JP4854638B2 - 安定型ヘモグロビンA1c値の測定方法 - Google Patents
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ところで、このような電気泳動法によって得られたエレクトロフェログラムでは、従来、全Hb成分のピーク面積値に対する安定型HbA1cのピーク面積値の比率を求めることによって、安定型HbA1c値を算出している。ところが、このような算出の仕方では、異常Hb類等を含む試料について測定を行った場合、測定毎に得られる安定型HbA1c値が大きく変動し、安定型HbA1c値を正確に算出することができないという問題があった。
以下、まずは本発明1の安定型ヘモグロビンA1c値の測定方法について詳述する。
上記各Hb成分のピーク面積値を算出する方法としては特に限定されず、例えば、従来公知のデータ処理方法等を用いることができる。
なお、本明細書において、上記「異常Hb類」とは、本発明1の安定型ヘモグロビンA1c値の測定方法に用いる上記電気泳動法によって分離することが可能な全ての異常Hb類、特に、HbS、HbCを示すとともに、健常人血にも一定の割合で含まれるHbA2も示す。
試料を測定する際には、キャピラリー14の一方より試料を注入し、高圧電源15から所定の電圧を印加することにより、キャピラリー14内を移動する目的成分を検出器16によって測定する。
上記「泳動路」とは、電気泳動が行われる流路において、測定試料が電気泳動により移動及び/又は分離する部位(測定試料が注入された部位から検出される部位まで)のことをいう。すなわち、電気泳動流路のうち、キャピラリー、マイクロデバイス流路等における試料が注入された部位から検出器により検出される部位までのことをいう。
また、これらのコーティング層は、単層であってもよく、同一又は異なる材料からなる多層であってもよい。
上記親水性ポリマーの重量平均分子量の好ましい下限は500である。500未満であると、泳動路の内面を充分に被覆することが困難となり、ヘモグロビン類の分離性能が不充分となることがある。更に、上記親水性ポリマーとしてはイオン性ポリマーが好ましく、カチオン性ポリマーがより好ましい。
本明細書において、上記「緩衝液」とは、電気泳動時に泳動路内に満たされる緩衝液、及び、電気泳動時に泳動路の両端に設置される陽極槽及び陰極槽に満たされる緩衝液のほか、測定試料を溶解希釈するために用いられる溶血希釈用緩衝液、泳動路内を洗浄するために用いられる泳動路洗浄用緩衝液等、本発明1の安定型ヘモグロビンA1c値の測定方法を実施するために用いられる全ての種類の緩衝液を意味する。
上記緩衝液には、カオトロピック化合物、界面活性剤、各種ポリマー、親水性の低分子化合物等、一般的に用いられる添加剤を適宜添加してもよい。
具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られるアクリル系ポリマー、((メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマーを重合して得られるアクリル系ポリマー、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーを重合して得られるアクリル系ポリマー等が挙げられる。
上記アニオン性基を有しない(メタ)アクリルモノマーとしては、上記アニオン性基を有する(メタ)アクリルモノマーと共重合が可能な(メタ)アクリルモノマーであれば特に限定されないが、例えば、非イオン性の親水性である(メタ)アクリル酸エステル類であることが好ましい。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明2の安定型ヘモグロビンA1c値の測定方法は、まず、電気泳動法によって、安定型ヘモグロビンA1cのピークとヘモグロビンA0のピークとが分離されたエレクトロフェログラムを得る。得られたエレクトロフェログラムにおいて、安定型HbA1cのピーク面積値aを算出する。次いで、ヘモグロビンA0のピークの面積値cを算出する。得られた面積値aを、面積値aと面積値cとを加えた面積値で除した値を100倍すること、すなわち、下記式(2)によって、安定型HbA1c値(%)を得ることができる。
上記各Hb成分のピーク面積値を算出する方法としては特に限定されず、例えば、従来公知のデータ処理方法等を用いることができる。
なお、本明細書において、上記「異常Hb類」とは、本発明2の安定型ヘモグロビンA1c値の測定方法に用いる上記電気泳動法によって分離することが可能な全ての異常Hb類、特に、HbS、HbCを示すとともに、健常人血にも一定の割合で含まれるHbA2も示す。
キトサン(和光純薬社製、キトサン100)を0.2重量%含有する0.2N塩酸水溶液を調製した。次いで、フューズドシリカ製キャピラリー(GLサイエンス社製:内径25μm×全長30cm)に、0.2N−NaOH、イオン交換水、0.5N−HClをこの順で通液してキャピラリー内を洗浄した後、得られたキトサン水溶液を20分間通液した。その後、空気をキャピラリー内に注入してキトサン水溶液を追い出した後、40℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。その後、再びキトサン水溶液を注入し、空気の注入及び乾燥を5回繰り返した。
得られたキトサン固定化キャピラリーを、キャピラリー電気泳動装置(Beckman Coulter社製 PAC/E MDQ)にセットした。その後、コンドロイチン硫酸(和光純薬社製)2.0重量%を含有するクエン酸緩衝液(pH4.8)を泳動用緩衝液としてキャピラリーの両端にセットし、キャピラリー内に満たした。
測定試料としてAFSCヘモコントロール(ヘレナ研究所社製)及び健常人血を混合することによって、異常Hb類を含み、安定型HbA1c値が5.0%となる評価用試料を調製した。調整した評価用試料をキャピラリーの一方より注入して、キャピラリーの両端の緩衝液に20kVの電圧をかけて電気泳動を行った。415nmの可視光における吸光度変化を測定することにより、試料中の安定型HbA1c及び異常Hb類の分離を行った。
得られたエレクトロフェログラムを図2に示す。図2中、ピーク1はHbA1a、ピーク2はHbA1b、ピーク3は胎児性Hb(HbF)、ピーク4は不安定型HbA1c、ピーク5は安定型HbA1c、ピーク6はHbA0、ピーク7はHbS、ピーク8はHbCを示す。
ガラス製マイクロチップ(50mm×30mm×2mm)に泳動路を作製し、泳動路の両端に緩衝液槽を設置した。
泳動路には、ポリビニルアルコール水溶液及び5重量%のポリブレン水溶液(和光純薬社製)を実施例1と同様の方法により順次通液して固定化を行った。緩衝液としては、実施例1と同様の泳動用緩衝液を用いた。
測定試料としてA2コントロールレベル2(バイオラッド社製)及び健常人血を混合することによって、HbA2を含み、安定型HbA1c値が4.8%となる評価用試料を調整した。調整した評価用試料を泳動路の一端の緩衝液槽に添加して、泳動路の両端に1000Vの電圧をかけてマイクロチップ電気泳動を行った。415nmの可視光における吸光度変化を測定することにより、評価用試料中の安定型HbA1c及びHbA2の分離を行った。
得られたエレクトロフェログラムを図3に示す。図3中、ピーク1はHbA1a、ピーク2はHbA1b、ピーク3はHbF、ピーク4は不安定型HbA1c、ピーク5は安定型HbA1c、ピーク6はHbA0、ピーク9はHbA2を示す。
参考例1において得られたエレクトロフェログラムより、各Hb成分のピーク面積値を算出した。更に、各Hb成分のピーク面積値を、全Hb成分のピーク面積値から異常Hb類のピーク面積値及びHbFのピーク面積値を除外したピーク面積値bで除し、各Hb成分について百分率(%)を算出した(本発明1の算出方法)。
更に、安定型HbA1cのピーク面積値aを、該ピーク面積値aとHbA0のピーク面積値cとの合計値で除し、各Hb成分について百分率(%)を算出した(本発明2の算出方法)。
結果を表1に示す。本発明1及び本発明2の算出方法では、安定型HbA1c値が約5.0%と正確な値を示した。
各Hb成分のピーク面積値を、全Hb成分のピーク面積値dで除した以外は、実施例1と同様にして、各Hb成分について百分率(%)を算出した。
結果を表1に示す。安定型HbA1c値は1.7%と不正確な値を示した。
参考例2において得られたエレクトロフェログラムより、各Hb成分のピーク面積値を算出した。更に、各Hb成分のピーク面積値を、全Hb成分のピーク面積値からHbA2のピーク面積値及びHbFのピーク面積値を除外したピーク面積値bで除し、各Hb成分について百分率(%)を算出した(本発明1の算出方法)。
更に、安定型HbA1cのピーク面積値aを、該ピーク面積値aとHbA0のピーク面積値cとの合計値で除し、各Hb成分について百分率(%)を算出した(本発明2の算出方法)。
結果を表2に示す。本発明1及び本発明2の算出方法では、安定型HbA1c値が約4.8%と正確な値を示した。
各Hb成分のピーク面積値を、全Hb成分のピーク面積値dで除した以外は、実施例2と同様にして、各Hb成分について百分率(%)を算出した。
結果を表2に示す。安定型HbA1c値は3.0%と不正確な値を示した。
12 陽極槽
13 陰極槽
14 キャピラリー
15 高圧電源
16 検出器
17 電極
18 電極
1 HbA1a
2 HbA1b
3 HbF
4 不安定型HbA1c
5 安定型HbA1c
6 HbA0
7 HbS
8 HbC
9 HbA2
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