JP5881231B2 - トルクリミッタ - Google Patents

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Description

この発明は、永久磁石とヒステリシス材との間に生じるヒステリシストルクによってトルクを伝達するトルクリミッタに関するものである。
ヒステリシストルクを利用したトルクリミッタは、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の給紙分離装置などに用いられている。
従来のトルクリミッタが、例えば、特開2008−281112(特許文献1)に記載されている。図4は、上記公報に開示されたトルクリミッタを示す概略図である。
トルクリミッタ100は、円筒状外周部101を有する第1回転体102と、円筒状内周部107を有する第2回転体103とを備える。第2回転体103は、有底円筒状の本体部103aと、蓋体103bとからなる。
第1回転体102と第2回転体103とは同軸上に設置されており、摺動部104a、104bでの当接によって半径方向および軸方向の位置決めがなされていて、かつ互いに回転可能となっている。
第1回転体102の円筒状外周部101には、円筒状の永久磁石105が固着されている。また、第2回転体103の円筒状内周部107には、円筒状の半硬質磁性体(ヒステリシス材)106が固着されている。円筒状永久磁石105と円筒状半硬質磁性体106との間に所定の間隙Gがあり、両者の間に生じるヒステリシストルクによって上記の両回転体間でトルクを伝達する。
特開2008−281112号公報
従来のヒステリシストルクを利用したトルクリミッタは、コギング(コトコト音)が発生する問題があった。その原因は次のように考えられる。
特許文献1に開示されているようなヒステリシストルクを利用したトルクリミッタは、使用中に80℃〜100℃程度まで発熱する。トルクリミッタは、発熱により摺動部の寸法が膨張し、トルク値が変動する。この問題を防止するために、設計上、摺動部104a、104bに所定のギャップをもたせている。
しかし、この摺動ギャップが大きい場合は、使用時に第1回転体102が振動し、回転周期毎に摺動部内で衝突を繰り返す。この衝突によってコギング(コトコト音)が発生していると考えられる。
この発明の目的は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、コギング(コトコト音)が発生しない信頼性の高いトルクリミッタを提供することである。
この発明におけるトルクリミッタは、円筒状外周部を有する第1回転体と、前記円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有していて、前記第1回転体と同軸上で相対的に回転可能に設けられた第2回転体と、前記円筒状外周部および前記円筒状内周部のうちの一方に固着された円筒状永久磁石と、前記円筒状外周部および前記円筒状内周部のうちの他方に固着され、前記永久磁石との間にヒステリシストルクを発生する円筒状ヒステリシス材とを備える。前記第1回転体と前記第2回転体との摺動部を1つ以上有し、少なくとも1つの前記摺動部は円錐形状である。
上記の構成によると、摺動部が円錐形状になっているので、摺動時に調芯作用が働き、第1回転体の振動を抑制できるため、従来技術に見られるようなコギング(コトコト音)が発生しない。
好ましくは、軸方向一端側に設けられた摺動部が円錐形状である。
また、軸方向他端側にも円錐形状の摺動部が設けられてもよい。
この発明によると、摺動部が円錐形状になっているので、摺動時に調芯作用が働き、第1回転体の振動を抑制できる。このため、コギング(コトコト音)が発生しなく、信頼性の高いトルクリミッタを得ることができる。
この発明の第1の実施の形態に係るトルクリミッタの断面図である。 この発明の第2の実施の形態に係るトルクリミッタの断面図である。 この発明の第3の実施の形態に係るトルクリミッタの断面図である。 従来のトルクリミッタを示す断面図である。
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1はこの発明の第1の実施の形態に係るトルクリミッタ10を示す要部断面図である。図1を参照して、トルクリミッタ10は、円筒状外周部19を有する第1回転体11と、第1回転体11の円筒外周部に対向する円筒状内周部15を有する第2回転体13とを含む。第1回転体11は図示のない駆動用のシャフトに止めネジ(図示なし)を介して取り付けられ、シャフトと一体的に回転する。
第1回転体11は、ロータ軸11a、ロータ軸の外周部にインサート成形により設けられた円筒状の永久磁石12とを含む。
なお、インサート成形以外に圧入、接着等により永久磁石を取り付けても構わない。
第2回転体13は、ハウジング13aと、ハウジング13aの内周面にインサート成形により設けられた円筒状のヒステリシス材(半硬質磁石)14と、蓋13bとを含む。
なお、インサート成形以外に圧入、接着等によりヒステリシス材を取り付けても構わない。
永久磁石12とヒステリシス材14とは所定の間隙Gをもって対向している。ここで、ヒステリシス材14と永久磁石12とは位置をずらして配置されている。すなわち、ヒステリシス材14は永久磁石12より寸法が長く、永久磁石12に対して蓋側よりもハウジング13aの底側に、より突出している。なお、永久磁石とヒステリシス材は同じ長さであっても構わない。
第1回転体11と、ハウジング13aと蓋13bとは、第1摺動部17及び第2摺動部18で摺動する。ハウジング13aの底側に設けられた第1摺動部17は円錐形状である。具体的には、ロータ軸11aの摺動面17aである一方端部は断面が台形の円錐形状であり、回転軸に対して傾斜している面を有する。一方ハウジング13aの摺動面17bもロータ軸11aの摺動面17aに対応して同じ角度で傾斜している面を有する。上記互いの摺動面17a、17bで摺動する。なお、ここでの傾斜角は、特に限定はされない。好ましい傾斜角は軸線に対して0.5°〜45°である。
もう一方の第2摺動部18は、回転軸に対して平行な面で摺動する。具体的には、ローラ軸11aのもう一方端部は円筒形状の摺動面18aを有し、蓋もそれに対応して円筒形状の摺動面18bを有する。上記互いの摺動面18a、18bで摺動する。
この実施形態においては、第1回転体11と第2回転体13とは、第1摺動部17及び第2摺動部18の2箇所で摺動する。
以上のように、この実施形態においては、ヒステリシス材14がハウジング13aの底側に突出している。この場合使用中に、ヒステリシス材14と永久磁石12とが中央で対向しようとする吸引力が働く。つまり、ハウジングの底側に収まろうとする。その際、第1回転体11の先端部が嵌り込む摺動部の形状を円錐形状にしたことにより、調芯作用が働くので、第1回転体の振動を抑制できる。その結果、コギング(コトコト音)の発生を防ぐことができる。
次にこの発明のトルクリミッタを構成する各部を説明する。
<永久磁石>
永久磁石としては、フエライト磁石や希土類磁石(焼結磁石、樹脂磁石を含む)が用いられる。希土類磁石としては、Nd−Fe−B磁石、Sm−Fe−N磁石、Sm−Co系磁石等が挙げられる。
永久磁石の寸法は、一般的に外径が4〜30mm、厚みが1〜2.5mm、長さが5〜40mmである。
<ヒステリシス材>
ヒステリシス材はFe−Cr−Co系、Fe−Co系合金製で、継ぎ目の無いシームレス状の円筒体や板状のものをカールした継ぎ目のある円筒体等が用いられる。
ヒステリシス材の寸法は、一般的に外径が4〜30mm、厚みが0.3〜2.5mm、長さが5〜40mmである。
<第1及び第2回転体>
第1及び第2回転体は、合成樹脂材料あるいは金属材料で形成することができる。金属材料としては、例えばアルミニウム、亜鉛、しんちゅう、ステンレス、鉄などの金属が挙げられる。また、合成樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、上記ポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類の単独重合体または異種ポリオレフィンとの共重合体の総称で、代表例としてポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂等が挙げられる。
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図2はこの発明の第2の実施の形態に係るトルクリミッタ20を示す図である。
上記した第1の実施の形態においては、一方の摺動部のみを円錐形状にした構造を有していたが、この実施の形態においては、第1摺動部27及び第2摺動部28ともに、円錐形状にした構造を有する。それ以外の点については、第1の実施の形態と同様であるので、第1の実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
この実施形態においては、トルクリミッタ20には、第1回転体21の摺動面27a、28aである両端が、断面が台形の円錐形状であり、それぞれ回転軸に対して傾斜している面を有する。一方ハウジング23aの摺動面27bも第1回転体21の摺動面27aに対応して同じ角度で傾斜している面を有する。同様に蓋27の摺動面28bも第1回転体21の摺動面28aに対応して同じ角度で傾斜している面を有する。
第1摺動部27及び第2摺動部28ともに、円錐形状にした構造を有するため、調芯作用が働き、第1回転体の振動を抑制できる。このため、コギング(コトコト音)が発生しない。この場合、ヒステリシス材は一方側に突出させる必要はないが、ハウジングの底側か蓋側かにどちらか一方に突出させても、もちろん構わない。
この実施の形態においては、第1及び第2摺動部27、28の傾斜角は、図示したように、左右非対称でもよいし、左右対称であってもよい。
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。図3はこの発明の第3の実施の形態に係るトルクリミッタ30を示す図である。
上記した第1及び2の実施の形態においては、第1回転体と第2回転体とは、第1摺動部及び第2摺動部の2箇所で摺動する構造を有していたが、この実施の形態においては1箇所のみで摺動する。また、蓋を有さなく、一方側は外部に露出している。それ以外の点については、第1の実施の形態と同様であるので、第1の実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
この実施形態における第1回転体31は第1の実施の形態と同じ構造を有する。
第2回転体33は、一方端が開口となっているハウジング33aと、ハウジング33aの内周面にインサート成形等により設けられた円筒状のヒステリシス材(半硬質磁石)14とを含む。第1の実施の形態と同様に、永久磁石12とヒステリシス材14とは所定の間隙Gをもって対向している。ここで、ヒステリシス材14と永久磁石12とは位置をずらして配置されている。すなわち、ヒステリシス材14は永久磁石13より寸法が長く、永久磁石13に対して蓋側よりもハウジング33aの底側に、より突出している。
第1回転体31と、第2回転体33とは、1箇所の摺動部37のみで摺動する。ハウジング33aの底側に設けられた摺動部37は円錐形状である。
この実施形態においては、1箇所のみで摺動する構造であっても、第1の実施形態と同じ作用で、調芯作用が働き、第1回転体の上下振動を抑制できる。このため、コギング(コトコト音)が発生しない。
第1〜第3の実施の形態のように、永久磁石とヒステリシス材とをずらして配置した場合はスラスト方向の押し付け力も作用する。その結果、トルクがアップする効果も得ることができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
図示した実施形態と異なり、第1回転体にヒステリシス材を固着し、第2回転体に永久磁石を固着するようにしてもよい。
この発明に係るトルクリミッタによれば、コギング(コトコト音)が発生することなく信頼性の高いトルクリミッタとして有利に利用される。
10,20,30 トルクリミッタ、11,21,31 第1回転体、11a,21a,31a ロータ軸、12 永久磁石、13,23,33 第2回転体、13a,23a,33a ハウジング、13b,23b 蓋、14,24 ヒステリシス材、17,27 第1摺動部、18,28 第2摺動部、37 摺動部。

Claims (2)

  1. 円筒状外周部を有する第1回転体(11)と、前記円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有していて、前記第1回転体と同軸上で相対的に回転可能に設けられた第2回転体(13)と、前記円筒状外周部および前記円筒状内周部のうちの一方に固着された円筒状永久磁石(12)と、前記円筒状外周部および前記円筒状内周部のうちの他方に固着され、前記永久磁石との間にヒステリシストルクを発生する円筒状ヒステリシス材(14)とを備えるトルクリミッタであって、
    前記第1回転体と前記第2回転体との摺動部を1つ以上有し、少なくとも軸方向一端側に設けられた前記摺動部は円錐形状の第1摺動部であり、
    前記ヒステリシス材(14)は前記永久磁石(12)に対して、軸方向他端側よりも前記軸方向一端側である円錐形状の前記第1摺動部側に円筒状により突出している、トルクリミッタ。
  2. 前記軸方向他端側にも円錐形状の第2摺動部が設けられている、請求項1に記載のトルクリミッタ。
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