JP2008154520A - 蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック非ヒト動物 - Google Patents

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比呂志 長嶋
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ひとみ 松成
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Abstract

【課題】 自家蛍光と容易に識別可能な波長の蛍光を発するトランスジェニック動物を提供する。
【解決手段】 赤色系の蛍光を発する蛍光タンパク質をコードする遺伝子が導入され、この遺伝子が発現していることを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック非ヒト動物に関する。本発明の動物は、臓器移植や細胞・組織移植研究のためのモデル動物として有用である。
最近、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現し、緑色蛍光を発するするブタについての報告があり、注目を集めている(非特許文献1)。このようなブタから採取した幹細胞やその他体細胞・組織などを移植実験に用いることによって、移植後の細胞・組織等の状態を緑色蛍光を指標として追跡することが可能になる。従って、このようなGFP発現ブタは、幹細胞移植、組織・臓器移植等の研究に大いに貢献するものと考えられる。
Park K-W, Kuhholzer B, Lai L, Machaty Z, Sun Q-Y, Day BN, Prather RS. Development and expression of the green fluorescent protein in porcine embryos derived from nuclear transfer of transgenic granulosa-derived cells. Animal Reproduction Science 2001; 68: 111-120.
上述したような移植後の組織等の追跡を行う場合、移植された組織等と生物が元々持っている組織等とを識別できなければならないが、組織によってはGFPの発する蛍光の波長と近い波長の自家蛍光を発するものもあり、このような場合には識別は困難である。例えば、肝臓組織は、このような自家蛍光が強く、GFPを発現している組織と区別できない場合もあり得る。
本発明は、このような自家蛍光の問題を解決すること目的とするものである。
本発明者は、GFPを発現するブタには、以上のような問題があることを認識し、この問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ヒラタクサビライシ由来の蛍光タンパク質の発する赤色系の蛍光が細胞や組織が発する自家蛍光と容易に識別できることを見出した。また、この蛍光タンパク質をコードする遺伝子を卵に導入しても、卵の発生と分化に悪影響を与えないことも見出した。
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供するものである。
(1)赤色系の蛍光を発する蛍光タンパク質をコードする遺伝子が導入され、この遺伝子が発現していることを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物。
(2)蛍光タンパク質が、500〜600nmの範囲に励起極大波長があり、550〜650nmの範囲に蛍光極大波長がある蛍光タンパク質であることを特徴とする(1)に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
(3)蛍光タンパク質が、ヒラタクサビライシ由来の蛍光タンパク質であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
(4)ヒラタクサビライシ由来の蛍光タンパク質が、548nm付近に励起極大波長があり、561nm付近に蛍光極大波長がある蛍光タンパク質であることを特徴とする(3)に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
(5)蛍光タンパク質をコードする遺伝子が、全身で発現していることを特徴とする(1)乃至(4)いずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
(6)動物が、ブタであることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物。
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物から切り出された臓器、組織、又は細胞。
(8)(1)乃至(6)のいずれかに記載のトランスジェニック非ヒト動物から切り出された臓器、組織、又は細胞が移植され、部分的に赤色系の蛍光を発する非ヒト動物。
本発明の動物から採取した細胞、組織などを移植実験に用いることによって、移植後の細胞、組織の状態を追跡することが可能になる。本発明の動物は、赤色系の蛍光を発するため、肝臓の組織のような自家蛍光の強い組織とも容易に区別でき、移植組織の追跡を高精度で行うことを可能にする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、赤色系の蛍光を発する蛍光タンパク質をコードする遺伝子が導入され、この遺伝子が発現していることを特徴とするものである。赤色系の蛍光を発する蛍光タンパク質としては特に限定されないが、500〜600nmの範囲に励起極大波長があり、550〜650nmの範囲に蛍光極大波長がある蛍光タンパク質を使用することが好ましい。このような蛍光タンパク質としては、例えば、DsRed(Discosoma属のカイメン由来の赤色蛍光タンパク質)などを使用することもできるが、ヒラタクサビライシ由来の蛍光タンパク質を使用するのが好ましい。
ヒラタクサビライシ(Fungia concinna)由来の蛍光タンパク質は、公知のタンパク質であり、そのアミノ酸配列は、例えば、国際公開第WO2003/054191号パンフレットの配列番号3及び4に開示されている。この文献に開示されている2種類の蛍光タンパク質は、いずれも548nm付近に励起極大波長があり、561nm付近に蛍光極大波長がある。
また、この蛍光タンパク質は、一般に「Kusabira-Orange」という名称で知られている(以下、この蛍光タンパク質を「Kusabira-Orange」又は「KO」という場合がある。)。Kusabira-Orange遺伝子を発現するベクターは、株式会社医学生物学研究所から販売されており、本発明のトランスジェニック非ヒト動物の作製にも、この市販のベクターを使用することができる。
天然のKusabira-Orangeは、二量体で蛍光を発するが、単量体でも蛍光を発する変異型のKusabira-Orangeも知られている(以下、この変異型KOを「mKO」という。)。また、このmKOのコドンをヒト型に変更したものも知られている(以下、このヒト型に変更したKOを「huKO」という。)。本発明のトランスジェニック非ヒト動物の作製には、このmKOやhuKOを使用してもよい。
蛍光タンパク質遺伝子は、動物の体の一部だけでなく、全身で発現していることが好ましい。全身で蛍光タンパク質遺伝子を発現させるためには、蛍光タンパク質遺伝子の上流にレトロウイルスのLTR、例えば、PCMVのLTR、MoMLVのLTRを配置すればよい。また、β−アクチンなど全身で発現しているタンパク質の遺伝子のプロモーターなどを蛍光タンパク質遺伝子の上流に配置してもよい。
動物の種類は、ヒト以外の動物であればどのようなものでもよいが、哺乳動物、例えば、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、イヌ、ネコなどが好ましく、入手が容易で、かつヒトの臓器サイズに近いブタが特に好ましい。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物の作製方法は特に限定されないが、体細胞クローン動物の作製方法を応用した方法によって作製することが好ましい。具体的には、(1)ドナー細胞を調製する工程、(2)ドナー細胞に蛍光タンパク質遺伝子を導入する工程、(3)除核したレシピエント卵を調製する工程、(4)除核したレシピエント卵とドナー細胞を融合させる工程、(5)融合卵を培養し、クローン胚を得る工程、(6)クローン胚をレシピエント動物の卵管又は子宮に移植し、クローン動物を得る工程を含む方法によって本発明のトランスジェニック非ヒト動物を作出できる。
工程(1)で使用するドナー細胞はクローン動物の作製に一般的に用いられているものでよく、例えば、胎仔繊維芽細胞、唾液腺幹細胞、卵管由来繊維芽細胞などを使用することができ、これらの中でも胎仔繊維芽細胞を使用するのが好ましい。これらの細胞は公知の方法によって調製することができる。調製したドナー細胞は、細胞周期を休止期に誘導する。休止期への誘導は、血清飢餓培養法(Campbell KHS, McWhir J, Ritchie WA, Wilmut I. Sheep cloned by nuclear transfer from a cultured cell line. Nature 1996; 380: 64-66.)、接触阻止法(Onishi A, Iwamoto M, Akira T, Mikawa S, Takeda K, Awata T, Hanada H, Perry ACF. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science 2000; 289: 1188-1190.)などにより行うことができ、ドナー細胞として胎仔繊維芽細胞を用いた場合には、血清飢餓培養法によって行うのが好ましい。
工程(2)における蛍光タンパク質遺伝子の導入は、特別な方法を用いる必要はなく、一般的な方法によって行うことができる。例えば、細胞内に遺伝子を導入できるベクターを使用する方法、電気パルスで遺伝子を導入する方法(エレクトロポレーション法)、細胞にガラス針などで直接遺伝子を注入方法(マイクロインジェクション法)、リポソームに包含させて遺伝子を導入する方法などを例示できる。これらの方法の中でも、細胞内に遺伝子を導入できるベクターを使用する方法が好ましい。このようなベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターなどを例示でき、特にレトロウイルスベクターを使用するのが好ましい。
工程(3)におけるレシピエント卵の除核は、クローン胚の作製に一般的に採用されている手法に従って行うことができる。このような方法としては、例えば、Polejaeva IAらの文献 (Polejaeva IA, Chen S-H, Vaught TD, Page RL, Mullins J, Ball S, Dai Y, Boone J, Walker S, Ayares D, Colman A, Campbell KH. Cloned pigs produced by nuclear transfer from adult somatic cells. Nature 2000; 407: 86-90.)に記載されている方法などを挙げることができる。
工程(3)で使用するレシピエント卵は、ヒト以外の動物の卵であればどのようなものでもよいが、工程(1)で調製するドナー細胞と同じ種類の動物の卵を用いるのが好ましい。また、除核は未受精卵に対して行うことが好ましく、特に第一極体の放出後の成熟卵に対して行うのが好ましい。
工程(4)におけるレシピエント卵とドナー細胞の融合は、クローン胚の作製に一般的に採用されている手法、例えば、電気融合法、注入法などによって行うことができる。電気融合法は、例えば、Polejaeva IAらの文献(Polejaeva IA, Chen S-H, Vaught TD, Page RL, Mullins J, Ball S, Dai Y, Boone J, Walker S, Ayares D, Colman A, Campbell KH. Cloned pigs produced by nuclear transfer from adult somatic cells. Nature 2000; 407: 86-90.)の記載に従って行うことができ、注入法はOnishi Aらの文献(Onishi A, Iwamoto M, Akira T, Mikawa S, Takeda K, Awata T, Hanada H, Perry ACF. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science 2000;289: 1188-1190.)の記載に従って行うことができる。電気融合法による電気刺激は、ドナー細胞の核が卵に移植され、正常な胚が形成され得る範囲内であれば特に限定されないが、例えば、直流パルスであれば電圧は100〜300V/mm、時間は10〜30 micro-sec、回数は1〜3回とするのが好ましく、交流を併用する場合は周波数は1〜5MHz、電圧は1〜10V、時間は1〜30secとするのが好ましい。融合処理後の卵には、活性化処理を行うのが好ましい。活性化処理は、クローン胚の作製に一般的に採用されている手法、例えば、電気刺激や塩化ストロンチウム処理などにより行うことができる。電気刺激による活性化処理としては、電圧30〜200 V/mm、時間10〜200 micro-sec、1〜5 回の直流パルスを印加する方法などを例示できる。また、活性化処理は、融合処理から0〜6時間後に行うのが好ましい。また、活性化処理後の卵には、極体放出抑制処理を行うのが好ましい。極体放出抑制処理は、サイトカラシンなどを用いて行うことができる。
工程(5)における融合卵の培養は、クローン胚の作製に一般的に採用されている手法、例えば、Betthauser Jらの文献(Betthauser J, Forsberg E, Augenstein M, Childs L, Eilertsen K, Enos J, Forsythe T, Golueke P, Jurgella G, Koppang R, Lesmeister T, Mallon K, Mell G, Misica P, Pace M, Pfister-Genskow M, Strelchenko N, Voelker G, Watt S, Thompson S, Bishop M. Production of cloned pigs from in vitro systems. Nature Biotechnology 2000; 18: 1055-1059.)の記載に従って行うことができる。培地としては、NCNU23培地、TCM199、BECM、PZM培地などを使用することができる。
工程(6)におけるクローン胚の卵管あるいは子宮への移植は、クローン動物の作製に一般的に採用されている手法、例えば、Onishi Aらの文献(Onishi A, Iwamoto M, Akira T, Mikawa S, Takeda K, Awata T, Hanada H, Perry ACF. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science 2000; 289: 1188-1190)やBetthauser Jらの文献(Betthauser J, Forsberg E, Augenstein M, Childs L, Eilertsen K, Enos J, Forsythe T, Golueke P, Jurgella G, Koppang R, Lesmeister T, Mallon K, Mell G, Misica P, Pace M, Pfister-Genskow M, Strelchenko N, Voelker G, Watt S, Thompson S, Bishop M. Production of cloned pigs from in vitro systems. Nature Biotechnology 2000; 18: 1055-1059.)の記載に従って行うことができる。レシピエント動物は、ヒト以外の動物であれば特に限定されないが、ドナー細胞を採取した動物と同じ種類の動物を用いることが好ましい。クローン胚は、正常なクローン動物に生育できるものであれば特に限定されないが、1細胞期から胚盤胞期の胚を使用するのが好ましい。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物には、上述したように、蛍光タンパク質遺伝子が全身で発現しているものも含まれる。このような動物では、切り出された臓器、組織、及び細胞も赤色系の蛍光を発する。従って、これらの臓器等を他の動物に移植した場合、移植後の臓器等の状態を、蛍光を指標として追跡することが可能である。このとき、移植対象とする動物はヒト以外の動物であれば特に限定されないが、本発明のトランスジェニック非ヒト動物と同種の動物であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1> huKO遺伝子を全身で発現するブタの作製
〔実験方法〕
1.ドナー細胞の調製
核移植のドナー細胞としては、ブタ胎仔繊維芽細胞を用いた。採取した細胞は、継代培養した後、凍結保存し、核移植操作前に解凍した。解凍した細胞は、血清飢餓培養法及び接触阻止法により、細胞周期を休止期に誘導した。細胞の採取、継代培養、凍結保存、血清飢餓培養、接触阻止は、以下の通り行った。
胎仔繊維芽細胞の採取
妊娠25日齢の交雑種(LWD種)の胎仔をハサミにより細断し、PBS(-)で洗浄した。これを1200rpmで5分間遠心処理し、沈殿を採取した。この沈殿に0.25%トリプシン(0.01% EDTA添加)を加え5分間静置した。続いて400rpmで5分間の遠心処理し、上清側に集まった細胞を採取した後に15%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)に懸濁した。上記のトリプシン処理からの過程をもう一度繰り返し、最後に1200rpmで5分間遠心処理して得られた沈殿を5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより培養した。
胎仔繊維芽細胞の継代培養
培養液は、15%ウシ胎仔血清を添加したDMEMを用いた。また、細胞培養は5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより行った。細胞が培養ディッシュの7〜9割に達した時点で0.1%トリプシン(0.01% EDTA添加)により処理し、剥離した細胞を1000rpmで5分間の遠心処理により回収、得られた細胞を新しい培地に移し、再び培養した。
細胞の凍結保存及び解凍
凍結液は10%ジメチルスルフォキシド(DMSO)を添加した培養液を用いた。培養ディッシュの7〜9割に達した時点で0.1%トリプシン(0.01% EDTA添加)により処理し、剥離した細胞を1000rpmで5分間の遠心処理により回収した。細胞濃度を1×106/mlになるように調整し、氷中で冷やした凍結液に懸濁した。これを凍結用チューブに分注し、緩慢凍結法(−20℃で30分、−80℃で一晩)を行った後、液体窒素中に保存した。
解凍は38℃の恒温槽で行い、解凍した細胞を培養液で10倍希釈した。これを1000rpmで5分間遠心処理し、得られた沈殿を5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより培養した。
血清飢餓培養
細胞が培養ディッシュの8割程度に達した時点で培養液を0.5% FCSを添加したDMEMに置き換えて2〜5日培養した。
接触阻止法
細胞が培養ディッシュの底面を埋め尽くした時点から、1〜10日間培養を継続した。またこの期間、3日おきに新鮮なDMEMと交換した。
2.ドナー細胞へのhuKO遺伝子の導入
モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney Murine Luekemia Virus, MoMLV)由来のベクターを基に作製された既知のレトロウイルスベクターpDΔNsap(特開2005-278492号公報)に対し、ジーンサイレンシングを受けにくくするためにプロモーターをMoMLV固有のLTRからPCC4 cell-passaged myeloproliferative sarcoma virus (PCMV)のLTRに変更し、また、primer binding siteもdl587rev由来のものに変更した。このような変更を加えたベクターにhuKO遺伝子を組み込み、レトロウイルスベクターDΔNsaphuKOを作製した。
凍結保存されたブタ胎仔繊維芽細胞は、37℃の温湯中に凍結用チューブを浸漬することにより解凍した後、凍結用チューブよりコニカルチューブへ細胞を移し、5 mlの10%ウシ胎児血清を含むDMEMを加えた。その後、4℃下にて600 G、5分間の遠心分離により細胞を洗浄・回収し、3 mlの10%ウシ胎児血清含DMEMに再度懸濁させた。なお、一部の細胞については、トリパンブルー染色により生存性を確認した。これら細胞懸濁液(5 ml, 1〜5 x105個)に、上記のレトロウィルスベクター溶液(30 μl)を加えて、24時間培養し細胞に感染させた。その後、細胞をさらに培養し、huKOの蛍光を発現する細胞を濃縮した。
なお、以上の操作は、以下の文献を参考に行った。
(1)Tsukasa Nabekura, Makoto Otsu, Toshiro Nagasawa, Hiromitsu Nakauchi and Masafumi Onodera, , Potent Vaccine Therapy with Dendritic Cells Genetically Modified by the Gene-Silencing-Resistant Retroviral Vector GCDNsap Molecular Therapy 13 (2), 301-309, 2006
(2)Suzuki A, Obi K, Urabe T, Hayakawa H, Yamada M, Kaneko S, Onodera M, Mizuno Y, Mochizuki H. Feasibility of ex vivo gene therapy for neurological disorders using the new retroviral vector GCDNsap packaged in the vesicular stomatitis virus G protein. J Neurochem. 2002 Aug;82(4):953-60.
(3)Kaneko S, Onodera M, Fujiki Y, Nagasawa T, Nakauchi H. Simplified retroviral vector gcsap with murine stem cell virus long terminal repeat allows high and continued expression of enhanced green fluorescent protein by human hematopoietic progenitors engrafted in nonobese diabetic/severe combined immunodeficient mice. Hum Gene Ther. 2001 Jan 1;12(1):35-44..
3.レシピエント卵の調製
レシピエント卵は、ブタ(LW種、LWD種、6ヶ月令)の卵巣から採取した卵を体外で培養して成熟させ、その後、核を取り除くことにより調製した。体外培養、除核は以下の通り行った。
体外培養
食肉工場から得た卵巣を0.2% 臭化セチルトリメチル アンモニウム(CETAB)、続いてPBS(-)-PVAで3回洗った後、38.5℃の恒温槽で待機させた。卵巣は、75μg/mlペニシリンG、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン、0.1%ポリビニールアルコールを添加したダルベッコPBS(PBS(-)-PVA)内に入れ、24〜30℃に加温した状態で食肉工場から輸送してきた。
ホットプレートにより38.5℃に加温した状態で、20ゲージの注射針と5mlシリンジを使い、直径3〜6mmの卵胞から卵胞液ごと卵を吸引した。得られた卵胞液を800rpmで2分間遠心処理することにより、卵を沈殿させた。この沈殿をTL-Hepes-PVPに懸濁させ、顕微鏡下で卵丘細胞が多量付着しており、かつ卵の細胞質が正常な卵丘卵子複合体を選別した。選別した卵丘卵子複合体を、NCSU23に0.6mMシステイン、10μg/ml上皮増殖因子(EGF)、10%ブタ卵胞液、75μg/mlペニシリンG、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン、10IU/mlウマ絨毛性ゴナドトロピン(eCG)、10IU/mlヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を添加したNCSU23培養液で5%CO2、38.5℃でインキュベーターにより培養した。培養開始から22時間後にホルモンを除いたNCSU23に移し変え、さらに22時間培養した。
培養を終了した卵を0.01%ヒアルロニダーゼで処理した後、TL-Hepes-PVPのドロップ内においてピペッティングにより卵丘細胞、顆粒層細胞を除去した。これにより卵の透明帯が露出し、顕微鏡下での観察や操作が容易となる。次に、成熟卵の特徴である第一極体の放出を起こした卵のみを選別した。また、この際に死んだ卵および細胞質の形状がいびつな卵などは排除した。
除核
除核は、7.5μg/mlサイトカラシンB、10%ウシ胎仔血清(FCS)を添加したTL-Hepes-PVP内の卵の第一極体周辺の細胞質を吸引することにより行った。細胞質の吸引には、先端が鋭角の口径30μmのピペットを用いた。
除核が正常に行われたかどうかは、ヘキスト染色により確認した。即ち、除核処理後の卵を、5μg/mlヘキスト33342を添加したTL-Hepes-PVPドロップ内に5分間入れて染色し、その後、蛍光顕微鏡で卵内を観察した。ヘキスト33342はDNAに結合する蛍光色素なので、除核されていなければ卵内に染色体が観察される。
4.核移植
レシピエント卵の囲卵腔にドナー細胞を挿入し、卵とドナー細胞を融合させた後、活性化処理と第二極体放出抑制処理を行った。細胞融合、活性化処理は、以下のように行った。
細胞融合
レシピエント卵は10%ウシ胎仔血清(FCS)添加のTL-Hepes-PVPのドロップ内、ドナー細胞は0.1%トリプシン(0.01% EDTA添加)により剥がした後10%ウシ胎仔血清(FCS)添加のNCSU23-Hepes(NCSU23に21mM Hepesを添加)のドロップ内に入れて待機させた。先端が鋭角の口径30μmのピペットを用いて、除核の際にできた透明帯の穴からマイクロマニュピレーションによりレシピエント卵の囲卵腔にドナー細胞を挿入した。
細胞挿入された卵を細胞融合用マンニトール液(0.3Mマンニトールに50μM塩化カルシウム、100μM塩化マグネシウム、0.01%ポリビニールアルコールを添加)のドロップに入れ、卵と囲卵腔に挿入された細胞の接触面が電流に対して垂直になるように電極で挟んだ。
続いて、細胞融合装置(島津製作所製 SSH-1)により細胞融合を行った(交流1MHz、5V、5sec、直流200V/mm、10μsec、1回)。また、融合20分後に顕微鏡下で観察し、細胞融合が起きなかった卵については再度細胞挿入を行った。
活性化処理
細胞融合から1〜1.5時間後に、スライドグラス上に平行に置かれた電極間(幅1mm)に活性化用マンニトール液(0.3Mマンニトールに50μM塩化カルシウム、100μM塩化マグネシウム、0.01%ポリビニールアルコールを添加)のドロップを作り、このドロップ内に融合卵を顕微鏡下で一列に並べた。この際、卵が他の卵や電極に触れないように注意した。続いて、細胞融合装置(島津製作所製 SSH-1)により電気刺激を与えて融合卵の活性化を行った(直流100V/mm、100μsec、1回)。活性化された卵は第二極体の放出をするので、その前に5μg/mlサイトカラシンB、4mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を添加したNCSU23に移し、3時間培養することで極体放出抑制処理を行った。
5.胚の培養
活性化および倍数体化処理を行った融合卵は、4mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を添加したNCSU23内で5%CO2、38.5℃でインキュベーターにより体外培養した。体外培養開始から96時間後に、卵を培養しているドロップに濃度が10%になるようにウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
6.レシピエントブタへの胚移植
体外培養して得られたブタ胚を、性周期を同期化したレシピエントブタの生殖器(卵管・子宮)に移植した。
〔実験結果〕
1.発生能の評価
huKO遺伝子を導入した卵の発生能を評価した。発生能の評価は、融合率、正常分割率、胚盤胞形成率、胚盤胞の平均細胞数の4項目について行った。各項目の評価方法は、以下の通りである。
融合率
電気融合刺激から30分後に卵を観察し、ドナー細胞がレシピエント卵と融合している卵(融合卵)の全体に占める割合を融合率とした。
正常分割率
活性化処理から48時間後の融合卵を観察し、2〜8細胞に分割している卵(正常卵)の全体に占める割合を正常分割率とした。
胚盤胞形成率
活性化処理から168時間後の融合卵を観察し、胚盤胞にまで発達している卵の全体の占める割合を胚盤胞形成率とした。
胚盤胞の平均細胞数
胚盤胞をスライドグラスにマウントし、カバーグラスで押さえた状態で酢酸メタノール(酢酸:メタノール=1:3)に48時間浸して固定した。固定が終了した卵は1%アセトオルセイン溶液で20分染色し、その後観察しやすいようにアセトグリセロール(酢酸:グリセロール:滅菌水=1:1:3)で洗った。その後、乾燥を避けるためカバーグラスの周囲をマニキュアで封入し、顕微鏡下で観察して細胞数を数えた。以上の細胞数の計測を、活性化処理から168時間後に確認されたすべての胚盤胞について行い、その平均値を胚盤胞の平均細胞数とした。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2008154520
表1に示すように、融合率、正常分割率、胚盤胞の平均細胞数において、huKO遺伝子を導入した場合と導入しなかった場合とでは有意差がみられず、また、胚盤胞の形成率においては、huKO遺伝子を導入した場合の方が、導入しない場合よりも高い値を示した。これらのことから、huKOは、融合卵の発生と分化に悪影響を与えないものと考えられる
2.胚の蛍光発現の評価
huKO遺伝子を導入した胚にG励起光を照射し、赤色蛍光を評価した。この結果を表2に示す。
Figure 2008154520
表2に示すように、huKO遺伝子を導入した胚は非常に高率で蛍光タンパク質を発現していた。
3.産仔数の評価
huKO遺伝子を導入した胚をレシピエントブタに移植し、産仔の数を調べた。この結果を表3に示す。
Figure 2008154520
表3に示すように、1個体レシピエントブタから3〜6個体のクローン産仔を得ることができた。このことから、huKOは、クローン産仔の作出に悪影響を与えないものと考えられる。
4.クローン産仔における蛍光発現の評価
クローン産仔の脳、心臓、肺、胃、腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、生殖器、脂肪、骨格筋、軟骨、皮膚、蹄、口腔粘膜、舌、眼球、唾液腺が赤色蛍光を発するかどうかを調べたところ、いずれの器官等も赤色蛍光を発していた。このことから、huKO遺伝子はブタの全身で発現していると考えられる。
<実施例2> huKO遺伝子発現細胞の移植
huKO遺伝子が導入され、赤色蛍光を発現するブタ胎仔から繊維芽細胞を定法に従って採取した。採取した細胞(1 x 10 の6乗個)を、同種同系のブタの皮下に注入し、その後、0,7,14,28,35日目に移植部位の組織を回収した。回収組織の凍結切片を作製し、蛍光顕微鏡下で観察した結果、35日経過後の組織においても、赤色蛍光を示す細胞が多数確認された。

Claims (8)

  1. 赤色系の蛍光を発する蛍光タンパク質をコードする遺伝子が導入され、この遺伝子が発現していることを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物。
  2. 蛍光タンパク質が、500〜600nmの範囲に励起極大波長があり、550〜650nmの範囲に蛍光極大波長がある蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  3. 蛍光タンパク質が、ヒラタクサビライシ由来の蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  4. ヒラタクサビライシ由来の蛍光タンパク質が、548nm付近に励起極大波長があり、561nm付近に蛍光極大波長がある蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項3に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  5. 蛍光タンパク質をコードする遺伝子が、全身で発現していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  6. 動物が、ブタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物から切り出された臓器、組織、又は細胞。
  8. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物から切り出された臓器、組織、又は細胞が移植され、部分的に赤色系の蛍光を発する非ヒト動物。
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