JP2008179758A - 建築用配管材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】床材に管材を貫通施工し、管材の一端部を床材の加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、管材の他端部を床材の非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた状態で、床下から加熱する耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法に基づく防火区画等を貫通する管の性能試験の評価方法,ISO834−1に従う)を実施したときに、燃焼前の管材の加熱側端部における管内断面積をS1、燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積をS2とすると、(S2/S1)×100≦50の関係を満たすことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
一方、建築物内には、配管(電線管、排水管、ダクト等)が設置されるが、かかる配管は、上記のような防火区画を貫通するものもある。
上記防火区画に、配管等を貫通させる貫通孔(以下、「区画貫通部」と記す)を設けた場合、火災が発生すると、この区画貫通部を介して、火災が発生した部屋から防火区画を挟んだ隣の部屋に、炎や煙がすぐに入り込み、短時間で大きな火災事故を招く恐れがある。
そのため、建物内の区画貫通部を貫通する配管材は、区画貫通耐火試験に合格し、国土交通省認定または消防評定を受けたものしか設置できないと建築基準法に定められている。
また、この区画貫通部には、配管を貫通させた後、前記区画貫通部と配管との間に隙間が生じないように、隙間を不燃材料であるモルタルなどにより閉塞する防火措置工法が行われている。
一方、配管材が、合成樹脂製である場合は、金属製のものに比べて、軽量で取り扱い性に優れ、接合が簡単であるなどのメリットが大きいが、耐熱性、耐火性に劣る。したがって、火災時に、配管材が、燃焼によって消失したり、熱変形して、区画貫通部と配管材との間に隙間が生じて、防火区画の一方の側で発生した熱、火炎、煙等が他方側へ到達してしまう恐れがある。
一方、上記特許文献3の耐火性樹脂組成物の場合、無機充填剤と可塑剤とが多量に配合されている。そのため、これらの耐火性樹脂組成物から配管材を成形した場合には、管として必須の条件である機械的強度が得られない。
(1)配管材の燃焼速度を遅延させて、非加熱側に火炎を噴出させないこと。
燃焼速度を遅延させるには、配管材そのものの燃焼を防止するとともに、燃焼時に管壁を熱膨張させ、配管材の貫通部内への熱の流入をできるだけ防ぐようにすることが望ましい。すなわち、加熱側において、配管材を閉塞させて遮炎することが最良である。また、膨張後の残渣が脱落しないことがより好ましい。
(2)燃焼時に配管材とその外周のモルタルとのシールを保って、非加熱側へ発煙させないこと。
すなわち、請求項1記載の発明の建築用配管材は、床材に管材を貫通施工し、管材の一端部を床材の加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、管材の他端部を床材の非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた状態で、床下から加熱する耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法に基づく防火区画等を貫通する管の性能試験の評価方法,ISO834−1に従う)を実施したときに、燃焼前の管材の加熱側端部における管内断面積をS1、燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積をS2とすると、(S2/S1)×100≦50 の関係を満たすことを特徴とする。
使用される床材としては、上記PC板の他に、
例えば、
1)構造用合板(厚さ12mm)の上に、石膏ボード(厚さ9.5mm)を張り、下面に強化石膏ボード(厚さ15mm)を張った木製枠組造の部材。
2)構造用合板(厚さ12mm)の上に、石膏ボード(厚さ12.5mm)を張り、下面に強化石膏ボード(厚さ12.5mm)を2枚張った木製枠組造の部材
3)厚さ100mm以上の軽量発泡コンクリート(ALC)板
4)厚さ70mm以上のプレキャストコンクリート(PC)板
などが用いられるが、特に、厚さ100mm以上のALC板、PC板が好適である。
配管材と区画貫通部との間隙はモルタルで閉塞した。配管材は、一端部を床材の加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、配管材の他端部を床材の非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。
また、耐火試験炉は、床材の片面を加熱できる構造のものとし、床材の加熱側の片面を試験面としたときに、ISO834−1の規定に従う下記の(式1)に基づく温度の時間的変化を床材の試験面の全面にほぼ一様に与えられるようなものとした。
つまり、耐火試験炉に、炉内温度を測定するための熱電対(以下、「炉内熱電対」という)の熱接点1〜10個を床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材から100〜300mm離れた位置に設置した。
そして、ISO834−1の規定に従って、熱電対によって測定した温度(以下、「加熱温度」という)の時間経過が、下記の(式1)で表される数値となるように、耐火試験炉を加熱した。
T=345log10(8t+1)+20 (式1)
この(式1)において、Tは平均炉内温度(℃)、tは試験の経過時間(分)とする。また、温度測定は、1分以内ごとに行うものとした。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とする。S2の測定方法としては、以下のように種々挙げられる。
・加熱側から観察した写真を用いた画像解析する方法。
・投影部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに単位面積あたりの重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出する方法。
煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定する。
煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定する。
本発明において、熱膨張性黒鉛の膨張容積とは、熱膨張後における熱膨張性黒鉛1gあたりの容積のことである。
1)試料1gを事前に加熱炉内で20分以上加熱していた500ccのビーカーに入れて、加熱炉(炉内温度:1000℃)内で加熱する。
2)30秒経過後、加熱炉内からビーカーを取り出す。
3)ビーカー内の試料を室温まで冷却する。
4)膨張後の試料の重量と容積とを測定する。
5)(膨張後の試料の容積)/(膨張後の試料の重量)を算出する。
請求項3記載の発明において、熱膨張性黒鉛の膨張容積を100〜250(ml/g)とした理由としては、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100(ml/g)未満であると、膨張容積が小さく十分な耐火性を発現できず、耐火性を上げるために大量の熱膨張性黒鉛を添加する必要があり、物性や成形性等に不具合が生じる恐れがあるからである。一方、熱膨張性黒鉛の膨張容積が250(ml/g)を超えると、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまう恐れがあるからである。なお、請求項3記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の膨張容積は、好ましくは120〜230(ml/g)であり、さらに好ましくは140〜220(ml/g)である。
また、塩基性化合物を1〜5重量部配合した理由としては、塩基性化合物が1重量部未満であると、燃焼時に、ポリ塩化ビニル系樹脂の硬さ(粘度)を保つことができず、管材の貫通部内のポリ塩化ビニル系樹脂が、管の加熱側の端部を閉塞せずに下方に垂れ落ち、管内を効果的に閉塞することができないことがあるからである。一方、塩基性化合物が5重量部を超えると、燃焼時に、ポリ塩化ビニル系樹脂の伸びが小さくなり、管の加熱側の端部を効果的に閉塞することができないことがあるからである。
請求項1記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の平均粒径は、一般的な大きさのものが用いられ、100〜600μmである。
したがって、ハロゲン化合物であるポリ塩化ビニル系樹脂に、熱膨張性黒鉛を入れながら、相乗効果の高いアンチモン化合物を混入すると、難燃性の相乗効果が非常に高くなり、燃焼遅延効果が著しく発揮される。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、成形温度は、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度以下で成形することが好ましい。成形温度は、得られた成形体の引張強度や耐衝撃性に影響を及ぼすことから、上記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は180℃以上が好ましく、さらに好ましくは200℃以上である。
燃焼前の管材の加熱側端部における管内断面積をS1、燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積をS2とすると、
(S2/S1)×100≦50
の関係を満たすので、燃焼時には、管内断面積が、燃焼前の管内断面積S1の50%以下になる。その結果、管内を熱気が上昇するのを効果的に防止でき、床材に対する非加熱側の配管材の温度上昇を緩和することができる。したがって、配管材が燃えだしたり、配管材が軟化してモルタル界面との隙間が生じて非加熱側に発煙したりするのを防止することができ、遮炎性、遮熱性、遮煙性が向上する。
このように、本発明の建築用配管材は、それ自体が優れた耐火膨張性を備えており、燃焼時には配管材自体が膨張するとともに、燃焼速度の遅延効果を発揮して、区画貫通部で仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。そのため、従来のように、配管材の周囲に他の耐火部材を設ける必要がない。
また、施工時の仮配管時に、位置確認のためにマーキングするなどの作業が不要となり、単に、区画貫通部に前記建築用配管材を挿通させるだけでよいので、作業を大幅に軽減でき、現場施工性を飛躍的に向上させることができる。
さらに、本発明の建築用配管材は、塩化ビニル樹脂製パイプの外周に繊維強化モルタルを被覆した、いわゆる耐火二層管に比べて、管外径が大きくならないので、貫通口を複数設ける場合に、各貫通口の間隔を小さく取れる上、床下に配管する場合に、勾配がとりやすくなるなど、画期的に施工性が向上する。
すなわち、ポリ塩化ビニル系樹脂は、自己消火性があるので、燃焼速度の遅延が効果的に行われ、燃焼時の火炎の伝播速度を抑えることができる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、燃焼初期に発泡するので、熱膨張性黒鉛が膨張しやすいという利点がある。
また、熱膨張性黒鉛は、それ自体が燃えにくく、かつ熱により膨張して断熱効果が発現する。また、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲であるので、燃焼時には効果的に膨張する上、熱膨張性黒鉛が適度な割合で配合されているので、残渣の形状保持性に優れており、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われる。
そして、燃焼時には、ポリ塩化ビニル系樹脂が、脱塩酸を繰り返して、炭化が促進され強固な残渣を形成するため、熱膨張性黒鉛との相乗効果が大きくなる。
また、無機充填剤をポリ塩化ビニル系樹脂に配合したものでは、無機充填剤が燃焼時に骨材的な働きをして、膨張した管壁を強固に保つことができるので、残渣が脱落しにくく、管の燃焼速度を効果的に遅延させることができる。
その結果、建築用配管材を床面に貫通させた場合には、床下面で1000℃以上の熱が加わりながらも、床下面で残渣が脱落せず、管を閉塞するに近い状態が長時間続く。つまり、燃焼時に管内断面積が小さくなることで、管内を熱気が上昇するのを防止し、床面に対して非加熱側の配管材の温度上昇を緩和することができ、その結果、配管材が燃えだしたり、配管材が軟化してモルタル界面との隙間が生じて非加熱側に発煙したりするのを防止でき、遮炎性、遮熱性、遮煙性が飛躍的に向上する。
さらに、本発明の建築用配管材は、管として十分な機械的物性を備えている上、成形性に優れており、例えば、射出成形や押出成形などによって、高い寸法精度で連続的に生産できる。
すなわち、本発明の建築用配管材は、熱膨張性黒鉛が適度な割合で配合されているので、燃焼初期に、まず、ポリ塩化ビニル系樹脂が適度な柔らかさに軟化して、自重で伸びて細くなった後、加熱側の熱気によって反り返り、管の加熱側端部を速やかに閉塞することができる。その後の加熱により、熱膨張性黒鉛が膨張しながら酸を放出し、管の燃焼に必要な酸素の供給が遮断されるとともに、熱膨張性黒鉛の膨張による断熱効果が得られるため、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化が促進される。その上、熱膨張性黒鉛から酸が放出されることにより、ポリ塩化ビニル系樹脂の脱塩酸(分解)反応が促進され、ポリ塩化ビニル系樹脂の炭化がより一層効果的に促進される。
このようにして、膨張後の熱膨張性黒鉛とポリ塩化ビニル系樹脂の炭化物とが強力に絡まりあって形成された残渣が、燃焼側に落下することなく、その形状を保持するため、管の加熱側端部を確実に閉塞することができる。
さらに、その後も、配管材の区画貫通部内の樹脂が、閉塞部に向かって少しずつ流れ込み、閉塞部に供給されるため、残渣がますます大きく強固になる。こうして、残渣は加熱側に伸長しながら保持されていく。
また、本発明の建築用配管材は、安定剤が適度な割合で配合されているので、管の成形時に、熱膨張性黒鉛が酸を放出することによって起こるポリ塩化ビニル系樹脂の脱塩酸(分解)反応を効果的に抑制し、安定した状態で管の成形を行うことができる。
さらに、本発明の建築用配管材は、無機充填剤として塩基性化合物が配合されているので、管の成形時に、ポリ塩化ビニル系樹脂が脱塩酸(分解)反応を開始して塩酸ガスを放出すると、塩基性化合物が、その塩酸ガスをキャッチして、分解の連鎖反応を抑制する役割を果たす。したがって、成形時のポリ塩化ビニル系樹脂の脱塩酸(分解)反応を効果的に抑制できる。その上、塩基性化合物は、その配合割合によって燃焼時における樹脂の硬さを調整する役割があるため、塩基性化合物を適度な割合で配合したことにより、燃焼時における樹脂の硬さを適度な状態に保つことができ、管の加熱側端部を迅速かつ確実に閉塞、伸長させることができる。
以上、詳細に説明したとおり、本発明の建築用配管材によれば、強固な残渣で区画貫通部を確実に閉塞でき、しかもその閉塞状態を長時間維持することができる。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
また、この建築用配管材Pから、熱膨張性評価および性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して厚さ3mmのプレス板を1cm角に切り作製した。
試験片について耐火試験を実施した。試験方法としては、まず、試験片を500℃に加熱した電気炉内に入れて、40分間放置した。そして、試験片を炉から取り出して放冷した後に、試験片の厚みを測定した。
耐火試験後の試験片の厚み(膨張後厚み)が4mm以上であれば合格、4mm未満であれば不合格とした。
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yには、プレキャストコンクリート板(長さ1200mm,幅600mm,厚さ100mm)を使用した。また、防火措置工法としては、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの間隙をモルタルで閉塞した。また、建築用配管材Pの一端部を床材Yの加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、建築用配管材Pの他端部を床材Yの非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。なお、耐火試験炉Xの加熱室Zの内部の側壁には、バーナーV,Vが設置されている。また、加熱室Zの内部には、炉内熱電対Qの熱接点2個が、床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材Yから300mm離れた位置に設置されている。さらに、耐火試験炉Xには、図示していないが、炉内圧力を測定する装置が設置されている。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間を測定した。煙の発生の有無については、目視で判断した。
さらに、観察用窓Gから建築用配管材Pの燃焼の様子を目視観察し、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出た時点で耐火試験炉Xの燃焼をストップした。
そして、図7に示すように、燃焼前の建築用配管材Pの加熱側端部における管内断面積をS1とし、図8に示すように、燃焼後の建築用配管材Pの最小内径部における管内断面積をS2として、以下の計算式により、燃焼後の建築用配管材Pの管内の閉塞度合いを燃焼後管内断面積割合として算出した。
燃焼後管内断面積割合=(S2/S1)×100
なお、管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を2方向(直角)で測定し、平均内径を出した後、算出した。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とした。
S2の測定方法は、加熱側から観察した写真で、管内最小内径部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに面積と重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出した。
煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定した。
(表2)に示すように、(比較例1)〜(比較例5)は、すべて(耐火性評価)が不合格であった。
したがって、(熱膨張性評価)(性能評価)(耐火性評価)の全てを満足する建築用配管材を得るためには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)である熱膨張性黒鉛を1〜10重量部配合させる必要があることがよくわかる。
なお、熱膨張性黒鉛が10重量部を超えると、図2に示すように、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落してしまった。
また、作製した建築用配管材Pから性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より作製した。
試験片について耐火試験を実施した。試験方法としては、まず、試験片を500℃に加熱した電気炉内に入れて、40分間放置した。そして、試験片を炉から取り出して放冷した後に、試験片の厚みを測定した。
耐火試験後の試験片の厚み(膨張後厚み)が4mm以上であれば合格、4mm未満であれば不合格とした。
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
また、押出成形により所望の品質の建築用配管材Pを製造できるかを判定するため、良好に押出成形ができたものを○、押出成形ができなかったものを×、押出成形時に異変が見られたものを△とした。
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yには、プレキャストコンクリート板(長さ1200mm,幅600mm,厚さ100mm)を使用した。また、防火措置工法としては、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの間隙をモルタルで閉塞した。また、建築用配管材Pの一端部を床材Yの加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、建築用配管材Pの他端部を床材Yの非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。なお、耐火試験炉Xの加熱室Zの内部の側壁には、バーナーV,Vが設置されている。また、加熱室Zの内部には、炉内熱電対Qの熱接点2個が、床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材Yから300mm離れた位置に設置されている。さらに、耐火試験炉Xには、図示していないが、炉内圧力を測定する装置が設置されている。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)、120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。煙の発生の有無については、目視で判断した。
さらに、観察用窓Gから建築用配管材Pの燃焼の様子を目視観察し、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出た時点で耐火試験炉Xの燃焼をストップした。
そして、図7に示すように、燃焼前の建築用配管材Pの加熱側端部における管内断面積をS1とし、図8に示すように、燃焼後の建築用配管材Pの最小内径部における管内断面積をS2として、以下の計算式により、燃焼後の建築用配管材Pの管内の閉塞度合いを燃焼後管内断面積割合として算出した。
燃焼後管内断面積割合=(S2/S1)×100
なお、管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を2方向(直角)で測定し、平均内径を出した後、算出した。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とした。
S2の測定方法は、加熱側から観察した写真で、管内最小内径部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに面積と重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出した。
また、残渣の伸長長さLは、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点で、耐火試験炉の燃焼をストップし、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、床材の加熱側の面に対して垂直に測定した。
なお、煙が2時間出なかった場合は、2時間後に耐火試験をストップし、S2および残渣の伸長長さLを上記の方法で測定した。
(表4)に示すように、(比較例6)は、熱膨張性黒鉛が全く配合されていなかったため、配管材が燃え尽きてしまった。その結果、加熱側における配管材の温度上昇が速く、発煙時間が早かった。(比較例7)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が大きすぎたため、配管材が膨張した後、その形状を保持できずに落下落してしまった。その結果、加熱側における配管材の温度上昇が速く、発煙時間が早かった。(比較例8)は、安定剤の配合割合が小さく、無機充填剤の配合割合が大きすぎたため、押出成形性に劣る上、引張強度が若干低くなった。
これに対して、(実施例17)〜(実施例29)は、管として必要な引張強度を有することはもちろんのこと、発煙時間が飛躍的に長くなっている。その理由は、(実施例17)〜(実施例29)は、残渣によって管内断面が閉塞され、管の温度上昇が抑えられたことが考えられる。
また、(実施例18)(実施例19)は、(実施例17)(実施例20)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
また、(実施例22)(実施例23)は、(実施例21)(実施例24)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
また、(実施例26)〜(実施例28)は、(実施例25)(実施例29)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
なお、(実施例25)は、安定剤の配合割合が少なかったため、押出成形時に若干偏流が起こった。
具体的には、(比較例6)に示す組成物からなる配管材は、図4に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、樹脂が流れ落ちて加熱側の端部を一旦閉塞するものの、熱膨張性黒鉛が配合されていないため耐火性がなく、再び加熱側の配管材の端部が脱落してしまった。その結果、配管材の貫通部内に熱気が流入し、床構造内にある部分が燃え尽きて、非加熱側に発煙してしまった。
(比較例7)に示す組成物からなる配管材は、熱膨張性黒鉛が多量に配合されているため、加熱により組織が膨張しすぎて、その形状を保持できなくなり、脱落してしまった。
また、(比較例8)に示す組成物からなる配管材は、無機充填剤が多量に配合されているため、図5に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、残った部分が強固な残渣となって燃焼を遅延するものの、樹脂に高温流動性がなく、管内を閉塞できない。その結果、管内を通じて熱気が上昇し、配管材が熱により変形し、配管材とモルタルとのシール部分に隙間が生じて、非加熱側に発煙してしまった。
そして、さらに好ましい配合割合としては、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲である熱膨張性黒鉛を4〜7重量部、無機充填剤としての塩基性化合物1〜5重量部、安定剤を0.3〜5重量部の割合であることがわかった。
以上、実施例を提示して詳述したとおり、本実施形態の建築用配管材によれば、図6,図8に示すように、燃焼時には、耐火性樹脂組成物で構成された層が膨張して、建築用配管材の管内を閉塞するとともに、残渣Hが加熱側に伸長するため、床材Yで仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。
H 残渣
Claims (4)
- 床材に管材を貫通施工し、管材の一端部を床材の加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、管材の他端部を床材の非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた状態で、床下から加熱する耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法に基づく防火区画等を貫通する管の性能試験の評価方法,ISO834−1に従う)を実施したときに、
燃焼前の管材の加熱側端部における管内断面積をS1、燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積をS2とすると、
(S2/S1)×100≦50
の関係を満たすことを特徴とする建築用配管材。 - 請求項1記載の耐火試験を実施したときに、燃焼後の管材の加熱側端部に、床材の加熱側の面から加熱側に20〜150mmの長さで伸長した残渣が生成され、前記残渣の形状が保持されることを特徴とする請求項1記載の建築用配管材。
- ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1〜10重量部、無機充填剤を0〜10重量部の割合で含む耐火性樹脂組成物で構成されており、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の建築用配管材。
- ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を4〜7重量部、無機充填剤としての塩基性化合物を1〜5重量部、安定剤を0.3〜5重量部の割合で含む耐火性樹脂組成物で構成されていることを特徴とする請求項3記載の建築用配管材。
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