JP2008251648A - R−Fe−B系永久磁石の製造方法 - Google Patents

R−Fe−B系永久磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
耐食性に優れ、耐湿性試験等の加速試験を行った後にも接着強度の低下が少なく、耐食性能の高い化成皮膜を形成できるR−Fe−B系永久磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】
化成皮膜を有するR−Fe−B系永久磁石の製造方法において、R−Fe−B系永久磁石の表面を硝酸塩と硫酸の混合液を用いて前処理をおこなった後に化成処理を行う。本方法によって製造された化成皮膜を有する磁石は、化成皮膜の耐食性も良好で、接着性が良く、耐湿試験後にも接着強度の低下が少ない。
【選択図】なし

Description

本発明は、化成皮膜を有するR−Fe−B系永久磁石の製造方法に関する。
R−Fe−B系永久磁石(R:Yを含む希土類元素)は、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気特性を有していることから、今日様々な分野で用いられ、近年その需要が増加している。
しかしながらR−Fe−B系永久磁石は反応性の高い希土類元素:Rを含むため、大気中で酸化、腐食されやすく、何の表面処理をも行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それにともなって磁石特性の劣化やばらつきを招く。
このため錆が発生した磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。上記の点に鑑み、R−Fe−B系永久磁石の表面処理としてNiめっき皮膜、Cuめっき皮膜あるいはその組み合わせによる防錆処理が特許文献1などに開示され、広く採用されている。
しかし、R−Fe−B系永久磁石の形状がラジアルリング磁石や極異方性リング磁石の場合、リング形状の磁石に電気めっきを行おうとすると、電流の集中するリング外周面や端面は成膜速度が速くなり結果としてめっき膜が厚くなる。反面リング内周面は電流が流れにくく成膜速度が遅い、外周面や端面に比べてめっき膜が薄くなる。内径寸法が小さくなるほど、またリング磁石の軸方向の長さが長くなるほどこの傾向は顕著となる。このとき酸性〜弱アルカリ性のめっき液を使用していると場合によってはめっき液によりリング内周面が腐食され、リング内周面の耐食性が悪化し、不具合が発生する場合がある。
内周面の膜厚を厚くするために、全体の膜厚を厚くすると、外周面や端面の膜厚が厚くなり寸法精度が保てない不具合が発生する。
引っかけ法によるメッキの場合、内径膜厚を厚くするために、補助電極等のめっき治具の改善で対応可能だがコストアップとなる。また無電解めっきは、薬液のコントロールが難しく膜厚などの品質管理が困難であり、薬液の値段も高く結果としてめっきコストが高くなってしまう。
金属めっきは膜が硬く、膜応力も大きいため、R−Fe−B系永久磁石との線膨張係数の差から、温度変化の激しい環境でははヒートショックによりめっき膜に割れが入って、腐食の原因となることがある。(Niの線膨張係数 13.7×10−6
R−Fe−B系永久磁石をローターに貼り付けて高速回転するモーターを構成する場合は、何らかの原因で磁石が割れた場合の磁石の飛散によるモーターロック防ぐために、R−Fe−B系永久磁石をローターに組み立てた後に、樹脂カバーや金属カバーをするといった方法を採用している。
この場合、樹脂カバーや金属カバーと焼結磁石体の間には僅かなすき間があり、その僅かなすき間に水分が滞留しやすいため、水分を含有しやすい有機樹脂皮膜をR−Fe−B系永久磁石体の表面処理として採用すると、かえって滞留する水分が、樹脂カバーや金属カバーと磁石素材に挟まれた樹脂皮膜中に、長く留まり、R−Fe−B系永久磁石の耐食性を劣化させる場合がある。
このような視点から化成皮膜のみを施したR−Fe−B系永久磁石をヨークに組み立てた後に樹脂カバーや金属カバーで覆う方法を採用することで、組み立て品として高い防食性と、耐ヒートショック性を持たせる場合がある。この場合、R−Fe−B系永久磁石の表面に樹脂やめっきを、皮膜として有しないことが大きな特徴となる。
特許文献2にはR−Fe−B系永久磁石の化成皮膜に関する技術が開示されている。
ところで最表面に化成皮膜を有するR−Fe−B系永久磁石と他部材を接着剤によって接合した接合構造体を各種装置に組み込む際には、化成皮膜と前記他部材とは接着剤を介して強い接着性が要求される。表面にめっき、樹脂皮膜といったある程度の厚さをもつ皮膜の場合には皮膜組成や皮膜構造と接着剤との相性が接着性に大きく寄与している。特許文献3にはNiめっきを有機カルボン酸で洗浄し接着性を改善する技術が紹介されている。
化成皮膜は、皮膜が薄い。R−Fe−B系永久磁石表面に形成され、実用に耐える厚膜の化成皮膜も未開発である。このため化成処理前の皮膜の清浄度、あるいは磁石そのものの表面構造がR−Fe−B系永久磁石と、他部材との接着性に大きく影響を与えている。
また化成皮膜は、皮膜の耐食性が低いため、化成皮膜の接着性には、化成皮膜の耐食性と、下地のR−Fe−B系永久磁石の耐食性が大きく影響している。
化成皮膜をほどこしたR−Fe−B系永久磁石を接着剤を介して他部材と接合する場合の接着性はNiめっき皮膜や樹脂皮膜と比べて劣るものではないが、さらに改善する必要がある。
特開平1−321610号公報 特開2004−327966号公報 特開2003−193273号公報
近年の電気機器、自動車用電装部品においては、磁石と他部材を接着剤によって接合した接合構造体が多く用いられている。このため、このような接合構造体において、接着強度の長期信頼性を保証することが必要となっている。最近では、磁石と他部材との接着直後における接着強度のみならず、接着後の接合構造体を船便輸送等の比較的高温高湿環境の状態で輸送した後に使用する場合を想定した接着強度等についても保証することが要求されている。例えば、電気機器、電装部品等で用いられる耐湿性試験(80℃×90%RH)に供した後の接着強度について、規格を定めるよう求められる場合が増加しつつある。
そこで本発明は、耐食性に優れ、耐湿性試験等の加速試験後においても接着強度の低下が少ない化成皮膜を持ったR−Fe−B系永久磁石を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために本発明者らは種々の検討を行った結果、R−Fe−B系永久磁石の表面を、硝酸塩と硫酸の処理液を用いて前処理した後に化成処理を行う事で、耐湿試験後にも接着性の良好なR−Fe−B系永久磁石が得られることを見出した。
めっきの前処理の場合には、下地であるR−Fe−B系永久磁石の表面を荒らすことで、アンカー効果により、めっき膜の密着強度を向上させている。
化成皮膜の場合には、化成処理の後に、樹脂皮膜を成膜する場合や、樹脂の接着剤を介して他部材と接合する場合には、必ずしもアンカー効果が膜との密着性や樹脂との接着性に寄与するわけではなく、アンカー効果が少ない場合でも、化成皮膜上の水酸化物と、樹脂との間の結合状態により、強度が確保される。
特に本願発明に係る焼結金属の場合には、むしろ結晶粒界を腐食する事で、結晶粒界間の強度が弱まり、結晶粒界ではがれることが接着剥離の原因となる場合がある。このため耐湿試験後の接着性については、化成処理後の結晶粒界の強さが接着性に寄与しているといえる。
このような知見から本発明者らは、硝酸によって前処理した後に、化成処理を施したR−Fe−B系永久磁石に、電着塗装を施し、耐食性を評価したところ、表面にきわめて細かいフクレが発生し、樹脂の下地としての化成処理の前処理としては、硝酸は適さないと考えた。
また同様の工程で、化成処理まで行った希土類焼結磁石の耐湿試験後には、赤錆の発生が多く見られた。硝酸は酸化型の酸であり、化成処理前に磁石表面に形成された酸化膜の影響が大きく、化成皮膜の形成が不十分であったと考えた。
結晶粒界の腐食が少なく、なお腐食後の面に酸化膜が形成されたとしても、その酸化膜は化成処理の初期過程で起こる腐食により除去される程度に薄く、その後の化成皮膜の形成に影響がない前処理液について鋭意検討した。
本発明は、上記知見にもとづいてなされたものであり、
化成皮膜を有するR−Fe−B系永久磁石の製造方法において、R−Fe−B系永久磁石の表面を硝酸塩と硫酸の混合液からなる処理液を用いて前処理した後に化成処理を行うことを特徴とするR−Fe−B系永久磁石の製造方法であり、R−Fe−B系永久磁石を加工後に熱処理を行いその後に硝酸塩と硫酸の混合液で前処理し化成処理を施すことを特徴とするR−Fe−B系永久磁石の製造方法である。
本発明によれば、R−Fe−B系永久磁石の表面を硝酸塩と硫酸の混合液からなる処理液で前処理し清浄化した後に化成処理を行うことで、耐食性にすぐれ、前記R−Fe−B系永久磁石と他部材を接着剤を用いて接着した接合構造体は、耐湿性試験後も高い接着強度と耐食性能を維持できるR−Fe−B系永久磁石の製造方法を提供できる。
本発明に係るR−Fe−B系永久磁石の製造方法は、化成処理工程において、硝酸塩と硫酸の処理液をもちいて、前処理しその後化成処理を行うことを特徴としている。本発明の製造方法によって製造されたR−Fe−B系永久磁石は接着剤を使用して他部材と接着した際にも高い接着強度を有し、工業生産上きわめて有益である。
以下、本発明の詳細について説明する。
この発明において、硝酸塩としては硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が利用でき、硝酸塩の水溶液濃度は硝酸塩が0.1mol/L未満では主相の腐食が十分ではなく、1.0モl/L以上を超える場合にはその効果が飽和し、経済的でない、0.1〜1.0mol/Lが望ましい。また処理液の硫酸濃度は硫酸濃度が0.2mol/L未満では、エッチング速度が遅すぎ、また2.0mol/Lを超えるとエッチング速度が速すぎてコントロールが難しい。このため硫酸の濃度は0.2〜2.0mol/Lが望ましい。
この発明に係る処理液には添加剤として、過酸化水素5%以下、あるいはスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤5%以下、あるいはインヒビターを加えても良い。過酸化水素については、酸洗中にNO が増加するのでH2O2にて還元作用を起こさせてNO に変化させ、すなわち亜硝酸イオンを硝酸イオンに戻し酸洗液中の硝酸量を一定に保つと同時に、初期磁石表面を清浄化する効果がある。インヒビターについては(エチル)チオ尿素やブチンジオール等があげられ、アルコール系を用いることで、磁石表面の濡れ性を上げ、油分を取り除き表面を清浄化する効果が期待できる。
前処理条件としては、浴温度は常温〜50度が好ましい。又時間については処理液の濃度、温度によって適宜調節すれば良いが、10分以下とするのが望ましい。
また前処理時にエアーバブリングをしても良い。
前処理後の水洗についてはイオン交換水を用いるのがのぞましい。
前処理後の水洗には超音波の併用は、必ずしも必要としないが、表面清浄度を上げるためには行うのが好ましく、接着性、耐食性の向上に効果がある。
化成処理の種類は特に限定されるものではないが、リン酸亜鉛系、リン酸鉄系また公知のリン酸塩を使用したものが適用できる。たとえばリン酸鉄系であれば、リン酸処理液の濃度、pH、温度を適宜調整することで、希土類磁石表面上に皮膜の形成が可能である。
処理の方法は、通常の化成処理で採用されているラック法、また金網で作られた円柱状の容器に製品を入れ回転させて処理するバレル法、平板上の金網に並べて処理する並べ法を採用する事ができる。並べ法の場合、金網が静止していてもよい。また金網に振動を与え、被処理物を常時振動させることで、磁石と金網の接点部位を常に移動し、接点部分において前処理、化成処理が行われない部位を無くす手法も取り入れることができる。またコンベア状に金網を形成し被処理物の前処理、化成処理、水洗等を連続して行っても良い。
硝酸塩には酸化作用があり、R−Fe−B系永久磁石表面から、主相と粒界相を均一に腐食する。硫酸は希土類磁石の主相部を腐食するが、粒界を腐食する傾向がより強い。また硫酸は、硝酸塩によってR−Fe−B系永久磁石表面に形成された酸化膜を、取り除く効果を持つ。
この効果により、硝酸のみで前処理した場合より、より防錆効果の高い化成皮膜が形成されると考えられる。
R−Fe−B系永久磁石は線膨張係数が、C//方向で5×10−6、C⊥方向で−1.5×10−6と非常に小さい為、線膨張係数の大きい鉄系素材(例えば鉄の線膨張係数は12×10−6)などの他部材とエポキシ系接着剤などの硬度の高い接着剤を用いて接着して接合構造体を作成した場合、加熱硬化の際に線膨張係数の差から発生する応力により、磁石に割れが発生する事がある。この対策としては、硬度の低いシリコーン系接着剤が多用されている。工業生産的には比較的短時間で硬化する加熱硬化タイプの付加反応型シリコーン系接着剤が使用される場合が多い。シリコーン系接着剤はこのような応力を吸収するため、磁石に割れが発生しにくい。
しかしながらシリコーン系接着剤を用いて作成した接合構造体は、高温高湿環境により、接着強度が低下する場合がある。
又加熱硬化により短時間で硬化し、工業生産上も好適に利用される付加反応型のシリコーン系接着剤では、硬化触媒として白金を使用しており、接合する部材の材質によっては硬化阻害物質により硬化しなかったり、また高温高湿環境で極めて短い時間に剥離を起こす場合がある。
R−Fe−B系永久磁石素材の上に化成皮膜を施した場合の接着強度の低下は、現行の使用状況では、問題ないレベルにあるが、更に長期にわたり安定した接着性を確保する必要がある。
本発明に係る、R−Fe−B系永久磁石は前記問題を解決し、耐湿試験後も接着強度の低下が少なく、長期にわたり安定した耐食性を維持することができる。
本発明に係るR−Fe−B系永久磁石の組成は、例えば、主要成分のRとFeとBの合計を100mass%として、R:24mass%以上34mass%以下(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種であり、Nd,Dy及びPrの少なくとも1種を必ず含む)、B:0.6mass%以上1.8mass%以下、Fe:残部の組成が挙げられる。Feはその一部がCoで置換されていても良く、また、3mass%以下程度のAl、Si、Cu、Ga、Nb、Mo、Wなどの添加元素を含んでいても良い。
また前処理前の工程は加工後であっても、熱処理後の工程であっても本前処理の条件を適宜調整することで表面の清浄化が可能である、しかし、本処理の効果を更に高める為には、加工後に熱処理を行うのが望ましい。加工後のR−Fe−B系永久磁石表面の応力を熱処理で緩和し、希土類磁石素材の耐食性を向上させる。この効果により、耐湿試験後の素材の崩壊による接着力の低下を抑えることができる。熱処理後に酸処理に続いて化成処理を行うのが、酸処理による過度の腐食を少なくできる点で望ましい。
以下、本発明を実施例を元に説明する。
なお、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
公知の方法により、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系焼結磁石体を作製した。この焼結磁石体の室温における磁気特性はB=1.2T(12kG)、HcJ=1989kA/m(25kOe)、(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。次に前記焼結磁石体を30mm×15mm×3mmの直方体形状に加工後、バレル研磨を施した。
前記研磨後の焼結磁石体を水溶性防錆剤に浸漬後、約60℃に加温して乾燥した。
前記乾燥後の焼結磁石体を、0.2mol/Lの硝酸ナトリウムと0.25mol/Lの硫酸の水溶液に1分間浸漬した。水洗後リン酸濃度0.07mol/L pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬し、水洗後乾燥しサンプルとした。
(実施例2)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体を0.25mol/Lの硝酸ナトリウムと0.3mol/Lの硫酸の水溶液に1分間浸漬し、水洗後0.07mol/Lの pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬し、水洗後乾燥しサンプルとした。
(実施例3)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体を、0.2mol/Lの硝酸ナトリウムと0.25mol/Lの硫酸の水溶液に1分間浸漬した。水洗後、水溶性防錆剤に浸漬し乾燥した。
そののちリン酸濃度0.07mol/L、pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬した。水洗後乾燥してサンプルとした。
(実施例4)
公知の方法により、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系焼結磁石体を作製した。次に前記焼結磁石体を30mm×15mm×3mmの直方体形状に加工後、バレル研磨を施した。その後、前記バレル研磨を施した。
前記研磨後の焼結磁石体を水溶性防錆剤に浸漬後約60℃に加温して乾燥した。その後前記乾燥した焼結磁石体に熱処理を施した。この焼結磁石体の室温における磁気特性はB=1.2T(12kG)、HcJ=1989kA/m(25kOe)、(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
その後、焼結磁石体を、0.2mol/Lの硝酸ナトリウムと0.25mol/Lの硫酸の水溶液に1分間浸漬した。水洗後リン酸濃度0.07mol/L pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬し、水洗後乾燥しサンプルとした。
(参考例)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体を、0.007mol/Lのクロム酸含有水溶液に60℃で10分浸漬し水洗後乾燥しサンプルとした。
(比較例1)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体をサンプルとした。
(比較例2)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体を0.25mol/Lの硝酸溶液に2分浸漬した。水洗後、リン酸濃度0.07mol/L pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬した、水洗後乾燥しサンプルとした。
(比較例3)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体を0.07mol/Lの酢酸溶液に室温で2分間浸漬し、水洗後、リン酸濃度0.07mol/L pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬した、水洗後乾燥しサンプルとした。
(比較例4)
実施例1と同じ方法で焼結磁石体を得た。
前記乾燥後の焼結磁石体をリン酸濃度0.07mol/L pH3で60℃のリン酸処理溶液に5分間浸漬した、水洗後乾燥しサンプルとした。
実施例1〜4、参考例、比較例1〜4で作成したサンプルを、シリコーン系接着剤(東レ・ダウコーニング製SE:1750:付加反応型のシリコーン系接着剤)を用いてSUS304製のヨークに接着して接合構造体を作成した。硬化条件は150℃×90分(温度は接触型温度計で磁石温度を測定)で、1条件につき各10ヶの接合構造体を作成した。接着後、高温高湿80℃×90%×24時間の耐湿性試験後にそれぞれ各5ヶについて圧縮せん断強度を測定した。測定は接合構造体が室温に戻った状態で行った。 圧縮せん断強度はTOYO BALDWIN(TENSILON UTM−I−5000C)を用いて測定した。圧縮速度は1.5mm/minとした。測定結果の平均値をせん断強度とし表1に記した。また試験後の錆の発生状況について目視にて確認した。
Figure 2008251648
接着後の強度はどのサンプルとも約5.0Mpaのせん断強度を示した。
実施例1,2、参考例は耐湿試験後も4.4MPa程度のせん断強度を示した。
実施例3についても、実施例1,2より若干低い数値を示した。
前処理後にR−Fe−B系永久磁石表面に形成された硝酸で処理したほど強固ではない酸化皮膜と水溶性防錆剤の防錆効果で、R−Fe−B系永久磁石の表面清浄度が保たれたため、化成処理の初期過程で起こる表面腐食により、R−Fe−B系永久磁石表面が清浄化され、前処理と化成処理を連続で行った場合と同等の耐食性と接着性を持つ化成皮膜が形成されたためと推定する。
実施例4恒温恒湿後のせん断強度は実施例1〜3に比べて若干高い数値を示した。
比較例1はせん断強度は低くはないが、耐湿試験後の錆の発生が多く、実用に供し得ない。
比較例2せん断強度は問題ないが、耐湿試験後の錆の発生が実施例に比べて多かった。
比較例4は耐湿試験後の接着強度は若干低下した。
比較例3は、比較例4とほぼ同じせん断強度を示したが、耐湿試験後の錆の発生が若干多かった。酢酸によるR−Fe−B系永久磁石表面の前処理による溶解後に、溶解した鉄が3価の酸化物や水酸化物となり、残留し、リン酸処理による腐食によっても取りきれなかったことが原因と考えられる。
(実施例5)
公知の方法で、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系のラジアル配向を持つリング型焼結磁石体を作成した。この永久磁石体の室温における磁気特性はBr=1.2T(12kG),Hcj=1989kA/m(25kOe),(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
前記リング型焼結磁石体に加工を施し外径40mm×内径33mm×高さ25mmの磁石素材を得た。防錆剤に浸漬し乾燥後、実施例1と同じ条件で前処理と化成処理を施しリング型焼結磁石体を得た。
(比較例5)
実施例5と同じ方法で前処理と化成処理を施したリング型磁石焼結体を得た。
上記リング型焼結磁石体の内径部分に、それぞれ直径32.9mmのSUS304製の接着強度測定用ヨークを接着し、それぞれ10ヶの接合構造体を作製した。
実施例5の磁石焼結体はシリコーン系接着剤(東レ・ダウコーニング製 SE1750)を用い150℃×90分加熱硬化した。
比較例5の磁石焼結体は加熱硬化タイプのエポキシ系接着剤を用い150℃×90分加熱硬化した。
硬化後それぞれの接合構造体を目視確認したところ、実施例5についてはリング型焼結磁石体に割れは発生していなかったが、比較例5については線膨張係数の差から割れが発生していた。
実施例5の接合構造体のうち、5ケは接着直後に圧縮せん断強度を測定した。残りの5ケは高温高湿80℃×90%×24時間の耐湿性試験後に圧縮せん断強度を測定した。なお、圧縮せん断強度はTOYO BALDWIN(TENSILON UTM−I−5000C)を用いて測定した。圧縮速度は1.5mm/minとした。圧縮せん断強度の測定はリング型焼結磁石体のみを固定する図1に示す接着強度測定治具3に前記リング型焼結磁石体2と接着強度測定用ヨーク1とからなる接合構造体を載置し図2の様に白抜き矢印方向に所定圧力を加えて行った。その結果、上記耐湿性試験後にも接着強度の低下は少なかった、表中の接着強度(圧縮せん断強度)は各5ケの測定値の平均値を示す。
Figure 2008251648
(実施例6)
公知の方法で、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系の8極の極異方性配向を持つリング型焼結磁石体を作成した。この永久磁石体の室温における磁気特性はBr=1.2T(12kG),Hcj=1989kA/m(25kOe),(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
前記リング型焼結磁石体に加工を施し外径40mm×内径33mm×高さ25mmの磁石素材を得た。防錆剤に浸漬し乾燥後、実施例1と同じ条件で前処理と化成処理を施しリング型焼結磁石体を得た。
得られたリング型焼結磁石体について、実施例5と同じ接合構造体での評価を行ったところ、磁石の割れも発生せず、接着後および恒温恒湿後の接着強度も、実施例5で製作した磁石体と同等であった。
(比較例6)
公知の方法で、(Nd,Dy)2(Fe)14B型金属間化合物を主相とするNd−Dy−Fe−Al−B系のラジアル配向を持つリング型焼結磁石体を作成した。この永久磁石体の室温における磁気特性はBr=1.2T(12kG),Hcj=1989kA/m(25kOe),(BH)max=280kJ/m3(35MGOe)であった。
前記リング型焼結磁石体に加工を施し外径40mm×内径33mm×高さ25mmの磁石素材を得た。防錆剤に浸漬し乾燥した。こうして得られた試料についてめっき前処理として5vol%の硝酸による第1前処理、その後過酸化水素10vol%、酢酸25vol%の混酸による第2前処理を行い、その後以下の順でNiめっき皮膜を成膜した。
[Niめっき皮膜]
めっき浴:ワット浴(硫酸Ni300g/L、塩化Ni50g/L、ホウ酸50g/L、光沢剤(サッカリン系)10ml/L)
浴温:50℃
電流密度:1A/dm2
成膜後水洗。
上記条件で、リング磁石端面中央部の膜厚が12μmになるようにめっき時間を調節した。膜厚は磁石を破壊して、金属組織観察用の樹脂に埋め込み、研磨して、金属顕微鏡観察した。
このとき、内周面中央部の膜厚は3μmとなり、めっき膜の下に磁石の腐食している部分が観察された。
ここで端面とはリング磁石の軸長方向の両端側の面である。
(比較例7)
比較例6と同様の方法で、リング型焼結磁石体を準備しめっきを行い、めっき時間を調節して内周面中央部の膜厚が10μmになるようにしたところ、端面中央部の膜厚は45μmとなっていた。また端面に近い外周面も同様の膜厚となっていた。電気めっきでは、リング磁石の膜厚を全体に均一にすることは困難であることがわかった。
以上から、硝酸塩と硫酸の処理液で前処理した場合に耐湿試験後に高いせん断強度を示し、また耐食性も良好な結果となった。
本発明は、接着剤を用いて他部材と接着後、耐湿性試験を行っても、接着強度の低下が少ない化成皮膜を有するR−Fe−B系永久磁石を提供できる点において産業上の利用可能性を有する。
接着強度測定治具を示す上面図及び側面図 圧縮せん断強度測定時の様子を示す斜視説明図
符号の説明
1 接着強度測定用ヨーク
2 リング型焼結磁石体
3 接着強度測定治具

Claims (2)

  1. 化成皮膜を有するR−Fe−B系永久磁石の製造方法において、R−Fe−B系永久磁石の表面を硝酸塩と硫酸の混合液からなる処理液を用いて前処理した後に化成処理を行うことを特徴とするR−Fe−B系永久磁石の製造方法。
  2. R−Fe−B系永久磁石を加工後に熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のR−Fe−B系永久磁石の製造方法。
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