JP2008159704A - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

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隆之 広瀬
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Abstract

【課題】高い透磁率および高い電気抵抗を有する磁気部品を簡便かつ低コストの方法で提供する。
【解決手段】金属磁性粉末と、融点が700℃以下の金属(以下、低融点金属という)を含有する無機バインダー粉末とを混合した粉末を、圧縮成形した後、少なくとも酸素の存在する雰囲気中において、熱処理を施し、前記低融点金属を酸化することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧粉磁心の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる圧粉磁心はトランスやリアクトル、インダクタ等、スイッチング電源などに搭載される高周波数帯域に対応する磁気部品に適している。
近年、各種電子機器は小型・軽量化されてきており、なおかつ低消費電力化が求められている。
これに伴い電子機器に搭載される電源として高効率かつ小型のスイッチング電源に対する要求が高まっている。特にノート型パソコンや携帯電話等の小型情報機器、薄型CRT、フラットパネルディスプレイに用いられるスイッチング電源では、小型・薄型化が強く求められている。従来のスイッチング電源では、その主要な構成部品であるトランスやリアクトルなどの磁気部品が大きな体積を占めており、スイッチング電源を小型・薄型化するためには、これら磁気部品の体積を縮小することが必要不可欠となっていた。
従来、このような磁気部品には、センダストやバーマロイ等の軟磁気特性に優れた金属磁性材料や、フェライト等の酸化物磁性材料がコアすなわち圧粉磁心として使用されていた。
金属磁性材料は、一般に高い飽和磁束密度と透磁率を有するが、電気抵抗率が低いため、特に高周波数領域ではヒステリシス損失や渦電流損失が大きくなってしまう。スイッチング電源では、回路を高周波駆動することにより、高効率化および小型化する傾向にあるが、上記の渦電流損失の影響から金属磁性材料をスイッチング電源用の磁気部品に使用することは困難である。
一方、フェライトに代表される酸化物磁性材料は、金属磁性材料に比べ電気抵抗率が高いため、高周波数領域でも発生する渦電流損失が小さい。しかしながら、トランスやリアクトルを小型化した場合、コイルに流す電流は同じでも磁心にかかる磁場は強くなってしまう。一般に、フェライトの飽和磁束密度は金属磁性材料に比べて小さく、スイッチング電源の磁気部品として使用した場合、上記の理由によりその小型化には限界がある。
すなわち、いずれの材料を用いても、スイッチング電源の磁気部品に対して要求される、高周波駆動と小型化の双方を満足させることは困難となっていた。
近年、前述の圧粉磁心材料である飽和磁束密度および透磁率が高い金属磁性材料に関して、金属磁性粒子の表面に電気抵抗率の高い酸化物材料の被膜や粒子を形成した圧粉磁心や、金属磁性粉末と電機絶縁性が高いバインダーとの混合物からなる圧粉磁心が提案されている。これにより、金属磁性体の特性である高飽和磁束密度は維持したまま、圧粉磁心全体の抵抗率を増大させ、ヒステリシス損や渦電流損を小さくする狙いがある。
例えば、特許文献1には、SiO微粒子を含む懸濁液と軟磁性粉末を混合・乾燥した後、圧縮成型する圧紛磁心の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、軟磁性粉末がSiO微粒子を含む絶縁層で被覆され、この絶縁層を介して前記軟磁性粉末同士が接合されるとしている。
また、特許文献2には、Fe−Si−Al系の合金金属粉末と、ペルヒドロポリシラザンを含むバインダーとを混合し、圧縮成形後に酸化雰囲気中で熱処理を施す圧粉磁心の製造方法が提案されている。このペルヒドロポリシラザンは酸化雰囲気中での熱処理によりSiO系の非晶質セラミックに転化するとしている。
また、特許文献3には、Fe−Si−Al系の合金金属粉末に10wt%以下の酸化物粉末を高周波溶解により混入し、急冷、解砕して得た粉末をシリコーン系樹脂からなるバインダーと混合し、圧縮成形する圧粉磁心の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、酸化物粉末もしくはその固溶体が前記合金粉末中に島状に分散したものが得られるとしている。酸化物粉末もしくはその固溶体が前記合金粉末中に島状に分散すると、比抵抗が高くなり、渦電流損失の低減が図れるとしている。
また、特許文献4には、軟磁性粉末および前記軟磁性粉末を被覆する水ガラスと絶縁酸化物粉末とからなる無機バインダー成分からなる圧粉磁心用磁性粉末を圧縮成形して成形体とし、次いで700〜1000℃の熱処理を施す圧粉磁心の製造方法が提案されている。水ガラスは軟磁性粉末を相互に結着させると共に粉末相互間に絶縁膜を形成するためであり、上記温度の熱処理は成形歪の解消のためであり、無機バインダーが水ガラスのみであると上記熱処理で水ガラスが分解発泡して絶縁性が消失するのを防止するために絶縁酸化物粉末が用いられ、高温熱処理は磁性粉末の結晶粒の粗大化にも貢献しているとのことである。
また、特許文献5には、軟磁性粉末に平均粒径が1/10程度の酸化物粉末を混合し、軟磁性粉末表面に酸化物粉末をまぶした粉体を精製し、圧縮成形後に熱処理し、軟磁性粉末の表面に酸化物からなる絶縁層を形成する圧粉磁心の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、軟磁性体粉末表面に電気絶縁層を完全に形成でき、また高温で熱処理することができるので圧縮残留応力が開放され、圧縮残留応力による鉄損の増大を低減できるとしている。
特開平9−180924号公報 特開平10−144512号公報 特開平11−204322号公報 特開2001−307914号公報 特開2003−332116号公報
まず、特許文献1に開示されている圧粉磁心の製造方法は簡便でコストも安くて済む反面、SiO微粒子の粒子径は10〜50μmとされており、磁性粒子間にこの程度大きさの非磁性体を介すると透磁率が100を越えるまでには至らない。スイッチング電源などのインダクタ用の磁性材料としてはフェライトで透磁率100程度のものがあり、これを越える特性の磁性材料からなる圧粉磁心が求められているために、磁気部品への採用は困難である。
次に、特許文献2に開示されている圧粉磁心の製造方法では、得られる圧粉磁心の最大の透磁率が60程度と低く、また、その場合のペルヒドロポリシラザンの添加量が0.5wt%程であり、電気絶縁性が弱い。さらには成形された圧粉磁心の抗折強度が30MPa程度であり、従来のフェライトの抗折強度である100MPa以上の値には到底及ばず、磁気部品として構成するには困難であった。なお、抗折強度は支点間に荷重を加えて折損時の応力を測定する抗折試験(flexture test)で測定される折損時の応力を示す。
次に、特許文献3に開示されている圧粉磁心の製造方法では、金属磁性体と酸化物とを複合化し、再度粉末化し、バインダーと混合して成形しており、手間とコストが掛かり、生産上、好ましくない。
次に、特許文献4に開示されている圧粉磁心の製造方法では、得られる圧粉磁心の電気絶縁性は向上する反面、透磁率が小さく、磁気部品への応用は難しい。
また、特許文献5に開示されている圧粉磁心の製造方法では、この圧粉磁心はバインダーを用いず、粒子のファンデルワールス力だけで結合されており、抗折強度が低い。また、低い圧力での成形はバインダーが無い為に困難である。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、金属磁性粒子と低融点金属を含有するバインダーとを混合してなる複合磁性材料により、高い透磁率および高い電気抵抗を有する磁気部品を簡便かつ低コストの方法で提供することにある。
前述した課題を解決する為に、本発明の圧粉磁心の製造方法は、金属磁性粉末と、融点が ℃以下の金属(以下、低融点金属という)を含有する無機バインダー粉末とを混合した粉末を、圧縮成形した後、少なくとも酸素の存在する雰囲気中において、熱処理を施し、前記低融点金属を酸化することを特徴とする。
本発明によれば、インダクタ等の磁気部品に用いる圧粉磁心の製造時において、工程上の手間を省くことができ、工数の削減も可能となる。したがって、生産効率の向上を図ることが出来る。さらには、成形された圧粉磁心の透磁率を向上させることが出来る。さらに圧粉磁心全体の電気抵抗率を大きくでき、高周波における損失を低減できる。さらに、圧粉磁心自体の抗折強度が向上する。また、前記圧粉磁心を用いて、高透磁率、高抵抗率、高強度の磁気部品を提供することができる。
本発明の圧粉磁心の製造方法において、金属磁性粉末としては、例えば純鉄、鉄系合金、鉄−ケイ素合金、パーマロイをはじめとした鉄−ニッケル合金、センダスト合金、コバルトおよびコバルト系合金、ニッケルおよびニッケル合金、各種アモルファス合金などの各種の軟磁性材料からなる粒子、粒子の粒界に酸化物や炭化物などの不純物を析出させた軟磁性粒子を挙げることができ、パーマロイからなる粒子であることが好ましい。
本発明の圧粉磁心の製造方法において、低融点金属としては、融点が700℃以下の金属であればいずれも用いることができ、金属磁性粉末に用いた金属と低融点金属の融点の温度差は500℃以上であることが好ましい。また、この低融点金属は酸化され易いことが好ましく、この観点から,低融点金属としては、Al(溶融温度500〜660℃)、Mg(溶融温度500〜651℃)などの金属を例示できる。
無機バインダーの低融点金属以外の成分としては、電気絶縁性の無機化合物が好ましく、アルミナなどの金属酸化物が好ましく用いられる。無機バインダーの低融点金属含有量は10〜70wt%であることが好ましい。
金属磁性粉末とこの無機バインダー粉末の混合物における両者の比率は、金属磁性粉末が50〜99wt%であることが好ましい。
この金属磁性粉末とこの無機バインダー粉末の混合物を所望の圧粉磁心の形状になるように圧縮成形する。圧縮成形方法としては、金型を用いて、例えば上下方向から加圧圧縮する単軸圧縮成形、圧縮圧延成形、電気絶縁性非磁性被膜を有する軟磁性粒子をゴム型などにつめて全方向から加圧圧縮する静圧圧縮成形、これらを温間で行う温間単軸圧縮成形、温間静圧圧縮成形(WIP)、熱間で行う熱間単軸圧縮成形および熱間静圧圧縮成形(HIP)などを用いることができる。
次いで、得られた圧粉磁心全体に電気絶縁性を持たせる為、また、金属磁性体の加工歪を除去し、透磁率を向上させる為に、少なくとも酸素の存在する雰囲気中において、熱処理を施す。この熱処理は700℃以上の温度での熱処理であることが好ましい。700℃以上の温度、好ましくは700〜1200℃で熱処理することにより、無機バインダー中の低融点金属を溶融させ、金属磁性粉末表面に無機バインダー被膜を形成する。このとき、無機バインダー中の低融点金属以外の成分は必ずしも溶融する必要はなく、この成分は溶融した低融点金属に保持されて、低融点金属と共に金属磁性粉末表面を被覆する。
また、この熱処理により、圧縮成形で発生した加工歪を除去し、成形された圧粉磁心の透磁率を向上させることが出来る。また、熱処理により低融点金属が融解し、金属磁性粒子問に浸透するので、金属磁性粒子問の結合力が向上し、高い抗折強度が得られる。
この熱処理は少なくとも酸素の存在する雰囲気中においておこなう。少なくとも酸素の存在する雰囲気としては、大気中でもよく、酸素を含有させた不活性ガス雰囲気であってもよい。不活性ガスとしては、窒素、あるいはヘリウム、ネオン、アルゴンなどのイナートガスを挙げることができる。酸素を含有させた不活性ガス中の酸素濃度は、熱処理時に低融点金属を酸化できる範囲であれば特に限定はないが、5〜50vol%であることが好ましい。熱処理における設定温度(最高到達温度)での保持時間は低融点金属の溶融と加工歪除去、低融点金属の酸化の観点から、設定温度により異なるが、30秒〜10分であることが好ましい。
こうして得られる圧粉磁心は透磁率が高く、電気抵抗率も大きく、周波数に対する損失も低減でき、圧粉磁心自体の抗折強度も高いものとなる。
以下、図面を参照しつつ、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明する。
<実施例1>
金属磁性粒子として、水アトマイズ法により作製したNi78Mo5Fe粒子(平均粒子径8μm)を、低融点金属含有無機バインダーとしてユケン工業(株)製無機バインダー(セラミックバインダーYB−131D)とAl粉(ユケン工業(株)製、MB−02)の混合物を用いた。即ち、金属磁性粒子10gと、低融点金属含有無機バインダー10gを乳鉢と乳棒を用いて均一に混合した。
こうして得られた混合粉未を、超硬合金製の金型に充填し、588MPa(6トン重/cm)の一軸プレスにより内径3mmφ、外形8mmφ、高さ約3mmのリングコア形状に成型した。
成型後、Rapid Thermal Anneal炉にて大気中で熱処理をした。熱処理条件は設定温度700℃、保持時間60s、昇降温速度±300K/minとした。
得られた圧粉磁心を調べた結果、金属磁性粒子表面は無機バインダーが溶融後酸化されて形成されたアルミナ被膜で互いに結合されてできた膜で覆われていることが確認された。
このリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ′+iμ″を1kHz〜10MHzの周波数領域で測定した。μ′およびμ″の測定結果をそれぞれ図1のAとBに示す。
<比較例1>
比較用のデータとして、700℃の熱処理を窒素雰囲気中で行った以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。このリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ′+iμ″を1kHz〜10MHzの周波数領域で測定した。μ′およびμ″の測定結果をそれぞれ図1のCとDに示す。
<比較例2>
比較用のデータとして、600℃の熱処理を大気中で行った以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。このリングコアに1次および2次巻線をそれぞれ5ターン巻回し、B−Hアナライザにて複素透磁率μ=μ′+iμ″を1kHz〜10MHzの周波数領域で測定した。μ′およびμ″の測定結果をそれぞれ図1のEとFに示す。
以上の結果から明らかなように、金属磁性粉末に酸化されると高い電気絶縁性を有するようになる金属粉末を含有する無機バインダーを混ぜ、圧縮成形、熱処理を施すことで100以上の高い透磁率を有し、また、圧粉磁心の抵抗率が大きくなるため、高周波まで使用可能な磁気部品の実現が可能となる。加えて、熱処理により低融点の金属が融解し、金属磁性粒子問に浸透しており、粒子問の結合力が向上し、高い抗折強度が得られる。さらに、金属磁性粉末とバインダーを混合して、成形し、熱処理を施すことで高機能な圧粉磁心が得られるので、工程/工数の削減により、コストの低減が可能となり、生産効率の向上を図ることができる。
本発明によれば、工程上の手間を省け、工数の削減も可能なため、生産効率よく、高性能の圧粉磁心を製造できる。この圧粉磁心を用いれば、高透磁率、高抵抗率、高強度の磁気部品を提供することができる。
実施例1および比較例1、比較例2で得られたリングコアについて測定した複素透磁率のμ′およびμ″を周波数に対してプロットした図である。
符号の説明
A:実施例1(大気中で700℃の熱処理)のリングコアのμ′を示した曲線
B:実施例1(大気中で700℃の熱処理)のリングコアのμ″を示した曲線
C:比較例1(窒素雰囲気で700℃の熱処理)のリングコアのμ′を示した曲線
D:比較例1(窒素雰囲気で700℃の熱処理)のリングコアのμ″を示した曲線
E:比較例2(大気中で600℃の熱処理)のリングコアのμ′を示した曲線
F:比較例2(大気中で600℃の熱処理)のリングコアのμ″を示した曲線

Claims (2)

  1. 金属磁性粉末と、融点が700℃以下の金属(以下、低融点金属という)を含有する無機バインダー粉末とを混合した粉末を、圧縮成形した後、少なくとも酸素の存在する雰囲気中において、熱処理を施し、前記低融点金属を酸化することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  2. 前記熱処理が、700℃以上の温度での熱処理であることを特徴とする請求項1記載の圧粉磁心の製造方法。
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