JP2008147642A - 希土類系永久磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】 接着性を改善した、希土類系永久磁石に関する。
【解決手段】 積層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石であって、めっき皮膜の最表層が膜厚0.1μm以上3μm以下のSnCu合金めっき皮膜であり、前記SnCu合金めっき皮膜の組成は、Snが35mass%以上55mass%以下で残部が実質的にCuである。本希土類系永久磁石を用いて作成した接合構造体はシリコーン系接着剤との組み合わせにおいて、良好な初期接着強度を持ち、耐湿性試験後においても接着強度の低下が少ない。
【選択図】なし

Description

本発明は、めっき皮膜を有する希土類系永久磁石に関する。特に、接着性を改善した、めっき皮膜を有する希土類系永久磁石に関する。
R−Fe−B系永久磁石(R:Yを含む希土類元素)などの希土類系永久磁石は、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で用いられ、近年その需要が増加している。
しかしながらR−Fe−B系永久磁石は反応性の高い希土類元素:Rを含むため、大気中で酸化、腐食されやすく、何の表面処理をも行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それにともなって磁石特性の劣化やばらつきを招く。さらに錆が発生した磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。上記の点に鑑み、希土類系永久磁石の表面処理としてNiめっき皮膜、Cuめっき皮膜あるいはその組み合わせによる防錆処理が特許文献1などに開示され、広く採用されている。
ところで最表面にNiめっきを有する希土類系永久磁石と他部材を接着剤によって接合した接合構造体を各種装置に組み込む際には、Niめっき皮膜と前記他部材とは接着剤を介して強い接着性が要求される。しかしながらNiめっき皮膜は使用状況によりアルミニウム皮膜に比べて接着性が劣る場合があり、接着不良が問題になる事態が発生することがある。
この問題を解決するために、Niめっき表面を有機カルボン酸で酸洗する技術が特許文献2に提案されている。この技術はNiめっき皮膜の接着性を回復させる方法としてすぐれている。
しかし、特許文献2に提案されている方法で接着した接合構造体を耐湿性試験下に放置すると、接着強度が低下してしまう。特に接着剤としてシリコーン系接着剤を用いると、その低下は顕著となる。
特開平1−321610号公報 特開2003−193273号公報
近年の電気機器、自動車用電装部品においては、磁石と他部材を接着剤によって接合した接合構造体が多く用いられている。このため、このような接合構造体において、接着強度の長期信頼性を保証することが必要となっている。最近では、磁石と他部材との接着直後における接着強度のみならず、接着後の接合構造体を船便輸送等の比較的高温高湿環境の状態で輸送した後に使用する場合を想定した接着強度等についても保証することが要求されている。例えば、電気機器、電装部品等で用いられる耐湿性試験(80℃×90%RH)に供した後の接着強度について、規格を定めるよう求められる場合が増加しつつある。
そこで本発明は、耐食性に優れ、耐湿性試験等の加速試験後においても接着強度の低下しない接着が可能となる皮膜を持った希土類系永久磁石を提供することを目的とする。
本発明者は上記の点に鑑み、耐湿性試験等の加速試験を行っても接着強度の低下しない接着が可能な皮膜に関する検討を行ったところ、特定の組成、膜厚のSnCu合金めっき皮膜を積層めっき皮膜の最外層に成膜した希土類系永久磁石は、接着剤にて他部材と接着後、前記耐湿性試験を施しても接着強度が低下せず、さらに、めっき皮膜硬度が高いので量産上の取り扱いが良好であることを知見し、本発明を完成するに至った。具体的には、希土類系永久磁石体表面に設けられた、少なくとも1層以上のCuめっき皮膜を含むめっき皮膜の上に、ごく薄いSnCu合金皮膜を供することによって、耐湿性試験後の、接着強度の低下が少ない接着が可能となる。
上記の知見に基づいてなされた本発明の希土類系永久磁石は、請求項1記載の通り、積層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石であって、めっき皮膜の最表層が膜厚0.1μm以上3μm以下のSnCu合金めっき皮膜であり、前記SnCu合金めっき皮膜の組成は、Snが35mass%以上55mass%以下で残部が実質的にCuであり、前記SnCu合金めっき皮膜の下層に少なくとも1層以上のCuめっき皮膜含む2層以上のめっき皮膜を有することを特徴とする。
また、請求項2記載の希土類系永久磁石は、請求項1に記載の希土類系永久磁石において、前記SnCu合金めっき皮膜の上層にさらに化成処理皮膜を有することを特徴とする。
また、請求項3記載の接合構造体は、請求項1または2に記載の希土類系永久磁石にシリコーン系接着剤を介して他部材を接合した接合構造体である。
また、請求項4記載の接合構造体は、請求項3記載の接合構造体において、前記希土類系永久磁石の形状がリング形状であることを特徴とする。
また、請求項5記載の製造方法は、希土類系永久磁石体表面に少なくとも1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上のめっき皮膜を成膜し、該少なくとも1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上のめっき皮膜上に、膜厚0.1μm以上3μm以下で組成がSnが35mass%以上55mass%以下であり残部が実質的にCuであるSnCu合金めっき皮膜を成膜することを特徴とする、希土類系永久磁石の製造方法である。
また、請求項6記載の製造方法は、請求項5記載の希土類系永久磁石の製造方法において、前記少なくとも1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上のめっき皮膜に対し、SnCuめっき成膜の前の工程で塩酸または硫酸による前処理を行った後、前記SnCu合金めっき皮膜を成膜することを特徴とする。
また、請求項7記載の製造方法は、請求項5または6に記載の希土類系永久磁石の製造方法において、前記SnCu合金めっき皮膜上にさらにリン酸またはリン酸塩による化成処理を施すことを特徴とする。
本発明によれば、希土類系永久磁石体の表面に成膜された積層めっき皮膜の最表層にSnCu合金めっき皮膜を有することで、該希土類系永久磁石と他部材を接着剤を用いて接着した接合構造体は、耐湿性試験後も高い接着強度を維持できる。
本発明の希土類系永久磁石は、2層以上の積層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石であって、めっき皮膜の最表層がSnCu合金めっき皮膜であることを特徴とする。
以下、本発明の詳細について説明する。
めっき膜の組成はSnが35mass%(22.3原子%)以上55mass%(39.5原子%)以下が望ましく、40mass%以上50mass%以下がさらに望ましい。Snが35mass%未満になると、Cu比率の増加により腐食しやすくなる。またSnが55mass%を超えるとSn比率の増加に伴い、めっき膜自体の硬度が急激に低下し、膜に傷がつきやすくなる。
前記組成のSnCu合金は脆性が大きく、膜厚の増加に伴い、膜内部で剥離したり、膜表面に突起が発生し、この突起が取り扱い時に剥離したりしてしまうという問題が生じやすい。剥離や突起は膜厚3μm超で発生しやすくなる。このためSnCuめっきの膜厚は3μm以下が望ましく、2μm以下で管理するのが更に望ましい。また、SnCu合金は非磁性であることから、希土類系永久磁石本来の磁気特性を発現するためにはめっき皮膜の膜厚は出来る限り薄い方が好ましい。SnCu合金めっき皮膜の接着性改善の効果は0.1μm以上あれば十分得ることができ、0.2μm以上2μm以下がさらに望ましい。
突起の発生を抑えるため、SnCuめっきの下地は平滑であることが望ましい。 下地めっきの平滑性は、表面粗さRmaxが0.5〜15μmであることが望ましく、0.5〜10μmがより望ましく、0.5〜5μmが更に望ましい。
前記SnCu合金めっき皮膜に対し、第三リン酸ソーダ等を用いて化成処理を行っても良い。化成処理条件は、例えば濃度が10g/L以上30g/L以下、液温20℃の第三リン酸ソーダ溶液に浸漬後、洗浄、乾燥すれば良い。このような化成処理を行うことにより、接着性を低下させることなく、SnCu合金めっき皮膜の変色を抑えることができる。
希土類系永久磁石はその線膨張係数が、例えばR−Fe−B系永久磁石の場合、C//方向で5×10−6、C⊥方向で−1.5×10−6と非常に小さい為、線膨張係数の大きい鉄系素材(例えば鉄の線膨張係数は12×10−6)などの他部材と、エポキシ系接着剤などの硬度の高い接着剤を用いて接着して接合構造体を作製した場合、加熱硬化の際に線膨張係数の差から発生する応力により、磁石に割れが発生することがある。この現象はR−Fe−B系リング磁石の内径に鉄系素材のヨークを挿入し接着剤を塗布しモーター用ロータとした場合に顕著で、接着剤の加熱硬化時に線膨張係数の大きな鉄系素材が膨張し磁石割れを起こす。この対策として、接着剤として硬度の低いシリコーン系接着剤が広く採用されている。
工業的には比較的短時間で硬化する付加反応形のシリコーン系接着剤が使用される場合が多い。シリコーン系接着剤はこのような応力を吸収し、磁石に割れが発生しにくい。しかしながら、シリコーン系接着剤を用いて作製した接合構造体は、高温高湿環境により急激に接着強度が低下し、特に磁石体の最表層にNiめっき皮膜を有する希土類系永久磁石の場合はその低下が顕著である。本発明のSnCu合金めっき皮膜を最表層に有する希土類系永久磁石を、シリコーン系接着剤を用いて他部材と接着した接合構造体は、この問題を解決し、耐湿性試験後も接着強度の低下が少なく、長期にわたり、安定した接着強度を保証することができる。
又接合構造体として接着する前に、耐湿試験に供した後に接着して、接着強度を測定しても、耐湿試験に供しないものと比較して強度が低下しない。
SnCu合金めっきを行う前に、下地のめっき皮膜に対し酸による活性化処理を行うことで、下地めっき皮膜とSnCuめっきの密着性をさらに向上させ、安定した生産をすることができる。アルカリ処理では脱脂効果はあるが、活性化は十分ではなく、またアルカリ処理は水洗浄で洗浄しにくく、表面に残差として残りやすく、下地のめっきとの間で剥離が発生する場合がある。酸としては塩酸または硫酸が好ましい。塩酸の濃度は10vol%以上50vol%以下が好ましい。10vol%未満では十分な活性化ができず、50vol%を超えるとNiめっきの変色により密着性が低下する恐れがある。
硫酸を使用する場合にも塩酸と同等の濃度範囲で使用すればよい。
また塩酸、硫酸以外の酸としては、有機酸である蓚酸、リン酸等も好適に使用できる。特に、SnCu合金めっきにピロリン酸系のメッキ液を使用する場合には、活性化に用いる酸にリン酸、ポリリン酸等を用いると、酸活性化後に水洗無しでそのままめっき工程に移っても、後工程のSnCuメッキ液への影響が少なく密着性が良好となる。
SnCu合金めっきのめっき浴は前記組成の膜が形成されるのであれば公知のものを使用することが出来る。たとえば、ピロリン酸浴、シアン浴、酸性浴などである。なお、猛毒のシアンを使用しないCu−Sn合金めっきの技術が特開2004−10907号公報に紹介されており、このような浴を使用するのが好ましい。
また、めっきの条件についても、請求項5記載の組成範囲にコントロールできる任意の条件を用いることができる。
めっき方法は、バレルめっき、ラックめっきを適宜使用できるが、めっきを行う希土類永久磁石がリング形状の場合には、リングの外径に電流が集中しにくく、外径部と内径部の膜厚を均一にしやすいことからラックめっきが望ましい。SnCu合金めっきの電流密度はめっき液の種類、バレルめっき、ラックめっき等めっきの方式により適宜選択できるが、0.1A/dm以上10A/dm以下が好ましく、0.5A/dm以上5A/dm以下がさらに好ましい。
接着性の良さを知る指標の一つとして濡れ性の評価が用いられている。この評価方法は、濡れ張力試験液を用いて試験体表面の濡れ性を調べる方法であり、この指数が高いほど一般的に接着性は良くなるといわれている。本発明の希土類系永久磁石は、接着剤にて他部材と接着後、前記耐湿性試験を施しても接着強度が低下しないだけでなく、他部材と接着する前に表面が酸化した場合でも加熱処理により接着性を容易に回復することができる。本発明の希土類永久磁石に他部材を接着しないで長期間保管し、めっき皮膜表面の濡れ性が低下した状態にて、150℃×90分の加熱処理試験を施した場合、例えば、和光純薬製濡れ張力試験液を用い評価すると、その濡れ性を評価する指数は、試験前40mN/mに対して試験後73mN/mに回復することが確認された。量産時には、通常、めっき後の表面酸化を抑えるために、化成処理等や出荷時に真空保存(真空パック等)を行う等の耐酸化処理を行うことが多い。しかし、本発明の希土類系永久磁石においては、接着性保証の観点から前記加熱処理による接着性回復処理を施せば前記耐酸化処理等を必ずしもを行う必要性は無い。
SnCu合金めっき皮膜の下地は、少なくとも1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上めっき皮膜である。耐食性改善の為には、Niめっき皮膜との組み合わせによる2層以上のめっき皮膜が望ましい。
以下に、SnCuめっきの下地めっきの望ましい形態を示す。
Cuめっきは、ピロリン酸浴、硫酸浴、シアン浴、無電解浴などのめっき浴が選択できる。中でもピロリン酸浴による電界Cuめっきは、電気伝導性及び柔軟性、展延性に優れており、膜の付き周り性が良好である。このため、ピロリン酸浴による電気メッキはリング形状物のめっきに好適に使用できる。ここでいう膜の付き周り性とは、めっきが素材を被覆できる能力、例えば、被めっき物の凹部やリング磁石の内径部などの電流密度が低くなってしまう部分までめっきが付着する能力を示す。
またピロリン酸浴による電気めっきはセル構造がなく平滑性に優れており、この上にめっきするSnCuめっきの平滑性を保つことができる。
ピロリン酸Cu浴を用いた電界めっきを行う場合、さらにその下地として導電性保護層を含むことが好ましい。ピロリン酸Cu浴は浴中に遊離Cuイオンを多く含むため、R−Fe−B系磁石をピロリン酸浴に直接浸漬すると、磁石の表面を構成するFeなどの電気的に卑な金属と電気的に貴なCuとの間の置換めっき反応により、磁石の表面に密着性の悪いCu皮膜が形成される恐れがある。このためピロリン酸Cu浴によるめっき膜の下地としては、R−Fe−B系磁石体表面に直接密着性に優れためっき皮膜を形成できる、電界Niめっき膜、シアン浴による電界Cuめっき膜が望ましく、特に取り扱いが簡便で安定性に優れたNiめっき膜が望ましい。
Cuめっき膜は大気中で酸化しやすいため、Cuめっき膜の上にNiめっきをおこない、さらにSnCuめっきを行うと、耐食性の面で更に好適である。
Niめっきの場合、電気めっきであればワット浴、スルファミン酸浴、中性浴などのめっき浴を用いる。また膜厚均一性の高い無電解めっきを行う事も出来る。
また、ピロリン酸Cuめっきの上に被覆されたNiめっきは、表面の平滑性に優れ、その上に皮膜されたSnCuめっきの平滑性を保つことができるので、取り扱い時のめっき膜の脱落を抑制できる。
Niめっき、Cuめっきのめっき方法はバレルめっき、ラックめっき等、めっきするものの形状、重量、大きさによって選択すればよい。
ただし希土類永久磁石がリング形状の場合には、リングの外径に電流が集中しにくく、外径部と内径部の膜厚を均一にしやすいことからラックめっきが望ましい。
また電気めっきを選択する場合にはその電流密度はめっき液の種類、めっき方法によって決めればよく、0.1A/dm以上10A/dm以下が好ましく、0.5A/dm以上5A/dm以下が更に好ましい。
なお、SnCuめっきの下地めっきは少なくとも1層以上のCuめっきを含み2層以上であればその構成は任意であり、実施例の構成に限定されない。
磁石のめっき前処理としては任意の方法を用いることができ、硝酸と他の酸の混酸、硫酸、塩酸、有機酸等、また電解エッチングも選択できる。
本発明はめっきが可能な磁石であれば公知の希土類系永久磁石全てに適用できる。例えば、焼結磁石にも、ボンド磁石にも適用できる。また、その組成はR−Fe−B系永久磁石にこだわらず、R−Co系永久磁石にも、R−Fe−N系永久磁石にも適用できる。
R−Fe−B系永久磁石の粉末冶金法での製造方法について述べる。その組成は、例えば、主要成分のRとFeとBの合計を100mass%として、R:24mass%以上34mass%以下(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種であり、Nd,Dy及びPrの少なくとも1種を必ず含む)、B:0.6mass%以上1.8mass%以下、Fe:残部の組成が挙げられる。Feはその一部がCoで置換されていても良く、また、3mass%以下程度のAl、Si、Cu、Ga、Nb、Mo、Wなどの添加元素を含んでいても良い。
R:24mass%未満では、磁気特性の内、残留磁束密度B、保磁力HcJが低下する。また34mass%超では焼結体内部の希土類に富む相の量が多くなり、且つ形態も粗大化して耐食性が低下する。B:0.6mass%未満の場合、主相であるRFe14B相の形成に必要なB量が不足し、軟磁性的な性質を有するRFe14相が生成し保持力が低下する。一方B量が1.8mass%を超えると、非磁性相であるBに富む相が増加して残留磁束密度Brが低下する。
粉砕は粗粉砕と微粉砕に分かれ、粗粉砕はスタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル、ディスクミル等または水素吸蔵法で行うのが好ましい。微粉砕はジェットミル、振動ミル、ボールミル等で行うのが好ましい。いずれも酸化を防ぐために、有機溶媒や不活性ガスを用いて非酸化雰囲気中で行うのが好ましい。粉砕粒度は2〜8μm(F.S.S.S.)が好ましい。2μm未満では磁粉の活性度が高いため、容易に酸化しやすい。焼結時の変形が大であり磁気特性も悪化する。8μm超では焼結後に得られる結晶粒径が大きくなり容易に磁化反転が起こり、保磁力の低下を招く。
成形は磁場中で行う。
磁場強度は159kA/m以上が好ましく、より好ましくは239kA/m以上が好ましい。159kA/m未満では磁粉の配向が不十分であり、必要な磁気特性が得られない。成形圧は0.5〜2ton/cmが望ましい。0.5ton/cm未満では成形体の強度が弱く、こわれやすい。また2ton/cm超では磁粉の配向が乱れ、磁気特性が低下する。焼結は、真空又はアルゴン雰囲気中で1000〜1150℃で行うのが好ましい。1000℃未満では焼結不足により、必要とされる密度が得られず磁気特性が低下する。1150℃超では過焼結により、変形や磁気特性の低下が発生する。
焼結の後、熱処理及び加工を行う。なお加工は熱処理の前に行うこともできる。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
〈磁石の作製〉
(実施例1)
公知の方法により、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系焼結磁石体を作製した。この焼結磁石体の室温における磁気特性はB=1.2T(12kG)、HcJ=1989kA/m(25kOe)、(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。次に前記焼結磁石体を30mm×15mm×3mmの直方体形状に加工後、バレル研磨を施した。
前記研磨後の焼結磁石体を水溶性防錆剤に浸漬後、約60℃に加温して乾燥した。こうして得られた試料についてめっき前処理として5vol%の硝酸による第1前処理、その後過酸化水素10vol%、酢酸25vol%の混酸による第2前処理を行い、その後以下の順でNi−Cu−Ni3層めっき皮膜を成膜した。
[1層目Niめっき皮膜]
めっき浴:ワット浴(硫酸Ni300g/L、塩化Ni50g/L、ホウ酸50g/L)
浴温:50℃
電流密度:1A/dm2
膜厚:3μm 成膜後水洗。
[2層目Cuめっき皮膜]
めっき浴:ピロリン酸Cu浴(ピロリン酸Cu80g/L、金属Cu30g/L、ピロリン酸カリウム300g/L、アンモニア2ml/L、光沢剤(奥野製薬ピロトップPC)1ml/L)
浴温:55℃
電流密度:1A/dm2
膜厚:7μm 成膜後水洗。
[3層目Niめっき皮膜]
めっき浴:ワット浴(硫酸Ni300g/L、塩化Ni50g/L、ホウ酸50g/L、光沢剤(サッカリン系)10ml/L)
浴温:50℃
電流密度:1A/dm2
膜厚5μm 成膜後水洗。
以上のようにして成膜したNi−Cu−Ni3層めっき皮膜を有する焼結磁石体表面に、以下の条件でSnCu合金めっき皮膜を成膜し、本発明の希土類系永久磁石を得た。
SnCuめっき浴:ピロリン酸第一スズ20g/L、ピロリン酸Cu10g/L、 ピロリン酸カリウム180g/L、光沢剤、カチオン界面活性剤、表面張力調整剤、浴安定剤等添加
浴温:20℃
電流密度:1A/dm2
膜厚1μm 成膜後水洗乾燥。
SnCuの組成はCu:Sn=55:45mass%であった。
(実施例2)
SnCuの膜厚を0.1μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(実施例3)
SnCuの膜厚を0.2μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(実施例4)
SnCuの膜厚を2μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(実施例5)
SnCuの膜厚を3μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(実施例6)
実施例1で使用したものと同じ焼結磁石体に対し、実施例1と同じ方法で前処理を施し、実施例1と同じ方法で1層目のNiめっき皮膜を成膜し、その後膜厚を12μmとしたこと以外は実施例1と同じ方法で2層目のCuめっき皮膜を成膜してNi−Cu2層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
以上のようにして成膜したNi−Cu2層めっき皮膜を有する焼結磁石体表面に、実施例1と同じ条件でSnCu合金めっき皮膜を成膜し、本発明の希土類系永久磁石を得た。
(実施例7)
実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作成した後、第三リン酸ソーダ10g/L溶液に3分間浸漬し、水洗、乾燥した。
(実施例8)
実施例1と同じ方法で、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜を成膜し、その後、
10vol%塩酸に浸漬、水洗した。
以上のようにして成膜したNi−Cu−Ni3層めっき皮膜を有する焼結磁石体表面に、実施例1と同じ条件でSnCu合金めっき皮膜を成膜し、本発明の希土類系永久磁石を得た。
(実施例9)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成 Cu:Sn=65:35mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(実施例10)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成 Cu:Sn=45:55mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(実施例11)
実施例1と同じ方法で、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜を成膜し、その後、
10vol%硫酸に浸漬、水洗した。
以上のようにして成膜したNi−Cu−Ni3層めっき皮膜を有する焼結磁石体表面に、実施例1と同じ条件でSnCu合金めっき皮膜を成膜し、本発明の希土類系永久磁石を得た
(実施例12)
実施例1と同じ方法で、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜を成膜し、その後、水で希釈し、pHを1.3に調整したポリリン酸に浸漬した。その後水洗しないでSnCuめっきを行った以外は、実施例1と同じ条件でSnCu合金めっき皮膜を成膜し、本発明の希土類系永久磁石を得た。
(比較例1)
SnCuの膜厚を5μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例2)
実施例1と同じ方法でNi−Cu−Ni3層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製し、10vol%の硫酸で洗浄、水洗し、さらに10mass%の苛性ソーダで洗浄、水洗、その後乾燥した。
(比較例3)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成Cu:Sn=80:20mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。Cuの比率が高いので変色を防止するため、ベンゾトリアゾールで防錆処理を行った。
(比較例4)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成Cu:Sn=30:70mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例5)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成 Cu:Sn=10:90mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例6)
実施例1で使用したものと同じ焼結磁石体に対し、実施例1と同じ方法で前処理を施し、実施例1と同じ方法で1層目のNiめっき皮膜を成膜し、膜厚を12μmとしたこと以外は実施例1と同じ方法で2層目のCuめっき皮膜を成膜して、Ni−Cu2層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
その後、10vol%の硫酸で洗浄、水洗後、ベンゾトリアゾールにて防錆処理を行った。
(比較例7)
実施例1と同じ方法で、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜を成膜し、その後、3g/Lの蓚酸溶液(20℃)に3分間浸漬し、水洗後乾燥した。
(比較例8)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成 Cu:Sn=67:33mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。出来上がった膜は銅の成分が多く、色調が黄銅色であったため、10vol%の硫酸で洗浄、水洗後、ベンゾトリアゾールにて防錆処理を行った。
(比較例9)
SnCuめっきの液組成を調整し膜組成 Cu:Sn=40:60mass%としたこと以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例10)
SnCuの膜厚を3.5μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例11)
SnCuの膜厚を4μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例12)
SnCuの膜厚を0.05μmとした以外は実施例1と同じ方法で多層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石を作製した。
(比較例13)
実施例1と同じ方法で、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜を成膜し、その後、
100g/L苛性ソーダに浸漬、水洗した。
以上のようにして成膜したNi−Cu−Ni3層めっき皮膜を有する焼結磁石体表面に、実施例1と同じ条件でSnCu合金めっき皮膜を成膜し、本発明の希土類系永久磁石を得た
〈接着性試験〉
実施例1〜実施例12、比較例1〜比較例13で作製した磁石を、シリコーン系接着剤(東レ・ダウコーニング製SE1750:付加反応型のシリコーン系接着剤)を用いてSUS304製のヨークに接着して接合構造体を作製した。硬化条件は、150℃×90分(温度は接触型温度計で磁石温度を測定)で、1条件につき各10ケの接合構造体を作製した。そのうち、5ケは接着直後に圧縮せん断強度を測定し、残りの5ケは高温高湿80℃×90%×24時間の耐湿性試験後に圧縮せん断強度を測定(いずれの接合構造体も室温に戻った状態にて圧縮せん断強度を測定)した。圧縮せん断強度はTOYO BALDWIN(TENSILON UTM−I−5000C)を用いて測定した。圧縮速度は1.5mm/minとした。また試験後の剥離面の接着剤の状態、および、試験に伴う取扱傷の発生有無について目視観察した。試験結果を表1に示した。なお、表中の接着強度(圧縮せん断強度)は各5ケの測定値の平均値を示す。
実施例1〜11については接着直後も耐湿性試験後も良好な接着強度を示し、又接着剤の剥離も全面凝集破壊となったことから、本発明の希土類系永久磁石は、接着剤を用いて他部材と接着後に耐湿性試験を行っても、接着強度の低下が少ないことがわかった。
また試験後に、試験に供したほかの部分(接着面以外)に傷は発生していなかった。
比較例1については膜の脆性が高く、接着後も耐湿試験後もSnCu膜が破壊されSnCu膜の部分的剥離が見られた。
比較例2,3は、接着直後の接着強度は高く、剥離モードも凝集破壊となったが、耐湿試験後は強度が急激に低下し、接着剤が磁石表面に残っていない界面剥離となった。比較例4,5、9については接着性については問題が無かったが、接着等のハンドリングによる傷が発生した。このような傷は皮膜の破損や寸法精度の低下を招く等、希土類系永久磁石の製品価値を落とすこととなり、量産上の取扱いを煩雑とする要因となる。比較例6,7、8は接着直後の接着強度は高く、剥離モードも凝集破壊となったが、耐湿性試験後は接着強度が低下し、接着剤が磁石側に残らない、界面剥離となった。
比較例10,11については接着直後および耐湿試験後の接着強度が低く膜の部分的な剥離が見られた。
比較例12については、接着直後の接着強度は高く、剥離も凝集破壊となったが耐湿試験後は磁石側の界面剥離となり接着強度は低下した。SnCuの膜厚が0.05μmでは接着性向上の効果は認められなかった。
比較例13については、接着直後の接着強度試験でに1/5ヶ、SnCuめっきの部分的な剥離が見られた。耐湿試験は2/5ヶにSnCuめっきの部分的な剥離が見られた。
SnCuめっき前の苛性ソーダによる処理の残差が残ったまま、めっきされたため、密着性の悪い皮膜が出来たためと考えられる。
Figure 2008147642
(実施例13)
公知の方法で、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系のラジアル配向を持つリング型焼結磁石体を作成した。この永久磁石体の室温における磁気特性はBr=1.2T(12kG),Hcj=1989kA/m(25kOe),(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
前記リング型焼結磁石体に加工を施し外径40mm×内径33mm×高さ13.5mmの磁石素材を得た。防錆剤に浸漬し乾燥後、実施例1と同じ条件でめっきを施し、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜の上層にSnCu合金めっき皮膜を有するリング型焼結磁石体を得た。SnCu合金めっき皮膜の膜厚については、磁石の内径部分を測定した。
上記リング型焼結磁石体の内径部分に、それぞれ直径32.9mmのSUS304製の接着強度測定用ヨークを接着し、10ヶの本発明の接合構造体を作製した。 この接合構造体はシリコーン系接着剤(東レ・ダウコーニング製 SE1750)を用い150℃×90分加熱硬化した。
接着剤として加熱硬化型のエポキシ系接着剤を用い150℃×90分加熱硬化を行った以外は実施例13と同じ接合構造体を作製し、比較例14とした。
硬化後それぞれの接合構造体を目視確認したところ、実施例13についてはリング型焼結磁石体に割れは発生していなかったが、比較例14については線膨張係数の差から割れが発生していた。目視結果を表2に示した。
実施例13の接合構造体のうち、5ケは接着直後に圧縮せん断強度を測定した。残りの5ケは高温高湿80℃×90%×24時間の耐湿性試験後に圧縮せん断強度を測定した。なお、圧縮せん断強度はTOYO BALDWIN(TENSILON UTM−I−5000C)を用いて測定した。圧縮速度は1.5mm/minとした。また試験後の剥離面の接着剤の状態について観察した。
圧縮せん断強度の測定はリング型焼結磁石体のみを固定する図1に示す接着強度測定治具3に前記リング型焼結磁石体2と接着強度測定用ヨーク1とからなる接合構造体を載置し図2の様に白抜き矢印方向に所定圧力を加えて行った。その結果、上記耐湿性試験後にも接着強度の低下は少なく、剥離面は接着剤の凝集破壊面となっていた。なお、表中の接着強度(圧縮せん断強度)は各5ケの測定値の平均値を示す。
Figure 2008147642
(実施例14)
実施例13と同じ接合構造体を更に5ケ作製し、80℃×90%×1000時間の耐湿性試験に供した後、上記と同じ圧縮せん断強度を測定した。
上記耐湿性試験に供した接合構造体の接着強度(5ケの圧縮せん断強度測定値の平均値)は4.3MPaであり、実施例12にて測定した耐湿性試験(80℃×90%×24時間)後の接着強度4.8MPaと比較してもその接着強度の低下は軽微であった。また剥離した面の接着剤の剥離モードを確認したが、全てのサンプルについて、接着剤の凝集破壊であった。
また上記耐湿試験後の希土類系永久磁石は、めっき膜の剥離、めっき膜のふくれ等が観察されず良好な耐食性を示した。
(実施例15)
公知の方法で、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系のラジアル配向を持つリング型焼結磁石体を作成した。この永久磁石体の室温における磁気特性はBr=1.2T(12kG),Hcj=1989kA/m(25kOe),(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
前記リング型焼結磁石体に加工を施し外径40mm×内径33mm×高さ13.5mmの磁石素材を得た。防錆剤に浸漬し乾燥後、実施例1と同じ条件でめっきを施し、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜(各層の膜厚は実施例1と同じ)の上層に膜厚1μmのSnCu合金めっき皮膜を有するリング型焼結磁石体を得た。SnCu合金めっき皮膜の膜厚については、磁石の内径部分を測定した。
前記リング型焼結磁石体を30℃×70%×500時間の耐湿性試験に供した後、リング型焼結磁石体の内径部分に、それぞれ直径32.9mmのSUS304製の接着強度測定用ヨークを接着し、10ヶの本発明の接合構造体を作製した。この接合構造体はシリコーン系接着剤(東レ・ダウコーニング製 SE1750)を用い150℃×90分加熱硬化した。
30℃×70%は熊谷市における2004年〜2006年までの6月から8月までの平均気温と平均湿度 25.4℃、70.6%から決定した。
0時間から500時間経過までのSnCuめっきの表面酸化の変化を図3に示した。
接着後について5ヶ、80℃×90%×24時間の耐湿試験後に5ヶそれぞれ圧縮せん断強度を測定した。
せん断強度の測定結果は5ヶの平均とした。
その結果、接着後のせん断強度は4.9Mpaであった。耐湿試験後のせん断強度は4.8Mpaであり、せん断強度の低下はほとんど無かった。目視確認の結果、剥離面は接着後についても、耐湿試験後についても接着剤の全面凝集破壊となった。
前記リング型焼結磁石体について30℃×70%×0時間、24時間、250時間、500時間経過後の表面分析をESCA(島津−850)にて分析した。
分析結果を表3に示した。
0時間から500時間まで、表面酸化が進むことはなかった。 SnCuメッキの安定した耐酸化性により腐食環境に暴露した場合にも、接着強度の低下が少ないと考えられる。
Figure 2008147642
(実施例16)
公知の方法で、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系のラジアル配向を持つリング型焼結磁石体を作成した。この永久磁石体の室温における磁気特性はBr=1.2T(12kG),Hcj=1989kA/m(25kOe),(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
前記リング型焼結磁石体に加工を施し外径40mm×内径33mm×高さ13.5mmの磁石素材を得た。防錆剤に浸漬し乾燥後、実施例1と同じ条件でめっきを施し、Ni−Cu−Ni3層めっき皮膜(各層の膜厚は実施例1と同じ)の上層に膜厚1μmのSnCu合金めっき皮膜を有するリング型焼結磁石体を得た。SnCu合金めっき皮膜の膜厚については、磁石の内径部分を測定した。
前記リング型焼結磁石体を80℃×90%×24時間の耐湿性試験に供した後、リング型焼結磁石体の内径部分に、それぞれ直径32.9mmのSUS304製の接着強度測定用ヨークを接着し、10ヶの本発明の接合構造体を作製した。この接合構造体はシリコーン系接着剤(東レ・ダウコーニング製 SE1750)を用い150℃×90分加熱硬化した。
接着後について5ヶ、80℃×90%×24時間の耐湿試験後に5ヶそれぞれ圧縮せん断強度を測定した。
せん断強度の測定結果は5ヶの平均とした。
その結果、接着後のせん断強度は5.0Mpaであった。耐湿試験後のせん断強度は4.9Mpaであり、せん断強度の低下はほとんど無かった。目視確認の結果、剥離面は接着後についても、耐湿試験後についても接着剤の全面凝集破壊となった。
本発明は、接着剤を用いて他部材と接着後、耐湿性試験を行っても、接着強度の低下が少ないめっき皮膜を有する希土類系永久磁石を提供できる点、特に、リング形状の磁石をシリコーン系接着剤を用いて接着した場合においても、接着時の割れも無く、長期に信頼できる接着改善効果を有する接合構造体を提供できる点において産業上の利用可能性が大である。
接着強度測定治具を示す上面図及び側面図 圧縮せん断強度測定時の様子を示す斜視説明図
符号の説明
1 接着強度測定用ヨーク
2 リング型焼結磁石体
3 接着強度測定治具

Claims (7)

  1. 積層めっき皮膜を有する希土類系永久磁石であって、めっき皮膜の最表層が膜厚0.1μm以上3μm以下のSnCu合金めっき皮膜であり、前記SnCu合金めっき皮膜の組成は、Snが35mass%以上55mass%以下で残部が実質的にCuであり、前記SnCu合金めっき皮膜の下層に少なくとも1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上のめっき皮膜を有することを特徴とする、希土類系永久磁石。
  2. 前記SnCu合金めっき皮膜の上層にさらに化成処理皮膜を有することを特徴とする、請求項1に記載の希土類系永久磁石。
  3. 請求項1または2記載の希土類系永久磁石にシリコーン系接着剤を介して他部材を接合した接合構造体。
  4. 前記希土類系永久磁石の形状がリング形状であることを特徴とする、請求項3記載の接合構造体。
  5. 希土類系永久磁石体表面に少なくとも1層以上のCuめっき皮膜含む2層以上のめっき皮膜を成膜し、該1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上のめっき皮膜上に、膜厚0.1μm以上3μm以下で組成がSnが35mass%以上55mass%以下であり残部が実質的にCuであるSnCu合金めっき皮膜を成膜することを特徴とする、希土類系永久磁石の製造方法。
  6. 前記1層以上のCuめっき皮膜を含む2層以上のめっき皮膜に対し、SnCuめっき成膜の前の工程で塩酸または硫酸による前処理を行った後、前記SnCu合金めっき皮膜を成膜することを特徴とする、請求項5記載の希土類系永久磁石の製造方法。
  7. 前記SnCu合金めっき皮膜上にさらにリン酸またはリン酸塩による化成処理を施すことを特徴とする、請求項5または6記載の希土類系永久磁石の製造方法。
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