JP2008138249A - マグネシウム合金材およびその製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特殊な製造設備およびプロセスを使用することなしに、機械的性質に優れた、特に、高い伸びを有するマグネシウム合金材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】必須成分としてZn:1〜5質量%、Gd:5〜15質量%の範囲で含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Gd−Zn系合金から構成されるマグネシウム合金材であって、Mg−Gd−Zn系合金の合金組織中に長周期積層構造を有し、かつ、Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2を有することを特徴とする。また、マグネシウム合金材の製造方法は、溶解鋳造工程と、鋳造材に所定の加工速度で熱間塑性加工を施す塑性加工工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械的性質(引張強さ、0.2%耐力および伸び)に優れ、特に、高い伸びを維持しながら、高い引張強さおよび0.2%耐力を有するマグネシウム合金材およびその製造方法に関するものである。
一般に、マグネシウム合金材は、実用化されている合金の中で最も密度が低く軽量で強度も高いため、電気製品の筐体や、自動車のホイールや、足回り部品や、あるいは、エンジン回り部品等への適用が進められている。
特に、自動車に関連する用途の部品においては、高い機械的性質が要求されるため、GdやZn等の元素を添加したマグネシウム合金材として、片ロール法、急速凝固法により特定の形態の材料を製造することが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1〜4)。
特開平06−041701号公報 特開2002−256370号公報 山崎倫昭、他3名,「高温熱処理法により長周期積層構造が形成する新規Mg−Zn−Gd合金」,軽金属学会第108回春期大会講演概要(2005),社団法人軽金属学会,2005年,p.43−44 Kim、他2名,「急速凝固法を用いた高強度Mg−Zn−Gd合金の開発」,軽金属学会第109回秋期大会講演概要(2005),社団法人軽金属学会,2005年,p.9−10 Kim、他2名,「長周期積層構造を有するMg−Zn−Gd系急速凝固薄帯固化成形材の機械的性質」,軽金属学会第110回春期大会講演概要(2006),社団法人軽金属学会,2006年,p.355−356 Kim、他2名,「急速凝固法を用いた高強度Mg−Zn−Gd合金の開発」,日本金属学会秋期講演大会概要集,社団法人軽金属学会,2005年,p.9−10
しかし、前記したマグネシウム合金材は、特定の製造方法においては、高い機械的性質が得られるものの、特殊な設備が必要であり生産性も低いという問題があり、更に適用できる部材が限られるという問題がある。例えば、エンジンピストンのような部材に適用する場合においては、引張強さ、耐力に加えて、高い伸びも要求される。そして、従来のマグネシウム合金材では、高い伸びを実現すると、引張強さおよび0.2%耐力が不十分となるという問題があった。
本発明は前記の問題に鑑み創案されたものであり、特殊な製造設備およびプロセスを使用することなしに、機械的性質に優れた、特に、高い伸びを維持しながら、高い引張強さおよび0.2%耐力を有するマグネシウム合金材およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、前記課題を解決するために、つぎのようなマグネシウム合金材として構成した。すなわち、請求項1に係るマグネシウム合金材は、必須成分としてZn:1〜5質量%、Gd:5〜15質量%の範囲で含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Gd−Zn系合金から構成されるマグネシウム合金材であって、前記Mg−Gd−Zn系合金の合金組織中に、長周期積層構造を有し、かつ、Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2を有することを特徴とする。
前記構成によれば、Mg−Gd−Zn系合金の合金組織中に長周期積層構造を有することで、マグネシウム合金材の引張強さおよび0.2%耐力を向上させることができる。また、合金組織中にMg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2を有することで、マグネシウム合金材の伸びを向上させることができる。
請求項2に係るマグネシウム合金材は、前記合金組織中の前記MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率が53%以下であることを特徴とする。
前記構成によれば、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率を所定範囲に限定することで、マグネシウム合金材の伸びが、より一層適正なものとなる。
請求項3に係るマグネシウム合金材は、請求項1または請求項2に記載のマグネシウム合金材において、JIS規定の引張試験で測定した伸び(%)を(x)とし、0.2%耐力(MPa)を(y)としたとき、(−15.57x)+467<y<(−15.57x)+555、かつ、x<20であることを特徴とする。
前記構成によれば、伸びと0.2%耐力とが所定の関係を有することで、エンジンピストン等の機械的性質の条件が厳しい自動車用部品への適用が可能となる。
請求項4に係るマグネシウム合金材の製造方法は、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のMg−Gd−Zn系合金を溶解、鋳造して鋳造材を得る溶解鋳造工程と、前記鋳造材に所定の加工速度で熱間塑性加工を施して、加工材を製造する塑性加工工程とを含むことを特徴とする。
前記手順によれば、鋳造材に所定の加工速度で熱間塑性加工を施すことによって、溶解鋳造工程で形成された長周期積層構造が局部的(所定の面積率)に壊れ、その壊れた粒内部分にMg3Gdおよび/またはMgZnGdが析出する。
本発明に係るマグネシウム合金材は、Mg−Zn−Gd系合金の合金組織中に長周期積層構造を有し、かつ、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2を有することで、高い伸びを維持しながら、高い引張強さおよび耐力を達成することができると共に、特殊な製造設備あるいはプロセスを必要としないため、生産性がよいものとなる。また、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率が所定範囲であることで、より一層高い伸びを達成することができる。なお、高い伸びを達成できることから、加工性に優れたマグネシウム合金材を得ることができる。さらに、伸びと0.2%耐力とが所定の関係を有することで、本発明に係るマグネシウム合金材を、例えば、自動車用部品、特に、エンジンピストンなど機械的性質の条件が厳しい部分に適用することが可能となる。
また、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法は、所定の加工速度で熱間塑性加工を施すことで、一般的な製造設備あるいはプロセスにより、機械的性質が向上したマグネシウム合金材を効率よく製造することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1〜図3は押出加工速度を変化させた際のマグネシウム合金材(加工材)の合金組織を示す光学顕微鏡写真で、図1は押出加工速度2.5mm/sec、図2は押出加工速度5.0mm/sec、図3は押出加工速度7.5mm/secである。図4は、マグネシウム合金材の伸びと0.2%耐力との関係を示すグラフ図である。図5はマグネシウム合金材(加工材)の相当歪み分布を示す縦断面図である。図6〜図8は、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率の算出方法を示す光学顕微鏡写真で、図6は押出加工後(引張試験後)のマグネシウム合金材の加工方向に直交する断面の光学顕微鏡写真、図7はMg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2の析出した領域を黒色に画像処理を行なった際の光学顕微鏡写真、図8は黒白に2値化する画像処理を行なった際の光学顕微鏡写真である。
本発明に係るマグネシウム合金材は、高温雰囲気で使用される部品、例えば、自動車用部品、特に、内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット等に使用される。なお、マグネシウム合金材の形状は、例えば、板状、棒状等であって、使用される部品の形状によって適宜選択される。
マグネシウム合金材は、必須成分としてZn:1〜5質量%、Gd:5〜15質量%の範囲で含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Zn−RE系合金から構成されている。以下に各成分について詳細に説明する。
[合金成分]
(Zn)
Mg−Gd−Zn系合金は、必須成分としてZnを1〜5質量%の範囲において含有している。Znは、1質量%未満であると、MgGdを得ることができず、目的とするマグネシウム合金材の引張強さ、0.2%耐力(強度)が得られない。また、Znは、5質量%を超えても、添加量の増加に応じた引張強さおよび0.2%耐力の増加が得られなくなるばかりか、粒界に析出するMg3Gd、Mg3Zn3Gd2等が多くなり、伸びが低下する。
(Gd)
Mg−Gd−Zn系合金は、必須成分としてGdを5〜15質量%の範囲において含有している。Znは、1質量%未満であると、MgGdを得ることができず、目的とするマグネシウム合金材の引張強さ、0.2%耐力(強度)が得られない。また、Znは、5質量%を超えても、添加量の増加に応じた引張強さおよび0.2%耐力の増加が得られなくなるばかりか、粒界に析出するMg3Gd、Mg3Zn3Gd2等が多くなり、伸びが低下する。
(不可避的不純物)
なお、Mg−Gd−Zn系合金は、前記した成分以外にも、不可避的不純物の範囲で他の成分を添加することができ、例えば、微細化に寄与するZrを0.2〜1.0質量%の範囲で含んでいても構わない。Zrが0.2質量%未満では、微細化効果が少なくなりやすく、1.0質量%を超えると、微細化効果に応じた引張強さおよび0.2%耐力の増加が得られにくい。また、Fe、Ni、Cu、Si等を各々0.2質量%以下、含んでいても構わない。
マグネシウム合金材は、図1〜図3に示すように、Mg−Gd−Zn系合金の合金組織中に長周期積層構造(LPO)を有し、かつ、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2を有する。そして、結晶粒内のMgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率が53%以下であることが好ましい。
(長周期積層構造)
図1〜図3に示すように、長周期積層構造(Long Period Ordered Structure 略してLPO)とは、溶解鋳造工程において、マグネシウム合金材の粒内および粒界に析出する析出物であって、特に粒界には濃度の高い長周期積層構造がラメラー状に存在し、この長周期積層構造の析出によって、マグネシウム合金材の引張強さおよび0.2%耐力が向上する。そして、押出加工工程において、加工発熱により局部的に長周期積層構造が壊れ、壊れた粒内部分にMgGdおよび/またはMgZnGdが析出する。
長周期積層構造とは、例えば、規則格子が複数個並び、逆位相のずれを介して、再び規則格子が複数個並び、元の格子の数倍から10数倍の単位の構造が作られ、その周期が長い構造のものをいう。そして、長周期積層構造は、規則相と不規則相との間のわずかな温度範囲に出現し、電子回折した図には規則相の反射が分裂して、数倍から10数倍の周期に対応する位置に回折斑点が現れる。
(Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2
一般にMg合金は、すべり系が少ないため、塑性加工がしにくい。一方、Mg合金は双晶変形がしやすい特徴がある。本発明のMg−Gd−Zn系合金は、結晶面に長周期積層構造があるため、双晶変形できない。そのため、押出加工を施すと、少ないすべり系のために、合金内で局部的な塑性流動が発生する。この局部的塑性流動により、加工による発熱が大きくなり、この発熱によって動的再結晶が発生する。そして、この動的再結晶により、図1〜図3に示すように、長周期積層構造が局部的に壊れ、壊れた粒内部分にMgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2が析出する。
Mg3GdおよびMg3Zn3Gd2は、その大きさが100〜400nmと非常に微細であるものの、マトリックスとの整合性は有していない。そのため、マグネシウム合金材の引張強さおよび0.2%耐力の向上には寄与しないが、伸びの向上には寄与する。そして、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の析出量が増加することにより、伸びは大幅に向上する。
Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2は、その面積率が合金組織全体の53%以下であることが好ましく、4〜53%がさらに好ましい。面積率が53%を超えると、引張強さおよび0.2%耐力の低下が大きく、自動車用部品として必要な強度が得られにくくなる。また、4%未満であると、自動車用部品として必要な伸びが得られにくくなる。そして、この面積率の制御は、マグネシウム合金材を製造する際の塑性加工工程における加工速度によって行い、加工速度が速くなると面積率も大きくなる(図1〜図3参照)。
また、本発明に係るマグネシウム合金材は、図4に示すように、JIS規定の引張試験で測定した伸び(%)を(x)とし、0.2%耐力(MPa)を(y)としたとき、(−15.57x)+467<y<(−15.57x)+555、かつ、x<20であることが、さらに好ましい。
伸びと0.2%耐力とが、前記のような関係を満たすことによって、本発明に係るマグネシウム合金材を、エンジンピストン等の機械的性質の条件が厳しい自動車用部品に適用することが容易となる。また、伸びと0.2%耐力との前記関係は、マグネシウム合金の成分組成を考慮しながら、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率(析出量)を調整することによって達成される。
次に、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法について説明する。
マグネシウム合金材の製造方法は、溶解鋳造工程と、塑性加工工程とを含むものである。以下、各工程について説明する。
(溶解鋳造工程)
Znを1〜5質量%と、Gdを5〜15質量%の範囲で含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Gd−Zn系合金を溶解、鋳造して鋳造材を得る。そして、溶解、鋳造により、マグネシウム合金材の粒内および粒界に、長周期積層構造がラメラー状に析出する。また、粒界には、濃度の高い長周期積層構造が析出する。この長周期積層構造の析出によって、マグネシウム合金材の引張強さおよび0.2%耐力が向上する。なお、溶解、鋳造方法は常法に従って行う。また、溶湯からの酸化物除去のために、溶解はフラックス精錬が好ましい。
また、得られた鋳造材に均質化熱処理を行なってもよい。均質化熱処理によって、鋳造組織の粒界に析出したラメラー組織(高濃度の長周期積層構造)が消失し、マグネシウム合金材の引張強さおよび伸びが高くなる。この際、均質化熱処理の温度は480℃以上、保持時間1時間以上が好ましい。均質化熱処理の温度が480℃未満または保持時間が1時間未満であると、ラメラー組織の固溶が進行し難くなり、ラメラー組織が鋳造組織の粒界に残存しやすくなる。そのため、マグネシウム合金材の機械的性質が向上し難くなる。
(塑性加工工程)
前記工程で製造された鋳造材、または、均質化熱処理された鋳造材に所定の加工速度で熱間塑性加工を施す。ここで、熱間塑性加工は、押出加工および/または鍛造加工が好ましい。所定の加工速度で熱間塑性加工を行うことによって、鋳造により生じた長周期積層構造が、加工発熱により局部的に壊れ、すなわち、微細に分断され、点状組織に変化する。そして、長周期積層構造が壊れた粒内部分にMg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2が析出する。そして、図1〜図3に示すように、加工速度が速くなると、長周期積層構造の破壊部分も多くなり、MgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の析出量、すなわち、合金組織中のMgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率も大きくなる。そして、このMgGdおよび/またはMg3Zn3Gd2の析出により、マグネシウム合金材の伸びが向上する。
熱間塑性加工の加工速度は、押出加工においては2.7〜21mm/secが好ましい、2.7mm/sec未満では面積率が小さくなり、自動車用部品として必要な所定の伸びが得られにくくなる。また、21mm/secを超えると面積率が大きくなり、伸びの向上は認められるが、引張強さおよび0.2%耐力が低下し、自動車用部品として必要な強度が得られにくい。鍛造加工においても2.7〜21mm/secが好ましく、数値範囲の設定理由は、前記の押出加工と同様である。
また、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法では、図5に示すように、熱間塑性加工により製造された加工材10が、少なくとも一部に相当歪み1.5以上の部分10Aを有するようにすることが好ましい。相当歪みが1.5未満であると、マグネシウム合金材の機械的性質のバラツキが大きくなりやすい。そして、加工材を自動車用部品等に使用する際、高い機械的性質を要求される部分を、相当歪み1.5以上の部分10Aで構成するようにする。したがって、相当歪み1.5未満の部分10B、10Cが形成されないように、加工材10の全ての部分で相当歪み1.5以上となるように熱間塑性加工を施すことが好ましい。なお、ここで、加工材10は、円柱形状の鋳造材を自由鍛造したもので、図5は加工材10を平面視した際の縦断面図における相当歪みの分布を示している。
相当歪みとは、Von Miesesの降伏応力に対応する相当歪みで、下式(1)で計算される歪みをいう。なお、下式(1)において、相当歪みを(ε)、長さ方向の真歪みを(ε1)、幅方向の真歪みを(ε2)、厚さ方向の真歪みを(ε3)で示す。
なお、相当歪みの上限値は特に制限はないが、付与する相当歪みが高すぎると、マグネシウム合金材の引張強さ、0.2%耐力、伸びが減少してくるため、2.3未満とすることが好ましい。1.5〜2.0がさらに好ましい。
また、本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法では、熱間塑性加工を行うときの加工温度を300〜500℃の範囲で、鋳造材の加工率に応じて適宜選択することが好ましい。
熱間塑性加工が押出加工であるときには、押出温度300〜500℃で、押出比5〜9.9の範囲、より好ましくは、6〜9の範囲で行うと、良好な相当歪が得られ、機械的性質に優れたマグネシウム合金材を得ることができる。
熱間塑性加工が鍛造加工であるときには、下式(2)の条件で行うと、良好な相当歪が得られ、また、鋳造材の割れを防止しつつ、結晶粒の微細化を図ることができる。また、鍛造加工のみで必要な相当歪みが得られない場合には、鍛造加工に先立って、前記の押出加工を行ってもよい。
なお、式(2)において、T(℃)は、鍛造終了温度であり、E(%)は加工率である。
鍛造加工で鋳造材に相当歪みを与える場合、所定の条件を満たすように鍛造加工を行うことにより、鍛造加工における加工終了温度と加工率とが適切になり、鍛造加工時に割れを生じることがない。つまり、鍛造終了温度(T)が2倍の加工率(E)に210を加えて算出される値の温度に達しない場合には、鍛造割れが発生しやすくなり不適切である。また、鍛造終了温度(T)が高すぎる場合には、塑性加工により発生した微細な亜結晶粒が、動的再結晶により成長して、マグネシウム合金材の機械的性質が低下しやすくなる。したがって、鍛造終了温度(T)の上限値は、2倍の加工率(E)に310を加えて算出される値の温度とすることが好ましい。
本発明に係るマグネシウム合金材の製造方法は、塑性加工工程を行った後に、マグネシウム合金材(加工材)の寸法安定化のために、200〜300℃で10時間以上保持する安定化処理工程を加えてもよい。寸法安定性が向上することにより、本発明に係るマグネシウム合金材を、内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット等、熱の影響を受けながら使用される製品への適用が容易となり、好都合である。
また、塑性加工工程が鍛造加工であったときには、前記した寸法安定化のための安定化処理工程の後に、必要に応じて内燃機関用ピストン、バルブ、リフター、タペット、スプロケット等の所定の形状に加工材を切削加工する切削工程を行ってもよい。
つぎに、本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜6)
まず、Mg−Gd(12.9質量%)−Zn(2.7質量%)−Zr(0.6質量%)の合金組成となるように各材料を秤量し、溶解炉に装入し、フラックス精錬により溶解を行った。続いて、加熱溶解した材料を、金型(外径φ150mm)に鋳造しインゴットを作製した。鋳造材に510℃、4時間の均質化熱処理を行い、機械加工にて押出加工用の鋳造材とした。次に、鋳造材を押出加工機に装入し、押出加工速度を変化させ、押出加工により、マグネシウム合金材(実施例1〜6、外径φ6mm)を製造した。なお、押出加工温度は375℃、押出比9で行い、一定とした。
押出加工後、浸透探傷蛍光試験などで、マグネシウム合金材(加工材)に割れのないことを確認し、加工材からJIS4号試験片を切り出し、JIS規定の引張試験に準じて、引張強さ、耐力(0.2%)、伸び(%)を測定した。その結果を表1に示す。なお、引張強さは250MPa以上のとき、0.2%耐力は150MPa以上のとき、伸びは8%以上のとき、自動車用部品としての適用が可能となる。
また、引張試験後の試験片の押出加工断面を、120〜1000番のサンドペーパで研磨後、アルミナ等でバフ研磨して鏡面化し、鏡面化された表面を酢酸グリコール水溶液等でエッチングして組織観察面とした。この組織観察面を400倍で写真撮影し、その断面写真からMg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2が占める面積率を画像処理にて算出した。具体的な方法について、図6〜図8を参照して、説明する。引張試験後の断面写真(図6)について、Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2が析出した領域を黒色に画像処理する(図7)。さらに、画像処理された写真(図7)について、黒白に2値化する画像処理を行ない(図8)、Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2が析出した領域の合金組織全体に対する面積率を算出した。その結果を表1に示す。なお、Mg3GdおよびNg3Zn3Gd2の確認はTEMにて行った。
表1の結果から、本発明に係るマグネシウム合金材(実施例1〜6)は、高い引張強さおよび0.2%耐力を有すると共に、高い伸びを有していることが確認された。
本発明に係るマグネシウム合金材において、押出加工速度2.5mm/secで製造した際の、マグネシウム合金材(加工材)の合金組織を示す光学顕微鏡写真である。 本発明に係るマグネシウム合金材において、押出加工速度5.0mm/secで製造した際の、マグネシウム合金材(加工材)の合金組織を示す光学顕微鏡写真である。 本発明に係るマグネシウム合金材において、押出加工速度7.5mm/secで製造した際の、マグネシウム合金材(加工材)の合金組織を示す光学顕微鏡写真である。 マグネシウム合金材(加工材)の伸びと0.2%耐力との関係を示すグラフ図である。 本発明に係るマグネシウム合金材(加工材)の相当歪み分布を示す縦断面図である。 押出加工後(引張試験後)のマグネシウム合金材の加工方向に直交する断面の光学顕微鏡写真である。 図6の写真について、Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2の析出した領域を黒色に画像処理を行なった際の光学顕微鏡写真である。 図7の写真について、黒白に2値化する画像処理を行なった際の光学顕微鏡写真である。
符号の説明
10A 相当歪み1.5以上の領域
10B 相当歪み1.5未満0.25以上の領域
10C 相当歪み0.25未満の領域

Claims (4)

  1. 必須成分としてZn:1〜5質量%、Gd:5〜15質量%の範囲で含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg−Gd−Zn系合金から構成されるマグネシウム合金材であって、
    前記Mg−Gd−Zn系合金の合金組織中に、長周期積層構造を有し、かつ、Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2を有することを特徴とするマグネシウム合金材。
  2. 前記合金組織中の前記Mg3Gdおよび/またはMg3Zn3Gd2の面積率が53%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金材。
  3. 請求項1または請求項2に記載のマグネシウム合金材において、JIS規定の引張試験で測定した伸び(%)を(x)とし、0.2%耐力(MPa)を(y)としたとき、
    (−15.57x)+467<y<(−15.57x)+555、かつ、x<20であることを特徴とするマグネシウム合金材。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のMg−Gd−Zn系合金を溶解、鋳造して鋳造材を得る溶解鋳造工程と、
    前記鋳造材に所定の加工速度で熱間塑性加工を施して、加工材を製造する塑性加工工程とを含むマグネシウム合金材の製造方法。
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