JP2008133517A - 防錆防食被覆鋼材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、コンクリートあるいは地面に一部を埋め込まれて使用される場合に優れた防食特性を示す防錆防食被覆鋼材を提供する。
【解決手段】 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層に銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。上記塗装皮膜が少なくとも一層にリン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材である。
【選択図】 なし
【解決手段】 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層に銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。上記塗装皮膜が少なくとも一層にリン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、被覆鋼材に関し、特にコンクリートあるいは地面に一部を埋め込まれて使用される被覆鋼材に関するものである。
鋼材を防食する技術としては、亜鉛系のめっきが広く採用される。さらに防食能を高くするには、亜鉛めっきの上に有機樹脂塗装をすることが多い。しかし、亜鉛めっき上に直接塗装をしても、めっきと有機樹脂の密着性は必ずしも良くないこともまた周知のことであり、このため、めっき上に、リン酸塩処理、クロメート処理等の所謂化成処理をするのが一般的である。
鉄鋼構造物は、コンクリートや地面に埋め込む形で屋外使用されることも多い。しかし、このような使い方をした鉄鋼構造物は、埋設された部分の直上、即ち、地際部で激しい腐食を起こす事例があることが知られている。この「地際腐食」の原因は、完全に解明されてはいないが、以下の要素が挙げられている。
(1)コンクリート中の鉄鋼材料は、コンクリートのアルカリにより不動態化している。この不動態化した部分と地表に出ている部分の鉄が局部電池を形成すること。
(2)地際部は、鉄鋼材料に付着した結露等が落ちてくるため湿り易い構造であり、かつ、この結露水には、鉄鋼材料に付着した塩分等が凝集していること。
(1)コンクリート中の鉄鋼材料は、コンクリートのアルカリにより不動態化している。この不動態化した部分と地表に出ている部分の鉄が局部電池を形成すること。
(2)地際部は、鉄鋼材料に付着した結露等が落ちてくるため湿り易い構造であり、かつ、この結露水には、鉄鋼材料に付着した塩分等が凝集していること。
また、通説として、動物、特に犬の排泄物が影響しているとも言われている。このような腐食を防止する方法として、埋設部界面の結露水がアルカリ性を示すことに着目し、埋設部界面の上下に防食層を設ける方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、構造物の地際部以外はめっきのままで使用されることを前提にしている。しかし、現在の鉄鋼構造物は、美観及び耐蝕性の両面から亜鉛系めっき後にリン酸塩化成処理を行い、さらに塗装して使用されるのが一般的である。
一般的な塗装方法は、めっき上に直接バインダー層を塗装するものであり、特許文献1の技術を通常の塗装前提の鋼構造物に適用する場合には、地際部分のみ全く別の塗装処理を行うことになるため、生産性を著しく低下させると言う問題点があった。
特開2002−371372号公報
第47回材料と環境討論会予稿集p195(2000)
三重県科学技術振興センター講義用技術部研究報告No.26(2002)
そこで、本発明は、上記問題点を解決する、コンクリートあるいは地面に一部を埋め込まれて使用される場合に優れた防食特性を示す防錆防食被覆鋼材を提供することを目的とする。
本発明では、地際部の腐食を促進する要因として、犬のマーキングに着目した。犬の排泄物が腐葉土等によって分解された場合の反応を調べた結果、まずアンモニアが生成すること、さらにこれが酸化されて硝酸が生成することが分かった。そして、一般的な防食構造である、溶融亜鉛めっき−リン酸塩化成処理−塗装と言う皮膜構成の中では、リン酸亜鉛化成処理皮膜と亜鉛めっき層がアンモニアに弱いことが分かった。
化成処理皮膜がアンモニアに溶解するのは、アンモニアが、化成処理皮膜の中のリン酸亜鉛から、亜鉛イオンを亜鉛−アンモニア錯体として引き抜くためである。化成処理皮膜が消失した場合、有機皮膜は、鋼材との密着力を失う。また、アンモニアは、めっきの主成分である亜鉛とも、亜鉛−アンモニア錯体を形成することで反応し、めっき層の消失を促進し、鋼材の腐食を早める。このようなメカニズムによって、アンモニアが鋼材の腐食を促進するものと考えられた。
しかし、報告されている堆肥のpH、組成等を基に再現実験を行っても、土壌中に腐葉土や動物の排泄物や昆虫の死骸等が混入しても、生成するアンモニアの量は僅かであり、直接、化成処理皮膜や亜鉛めっき層を溶解する可能性は低いことが判った。にもかかわらず、実験的には微量のアンモニアの存在により、めっき−塗装をした鋼材の腐食が促進されることが確認された。この原因としては、通常の腐食反応では生成・蓄積して腐食の進行を抑制する塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛めっきの腐食生成物がアンモニアによって溶解するため、亜鉛の防食効果が半減してしまっていることが判った。
このため、亜鉛の白錆は全く観察されず健全にみえるが、亜鉛は速やかに消耗し、内部で鋼材そのものの腐食が進行して風等で突然倒壊するといった事故が発生することになると考えられる。そこで、亜鉛よりもアンモニアと反応し易い物質を防食皮膜中に配置することにより、亜鉛が持つ本来の防食機能を発揮させ、鋼材の地際腐食の問題を解決することに至ったものである。
亜鉛よりもアンモニアと反応し易い物質としては、銅が挙げられる。亜鉛−アンモニア錯体と、銅−アンモニア錯体の錯生成定数(logk)は、各々8.7、13.3であり、アンモニアに対する銅の反応性は、亜鉛の1万倍以上であることが判る。このため、一般的な腐食環境において亜鉛が鉄の犠牲防食作用を示すように、アンモニアが存在する環境では防食皮膜中に銅を配置することにより、銅が亜鉛の犠牲防食作用を示すのである。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
(1)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層に銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(2)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層にリン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(1)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層に銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(2)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層にリン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(3)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、銅化合物を含む層と、リン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(4)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、リン酸系防錆顔料を含む層と、銅化合物とアルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(4)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、リン酸系防錆顔料を含む層と、銅化合物とアルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(5)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜の内、少なくとも、一層にアルカリ土類金属の硫酸塩を、他の一層にリン酸系防錆顔料と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(6)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に三層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、銅化合物を含む層と、リン酸系防錆顔料を含む層と、アルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(6)鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に三層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、銅化合物を含む層と、リン酸系防錆顔料を含む層と、アルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
(7)前記亜鉛系のめっきと塗装皮膜との間に、さらにリン酸塩化成処理層を有する(1)〜(6)のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
(8)前記銅化合物が銅酸化物又はリン酸系の銅塩から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(6)のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
(9)前記アルカリ土類金属が、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種である(2)〜(6)のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材である。
(8)前記銅化合物が銅酸化物又はリン酸系の銅塩から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(6)のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
(9)前記アルカリ土類金属が、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種である(2)〜(6)のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材である。
本発明により、コンクリートあるいは地面に一部埋め込まれて使用される被覆鋼材に優れた防食構造を形成することができるので、この防錆防食被覆鋼材を使用した構造物の寿命の延長が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明で用いる鋼材は、材質としてはSS400に代表される構造用鋼等、あるいはその他の低炭素鋼であり、品種としては、H形鋼、I形鋼、鋼管、鋼矢板あるいは、例えばアンカーを固定するための土木建築金物等であり、使用法としてはコンクリート又は地面に埋め込まれて使用される可能性がある鉄鋼材料である。また、地面に接触して設置される鋼材であって、結果的に土等に覆われる可能性がある鉄鋼材料である。
先ず、本発明で用いる鋼材は、材質としてはSS400に代表される構造用鋼等、あるいはその他の低炭素鋼であり、品種としては、H形鋼、I形鋼、鋼管、鋼矢板あるいは、例えばアンカーを固定するための土木建築金物等であり、使用法としてはコンクリート又は地面に埋め込まれて使用される可能性がある鉄鋼材料である。また、地面に接触して設置される鋼材であって、結果的に土等に覆われる可能性がある鉄鋼材料である。
本発明の防錆防食被覆鋼材は、めっき−有機塗装の二層、あるいは、めっき−リン酸塩化成処理−有機塗装の三層からなるため、この各層について以下説明する。
めっき層は、鉄鋼鋼材に対して犠牲防食作用を有する亜鉛系のめっきである。合金めっきを用いることも可能ではあるが、近年生産量が増えている亜鉛−アルミニウム合金めっきは、近年構造物に多く用いられているが、コンクリート中では寿命が短いと言う報告(非特許文献2)もあり、注意を要する。めっき方法は、電気めっき、溶融めっき等、何でも良いが、通常は構造物としての形状を作った後のめっきであること、耐蝕性を高めるために厚めっきが望ましいことから、どぶ付けの溶融亜鉛めっきが望ましい。
めっき層は、鉄鋼鋼材に対して犠牲防食作用を有する亜鉛系のめっきである。合金めっきを用いることも可能ではあるが、近年生産量が増えている亜鉛−アルミニウム合金めっきは、近年構造物に多く用いられているが、コンクリート中では寿命が短いと言う報告(非特許文献2)もあり、注意を要する。めっき方法は、電気めっき、溶融めっき等、何でも良いが、通常は構造物としての形状を作った後のめっきであること、耐蝕性を高めるために厚めっきが望ましいことから、どぶ付けの溶融亜鉛めっきが望ましい。
亜鉛めっきに通常の処理を行って得られるリン酸亜鉛化成皮膜は、全ての結晶が亜鉛イオンのみを含むホパイト結晶となる。アンモニア濃度が非常に高い場合には、このホパイト結晶から、亜鉛イオンを亜鉛−アンモニア錯体として引き抜くことにより、化成処理皮膜を溶解する可能性がある。このようにして化成処理皮膜が消失した場合、有機皮膜は表面から剥離し、裸の亜鉛めっき鋼材となる。このため、地際でのアンモニアに起因する異常腐食の防止を重視する場合には、化成処理皮膜はむしろ存在しない方が、耐蝕性(耐アンモニア性)が高くなる可能性もある。ただし、化成処理皮膜のアンモニアによる溶解は、pHが11以上の非常に高い場合に限られ、また、塗装皮膜の総合的な耐蝕性という点では、化成処理は必要であるため、一般的には化成処理は行われた方が望ましい。
実際には、リン酸塩化成処理皮膜にはさまざまな種類があり、金属の種類・比率によって結晶の大きさ等が異なるため、化成処理皮膜全体の付着量としては、一義的に決定されるものではない。しかし、鋼材表面を均質に被覆するためには、少なくとも300mg/m2は必要である。また、化成処理皮膜は、防錆油を含浸させる目的の場合等で、意図的に厚く生成させる場合もあるが、本件の場合、付着量が大きくなった場合には、結晶が粗大化して化成処理の本来の目的である塗装後の密着性が確保できなくなる。このため、最大の付着量は8000mg/m2以下であることが望ましい。
塗装皮膜としては、有機樹脂の種類はエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が適用でき、特に樹脂の種類を問わない。ただし、フッ素樹脂等の特殊な樹脂は、顔料との相性等で問題が出ることもあるため、十分な事前検討が必要である。また、現地での施工を行う場合は、常温で硬化することが要求されるため、樹脂の種類は限定される。
耐アンモニア性を発現させるのは、主に銅を含有する化合物であり、酸化銅、亜酸化銅、リン酸銅、ピロリン酸銅等の銅化合物が使用できる。ただし、亜酸化銅中の銅は一価であり、アンモニア錯体を形成するためには、電子一個を放出する酸化反応が必要であるため、アンモニアとの反応性がやや劣ることは考慮する必要がある。土壌中で生成したアンモニアは、鋼材と接触した場合、リン酸亜鉛皮膜や、酸化亜鉛・炭酸亜鉛等のめっき腐食生成物よりも、これらの銅化合物と優先的に反応し、銅−アンモニア錯体を生成することにより消費されてしまう。
すなわち、銅化合物は、アンモニアによる亜鉛腐食生成物、リン酸亜鉛皮膜、あるいは亜鉛めっきそのもの等の溶解をいわば犠牲防食作用によって抑制することにより、鋼材の耐蝕性を向上させるものである。このように、銅化合物は消費されるものであるため、防食皮膜中の絶対量は多い方が望ましい。このため、銅化合物の含有量は多く、また皮膜は厚い方が望ましい。含有率としては、塗装皮膜全体に対して30質量%以上が望ましいが、密着性等の一般的な塗装性能、また銅化合物が消費された後の皮膜の健全性を考慮すれば、70質量%を超えることは望ましくない。塗膜の厚さも、同様に塗装性能の面からは極端な厚膜塗装は望ましくないため、50μm以上、3mm以下が望ましい。
その他の顔料として、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸の、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、モリブデン酸塩等が添加することができる。ただし、脱水剤として添加する、アルカリ土類金属の硫酸塩と反応しないことが好ましい。これらの、リン酸塩とアルカリ土類金属の硫酸塩の組み合わせが、防食皮膜全体の耐アンモニア性を向上させる理由は、銅のようには明確ではないが、アルカリに対して緩衝剤的な機能を発揮するか、硫酸根がアンモニアをトラップするものと考えている。リン酸塩顔料、アルカリ土類金属の硫酸塩の含有量としては、いずれも最大で塗装皮膜全体に対して20質量%で十分であり、密着性等の一般的な塗膜性能を考慮すれば、5質量%以上15質量%以下が望ましい。前述の銅化合物を含めての総合的な含有量としては、塗装皮膜全体に対して75質量%以下であることが望ましい。
なお、本塗料の上に、別の耐候性、あるいは美観等が優れた、別の機能を有する塗装をすることは差支えがない。また、一般的な塗装を行った後、コンクリートに埋め込む界面付近に、最上層皮膜として本発明の銅化合物等を含む塗装皮膜を配置してもその効果は発現される。本発明は、第一に、銅化合物が、亜鉛めっきの防食作用を阻害するアンモニアを消費することによって防食性能を発現させるものであるためである。
また、塗装皮膜中の銅化合物とリン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩顔料も、相互作用をすることによって、耐アンモニア性を発現するものではない。このため、複数の塗装皮膜がある場合、単一の皮膜にのみ顔料が含まれていても、また銅化合物を含む皮膜と、リン酸系防錆顔料を含む皮膜と、アルカリ土類金属の硫酸塩を含む皮膜が積層されていてもよい。この場合、いずれの皮膜が上層、あるいは下層になっても、その防食性に違いは見られなかった。
銅化合物、リン酸系防錆顔料、アルカリ土類金属の硫酸塩が、何らかの反応をする可能性がある場合には、このように別の塗膜に含有させることにより、問題を事前に避けることができる。また、皮膜中の全顔料の含有率が下がるため、塗料設計の自由度が大きくなる、皮膜を薄くすることが容易になる等のメリットが生じる。しかし、複数の塗装皮膜を形成することには、製造上、又は施工上のデメリットも当然あるため、最適な皮膜構成を検討する必要があることは言うまでもない。
なお、複数の種類の有機塗装を行う場合、塗装皮膜全体の厚さとしては、特に規定するものではないが、やはり50μm以上、3mm未満が望ましい。複数の有機塗装皮膜を行う場合は、必然的に50μmを超える。また、3mm以上の厚い皮膜の場合には、本発明の効果に関係なく、有機塗装皮膜全体の寿命が長くなるためである。
塗装方法としては、スプレー塗装、流動槽浸漬、粉体塗装等の一般的な方法で差し支えない。
塗装方法としては、スプレー塗装、流動槽浸漬、粉体塗装等の一般的な方法で差し支えない。
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
板厚4.5mm、幅75mm、長さ150mmのSS400鋼に、表1に示す組成、構成のめっき・化成処理・塗装処理を行った。なお、純亜鉛めっきはフラックスを用いたどぶ付け溶融めっきによって行い、めっき付着量は亜鉛換算で400g/m2 〜470g/m2 である。また、亜鉛−アルミニウム合金めっきは、純亜鉛めっきを施した後、亜鉛−10%アルミニウム合金めっきを行う2段めっき法によった。付着量は、2回のめっき合計で290g/m2 〜370g/m2 であり、アルミニウムの含有量から計算すると、平均のめっき組成としては2段目のめっきが80質量%以上であった。この亜鉛めっき鋼材片に、通常の塗装下地用の浸漬型リン酸塩化成処理を行い、さらにスプレー塗装を行った。
板厚4.5mm、幅75mm、長さ150mmのSS400鋼に、表1に示す組成、構成のめっき・化成処理・塗装処理を行った。なお、純亜鉛めっきはフラックスを用いたどぶ付け溶融めっきによって行い、めっき付着量は亜鉛換算で400g/m2 〜470g/m2 である。また、亜鉛−アルミニウム合金めっきは、純亜鉛めっきを施した後、亜鉛−10%アルミニウム合金めっきを行う2段めっき法によった。付着量は、2回のめっき合計で290g/m2 〜370g/m2 であり、アルミニウムの含有量から計算すると、平均のめっき組成としては2段目のめっきが80質量%以上であった。この亜鉛めっき鋼材片に、通常の塗装下地用の浸漬型リン酸塩化成処理を行い、さらにスプレー塗装を行った。
この試験片の塗装面に、カッターナイフで長さ100mmのめっき層に達する疵を入れた後、中央部までコンクリートに埋め込み、さらに保水性を高めるために、コンクリート層の上に約1cm厚の砂の層を作った。これを屋外に設置し、一日一回、約100mlの0.5%NaCl−1%硝酸アンモニア水(pH=9.5)を散布した。この試験を3月〜9月の6ヶ月間行った後、砂を除去し、埋め込み部の直上〜砂に埋もれていた部分の疵部を観察した。この試験結果を表1にまとめて示す。本発明例のものはいずれも良好であり、疵部に亜鉛の白錆が発生し、亜鉛めっきの犠牲防食機能が発現していることを示している。比較例では、全ての試験片で赤錆が発生し、亜鉛めっきの犠牲防食機能が失われてしまっていることがわかる。
実施例1に用いたものと同じ鋼板に、溶融法によって、440g/m2〜500g/m2の純亜鉛めっきを行った。この試験片に、通常の塗装下地用の浸漬型リン酸塩化成処理を行った後、同じく表2に示す組成の塗装A、さらにその上に塗装Bを、いずれもスプレー塗装により行なった。同様にして、塗装皮膜が3層構造の試験片を、同じくスプレー塗装により作製した。これら試験片について、6〜12月の6ヶ月間、実施例1と同じ試験を行ない、埋め込み部の直上〜砂に埋もれていた部分の疵部を観察した。この試験結果を、表2、表3に示す。本発明例のものはいずれも良好であり、疵部に亜鉛の白錆が発生し、亜鉛めっきの犠牲防食機能が発現していることを示している。比較例では、全ての試験片で赤錆が発生し、亜鉛めっきの犠牲防食機能が失われてしまっていることがわかる。
Claims (9)
- 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層に銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
- 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に一層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が少なくとも一層にリン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
- 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、銅化合物を含む層と、リン酸系防錆顔料とアルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
- 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、リン酸系防錆顔料を含む層と、銅化合物とアルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
- 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に二層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜の内、少なくとも、一層にアルカリ土類金属の硫酸塩を、他の一層にリン酸系防錆顔料と銅化合物を含むことを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
- 鋼材上に亜鉛系のめっき、その上に三層以上の塗装皮膜を有する防錆防食被覆鋼材であって、前記塗装皮膜が、銅化合物を含む層と、リン酸系防錆顔料を含む層と、アルカリ土類金属の硫酸塩を含む層とを少なくとも有することを特徴とする防錆防食被覆鋼材。
- 前記亜鉛系のめっきと塗装皮膜との間に、さらにリン酸塩化成処理層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
- 前記銅化合物が銅酸化物又はリン酸系の銅塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
- 前記アルカリ土類金属が、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種である請求項2〜6のいずれかに記載の防錆防食被覆鋼材。
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