JP2008161843A - 菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の菊花型エレメントは、ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状のものであって、(A)濾紙と、ひだの内面側となる濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、(B)ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備えており、前記低融点繊維層は、濾紙を形成する濾紙材料(例えば、PET繊維等)よりも融点の低い繊維(例えば、PP繊維等)、及び/又は濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって形成されている。
【選択図】図5
Description
また、有効な濾過面積をできるだけ大きく確保するために、上下端部の接着位置は端に近いほど好ましいといえるが、特許文献1の菊花型エレメントを製造する場合には、接着剤の塗布位置を端部に近づけ過ぎると、ひだ間を接着する際に接着剤が上下端からはみ出してしまい、製造ラインにエレメントが固着してしまうという不具合もあるため、上下端部近傍に接着剤を塗布する必要があり、本来有する濾過面積を活かせていないのが現状である。
一方、上記特許文献3及び4に記載されているような筒状フィルタでは、繊維同士を熱融着させているため、接着剤を塗布する工程は必要としていない。しかしながら、濾材として機能する繊維そのものを熱融着させており、本来有する濾過面積を活かしきれておらず、更には、熱融着させる部分の制御は容易ではなく、濾材として機能すべき部分の繊維を必要以上に熱溶着させてしまうこともあり、高い濾過精度を常に維持することができないという問題がある。
[1] ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状の菊花型エレメントであって、
(A)濾紙と、前記ひだの内面側となる該濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、
(B)前記ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ前記低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備えており、
前記低融点繊維層は、前記濾紙を形成する濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって形成されていることを特徴とする菊花型エレメント。
[2] 前記低融点繊維層が、前記ひだの内面側となる濾紙の表面の全面に形成されている上記[1]に記載の菊花型エレメント。
[3] 前記低融点繊維層を形成する繊維の繊維径が0.1〜10μmである上記[1]又は[2]に記載の菊花型エレメント。
[4] 前記低融点繊維層の厚みが、前記濾紙の厚みの20〜50%である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の菊花型エレメント。
[5] 前記濾紙を形成する濾紙材料が、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方であり、且つ前記低融点繊維層を形成する繊維が、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方である上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の菊花型エレメント。
[6] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の菊花型エレメントの製造方法であって、濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に、該濾紙を形成している濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって低融点繊維層を形成する工程と、
前記低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、該低融点繊維層が形成された濾紙を筒状の菊花型となるように折り曲げ、該ひだの上端部及び下端部を加熱して、前記低融点繊維層同士を熱溶着することにより、前記ひだの上端部及び下端部を接合する工程と、を備えることを特徴とする菊花型エレメントの製造方法。
[7] 前記低融点繊維層を形成する工程において、メルトブロウ法又はスパンボンド法により、該低融点繊維層を前記濾紙の表面に形成する上記[5]に記載の菊花型エレメントの製造方法。
[8] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の菊花型エレメントと、該菊花型エレメント上面及び下面に形成されたシール部と、を備えることを特徴とする濾過体。
[9] 上記[8]に記載の濾過体と、該濾過体を収納する収納体と、該収納体に設けられ且つ該濾過体を上下方向から支持する上方支持部及び下方支持部と、を備えており、
前記濾過体におけるシール部が、該濾過体における菊花型エレメントの軸方向の両端面と、前記上方支持部及び前記下方支持部との間をシールしていることを特徴とする流体フィルタ。
また、低融点繊維層が、ひだの内面側となる濾紙表面の全面に形成する場合、加熱溶着される部分(接合部)以外の低融点繊維層が濾材の役割を果たすため、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
更に、低融点繊維層を形成する繊維の繊維径を0.1〜10μmとする場合、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
また、低融点繊維層の厚みが、濾紙の厚みの20〜50%とする場合、菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部を確実に接合することができる。更には、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
更に、濾紙を形成する濾紙材料を、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方とし、且つ低融点繊維層を形成する繊維を、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方とする場合、菊花型エレメントの濾過効率を確実に向上させることができ、濾過寿命をより長くすることができる。
また、本発明の菊花型エレメントの製造方法によれば、濾紙表面に形成した低融点繊維層をひだの内面の接合剤として利用でき、且つ接合範囲の制御が容易であるため、ひだの上端部及び下端部を必要最小限の範囲で接合することができ、濾過機能を有する有効面積が大きな菊花型エレメントを容易に製造することができる。また、従来の濾材への接着剤を塗布する工程を省略することができるため、菊花型エレメントの製造に要する時間を短縮することができる。
更に、低融点繊維層をメルトブロウ法又はスパンボンド法により形成する場合、繊維径の小さな繊維からなる低融点繊維層を容易に形成することができる。
また、本発明の濾過体は、上記の菊花型エレメントを備えているため、濾過効率及び濾過寿命に優れている。
更に、本発明の流体フィルタは、上記の菊花型エレメントを備えているため、濾過効率及び濾過寿命に優れており、自動車等に用いられるオイルフィルタ等の液体用フィルタ、内燃機関の吸気系に設置されたエアクリーナの構成部品として利用できるエアフィルタ等の気体用フィルタ等の分野において幅広く利用することができる。
[1]菊花型エレメント
本発明の菊花型エレメントは、ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状のものであって、(A)濾紙と、前記ひだの内面側となる該濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、(B)前記ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ前記低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備える。
具体的には、セルロース繊維(例えば、パルプ繊維、リンター繊維、レーヨン繊維等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド系合成繊維等が挙げられる。これらのなかでも、セルロース繊維、PET繊維が好ましい。
尚、これらの繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
尚、ここでいう濾紙の表面とは、本発明の菊花型エレメントのひだの内面側となる面を意味する。また、濾紙表面における上下方向は、菊花型エレメントの軸方向の上下方向に対応している。
上記低融点繊維としては、融点が200℃未満のものが好ましく、より好ましくは150〜190℃のもの、更に好ましくは150〜170℃のものが好ましい。
具体的には、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ビニリデン繊維等が挙げられる。これらのなかでも、ポリプロピレン繊維が好ましい。尚、これらの低融点繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記複合繊維の形態は特に限定されず、例えば、芯鞘型、並列型、分割型、海島型又は星雲型の複合繊維等が挙げられる。
本発明の菊花型エレメントにおいて、このような複合繊維を用いた場合には、菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部の接合部に、耐熱性能を付与することができる。
上記ひだの内面の上端部及び下端部における各接合部(以下、それぞれ、「上端接合部」及び「下端接合部」ともいう。)の大きさは、所望の菊花型エレメントのサイズに必要な強度に応じて適宜調整されるものである。特に、各接合部の大きさは、未濾過油が流出しないように十分な油密を確保できる強度を備えている限り、濾材の有効な濾過面積を大きくできるため小さいほど好ましい。
また、上記下端接合部の具体的な寸法は、エレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだの内面の下端から全長の5〜20%となる幅まで形成されていることが好ましく、より好ましくは5〜15%となる幅まで、更に好ましくは5〜10%となる幅までである。
尚、上端接合部及び下端接合部の大きさは同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に、本発明においては、流体フィルタにおけるオイル等の流体の流入口近傍は、他の部分に比べ流れが高流速になり、濾過体に高負荷が加わるため、図6に示すように、流体の流入口側となる下端接合部27bの大きさを上端接合部27aよりも大きく設定し、下端接合部27bの強度を上端接合部27aよりも大きくしておくことができる。
また、流体フィルタの濾過体を通過するオイル等の流体の流速は一様ではなく、インレット及びアウトレットに近いほど高流速となることが知られているため、菊花型エレメントを通過する流体の流速分布が均質となるように、上記他の接合部を形成することによって、菊花型エレメントの濾過効率を向上させ、濾過寿命を長くすることもできる。
具体的には、図7に示すように、整流作用が働くように、即ち上部側にも均等に流体が流れるように、傾斜を有する他の接合部37cを形成することができる。
尚、この他の接合部の形状は特に限定されない。また、他の接合部は、1つのみ形成されていてもよいし、複数形成されていてもよい。更に、この他の接合部は、全てのひだに形成されていてもよいし、一部のひだにのみ形成されていてもよい。
本発明の菊花型エレメントの製造方法は、上述の菊花型エレメントの製造方法であって、濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に、その濾紙を形成している濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又はその濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって低融点繊維層を形成する工程(以下、「低融点繊維層形成工程」という)と、前記低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、その低融点繊維層が形成された濾紙を筒状の菊花型となるように折り曲げ、ひだの上端部及び下端部を加熱して、前記低融点繊維層同士を加熱溶着することにより、前記ひだの上端部及び下端部を接合する工程(以下、「接合工程」という)と、を備える。
尚、上記「濾紙」、上記「濾紙材料よりも融点の低い繊維(低融点繊維)」及び上記「濾紙材料よりも融点の低い繊維(低融点繊維)を含有する複合繊維」については、それぞれ、前述の説明をそのまま適用することができる。
尚、ここでいう濾紙の表面とは、濾紙の片面を意味し、且つ得られる菊花型エレメントのひだの内面側となる面を意味する。また、濾紙表面における上下方向は、得られる菊花型エレメントの軸方向の上下方向に対応している。
また、この工程では、必要に応じて、適宜の形状の他の接合部が加熱溶着により形成される。
更に、加熱溶着させて下端接合部とするひだの下端部の大きさは、エレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだの下端から全長の5〜20%となる幅まで接合することが好ましく、より好ましくは5〜15%となる幅まで、更に好ましくは5〜10%となる幅までである。
また、上記加熱溶着させる際の加熱温度は、上述の濾紙と低融点繊維層とからなる濾材における濾紙を形成している繊維の融点よりも低く、且つ低融点繊維層を形成する低融点繊維の融点よりも高い温度に設定される。具体的には、160〜230℃で行うことが好ましく、より好ましくは170〜220℃、更に好ましくは180〜210℃である。
更に、この加熱時間は、上記加熱温度や加熱溶着させる面積に応じて適宜調整されるが、具体的には、1〜30秒間が好ましく、より好ましくは1〜20秒間、更に好ましくは1〜10秒間である。
本発明の濾過体は、上述の菊花型エレメントと、この菊花型エレメント上面及び下面に形成されたシール部と、を備えることを特徴とする。
上記「シール部」は、菊花型エレメント上面及び下面、即ち、菊花型エレメントの軸方向の両端部に設けられており、濾過体とこの濾過体を収納する収納体との間を確実にシールすることができるものであれば、その形状、大きさ、配置形態等は特に限定されるものではない。通常、このシール部の形状はリング状である。
上記光硬化性樹脂とは、例えば、硬化性重合体(未硬化の重合体、オリゴマー等)に、光重合開始剤が配合された組成物であり、可視光、紫外光、電子線、中性子線等により光重合されるものである。このような光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコーンポリエステル型、アクリロイル基を有するアクリルシリコーン、メルカプト−ビニル付加重合型等)、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、グアナミン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等を用いることができる。尚、これらの樹脂は無溶剤型であってもよいし、溶剤型であってもよい。
本発明の流体フィルタは、上述の濾過体と、この濾過体を収納する収納体と、この収納体に設けられ且つ濾過体を上下方向から支持する上方支持部及び下方支持部と、を備え、濾過体におけるシール部が、菊花型エレメントの軸方向の両端面と、上方支持部及び下方支持部との間をシールしていることを特徴とする。
本実施例では、本発明に係る「流体フィルタ」として、スピンオン型のオイルフィルタを例示する。このオイルフィルタは、自動車等の車両のエンジン潤滑系回路の途中に適宜固定手段を介して設置され、エンジンオイル中に混入する塵埃(ダスト)、金属磨耗片やスラッジなどの異物を濾過し得るものである。
(1)オイルフィルタの構成
本実施例1に係るオイルフィルタ1は、図1に示すように、ケーシング2(本発明に係る「収納体」として例示する)と、このケーシング2内に収納される濾過体10と、この濾過体10を上下方向から狭持するリリーフバルブ4(本発明に係る「上方支持部」として例示する。)及びチェックバルブ5(本発明に係る「下方支持部」として例示する。)と、を備えている。
本実施例1に係る濾過体10は、図2及び図3に示すように、筒状の菊花型エレメント11と、この菊花型エレメント11の上面12a及び下面12bの内端部に形成されたシール部14,15と、を備えている。
上記シール部14,15は、アクリル系樹脂等の光硬化性樹脂等によって形成されている。これらのシール部14,15は、所定の弾性力を有するものである。そして、上記濾過体10をケーシング2内に収納した状態で、シール部14によって、濾過体10の上面とリリーフバルブ4との間がシールされていると共に、シール部15によって、濾過体10の下面とチェックバルブ5との間がシールされている(図1参照)。
本実施例1に係る筒状の菊花型エレメント11は、図4及び図5に示すように、帯状の濾材が多数のひだ16を備えるように菊花状に折り曲げられて形成されており、互いに隣り合うひだ16の内面の上端部13a及び下端部13bは、それぞれ、上端接合部17a及び下端接合部17bにより接合されている。
上記濾材は、濾紙(厚み;約0.8mm)と、ひだ16の内面側となる濾紙の表面の全面にわたって形成された低融点繊維層(厚み;約0.3mm)と、を備えるものである。また、上記濾紙は、繊維径20〜50μmのパルプ繊維(分解点;約180℃)、及び繊維径10〜50mmのPET繊維(融点;約260℃)から形成されており、上記低融点繊維層は、繊維径1〜3μmのポリプロピレン繊維(融点;約160℃)から形成されている。
上記上端接合部17aは、隣り合うひだ16の内面の上端部13aに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ16の内面の上端から全長の10%となる幅まで形成されている。
また、上記下端接合部17bは、隣り合うひだ16の内面の下端部13bに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ16の内面の下端から全長の10%となる幅まで形成されている。
まず、図4及び図5に示されるように、帯状の濾材[ひだ16の内面側となる面の全域にポリプロピレン繊維からなる低融点繊維層が形成された濾紙]をひだ16が形成されるように折り曲げる。次いで、両端部に複数の加熱板が並んだ加熱治具X(図8参照)を用いて、図9の(a)に示すように、互いに隣り合うひだの外面側の上端部同士の間、及び下端部同士の間に加熱治具Xの各加熱板が挟まれるように加熱治具Xを差込む。その後、図9の(b)に示す状態で、170℃、5秒間の条件で加熱することにより、互いに隣り合う各ひだの内面側の上端部13a(図5参照)に形成されている低融点繊維層同士、及び下端部13b(図5参照)に形成されている低融点繊維層同士を熱融着させて上端接合部17a(図5参照)及び下端接合部17b(図5参照)を形成する。次いで、ひだを備える濾材の両端を接合して筒状体とすることによって、菊花型エレメント11が得られる。
上記(4)のようにして形成された菊花型エレメント11(図4及び5参照)を用意する。次いで、その軸方向が垂直方向を向いた状態の菊花型エレメント11の上端面に光硬化性樹脂を塗布する。その後、菊花型エレメント11の上方から、その塗布された光硬化性樹脂に向って透明な成形型を押し当て、約30秒間、紫外線照射を行う。その結果、菊花型エレメント11の上端面12aにシール部14が形成される。更に、上端面側と同様にして、菊花型エレメント11の下端面12bにもシール部15が形成される。このようにして、濾過体10が得られる。
また、上述のように得られた濾過体10において、菊花型エレメント11の内周面には、多数の貫通孔を有する筒状で金属製のプロテクタ部材9(図1参照)が装着される。そして、その濾過体10が、ケース部材2aに収納され、このケース部材2aにボトムプレート2bが装着されて、上述のオイルフィルタ1が得られることとなる。
本実施例1における菊花型エレメント11は、図5に示すように、ひだ16の上端及び下端の接合部17a,17bが低融点繊維層を加熱溶着させて形成されているため、濾材が本来有する濾過面積を十分に活用することができる。また、ひだ16の内面側となる濾紙表面の全面に低融点繊維層が形成されており、上記上端及び下端接合部17a,17b以外の低融点繊維層が濾材の役割を果たし、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
また、本実施例1におけるオイルフィルタ1及び濾過体10は、上記の菊花型エレメント11を備えているため、濾過効率及び濾過寿命に優れている。
実施例2においては、上記実施例1における菊花型エレメント11の代わりに、図6に示す菊花型エレメント21を用いた例を説明する。尚、菊花型エレメント21以外の他の構成は、全て実施例1と同様であるため、他の構成に関する説明及び効果の記載は省略する。
(1)菊花型エレメントの構成
実施例2における菊花型エレメント21は、図6に示すように、帯状の濾材が多数のひだ26を備えるように菊花状に折り曲げられて形成されており、互いに隣り合うひだ26の内面の上端部23a及び下端部23bは、それぞれ、上端接合部27a及び下端接合部27bにより接合されている。
上記濾材は、濾紙(厚み;約0.8mm)と、ひだ26の内面側となる濾紙の表面の全面にわたって形成された低融点繊維層(厚み;約0.3mm)と、を備えるものである。また、上記濾紙は、繊維径20〜50μmのパルプ繊維(分解点;約180℃)、及び繊維径10〜50mmのPET繊維(融点;約260℃)から形成されており、上記低融点繊維層は、繊維径1〜3μmのポリプロピレン繊維(融点;約160℃)から形成されている。
上記上端接合部27aは、隣り合うひだ26の内面の上端部23aに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ26の内面の上端から全長の10%となる幅まで形成されている。
また、上記下端接合部27bは、隣り合うひだ26の内面の下端部23bに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ26の内面の下端から全長の20%となる幅まで形成されている。
実施例2の菊花型エレメント21を備える場合には、図6に示すように、流体フィルタにおけるオイル等の流体の流入口近傍であり、他の部分に比べ流れが高流速となり高負荷が加わる下端接合部27bが、上端接合部27aよりも幅広に形成されており、優れた強度を有しているため、菊花型エレメントの寿命をより向上させることができる。
実施例3においては、上記実施例1における菊花型エレメント11の代わりに、図7に示す菊花型エレメント31を用いた例を説明する。尚、菊花型エレメント31以外の他の構成は、全て実施例1と同様であるため、他の構成に関する説明及び効果の記載は省略する。
(1)菊花型エレメントの構成
実施例3における菊花型エレメント31は、図7に示すように、帯状の濾材が多数のひだ36を備えるように菊花状に折り曲げられて形成されており、互いに隣り合うひだ36の内面の上端部33a及び下端部33bは、それぞれ、上端接合部37a及び下端接合部37bにより接合されている。また、ひだ36において、整流作用を有するように、所定の傾斜を有する他の接合部37cが2箇所ずつ形成されている。
上記濾材は、濾紙(厚み;約0.8mm)と、ひだ26の内面側となる濾紙の表面の全面にわたって形成された低融点繊維層(厚み;約0.3mm)と、を備えるものである。また、上記濾紙は、繊維径20〜50μmのパルプ繊維(分解点;約180℃)、及び繊維径10〜50mmのPET繊維(融点;約260℃)から形成されており、上記低融点繊維層は、繊維径1〜3μmのポリプロピレン繊維(融点;約160℃)から形成されている。
上記上端接合部37aは、隣り合うひだ36の内面の上端部33aに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ36の内面の上端から全長の10%となる幅まで形成されている。
また、上記下端接合部37bは、隣り合うひだ36の内面の下端部33bに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ36の内面の下端から全長の10%となる幅まで形成されている。
更に、上記他の接合部37cは、隣り合うひだ36の所定の位置に形成されている低融点繊維層同士が熱融着されて形成されている。
実施例3の菊花型エレメント31を備える場合には、図7に示すように、濾過体を通過するオイル等の流体の流速分布が均質となるように、各ひだ36に他の接合部37cが所定の傾斜角を有して形成されているため、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させることができる。更には、他の接合部37cによって、菊花型エレメント全体の強度をより向上させることができる。
また、本実施例のオイルフィルタの構成はいわゆるスピンオン型オイルフィルタであるが、オイルフィルタの構成はこれに限定されない。
自動車等に用いられるオイルフィルタ等の液体用フィルタ、内燃機関の吸気系に設置されたエアクリーナの構成部品として利用できるエアフィルタ等の気体用フィルタ等の分野において幅広く利用される。
Claims (9)
- ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状の菊花型エレメントであって、
(A)濾紙と、前記ひだの内面側となる該濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、
(B)前記ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ前記低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備えており、
前記低融点繊維層は、前記濾紙を形成する濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって形成されていることを特徴とする菊花型エレメント。 - 前記低融点繊維層が、前記ひだの内面側となる濾紙の表面の全面に形成されている請求項1に記載の菊花型エレメント。
- 前記低融点繊維層を形成する繊維の繊維径が0.1〜10μmである請求項1又は2に記載の菊花型エレメント。
- 前記低融点繊維層の厚みが、前記濾紙の厚みの20〜50%である請求項1乃至3のいずれかに記載の菊花型エレメント。
- 前記濾紙を形成する濾紙材料が、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方であり、且つ前記低融点繊維層を形成する繊維が、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方である請求項1乃至4のいずれかに記載の菊花型エレメント。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の菊花型エレメントの製造方法であって、
濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に、該濾紙を形成している濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって低融点繊維層を形成する工程と、
前記低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、該低融点繊維層が形成された濾紙を筒状の菊花型となるように折り曲げ、該ひだの上端部及び下端部を加熱して、前記低融点繊維層同士を加熱溶着することにより、前記ひだの上端部及び下端部を接合する工程と、を備えることを特徴とする菊花型エレメントの製造方法。 - 前記低融点繊維層を形成する工程において、メルトブロウ法又はスパンボンド法により、該低融点繊維層を前記濾紙の表面に形成する請求項6に記載の菊花型エレメントの製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の菊花型エレメントと、該菊花型エレメント上面及び下面に形成されたシール部と、を備えることを特徴とする濾過体。
- 請求項8に記載の濾過体と、該濾過体を収納する収納体と、該収納体に設けられ且つ該濾過体を上下方向から支持する上方支持部及び下方支持部と、を備えており、
前記濾過体におけるシール部が、該濾過体における菊花型エレメントの軸方向の両端面と、前記上方支持部及び前記下方支持部との間をシールしていることを特徴とする流体フィルタ。
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