JP2008153136A - ニッケル膜形成用塗布液、及びニッケル膜とその製造方法 - Google Patents

ニッケル膜形成用塗布液、及びニッケル膜とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
優れた導電性と成膜性(表面平坦性)を兼ね備えたニッケル膜を、塗布法、特にインクジェット印刷法により、アルカリ成分に弱いガラス等の基板上に形成するのに適したニッケル膜形成用塗布液、この塗布液を使用したニッケル膜、およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有し、酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であるニッケル膜形成用塗布液とすることで、例えば、インクジェット印刷に適したニッケル膜形成用塗布液を得ることができ、このニッケル膜形成用塗布液を塗布し、乾燥し、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下200℃以上の温度で焼成すれば、低抵抗のニッケル膜が得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ニッケル膜形成用塗布液及びニッケル膜とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ガラスやセラミックなどの耐熱基板上に、塗布法、特にインクジェット印刷法を用いて、優れた導電性を備えたニッケル膜を低コストかつ簡便に形成できる塗布液、および該塗布液を用いて形成されたニッケル膜とその製造方法に関するものである。
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)等の表示素子の信号電極、各種回路基板の電極等には、導電性に優れる金属材料が用いられており、用途に応じ、例えば、銅、アルミニウム、銀、ニッケル等が適用されている。
ここで、従来の金属電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的手法が広く用いられている。これらの方法は、導電性に優れた均一な金属膜を基板上に形成することができる。
しかしながら、これに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基板成膜毎に製造装置内を真空にしなければならないため、製造コストと量産性に問題があった。更に、金属膜を所定のパターンに加工するために、レジスト形成してエッチングしなければならず、工程が多くなり生産性の低下、高コストになる欠点があった。
上記問題を是正する製造方法として、例えば特許文献1〜3には、銀や銅のナノ粒子を溶剤に分散させた導電膜形成用塗布液を用いる方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が提案されている。この方法では、導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、焼成という簡単な製造工程で銀や銅の導電膜が形成される。これは、銀や銅のナノ粒子サイズの効果により、比較的低温でも微粒子同士が融着する性質を上手く利用したものである。
しかし、上記塗布法は、融着しやすいナノ粒子に対しては適用されるものの、例えば、ニッケル粒子のような融着しにくい金属では、得られる膜質が悪化(膜がポーラス)してしまうため、積層セラミックコンデンサーの様な1000℃程度の高温で焼成する用途以外は実用化されていなかった。また、ニッケルは強磁性体であり、粘度の低い塗布液においては、塗布液中でニッケル微粒子が凝集しやすく、塗布液の安定性にも問題があった。
このため、これらの問題点を改良した塗布液として、例えば特許文献4にあるように、蟻酸ニッケルをモノエタノールアミン(2−アミノエタノール)(沸点171℃)に溶解させた分子状ニッケル源を用いるニッケル膜形成用ペーストが提案されている。また、特許文献5には酢酸ニッケル等の有機ニッケルをグリコール系の溶剤に溶解したニッケル膜形成用ペーストが提案されている。これらの方法では、例えばスクリーン印刷を用いて上記ペーストを印刷し、窒素ガス中400℃程度の温度で焼成してニッケル導電膜を得ている。
ところで、近年、塗布法による導電膜形成に際して、微細パターンを解像度よく塗布形成する方法として、インクジェット印刷法が盛んに研究されており、これに用いる塗布液として、インク吐出性に優れ、かつ成膜性が良好でハジキ(濡れ性不良のために塗布液が印刷パターンから縮小してしまうこと)や、にじみ(過度の濡れ性のため塗布液が印刷パターンから広がってしまうこと)などの欠陥を生ずることなく、かつ導電性などの膜特性に優れるものが望まれている。
しかしながら、上記特許文献4による蟻酸ニッケルをモノエタノールアミンに溶解させたニッケル膜形成用ペーストや特許文献5による酢酸ニッケル等の有機ニッケルをグリコール系の溶剤に溶解したニッケル膜形成用ペーストでは、スクリーン印刷を前提としており、従って塗布液の粘度が高いことから、インクジェット印刷法のインク吐出性に最適とされる5〜30mPa・s程度の粘度には全く合致しておらず適用することができなかった。
ここで、例えば蟻酸ニッケルとアミン系溶媒を用いて低粘度のニッケル膜形成用塗布液を作製した場合、アミン系溶媒はアルカリ性を有するため、適用する基材によってはアミン系溶媒がアルカリとして作用し該基材を劣化させてしまう可能性がある。例えば酸化ケイ素系の基材はアルカリで劣化されやすいものとして挙げられる。したがって、用いる基材によっては、ニッケル膜形成用塗布液におけるアミン系溶媒の含有量をできるだけ低下させることも必要であった。
また、ニッケル膜形成用塗布液を基板に塗布してニッケル膜を形成する場合、より低温(例えば、200〜300℃程度)で膜形成できれば、更にニッケル膜形成用塗布液の適用範囲を広げることが可能となるため、より低温で膜形成できるニッケル膜形成用塗布液が望まれていた。
特開2002−334618号公報 特開2002−338850号公報 特開2003−103158号公報 特開2005−026479号公報 特開2004−265826号公報
本発明の目的は、塗布法、特にインクジェット印刷法によって、優れた導電性と成膜性(表面平坦性)を兼ね備えたニッケル膜を低コストかつ簡便に形成できるニッケル膜形成用塗布液、この塗布液を使用したニッケル膜、及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、本発明が提供するニッケル膜形成用塗布液において、酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有するニッケル膜形成用塗布液であって、前記酢酸ニッケルと前記蟻酸ニッケルの含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であることを特徴とするものである。
また、本願の請求項2に係る発明は、本願の請求項1に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記酢酸ニッケルと前記グリコール系溶媒の含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対してグリコール系溶媒200重量部以上であることを特徴とするものである。
更に、本願の請求項3に係る発明は、本願の請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記蟻酸ニッケルと前記アルカノールアミン系溶媒の含有割合が蟻酸ニッケル100重量部に対してアルカノールアミン系溶媒50重量部以上であることを特徴とするものである。
更にまた、本願の請求項4に係る発明は、本願の請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記アルカノールアミン系溶媒の沸点が150℃以上300℃以下であることを特徴とするものである。
また、本願の請求項5に係る発明は、本願の請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記アルカノールアミン系溶媒が1−アミノ−2−プロパノール(沸点159.9℃)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(沸点165℃)、2−アミノエタノール(沸点171℃)、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(沸点244℃)、2,2−イミノジエタノール(沸点268.8℃)のいずれか一つ以上であることを特徴とするものである。
更に、本願の請求項6に係る発明は、本願の請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記グリコール系溶媒の粘度が60mPa・s以下であることを特徴とするものである。
更にまた、本願の請求項7に係る発明は、本願の請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記グリコール系溶媒がエチレングリコールであることを特徴とするものである。
また、本願の請求項8に係る発明は、本願の請求項1〜7のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒を更に含有し、塗布液の粘度が5〜30mPa・sの範囲内であることを特徴とするものである。
更に、本願の請求項9に係る発明は、本願の請求項8に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記の室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒が化学式RO(RO)H(RはCH、C、Cから選ばれる一種、RはC、Cから選ばれる一種)で表されるジアルキレングリコールモノアルキルエーテル溶媒であることを特徴とするものである。
更にまた、本願の請求項10に係る発明は、本願の請求項1〜9のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記ニッケル膜形成用塗布液に、更にバインダー成分、および/または界面活性剤が含有されていることを特徴とするものである。
また、本願の請求項11に係る発明は、本願の請求項10に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記バインダー成分および界面活性剤がアミノ基(−NH)やアミン基(−NHR、−NR;R、Rはアルキル基、アリール基等)を有することを特徴とするものである。
更に、本願の請求項12に係る発明は、本願の請求項10又は11に記載のニッケル膜形成用塗布液を前提とし、前記界面活性剤がHLB値(親水性−親油性バランス)10〜20のシリコーン系界面活性剤であることを特徴とするものである。
次に、本願の請求項13に係る発明は、本発明が提供するニッケル膜の製造方法において、本願の請求項1〜12のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を基板上に塗布し、乾燥した後、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において200℃以上の温度で焼成することを特徴とするものである。
また、本願の請求項14に係る発明は、本願の請求項13記載のニッケル膜の製造方法を前提とし、前記乾燥が50〜220℃の温度で行われることを特徴とするものである。
更に、本願の請求項15に係る発明は、本願の請求項13又は14に記載のニッケル膜の製造方法を前提とし、前記塗布がインクジェット印刷で行われることを特徴とするものである。
また、本願の請求項16に係る発明は、本発明が提供するニッケル膜において、請求項13〜15のいずれか1項に記載のニッケル膜の製造方法で得られたことを特徴とするものである。
更に、本願の請求項17に係る発明は、本願の請求項16記載のニッケル膜を前提とし、膜の比抵抗値が10mΩ・cm以下であることを特徴とするものである。
本発明に係るニッケル膜形成用塗布液によれば、例えばインクジェット印刷等の塗布法に好適な粘度と優れた成膜性(印刷性)および液安定性を有する塗布液を得ることが可能で、かつアミン系溶媒の含有量が少なくアルカリ成分に弱いガラス等の基板上にも適用できる。また、この塗布液を基板上に塗布、乾燥、焼成して得られるニッケル膜は、膜強度・表面平滑性に優れ、かつ良好な導電性を有するため、LCD、ELD、PDPなどの各種ディスプレイ、回路基板等の電極に適用することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のニッケル膜形成用塗布液は、酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有するニッケル膜形成用塗布液であって、前記酢酸ニッケルと前記蟻酸ニッケルの含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であることを特徴とするものである。
ここで、本発明に用いられる蟻酸ニッケル(実際の形態としては、無水物:Ni(HCOO)、二水和物:Ni(HCOO)・2HOが存在する)と酢酸ニッケル(実際の形態としては、四水和物:Ni(CHCOO)・4HOが存在する)は、ニッケル化合物の中では不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において比較的低温の温度領域(240〜300℃)で熱分解してニッケル膜を形成するため、ニッケル膜形成用塗布液のニッケル原料として好ましい。
また、本発明に用いられる蟻酸ニッケルと酢酸ニッケルの合計含有量は、3〜40重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5〜20重量%とするのが良い。含有量が3重量%未満であるとニッケル膜の膜厚が薄くなって十分な導電性が得られず、40重量%より多いとニッケル膜にクラックが発生しやすくなって導電性が損なわれる場合がある。尚、ここでいう蟻酸ニッケルと酢酸ニッケルの含有量とは、それぞれ無水の蟻酸ニッケル[Ni(HCOO)]と酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)]の含有量を示している。
酢酸ニッケルは蟻酸ニッケルに比べてグリコール系溶媒に溶解しやすい特徴を有しており、蟻酸ニッケルは酢酸ニッケルに比べて成膜性に優れる特徴を有している。このため、それぞれの配合割合を適正に設定することで、アミン系溶媒の含有割合が少ない場合でも優れたニッケル膜を形成できる塗布液を得ることができる。
そこで、蟻酸ニッケルと酢酸ニッケルの含有割合については、酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であることが好ましく、更に好ましくは20重量部以上とするのが良い。10重量部未満であると塗布液の成膜性が悪化して得られるニッケル膜の抵抗値、強度、平滑性、均一性等が大きく損なわれるため好ましくない。
本発明に用いられるグリコール系溶媒は、酢酸ニッケルを溶解しやすくするために用いる溶媒であり、粘度が60mPa・s以下が良い。粘度が60mPa・sよりも高いと、塗布液の粘度が30mPa・sよりも高くなり、インクジェット印刷時のノズル吐出性が悪化するので好ましくない。粘度が60mPa・s以下のグリコール系溶媒としては、エチレングリコール(粘度21mPa・s/20℃)、プロピレングリコール(粘度56mPa・s/20℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(粘度34.4mPa・s/20℃)等が挙げられるが、中でも優れた酢酸ニッケルの溶解性を有しかつ低粘度のエチレングリコールとすることが望ましい。
酢酸ニッケルとグリコール系溶媒の含有割合については、酢酸ニッケル100重量部に対してグリコール系溶媒200重量部以上であること好ましい。グリコール系溶媒は、主として酢酸ニッケルの溶解溶媒として用いるため、200重量部未満であると塗布液を製造する時に酢酸ニッケルが十分に溶解しないため好ましくない。
本発明に用いられるアルカノールアミン系溶媒は、主として蟻酸ニッケルを溶解するために用いる溶媒であり、150℃以上300℃以下の範囲に沸点を有する。
沸点が150℃未満や300℃を超えるアルカノールアミン系溶媒を用いた塗布液では、成膜性あるいは膜質が悪化して、形成するニッケル膜の抵抗値、強度、平滑性、均一性等が大きく損なわれる場合がり好ましくない。
アルカノールアミン系溶媒としては、具体的には1−アミノ−2−プロパノール(沸点159.9℃)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(沸点165℃)、2−アミノエタノール(沸点171℃)、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(沸点244℃)、2−[(3−アミノプロピル)アミノ]エタノール、2,2−イミノジエタノール(沸点268.8℃)、とすることが望ましい。蟻酸ニッケルは、アルカノールアミン系溶媒が配位したニッケル錯体を形成することから、これらのアルカノールアミン系溶媒は、蟻酸ニッケルを高濃度で溶解することができるので好ましい。
蟻酸ニッケルとアルカノールアミン系溶媒の含有割合は、蟻酸ニッケル100重量部に対してアルカノールアミン系溶媒50重量部以上であることが望ましい。50重量部未満であると、蟻酸ニッケルを十分に溶解することができなくなるからである。
ここで、ニッケル膜形成用塗布液におけるアルカノールアミン系溶媒の含有量については、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下とするのが良い。アルカノールアミン系溶媒を10重量%を超えて含有すると、アルカノールアミン系溶媒のアルカリ成分で基材が劣化する場合があり(例えば酸化ケイ素系材料を基材に用いた場合)、アルカノールアミン系溶媒の含有量はできるだけ低下させることが望ましい。
本発明に用いられる室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒は、アルコール類、エーテル類、アミド類、N−メチルピロリドンやγ−ブチロラクトン等の極性溶媒を用いることができるが、インクジット印刷用の塗布液としては高沸点のグリコールエーテル類が好ましく、更に好ましくは化学式RO(RO)H(RはCH、C、Cから選ばれる一種、RはC、Cから選ばれる一種)で表されるジアルキレングリコールモノアルキルエーテル溶媒が良い。ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(粘度:3.5mPa・s/25℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(粘度:3.7mPa・s/25℃)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(粘度:4.1mP・s/25℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(粘度:3.3mP・s/25℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(粘度:3.3mP・s/25℃)等が挙げられる。
本発明のニッケル膜形成用塗布液では、塗布性や成膜性を改善することを目的として、バインダー成分、および/または界面活性剤を含有してもよい。
本発明に用いられるバインダーとしては、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒、室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒等に溶解し、ニッケル膜形成用塗布液の溶解安定性や塗布性を悪化させなければ良く、バインダーの添加によりニッケル膜の密着力や平坦性を向上させることができる。このようなバインダーとしては、シリコン系やチタン系等のカップリング剤が挙げられ、中でもアミノ基(−NH)やアミン基(−NHR、−NR;R、Rはアルキル基、メチル基、エチル基、フェニル基等のアリール基等)を有するカップリング剤が有効であり、例えば、シリコン系カップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン等、チタン系カップリング剤としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。ここで、アミノ基(−NH)とは、アンモニアから水素を除去した1価の官能基で、アミン基(−NHR、−NR;R、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基等)は、第一級あるいは第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である。上記アミノ基とアミン基を含めて、広い意味で、アミノ基と呼ぶ場合があるが、ここでは、上述のように、区別して用いている。
上記バインダーの添加量は、蟻酸ニッケル[Ni(HCOO)]100重量部に対し0.05〜20重量部、好ましくは1〜15重量部を添加するのが好ましい。0.05重量部未満では添加の効果がなく、一方、20重量部を超えると上記膜の密着力や平坦性を向上させる効果は発揮できるが、バインダー成分がニッケル微粒子同士の間に介在して接触を阻害するためニッケル膜の導電性が損なわれるため好ましくないからである。
更に、バインダーにカップリング剤を用いた場合、焼成後も無機成分がニッケル膜中に残留し、基材とニッケル微粒子間を接合するため膜の密着力向上に役立つ。また、バインダーの添加は焼成過程において、ニッケル微粒子の成長を均一化する効果もあり膜の平坦性の向上にも寄与する。
本発明に適用可能な上記界面活性剤には、シリコーン系、フッ素系、アミン系の界面活性剤等があるが、できれば燃焼性又は熱分解性であることが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば疎水基にジメチルポリシロキサン、親水基にポリアルキレンオキサイドで構成されるものや、その一部に各種官能基を導入したもの等が挙げられ、そのHLB値(親水性−親油性バランス)が10〜20であることが好ましい。HLB値が10未満であるとニッケル膜形成用塗布液を塗布・成膜して得られる膜の均一性が不十分となる傾向が見られるため好ましくない。20を超えるシリコーン系界面活性剤は一般に市販されておらず入手が困難である。
上記官能基としては、アミン系溶媒への溶解性や、蟻酸ニッケルの溶解安定性を向上させるという観点からすると、アミノ基やアミン基が好ましいと言える。
また、フッ素系界面活性剤としては、例えば炭素数6〜9のパーフルオロアルキル基を含有するアニオン型、ノニオン型、カチオン型、両性イオン型等の界面活性剤が挙げられ、極めて界面活性能力が高いため、シリコン系やアミン系に比べて少ない添加量で効果を発揮できる特徴がある。
ここで、アミン系の界面活性剤としてはアルキルアミン酢酸塩(RHNH・HOOCCH、R:アルキル基)が、ニッケル膜形成用塗布液の溶解安定性を良好に保ち、かつ熱分解性も有するため好ましいものとして挙げられる。
上記界面活性剤の添加量は、蟻酸ニッケル[Ni(HCOO)]100重量部に対し0.005〜3.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部とするのが良い。0.005重量部未満では添加の効果がなく、一方、3.0重量部を超えると前述の成膜性を向上させる効果は発揮できるが、界面活性剤成分がニッケル膜形成過程においてニッケル微粒子同士の間に介在して粒成長や接触を阻害して得られるニッケル膜の導電性を損なう可能性があり好ましくないからである。
本発明に用いられるニッケル膜形成用塗布液は、例えば、蟻酸ニッケルと酢酸ニッケルをアルカノールアミン系溶媒とグリコール系溶媒の混合溶液に加熱溶解させ、これに室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒を加えることによって作製することができる。上述のように、必要に応じてバインダー成分、及び/又は界面活性剤を添加してもよい。加熱溶解は、加熱溶解温度を、例えば50〜160℃とした場合には、10〜60分程度攪拌することにより行われる。加熱溶解温度が50℃よりも低くても長時間をかければ溶解できなくはないが効率的ではなく、一方、加熱溶解温度が160℃よりも高いとアルカノールアミン系溶媒の蒸発が顕著となり蟻酸ニッケル濃度が変化してしまい、好ましくない。また、本発明のニッケル膜は、前記ニッケル膜形成用塗布液を基板上に塗布・乾燥後、焼成することにより製造することができる。
本発明に用いられる塗布方法としては、スピンコート、ワイヤーバーコート、ディップコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷といった各種塗布方法が適用できるが、中でも直接微細なパターンを解像度よく形成できる点でインクジェット印刷による塗布法が好ましい。
インクジェット印刷では、ノズルからインクを吐出させて基材上に塗膜パターンを形成させるため、塗布液の粘度[室温での測定値]は通常5〜30mPa・s程度の範囲(好ましくは、5〜20mPa・s、更に好ましくは、5〜15mPa・s)に設定する必要がある。この適正粘度は、インクジェットヘッド内のインクの粘度を指すため、インクジェットヘッドに加熱ヒーターを内蔵した装置では、より高い粘度(室温での粘度を指す)のインクを用いることもできる。また、ノズル部分での溶剤乾燥によるノズル詰まりを防止するため、比較的沸点の高い(例えば、沸点:100℃以上)溶媒を用いる必要がある。
基板上に塗布されたニッケル膜形成用塗布液の乾燥は、上述の理由から、塗布液が塗布された基板を50〜220℃の温度で、好ましくは70〜180℃の温度で行われる。乾燥時間は10〜60分保持することが好ましい。乾燥雰囲気は大気中、または窒素ガス等の不活性雰囲気が適用できる。
焼成は、乾燥後の塗布基板を焼成炉に入れて、通常、蟻酸ニッケルの分解温度の約240℃以上、好ましくは300℃以上に加熱し、30〜120分保持することにより行われる。
ニッケル膜の導電性は、焼成温度が高いほどニッケル粒子の粒成長が促進されるので向上する。焼成雰囲気については窒素ガス、アルゴンガス等の中性雰囲気でも良いが、水素ガス、水素−窒素混合ガス等の還元性雰囲気が、ニッケル粒子の酸化を完全に抑制しニッケル粒子同士の焼結を促進して導電性を一層向上できる点で好ましい。また、還元性雰囲気での焼成では、蟻酸ニッケルの分解温度以下の温度でも蟻酸ニッケルをニッケルに還元することが可能となるため、焼成時間は長くなるものの、例えば200〜230℃程度の低温焼成でもニッケル膜を得ることができる。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、1−アミノ−2−プロパノール(沸点159.9℃):3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(A液)。
次に、A液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例1に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
ニッケル膜形成用塗布液の塗布は、ソーダライムガラス基板(10cm×10cm×3mm厚さ)にスピンコート(250rpm×1分振切り)して行い、70℃のオーブンに5分間入れて乾燥した後、2%水素−98%窒素雰囲気中で300℃×30分間処理して実施例1に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の膜厚は0.12μmであった。また、得られたニッケル膜の比抵抗値は0.28mΩ・cmであった。尚、ニッケル膜形成用塗布液の塗布をインクジェット印刷で行っても、得られるニッケル膜の特性は変らない。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(沸点165℃):3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(B液)。
次に、B液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例2に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例2に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.07mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、2−アミノエタノール(沸点171℃):3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(C液)。
次に、C液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例3に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例3に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.08mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃):3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(D液)。
次に、D液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例4に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例4に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.13mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(沸点244℃):3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(E液)。
次に、E液:22.95gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:77.03g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例5に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例5に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.03mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、2,2−イミノジエタノール(沸点268.8℃):3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(F液)。
次に、F液:22.90gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:76.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例6に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例6に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.52mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:12.24g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:1.76gをエチレングリコール:24.24g、3−アミノ−1−プロパノール:1.76gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(G液)。
次に、G液:23.90gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:75.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例7に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、実施例7に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は1.04mΩ・cmであった。
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:7.00g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:7.00gをエチレングリコール:19.00g、2−アミノエタノール:7.00gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(H液)。
次に、H液:45.70gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:54.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02gの混合溶液に加えて攪拌し、実施例8に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用い、2%水素−98%窒素雰囲気中での処理を250℃×30分間で行った以外は、実施例1と同様にして成膜を行い、実施例8に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.41mΩ・cmであった。
実施例5で得られたニッケル膜形成用塗布液を用い、2%水素−98%窒素雰囲気中での処理を250℃×30分間で行った以外は、実施例1と同様にして成膜を行い、実施例9に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は0.05mΩ・cmであった。
[比較例1]
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:10.50g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:3.50gをエチレングリコール:22.50g、3−アミノ−1,2−プロパンジオール:3.50gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(I液)。
次に、I液:22.90gをジエチレングリコールモノメチルエーテル:76.28g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、比較例1に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、比較例1に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜の比抵抗値は4906.8mΩ・cmであった。
[比較例2]
酢酸ニッケル[Ni(CHCOO)・4HO]:13.12g、蟻酸ニッケル[Ni(COOH)・2HO]:0.88gをエチレングリコール:25.12g、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃):0.88gの混合溶液に加えた後、80℃で加熱攪拌して酢酸ニッケルと蟻酸ニッケルを溶解させた溶液を作製した(J液)。
次に、J液:27.25gをジエチレングリコールモノエチルエーテル:71.93g、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、L−7604;HLB値=13):0.02g、及びバインダー成分としてチタネートカップリング剤[イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート]:0.80gの混合溶液に加えて攪拌し、比較例2に係るニッケル膜形成用塗布液を得た。
上記ニッケル膜形成用塗布液を用いた以外は実施例1と同様にして成膜を行い、比較例2に係るニッケル膜を得た。得られたニッケル膜には亀裂が発生して表面抵抗計では表面抵抗値を測定できなかった(>10000000Ω/□)。また膜強度も弱く、正確な膜厚を測定できなかった。
このようにして得られた各実施例及び各比較例に係るニッケル膜形成用塗布液の粘度(22〜26℃で測定された値)、及びニッケル膜の比抵抗値を表1に示す。
尚、各実施例及び各比較例の酢酸ニッケル100重量部に対する、蟻酸ニッケルの含有量、グリコール系溶媒の含有量、及び蟻酸ニッケル100重量部に対するアルカノールアミン系溶媒の含有量を表2に示す。
塗布液の粘度は、CBC(株)製の振動式粘度計VM−100−Lを用いて測定した。ニッケル膜の比抵抗値については、膜厚と表面抵抗値を触針式膜厚計(KLA−Tencor Corporation製Alpha−Step IQ)、表面抵抗計ロレスタAP(三菱化学(株)製MCP−T400)を用いて測定し、下式から求めた(なお、Ω/□はオーム・パー・スクエアと読む))。
ニッケル膜の比抵抗値(mΩ・cm)=[ニッケル膜の表面抵抗値(Ω/□)]×[ニッケル膜の膜厚(μm)]×0.1

Figure 2008153136
Figure 2008153136
「評価」
各実施例と各比較例を比べると明らかな通り、各実施例の酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有し、酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であるニッケル膜形成用塗布液は、インクジェット印刷に適しており、かつインク外観の変化が見られないのと同時に、低抵抗のニッケル膜を形成できるのに対し、各比較例のニッケル膜形成用塗布液を用いて得られるニッケル膜では、抵抗値が大幅に悪化する問題がみられた。
本発明によるニッケル膜形成用塗布液は、インクジェット印刷が適用でき、かつアルカノールアミン系溶媒の含有量が少ないので、アルカリ成分に弱いガラス等の基板上にも微細なニッケル膜のパターンを解像度良く成膜することができ、かつ得られたニッケル膜の導電性、均一性、平坦性、強度も良好であるので、精密で、複雑なパターンの要求される液晶ディスプレイ(LCD)、エレクロロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)などの表示素子の信号電極などの電子機器の製造に利用可能であり、その他、各種回路基板の電極なども含め、広範な利用が期待できる。

Claims (17)

  1. 酢酸ニッケル、蟻酸ニッケル、アルカノールアミン系溶媒、グリコール系溶媒を主成分として含有するニッケル膜形成用塗布液であって、前記酢酸ニッケルと前記蟻酸ニッケルの含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対して蟻酸ニッケル10重量部以上であることを特徴とするニッケル膜形成用塗布液。
  2. 前記酢酸ニッケルと前記グリコール系溶媒の含有割合が酢酸ニッケル100重量部に対してグリコール系溶媒200重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  3. 前記蟻酸ニッケルと前記アルカノールアミン系溶媒の含有割合が蟻酸ニッケル100重量部に対してアルカノールアミン系溶媒50重量部以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  4. 前記アルカノールアミン系溶媒の沸点が150℃以上300℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  5. 前記アルカノールアミン系溶媒が、1−アミノ−2−プロパノール(沸点159.9℃)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(沸点165℃)、2−アミノエタノール(沸点171℃)、3−アミノ−1−プロパノール(沸点188℃)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(沸点244℃)、2,2−イミノジエタノール(沸点268.8℃)のいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  6. 前記グリコール系溶媒の粘度が60mPa・s以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  7. 前記グリコール系溶媒が、エチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  8. 室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒を更に含有し、塗布液の粘度が5〜30mPa・sの範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  9. 前記の室温での粘度が10mPa・s以下である溶媒が化学式RO(RO)H(RはCH、C、Cから選ばれる一種、RはC、Cから選ばれる一種)で表されるジアルキレングリコールモノアルキルエーテル溶媒であることを特徴とする請求項8に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  10. 前記ニッケル膜形成用塗布液に、更にバインダー成分、および/または界面活
    性剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  11. 前記バインダー成分および界面活性剤がアミノ基(−NH)やアミン基(−NHR、−NR;R、Rはアルキル基、アリール基等)を有することを特徴とする請求項10に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  12. 前記界面活性剤がHLB値(親水性−親油性バランス)10〜20のシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする請求項10又は11に記載のニッケル膜形成用塗布液。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のニッケル膜形成用塗布液を基板上に塗布し、乾燥した後、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下において200℃以上の温度で焼成することを特徴とするニッケル膜の製造方法。
  14. 前記乾燥が50〜220℃の温度で行われることを特徴とする請求項13に記載のニッケル膜の製造方法。
  15. 前記塗布がインクジェット印刷で行われることを特徴とする請求項13又は14に記載のニッケル膜の製造方法。
  16. 請求項13〜15のいずれか1項に記載のニッケル膜の製造方法で得られたことを特徴とするニッケル膜。
  17. 膜の比抵抗値が10mΩ・cm以下であることを特徴とする請求項16に記載のニッケル膜。
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