JP2008164000A - トルクリミッタの設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】限られた設置空間に所望のトルクを有するトルクリミッタを設置できる、トルクリミッタの設計方法を提供する
【解決手段】トルクリミッタ10は、円筒状外周部を有する第1回転体11と、円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、第1回転体11と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体20とからなり、第1回転体11の円筒状外周部および第2回転体20の円筒状内周部には永久磁石13が、他方にはヒステリシス材22が設けられる。トルクリミッタ10の設計方法は、永久磁石13の寸法を変えることなく、ヒステリシス材22の径または軸方向長さを変えることによって発生するトルクを調整する。
【選択図】図1
【解決手段】トルクリミッタ10は、円筒状外周部を有する第1回転体11と、円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、第1回転体11と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体20とからなり、第1回転体11の円筒状外周部および第2回転体20の円筒状内周部には永久磁石13が、他方にはヒステリシス材22が設けられる。トルクリミッタ10の設計方法は、永久磁石13の寸法を変えることなく、ヒステリシス材22の径または軸方向長さを変えることによって発生するトルクを調整する。
【選択図】図1
Description
この発明は、例えば複写機やプリンター・ファクシミリ等の給紙分離装置等に用いられるトルクリミッタの設計方法に関し、特に、発生するトルクを変化させることができるトルクリミッタの設計方法に関する。
トルクリミッタは、相互に対向する永久磁石とヒステリシス材とから構成されている。従来のトルクリミッタにおいては、トルクリミッタの設計時に、必要なトルクが発生するように、永久磁石とヒステリシス材との隙間および対向面積を定めていた。したがって、トルクを変更する場合、永久磁石とヒステリシス材の両方の対向面積、または、軸方向の長さを変えることによって調整していた。
従来のトルクリミッタにおいては、トルクの調整は、永久磁石とヒステリシス材の両方の対向面積、または、軸方向の長さを変えることによって行われていたため、トルクリミッタの設置場所が定められる、たとえば、軸方向の長さが制限される場合は、所望のトルク値を得ることができないという問題があった。
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、限られた設置空間に所望のトルクを有するトルクリミッタを設置できる、トルクリミッタの設計方法を提供することを目的とする。
この発明に係る、トルクリミッタの設計方法においては、トルクリミッタは、円筒状外周部を有する第1回転体と、円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、第1回転体と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体とからなり、第1回転体の円筒状外周部および第2回転体の円筒状内周部のいずれか一方には永久磁石が、いずれか他方にはヒステリシス材が設けられる。トルクリミッタの設計方法は、永久磁石とヒステリシス材との対向面積を変えることなく、ヒステリシス材の径方向の厚さを変えることによって発生するトルクを調整する。
永久磁石との対向面積を変えることなく、ヒステリシス材の径方向の厚さを変えることによって発生するトルクを調整するため、従来のように、発生トルクを調整するために対向面積を変化させる必要がない。
その結果、限られた設置空間に所望のトルクを有するトルクリミッタを設置できる、トルクリミッタを提供できる。
なお、この発明の原理については、後で詳細に説明するが、この発明の発明者らは、トルクリミッタを構成する永久磁石とヒステリシス材において、その対向面積を変えることなく、ヒステリシス材の外径寸法を変えれば、発生するトルクを調整できることを発見した。すなわち、ヒステリシス材の外径寸法を変えるだけで所望のトルクを設定できるため、従来のように、永久磁石とヒステリシス材の両方の寸法を考慮する必要がなく、必要なトルクが得られるヒステリシス材の寸法を設置空間に合わせることができる。
好ましくは、トルクの調整は、永久磁石およびヒステリシス材の径方向の隙間が変化しないように発生トルクを変化させる。
さらに好ましくは、トルクの調整は、ヒステリシス材の径方向の厚さを一定にして行う。
なお、ヒステリシス材の径方向の外径寸法をDとし、軸方向の長さをLとしたとき、その比D/Lの値は、0.45≦D/Lであるのが好ましい。
まず、この発明の原理について説明する。図1は、一般的なトルクリミッタの構成を示す図である。図1を参照して、トルクリミッタ10は、図示のない駆動用のシャフトに止めネジ(図示なし)を介して一体的に回転するようにされた、円筒状外周部を有する第1回転体11と、第1回転体11の円筒外周部に対向する円筒状内周部を有する第2回転体20とを含む。
第1回転体11は、合成樹脂円筒体12と、合成樹脂円筒体12の外周部に接着により固着された円筒状の永久磁石13とを含む。合成樹脂円筒体12と永久磁石13は一体成形により互いに固定してもよい。
第2回転体20は、キャップ21aとキャップ21aに対して溶着固定されたケース21bとを含む。ケース21bの開口端部に凹部を円周方向に複数個形成し、これに対応してキャップ21aの開口端部の円周方向に複数の突起を設けて、この突起を上記凹部に圧入して固定してもよい。キャップ21aとケース21bとは、第1回転体11と、軸摺動部11a、11bで摺動する。キャップ21aとケース21bの内周面には、円筒状の永久磁石13の外周部に対向する円筒体であるヒステリシス材(半硬質磁石)22が設けられている。ここで、ヒステリシス材22の外径をD、軸方向の長さをLとする。
図2は、図1に示したヒステリシス材22の外径Dと軸方向の長さLとの比D/Lを変化させたときの、永久磁石13との間のトルクの上昇率を示す図である。図中菱形は、具体的なデータを示し、直線は、データから得られた回帰直線を示す。本来は、トルクリミッタにおいて、ヒステリシス材22の外径Dと軸方向の長さLとの比D/Lを変化させても、永久磁石13との対抗面積が同じであれば、発生するトルクは変化しないはずである。しかしながら、発明者らは、比D/Lを変化させれば、発生トルクが変化する、すなわち、比D/Lを上昇すれば、発生トルクも上昇することを図2から見出した。このことは、トルクリミッタの設計において、発生トルクが定められたとき、そのトルクを発生させるのに、単に永久磁石とヒステリシス材との対向面積のみに基づいて決定する必要がないことを意味する。なお、図2においては、ヒステリシス材22の径方向の寸法(厚さ)は一定である。
発明者らは、この現象がなぜ発生するかを考えた。その結果、ヒステリシス材の径方向の断面積が関係していることに気が付いた。次に、この点について説明する。図3は、図1と同様のトルクリミッタ30の断面を示す図である。但し、ここでは第1回転体31を構成する合成樹脂円筒体32の径方向寸法が大きくなっている。図3を参照して、第1回転体31の合成樹脂円筒体32の外周部には、永久磁石33が設けられている。第2回転体の40の内周部の永久磁石33に対向する部分には、ヒステリシス材41が設けられている。ここで、永久磁石13とヒステリシス材22との間隙は、図1に示した永久磁石33とヒステリシス材41との間隙に等しく、ヒステリシス材の径方向の厚さも等しい。
ヒステリシス材41の内径をD1、外径をD2とすると、その径方向の断面積の増加分S1は、S1=π((D2/2)2−(D1/2)2)=(π/4)×(D2+D1)×(D2−D1)となる。ここで、ヒステリシス材の厚さを一定とすれば、D2−D1は一定値となる。したがって、断面積S1=k1(定数)×(D1+D2)となり、外径寸法に比例して断面積が大きくなっている。また、実際に、この断面積に比例して発生トルクが増加している。
したがって、たとえば、ヒステリシス材の軸方向長さに制限がある場合、その径方向の寸法を大きくすることによってトルク値を大きくできることがわかる。
図3を図1と比較すると、図3に示したヒステリシス材41の外形寸法は、図1に示したヒステリシス材22の外径寸法に比べて大きく設定されている。取り付ける空間によって軸方向の長さが制限される場合、ヒステリシス材の軸方向の長さは同じで、径方向の寸法を変えると比D/Lが大きくなるので、より大きなトルク値を得ることができる。また、同じトルク値の場合、軸方向の長さを短くして径方向の長さを大きくすることによって同じトルク値を得ることができる。
このとき、永久磁石の軸方向の長さも短くできるので、ヒステリシス材と永久磁石との材料費が低減でき、安価なトルクリミッタを提供できる。
しかも、従来は、トルクリミッタの設計において、永久磁石およびヒステリシス材の、軸方向長さ、および、対向面積を変えることによってトルク値を調整していたのに対して、この発明に従うトルクリミッタの設計方法を採用すれば、ヒステリシス材の外径寸法および厚さ、軸方向の長さの少なくとも一方を変えることによって、トルク値を調整できるので、トルク値の調整の自由度が大きくなる。
なお、トルクリミッタの設計においては、永久磁石とヒステリシス材との間の径方向の隙間が変化しないように発生トルクを変化させるのが好ましい。
さらに、トルクの調整は、ヒステリシス材の径方向の厚さを一定にして行うのが好ましい。このようにすれば、トルクリミッタの設計がより容易になる。
次に、このヒステリシス材の径方向の断面積の変化に応じたトルクの上昇はどの程度の径と軸方向長さの比D/Lから生じるのかについて説明する。図4は、比D/Lを変化させたときの、あるトルク(ここでは、1kgのトルク)を発生させるのに必要なヒステリシス材と永久磁石との対向面積との関係を示す図である。図4(A)は、比D/Lが0から40程度までの値を示す図である。図4(B)は、図4(A)において対向面積が大きく変化している比D/Lが0から1の部分の拡大図であり、図4(C)は、比D/Lが1から41までの値を示す図である。
図4(B)および(C)を参照して、比D/Lが0.4未満であれば、あるトルクを得るために必要な対向面積が大きく変化するため、あるトルクを発生するために異なる多くのヒステリシス材の形状を準備する必要がある。一方、比D/Lが0.4以上であれば、必要な表面積はほぼ一定であることがわかる。このような状態になれば、対向面積を増加させても発生するトルクは変化しなくなるため、トルクを上昇させるためにヒステリシス材の外径寸法を増加させる必要が生じる。すなわち、比D/Lが0.4以上であれば、ヒステリシス材の径を変えることによって所望のトルクを得ることが好ましいことがわかる。
なお、上記実施の形態においては、ヒステリシス材を第2回転体に設けた場合について説明したが、これに限らず、第1回転体に設けてもよい。
また、第1回転体の外周に永久磁石を設けた場合に、永久磁石の厚さを変えることなく、第1回転体を構成する合成樹脂円筒体の外径寸法を増加させる場合について説明したが、これに限らず、永久磁石自体の径方向寸法を増加させてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係るトルクリミッタの設計方法は、限られた設置空間に所望のトルクを発生するトルクリミッタを設置できるため、トルクリミッタの設計方法として有利に使用される。
10,30 トルクリミッタ、11,31 第1回転体、12 合成樹脂円筒体、13,33 永久磁石、20,40 第2回転体、21a キャップ、21b ケース、22,41 ヒステリシス材。
Claims (4)
- 円筒状外周部を有する第1回転体と、前記円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、前記第1回転体と同軸状で互いに対して相対的に回転可能に設けられた第2回転体とからなり、前記第1回転体の円筒状外周部および前記第2回転体の円筒状内周部のいずれか一方には永久磁石が、いずれか他方にはヒステリシス材が設けられるトルクリミッタの設計方法であって、
永久磁石とヒステリシス材との対向面積を変えることなく、前記ヒステリシス材の外径寸法を変えることによって発生するトルクを調整する、トルクリミッタの設計方法。 - トルクの調整は、永久磁石およびヒステリシス材の径方向の隙間が変化しないように発生トルクを変化させる、請求項1に記載のトルクリミッタの設計方法。
- トルクの調整は、前記ヒステリシス材の径方向の厚さを一定にして行う、請求項1または2に記載のトルクリミッタの設計方法。
- 前記ヒステリシス材は、径方向の外径寸法をDとし、軸方向の長さをLとしたとき、その比D/Lの値は、0.45≦D/Lである、請求項1から3のいずれかに記載のトルクリミッタの設計方法。
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