JP2008174680A - 樹脂組成物及びこれを用いた成形品並びに自動車用成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間に亘って優れた耐加水分解性を有する樹脂組成物及びこれを用いた成形品並びに自動車用成形品を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物(B)0.5重量部以上を含有する。エポキシ系化合物(B)により脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基を封止することができ、耐加水分解性を長期間に亘って維持できる。
【選択図】なし

Description

ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂組成物に関し、また、当該樹脂組成物を用いた成形品及び自動車用成形品に関する。
脂肪族ポリエステル樹脂は、酵素や微生物により分解される生分解性樹脂を構成する主成分として知られている。中でもポリ乳酸等は、とうもろこし、サトウキビ及びサツマイモ等の植物由来の原料から得られる。ポリ乳酸以外でも脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリカプロラクトン、及びグリコールとカルボン酸よりなるポリエステル等が知られている。
これら脂肪族ポリエステルは、加水分解性が高いといった特徴を有しており、これに起因して長期耐久製品に適用することが非常に困難であった。特に、長期耐久製品として、自動車等の10年以上の耐久性が求められる場合には、脂肪族ポリエステル樹脂の加水分解性を今まで以上に抑制する技術の開発が必須となる。
脂肪族ポリエステル樹脂の加水分解性を抑制する手法としては、特許文献1に記載されるように、ポリ乳酸の末端カルボキシル基の少なくとも一部を封鎖する手法が開示されている。具体的には末端カルボキシル基に、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物又はアジリジン化合物を付加することで、耐熱性と耐加水分解性を達成しようとしている。また、特許文献2には、ポリ乳酸とエポキシ基含有アクリル系ポリマーとを加熱してなるポリ乳酸系樹脂組成物が開示され、インフレーション成形時において加水分解されても、エポキシ基含有アクリル系ポリマーが、ポリ乳酸の分子鎖同士を結びつけ分子量の低下を最大限抑止することが開示されている。さらに、特許文献3には、ポリエステルブロック共重合体と、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを溶融混合したポリエステルブロック共重合体組成物を、所定の温度で加熱処理して得られるポリエステルブロック共重合体樹脂組成物が開示されており、耐熱性、耐加水分解性及び優れた色相を達成しようとしている。
しかしながら、これらに代表される従来の技術においては、ポリ乳酸の末端カルボキシル基を封止する点で共通し、樹脂製造工程を改変する必要がなく実際的には汎用性のある手法であると考えられる。しかしながら、カルボジイミド化合物類は一般にゲル化しやすく、カルボジイミド化合物等を末端カルボキシル基の封止に使用する場合、樹脂組成物の成形性を悪化させてしまうといった問題があった。また、カルボジイミド化合物は、一般に二官能性であるため、末端カルボキシル基を架橋することとなり、見かけ上切れ目のない高分子体を構築してしまう虞もある。この場合、樹脂組成物における所望の物性を維持できなくなる。
また、ポリ乳酸の末端カルボキシル基をメチル基等の他の官能基で修飾する方法もあるが、ポリ乳酸系樹脂の重合の段階から反応を制御しなければならず、汎用性に欠けるし、樹脂製造工程を大幅に見直す必要があり現実的には困難である。なお、樹脂組成物にポリ乳酸樹脂以外の樹脂を混合することによって、ポリ乳酸の末端カルボキシル基濃度を相対的に低減させる方法もあるが、末端カルボキシル基自体を消失させることはできないこと、及びポリ乳酸の使用率が下がることとなり生分解性樹脂の基本コンセプトを逸脱するといった問題が残る。
特開2002−30208号公報 特開2005−343970号公報 特開2002−3605号公報
そこで、本発明は、上述したような実状に鑑み、長期間に亘って優れた耐加水分解性を有する樹脂組成物及びこれを用いた成形品並びに自動車用成形品を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、脂肪族ポリエステル樹脂に対する加水分解は、初期段階で存在する末端カルボキシル基に起因する分子鎖切断と、分子鎖切断によって生じるカルボキシル基に起因する更なる分子鎖切断とによることが判明した。そして、特定の構造を有するエポキシ系化合物により、脂肪族ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基を封止することによって、耐加水分解性を長期間に亘って維持できることを見いだし、本発明を完成するにいたった。すなわち、本発明に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物(B)0.5重量部以上を含有する。特に上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)はポリ乳酸であることが好ましい。また、本発明に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、カルボジイミド化合物(C)0.1重量部以上更に含有するものであることが好ましい。
ここで、上記エポキシ系化合物(B)は、構造式のいずれかの部位に下記官能基を1以上有するものであることが好ましい。
Figure 2008174680
また、上記エポキシ系化合物(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物、イソシアネート変性エポキシ樹脂及びエピクロロヒドリンからなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。特に、上記エポキシ系化合物(B)としては下記構造式(式中nは繰り返し単位数)を一単位として含む化合物であることが好ましい。
Figure 2008174680
本発明に係る樹脂組成物では、長期間における優れた耐加水分解性を維持することができる。本発明によれば、製品寿命が大幅に向上した成形品、特に自動車用成形品を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)と、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物(B)を0.5重量部以上含有するものである。また、本発明に係る組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、カルボジイミド化合物(C)0.1重量部以上更に含有するものであることが好ましい。
先ず、脂肪族ポリエステル樹脂(A)について説明する。本発明において用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトン等の開環重付加系脂肪族ポリエステル、並びに、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリヘキサメチレンオキサレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート等の重縮合反応系脂肪族ポリエステルが挙げられ、中でもポリ乳酸、ポリグリコール酸等のポリ(α−ヒドロキシ酸)が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、80000〜300000であることが好ましく、100000〜200000であることがより好ましく、120000〜170000であることが最も好ましい。脂肪族ポリエステルの重量平均分子量が80000未満である場合には、得られる成形体の強度、弾性率等の機械物性が不十分となる虞ある。
また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)がポリ乳酸を主とする場合、ポリ乳酸におけるL−乳酸単位及びD−乳酸単位の構成モル比L/Dは、100/0〜0/100のいずれであっても良いが、高い融点を得るためにはL−乳酸及びD−乳酸のいずれかの単位を96モル%以上、更に高い融点を得るためにはL−乳酸及びD−乳酸のいずれかの単位を98モル%以上含むことが特に好ましい。その場合の乳酸単位を有する重合体は、乳酸(単量体)又はラクチドと共重合可能な他の成分とが共重合された共重合体であっても良い。共重合可能な他の成分としては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等、及びこれら種々の構成成分よりなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等が挙げられる。
ジカルボン酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールの例としては、ビスフェノールにエチレンオキサイドを付加反応させたもの等の芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテルグリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸の例としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸、その他特開平6−184417号公報に記載されているもの等が挙げられる。ラクトンの例としては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、ε−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。また、前記共重合体の配列様式は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、上述した脂肪族ポリエステルを単独で用いてもよいが、それらの2種以上のブレンド物若しくは共重合物であってもよい。このような脂肪族ポリエステルの共重合物としては、乳酸と乳酸以外のヒドロキシ酸とのコポリマーや、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられる。また、共重合体の配列様式は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
脂肪族ポリエステルのブレンド物としては、例えばポリ乳酸をベースとするポリ乳酸系樹脂が好ましく、ポリ乳酸にブレンドされる他の樹脂としては、ポリ乳酸以外の前記脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド等が挙げられる。
次に、エポキシ系化合物(B)について説明する。エポキシ系化合物(B)は、上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端に存在するカルボキシル基と反応することで、当該カルボキシル基を封止することができる。これにより、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基に起因する分子鎖切断を防止することができ、樹脂組成物全体としての耐加水分解性が向上することとなる。
ここで、エポキシ系化合物(B)は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基に対して1当量のエポキシ基となるような添加量とすることが好ましい。具体的には、エポキシ系化合物(B)は、上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.5重量部以上、好ましくは0.5〜20重量部の範囲で、より好ましくは1〜5重量部の範囲で添加される。エポキシ系化合物(B)の添加量が上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.5重量部未満である場合には、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基を有効に封止できない虞がある。また、エポキシ系化合物(B)の添加量が上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して20重量部を超える場合には、樹脂組成物を主成分として成形品を製造した場合に成型時の加工性が低下する虞があり、また成形品の機械的特性が低下する虞がある。
エポキシ系化合物(B)は、特に末端にエポキシ基を有する化合物である。末端にエポキシ基を有する化合物とは、分子構造における炭素鎖内部をエポキシ化した構造を除き、下記の官能基を分子内に1以上有する化合物を意味する。
Figure 2008174680
分子内にエポキシ基を有するエポキシ系化合物(B)と比較して、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物(B)は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端カルボキシル基との反応性に優れるためである。
具体的に、エポキシ系化合物(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂を挙げることができるが、これに限定されず、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物及びエピクロロヒドリン等のエポキシ基を有する物質を使用することもできる。
特に、エポキシ系化合物(B)としては、脂環骨格を持つエポキシ樹脂であることが好ましい。すなわち、エポキシ系化合物(B)は、下記構造式(式中、nは繰り返し単位数)を一単位として有する化合物であることが好ましい。なお、下記構造式を有するエポキシ系化合物(B)としては、例えばnが1〜20である化合物を使用することがより好ましい。
Figure 2008174680
一例として脂環骨格を持つエポキシ樹脂としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:EHPE3150)を挙げることができる。
次に、カルボジイミド化合物(C)について説明する。カルボジイミド化合物(C)は、周囲環境に存在する水等に由来する酸点によって脂肪族ポリエステル樹脂(A)に形成されるカルボキシル基と反応することで、当該カルボキシル基を封止することができる。これにより、周囲環境に存在する水等に由来する酸点によって形成されたカルボキシル基に起因する脂肪族ポリエステル樹脂(A)の分子鎖切断を防止することができ、樹脂組成物全体としての耐加水分解性が向上することとなる。
ここで、カルボジイミド化合物(C)は、周囲環境に存在する酸点に基づいて算出されるカルボキシル基に対して2当量のイミド基となるような添加量とすることが好ましい。具体的には、上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.05〜5重量部の範囲、より好ましくは0.1〜1重量部の範囲で添加される。カルボジイミド化合物(C)の添加量が上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して0.05重量部未満である場合には、脂肪族ポリエステル樹脂(A)に形成されるカルボキシル基を有効に封止できない虞がある。また、カルボジイミド化合物(C)の添加量が上述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して5重量部を超える場合には、効果に差が見られなく、また、樹脂組成物の高コスト化を招来する虞があり、さらに樹脂組成物のゲル化を生じる虞がある。
カルボジイミド化合物(C)としては、特に限定されないが、分子内に少なくともひとつのカルボジイミド基を有する化合物が挙げられる。このようなカルボジイミド化合物(C)は、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでもよく、例えば、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等が挙げられる。
このように、樹脂組成物がカルボジイミド化合物(C)を含む場合、周囲環境に存在する酸点により形成されたカルボキシル基を封止できるためより耐加水分解性が向上することとなるが、カルボジイミド化合物(C)による耐加水分解性の向上効果を発揮するためには、エポキシ系化合物(B)として特に2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物を使用することが好ましい。言い換えると、脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対して、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物とカルボジイミド化合物(C)とを加えることによって、最も優れた耐加水分解性を達成することができる。
以上のように、本発明に係る樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)及び好ましくはカルボジイミド化合物(C)を含有しているが、必要に応じてその他の成分を含有していても良い。例えば、他の成分としては、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤・抗カビ剤及び核形成剤等を挙げることができる。特に、成形加工性の改善のために晶核剤である脂肪族アミド系化合物、芳香族アミド系化合物、タルク等を配合することが好ましい。
以上のように構成された本発明に係る樹脂組成物によれば、長期間に亘って耐加水分解性に優れた成形品、特に自動車用成形品を製造することができる。まず、本発明に係る樹脂組成物及び必要に応じて他の成分を混合する。混合方法や混合装置は、特に限定されないが、連続的に処理できるものが工業的には有利で好ましい。例えば、各成分のペレットを所定比率で混合し、そのまま押出成形機のホッパー内に投入し、溶融させ、直ちに成形しても良い。また、各成分を溶融混合した後、一旦ペレット化し、その後で必要に応じて溶融成形してもよい。また、本発明に係る樹脂組成物と他の樹脂とをそれぞれ別に押出機などで溶融し、これらを所定比率で静止混合機及び/又は機械的攪拌装置で混合して成形品を製造してもよい。溶融押出温度としては、使用する樹脂の融点及び混合比率を考慮して、適宜選択するが、通常100〜250℃の範囲である。
本発明に係る樹脂組成物を含む成形品においては、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の末端に存在するカルボキシル基がエポキシ系化合物(B)により封止される。また、本発明に係る樹脂組成物は、カルボジイミド化合物(C)を含有する場合、周囲環境に存在する水等の酸点により形成されるカルボキシル基がカルボジイミド化合物(C)により封止されることとなる。これにより、製造された成形品は、長期間に亘って加水分解が防止されるため、長期間耐久性が求められる各種製品として好適である。本発明に係る樹脂組成物は、特に、使用耐久年数が10年以上である自動車等に使用される各種の樹脂製品の原材料として使用されることが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本例では、重量平均分子量16万のポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物(1)を比較対照として準備した。また、重量平均分子量16万のポリ乳酸樹脂100重量部と、末端にエポキシ基を有するエポキシ化合物として東亞合成株式会社製 商品名:ARUFON5重量部とを配合した樹脂組成物(2)を調整した。さらに、重量平均分子量16万のポリ乳酸樹脂100重量部と、末端にエポキシ基を有するエポキシ化合物として東亞合成株式会社製 商品名:ARUFON5重量部と、ポリカルボジイミド0.1重量部とを配合した樹脂組成物(3)を調整した。
これら樹脂組成物(1)〜(3)を原料として1軸射出成形機を用いて“ISO A型試験片”を作製した。具体的には、金型温度50℃、樹脂温度210℃、冷却時間15秒にて成形した。
作製したISO A型試験片を耐候試験槽に静置し、80℃、95%RH雰囲気下で湿熱老化加速試験を実施した。様々な評価時間で試験片を取り出し、23℃、50%RH環境下で調湿した。調湿後の試験片を用いて曲げ強度を測定した。曲げ強度は三点曲げ試験方法に従い、スパン64mm、クロスヘッドスピード2mm/min、試験環境23℃、50%RHにて測定した。
測定した曲げ強度に基づいて、樹脂組成物(1)〜(3)で作製した各試験片について曲げ強度半減期及び曲げ強度保持率を算出した。曲げ強度半減期の結果を図1に示し、曲げ強度保持率の結果を図2に示す。
図1及び図2に示したように、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物を使用することによって樹脂組成物の寿命が約2.2倍に向上し、ポリカルボジイミドを更に配合することによって樹脂組成物の寿命が約2.8倍に向上することが明かとなった。
〔実施例2〕
本例では、末端にエポキシ基を有するエポキシ化合物としてビスフェノール型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量約2000)を1重量部配合することで樹脂組成物(2)を作製した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(1)〜(3)を用いて試験片をそれぞれ準備した。本例においても、実施例1と同様にして湿熱老化加速試験を実施し、その後、曲げ強度を測定した。樹脂組成物(1)〜(3)で作製した各試験片について曲げ強度半減期及び曲げ強度保持率を算出した。曲げ強度半減期の結果を図3に示し、曲げ強度保持率の結果を図4に示す。
図3及び図4に示したように、エポキシ化合物としてビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することによって樹脂組成物の寿命が約4.4倍に向上し、ポリカルボジイミドを更に配合することによって樹脂組成物の寿命が約5.0倍に向上することが明かとなった。また、本実施例で調製した樹脂組成物(2)及び(3)は、実施例1で調製した樹脂製組成物(2)及び(3)と比較してより優れた耐加水分解性を示すことが明かとなった。
〔実施例3〕
本例では、末端にエポキシ基を有するエポキシ化合物として2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:EHPE3150)を1重量部配合することで樹脂組成物(2)を作製した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(1)〜(3)を用いて試験片をそれぞれ準備した。本例においても、実施例1と同様にして湿熱老化加速試験を実施し、その後、曲げ強度を測定した。樹脂組成物(1)〜(3)で作製した各試験片について曲げ強度半減期及び曲げ強度保持率を算出した。曲げ強度半減期の結果を図5に示し、曲げ強度保持率の結果を図6に示す。
図5及び図6に示したように、エポキシ化合物として2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物を使用することによって樹脂組成物の寿命が約4.5倍に向上し、ポリカルボジイミドを更に配合することによって樹脂組成物の寿命が約5.5倍に向上することが明かとなった。本実施例で調製した樹脂組成物(2)及び(3)は、実施例1で調製した樹脂製組成物(2)及び(3)並びに実施例2で調製した樹脂製組成物(2)及び(3)と比較してより優れた耐加水分解性を示すことが明かとなった。
また、実施例1及び2の結果と比較すると、エポキシ化合物として2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物を使用した場合には、ポリカルボジイミドを配合することによる耐加水分解性のより一層の向上効果が顕著に表れることが明かとなった。
〔比較例1〕
本例では、エポキシ化合物としてエポキシ化大豆油を5重量部配合することで樹脂組成物(2)を作製した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(1)及び(2)を用いて試験片をそれぞれ準備した。本例においても、実施例1と同様にして湿熱老化加速試験を実施し、その後、曲げ強度を測定した。樹脂組成物(1)及び(2)で作製した各試験片について曲げ強度半減期及び曲げ強度保持率を算出した。曲げ強度半減期の結果を図7に示し、曲げ強度保持率の結果を図8に示す。
なお、エポキシ化大豆油は、炭素鎖内部をエポキシ化した構造を有しており、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物ではない。図7及び図8に示したように、エポキシ化合物としてエポキシ化大豆油をポリ乳酸樹脂に配合することで耐加水分解性の改善が僅かに認められるが、実施例1〜3の結果と比較すると改善効果が低いと言える。この結果から、実施例1〜3に示すように、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物を使用することによって、ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性を大幅に向上できるとが明かとなった。
実施例1で作製した試験片について評価した曲げ強度半減期を示す特性図である。 実施例1で作製した試験片について評価した曲げ強度保持率を示す特性図である。 実施例2で作製した試験片について評価した曲げ強度半減期を示す特性図である。 実施例2で作製した試験片について評価した曲げ強度保持率を示す特性図である。 実施例3で作製した試験片について評価した曲げ強度半減期を示す特性図である。 実施例3で作製した試験片について評価した曲げ強度保持率を示す特性図である。 比較例1で作製した試験片について評価した曲げ強度半減期を示す特性図である。 比較例1で作製した試験片について評価した曲げ強度保持率を示す特性図である。

Claims (8)

  1. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、末端にエポキシ基を有するエポキシ系化合物(B)0.5重量部以上を含有する樹脂組成物。
  2. 上記脂肪族ポリエステル樹脂(A)がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 脂肪族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、カルボジイミド化合物(C)0.1重量部以上更に含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  4. 上記エポキシ系化合物(B)は、構造式のいずれかの部位に下記官能基を1以上有するものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
    Figure 2008174680
  5. 上記エポキシ系化合物(B)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)-シクロヘキサン付加物、イソシアネート変性エポキシ樹脂及びエピクロロヒドリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  6. 上記エポキシ系化合物(B)は下記構造式(式中、nは繰り返し単位数)を一単位として含む化合物であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
    Figure 2008174680
  7. 請求項1乃至6いずれか一項記載の樹脂組成物を含む成形品。
  8. 請求項1乃至6いずれか一項記載の樹脂組成物を含む自動車用成形品。
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