JP2008153136A - ニッケル膜形成用塗布液、及びニッケル膜とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
優れた導電性と成膜性(表面平坦性)を兼ね備えたニッケル膜を、塗布法、特にインクジェット印刷法により、アルカリ成分に弱いガラス等の基板上に形成するのに適したニッケル膜形成用塗布液、この塗布液を使用したニッケル膜、およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有し、酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であるニッケル膜形成用塗布液とすることで、例えば、インクジェット印刷に適したニッケル膜形成用塗布液を得ることができ、このニッケル膜形成用塗布液を塗布し、乾燥し、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下200℃以上の温度で焼成すれば、低抵抗のニッケル膜が得られる。
【選択図】 なし
Description
しかしながら、これに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基板成膜毎に製造装置内を真空にしなければならないため、製造コストと量産性に問題があった。更に、金属膜を所定のパターンに加工するために、レジスト形成してエッチングしなければならず、工程が多くなり生産性の低下、高コストになる欠点があった。
そこで、蟻酸ニッケルと酢酸ニッケルの含有割合については、酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であることが好ましく、更に好ましくは20重量部以上とするのが良い。10重量部未満であると塗布液の成膜性が悪化して得られるニッケル膜の抵抗値、強度、平滑性、均一性等が大きく損なわれるため好ましくない。
沸点が150℃未満や300℃を超えるアルカノールアミン系溶媒を用いた塗布液では、成膜性あるいは膜質が悪化して、形成するニッケル膜の抵抗値、強度、平滑性、均一性等が大きく損なわれる場合がり好ましくない。
ここで、ニッケル膜形成用塗布液におけるアルカノールアミン系溶媒の含有量については、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下とするのが良い。アルカノールアミン系溶媒を10重量%を超えて含有すると、アルカノールアミン系溶媒のアルカリ成分で基材が劣化する場合があり(例えば酸化ケイ素系材料を基材に用いた場合)、アルカノールアミン系溶媒の含有量はできるだけ低下させることが望ましい。
更に、バインダーにカップリング剤を用いた場合、焼成後も無機成分がニッケル膜中に残留し、基材とニッケル微粒子間を接合するため膜の密着力向上に役立つ。また、バインダーの添加は焼成過程において、ニッケル微粒子の成長を均一化する効果もあり膜の平坦性の向上にも寄与する。
また、フッ素系界面活性剤としては、例えば炭素数6〜9のパーフルオロアルキル基を含有するアニオン型、ノニオン型、カチオン型、両性イオン型等の界面活性剤が挙げられ、極めて界面活性能力が高いため、シリコン系やアミン系に比べて少ない添加量で効果を発揮できる特徴がある。
ここで、アミン系の界面活性剤としてはアルキルアミン酢酸塩(RHNH2・HOOCCH3、R:アルキル基)が、ニッケル膜形成用塗布液の溶解安定性を良好に保ち、かつ熱分解性も有するため好ましいものとして挙げられる。
ニッケル膜の導電性は、焼成温度が高いほどニッケル粒子の粒成長が促進されるので向上する。焼成雰囲気については窒素ガス、アルゴンガス等の中性雰囲気でも良いが、水素ガス、水素−窒素混合ガス等の還元性雰囲気が、ニッケル粒子の酸化を完全に抑制しニッケル粒子同士の焼結を促進して導電性を一層向上できる点で好ましい。また、還元性雰囲気での焼成では、蟻酸ニッケルの分解温度以下の温度でも蟻酸ニッケルをニッケルに還元することが可能となるため、焼成時間は長くなるものの、例えば200〜230℃程度の低温焼成でもニッケル膜を得ることができる。
次に、A液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例1に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
ニッケル膜形成用塗布液の塗布は、ソーダライムガラス基板(10cm×10cm×3mm厚さ)にスピンコート(250rpm×1分振切り)して行い、70℃のオーブンに5分間入れて乾燥した後、2%水素−98%窒素雰囲気中で300℃×30分間処理して実施例1に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の膜厚は0.12μmであった。また、得られたニッケル膜の比抵抗値は0.28mΩ・cmであった。尚、ニッケル膜形成用塗布液の塗布をインクジェット印刷で行っても、得られるニッケル膜の特性は変らない。
次に、B液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例2に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例2に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.07mΩ・cmであった。
次に、C液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例3に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例3に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.08mΩ・cmであった。
次に、D液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例4に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例4に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.13mΩ・cmであった。
次に、E液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例5に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例5に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.03mΩ・cmであった。
次に、F液:22.90gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:76.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例6に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例6に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.52mΩ・cmであった。
次に、G液:23.90gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:75.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例7に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例7に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は1.04mΩ・cmであった。
次に、H液:45.70gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:54.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例8に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用い、2%水素−98%窒素雰囲気中での処理を250℃×30分間で行った以外は、実施例1と同様にして成膜を行い、実施例8に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.41mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CH3COO)2・4H2O]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)2・2H2O]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、3−アミノ−1,2−プロパンジオール:3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(I液)。
次に、I液:22.90gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:76.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、比較例1に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、比較例1に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は4906.8mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CH3COO)2・4H2O]:13.12g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)2・2H2O]:0.88gをエチレングリコール:25.12g、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃):0.88gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(J液)。
次に、J液:27.25gをジエチレングリコールモノエチルエーテル:71.93g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、比較例2に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、比較例2に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜には亀裂が発生して表面抵抗計では表面抵抗値を測定できなかった(>10000000Ω/□)。また膜強度も弱く、正確な膜厚を測定できなかった。
尚、各実施例及び各比較例の酢酸ニッケル100重量部に対する、蟻酸ニッケルの含有量、グリコール系溶媒の含有量、及び蟻酸ニッケル100重量部に対するアルカノールアミン系溶媒の含有量を表2に示す。
塗布液の粘度は、CBC(株)製の振動式粘度計VM−100−Lを用いて測定した。ニッケル膜の比抵抗値については、膜厚と表面抵抗値を触針式膜厚計(KLA−Tencor Corporation製Alpha−Step IQ)、表面抵抗計ロレスタAP(三菱化学(株)製MCP−T400)を用いて測定し、下式から求めた(なお、Ω/□はオーム・パー・スクエアと読む))。
ニッケル膜の比抵抗値(mΩ・cm)=[ニッケル膜の表面抵抗値(Ω/□)]×[ニッケル膜の膜厚(μm)]×0.1
各実施例と各比較例を比べると明らかな通り、各実施例の酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有し、酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であるニッケル膜形成用塗布液は、インクジェット印刷に適しており、かつインク外観の変化が見られないのと同時に、低抵抗のニッケル膜を形成できるのに対し、各比較例のニッケル膜形成用塗布液を用いて得られるニッケル膜では、抵抗値が大幅に悪化する問題がみられた。
Claims (17)
- 酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有するニッケル膜形成用塗布液であって、前記酢酸ニッケルと前記蟻酸ニッケルの含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であることを特徴とするニッケル膜形成用塗布液。
- 前記酢酸ニッケルと前記グリコール系溶媒の含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対してグリコール系溶媒200重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記蟻酸ニッケルと前記アルカノールアミン系溶媒の含有割合が蟻酸ニッケル100重量部に対してアルカノールアミン系溶媒50重量部以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記アルカノールアミン系溶媒の沸点が150℃以上300℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記アルカノールアミン系溶媒が、1−アミノ−2−プロパノール(沸点159.9℃)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(沸点165℃)、2−アミノエタノール(沸点171℃)、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(沸点244℃)、2,2−イミノジエタノール(沸点268.8℃)のいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記グリコール系溶媒の粘度が60mPa・s以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記グリコール系溶媒が、エチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒を更に含有し、塗布液の粘度が5〜30mPa・sの範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記の室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒が化学式R1O(R2O)2H(R1はCH3、C2H5、C3H7から選ばれる一種、R2はC2H4、C3H7から選ばれる一種)で表されるジアルキレングリコールモノアルキルエーテル溶媒であることを特徴とする請求項8に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記ニッケル膜形成用塗布液に、更にバインダー成分、および/または界面活
性剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。 - 前記バインダー成分および界面活性剤がアミノ基(−NH2)やアミン基(−NHR3、−NR3R4;R3、R4はアルキル基、アリール基等)を有することを特徴とする請求項10に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 前記界面活性剤がHLB値(親水性−親油性バランス)10〜20のシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする請求項10又は11に記載のニッケル膜形成用塗布液。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を基板上に塗布し、乾燥した後、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において200℃以上の温度で焼成することを特徴とするニッケル膜の製造方法。
- 前記乾燥が50〜220℃の温度で行われることを特徴とする請求項13に記載のニッケル膜の製造方法。
- 前記塗布がインクジェット印刷で行われることを特徴とする請求項13又は14に記載のニッケル膜の製造方法。
- 請求項13〜15のいずれか1項に記載のニッケル膜の製造方法で得られたことを特徴とするニッケル膜。
- 膜の比抵抗値が10mΩ・cm以下であることを特徴とする請求項16に記載のニッケル膜。
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