JP2008170351A - 電気泳動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ヘモグロビン類の測定に用いる電気泳動装置であって、電極及び内面が親水性ポリマーでコーティングされた泳動路を有するマイクロチップからなる測定部と、電源部と、検出部とからなる電気泳動装置。
【選択図】 なし
Description
従来、HbA1cの測定方法としては、HPLC法、免疫法、電気泳動法等が用いられている。このうち、臨床検査分野で多く用いられているHPLC法では、1試料当たり1〜2分での測定が可能であり、また、同時再現性試験のCV値が1.0%程度の測定精度が実現されている。糖尿病患者の血糖管理状態を把握するための測定方法としては、このレベルの性能が必要とされている。
電気泳動法によるHb類の測定は、通常とは異なるアミノ酸配列を有する異常Hb類の分離方法として古くから用いられているが、HbA1cの分離は非常に困難であり、ゲル電気泳動の手法では30分以上の時間が必要であった。このように電気泳動法は、測定時間及び測定精度の点で問題があるため、現在では糖尿病診断への応用はほとんど行われていなかった。
しかしながら、特許文献1に開示された方法を用いた場合、測定時間が長いという問題点は解消されず、加えて、使用する緩衝液のpHが9〜12と高く、Hbが変性してしまう可能性があることから、この方法を臨床検査に適用することは困難であった。
以下に本発明を詳述する。
図1aは、泳動路23を含む流路がクロス十字型に構成され、泳動路23の各末端にリザーバー21が4箇所設けられ、各リザーバー21に電極22が設置されている本発明の電気泳動装置の一例である。各電極22は、電圧供給ケーブル31を介して高圧電源である電源部3と接続されている。
ただし、後述する特定波長の光を吸収しない素材であることが好ましい。
本発明において、泳動路とは、マイクロチップ上又はマイクロチップ内に形成された流路であって、電気泳動が行われる際に、その流路の内において、試料が移動及び/又は分離される部位(試料が注入された部位から、検出部によって検出される部位)のことをいう。例えば、図1においては、流路の交差点24から、光源41によって光が照射される流路上の位置までの部分をいう。
上記泳動路を含む流路全体の形状としては特に限定されず、例えば、クロス十字型の他、直線状等、後述する泳動路の形状、大きさを確保できる形状であればよい。
上記泳動路の断面の形状としては特に限定されず、例えば、矩形、円形等が挙げられる。
上記マイクロチップは、単数の泳動路を有していてもよく、複数の泳動路を有していてもよい。
上記泳動路内面に形成されるコーティング層は、単層であってもよく、同一又は異なる材料からなる多層であってもよい。
このように親水性ポリマーを用いてコーティングすることによって、泳動路の内面に親水性を付与し、泳動路の内部を通過する測定試料であるヒト血液中の蛋白質、脂質等の各成分の非特異吸着を抑制し、測定対象であるヘモグロビン類を充分に分離測定することが可能となる。親水性が不充分であると、測定試料中の各成分が上記泳動路の内面に非特異吸着を起こし、各成分の分離に悪影響を及ぼすことがある。
本明細書において、親水性ポリマーとは親水性の官能基を有するポリマーをいう。
上記親水性ポリマーは、後述する特定波長(主波長及び副波長)の光を吸収しないものであることが好ましい。
上記イオン性の親水性ポリマーとしては特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(2―アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリ(2−ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリブレン等のイオン性合成高分子;コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヘパラン、フコイダン等の硫酸基含有多糖類及びその塩類;アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸等のカルボキシル基含有多糖類及びその塩類;セルロース、デキストラン、アガロース、マンナン、デンプン等の中性多糖類及びその誘導体へのイオン性基導入化物、及びその塩類等のアニオン性多糖類、キチン、キトサン等のキトサン誘導体及びその塩類;アミノセルロース、N−メチルアミノセルロース等のN−置換セルロースの誘導体及びその塩類;デキストラン、アガロース、マンナン、デンプン等の中性多糖類及びその誘導体へのアミノ基導入化物、及びその塩類等のカチオン性多糖類等;牛血清アルブミン、ラクトフェリン、スキムミルク等蛋白質類等が挙げられる。
上記親水性ポリマー溶液の濃度としては、好ましい下限が0.01%、好ましい上限が20%である。0.01%未満であると、コーティングが不充分となることがある。20%を超えると、上記親水性ポリマーからなる層を均一に形成することができず、ヘモグロビン類の測定途中に剥離し、再現性低下の原因となることがある。
上記電極は、測定部内の流路において後述する緩衝液と接触し、後述する電源部に接続される。このような構成を有するため、電願部から電圧供給がされ、測定部内の流路に満たされた緩衝液を介して試料に電圧が負荷されることによって電気泳動を行うことができる。
上記電極を緩衝液に接触させる態様としては、泳動路を挟み込む流路上であれば特に限定されないが、例えば、後述するリザーバー内において緩衝液に接触していることが好ましい。
上記リザーバーは、上記泳動路の端部に形成され、電気泳動に用いる緩衝液、測定試料等の供給口、排出口、及び、電極の挿入部としての役割を果たす。
上記リザーバーの形状としては特に限定されず、従来公知の形状のものを用いることができる。上記リザーバーの大きさとしては特に限定されず、従来公知の大きさのものを用いることができる。
上記リザーバーは、緩衝液、測定試料等の供給及び排水のために、必要に応じて底部や上部に給排水のための接続がなされていてもよい。
上記電源部は、電気泳動のための電圧を供給する役割を果たす。
上記電源部と、上記電極とを接続する方法としては特に限定されず、例えば、従来公知のコード等を用いる方法が挙げられる。
上記検出部は、電気泳動によって分離された測定試料成分を光学的に検出する機構である。このような光学的検出の原理としては、測定試料であるヘモグロビン類を検出できるものであれば特に限定されないが、簡便性の観点から、ヘモグロビン類の最大吸収波長領域の可視光での吸光度測定法が好ましい。
このような可視光の吸光度は、具体的には例えば、光源から可視光を含む光を、上記泳動路上の所定の位置に照射することによって、該泳動路を挟んで反対側に設置された受光器において、泳動路内を移動するヘモグロビン類の各種成分の可視光における吸光度を測定することができる。
上記検出部において、上記光源及び上記受光器の設置態様としては特に限定されず、例えば、上記泳動路を挟んで上記測定部の上部及び下部に設置される態様であってもよく、上記泳動路を挟んで上記測定部の側部に設置される態様であってもよい。
上記検出部において、上記光源から上記受光部へ照射される光は、上記光源及び上記受光器の設置態様に応じて、上部から下部へ照射されてもよく、下部から上部へ照射されてもよく、側面から側面へ照射されてもよく、所定の角度をもって斜めから照射されてもよい。
本発明の電気泳動装置を用いてヘモグロビン類を測定する方法であって、検出部において400〜430nmから選ばれる主波長と、450〜600nmから選ばれる副波長とにおける2つの吸光度を測定するヘモグロビン類の測定方法もまた、本発明の一つである。
上記主波長の好ましい範囲は410〜420nm、副波長の好ましい範囲は500〜550nmである。
上記付属部品としては特に限定されず、例えば、上記電源部の電圧、極性、負荷時間を制御したり、一連の自動化プログラムを実施したりするための制御機構、必要に応じて上記リザーバー、上記泳動路、上記電極を洗浄するための洗浄液等を供給、排水等するための供給排水機構、測定された吸光度からエレクトロフェログラムを作成したり、安定型HbA1c値を算出し印字したりするためのデータ処理機構、測定試料の自動希釈や測定部への自動供給機構、試料容器、希釈槽や流路の洗浄、試料容器の架設、供給等を行う機構等が挙げられる。
上記緩衝液としては、緩衝能を有する従来公知の緩衝液組成物を含有する溶液であれば特に限定されず、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸、及び、その塩類等を含有する溶液等;グリシン、タウリン、アルギニン等のアミノ酸類;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等の無機酸、及び、その塩類等を含有する溶液等が挙げられる。
本明細書において、イオン性ポリマーは、分子内にイオン性の官能基を有するポリマーを意味する。
上記イオン性ポリマーは、イオン性の種類により、アニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとに大別される。なかでも、アニオン性ポリマーが好ましい。
上記アニオン性の官能基としては、特に限定されず、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
上記アニオン性ポリマーは、親水性を有することが好ましい。
上記親水性を有するアニオン性ポリマーとしては特に限定されず、例えば、アニオン性基含有多糖類、アニオン性基含有有機合成高分子等が挙げられる。
具体的には例えば、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸等の多糖類;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(2―アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)及び、これらの共重合体等、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヘパラン、フコイダン等の硫酸基含有多糖類及びその塩類;アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸等のカルボキシル基含有多糖類、及び、その塩類;セルロース、デキストラン、アガロース、マンナン、デンプン等の中性多糖類、及び、その誘導体へのイオン性基導入化物、及び、その塩類等のアニオン性多糖類、ポリ(メタ)アクリル酸、リン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体、スルホン酸基含有(メタ)アクリル酸重合体、2−アクリルアミド−ブチルスルホン酸重合体、及び、これらの共重合物等の水溶性アニオン性基含有有機合成高分子類が挙げられる。
本発明の電気泳動装置と前記電気泳動装置の測定部に設けられたグルコースを測定するための機構とからなるヘモグロビン類及びグルコースの測定装置もまた、本発明の一つである。
上記グルコースを測定するための機構、例えば、酵素法を用いた機構をマイクロチップ化する方法としては特に限定されず、例えば、スパッタリング等によって白金薄膜電極等をマイクロチップ上に形成し、該電極上に、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ等を固定化することによって、酵素センサーをマイクロチップ上に作製する方法等が挙げられる。
上記ヘモグロビン類を測定するための機構と、上記グルコースを測定するための機構とが同一のマイクロチップ上に形成される場合、上記ヘモグロビン類を測定するための流路と、上記グルコースを測定するための流路とが独立して形成されてもよく、上記ヘモグロビン類と上記グルコースとを同一流路内において測定することができる機構を形成してもよい。
図5aは、ヘモグロビン類測定用試料導入口25と、グルコース測定用試料導入口51とを、それぞれ独立して設置した態様を示す。
このような態様では、ヘモグロビン類の測定は、ヘモグロビン類測定用試料導入口25に試料を導入した後、電極22に電圧を負荷して電気泳動を行い、泳動路23内で各成分に分離して検出部4において光学的検出が行われる。グルコースの測定は、グルコース測定用試料導入口51に別途導入された試料について、酵素電極52により測定される。
このような態様によって、ヘモグロビン類と、グルコースとを、個別に測定することができる。こうした場合、ヘモグロビン類と、グルコースとのうち、一方を測定する場合には、もう一方の機構を動作させる必要がないため、試薬等の消費を節約することが可能となる。
このような態様では、共通試料導入口60に試料を導入した後、各試料がヘモグロビン類測定用リザーバー26及びグルコース測定用リザーバー53に導かれる。ヘモグロビン類は、ヘモグロビン類測定用リザーバー26とリザーバー21と間に電圧を負荷して電気泳動を行い、泳動路23内で各成分に分離して検出部4において光学的検出が行われる。一方、グルコースは、グルコース測定用リザーバー53の酵素電極52により測定される。
このような態様によって、ヘモグロビン類と、グルコースとを同時に、又は、個別に測定することができる。
このような態様では、例えば、共通試料導入口60に試料を導入した後、まず、共通試料導入口60内の酵素電極52によってグルコースの測定を行った後、共通試料導入口60とリザーバー21とに設置した電極22に電圧を負荷して電気泳動を行い、泳動路23内で各成分に分離して検出部4において光学的検出を行うことによってヘモグロビン類の測定を行うことができる。
このような態様において、測定の順序としては特に限定されず、グルコースの測定を行った後、ヘモグロビン類の測定を行ってもよく、ヘモグロビン類の測定を行った後、グルコースの測定を行ってもよい。
このような態様によって、ヘモグロビン類と、グルコースとを同時に、又は、個別に測定することができる。
本発明のヘモグロビン類及びグルコースの測定装置を用いてヘモグロビン類とグルコースとを同時に測定する方法もまた、本発明の一つである。
(1)電気泳動装置の作製
ポリジメチルシロキサン製マイクロチップに長さ80mm、幅80μmの泳動路を形成し、クロス十字型の電気泳動用マイクロチップを作製した。泳動路に0.5%キトサン溶液を満たし、20分間放置した。その後、空気を泳動路内に注入してキトサン溶液を追い出した後、40℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。その後、再び、キトサン溶液の注入、空気の注入、及び、乾燥を5回繰り返すことによって、泳動路がコーティングされたマイクロチップを得た。得られたキトサンコーティングマイクロチップの泳動路に、2.0%のコンドロイチン硫酸を含む150mMクエン酸緩衝液(pH5.2)を満たして、測定用マイクロチップを得た。得られた測定用マイクロチップを、白金電極(直径1mm×長さ5mm)を有する支持台に乗せて、該電極をマイクロチップ上のリザーバーに挿入させ、該電極と電源(ラボスミス社製)とを電圧供給コードを用いて接続し、ハロゲンランプ光源(モリテックス社製MHF−V501)、分光器(B&Wテック社製、BTC112)、及び、データ処理用パソコンを有する検出器をマイクロチップ上に設置することによって電気泳動装置を作製した。
健常人よりフッ化ナトリウム採血した健常人全血70μLに、0.05%のTriton X−100(界面活性剤、和光純薬社製)を含むクエン酸緩衝液(pH6.0)200μLを添加して溶血希釈し、健常人血溶血試料を得た。
得られたマイクロチップの泳動路の一方の端部に形成されているリザーバーに上述の溶血試料を添加し、泳動路の両端に1000Vの電圧をかけて電気泳動を行い、主波長415nm及び副波長500nmの可視光における吸光度変化を測定することにより、健常人血液中の安定型HbA1cの測定を行った。
図2は、実施例1において、健常人血の測定によって得られたエレクトロフェログラムである。図2中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0を示す。なお、安定型HbA1cの分離は、約60秒の電気泳動時間で行うことができた。
健常人よりフッ化ナトリウム採血した健常人全血に、グルコースを2500mg/dLとなるように添加し、37℃で3時間加温し、修飾Hbの一種である不安定型HbA1cを多量に含む試料を人為的に調製した。上述の(2)健常人血の測定と同様に処理して修飾Hb含有溶血試料を得た。
上述の(1)電気泳動装置の作製で得られたマイクロチップの泳動路の一方の端部に形成されているリザーバーに上述の修飾Hb含有溶血試料を添加し、泳動路の両端に1000Vの電圧をかけて電気泳動を行い、主波長415nm及び副波長500nmの可視光における吸光度変化を測定することにより、修飾Hb含有試料中の、安定型HbA1cの測定を行った。
図3は、実施例1において、修飾Hbを含む試料の測定によって得られたエレクトロフェログラムをに示す模式図である。図3中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0、ピーク3は修飾Hb(不安定型HbA1c)を示す。図2に示すように、安定型HbA1cと修飾Hbである不安定型HbA1cが良好に分離された。
フューズドシリカ製マイクロチップに、長さ50mm、幅50μmの泳動路を形成し、クロス十字型の電気泳動用マイクロチップを作製した。泳動路に0.5%プリブレン水溶液を満たし、20分間放置した。その後、空気を泳動路内に注入してプリブレン水溶液を追い出した後、40℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。その後、再び、プリブレン水溶液をの注入、空気の注入、及び、乾燥を5回繰り返すことによって、泳動路がコーティングされたマイクロチップを得た。得られたポリブレンコーティングマイクロチップの泳動路に、1.5%のデキストラン硫酸を含む50mMコハク酸緩衝液(pH5.8)を満たして、測定用マイクロチップを得た。得られた測定用マイクロチップを用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、健常人血の測定及び修飾Hbを含む試料の測定を行った。健常人血の測定では、図2と同様のエレクトロフェログラムが得られた。修飾Hbを含む試料の測定では、図3と同様のエレクトロフェログラムが得られた。
メチルメタクリレート製マイクロチップに、長さ90mm、幅30μmの泳動路を形成し、電気泳動用のマイクロチップを作製した。泳動路に0.5%のコンドロイチン硫酸水溶液を満たし、20分間放置した。その後、空気を泳動路内に注入してコンドロイチン硫酸水溶液を追い出した後、40℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。その後、再び、コンドロイチン硫酸水溶液の注入、空気の注入、及び、乾燥を5回繰り返すことによって、泳動路がコーティングされたマイクロチップを得た。得られたコンドロイチン硫酸コーティングマイクロチップの泳動路に、2.0%のコンドロイチン硫酸を含む100mMリン酸緩衝液(pH5.5)を満たして、測定用マイクロチップを得た。得られた測定用マイクロチップを用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、健常人血の測定及び修飾Hbを含む試料の測定を行った。健常人血の測定では、図2と同様のエレクトロフェログラムが得られた。修飾Hbを含む試料の測定では、図3と同様のエレクトロフェログラムが得られた。
メチルメタクリレート製マイクロチップに、長さ60mm、幅60μmの泳動路を形成し、電気泳動用のマイクロチップを作製した。泳動路に0.5%ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(以下、ポリ2−HEMAともいう)水溶液を満たし、20分間放置した。その後、空気を泳動路内に注入してポリ2−HEMA水溶液を追い出した後、40℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。その後、再び、ポリ2−HEMA水溶液の注入、空気の注入、及び、乾燥を5回繰り返すことによって、泳動路がコーティングされたマイクロチップを得た。得られたポリ2−HEMAコーティングマイクロチップの泳動路に、2.0%の(2−アクリルアミド−ブチルスルホン酸)−(2−HEMA)共重合体を含む100mMリンゴ酸緩衝液(pH5.4)を満たして、測定用マイクロチップを得た。得られた測定用マイクロチップを用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、健常人血の測定及び修飾Hbを含む試料の測定を行った。健常人血の測定では、図2と同様のエレクトロフェログラムが得られた。修飾Hbを含む試料の測定では、図3と同様のエレクトロフェログラムが得られた。
フューズドシリカからなるキャピラリー(GLサイエンス製:内径25μm×全長30cm)を0.2N−NaOH、イオン交換水、0.5N−HClの順で通液してキャピラリー内を洗浄した後、BSA(カチオン性ポリマー:牛血清アルブミン、和光純薬社製)を0.5重量%含有するリンゴ酸緩衝液を1分間通液し、コーティングした。
得られたキャピラリーを、キャピラリー電気泳動装置(Beckman−Couler社製P/ACE MDQ)にセットし、0.2重量%のコンドロイチン硫酸(和光純薬社製)を含有するリンゴ酸緩衝液(pH4.7)を上述のキャピラリー内に満たし、測定用キャピラリー電気泳動装置を得た。
10kVの電圧を負荷して修飾Hbを含む試料の測定を行った。
図4は、比較例1において、修飾Hbを含む試料の測定によって得られたエレクトロフェログラムを示す模式図である。
図4中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0、ピーク3は修飾Hb(不安定型HbA1c)を示す。図5に示すように、得られたエレクトロフェログラムにおいて、安定型HbA1cを示すピーク1と修飾Hbを示すピーク3とが重なっている。
マイクロチップの泳動路にコーティングを実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、健常人血の測定を実施した。
得られたエレクトロフェログラムにはピークが検出されなかった。これはコーティングが施されていない泳動路内面に測定試料中のヘモグロビン類が非特異吸着を起したためと考えられる。親水性ポリマーによるコーティングをしていない泳動路を用いた場合には、ヘモグロビン類の測定ができないことがわかった。
(1)修飾Hb類の分離性能試験
実施例1〜4及び比較例1の測定条件について、健常人血試料と、同一健常人血を元に調製した修飾Hb含有試料、すなわち実施例1(3)修飾Hbを含む試料の測定において調製した健常人血にグルコースを2500mg/dLとなるように添加して得られた不安定型HbA1c含有試料と、更に他の修飾Hb含有試料、すなわち該健常人血にアセトアルデヒドを50mg/dLとなるように添加して得られたアセチル化Hb含有試料、シアン酸ナトリウムを50mg/dLとなるように添加して得られたカルバミル化Hb含有試料を調製し、各試料における安定型HbA1c値を求めた。
なお、各試料の安定型HbA1c値は、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)を求めることにより算出した。
得られた修飾Hb含有試料の安定型HbA1c値から、得られた健常人血試料の安定型HbA1c値を差し引いた値を求めた。
結果を表1に示した。
実施例1〜4及び比較例1の測定条件を用いて、健常人血試料の同一試料を10回連続して得られた安定型HbA1c値のCV値を算出した。
また、比較例1では、1回の測定が終了した時点で、0.2NのNaOH、イオン交換水、0.5NのHCl溶液の順で通液してキャピラリー内を洗浄した後、BSA(カチオン性ポリマー:牛血清アルブミン:和光純薬社製)の0.5%リンゴ酸緩衝液を1分間通液して動的コーティングを施した後、次検体を測定することによって、測定を繰り返し行うことによって同時再現性試験を行った。
結果を表2に示した。
実施例1〜4及び比較例1の測定条件を用いて、健常人血試料の同一試料を100回連続して測定して得られた安定型HbA1c値の最大値と最小値との差(R値)を算出した。
結果を表2に示した。
一方、比較例1については、同時再現性試験におけるCV値が3%以上と大きく、また耐久性試験時のバラツキ幅も最大0.5%程度であり、糖尿病患者のHbA1c値を管理する上で全く不充分な値となっていた。
実施例1〜4の測定条件において、使用した測定波長(主波長及び副波長)を変化させて、測定を行った。具体的には、同時間における主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いた数値を、当該時間における吸光度とし、エレクトロフェログラムを得ることによって安定型HbA1c値を算出した。次いで、上述した同時再現性試験を行うことによって、測定波長の影響を測定した。
実施例1〜3で用いたのと同様のマイクロチップに、それぞれ図5cと同様の構成を有する流路(長さ80mm、幅80μm)を形成した。
グルコースを測定するための酵素電極(王子計測機器社製、BF−6M)は、白金製過酸化水素電極の表面に、グルコースオキシダーゼ(GOD)を膜状に固定化した酵素固定化膜(厚さ0.6mm)を用い、該固定化膜中のGODが測定試料中のグルコースと反応して発生する過酸化水素を、過酸化水素電極により電気分解することによってグルコースの測定を行った。
試料導入口から測定試料を導入し、上述の方法によりグルコースを測定した後、実施例1〜3と同様の電気泳動条件により電気泳動を実施して安定型HbA1cの測定を行った。
結果を表4に示した。
更に、実施例1〜3で用いたのと同様のマイクロチップに、それぞれ図5a又は図5bと同様の流路を形成して安定型HbA1cとグルコースとの同時測定を場合でも、同等の良好な性能が得られた。
2 測定部
21 リザーバー
22 電極
23 泳動路
24 交差点
25 ヘモグロビン類測定用試料導入口
26 ヘモグロビン類測定用リザーバー
3 電源部
31 電圧供給コード
4 検出部
41 光源部
42 受光部
51 グルコース測定用試料導入口
52 酵素電極
53 グルコース測定用リザーバー
60 共通試料導入口
Claims (4)
- ヘモグロビン類の測定に用いる電気泳動装置であって、電極及び内面が親水性ポリマーでコーティングされた泳動路を有するマイクロチップからなる測定部と、電源部と、検出部とからなることを特徴とする電気泳動装置。
- 請求項1記載の電気泳動装置を用いてヘモグロビン類を測定する方法であって、検出部において、400〜430nmから選ばれる主波長と、450〜600nmから選ばれる副波長とにおける2つの吸光度を測定することを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
- 請求項1記載の電気泳動装置と、前記電気泳動装置の測定部に設けられたグルコースを測定するための機構とからなることを特徴とするヘモグロビン類及びグルコースの測定装置。
- 請求項3記載のヘモグロビン類及びグルコースの測定装置を用いることを特徴とするヘモグロビン類とグルコースとの同時測定方法。
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