JP2008143111A - ガス溶解度予測方法並びに発泡性樹脂の流動解析方法及びプログラム - Google Patents

ガス溶解度予測方法並びに発泡性樹脂の流動解析方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形法を用いた成形加工において、金型の設計段階で、金型内に射出される発泡性樹脂の流体解析を行うために最適な発泡性樹脂のガス溶解度を予測し、より精度の高い発泡性樹脂の流動解析を行う。
【解決手段】金型内へ射出された発泡性樹脂のガス溶解度を、溶解度式(I): C=α(t)×A(T)×P+β(t) [Cは発泡性樹脂のガス溶解度、tは発泡性樹脂が金型内に射出されてからの時間、Tは発泡性樹脂の温度、Pは発泡性樹脂の圧力、α(t)は時間tの関数、A(T)は発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる温度Tの関数、β(t)は時間tの関数を表す] を用いて求める。この発泡性樹脂のガス溶解度を用いて算出した粘度を成形条件データとして、CAEシステムにて発泡射出成形シミュレーションを行う。
【選択図】図4

Description

本発明は、発泡射出成形加工に関し、金型内における発泡性樹脂のガス溶解度の予測技術、並びに、この発泡性樹脂のガス溶解度予測技術を用いた発泡性樹脂の流動解析技術に関する。
発泡剤又は気体を添加した原料樹脂を射出成形して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形法が知られている。このような発泡射出成形法は、外観が良好で内部のみ発泡した成形品が得られることを特徴とするものである。
例えば、発泡射出成形法の一手法であるUSM法は、発泡剤又は気体を含む原料樹脂を金型内のキャビティに射出して充填したのち、該キャビティの一部を拡大させて発泡させる方法である。
従来、射出成形においては、実際に成形金型を製作し、この金型を射出成形機に装着して樹脂成形品を製作する前の段階で、コンピュータを用いたシミュレーションにより成形品の品質予測を行う、計算機援用エンジニアリング(CAE)解析手法が提案されている。例えば、特許文献1においては、CAE解析手法を用いて、射出成形品の品質をシミュレーションの段階で予測する方法が提案されている。
このようなCAE解析手法は、先ず、計算機援用設計(CAD)システムにより作成された最終的な樹脂成形品に対応する成形品モデルデータに対して、ゲート、ランナ等の金型構成用素の付帯条件を付加してCAE解析用の有限要素からなる成形品有限要素モデルデータを作成し、次いで、作成した成形品有限要素モデルデータにより射出成形における金型内の溶湯の流れや凝固状態をシミュレーションするCAE解析を行い、所望の成形品形状が得られる金型形状及び成形条件(射出成形機に設定するための温度や圧力等のプロファイル等)を決定するものである。
ところが、発泡射出成形では、上記のような射出成形とは異なり、成形工程にて発泡剤又は気体による発泡があるため、射出成形と同様の手法では、金型内の溶湯の流れや凝固状態を正確にシミュレーションすることができない。つまり、発泡射出成形では、発泡剤又は気体による発泡があるため、溶湯である樹脂に溶解しているガスの量は、金型内に射出されてから減少し、これに起因して樹脂の粘度が成形中に変化するのである。従って、樹脂のガス溶解度の変化を把握せずに、発泡射出成形における樹脂の流動解析を正確に行うことは困難である。
一般に、樹脂のガス溶解度は、ヘンリーの法則を用いて予測することができる。ヘンリーの法則とは、温度一定の条件下における気体成分の溶解度は,気相中の前記気体成分の分圧に比例するというものである。この法則が十分によく成立するのは,気相の圧力があまり高くなく、気体が理想気体の法則を少なくとも近似的に満足し、かつ気体の溶解度があまり大きくなく、溶液が十分に希薄な場合である。いいかえれば、気相や溶液相の性質が理想的であるほどヘンリーの法則が厳密に成立する。
実験的に行われる溶解度測定では、長時間(2時間〜12時間程度)をかけてガスを樹脂(溶液)に飽和させたうえで溶解度を測定する。これに対し、発泡射出成形では、金型内にガスが溶解している樹脂を充填し降圧させるが、これに要する時間は1〜2分程度であってガスの溶解が平衡状態となる前に成形が終了してしまう。つまり、発泡射出成形の流動解析において、ヘンリーの法則をそのまま適用させて樹脂のガス溶解度を算出すると、実際の樹脂の湯流れの状態から大幅なズレが生じてしまうのである。
特開平10−138310号公報
そこで本発明では、発泡剤又は気体を添加した原料樹脂(発泡性樹脂)を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形法を用いた成形加工において、成形品や成形金型の設計段階で、金型内に射出される発泡性樹脂の流体解析を行うために最適な発泡性樹脂のガス溶解度を予測する技術と、この技術を採用したより正確な発泡性樹脂の流動を解析する技術とを提案する。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工における、前記発泡性樹脂内へのガス溶解度を予測する方法であって、発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる発泡性樹脂の温度の関数と、発泡性樹脂の圧力と、発泡性樹脂が金型内へ射出されてからの溶解度の時間変化を表現するための変数とを用いて、発泡性樹脂内へのガス溶解度を求めるものである。
請求項2においては、発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工における、前記発泡性樹脂内へのガス溶解度を予測する方法であって、前記金型内へ射出された発泡性樹脂のガス溶解度を、溶解度式(I):C=α(t)×A(T)×P+β(t)[前記溶解度式(I)中、Cは発泡性樹脂のガス溶解度、tは発泡性樹脂が金型内に射出されてからの時間、Tは発泡性樹脂の温度、Pは発泡性樹脂の圧力、α(t)は時間tの関数、A(T)は発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる温度Tの関数、β(t)は時間tの関数を表す]を用いて求めるものである。
請求項3においては、前記溶解度式(I)において、α(t)は、時間tの経過に伴って増大し、1に近づく変数であるものである。
請求項4においては、前記溶解度式(I)において、β(t)は、時間tの経過に伴って減少し、ゼロに近づく変数であるものである。
請求項5においては、発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工を評価するためにCAEシステムにて行われる発泡性樹脂の流動解析方法であって、請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の溶解度式(I)にて求めたガス溶解度を用いて発泡性樹脂の粘度を算出し、算出した発泡性樹脂の粘度を成形条件として採用するものである。
請求項6においては、発泡射出成形装置にて発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工を、評価するためのCAEシステムにて行われる発泡性樹脂の流動解析方法であって、成形品に対応する成形品モデルデータを取得するステップと、前記成形品モデルデータに金型構成要素の付帯条件を付与した成形品有限要素モデルデータを作成するステップと、前記成形品有限要素モデルデータに、予め設定される発泡性樹脂の粘度を少なくとも含む成形条件データと、発泡射出成形装置の性能データとを付与して、発泡性樹脂の流動解析を行うステップと、前記発泡性樹脂の流動解析にて得られた発泡性樹脂の温度及び圧力と、請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の溶解度式(I)とにより求めたガス溶解度を用いて、発泡性樹脂の粘度を算出するステップと、算出した発泡性樹脂の粘度を成形条件として採用して、発泡性樹脂の流動解析を行うステップとを、含むものである。
請求項7においては、発泡射出成形装置にて発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工を、評価するためのCAEシステムに、成形品に対応する成形品モデルデータを取得する処理と、前記成形品モデルデータに金型構成要素の付帯条件を付与した成形品有限要素モデルデータを作成する処理と、前記成形品有限要素モデルデータに、発泡性樹脂の粘度を少なくとも含む成形条件データと、発泡射出成形装置の性能データとを付与して、発泡性樹脂の流動解析を行う処理と、前記発泡性樹脂の流動解析にて得られた発泡性樹脂の温度及び圧力と、請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の溶解度式(I)とより求めたガス溶解度を用いて、発泡性樹脂の粘度を算出する処理と、算出した発泡性樹脂の粘度を成形条件として採用して、発泡性樹脂の流動解析を行う処理とを、実行させるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
本発明によれば、発泡射出成形において、発泡剤又は気体を添加した原料樹脂(発泡性樹脂)の流動解析を行うに際して、樹脂のガス溶解度をより正確に、比較的単純な計算で予測することができる。
また、前記樹脂のガス溶解度の予測方法を採用することにて樹脂のガス溶解度をより正確に求めるので、より精度の高い発泡樹脂の流動解析を行うことができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る発泡射出成形シミュレーション方法の流れ図、図2は発泡性樹脂の粘度とせん断速度との関係を示す図、図3はヘンリーの法則に基づく樹脂のガス溶解度を示す図、図4は本実施例に係る修正溶解度式に基づく樹脂のガス溶解度を示す図、図5は溶解度低下第一変数αと時間の関係を示す図、図6は溶解度低下第二変数βと時間の関係を示す図である。
本発明は、発泡剤又は気体を添加した原料樹脂(以下、「発泡性樹脂」と記載する。)を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形法を用いた成形加工において、成形品や成形金型の設計段階で、金型内に射出される発泡性樹脂(溶湯)の流れを予測する流体解析を行うための技術である。
一般に、発泡射出成形加工に用いる成形金型を作成する際には、計算機援用設計システム(CADシステム)による設計と、計算機援用エンジニアリングシステム(CAEシステム)による評価とが行われる。
前記CAEシステムには、発泡射出成形シミュレーションを行うために必要となる発泡射出成形の成形条件データが予め設定される。この成形条件データには、『発泡性樹脂の粘度η』が含まれる。この発泡性樹脂の粘度ηは、下記[数1]に示す粘度式を用いて算出することができる。
Figure 2008143111
発泡射出成形では、溶湯である発泡性樹脂が金型内に射出されると樹脂圧力Pが低下して、該発泡性樹脂に含まれるガス(例えば、二酸化炭素ガス)の量が減少し、これに起因して発泡性樹脂の粘度が変化する。発泡性樹脂は、その粘度ηが大きければ流動速度が小さく、粘度ηが小さければ流動速度が大きいことから、流動解析においては、発泡性樹脂の粘度ηは重要な要素の一つであり、発泡性樹脂のガス溶解度Cを無視することはできない。
図2では、発泡性樹脂の粘度ηをせん断速度の関数として表したものを、異なる二つのガス溶解度Cの発泡性樹脂について示しており、発泡性樹脂のガス溶解度Cが低いほど、せん断速度が速いことがわかる。
通常、液体への気体の溶解度は、ヘンリーの法則に基づいて算出することができる。つまり、発泡性樹脂のガス溶解度Cは、ヘンリーの法則に基づく溶解度式(下記[数2])を用いて算出することができる。
Figure 2008143111
なお、[数2]中、Cは発泡性樹脂のガス溶解度、Tは発泡性樹脂の温度、Pは発泡性樹脂の圧力、A(T)は発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる温度Tの関数(ヘンリー係数)を表す。
発泡性樹脂のガス溶解度Cと樹脂圧力Pとの関係は、実験的に長時間(2時間〜12時間程度)をかけてガスを樹脂に十分に飽和させたうえで測定すると、例えば図3に示されるような一次直線に近似される。これは、[数2]に示すヘンリーの法則に基づく溶解度式によくあてはまる。
以下、例えば図3に示されるような、ヘンリーの法則に基づく発泡性樹脂のガス溶解度Cと樹脂圧力との関係を示す線を、「ヘンリーの法則に基づく溶解度線」と記載する。
このヘンリーの法則に基づく溶解度線は、原点を通る直線であって、樹脂圧力Pが大きくなるほど発泡性樹脂のガス溶解度Cは増大する。また、ヘンリーの法則に基づく溶解度線は、樹脂温度Tが低いほど、前記直線の傾きは小さい。
しかし、発泡射出成形においては、(1)金型内に発泡性樹脂が射出されて樹脂圧力が低下することによって、予め発泡性樹脂に溶解しているガスが、該発泡性樹脂から放出されるのものであること、(2)発泡性樹脂が金型内に射出され充填されてから型開きされるまでの時間が僅か数分程度であり、この僅かな時間に発泡性樹脂への気体の溶解が平衡に達することは難しいこと、(3)一気にガスが発泡性樹脂から放出されるものでないこと、の理由から、上記[数2]に示すヘンリーの法則に基づく溶解度式を用いて算出されたガス溶解度と実際のガス溶解度との差異は、正確なシミュレーションを行うことが困難な程度に、大きいものとなる。
そこで、本発明では、発泡射出成形における発泡性樹脂のガス溶解度Cを、下記[数3]で示される発泡性樹脂のガス溶解度Cの式(以下、「修正溶解度式」と記載する。)を用いて算出することを特徴としている。
つまり、[数2]に示すヘンリーの法則に基づく溶解度式に、発泡性樹脂が金型内へ射出されてからの溶解度の時間変化を表現するための変数を加味して、金型内における発泡性樹脂のガス溶解度Cを予測するのである。従って、修正溶解度式は、発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる発泡性樹脂の温度Tの関数A(T)と、発泡性樹脂の圧力Pと、発泡性樹脂が金型内へ射出されてからの溶解度の時間変化を表現するための変数とを、含んで構成されることとなる。
なお、発泡性樹脂が金型内へ射出されたときに、樹脂圧力Pが低下し始め、発泡性樹脂のガス溶解度Cが変化を始めることとなる。
Figure 2008143111
なお、[数3]中、Cは発泡性樹脂のガス溶解度、tは発泡性樹脂が金型内に射出されてからの時間、Tは発泡性樹脂の温度、Pは発泡性樹脂の圧力、α(t)は溶解度低下第一変数とする時間tの関数、A(T)は発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる温度Tの関数(ヘンリー係数)、β(t)は溶解度低下第二変数とする時間tの関数を表す。
前記溶解度低下第一変数α(t)は、例えば図5に示すように、時間tの経過に伴って増大し、1に近づく変数である。
また、前記溶解度低下第二変数β(t)は、例えば図6に示すように、時間tの経過に伴って減少し、ゼロに近づく変数である。
つまり、修正溶解度線は、時間tの経過に伴って、やがてヘンリーの法則に基づく溶解度線に近づくこととなる。
なお、前記溶解度低下第一変数α(t)、並びに、溶解度低下第二変数β(t)は、実験的に求められ、予めCAEシステムに設定される。
[数3]に示す修正溶解度式は、例えば図4に示される発泡性樹脂のガス溶解度Cと樹脂圧力Pとの関係を示す直線として表すことができる。以下、[数3]の修正溶解度式に基づく発泡性樹脂のガス溶解度Cと樹脂圧力Pとの関係を示す線を、「修正溶解度線」と記載する。
この修正溶解度線は、原点を通らない直線であって、樹脂圧力Pが大きくなるほど発泡性樹脂のガス溶解度Cは増大する。
また、この修正溶解度線は、樹脂温度Tが低いほど、直線の傾きは大きく、つまり、樹脂温度Tが低いほど多くのガスが発泡性樹脂に溶解する。
そして、同一の樹脂温度Tで比較すれば、ヘンリーの法則に基づく溶解度線の傾きよりも、修正溶解度線の傾きの方が小さい。
次に、CAEシステムによる発泡性樹脂の流動解析方法について説明する。
この流動解析方法には、上述の修正溶解度式が採用される。
前記CAEシステムは、計算機援用エンジニアリング(Computer Aided Engineering)の技術にて、成形品有限要素モデルデータに基づいて発泡射出成形シミュレーションを行うための手段である。
前記CAEシステムは、電子計算機である汎用コンピュータに発泡射出成形CAE解析プログラムをインストールしたものであって、前記プログラム及びこれに使用されるパラメータ、並びにデータベースが格納された記憶部が備えられる。前記CAEシステムのデータベースには、金型の付帯条件データや、成形条件データや性能データ等が格納される。前記発泡射出成形のCAE解析プログラムには、発泡性樹脂の流動解析プログラム、凝固解析プログラム等のサブプログラムが含まれる。
なお、CAEシステムとして、発泡射出成形シミュレーションを行う専用装置を採用することもできる。
CAEシステムには、CADシステムにより作成された成形品有限要素モデルデータに、成形条件を与えることにより、発泡射出成形シミュレーションを行う機能が備えられる。
本実施例においては、CAEシステムによる発泡射出成形シミュレーションに、発泡射出成形における金型内の発泡性樹脂の湯流れのシミュレーションが含まれる。この発泡射出成形シミュレーションを通じて、発泡性樹脂の流動解析が行われ、発泡性樹脂の流動パターンや、金型内に発泡性樹脂が充填されたときの発泡性樹脂の圧力(樹脂圧力P)、発泡性樹脂の温度(樹脂温度T)、及び、発泡性樹脂を発泡させる気体の樹脂への溶解度(ガス溶解度C)等が、算出される。
先ず、図1に示すように、CADシステムにて作成された成形品モデルデータ(CADデータ)が、CAEシステムに供給される(S21)。前記成形品モデルデータとは、最終的な樹脂成形品の有限要素モデルデータである。
なお、前記CADシステムは、計算機援用設計(Computer Aided Design)の技術にて、有限要素モデルデータを作成するための手段であって、本実施例においてはCAEシステムに作成した成形品モデルデータを提供可能に構成される。
次いで、CAEシステムにて、前記成形品モデルデータに対して、ゲート、ランナ等の金型構成要素の付帯条件が付加されて、CAE解析用の有限要素からなる成形品有限要素モデルデータが作成される(S22)。
続いて、同じくCAEシステムにて、前記成形品有限要素モデルデータに、金型温度、発泡性樹脂の射出速度、温度、粘度η、比熱、ガス圧力、体積などの、発泡性樹脂の仕様及び特性等を含む、成形条件データと、発泡射出成形装置の性能データとが付与されて(S23)、第一次発泡射出成形シミュレーション(CAE解析)が行われる(S24)。
前記成形条件データに含まれる「発泡性樹脂の粘度η」は、[数2]に示すヘンリーの法則に基づく溶解度式を用いて算出され、予めCAEシステムのデータベースに設定されたものである。
前記第一次発泡射出成形シミュレーションでは、発泡射出成形における金型内の発泡性樹脂の湯流れがシミュレーションされ、金型内の発泡性樹脂の流動解析が行われる。この第一次発泡射出成形シミュレーションでは、発泡性樹脂の流動パターンや、金型内に発泡性樹脂が充填されたときの発泡性樹脂の圧力(樹脂圧力P)、発泡性樹脂の温度(樹脂温度T)、及び、発泡性樹脂を発泡させる気体の樹脂への溶解度(ガス溶解度C)等が、算出される。
続いて、上記第一次発泡射出成形シミュレーションにて得られた樹脂温度T、樹脂圧力Pを[数3]の修正溶解度式に代入してガス溶解度Cが算出される。この算出されたガス溶解度Cと、樹脂温度Tと、せん断速度とを、[数1]の粘度式に代入して、粘度ηが算出される(S25)。
そして、算出された粘度ηが、前記第一次発泡射出成形シミュレーションにて用いられた成形条件データに含まれる粘度ηに置き換えられて、再度、発泡射出成形シミュレーション(第二次発泡射出成形シミュレーション)がCAEシステムにて行われる(S26)。
なお、前記成形品有限要素モデルデータに、金型温度、発泡性樹脂の射出速度、温度、算出した粘度η、比熱、ガス圧力、体積などの、発泡性樹脂の仕様及び特性等を含む、成形条件データと、発泡射出成形装置の性能データとを、再度付与して、第二次発泡射出成形シミュレーションを行う構成ともできる。
前記CAEシステムによる第二次発泡射出成形シミュレーションでは、発泡性樹脂の流動解析、即ち発泡性樹脂の流動パターンの解析が行われ、発泡射出成形における金型内の発泡性樹脂の湯流れのシミュレーションが行われる。これに加え、金型内に充填された発泡性樹脂の凝固状態のシミュレーションを行う構成ともできる。
この第二次発泡射出成形シミュレーションの結果に基づいて、所望の成形品形状が得られる金型形状及び成形条件(射出成形機に設定するための温度や圧力等のプロファイル等)が決定される。
上述の通り、本実施例に係る発泡性樹脂の流動解析方法では、[数3]の修正溶解度式に基づいて発泡性樹脂のガス溶解度を算出するので、より正確に、比較的単純な計算で、発泡性樹脂のガス溶解度を予測することができる。また、このように算出された発泡性樹脂のガス溶解度を利用して算出した粘度を用いることによって、第二次発泡射出成形シミュレーションでは、より精度の高い発泡樹脂の流動解析を行うことができる。
本発明の一実施例に係る発泡射出成形シミュレーション方法の流れ図。 発泡性樹脂の粘度とせん断速度との関係を示す図。 ヘンリーの法則に基づく樹脂のガス溶解度を示す図。 本実施例に係る修正溶解度式に基づく樹脂のガス溶解度を示す図。 溶解度低下第一変数αと時間の関係を示す図。 溶解度低下第二変数βと時間の関係を示す図。

Claims (7)

  1. 発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工における、前記発泡性樹脂内へのガス溶解度を予測する方法であって、
    発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる発泡性樹脂の温度の関数と、発泡性樹脂の圧力と、発泡性樹脂が金型内へ射出されてからの溶解度の時間変化を表現するための変数とを用いて、発泡性樹脂内へのガス溶解度を求めることを特徴とする、
    ガス溶解度予測方法。
  2. 発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工における、前記発泡性樹脂内へのガス溶解度を予測する方法であって、
    前記金型内へ射出された発泡性樹脂のガス溶解度を、
    溶解度式(I): C=α(t)×A(T)×P+β(t)
    [前記溶解度式(I)中、Cは発泡性樹脂のガス溶解度、tは発泡性樹脂が金型内に射出されてからの時間、Tは発泡性樹脂の温度、Pは発泡性樹脂の圧力、α(t)は時間tの関数、A(T)は発泡性樹脂及び該発泡性樹脂に溶解しているガスの関係により定まる温度Tの関数、β(t)は時間tの関数を表す]
    を用いて求めることを特徴とする、ガス溶解度予測方法。
  3. 前記溶解度式(I)において、α(t)は、時間tの経過に伴って増大し、1に近づく変数であることを特徴とする、請求項2に記載のガス溶解度予測方法。
  4. 前記溶解度式(I)において、β(t)は、時間tの経過に伴って減少し、ゼロに近づく変数であることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載のガス溶解度予測方法。
  5. 発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工を評価するためにCAEシステムにて行われる発泡性樹脂の流動解析方法であって、
    請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の溶解度式(I)にて求めたガス溶解度を用いて発泡性樹脂の粘度を算出し、
    算出した発泡性樹脂の粘度を成形条件として採用することを特徴とする、
    発泡性樹脂の流動解析方法。
  6. 発泡射出成形装置にて発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工を、評価するためのCAEシステムにて行われる発泡性樹脂の流動解析方法であって、
    成形品に対応する成形品モデルデータを取得するステップと、
    前記成形品モデルデータに金型構成要素の付帯条件を付与した成形品有限要素モデルデータを作成するステップと、
    前記成形品有限要素モデルデータに、予め設定される発泡性樹脂の粘度を少なくとも含む成形条件データと、発泡射出成形装置の性能データとを付与して、発泡性樹脂の流動解析を行うステップと、
    前記発泡性樹脂の流動解析にて得られた発泡性樹脂の温度及び圧力と、請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の溶解度式(I)とより求めたガス溶解度を用いて、発泡性樹脂の粘度を算出するステップと、
    算出した発泡性樹脂の粘度を成形条件として採用して、発泡性樹脂の流動解析を行うステップとを、
    含むことを特徴とする、発泡性樹脂の流動解析方法。
  7. 発泡射出成形装置にて発泡剤又は気体を添加した発泡性樹脂を金型内へ射出して、発泡体である成形品を得る発泡射出成形加工を、評価するためのCAEシステムに、
    成形品に対応する成形品モデルデータを取得する処理と、
    前記成形品モデルデータに金型構成要素の付帯条件を付与した成形品有限要素モデルデータを作成する処理と、
    前記成形品有限要素モデルデータに、発泡性樹脂の粘度を少なくとも含む成形条件データと、発泡射出成形装置の性能データとを付与して、発泡性樹脂の流動解析を行う処理と、
    前記発泡性樹脂の流動解析にて得られた発泡性樹脂の温度及び圧力と、請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の溶解度式(I)とにより求めたガス溶解度を用いて、発泡性樹脂の粘度を算出する処理と、
    算出した発泡性樹脂の粘度を成形条件として採用して、発泡性樹脂の流動解析を行う処理とを、
    実行させることを特徴とする、発泡性樹脂の流動解析プログラム。
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