JP2008159333A - リチウム二次電池用負極およびリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明により提供されるリチウム二次電池用負極40は、カーボン粒子(例えば黒鉛粒子)を主成分とする負極活物質層45を有する。また、負極活物質層の表面に形成されたコート層であってアルミナ等のセラミック粒子を主成分とするセラミックコート層48を有する。ここで、負極活物質層45の密度は1.1〜1.3g/cm3である。
【選択図】図3
Description
なお本明細書において「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間のリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。
また、本明細書において上記負極活物質層の密度は、セラミックコート層が形成されていない状態における負極活物質層単独での密度を意味する。
かかる方法によると、負極活物質層とセラミックコート層との接合性(接着強度)に優れた負極を的確に(効率よく、確実に)製造することができる。このような負極は、セラミックコート層の耐久性および/またはサイクル特性(例えば、充放電を繰り返しても内部抵抗値の増加率が低いこと)に優れたリチウム二次電池を構築する用途に好ましく使用される。上記方法は、ここに開示されるいずれかのリチウム二次電池用負極を製造する方法として好適に採用され得る。
このようなグラファイト構造を含むカーボン粒子は、充放電に伴ってそのグラファイト構造の層間にリチウムイオンが出入りするリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)の負極活物質として好適である。その一方で、この種のカーボン粒子を用いた負極活物質層上に形成されたセラミックコート層では充放電サイクルによる剥落が起こりやすかった。その一つの要因は、上記カーボン粒子(黒鉛粒子等)ではグラファイトの層間へのリチウムイオンの出入りによって該層の間隔が変動し、このためカーボン粒子さらには該カーボン粒子を主成分とする負極活物質層全体としての体積変動(膨張収縮)が生じることにあると考えられる。ここに開示される技術によると、グラファイト構造を含むカーボン粒子を負極活物質に用いた場合であっても、セラミックコート層の耐久性に優れたリチウム二次電池が提供される。ここに開示される発明は、黒鉛質のカーボン粒子(黒鉛粒子)を用いた態様において特に大きな適用効果を発揮するものであり得る。
これに対して、負極活物質層の密度を本発明の範囲(凡そ1.1〜1.3g/cm3)とすることにより、適度な表面粗さを有することによるアンカー(投錨)効果、個々のカーボン粒子の膨張収縮を負極活物質層全体として緩衝する効果および負極活物質層が必要な強度を備えることによる効果を高度にバランスさせることができ、その結果、電池の信頼性、セラミックコート層の耐久性およびサイクル特性に優れたリチウム二次電池を効率よく得ることができる。
また、平均粒径を凡そ5〜15μm(例えば凡そ8〜12μm)のカーボン粒子を用いることにより、より大きな粒子を用いる場合に比べて個々のカーボン粒子の体積変動が小さくなることから、負極活物質層全体として該体積変動をよりよく緩衝(吸収)することができる。したがって、かかる平均粒径のカーボン粒子(典型的には黒鉛粒子)によると、負極活物質層の密度を上記範囲とすることとの相乗的な効果として、本発明の適用効果がより高度に発揮され得る。
上記負極活物質組成物は、負極活物質(カーボン粉末)および上記溶媒のほかに、一般的なリチウム二次電池用負極の製造において負極活物質層の形成に用いられる液状組成物に配合され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例としてバインダおよび流動性調整剤が挙げられる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のポリマーから適宜選択される一種または二種以上の材料を、上記バインダおよび/または流動性調整剤(典型的には粘度調整剤、例えば増粘剤)として好適に使用することができる。
ここに開示される発明は、上記のように負極活物質組成物の乾燥を終了した後に密度の調整を行う態様で好ましく実施されるが、該密度の調整(典型的には圧縮)を乾燥終了前に行う態様も本発明の範囲に含まれ得る。例えば、負極活物質組成物を乾燥させる途中の段階で(該組成物が生乾きの状態で)一度または二度以上の圧縮処理を行う態様で実施してもよい。また、乾燥終了前および乾燥終了後の両段階で密度の調整を行ってもよい。
なお、負極活物質組成物を乾燥して得られたままの(未圧縮の)負極活物質層の密度が1.1〜1.3g/cm3範囲にある場合には、上記密度調整処理(典型的には圧縮処理)を省略することも可能である。もっとも、製造安定性や生産効率等の観点からは、上記密度調整処理を行うことによって負極活物質層を所望の密度に調整することが好ましい。
なお、負極活物質層の形成に用いられるバインダとセラミックコート層の形成に用いられるバインダとは同一であってもよく異なってもよい。ここに開示される発明は、両層に用いられるバインダが互いに異なる種類のバインダである態様で好ましく実施され得る。例えば、負極活物質層およびセラミックコート層のうちいずれか一方には水溶性(CMC等)のバインダおよび/または水分散性のバインダ(SBR等)を使用し、他方には有機溶媒に溶解するバインダ(PVDF、有機溶媒溶解性のアクリル系ポリマー等)を用いることができる。
上記セラミックコート層に含まれるセラミック粒子とバインダとの質量比(セラミック粒子:バインダ)は、例えば凡そ80:20〜99.5:0.5とすることができる。上記質量比が凡そ95:5〜99:1であってもよい。
なお、負極活物質組成物に用いられる溶媒と液状コート剤に用いられる溶媒とは同一であっても異なってもよい。例えば、液状コート剤の溶媒として、負極活物質組成物の溶媒とは異なる溶媒を好ましく採用し得る。負極活物質組成物の溶媒が水系溶媒(例えば水)である場合、N−メチルピロリドン(NMP)等の有機溶媒を含む液状コート剤を好ましく用いることができる。このように、水系の負極活物質組成物(典型的には、水溶性のダインダおよび/または水分散性のバインダを含有する。)を用いて形成された負極活物質層の上に有機溶媒系(溶剤系。典型的には、有機溶媒に溶解するバインダを含有する。)の液状コート剤を付与してセラミックコート層を形成することにより、付与された液状コート剤が負極活物質層の状態に影響を及ぼす(例えば膨潤を引き起こす)事象をよりよく回避し得るという効果が得られる。かかる効果は、溶剤系の負極活物質組成物と水系の液状コート剤との組み合わせによっても実現され得る。
また、セラミック粉末とバインダとを含むコート剤を用いて負極活物質層上にセラミックコート層を形成する他の方法としては、例えば、バインダとしての熱可塑性樹脂粒子(例えばポリオレフィン粒子、EVA粒子等)とセラミック粒子とを含む粉末状のコート剤(コート剤粉末)を負極活物質層上に層状に付与し、その付与されたコート剤粉末を加熱して上記熱可塑性樹脂粒子によりセラミック粒子を融着させる方法が挙げられる。
図1〜4に示されるように、本実施形態に係るリチウム二次電池10は、金属製(樹脂製又はラミネートフィルム製も好適である。)の筐体(外容器)12を備えており、この筐体12の中に、長尺シート状の正極30、セパレータ50A、負極40およびセパレータ50Bをこの順に積層し次いで捲回する(本実施形態では扁平形状に捲回する)ことにより構成された捲回電極体20が収容される。
上記正極活物質層35は、正極活物質の他に、バインダおよび導電材を含むことができる。バインダとしては、上述した負極活物質組成物用のバインダと同様のもの等を用いることができる。導電材としては、種々のカーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、等)、グラファイト粉末のような炭素粉末、或いはニッケル粉末等の金属粉末等を用いることができる。これらは例示にすぎず、本発明の実施を限定するものではない。
そして、適当な非水電解液(例えばLiPF6等のリチウム塩を適当量含むジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒のような非水電解液)を筐体12内に配置(注液)し、筐体12の開口部を当該筐体とそれに対応する蓋部材13との溶接等により封止して、本実施形態に係るリチウム二次電池10の構築(組み立て)が完成する。なお、筐体12の封止プロセスや電解液配置(注液)プロセスは、従来のリチウム二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。
以下のようにして、負極活物質層上にセラミックコート層を有する負極を作製した。
すなわち、平均粒径10μmの天然黒鉛(負極活物質)とスチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースとを、これら材料の質量比が98:1:1であり且つ固形分濃度が45質量%となるようにイオン交換水と混合して、スラリー状の負極活物質組成物を調製した。かかる組成物を、負極集電体としての厚み約15μmの長尺状銅箔の両面に、それら両面の合計塗布量(固形分換算)が8.6mg/cm2となるように塗布して乾燥させた。次いで、乾燥されたままの負極活物質層を両面に有する負極集電体をプレスして負極活物質層の密度を調整した。このとき、プレス条件を調節することにより、負極活物質層の密度を1.0〜1.5g/cm3の範囲で0.1g/cm3づつ異ならせた。なお、上記プレスを行う前の(未圧縮の)負極活物質層の厚さは約105μm(負極活物質層の密度としては0.95g/cm3)であった。
すなわち、平均粒径0.6μmのα−アルミナ粒子(連結粒子)と、バインダとしてのアクリル系ポリマーとを、これら材料の質量比が96:4であり且つ固形分濃度が40質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)と混合して、スラリー状のコート剤(液状コート剤)を調製した。この液状コート剤を負極活物質層の表面全体を覆うように塗布して乾燥させた。上記コート剤の塗布量は、乾燥後に得られるセラミックコート層の厚みが4μmとなる分量とした。このようにして、密度の異なる6種類の負極活物質上にセラミックコート層を有する負極サンプル1〜6を形成した。
上記で得られた負極サンプル1〜6の性能を評価するため、各サンプルをそれぞれ負極に使用して、以下に示す手順で、直径18mm、高さ65mm(即ち18650型)の一般的な円筒型リチウムイオン電池100(図5参照)を作製した。
正極としては以下のものを使用した。すなわち、正極活物質としてのニッケル酸リチウム(LiNiO2)粉末とアセチレンブラックとカルボキシメチルセルロース(CMC)とポリテトラフルオロエチレンとを、これら材料の質量比が87:11:1:1であり且つ固形分濃度が45質量%となるようにイオン交換水と混合して、ペースト状の正極活物質組成物を調製した。かかる組成物を、正極集電体としての厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に塗布して乾燥させることにより、該正極集電体の両面に厚み120μmの正極活物質層を形成し、次いで正極全体の厚さが85μmとなるようにプレスした。
そして、上記で作製した負極サンプルと正極を2枚のセパレータ(ここでは多孔質ポリエチレンシートを用いた。)とともに積層し、この積層シートを捲回して捲回電極体を作製した。この電極体を非水電解質とともに容器に収容し、容器開口部を封止してリチウムイオン電池を構築した。その後、適当なコンディショニング処理(例えば、1/10Cの充電レートで3時間の定電流充電を行い、次いで1/3Cの充電レートで4.1Vまで定電流定電圧で充電する操作と、1/3Cの放電レートで3.0Vまで定電流放電させる操作とを2〜3回繰り返す初期充放電処理)を行うことによって、各正極サンプルに対応した計5種の18650型円筒形状リチウムイオン電池を得た。以下、これらのリチウムイオン電池の構築に使用した負極サンプルの種類に対応づけて、得られたリチウムイオン電池についてもそれぞれサンプル1〜5と称する。
また、参考例として、負極活物質層上にセラミックコート層を形成しない点以外は上記負極サンプル6と同様の手法により負極を作製し(負極活物質層の密度は1.5g/cm3)、この負極を用いて同様にリチウムイオン電池を作製した。以下、このリチウムイオン電池をサンプル7と称する。
なお、このようにして得られたリチウムイオン電池(サンプル1〜7)の理論容量は、いずれも5Ahである。
サンプル1〜7のリチウムイオン電池について、セラミックコート層の耐久性を評価する指標として、各電池の25℃における内部抵抗値(IV抵抗値)を測定した。
すなわち、25℃の温度条件下にて、定電流定電圧(CC−CV)充電によって各電池をSOC(State of Charge)60%の充電状態に調整した。その後、25℃にて0.2C、0.5Cおよび1Cの条件で10秒間の放電と充電を交互に行い、放電開始から10秒後の電圧値をプロットしてI−V特性グラフを作成した。このI−V特性グラフの傾きから、25℃における初期IV抵抗値(mΩ)を算出した。
10,100 リチウム二次電池
12 筐体
20 捲回電極体
30 正極
32 正極集電体
35 正極活物質層
40 負極
42 負極集電体
45 負極活物質層
48 セラミックコート層
50A,50B セパレータ
Claims (11)
- リチウム二次電池の構築に使用される負極であって、
負極活物質としてのカーボン粒子を主成分とする負極活物質層と、該負極活物質層の表面に形成されセラミック粒子を主成分とするセラミックコート層とを有し、
ここで、前記負極活物質層の密度は1.1〜1.3g/cm3である、リチウム二次電池用負極。 - 前記カーボン粒子の平均粒径が5〜15μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記カーボン粒子は黒鉛粒子である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記セラミック粒子はアルミナ粒子であり、該アルミナ粒子の平均粒径は0.2〜1.5μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極。
- リチウムイオンを吸蔵および放出可能な電極活物質を備える正極および負極と、それら正極と負極との間に配置された多孔質シート状のセパレータと、非水電解液と、を備えるリチウム二次電池であって、
前記負極は、負極活物質としてのカーボン粒子を主成分とする負極活物質層と、該負極活物質層の表面に形成されセラミック粒子を主成分とするセラミックコート層とを有し、
ここで、前記負極活物質層の密度は1.1〜1.3g/cm3である、リチウム二次電池。 - 前記カーボン粒子の平均粒径が5〜15μmである、請求項5に記載のリチウム二次電池。
- 前記カーボン粒子は黒鉛粒子である、請求項5または6に記載のリチウム二次電池。
- 前記セラミック粒子はアルミナ粒子であり、該アルミナ粒子の平均粒径は0.2〜1.5μmである、請求項5から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
- リチウム二次電池の構築に使用される負極を製造する方法であって、
負極活物質としてのカーボン粒子とバインダとを含む負極活物質組成物を負極集電体に付与して負極活物質層を形成すること;
セラミック粒子とバインダとを含むコート剤を用意すること;および、
前記負極活物質層に前記コート剤を付与して該活物質層の表面にセラミックコート層を形成すること;
を包含し、
ここで、前記コート剤が付与される負極活物質層の密度は1.1〜1.3g/cm3に調整されている、リチウム二次電池用負極の製造方法。 - 請求項9に記載の方法により製造された負極、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質を備える正極、多孔質シート状のセパレータおよび非水電解液を用意する工程と、
前記正極、負極、セパレータおよび非水電解液を用いてリチウム二次電池を構築する工程と、
を備える、リチウム二次電池の製造方法。 - 請求項5から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池または請求項10に記載の方法により製造されたリチウム二次電池を備える車両。
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