環形状をなすシール部66(封止壁)とを有する。シール部66は、例えばエラストマ等のゴム弾性を有する合成樹脂材料からなり、本実施形態では2色成形によって樹脂成型品であるキャップホルダ65と一体に設けられている。
また、キャップホルダ65内にはスポンジ等の多孔質樹脂材料からなるインク吸収材67が収容されている。インク吸収材67は、四角枠状でかつその内側を対角線状に延びて交差する線状部を有する形状の押さえ部材68が、キャップホルダ65の内底面上に突出する複数本のピン65aに掛止されることでキャップホルダ65内に固定されている。キャップホルダ65の正面側側面(図9における下側面)には、2本の接続管部65b,65cが突出形成されており、各接続管部65b、65cはキャップホルダ65の内底面に開口する通孔(図示せず)と連通されている。接続管部65bには、吸引ポンプ43の負圧口側から延びるチューブ48aが接続され、接続管部65cには大気開放弁58から延びるチューブ57が接続される。接続管部65bにチューブ48が接続された状態においてはキャップ41の内部にチューブ48を通じて吸引ポンプ43からの負圧が導入されるようになっている。
図8,図9に示すように、キャップ41の左右側面のうち一方(右側)の側面41aには前後方向(Y方向)に所定の間隔を隔して第1ピン69と第2ピン70の二本がそれぞれ外側へ向かって略垂直に突設され、同様に図9に示すように他方(左側)の側面41bには一本の第3ピン71が外側へ向かって略垂直に突設されている。ここで、図9に示す平面視において、キャップ41の第1〜第3ピン69〜71はスライダ移動方向(図9における上下方向)においてそれぞれの軸線が互いにずれて位置している。また、キャップ41の背面には支持部72が外側へ略垂直に突設されている。例えばメンテナンス装置40の組立工程では、キャップ搬送時にキャップ内への防塵対策として図示しないカバーが装着されるが、そのカバーに設けられたボスを嵌入するために支持部72の孔72aが用いられる。なお、本実施形態では、これらのピン69〜71がカムフォロアを構成する。
図8に示すように、スライダ55において収容孔55aを挟んでX方向に対峙する両側壁のうち一方(右側)の側壁55bには、2つのカム溝(第1カム溝75、第2カム溝76)がスライダ55の長手方向に並んでそれぞれ貫通形成されるとともに、他方(左側)の側壁55cには第3カム溝77が一つ形成されている。2つのカム溝75,76は、キャップ41の側面41aに突設された第1及び第2ピン69,70とそれぞれ対応して位置するように配置され、1つのカム溝77は、キャップ41の側面41bに突設された第3ピン71と対応して位置するように配置されている。各カム溝75〜77はスライダ55の底面から同じ高さにそれぞれ位置するとともに、スライダ55の基端側(図8における左端側)より先端側(図8における右端側)の方がスライダ55の高さ方向においてより高い位置に位置するような孔形状を有している。なお、スライダ55には、図8に示すように、キャップ41の支持部72と相対する位置に凹部55dが形成されており、スライダ55がその基端側に移動したときに凹部55dの壁面に支持部72が度当たりすることで、スライダ55が基端側へ移動可能な限界位置が決められるようになっている。
図10に示すように、カム溝75は、スライダ55の所定高さに水平に延びるように形成された下段部78aと、下段部78aと繋がってスライダ55の基端側から先端部へゆくに連れて上昇する斜状に形成された斜状部78bと、斜状部78bと下段部78a側と反対側で繋がって下段部78aより高い所定高さに水平に延びるように形成された上段部78cとを有している。なお、他のカム溝76,77も同様の孔形状に形成され、それぞれ下段部78aと斜状部78bと上段部78cとを有している。
フレーム51の内底面上には、図6〜図8に示すように、キャップ41の裏面(下面)と相対する位置に、一対のバネ80(圧縮バネ)が配設されている。本実施形態では、バネ80として、例えば捩りコイルバネを用いている。もちろん、バネ80は、コイルバネでもよい。キャップ41は、バネ80により上方へ付勢された状態で、ピン69〜71がそれぞれ対応するカム溝75〜77に係入されることでスライダ55と係合している。
すなわち、第1ピン69が第1カム溝75に挿入され、第2ピン70が第2カム溝76に挿入され、第3ピン71が第3カム溝77に挿入されている。キャップ41の昇降範囲の上限位置と下限位置は、キャップ41側のピン69〜71とスライダ55側のカム溝75〜77との係合により規制されている。なお、これらのカム溝75〜77によって、第1〜第3ピン69〜71により構成されるカムフォロアを案内するカムが構成されている。
スライダ55が往復直線運動する過程で、バネ80により上方へ付勢されたキャップ41の側面に突設されたピン69〜71が、カム溝75〜77の上壁面に案内されることにより、キャップ41は昇降するように構成されている。スライダ55がその移動範囲における最も先端側の位置に配置された状態(「状態4」(図20参照))では、ピン69〜71は図10における下段部78aの左端寄りに位置する。この位置からスライダ55が基端側(図8における左方向)へ移動を開始すると、まずピン69〜71が下段部78aの上壁面(上側内壁面)に沿って案内され、この区間では、キャップ41は退避位置に配置される。そして、ピン69〜71が斜状部78bの上壁面に沿って案内される区間では、キャップ41は、退避位置から、ピン69〜71が斜状部78bの上壁面に沿って上昇するのに伴い上昇する。そして、例えばキャリッジ13がホームポジションになければ、ピン69〜71は上段部78cの上壁面に案内されてキャップ41は最上昇位置に配置されることになるが、スライダ55を基端寄りの位置(「状態1」「状態2」(図20参照))に配置するのは、キャッピング時と設定されている。このため、スライダ55を基端寄りの位置に配置するときは、キャップ41の上方に記録ヘッド17が位置する。この場合、ピン69〜71が斜状部78bを登り切る手前でキャップ41が記録ヘッド17のノズル開口面17aに当接する。その後、スライダ55がさらに基端側へ移動する過程において、キャップ41がノズル開口面17aに当接して上方への移動が規制された状態でバネ80により上方へ付勢されるため、シール部66がノズル開口面17aに押し付けられて変形し、キャップ41がノズル開口面17aに密接するようになっている。
キャップ41がこのキャッピング位置にある状態から、スライダ55が逆に基端側から先端側へ向かう方向(図8における右方)へ移動する場合は、ピン69〜71がカム溝75〜77の上壁面に沿って、上段部78cから斜状部78bを経て下段部78aに向かう方向へ案内される。これにより、キャップ41はノズル開口面17aに当接するキャッピング位置から退避位置に下降する。
なお、各カム溝75〜77は、上段部78cにおいて上下両側の内壁面を有する限りにおいて、少なくとも下段部78aと斜状部78bについてはキャップ41の昇降時にピン69〜71が当接する当接面(上側の内壁面)が存在すれば足りる。少なくとも下段部78aと斜状部78bについては例えば下側の内壁面を有さない例えば切欠状に形成することができる。また、カム溝は貫通孔に限定されず、そのうち少なくとも一つをカムフォロアとしてのピンを係入可能な凹部とすることもできる。
スライダ55はその収容孔55a内にキャップ41を配置する状態でキャップ41に対して相対移動可能に設けられ、電動モータ44の正逆転駆動により、ラック63の歯の形成されている範囲長さ以下の所定ストロークの範囲内でスライダ長手方向に往復直線運動することが可能になっている。スライダ55が往復直線運動することにより、キャップ41は、カム溝75〜77に沿って案内されるピン69〜71が、図10に示す斜状部78bに摺動案内される過程となる所定の動作タイミングで昇降する構成となっている。
詳しくは、図11(a)に示すように、ピン69〜71のカム溝75〜77に対する係入位置が下段部78aであるときに、キャップ41は記録ヘッド17のノズル17bが形成されたノズル開口面17aから所定距離だけ離間する退避位置に配置される。一方、図11(b)に示すように、ピン69〜71のカム溝75〜77に対する係入位置が上段部78cであるときに、キャップ41は記録ヘッド17のノズル開口面17aにシール部66を密接させるキャッピング位置に配置される。このキャッピング位置では、キャップ41のシール部66が、記録ヘッド17のすべてのノズル17bを囲む状態でノズル開口面17aに当接する。
図12は、キャップがキャッピング位置に配置されている状態におけるカム溝とピンとの位置関係を説明する部分側面図を示す。キャップ41が上昇したキャッピング状態では、図12に示すように、ピン69〜71(カムフォロア)は、カム溝75〜77の上段部78cの幅(キャップ移動方向の幅)内の中間に位置する。これは、キャップ41がバネ80によって上方へ付勢されているため、ピン69〜71はカム溝75〜77の上壁面に当たった状態でその上壁面に摺接しつつカム溝75〜77に沿って上動するが、キャップ41がノズル開口面17aに当接した後は、ノズル開口面17aから受ける反力によって、ピン69〜71はカム溝75〜77の上壁面78dから下方へ離間する。このとき、ノズル開口面17aに押圧されたシール部66は押し潰される。このため、当接後に潰れたシール部66の弾性復元力がバネ80を圧縮させる方向に加わり、その弾性復元力に相当するバネ80の圧縮する分だけ、ピン69〜71は上段部78cの上壁面78dから離れて下方へシフトする。
図12に示すように、上段部78cの幅をA、ピン69〜71のカム溝に対する下方へのシフト量をB、上段部78cの幅方向略中間に位置するピン69〜71の下端と上段部78cの下壁面78eまでの距離をCとすると、この距離C(=A−B)が、キャップ41が下降を許容される量となる。また、弾性材料よりなるシール部66の潰れ量をΔh(図11(b)を参照)とすると、その弾性復元力f1は、シール部66のバネ定数をk1とすると、f1=k1・Δhで表される。また、弾性復元力f1を受けたときにピン69〜71の上段部78cの上壁面78dからの下方へのシフト量Bは、一対のバネ80のバネ定数をk2とすると、f1=k2・Bが成立するので、B=(k1/k2)・Δhで示される。但し、バネ80のバネ定数のバネ開き角度依存性は無視するものとする。また、潰れ量Δhは、シール部66の潰れる前の高さhoから、潰れた後の高さh1を差し引いた量であり、Δh=ho−h1で示されるので、B=(k1/k2)・(ho−h1)で表される。
そして、本実施形態では、キャッピング状態においてカム溝75〜77の上段部78cに挿入されているピン69〜71の下端から、上段部78cの下壁面78eまでの距離C(=A−B)が、潰れ量Δh以下になるように設定されている。例えばプリンタ11に落下等されることにより衝撃が加わって、キャッピング状態にあるキャップ41が記録ヘッド17から離間する方向(下方)へ変位しようとしても、ピン69〜71の下端が下壁面78eに当たってキャップ41のそれ以上の下方への変位が規制される。このため、キャップ41の記録ヘッド17からの変位量が潰れ量Δh以下に抑えられ、キャップ41が記録ヘッド17のノズル開口面17aから離間しないように構成されている。
<ワイピング機構>
次にワイピング機構について説明する。図13は、スライダとワイパとを示す平面図、図14はワイパの正面図、図15はワイピング機構の部分を示す平面図である。
次にワイピング機構について説明する。図13は、スライダとワイパとを示す平面図、図14はワイパの正面図、図15はワイピング機構の部分を示す平面図である。
図13に示すように、スライダ55の左側面(図13における上側側面)には、例えばカム溝77(図8を参照)より下側の位置に一対のピン81,82が略垂直に突設されている。図14に示すように、ワイパ42は、同図における左右方向に所定長さを有する略四角板状のワイパホルダ83と、ワイパホルダ83にその上方へ延出する状態に保持されたエラストマ等のゴム弾性を有する合成樹脂材料からなる短冊状のワイパブレード84とを有している。ワイパホルダ83におけるスライダ55と対面する側の側面上には、スライダ55側の一対のピン81,82と対応する位置に、一対のカム溝85,86が凹設されている。また、ワイパホルダ83の長手方向における一端部には、断面L字形のガイド部83aが図14における上下方向に延出形成されている。
カム溝85,86は、上段部88aと斜状部88bと下段部88cとを有している。上段部88aはワイパホルダ83の所定高さに水平に延びるように形成されている。斜状部88bは上段部88aと繋がってスライダ55の基端側(図14における左側)から先端側(図14における右側)へゆくに連れて下降する斜状に形成されている。下段部88cは斜状部88bと上段部88a側と反対側で繋がって上段部88aより低い所定高さに水平に延びるように形成されている。本実施形態では、一対のカム溝85,86は繋がって一つの凹部を形成しているが、別々の凹部で構成することもできる。さらに凹部ではなく貫通孔や切欠も採用できる。なお、ピン81,82がカムフォロアを構成し、カム溝85,86がカムを構成する。
また、図15に示すように、プレート59により区画された収容部60内に収容されたワイパ42は、ガイド部83aの凸部がフレーム51側に形成された断面コ字型の規制部51cの凹内に係入する状態で上下方向にスライド可能に組み付けられている。
収容部60内には、ワイパ42のプレート59側の隣接位置に、ワイパ42の幅よりも少し長い短冊状のインク吸収材90が挿着され、またワイパ42の図15における右隣位置には、複数の小ブロック状のインク吸収材91が配置されている。インク吸収材90は、図7に示すように、プレート59の直角に屈曲した先端部分にガイドされてその先端部をワイパ42側へ屈曲させた状態に保持され、その先端部はワイパブレード84の側面に軽く接触するか近接する状態にある。ワイパ42がワイピング終了後に下降する過程でインク吸収材90はワイパ42の側面に付着したインクを拭き取って吸収する機能を有する。一方、図15に示すインク吸収材91は、ワイパ42から流れ落ちたインクを吸収する機能を有する。
また、図7に示すように、スライダ55の左側面に突設されたピン81、82は、プレート59に水平に延びるように形成された図示しない長孔を介するとともにインク吸収材90の下側を通って、図14に示すようにワイパ42側の対応するカム溝85,86内にそれぞれ係入されている。また、ワイパ42は、ガイド部83aと規制部51cとの係合と、インク吸収材91との当接とによってスライダ移動方向への移動が規制されているので、スライダ55が移動しても昇降のみするようになっている。
スライダ55が往復直線運動する過程で、スライダ55の左側面に突設されたピン81,82が、ワイパ42の側面に凹設されたカム溝85,86に案内されることにより、ワイパ42は昇降するように構成されている。スライダ55がその移動範囲における最も基端側の位置に配置された状態(「状態1」(図20参照))では、ピン81,82は図14における上段部88aの左端寄りに位置する。この位置からスライダ55が先端側(図13における右方向)へ移動を開始すると、まずピン81,82が上段部88aの上壁面(上側内壁面)に沿って案内され、この区間では、ワイパ42は退避位置に配置される。そして、ピン81,82が斜状部88bの上壁面に沿って案内される区間では、ワイパ42は、退避位置から、ピン81,82が斜状部88bの上壁面に沿って移動するのに伴い押し上げられる。そして、図14に鎖線で示すように、ピン81,82が下段部88cの上壁面に案内される区間で、ワイパ42は払拭位置(上昇位置)に配置される。
ワイパ42がこの払拭位置にある状態から、スライダ55が逆に先端側から基端側へ向かう方向(図13における左方)へ移動する場合は、ピン81,82がカム溝85,86の上壁面に沿って、下段部88cから斜状部88bを経て上段部88aに向かう方向へ案内される。これにより、ワイパ42は払拭位置から退避位置に下降する。このようにワイパ42は、ピン81,82が図14に実線で示すようにカム溝85,86の上段部88aに位置するときに退避位置に配置され、ピン81,82が図14に鎖線で示すようにカム溝85,86の下段部88cに位置するときに払拭位置に配置される。
ワイパ42は、スライダ55が往復直線運動する過程において、ピン81,82がカム溝85,86の斜状部88bに沿って移動する過程で昇降するようにその動作タイミングが設定されている。なお、スライダ55の左側面に形成されたキャップ用のカム溝77と、このカム溝77と対向するワイパ42側のカム溝85,86とは、その斜状部の傾きが互いに逆向きとなっている。このため、キャップ41が上昇しているときにワイパ42は下降しており、ワイパ42が上昇しているときにキャップ41は下降している。また、キャップ41が昇降する動作タイミングと、ワイパ42が昇降する動作タイミングは重複していない。
<大気開放弁>
図16は、フレームを取り外した状態のメンテナンス装置に左側面図、図17(a),(b)は、大気開放弁の側面図を示す。
図16は、フレームを取り外した状態のメンテナンス装置に左側面図、図17(a),(b)は、大気開放弁の側面図を示す。
図8に示すように、スライダ55の基部は二股に分かれて間隔を開けて互いに延出する形状を有しており、一方のラック63と切欠部を挟んで対向する部分には、図8,図16に示すように、スライダ55の基端側を向くとともにスライダ55の進行方向に対して略垂直な当接面55eが形成されている。
図16,図17に示すように、大気開放弁58は、フレーム51(図3,図4を参照)の端部に組み付けられた支持部材52と、弁体95(蓋体)と、チューブ57の端部(他端部)に固定された略円筒状の弁口部96と、弁体95と支持部材52の支持部52aとの間に介装されて弁体95を弁口部96に接近する方向へ付勢するバネ97(圧縮コイルバネ)とを有している。弁体95は、下方へ延出するレバー95aを有している。レバー95aは、スライダ55の当接面55eと当接可能な位置関係にある。
図18は大気開放弁58の分解斜視図であり、図19は、図18とは異なる方向から見た大気開放弁の一部を示す分解斜視図である。
図18,図19に示すように、支持部材52の支持部52aには、弁体95と相対する面上に2つの軸孔52b,52cが形成されている。弁体95は、背面側中央(軸線)に背面側へ突出する第1軸95bと、弁体95の軸線から少しはずれた端部寄り位置において前後方向に突出する第2軸95cとを有している。第1軸95bと第2軸95cは、弁体95の背面側への突出量が略等しく、それぞれ支持部52aの各軸孔52b,52cに挿入されるようになっている。このとき、支持部52aと弁体95との間に介装されるバネ97は、第1軸95bが挿通された状態で支持され、バネ97の弾性力により弁体95は常には弁口部96側へ付勢されるようになっている。
図18,図19に示すように、支持部材52の支持部52aには、弁体95と相対する面上に2つの軸孔52b,52cが形成されている。弁体95は、背面側中央(軸線)に背面側へ突出する第1軸95bと、弁体95の軸線から少しはずれた端部寄り位置において前後方向に突出する第2軸95cとを有している。第1軸95bと第2軸95cは、弁体95の背面側への突出量が略等しく、それぞれ支持部52aの各軸孔52b,52cに挿入されるようになっている。このとき、支持部52aと弁体95との間に介装されるバネ97は、第1軸95bが挿通された状態で支持され、バネ97の弾性力により弁体95は常には弁口部96側へ付勢されるようになっている。
弁口部96においてチューブ57が接続された側と反対側の面は、チューブ57と連通する連通孔が開口するとともに、その連通孔の開口を囲むように例えばエラストマ等の弾性材料からなる環状のシール部96a(例えばOリング)が配置されている。弁体95において弁口部96側のシール部96aと相対する部位には、平坦なシール面95dが形成されている。
また、弁体95は第1軸95bと第2軸95cとの二軸で支持部52aに支持されることで、第2軸95cは弁体95の第1軸95bを中心とする回転を防止する回転止めとして機能する。このため、弁体95は支持部材52に組み付けられた状態では、そのレバー95aが常に下方に延出する姿勢に保持される。第2軸95cの弁体95の前側へ突出する部分は、支持部材52に設けられた図示しない挿通部に挿通されている。
また、支持部材52には支持部52aよりも少し前側の位置に上下一対の係止爪52dが延出形成されている。弁口部96にはその上下面に一対の係止用の凸部96bが突設されている。係止用の凸部96bが係止爪52dに係止されることにより、弁口部96は支持部材52に弁体95のシール面95dと相対する状態に組み付けられるようになっている。弁体95に外力が加わっていない状態では、弁体95は、バネ97の弾性力により弁口部96側へ接近する方向に付勢され、そのシール面95dが弁口部96のシール部96aに当接する閉位置に配置されるようになっている。なお、支持部材52には、チューブ57を挟持する一対のガイド部52eと、電動モータ44を組み付けるときに用いられるネジ孔52fと、電動モータ44の出力軸44aが挿通される挿通孔52gが形成されている。
図17(a)に示すように、スライダ55の当接面55eが弁体95のレバー95aを押圧しない状態においては、弁体95はバネ97の付勢力によって弁口部96側へ変位して位置し、弁体95のシール面95dが弁口部96のシール部96aに当接した状態にある。この状態における弁体95の位置が閉弁位置であり、弁体95がシール部96aに密接する閉弁位置にあるとき、大気開放弁58は閉弁する。大気開放弁58が閉弁状態にあるとき、チューブ57の一端側に接続されたキャップ41の内部はチューブ57を通じた大気との連通が遮断されるようになっている。
一方、図17(b)に示すように、スライダ55が最前位置(基準位置)に配置されると、スライダ55の当接面55eがレバー95aを押圧し、弁体95がバネ97の弾性力に抗して弁口部96のシール部96aから所定距離だけ離間する方向へ移動する。この状態における弁体95の位置が開弁位置であり、弁体95がシール部96aから離間する開弁位置にあるとき、大気開放弁58は開弁する。大気開放弁58が開弁状態にあるとき、チューブ57の他端部が大気に開放され、チューブ57の一端側に接続されたキャップ41の内部がチューブ57を通じて大気に開放されるようになっている。
そして、スライダ55が基準位置から後方側(図17における左方向)へ移動すると、当接面55eがレバー95aを押さなくなって、バネ97の弾性復元力により、弁体95が弁口部96に接近する方向に移動し、そのシール面95dがシール部96aに密接する図17(a)に示す閉弁位置に復帰するようになっている。なお、弁口部96はシール部96aを有する構成としたが、チューブ57を挿通支持するだけの構成とし、弁口部の弁体側の面より少し延出したチューブ57の端部に弁体95のシール面95dを直接当接させることで、大気開放弁58が閉弁する構成も採用できる。
図21に示すように、ラック63には内側面上に複数の歯63aが形成されている。図21(a)は、スライダ55が、キャップをキャッピング位置に配置する第2位置にあるときのラック63とピニオン62bの噛合状態を示す。同図(a)に示すように、スライダ55が第2位置にある状態では、ラック63は歯部の基端側(図21(a)における右端部側)の部位でピニオン62bと噛合している。
図21(b)は、スライダ55が、大気開放弁58を開弁位置に配置する基準位置(状態2)にあるときのラック63とピニオン62bの噛合状態を示す。ピニオン62bがこれ以上反転してもラック63との噛み合いが切れているので、スライダ55はこれ以上スライドすることはない。また、スライダ55が大気開放弁58のバネ97の付勢力で歯63aが歯62cと噛み合う方向へ付勢されているので、電動モータ44の駆動が停止すれば、スライダ55はその一番目(図21における右端)の歯63aにピニオン62bの歯62cが接触する状態に保持される。このため、ラック63とピニオン62bの噛み合いが切れる度に、スライダ55は図21(b)に示す基準位置(状態1)に位置出しされるようになっている。例えばキャッピング状態で、プリンタ11が落下等されてその衝撃によりキャップ41が記録ヘッド17から離間する方向に変位する際は、図21(c)に示すように、ラック63とピニオン62bとの噛み合いが切れるようになっている。
また、ラック63の一番目の歯63aは、他の歯63aが台形形状であるのに対し、歯先が尖っている三角形状に形成されている。このため、歯63aと歯62cの噛み合いが切れた後、ピニオン62bは、ラック63がバネ97の付勢によって互いの歯63a,62cが噛み合おうとする方向へ付勢されても、ピニオン62bの歯62cがラックの一番目の歯63aの斜面63b(歯面)を滑るため、ラック63の歯63aに乗り上げることがないように構成されている。
図20は、スライダの位置状態と、キャップ、ワイパ、大気開放弁の動作タイミングを示すものである。図20において(a)はキャップ、(b)はワイパ、(c)はスライダの位置(ラック位置)、(d)は大気開放弁をそれぞれ示す。スライダ55は、その往復直線運動を行う過程で、位置に応じた4つの状態「状態1」「状態2」「状態3」「状態4」をとるように構成されている。図20(c)に示すように、「状態1」はスライダ55が基準位置(原点位置)にあるときの位置状態である。「状態2」は、スライダ55が状態1よりも所定距離d1だけ後方(紙送り方向上流側)へ移動した位置aにあるときの位置状態である。「状態3」は、スライダ55が状態2よりも所定距離d2(>d1)だけ後方へ移動した位置b(基準位置から「d1+d2」の距離の位置)にあるときの位置状態である。「状態4」は、スライダ55が状態3よりも所定距離d3だけさらに後方へ移動した位置c(基準位置から「d1+d2+d3」の距離の位置)にあるときの位置状態である。
印刷が行われない待機状態やプリンタ11の電源が切断されているときは、スライダ55は「状態2」に配置される。「状態2」では、キャップ41が上昇したキャッピング状態にある。キャップ41は、図20(a)に示すように、「状態1」・「状態2」において閉状態(キャッピング状態)となるキャッピング位置に配置され、「状態3」・「状態4」において開状態(非キャッピング状態)となる退避位置に配置される。また、図20(b)に示すように、ワイパ42は、「状態1」・「状態2」・「状態3」において退避位置(下降状態)に配置され、「状態4」において払拭位置(上昇位置)に配置される。ワイパ42は、スライダ55が状態3と状態4の間を移動する過程で昇降動作し、キャップ41が退避位置に配置された状態で、払拭位置と退避位置(非払拭位置)との間を移動する動作タイミングに設定されている。さらに、図20(d)に示すように、大気開放弁58は、「状態1」において開弁位置に配置され、「状態2」・「状態3」・「状態4」において閉弁位置に配置される。大気開放弁58は、スライダ55が状態1と状態2の間を移動する過程で開閉動作し、キャップ41がキャッピング位置(閉状態)に配置された状態において開閉の切り換えが行われるように設定されている。
よって、スライダ55の「状態1」と「状態2」の間における移動過程において、大気開放弁58が開閉され、スライダ55の「状態2」と「状態3」の間における移動過程において、キャップ41が昇降し、スライダ55の「状態3」と「状態4」の間における移動過程において、ワイパ42が昇降するように構成されている。このように、キャップ41とワイパ42と大気開放弁58は、同時に動作することがなく、それぞれの動作タイミングが少しも重複しないように構成されている。つまり、キャップ41、ワイパ42、大気開放弁58は、それぞれの動作タイミングが全く重複することなく互いに排他的な動作タイミングに設定されている。このため、電動モータ44には、キャップ41、ワイパ42、大気開放弁58のうちどれか一つの被駆動部品を動作(昇降又は開閉)させるための一つ分の負荷しかかからない。ゆえに電動モータ44にかかる最大負荷荷重を、被駆動部品の動作タイミングが重なる構成の場合に比べ、小さく抑えることができる。よって、メンテナンス装置40において電動モータ44に要求される動力が相対的に小さく済み、電動モータ44を外周径の小さな小型なものとすることが可能になっている。
<作用>
次に、上記のように構成されたプリンタ11およびメンテナンス装置40の作用を説明する。プリンタ11の電源が切れているときは、メンテナンス装置40においてスライダ55が「状態2」の位置に配置されており、記録ヘッド17がキャップ41によりキャッピングされた状態にある。プリンタ11に電源が投入されると、制御部37は所定の初期化処理後、メンテナンス装置40を制御して、記録ヘッド17に対して電源投入時のクリーニングを実施する。
次に、上記のように構成されたプリンタ11およびメンテナンス装置40の作用を説明する。プリンタ11の電源が切れているときは、メンテナンス装置40においてスライダ55が「状態2」の位置に配置されており、記録ヘッド17がキャップ41によりキャッピングされた状態にある。プリンタ11に電源が投入されると、制御部37は所定の初期化処理後、メンテナンス装置40を制御して、記録ヘッド17に対して電源投入時のクリーニングを実施する。
まず制御部37は、紙送りモータ25を正転駆動させて、吸引ポンプ43をポンプ駆動させる。この結果、吸引ポンプ43からキャップ41内に負圧が導入され、記録ヘッド17のノズルからインクを強制的に吸引する吸引動作が行われる。この吸引動作によって、ノズル内の増粘インクやインク中の気泡等がインクと共に吸引除去される。吸引動作が終了すると、次に制御部37は電動モータ44を逆転駆動させ、スライダ55を状態2から状態1に対応する位置に移動させる。この結果、スライダ55の当接面55eが大気開放弁58のレバー95aを押圧操作してその弁体95がバネ97の付勢力に抗して弁口部96から離間することで、大気開放弁58が開弁する。大気開放弁58が開弁すると、キャップ41内へ大気が導入されつつ吸引ポンプ43による吸引が行われるので、ノズル17bからインクが吸引されることなく、キャップ41及びチューブ48を通じて空気を吸引する空吸引が行われる。この空吸引によって、キャップ41内に残存するインクがチューブ48を通じて吸引ポンプ43側へ吸引除去される。
その後、紙送りモータ25の逆転駆動が停止されて吸引ポンプ43のポンプ駆動が停止されると、制御部37は電動モータ44を正転駆動させてスライダ55を「状態1」から「状態2」に対応する位置へ移動させる。この結果、スライダ55の当接面55eがレバー95aから離れる方向へ移動し、弁体95がバネ97の付勢力により弁口部96に接近する方向へ移動して弁口部96のシール部96aを閉鎖することで大気開放弁58が閉弁する。
さらに、その後、制御部37は電動モータ44を正転駆動させてスライダ55を「状態2」から「状態4」に対応する位置へ移動させる。この結果、ワイパ42が上昇し、キャリッジ13を主走査方向へ移動させることで、ワイピング操作を行い、ノズル開口面17aに付着したインクを拭取る。ワイピング後はスライダ55を「状態3」に移動させることで、ワイパ42を下降させ、その後、キャリッジ13を元のキャッピング位置に戻す。
ここで、ワイピングによりノズル内にすりこまれたインクによってノズル内のインクが混色してしまうので、ノズル内の混色インクを排出するためにキャップ41内に向けてフラッシング(打ち捨て)を行う。その後、ポンプ駆動を行ってキャップ41内に打ち込まれたインクをキャップ41外に排出する。この時の空吸引は、キャップ41が開いた状態で行うのでインク排出の効率が「状態1」で行う空吸引よりも良い(チューブ48を通すよりもキャップ開放面を通した方が空気を取り込みやすいため)。フラッシングと空吸引は同時に行ってもよい。その後、制御部37は電動モータ44を逆転駆動させてスライダ55を「状態4」から「状態2」に対応する位置へ移動させ、キャッピング状態に戻る。
そして、印刷が開始されると、電動モータ44が正転駆動されてスライダ55が「状態2」から「状態3」に対応する位置へ移動することで、キャップ41が下降する。キャップ41の下降後、制御部37によって、電動モータ44が正転駆動され、給紙ローラ29の回転により用紙が給紙されるとともに、紙送りローラ22により搬送されて用紙が頭出しされる。この頭出し後、キャリッジ13が主走査方向(図1におけるX方向)へ移動しながら記録ヘッド17からインク滴を噴射する印字動作と、用紙を副走査方向(図1におけるY方向)へ所定量だけ搬送する紙送り動作とが交互に繰り返し行われることにより、用紙に印刷データに応じた所定の文字列や画像等が印刷される。
この印刷中においても、タイマが設定時間(例えば10秒)を計時する度に、記録ヘッド17はホームポジションへ移動し、キャップ41内へ印刷とは関係のないインク滴を吐出するフラッシングが行われる。フラッシングが行われることで記録ヘッド17のノズルの目詰まりが予防されたり、ノズル内のインクメニスカスが整えられたりするので、きれいな印刷画質が得られる。本実施形態では、フラッシングは、紙送りモータ25を逆転駆動させて吸引ポンプ43による吸引動作を行いながら行われる。よって、フラッシングで吐出されたインクはキャップ41内に留まることなく、直ちにキャップ41外へ除去されるので、例えばキャップ41に留まったために増粘したインクがインク吸収材67を目詰まりさせてキャップ41からインクが排出されにくくなる事態を効果的に回避できる。
その後、タイマが設定時間を計時してクリーニング時期(インク吸引動作時期)になった場合、あるいは例えばユーザが記録不良を見つけてクリーニングスイッチを操作した場合には、クリーニング動作が実行される。このクリーニング動作時には、キャリッジ13は印刷領域からホームポジション側に移動する。すなわち、制御部37は、キャリッジモータ15を制御してキャリッジ13をホームポジションへ移動させる。
制御部37は、キャリッジ13がホームポジションに到達したことを検出すると、電動モータ44を正転駆動させる。その結果、スライダ55が「状態3」から「状態2」に対応する位置へ移動することで、キャップ41が退避位置からキャッピング位置へ上昇し、記録ヘッド17をキャッピングする。
そして、紙送りモータ25が逆転駆動されて吸引ポンプ43がポンプ駆動されることで、キャップ41内に負圧が導入され、ノズル17bからインクを強制的に吸引除去する吸引動作(クリーニング)が行われる。吸引動作終了後、制御部37は電動モータ44を逆転駆動し、スライダ55を「状態2」から「状態1」に対応する位置に移動させる。この後、大気開放弁58を開弁した状態で吸引ポンプ43を駆動し空吸引が実行される。そして、所定時間が経過する紙送りモータ25の逆転駆動が停止されることで空吸引が終了し、その後、制御部37は、電動モータ44を正転駆動させることで、スライダ55を「状態1」から「状態4」に対応する位置まで移動させる。この結果、まず「状態1」から「状態2」へ至る過程で大気開放弁58が閉弁され、次に「状態2」から「状態3」へ至る過程でキャップ41が退避位置へ下降し、さらに「状態3」から「状態4」へ至る過程でワイパ42が上昇する。そして、制御部37は、キャリッジモータ15を正転駆動してキャリッジ13をホームポジションから印刷領域側へ所定量移動させることで、ノズル開口面17aがワイパ42によりワイピングされる。このワイピングによりノズル開口面17aに付着したインクや紙粉等がワイパ42により拭き取られるとともに、ノズル17b内のインクメニスカスが整えられる。
そして、ワイピングが終了すると、制御部37は電動モータ44を逆転駆動させて、スライダ55を「状態4」から「状態2」に対応する位置まで移動させる。その結果、ワイパ42がまず下降し、その後、キャップ41が上昇することで記録ヘッド17がキャッピングされる。
ここで、本実施形態におけるプリンタ11は例えばモバイルプリンタであるため、電源が切られているときに持ち運びなどされる。例えばプリンタ11を机上に置くときに、比較的強い衝撃が加わると、キャップ41が記録ヘッド17から離間する方向に変位しようとする。しかし、本実施形態では、ピン69〜71の下側頂点とカム溝75〜77の上段部78cにおける下壁面までの距離Cが、キャップ41のシール部66が、ノズル開口面17aに当接して押し潰された潰れ量Δh以下の値に設定されている。そのため、キャップ41が記録ヘッド17から離間する方向へ変位しようとしても、シール部66の潰れ量Δhが回復してシール部66がノズル開口面17aから離間する前に、ピン69〜71が上段部78cの下壁面に当たってキャップ41はそれ以上下方への移動が規制されるので、キャップ41がノズル開口面17aから離間することがない。
例えば、キャップ41が傾いた状態で衝撃を受けても、キャップ41とノズル開口面17aとの間に隙間ができないことから、キャップ41の外側へインクが飛び散ることが防止される。また、キャップ41がノズル開口面17aから離間しないことから、一旦、ノズル開口面17aから離間したキャップ41がノズル開口面17aに再び当接する際に、キャップ41が空気を押し込むことに起因するインクメニスカスの破壊や、ノズル内のインク中に気泡が押し込まれる事態も回避される。
また、プリンタ11に衝撃が加わったとき、スライダ55がその衝撃により移動しようとしても、スライダ55がその基端側に移動したときには、ラック63の歯とピニオン62bの歯62cとの噛み合いが切れるので、歯の破損が防止される。このとき、歯63a,62cの噛み合いが切れても、スライダ55は、バネ97の付勢力により歯62cが歯63aの斜面63bに接触する基準位置に配置されるので、ラック63とピニオン62bの噛み合わせが切れても、メンテナンス装置40の位置精度は保証される。このとき、ラック63の一番目の歯63aが三角形状に形成されているので、バネ97の付勢力がラック63に働いてラック63がピニオン62bと噛み合う方向へ付勢されても、ピニオン62bの歯62cがラック63の一番目の歯63aの斜面63bを滑って、ピニオン62bがラック63の歯63aに乗り上げることがない。
また、プリンタ11では、印刷中に定期的にフラッシングが行われる。タイマが設定時間(例えば10〜20秒の範囲内の値)を計時する毎に、キャリッジ13をホームポジションへ移動させ、記録ヘッド17をキャップ41と対向する位置に配置する。そして、制御部37は、記録ヘッド17に印刷データとは関係のない駆動電圧を印加し、記録ヘッド17の全ノズル17bからキャップ41に向かってインク滴を空吐出するフラッシングを行う。なお、例えばフラッシング時のキャップ41の高さを、キャッピング位置と退避位置との中間位置に設定し、スライダ55の位置として、キャップ41をフラッシング時の中間位置に配置する第5状態を設定してもよい。
以上、上記した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)プリンタ11が小型化するに連れて、持ち運びされる頻度が増えるので、それだけ落下衝撃を受ける頻度が高くなる。しかし、本実施形態では、キャッピング状態において、キャップ41は、そのピン69〜71がカム溝75〜77の下壁面78eに当接するまでの距離Cが、シール部66の潰れ量Δh以下(C≦Δh)に設定されている。このため、プリンタ11に衝撃力が加わった際に、キャップ41がノズル開口面17aから離れる方向へ変位しようとしても、キャップ41がカム溝75〜77の下壁面78eに当接することで、キャップ41がノズル開口面17aからシール部66の潰れ量Δh以上に離間することはない。よって、記録ヘッド17とキャップ41が最大離間してもシール部66がノズル開口面17aに当接した状態が確保される。このため、例えばモバイルタイプのプリンタ11に衝撃が加わっても、キャップ41がノズル開口面17aから離間して隙間が発生することがないことから、キャップ41内のインクがそのような隙間から飛び跳ねることを防止できる。
(1)プリンタ11が小型化するに連れて、持ち運びされる頻度が増えるので、それだけ落下衝撃を受ける頻度が高くなる。しかし、本実施形態では、キャッピング状態において、キャップ41は、そのピン69〜71がカム溝75〜77の下壁面78eに当接するまでの距離Cが、シール部66の潰れ量Δh以下(C≦Δh)に設定されている。このため、プリンタ11に衝撃力が加わった際に、キャップ41がノズル開口面17aから離れる方向へ変位しようとしても、キャップ41がカム溝75〜77の下壁面78eに当接することで、キャップ41がノズル開口面17aからシール部66の潰れ量Δh以上に離間することはない。よって、記録ヘッド17とキャップ41が最大離間してもシール部66がノズル開口面17aに当接した状態が確保される。このため、例えばモバイルタイプのプリンタ11に衝撃が加わっても、キャップ41がノズル開口面17aから離間して隙間が発生することがないことから、キャップ41内のインクがそのような隙間から飛び跳ねることを防止できる。
(2)また、キャップ41がノズル開口面17aから離間しないことから、例えばノズル開口面17aから一旦離れたキャップ41がバネ80の反力で再びノズル開口面17aに当接したときに受ける強い衝撃で、ノズル17b内のインクメニスカスが破壊されることを回避できる。また、ノズル開口面17aから一旦離れたキャップ41がバネ80の反力で再びノズル開口面17aに当接した際に、キャップ41が空気を押し込んでその空気圧によってノズル17b内のインクメニスカスが破壊されたり、ノズル17b内のインク中に気泡(空気)が押し込まれたりする事態を回避することができる。また、ノズル開口面17aを一旦離れたキャップ41がノズル開口面17aに再び当接する際の衝撃力で、キャップ41内のインクが跳ねて、その跳ねたインクがノズル17b内のインクメニスカスを破壊したり、混色の原因となったり、ノズル開口面17a上のノズル17b近傍に付着したインクによってノズルからその後噴射されるインク滴の飛行方向が曲がったりするなどの事態を回避することができる。従って、印字の際のドット抜け、混色、インク滴の飛行曲がりを回避できることから、この種の原因に起因する印字不良を抑えて、品質の高い印刷を実現できる。
(3)カム溝75〜77の上段部78cにおける幅Aをピン69〜71の外径よりも広く設定し、キャッピング状態において、ピン69〜71が上段部78cの上壁面78dに下壁面78eにも接触しないフロート状態に配置されるようにした。よって、キャップ41により記録ヘッド17をしっかりキャッピングすることができる。
(4)大気開放弁を有しない従来のメンテナンス装置で空吸引を行う場合、吸引動作(吸引クリーニング)終了後に、まずキャップを下降し、キャリッジをクリーニング位置から退避させ、その後、キャップを再び上昇させてから、吸引ポンプを駆動させる構成であった。これに対し、大気開放弁58を有する本実施形態のメンテナンス装置40によれば、吸引クリーニング終了後、キャリッジ13もキャップ41も移動させることなくそのキャッピング状態のまま空吸引を即座に実施できる。また、キャリッジを移動させて大気開放弁を開閉させる従来構成の場合、キャリッジを移動させるに当たりキャップを下降させる必要があり、空吸引前に余分な動作が必要になる。しかし、本実施形態の大気開放弁58は、キャップ41を吸引動作時のキャッピング位置に配置した状態のまま開閉できるので、吸引動作終了後にキャップ41を移動させることなく即座に大気開放弁58を開弁させて空吸引を開始することができる。このため、クリーニング所要時間を短縮でき、ひいては印刷のスループット向上に寄与できる。
(5)電動モータ44により移動可能なスライダ55によって、キャップ41の開閉動作と、ワイパ42の昇降動作と、大気開放弁58の開閉弁動作とを、それぞれが同時に動作することのない別個のタイミングで行うように構成した。すなわち、キャップ41の開閉動作をキャップ41の側面のピン69〜71(ボス)とスライダ55の側面のカム溝75〜77との摺動と、キャップ41を押すバネ80とによって制御し、かつワイパ42の昇降動作をワイパ42側のカム溝85,86とスライダ55側のピン81,82(ボス)との摺動により制御し、かつ大気開放弁58の開閉動作を弁口部96に蓋をする弁体95のレバー95aと、スライダ55の当接面55eとの干渉と、レバー95aを押すバネ97により制御する機構により構成した。しかも、キャップ41を動作させる際のスライダ55の移動範囲と、ワイパ42を動作させる際のスライダ55の移動範囲と、レバー95aと当接面55eとを干渉させて大気開放弁58を開閉させる際のスライダ55の移動範囲とを、重複しないように設定した。
よって、キャップ41の開閉、ワイパ42の昇降、大気開放弁58の開閉を別個のタイミングで行うことができるので、電動モータ44が受ける動作荷重が小さく済み、電動モータ44に必要な動力が比較的小さく済む。よって、電動モータ44のサイズの縮小を実現できるうえ、動作の安定性向上が可能になる。
(6)従来のスライダタイプでは、キャップ開閉の駆動力をキャリッジから得ており、キャップが主走査方向にスライドするため、メンテナンス装置がその分主走査方向に大きくなる。これに対し、本実施形態のメンテナンス装置40では、キャップ開閉の駆動力を専用モータ(電動モータ44)から得ており、キャップ動作に伴ってキャップ41の主走査方向の位置は変わらず、しかもスライダ55が主走査方向と直交する紙送り方向(副走査方向)に移動する向きとなるように配置している。そのため、プリンタ11を幅方向に小さくすることができる。
(7)また、キャップとワイパが一体式の従来装置では、ワイパとキャップが同時に動くが、本実施形態ではキャップ41をワイパ42と別個に移動させるので、キャップ・ワイパ一体式の構成に比べ、キャップ41の昇降ストローク(移動量)が小さく済む。よって、メンテナンス装置40の薄型化を図ることができる。
(8)電動モータ44の駆動速度を調整することにより、キャップ動作をワイパ動作とは異なる速度で行うことができるため、キャップ41をゆっくり開けることで、シール部66の縁からインクがノズル開口面17aに飛び散ることを防止できる。
(9)キャップ動作の動力を専用モータである電動モータ44から供給することで、キャップ41が吸引ポンプ43とは別個に動作可能となるため、キャップ41を開けたまま、ポンプ吸引が可能になり、キャップ41内にフラッシングを打ちながら、吸引することができる。このことで動作時間が短縮できる。
(10)キャップ41、ワイパ42、大気開放弁58を、同時に動作することのない排他的な動作タイミングで別個に動作するように構成したので、共通の駆動源(回転駆動源)である電動モータ44にかかる動作荷重を相対的に小さく済ませることができる。よって、動力が小さなより小型な電動モータ44を使用でき、小型な電動モータ44の使用によるメンテナンス装置40の小型化、ひいてはプリンタ11の小型化を図ることができる。また、電動モータ44に過度な動作荷重がかかりにくい構成であるため、メンテナンス装置40の動作安定性を向上できる。
(11)スライダ55のスライド方向(往復直線運動方向)が紙送り方向に略一致する向きにメンテナンス装置40を配置したので、プリンタ11を幅方向に短かなサイズに構成してその小型化を図ることができる。
(12)スライダ55の水平方向における往復直線運動を、カム(カム溝)とカムフォロア(ピン)との係合を介してキャップ41とワイパ42の上下方向の往復直線運動に変換する構成とした。よって、キャップ41とワイパ42はそれぞれの昇降動作時に水平方向の移動を伴わないので、キャップ41とワイパ42の動作を含めて必要になる配設スペースを相対的に狭く済ませることができる。よって、メンテナンス装置40を小型に構成することができる。
(13)スライダ55が基端側へスライドしたときにキャップ41が上昇し、スライダ55が先端側へスライドしたときにワイパ42が上昇する構成とするとともに、キャップ41が下降し終わってからワイパ42が上昇を開始し、また逆にワイパ42が下降し終わってからキャップ41が上昇を開始する動作タイミングに設定した。よって、電動モータ44にはキャップ41を動作させる荷重とワイパ42を動作させる荷重が同時にかかることがなく、電動モータ44にかかる最大動力荷重が小さく抑えられ、電動モータ44の小型化を図ることができる。
(14)スライダ55の当接面55eで弁体95のレバー95aをバネ97の付勢力に抗して押し込むことにより、弁体95を弁口部96から離間させて大気開放弁58を開弁させる構成とした。よって、キャップ41をキャッピング位置に配置したまま大気開放弁58を開弁することが可能になるので、クリーニング過程において吸引動作後にキャッピング状態のまま空吸引を即座に行うことができる。よって、空吸引を行うためにキャップを下降させるなど従来構成で問題であった不要な動作を無くすことができ、クリーニングに要する所要時間を短縮できる。
(15)プリンタ11の電源遮断時などキャップ41がキャッピング位置に配置された状態で、プリンタ11が落下等されて、スライダ55がその衝撃により変位しようとしてもその変位しようとする力はバネ97により吸収されるうえ、ピニオン62bとラック63との噛み合いが切れるので、ラック63やピニオン62bの歯63a,62cに衝撃時の負荷がかかりにくい。よって、ラック63やピニオン62bの歯63a,62cの破損を防止できる。
(16)ラック63とピニオン62bの噛み合わせが切れても、バネ97の復元力によりピニオン62bはラック63の1番目の歯63aに当たる基準位置に配置される。よって、次回、ピニオン62bが正転駆動すれば、ピニオン62bとラック63は噛合できる。よって、例えばラック63とピニオン62bの噛み合わせが切れた後、電動モータ44が駆動されれば、メンテナンス装置40を確実に駆動させることができる。
(17)大気開放弁58のバネ97が、ラック63とピニオン62bとの噛み合いが切れた後、ラック63をピニオン62bと噛み合う側へ付勢するバネを兼ねているので、バネの部品点数をその分少なく済ませられる。よって、部品点数の低減により、メンテナンス装置40の構成を簡単にできるとともにその小型化にも寄与できる。
(18)ラック63側の1番目の歯63aを歯先が尖った三角形状に形成したので、バネ97の復元力によりラック63がピニオン62b側へ押されても、ピニオン62bの歯62cは、ラック63の1番目の歯63aの斜面63bを滑るため、ラック63の歯63aに乗り上がることを防止できる。このため、ラック63とピニオン62bの歯63a,62cが切れた後、スライダ55を一層確実に基準位置に位置出しすることができる。例えばピニオン62bの歯62cがラック63の歯63aに乗り上げたために、スライダ55が基準位置へ位置出しされなくなる不都合を回避しやすくなる。
(19)ラック63とピニオン62bとの噛み合わせが切れる位置をスライダ55の基準位置としたので、スライダ55を基準位置に位置出しすることができ、位置検出用のエンコーダを不要にすることができる。よって、メンテナンス装置40を、エンコーダを無くした簡単な構成にすることができる。また、電源オン時にスライダ55を「状態2」から「状態1」まで移動させて基準位置に位置出しする他、クリーニング時に空吸引が行われる度にスライダ55の基準位置への位置出しが行われる。よって、スライダ55の基準位置への位置出し頻度が増えるので、スライダ55の位置精度を高く確保できる。
(20)電動モータ44の動力をスライダ55に伝達する動力伝達機構としてラックアンドピニオンを採用したので、従来の円筒カム機構を採用するメンテナンス装置に比べ、メンテナンス装置40の薄型化を図ることができる。
尚、発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)前記実施形態におけるメンテナンス装置40では、吸引ポンプ43の駆動源を紙送りモータ25とし、排紙ローラ23の回転動力を吸引ポンプ43に入力する構成としたが、これに限定されない。例えば図22に示すように吸引ポンプ専用の電動モータ(ポンプモータ)を設けることもできる。すなわち、図22に示すメンテナンス装置100には、ポンプモータ101が配設されている。ポンプモータ101は減速機構103を介して吸引ポンプ43の入力軸(図示せず)と動力伝達可能に連結されている。ポンプモータ101の出力軸に連結されたピニオン102は、減速機構103を構成する二段歯車104の大歯車部と噛合し、その小歯車部が吸引ポンプ43の駆動軸に連結された入力歯車105と噛合している。この構成によれば、フラッシングと吸引ポンプ43によるポンプ吸引を同時に行うことが可能になるので、フラッシングを打ちながらキャップ41内のインクを吸引するシーケンスを採用できる。よって、キャップ41内にインクが滞留した状態でフラッシングが行われることがなくなるので、フラッシングをキャップ41内のインクに噴射されて跳ねによるミスト発生を防止できる。また、キャップ41内にインクが滞留したまま放置されることがなくなるので、キャップ41内のインクが乾燥してキャップ41内に蓄積するインク由来の保湿剤(グリセリン等)の濃度が高くなって、その増粘したインクに起因してキャップ41内に保湿剤が堆積することを防止でき、これによりキャップ41の目詰まりを効果的に防止できる。
(変形例1)前記実施形態におけるメンテナンス装置40では、吸引ポンプ43の駆動源を紙送りモータ25とし、排紙ローラ23の回転動力を吸引ポンプ43に入力する構成としたが、これに限定されない。例えば図22に示すように吸引ポンプ専用の電動モータ(ポンプモータ)を設けることもできる。すなわち、図22に示すメンテナンス装置100には、ポンプモータ101が配設されている。ポンプモータ101は減速機構103を介して吸引ポンプ43の入力軸(図示せず)と動力伝達可能に連結されている。ポンプモータ101の出力軸に連結されたピニオン102は、減速機構103を構成する二段歯車104の大歯車部と噛合し、その小歯車部が吸引ポンプ43の駆動軸に連結された入力歯車105と噛合している。この構成によれば、フラッシングと吸引ポンプ43によるポンプ吸引を同時に行うことが可能になるので、フラッシングを打ちながらキャップ41内のインクを吸引するシーケンスを採用できる。よって、キャップ41内にインクが滞留した状態でフラッシングが行われることがなくなるので、フラッシングをキャップ41内のインクに噴射されて跳ねによるミスト発生を防止できる。また、キャップ41内にインクが滞留したまま放置されることがなくなるので、キャップ41内のインクが乾燥してキャップ41内に蓄積するインク由来の保湿剤(グリセリン等)の濃度が高くなって、その増粘したインクに起因してキャップ41内に保湿剤が堆積することを防止でき、これによりキャップ41の目詰まりを効果的に防止できる。
(変形例2)前記実施形態では、プリンタ11を水平に設置した状態で、スライダ55が水平方向に直動する向きにメンテナンス装置40を装備して、キャップ41及びワイパ42が上下方向(鉛直方向)に往復移動可能な構成としたが、これに限定されない。例えばメンテナンス装置をスライダが往復直線運動を行う直動方向が上下方向となる向きに配置してもよい。例えばノズル開口面が鉛直となる向きに配置された流体噴射ヘッドを有するプリンタにおいて、キャップ及びワイパをノズル開口面と略垂直な方向に往復動させることができる。さらに、キャップ及びワイパの移動方向が水平に対して斜めとなる向きにメンテナンス装置を配置してもよい。さらに前記実施形態では、スライダの直動方向が紙送り方向と略一致する向きにメンテナンス装置を配置したが、メンテナンス装置をスライダの直動方向が紙送り方向と略直交する向きに配置してもよい。
(変形例3)前記実施形態では、スライダ55の往復移動によって動作される被駆動部品として、キャップ41、ワイパ42、大気開放弁58を備えたが、これに限定されない。被駆動部品は、キャッピング時のキャリッジ13をクリーニング位置にロックさせるキャリッジロック部材でもよく、キャリッジロック部材をクリーニング位置に配置されたキャリッジ13と係合するロック位置と、キャリッジ13と係合しない退避位置との間で移動させる構成でもよい。例えばスライダのカム溝をもう少し長く延長するとともに、スライダ内においてキャップと隣接する位置にキャリッジロック部材を昇降可能に配置するとともにその側面から突出するピン(カムフォロア)をカム溝内に挿入させる。キャリッジロック部材の動作タイミングは、キャップ41、ワイパ42、大気開放弁58と同時に動作しないように設定する。
(変形例4)前記実施形態では、スライダ55がバネ97の付勢力に抗してレバー95aを押すことのない第一位置(状態2、状態3、状態4)に配置されているときに大気開放弁58が閉弁し、スライダ55がバネ97の付勢力に抗してレバー95aを押す第二位置(状態1)に配置されたときに大気開放弁58が開弁する構成としたが、これに限定されない。逆に、スライダが第一位置にあるときに大気開放弁が開弁し、第二位置にあるときに大気開放弁が閉弁する構成も採用できる。例えば、キャップと接続された大気開放用のチューブ57の端部に取付られた弁口部96がスライダ55に共に移動可能に設けられ、一方、弁体95がフレーム51側に支持されるとともに弁口部96に接近する方向にバネによって付勢されている構成とする。この場合、スライダが、弁体をバネの付勢力に抗して変位させることのない第一位置に配置されているときに大気開放弁は開弁する。そして、スライダが第一位置よりバネの付勢方向と反対の方向へ移動して、スライダと共に移動した弁口部がバネの付勢力に抗して弁体を少し変位させる状態で該弁体に当接すると、大気開放弁は閉弁する。キャッピング時はスライダを第二位置に配置し、空吸引時はスライダを第一位置に配置する。この構成では、キャッピングの度にスライダを基準位置に位置出しできる。また、キャッピング状態で圧縮状態にあるバネにさらに圧縮できる圧縮代を設けておけば、空吸引時だけでなく大気遮断状態のキャッピング時においても、プリンタの落下等の衝撃付与時に、スライダがバネの付勢力に抗して移動してもラックとピニオンの噛み合わせが切れるので、ラック又はピニオンの歯の破損を防止できる。
(変形例5)前記実施形態では、キャップの昇降機構を構成するカム機構を、スライダ側にカム(カム溝)、キャップ側にカムフォロア(ピン)の構成としたが、これに限定されない。例えばキャップ側にカム(カム溝)、スライダ側にカムフォロア(ピン)の構成でもよい。さらにワイパの昇降機構を構成するカム機構については、ワイパ側にカム(カム溝)、スライダ側にカムフォロア(ピン)の構成としたが、これとは逆に、スライダ側にカム溝、ワイパ側にカムフォロア(ピン)とする構成も採用できる。
(変形例6)キャップ、大気開放弁、ワイパ、キャリッジロック部材のうちから選択される任意の二つ以上を被駆動部品として採用することができる。例えばキャップと大気開放弁の他、大気開放弁とワイパ、大気開放弁とキャリッジロック部材、ワイパとキャリッジロック部材、キャップとキャリッジロック部材など二つの被駆動部品を備えたメンテナンス装置を採用できる。また、キャップと大気開放弁とワイパの他、キャップと大気開放弁とキャリッジロック部材、キャップとワイパとキャリッジロック部材など三つの被駆動部品を備えたメンテナンス装置も採用できる。その他、被駆動部品は、どの二つをとっても同時に動作しないタイミングで個別に動作される限りにおいて、四つ以上の複数個設けられたメンテナンス装置として構成することもできる。
(変形例7)キャップは一個であったが、記録ヘッドが複数ある構成、又は、一つの記録ヘッドにおける異なるノズル列をそれぞれ囲むようにノズル開口面に当接可能に設けられた複数のキャップを昇降させる構成も採用できる。
(変形例8)ラックアンドピニオン機構を構成するラックが上下動可能に配置され、ラックが上下動することにより該ラックと連結されたキャップが昇降する昇降機構にも適用できる。このようにラックによりキャップを直接昇降させる構成においても、衝撃が加わった時にラックとピニオンの噛み合わせが切れるので、歯の折れ等の破損を防止でき、しかも噛み合わせが切れた後にバネの復元力によって再びラックの歯がピニオンの歯に当たる状態にできるので、次回、電動モータが駆動されればピニオンとラックを噛み合わせできる。
(変形例9)キャップの移動は昇降に限定されず、水平方向の往復移動でもよい。例えばキャップが真横に進み、その後、キャップが上昇してノズル開口面に当接する構成を採用できる。また、液滴着弾面(記録面)が縦(鉛直)になるように配置された媒体(記録用紙)に対して水平方向に流体を噴射する水平噴射タイプの流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置においては、キャップおよびワイパを略水平方向に移動させてノズル開口面に離接させる構成であってもよい。
(変形例10)前記実施形態では、キャリッジを有するプリンタ11であったが、キャリッジを有さず複数の流体噴射ヘッドが記録用紙の幅に渡って固定されたフルラインヘッドを有する流体噴射装置(例えばラインプリンタ)に、本発明のメンテナンス装置を採用することもできる。フルラインヘッドでも、ワイパを除いたキャップとバルブだけであればメンテナンス装置を使用できる。また、フルラインヘッドのワイピングにも対応できるメンテナンス装置として構成してもよい。例えばワイパが昇降に加えワイパに払拭動作を行わせるための往復移動運動をスライダの移動に応じて行う構成としたり、メンテナンス装置全体がワイパストロークに相当する移動量の移動を行う構成としてもよい。また、例えばフルラインヘッドがワイパストローク分以上移動できる機構を有していれば、ワイパも適用できる。また、インクカートリッジ32が本体フレーム12側に装填されるいわゆるオフキャリッジタイプのプリンタに適用したが、例えばインクカートリッジがキャリッジに装填されるいわゆるオンキャリッジタイプのプリンタに適用することもできる。
(変形例11)前記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置のメンテナンス装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)前記被駆動部品として、前記キャップと前記大気開放弁と前記ワイパの三つを備えることを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
(1)前記被駆動部品として、前記キャップと前記大気開放弁と前記ワイパの三つを備えることを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
(2)前記流体噴射装置は、前記流体噴射手段による流体の噴射対象である媒体の搬送方向に対して略直交する主走査方向に当該流体噴射手段と共に一体に移動可能に設けられたキャリッジを備え、前記被駆動部品として、請求項2において記載した前記キャップと、前記大気開放弁と、前記ワイパの他に、前記キャップが前記流体噴射手段に当接する状態にある前記キャリッジを移動不能に位置規制する規制位置と前記キャリッジを位置規制しない非規制位置間を移動可能に設けられたキャリッジロック部材を加えた四つのうち、少なくとも二つを備えることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
(3)前記複数の被駆動部品の一つとして、前記流体噴射ヘッドに当接するキャッピング位置と前記流体噴射ヘッドから離間する退避位置との間を移動可能に設けられたキャップを備え、前記キャップを前記退避位置から前記キャッピング位置へ向かう方向に付勢する付勢手段と、前記駆動部材が前記キャップを前記キャッピング位置に配置する状態において前記付勢手段の付勢力に抗して前記キャッピング位置から前記退避位置側へ変位しうる当該キャップの許容変位量を、当該キャップが前記流体噴射ヘッドとの当接が解消される位置まで移動するのに必要な必要移動量より小さく制限するように当該キャップの前記退避位置側への変位する規制する規制手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
(4)前記技術的思想(3)において、前記駆動部材の往復移動過程において、前記キャップと前記駆動部材のうち一方に設けられた凸状のカムフォロアが他方に設けられた凹状のカムに沿って案内されることによって前記キャップは前記退避位置と前記キャッピング位置との間を移動可能に構成されており、前記規制手段は、前記カムフォロアと前記カムとにより構成され、前記キャップが前記キャッピング位置に配置された状態において、前記カムフォロアと前記カムの凹内における退避位置側の内壁面との間の距離が、前記付勢手段の付勢力によって前記キャップが前記流体噴射ヘッドへ押し付けられた状態における前記キャップのシール部の潰れ量以下に設定されていることを特徴とする流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
(5)前記動力源は回転動力源であり、前記複数の被駆動部品のうちの一つとして、前記流体噴射ヘッドから離間する退避位置と前記流体噴射ヘッドに当接するキャッピング位置との間を移動可能に設けられたキャップを備え、前記駆動部材は、前記回転動力源の動力に基づき回転する歯車と該歯車と噛み合い可能なラックを有し、前記回転動力源の回転動力を前記歯車と前記ラックとの噛み合わせを介して前記スライダの直動運動に変換するとともに該スライダの動力を前記キャップに伝達して該キャップを移動させる動力伝達機構を前記動力伝達手段は含み、前記駆動部材が前記ラックと前記歯車との噛み合わせが切れた位置に配置された場合に該スライダを前記ラックと前記歯車とが噛み合う方向へ付勢する付勢手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
(6)前記技術的思想(5)において、前記複数の被駆動部品の一つとして、前記キャップの内部と連通状態に接続されるとともに該キャップと大気との連通を開閉する大気開放弁を更に備え、前記付勢手段は、前記大気開放弁の弁体を開弁方向又は閉弁方向へ付勢していることを特徴とする流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
11…流体噴射装置としてのプリンタ、13…キャリッジ、15…キャリッジモータ、16…タイミングベルト、17…流体噴射手段(流体噴射ヘッド)としての記録ヘッド、17a…ノズル開口面、17b…ノズル、22…搬送手段を構成する紙送りローラ、23…搬送手段を構成する排紙ローラ、25…搬送手段を構成する紙送りモータ、32…インクカートリッジ、40…メンテナンス装置、41…被駆動部品及び保守部品としてのキャップ、42…被駆動部品及び保守部品としてのワイパ、43…吸引ポンプ、44…動力源(回転駆動源)としての電動モータ、51…フレーム、55…駆動部材としてのスライダ、55e…動力伝達手段を構成する当接面、58…被駆動部品としての大気開放弁、61…モータ歯車、62…二段歯車、62b…ピニオン、63…ラック、65…キャップホルダ、66…シール部(封止壁)、69〜71…動力伝達手段を構成する凸状のカムフォロアとしてのピン、75〜77…動力伝達手段を構成する凹状のカムとしてのカム溝、80…バネ(圧縮バネ)、81,82…動力伝達手段を構成するピン、85,86…動力伝達手段を構成するカム溝、95…弁体、95a…動力伝達手段を構成するレバー、96…弁口部、97…付勢手段としてのバネ、100…メンテナンス装置、101…ポンプモータ。
Claims (9)
- 流体をノズルから噴射する流体噴射手段を備えた流体噴射装置におけるメンテナンス装置であって、
動力源と、
前記動力源の動力により往復直線運動を行う駆動部材と、
前記流体噴射手段のメンテナンスを行うために用いられる複数の被駆動部品と、
前記駆動部材が往復直線運動を行うことにより該駆動部材の移動位置に応じて前記各被駆動部品が同時に動作しない個別のタイミングでそれぞれの作用位置と非作用位置との間を動作するように前記駆動部材と前記各被駆動部品との間にそれぞれ設けられた動力伝達手段と
を備えたことを特徴とする流体噴射装置におけるメンテナンス装置。 - 前記複数の被駆動部品として、前記流体噴射手段に前記ノズルを囲む状態に当接するキャッピング位置と前記流体噴射手段から離間する非キャッピング位置との間を移動可能なキャップと、前記キャップ内と連通状態に接続されるとともに該キャップ内を大気に開放する開弁位置と大気との連通を遮断する閉弁位置とに切り換えられる大気開放弁と、前記流体噴射手段のノズル開口面を払拭可能な払拭位置と払拭不能な非払拭位置間を移動可能なワイパとのうち少なくとも二つを備えることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
- 前記被駆動部品として、前記キャップと前記大気開放弁との二つを少なくとも備え、
前記キャップがキャッピング位置に配置された状態で、前記大気開放弁が前記閉弁位置と前記開弁位置とに切り換えられる動作タイミングに設定されていることを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。 - 前記被駆動部品として、前記キャップと前記ワイパとの二つを少なくとも備え、
前記キャップが退避位置に配置された状態で、前記ワイパが前記払拭位置と前記非払拭位置との間を移動する動作タイミングに設定されていることを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。 - 前記複数の被駆動部品のうち前記流体噴射手段の保守を行う保守部品は、前記駆動部材の往復直線運動方向と略直交する所定方向へ移動可能に設けられ、
前記動力伝達手段は、前記駆動部材の往復直線運動を前記保守部品の前記所定方向への往復直線運動に変換するカム機構であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。 - 前記カム機構は、前記駆動部材と前記被駆動部品とのうち一方に設けられた凹状のカムと、前記カムの凹内に係入された状態で他方に設けられた凸状のカムフォロアとを有することを特徴とする請求項5に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。
- 前記被駆動部品としてキャップと大気開放弁を備え、前記大気開放弁は前記キャップ内と連通するとともに端部が開口する弁口部と、該弁口部に当接したときに前記開口を閉じる閉弁位置と前記弁口部から離間したときに前記開口を開放する開弁位置とに配置される弁体と、該弁体を前記弁口部に近づく方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記弁体と前記弁口部とのうち一方が両者を前記閉弁位置と開弁位置の位置関係に配置しうるように前記駆動部材の移動によって変位するように設けられ、
前記弁体又は前記弁口部の移動方向が前記駆動部材の直線運動方向と略平行に設定されるとともに、前記駆動部材が前記付勢手段を付勢力に抗して前記弁体又は前記弁口部を変位させることのない第一位置と、前記駆動部材を前記第一位置から前記付勢手段による付勢方向と反対の方向に移動させて前記弁体又は前記弁口部を前記付勢手段の付勢力に抗して変位させる第二位置とに配置されることで前記大気開放弁の開閉が切り換えられるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の流体噴射装置におけるメンテナンス装置。 - 流体噴射手段を備えた流体噴射装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のメンテナンス装置を備えた流体噴射装置。 - 流体噴射手段のノズルから流体が噴射される対象である媒体を、前記流体噴射手段に対して流体噴射方向と対向する位置を通るように搬送する搬送手段を更に備え、
前記メンテナンス装置は、前記駆動部材の移動方向が前記媒体の搬送方向と略平行となる向きに配置されていることを特徴とする請求項8に記載の流体噴射装置。
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