JP2005095031A - クローン動物の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 クローン動物の効率的な生産を可能にするドナー細胞を提供する。
【解決手段】 (1)除核した卵を調製する工程、(2)体性幹細胞を調製する工程、(3)除核した卵と体性幹細胞を融合させる工程、(4)融合卵を培養し、クローン胚を得る工程、及び(5)クローン胚を仮親動物の卵管又は子宮に移植し、クローン動物を得る工程を含むクローン動物の作製方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、クローン動物及びクローン胚の作製方法に関する。本発明の方法により、正常なクローン動物を高効率で作製することが可能になる。
現在までに、体細胞核移植によるクローン個体の生産は、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギなど多くの種で成功している。しかし、クローン個体の生産効率は非常に低く、また、クローン個体には先天的異常が発生する頻度も高い。例えば、クローンブタの場合、作出効率(出産されたクローン動物の数/移植したクローン胚の数×100)は約5%以下に過ぎない。
核ドナー細胞は、クローニングの効率を決定している最大の要因である。核ドナー細胞として従来は、胎仔あるいは成体組織に由来する初代培養細胞が用いられて来た。哺乳動物の初代培養細胞は、長期間の継代培養が困難で、長期間の培養によって染色体異常などの異常が生じることが知られている。これらの問題は、体細胞核移植による動物クローニングの決定的な制限要素となっている。しかしながら、核ドナー細胞として好適な細胞種を簡便かつ正確に同定し得る実用的な方法は存在せず、そのため、多くの試行錯誤を行ってより適した細胞をスクリーニングしなければならず、それには非常な困難を伴う。
ドナー細胞に望まれる特徴には、長期間の培養でも増殖性が衰えないこと、染色体構成が正常に保たれていること、細胞周期同調の容易なことなどがある。しかし、これらすべての条件を満たす細胞は見つかっていない。
特表2002-512510号公報 特表2002-506721号公報 特表2002-506722号公報
本発明の目的は、クローン動物の効率的な生産を可能にするドナー細胞を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、クローン動物を作製する際のドナー細胞として唾液腺幹細胞を使用することにより、クローン胚の発生率が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔9〕を提供する。
〔1〕ドナー細胞として体性幹細胞を用いることを特徴とするクローン動物の作製方法。
〔2〕体性幹細胞が、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、又は脂肪細胞前駆細胞であることを特徴とする〔1〕記載のクローン動物の作製方法。
〔3〕体性幹細胞が、ブタ由来の細胞であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のクローン動物の作製方法。
〔4〕ドナー細胞として体性幹細胞を用いることを特徴とするクローン胚の作製方法。
〔5〕体性幹細胞が、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、又は脂肪細胞前駆細胞であることを特徴とする〔4〕記載のクローン胚の作製方法。
〔6〕体性幹細胞が、ブタ由来の細胞であることを特徴とする〔4〕又は〔5〕記載のクローン胚の作製方法。
〔7〕以下の(1)〜(5)の工程を含むクローン動物の作製方法。
(1)除核した卵を調製する工程
(2)体性幹細胞を調製する工程
(3)除核した卵と体性幹細胞を融合させる工程
(4)融合卵を培養し、クローン胚を得る工程
(5)クローン胚を仮親動物の卵管又は子宮に移植し、クローン動物を得る工程
〔8〕体性幹細胞が、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、又は脂肪細胞前駆細胞であることを特徴とする〔7〕記載のクローン動物の作製方法。
〔9〕体性幹細胞が、ブタ由来の細胞であることを特徴とする〔7〕又は〔8〕記載のクローン動物の作製方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のクローン動物の作製方法は、クローン動物作製のためのドナー細胞として体性幹細胞を用いることを特徴とするものである。
使用する体性幹細胞は特に限定されず、例えば、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、脂肪細胞前駆細胞などを使用することができ、これらの中でも、唾液腺幹細胞を使用するのが好ましい。
唾液腺幹細胞の採取及び初代培養は、例えば、特開平2003-144140号公報記載の方法に従って行うことができる。即ち、顎下腺、耳下腺、舌下腺などの主唾液腺を結紮した後、これを摘出する。摘出した唾液腺は細切し、緩衝液への懸濁と遠心処理を数度繰り返すことにより、唾液腺幹細胞を含む懸濁液をを得ることができる。この細胞懸濁液をコラーゲンを被覆した培養用ディッシュ内で培養することにより、プレートに付着した細胞からコロニーが形成される。このコロニーを構成する細胞を唾液腺幹細胞として使用することができる。このとき使用する培地としては、上皮成長因子、ウシ胎児血清、インスリン、デキサメタゾン、ペニシリンG、ストレプトマイシンなどを含むウィリアムのE培地などを使用することができる。
造血幹細胞は、骨髄、抹消血、あるいは臍帯血から採取し、純化することが可能であり、細胞表面に存在する様々な表面抗原を用いる方法がよく知られている。代表的な方法としてosawa らの方法(Osawa M, Nakamura K, Nishi N, Takahasi N, Tokuomoto Y, Inoue H, Nakauchi H. In vivo self-renewal of c-Kit+ Sca-1+ Lin(low/-) hemopoietic stem cells. J Immunol. 156:3207-3214, 1996)が知られている。この方法では骨髄、末梢血、あるいは臍帯血から有核細胞を分離し、これに表面抗原に対する抗体を作用させ、細胞分離器で分離する。ここで得られた細胞はそのまま培養可能である。
神経幹細胞は、ニュールスフェア法という選択的培養方法によって培養と純化が可能である。この方法は神経幹細胞を含む細胞集団をいくつかの増殖因子を含む無血清培地下で培養すると、幹細胞以外は死滅し、幹細胞は細胞塊をつくって増殖する原理を利用したもので、Weiss の開発によるものである(Weiss S, Dunne C, Hewson J, Wohl C, Wheatley M, Peterson AC, Reynolds BA. Multipotent CNS stem cells are present in the adult mammalian spinal cord and ventricular neuroaxis. J Neurosci. 16:7599-7609, 1996)。この培養によって得られた神経幹細胞は未分化のまま培養を継続することが可能である。
間葉系幹細胞は、骨髄から採取される。骨髄細胞を培養して得る方法が一般的である。基本的には長期間の培養(4〜6週以上)行って、コロニーを作って増殖してくる細胞の中に幹細胞が含まれているのでコロニーを選択して純化する。代表的な方法としてはSutherlandらの方法(Sutherland HJ, Lansdorp PM, Henkelman DH, Eaves AC, Eaves CJ. Functional characterization of individual human hematopoietic stem cells cultured at limiting dilution on supportive marrow stromal layers. Proc Natl Acad Sci U S A. 87 :3584-3588, 1990)がある。これとは別に最近、骨髄細胞の中から細胞表面抗原を利用して採取する方法も確立されている。これはDeschaseauxらが報告した方法(Deschaseaux F, Gindraux F, Saadi R, Obert L, Chalmers D, Herve P. Direct selection of human bone marrow mesenchymal stem cells using an anti-CD49a antibody reveals their CD45med,low phenotype. Br J Haematol. 122:506-517, 2003)で、骨髄細胞中から直接的に間葉系幹細胞を分離することが可能になっている。
肝臓前駆細胞はいくつかの方法で分離されているが、代表的な方法として胎子マウス肝臓から細胞表面抗原を利用して採取する方法がSuzukiらによって記載されている(Suzuki A, Zheng Y, Kondo R, Kusakabe M, Takada Y, Fukao K, Nakauchi H, Taniguchi H.Flow-cytometric separation and enrichment of hepatic progenitor cells in the developing mouse liver. Hepatology. 32:1230-1239, 2000)。その方法では胎児肝臓をコラゲナーゼなどで処理し、分散した細胞をそのまま表面抗原に対する抗体と反応し、細胞分離器にかけるものである。ここで分離された前駆細胞は培養皿上で培養することが可能である。
膵島前駆細胞の分離の方法は基本的には培養してコロニーを選択する方法である。このなかで代表的な方法としては膵臓内の膵島に存在するネスチン陽性細胞を培養して分離するものがある。これはこの細胞はZulewskiらが報告したものであるが(Zulewski H, Abraham EJ, Gerlach MJ, Daniel PB, Moritz W, Muller B, Vallejo M, Thomas MK, Habener JF. Multipotential nestin-positive stem cells isolated from adult pancreatic islets differentiate ex vivo into pancreatic endocrine, exocrine, and hepatic phenotypes. Diabetes. 50:521-533, 2001)、この方法では膵島を構成するインスリン分泌細胞やグルカゴン分泌細胞などの様々な細胞への分化能を有する細胞が得られる。
皮膚組織に存在する幹細胞も様々な方法で分離可能であるが、代表的な方法としてはTomaらの方法(Toma JG. Akhavan M. Fernandes KJ. Barnabe-Heider F. Sadikot A. Kaplan DR. Miller FD. Isolation of multipotent adult stem cells from the dermis of mammalian skin. Nature Cell Biology. 3:778-784, 2001 )がある。この方法では細胞培養によって細胞にニューロスフェアを作成させるもので、長期間の培養によって皮膚由来幹細胞を得ることができる。
脂肪細胞前駆細胞は培養骨髄間葉系細胞、培養脂肪組織血管細胞、培養皮膚繊維芽細胞などをもとに、これらの細胞に脂肪細胞へ分化誘導刺激を加えることで比較的容易に作製することができる。代表的な方法はRosenmらによって記載されている(Rosenm RD, Spiegelman BM. Molecular regulation of adipogenesis Annual Review of Cell & Developmental Biology. 16:145-171, 2001.)。
本発明のクローン動物の作製方法は、ドナー細胞として体性幹細胞を用いること以外、通常のクローン動物の作製方法と同様に行うことができる。本発明のクローン動物の作製方法の一例として、以下の(1)〜(5)の工程を含む方法を挙げることができる。
工程(1):この工程では、除核した卵を調製する。卵の除核は、クローン動物の作製に一般的に採用されている手法に従って行うことができる。このような方法としては、例えば、Polejaeva IAらの文献(Polejaeva IA, Chen S-H, Vaught TD, Page RL, Mullins J, Ball S, Dai Y, Boone J, Walker S, Ayares D, Colman A, Campbell KH. Cloned pigs produced by nuclear transfer from adult somatic cells. Nature 2000; 407: 86-90.)に記載されている方法などを挙げることができる。使用する卵は、ヒト以外の動物の卵であればどのようなものでもよいが、工程(2)で使用する体性幹細胞と同じ種類の動物の卵を用いるのが好ましい。また、除核は未受精卵に対して行うことが好ましく、特に第一極体の放出後の成熟卵に対して行うのが好ましい。
工程(2):この工程では、体性幹細胞を調製する。体性幹細胞は、上述したものを使用することができ、それぞれ上述した方法によって調製することができる。体性幹細胞は、ヒト以外の動物由来のものであればどのような動物のものでもよいが、哺乳動物、例えば、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、イヌ、ネコ由来の体性幹細胞を使用するのが好ましく、特にブタ由来の体性幹細胞を使用するのが好ましい。
調製した体性幹細胞は、血清飢餓培養法(Campbell KHS, McWhir J, Ritchie WA, Wilmut I. Sheep cloned by nuclear transfer from a cultured cell line. Nature 1996; 380: 64-66.)、接触阻止法(Onishi A, Iwamoto M, Akira T, Mikawa S, Takeda K, Awata T, Hanada H, Perry ACF. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science 2000; 289: 1188-1190.)などにより、細胞周期を休止期に誘導する。
工程(3):この工程では、除核した卵と体性幹細胞を融合させる。卵と体性幹細胞の融合は、クローン動物の作製に一般的に採用されている手法、例えば、電気融合法、注入法などによって行うことができる。電気融合法は、例えば、Polejaeva IAらの文献(Polejaeva IA, Chen S-H, Vaught TD, Page RL, Mullins J, Ball S, Dai Y, Boone J, Walker S, Ayares D, Colman A, Campbell KH. Cloned pigs produced by nuclear transfer from adult somatic cells. Nature 2000; 407: 86-90.)の記載に従って行うことができ、注入法はOnishi Aらの文献(Onishi A, Iwamoto M, Akira T, Mikawa S, Takeda K, Awata T, Hanada H, Perry ACF. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science 2000; 289: 1188-1190.)の記載に従って行うことができる。電気融合法による電気刺激は、体性幹細胞の核が卵に移植され、正常な胚が形成され得る範囲内であれば特に限定されないが、例えば、直流パルスであれば電圧は100〜300V/mm、時間は10〜30 micro-sec、回数は1〜3回とするのが好ましく、交流であれば周波数は1〜5MHz、電圧は1〜10V、時間は1〜30secとするのが好ましい。
融合処理後の卵には、活性化処理を行うのが好ましい。活性化処理は、クローン動物の作製に一般的に採用されている手法、例えば、電気刺激や塩化ストロンチウム処理などにより行うことができる。電気刺激による活性化処理としては、電圧30〜200 V/mm、時間10〜200 micro-sec、1〜5 回の直流パルスを印加する方法などを例示できる。また、活性化処理は、融合処理から0〜6時間後に行うのが好ましい。
また、活性化処理後の卵には、極体放出抑制処理を行うのが好ましい。極体放出抑制処理は、サイトカラシンなどを用いて行うことができる。
工程(4):この工程では、融合卵を培養し、クローン胚を得る。融合卵の培養は、クローン動物の作製に一般的に採用されている手法、例えば、Betthauser Jらの文献(Betthauser J, Forsberg E, Augenstein M, Childs L, Eilertsen K, Enos J, Forsythe T, Golueke P, Jurgella G, Koppang R, Lesmeister T, Mallon K, Mell G, Misica P, Pace M, Pfister-Genskow M, Strelchenko N, Voelker G, Watt S, Thompson S, Bishop M. Production of cloned pigs from in vitro systems. Nature Biotechnology 2000; 18: 1055-1059.)の記載に従って行うことができる。培地としては、NCNU23培地、TCM199、BECM、PZM培地などを使用することができる。
工程(5):この工程では、クローン胚を仮親動物の卵管あるいは子宮に移植し、クローン動物を得る。クローン胚の卵管あるいは子宮への移植は、クローン動物の作製に一般的に採用されている手法、例えば、Onishi Aらの文献(Onishi A, Iwamoto M, Akira T, Mikawa S, Takeda K, Awata T, Hanada H, Perry ACF. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science 2000; 289: 1188-1190)やBetthauser Jらの文献(Betthauser J, Forsberg E, Augenstein M, Childs L, Eilertsen K, Enos J, Forsythe T, Golueke P, Jurgella G, Koppang R, Lesmeister T, Mallon K, Mell G, Misica P, Pace M, Pfister-Genskow M, Strelchenko N, Voelker G, Watt S, Thompson S, Bishop M. Production of cloned pigs from in vitro systems. Nature Biotechnology 2000; 18: 1055-1059.)の記載に従って行うことができる。仮親動物は、ヒト以外の動物であれば特に限定されないが、体性幹細胞を採取した動物と同じ種類の動物を用いることが好ましい。クローン胚は、正常なクローン動物に生育できるものであれば特に限定されないが、1細胞期から胚盤胞期の胚を使用するのが好ましい。
本発明のクローン動物の作製方法により、染色体異常のない正常なクローン動物を高効率で作製できるようになる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
〔実施例1〕 ドナー細胞の調製
核移植のドナー細胞としては、唾液腺幹細胞、胎児繊維芽細胞、卵管由来繊維芽細胞の3種類の細胞を用いた。採取した細胞は、継代培養した後、凍結保存し、核移植操作前に解凍した。解凍した細胞は、血清飢餓培養法及び接触阻止法により、細胞周期を休止期に誘導した。細胞の採取、継代培養、凍結保存、血清飢餓培養、接触阻止は、以下の通り行った。
唾液腺幹細胞の採取
離乳後約2週間目のブタ(LWD《ランドレス・デュロック》種、生後4〜5週、雄、7-10 kg)を、硫酸アトロピン、ストレスニル、ケタラール麻酔下に大腿動脈を切断して脱血し、仰臥位に固定した。下顎から頚部を正中切開し顎下腺を摘出した。採取した顎下腺は氷冷したウイリアムズE培地(FBS無添加)へ保存し、直径約1.5 cm、約2-4gの大きさに細切した。
滅菌はさみで唾液腺を1-2 mm大に細切した。50 ml遠心管に入れたEGTAバッファー20mlに懸濁して、37℃で20分間、10回/分の速度で回転震盪した。組織細片液は遠心 (100 xg、5分、室温)し、上清は捨てた。ペレットをコラゲナーゼ(collagenase)/ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)バッファーに懸濁し、37℃で40分間、回転震盪した。100 xg、5分、室温にて遠心分離し、ペレットをディスパーゼ液に懸濁し、37℃、60分間、回転震盪した。懸濁液を細胞濾過器にかけ、遠心(100 xg、5分、室温)した。細胞ペレットをウイリアムズE培地に懸濁し、同培養液で3回洗浄した。
上記の細胞ペレットを維持培養液に懸濁し細胞数を計測した。細胞浮遊液をI型コラーゲンコート培養皿(IWAKI)に5x105 〜1x106cells/ 100mm dish の細胞密度で播種し、初代培養を開始した。培養液交換は初回を36時間目に行い、以降は5日毎に行った。
この培養によって増殖してくる紡錘型細胞が唾液腺幹細胞である。
胎児繊維芽細胞の採取
妊娠25日齢のデュロック種の胎児をハサミにより細断し、PBS(-)で洗浄した。これを1200rpmで5分間遠心処理し、沈殿を採取した。この沈殿に0.25%トリプシン(0.01% EDTA添加)を加え5分間静置した。続いて400rpmで5分間の遠心処理し、上清側に集まった細胞を採取した後に15%ウシ胎児血清(FCS)を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)に懸濁した。上記のトリプシン処理からの過程をもう一度繰り返し、最後に1200rpmで5分間遠心処理して得られた沈殿を5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより培養した。
卵管由来繊維芽細胞の採取
雌ブタ(LW種、6ヶ月令)の採卵時に得られる卵管灌流液から卵管由来組織を採取した。卵管灌流液を1200rpmで5分間遠心処理し、沈殿を採取した。この沈殿に0.05%トリプシン(0.01% EDTA添加)を加え5分間静置した。その後沈殿を10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したDMEMに懸濁し、1000rpmで5分間遠心処理して得られた沈殿を5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより培養した。
胎児繊維芽細胞及び卵管由来繊維芽細胞の継代培養
培養液は、胎児繊維芽細胞については15%ウシ胎児血清、卵管由来繊維芽細胞については10%ウシ胎児血清を添加したDMEMを用いた。また、細胞培養は5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより行った。細胞が培養ディッシュの7〜9割に達した時点で0.1%トリプシン(0.01% EDTA添加)により処理し、剥離した細胞を1000rpmで5分間の遠心処理により回収、得られた細胞を新しい培地に移し、再び培養した。
細胞の凍結保存及び解凍
凍結液は10%ジメチルスルフォキシド(DMSO)を添加した培養液を用いた。培養ディッシュの7〜9割に達した時点で0.1%トリプシン(0.01% EDTA添加)により処理し、剥離した細胞を1000rpmで5分間の遠心処理により回収した。細胞濃度を1×106/mlになるように調整し、氷中で冷やした凍結液に懸濁した。これを凍結用チューブに分注し、緩慢凍結法(−20℃で30分、−80℃で一晩)を行った後、液体窒素中に保存した。
解凍は38℃の恒温槽で行い、解凍した細胞を培養液で10倍希釈した。これを1000rpmで5分間遠心処理し、得られた沈殿を5%CO2、37.5℃でインキュベーターにより培養した。
血清飢餓培養
細胞が培養ディッシュの8割程度に達した時点で培養液を0.5% FCSを添加したDMEMに置き換えて2〜5日培養した。
接触阻止法
細胞が培養ディッシュの底面を埋め尽くした時点から、1〜10日間培養を継続した。またこの期間、3日おきに新鮮なDMEMと交換した。
〔実施例2〕 レシピエント卵の調製
レシピエント卵は、ブタ(LW種、LWD種、6ヶ月令)の卵巣から採取した卵を体外で培養して成熟させ、その後、核を取り除くことにより調製した。体外培養、除核は以下の通り行った。
体外培養
食肉工場から得た卵巣を0.2% 臭化セチルトリメチル アンモニウム(CETAB)、続いてPBS(-)-PVAで3回洗った後、38.5℃の恒温槽で待機させた。卵巣は、75μg/mlペニシリンG、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン、0.1%ポリビニールアルコールを添加したダルベッコPBS(PBS(-)-PVA)内に入れ、24〜30℃に加温した状態で食肉工場から輸送してきた。
ホットプレートにより38.5℃に加温した状態で、20ゲージの注射針と5mlシリンジを使い、直径3〜6mmの卵胞から卵胞液ごと卵を吸引した。得られた卵胞液を800rpmで2分間遠心処理することにより、卵を沈殿させた。この沈殿をTL-Hepes-PVPに懸濁させ、顕微鏡下で卵丘細胞が多量付着しており、かつ卵の細胞質が正常な卵丘卵子複合体を選別した。選別した卵丘卵子複合体を、NCSU23に0.6mMシステイン、10μg/ml上皮増殖因子(EGF)、10%ブタ卵胞液、75μg/mlペニシリンG、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン、10IU/mlウマ絨毛性ゴナドトロピン(eCG)、10IU/mlヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を添加したNCSU23培養液で5%CO2、38.5℃でインキュベーターにより培養した。培養開始から22時間後にホルモンを除いたNCSU23に移し変え、さらに22時間培養した。
培養を終了した卵を0.01%ヒアルロニダーゼで処理した後、TL-Hepes-PVPのドロップ内においてピペッティングにより卵丘細胞、顆粒層細胞を除去した。これにより卵の透明帯が露出し、顕微鏡下での観察や操作が容易となる。次に、成熟卵の特徴である第一極体の放出を起こした卵のみを選別した。また、この際に死んだ卵および細胞質の形状がいびつな卵などは排除した。
除核
除核は、7.5μg/mlサイトカラシンB、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したTL-Hepes-PVP内の卵の第一極体周辺の細胞質を吸引することにより行った。細胞質の吸引には、先端が鋭角の口径30μmのピペットを用いた。
除核が正常に行われたかどうかは、ヘキスト染色により確認した。即ち、除核処理後の卵を、5μg/mlヘキスト33342を添加したTL-Hepes-PVPドロップ内に5分間入れて染色し、その後、蛍光顕微鏡で卵内を観察した。ヘキスト33342はDNAに結合する蛍光色素なので、除核されていなければ卵内に染色体が観察される。
〔実施例3〕 核移植
レシピエント卵の囲卵腔にドナー細胞を挿入し、卵とドナー細胞を融合させた後、活性化処理と倍数体化処理を行った。細胞融合、活性化処理は、以下のように行った。
細胞融合
レシピエント卵は10%ウシ胎児血清(FCS)添加のTL-Hepes-PVPのドロップ内、ドナー細胞は0.1%トリプシン(0.01% EDTA添加)により剥がした後10%ウシ胎児血清(FCS)添加のNCSU23-Hepes(NCSU23に21mM Hepesを添加)のドロップ内に入れて待機させた。先端が鋭角の口径30μmのピペットを用いて、除核の際にできた透明帯の穴からマイクロマニュピレーションによりレシピエント卵の囲卵腔にドナー細胞を挿入した。
細胞挿入された卵を細胞融合用マンニトール液(0.3Mマンニトールに50μM塩化カルシウム、100μM塩化マグネシウム、0.01%ポリビニールアルコールを添加)のドロップに入れ、卵と囲卵腔に挿入された細胞の接触面が電流に対して垂直になるように電極で挟んだ。
続いて、細胞融合装置(島津製作所製 SSH-1)により細胞融合を行った(交流1MHz、5V、5sec、直流200V/mm、10μsec、1回)。また、融合20分後に顕微鏡下で観察し、細胞融合が起きなかった卵については再度細胞挿入を行った。
活性化処理
細胞融合から1〜1.5時間後に、スライドグラス上に平行に置かれた電極間(幅1mm)に活性化用マンニトール液(0.3Mマンニトールに50μM塩化カルシウム、100μM塩化マグネシウム、0.01%ポリビニールアルコールを添加)のドロップを作り、このドロップ内に融合卵を顕微鏡下で一列に並べた。この際、卵が他の卵や電極に触れないように注意した。続いて、細胞融合装置(島津製作所製 SSH-1)により電気刺激を与えて融合卵の活性化を行った(直流100V/mm、100μsec、1回)。活性化された卵は第二極体の放出をするので、その前に5μg/mlサイトカラシンB、4mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を添加したNCSU23に移し、3時間培養することで極体放出抑制処理を行った。
〔実施例4〕 胚の培養
活性化および倍数体化処理を行った融合卵は、4mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を添加したNCSU23内で5%CO2、38.5℃でインキュベーターにより体外培養し、発生能の評価を行った。なお、体外培養開始から96時間後に、卵を培養しているドロップに濃度が10%になるようにウシ胎児血清(FCS)を添加した。
発生能の評価は、正常分割率、胚盤胞形成率、胚盤胞の平均細胞数の3項目について行った。各項目の評価方法は、以下の通りである。
正常分割率
活性化処理から48時間後の融合卵を観察し、2〜8細胞に分割している卵(正常卵)の全体に占める割合を正常分割率とした。
胚盤胞形成率
活性化処理から168時間後の融合卵を観察し、胚盤胞にまで発達している卵の全体の占める割合を胚盤胞形成率とした。
胚盤胞の平均細胞数
胚盤胞をスライドグラスにマウントし、カバーグラスで押さえた状態で酢酸メタノール(酢酸:メタノール=1:3)に48時間浸して固定した。固定が終了した卵は1%アセトオルセイン溶液で20分染色し、その後観察しやすいようにアセトグリセロール(酢酸:グリセロール:滅菌水=1:1:3)で洗った。その後、乾燥を避けるためカバーグラスの周囲をマニキュアで封入し、顕微鏡下で観察して細胞数を数えた。以上の細胞数の計測を、活性化処理から168時間後に確認されたすべての胚盤胞について行い、その平均値を胚盤胞の平均細胞数とした。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2005095031

表1に示すように、唾液腺幹細胞をドナー細胞として用いることにより、胚盤胞の形成率(正常発生の指標)が3倍以上になった。また、胚盤胞の細胞数も著しく増加しており、これはクローン胚の質が向上したことを意味するものと考えられる。
以上のことから、唾液腺幹細胞の使用により、クローン動物の作製効率を向上させることができ、また、正常個体の出現率の向上も図ることができると考えられる。

Claims (9)

  1. ドナー細胞として体性幹細胞を用いることを特徴とするクローン動物の作製方法。
  2. 体性幹細胞が、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、又は脂肪細胞前駆細胞であることを特徴とする請求項1記載のクローン動物の作製方法。
  3. 体性幹細胞が、ブタ由来の細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載のクローン動物の作製方法。
  4. ドナー細胞として体性幹細胞を用いることを特徴とするクローン胚の作製方法。
  5. 体性幹細胞が、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、又は脂肪細胞前駆細胞であることを特徴とする請求項4記載のクローン胚の作製方法。
  6. 体性幹細胞が、ブタ由来の細胞であることを特徴とする請求項4又は5記載のクローン胚の作製方法。
  7. 以下の(1)〜(5)の工程を含むクローン動物の作製方法。
    (1)除核した卵を調製する工程
    (2)体性幹細胞を調製する工程
    (3)除核した卵と体性幹細胞を融合させる工程
    (4)融合卵を培養し、クローン胚を得る工程
    (5)クローン胚を仮親動物の卵管又は子宮に移植し、クローン動物を得る工程
  8. 体性幹細胞が、唾液腺幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、肝臓前駆細胞、膵島前駆細胞、皮膚組織幹細胞、又は脂肪細胞前駆細胞であることを特徴とする請求項7記載のクローン動物の作製方法。
  9. 体性幹細胞が、ブタ由来の細胞であることを特徴とする請求項7又は8記載のクローン動物の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016168950A1 (zh) * 2015-04-24 2016-10-27 赵振民 一种唾液腺类器官和类腺泡的体外构建方法
CN114554866A (zh) * 2019-09-10 2022-05-27 必要肉制品公司 用于生产食物产品的禽类干细胞

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