JP2008133485A - 発泡成形用樹脂組成物および発泡成形体の製造方法 - Google Patents

発泡成形用樹脂組成物および発泡成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
射出発泡成形において、微細な発泡セル構造を発現し、発泡成形体の部位に因らず発泡セルの大きさが均一であり機械的性能に優れる発泡成形体を合理的かつ効率的に製造する、発泡成形用樹脂組成物および射出発泡成形体の製造方法の提供。
【解決手段】
下記の条件(A1)〜(A2)を満たすプロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合部分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)100重量部と化学発泡剤0.005〜1重量部とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融し、該溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤として窒素0.01〜2重量%を導入してなる発泡成形用樹脂組成物により提供。
(A1)メルトフローレート(JIS K7210 条件14、230℃、21.18N荷重)が30〜200g/10分
(A2)プロピレン単独重合部分のアイソタクチックペンタッド分率が97.5%以上
【選択図】なし

Description

本発明は、発泡成形用樹脂組成物および発泡成形体の製造方法に関し、特に、自動車部品として用いられるポリプロピレン系樹脂を含む発泡成形用樹脂組成物およびそれを用いた発泡成形体の射出発泡成形による製造方法に関する。
熱可塑性樹脂を用いた射出成形方法において、材料削減、軽量化等を目的として発泡成形を行う射出発泡成形が従来から検討されてきた。射出発泡成形を行う方法としては、熱可塑性樹脂に、アゾジカルボン酸アミドなどの熱分解型の化学発泡剤を使用する方法が知られている。
このような化学発泡剤は、手軽に入手でき、通常のインライン型射出成形機で使用可能であることから、射出発泡成形では広く用いられてきた。しかし、化学発泡剤をペレットにまぶす場合、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部の発泡剤が必要であり、このような化学発泡剤が高価であること、成形機のホッパーの中で、粉状の発泡剤とペレットが分離・偏積し、発泡ムラの原因となること等が課題となっている。
一方、化学発泡剤に代えて、窒素ガス、二酸化炭素などを発泡剤として用いる物理発泡剤も提案されている。特に、ポリスチレンペーパーなどの製造には、これら物理発泡剤を使用した押出発泡法が広く使用されている。この押出発泡法による成形では、押出機シリンダーの途中より孔を設け、シリンダ−内に物理発泡剤が圧入される(例えば、特許文献1及び2参照。)。押出発泡成形の場合、原料樹脂の供給量と物理発泡剤の供給量を一定比率に保つことで、安定した寸法および発泡倍率の製品が得られる。
ところが、物理発泡剤を射出成形に用いるインライン型射出成形の場合、シリンダーに孔を設け、物理発泡剤を注入しても、シリンダーの中をスクリューが前後に移動し、樹脂を可塑化し計量して射出するために、注入孔の位置とスクリューの位置関係は押出成形機のように常に一定ではなく、スクリューの位置によっては、物理発泡剤が注入出来ない場合が生じる。
また、超臨界状態の物理発泡剤を、樹脂に含浸させた後、発泡させる方法が提案されている。この技術は、マイクロセルラー発泡技術として知られている(例えば、特許文献3、4参照。)。しかし、このような超臨界状態の物理発泡剤を使用した射出発泡成形においては、導入する超臨界状態の物理発泡剤の量に拘わらず、微細セルが出来ないこと、成形品の部位によりセル径が不均一となり(例えば、ゲート近傍部と充填末端部ではセル径及びセル密度が異なること)、製品要求品質を満足させるまでに至っていない等の、十分な発泡性能が得られず、成形加工上の制約が多く、さらに大規模な高圧設備が必要等の問題もあった。
このような問題を解決する射出発泡成形方法として、低圧で射出成形機のシリンダーへの臨界状態の物理発泡剤の注入を可能にし、外観良好な高発泡倍率の製品を得る射出発泡方法が開発されてきている(例えば、特許文献5及び6参照。)が、高価な特殊な装置を必要としており、さらに簡便に、容易に、かつ効率的に優れた射出発泡成形体を製造する方法の開発が求められている。
特開平7−16450号公報 特開平8−81590号公報 米国特許5,158,986号明細書 米国特許4,473,665号明細書 特開2000−84968号公報 特開2002−79545号公報
本発明は、射出発泡成形において、微細な発泡セル構造を発現し、発泡成形体の部位に因らず発泡セルの大きさが均一であり機械的性能に優れる発泡成形体を合理的かつ効率的に製造する、発泡成形用樹脂組成物および射出発泡成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の特性を有するプロピレン系樹脂と特定量の化学発泡剤とからなる溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に特定量の物理発泡剤を導入し、これを賦型し発泡成形させる方法を開発した。すなわち、物理発泡剤と化学発泡剤を特定の方法で併用することにより、従来高発泡倍率を実現させるために高価な化学発泡剤添加量を多量に投入していたものを極限まで少なくし、必要ガス量については物理発泡剤を用い、特定量の物理発泡剤を溶融させた後に発泡成形を行うことにより発泡セルの均一化と微細化を実現させることができ、さらに、必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体を添加することで、より優れた流動性を有するプロピレン系樹脂組成物を得、射出発泡性能を向上させることに成功したことに基づき本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の条件(A1)〜(A2)を満たすプロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合部分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)100重量部と化学発泡剤0.005〜1重量部とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融し、該溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤として窒素0.01〜2重量%を導入してなる発泡成形用樹脂組成物が提供される。
(A1)メルトフローレート(JIS K7210 条件14、230℃、21.18N荷重)が30〜200g/10分
(A2)プロピレン単独重合部分のアイソタクチックペンタッド分率が97.5%以上
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン・エチレンブロック共重合体が、下記の条件(A3)〜(A5)を満たすことを特徴とする発泡成形用樹脂組成物が提供される。
(A3)プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量が5〜40重量%
(A4)プロピレン・エチレンランダム共重合部分におけるエチレンの含有量が30〜70重量%
(A5)プロピレン・エチレンランダム共重合部分のメルトフローレート(JIS K7210 条件14、230℃、21.18N荷重)が0.001〜10g/10分
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明の発泡成形用樹脂組成物を射出発泡成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
本発明のプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、物理発泡剤と化学発泡剤を特定の方法で併用しているので、射出発泡成形において、化学発泡剤添加量の添加量を極限まで少なくし、発泡成形体の部位に因らず発泡セルの大きさが均一であり、かつ微細な発泡セル構造を発現し、機械的性能に優れる発泡成形体を合理的かつ効率的に製造することができる。したがって、本発明の方法は、経済的効果に優れ、得られる発泡体は、種々の産業用途に使用でき、その工業的価値は大きい。
1.プロピレン系樹脂組成物
本発明のプロピレン系樹脂発泡成形体の製造で用いるプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(A)、及び化学発泡剤を含み、さらに必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、無機フィラー(C)等を配合したものである。以下、各成分について詳細に説明する。
(1)プロピレン系樹脂(A)
本発明で用いるプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体を主体とするものであり、具体的には、プロピレン単独重合体またはプロピレン単独重合部分とプロピレン・エチレンランダム共重合部分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体が挙げられ、次の(A1)、(A2)の物性を満足することが必要であり、好ましくはさらに(A3)〜(A5)の物性を満足する重合体である。
(A1)メルトフローレート
本発明で用いるプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は、30〜200g/10分、好ましくは30〜150g/10分、より好ましくは30〜100g/10分である。MFRが、上記範囲より大きいと、最終的に製品の耐衝撃性が低下する。また、該MFRが上記範囲より小さいと、流動性が低下して樹脂圧力が高くなり、大型の製品を射出発泡成形する際に不具合を生じる。
ここで、MFRは、JIS K7210、条件14に基づき230℃、21.18Nで測定する値である。
また、プロピレン系樹脂のMFRの調製方法は、重合時の水素濃度を高める、または過酸化物を添加し溶融混練し分子量減成するなどの方法によりMFRを高くすることができる。
(A2)アイソタクチックペンタッド分率
本発明で用いるプロピレン系樹脂(A)のプロピレン単独重合体または単独重合部分のアイソタクチックペンタッド分率(以下、IPFを記すことがある。)は、97.5%以上、好ましくは97.5〜99.8%、より好ましくは98.0〜99.5%である。IPFが、上記範囲より大きいと、工業的及び経済的な面から製造が難しく、またIPFが上記範囲より小さいと、射出発泡成形体の剛性が低下し不具合を生じる。
ここで、IPFは、エイ・ザンベリー(A.Zambelli)らによってMacromolecules,6巻,925頁(1973)に発表された方法に従い、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位の分率である。但し、ピークの帰属に関しては、Macromolecules、8巻、687頁(1975)に記載の上記文献の訂正版に基づいて行った。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をもってアイソタクチックペンタッド単位を測定する。
また、IPFは、プロピレン単独重合体の重合時の温度や使用する触媒の種類によって調製することができる。
(A3)プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量
本発明で用いるプロピレン系樹脂(A)がプロピレン・エチレンブロック共重合体である場合には、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量は、5〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは8〜25重量%である。プロピレン・エチレンランダム共重合体の含有量が、上記範囲未満であると、発泡成形体の耐衝撃性と発泡成形体の表面外観が不十分であり、上記範囲を超えると、発泡成形体の剛性が不十分である。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量は、赤外分光スペクトル法、13C−NMR法、昇温溶出分別法等の常法に従って測定されるものである。本発明では、プロピレン・エチレンブロック共重合体中に占める冷キシレンに溶解する成分量をプロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量とする。
なお、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量は、例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の重合時間の制御により調製することができる。
(A4)プロピレン・エチレンランダム共重合部分におけるエチレンの含有量
本発明で用いるプロピレン系樹脂(A)がプロピレン・エチレンブロック共重合体である場合には、プロピレン・エチレンランダム共重合部分のエチレン含有量は、30〜70重量%が好ましく、より好ましくは35〜60重量%である。プロピレン・エチレンランダム共重合体におけるエチレンの含有量が、上記範囲未満であると、発泡成形体の表面外観が不十分であり、上記範囲を超えると、発泡成形体の機械物性が不十分である。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体におけるエチレン含有量は、一般的な手法、エチレン由来の赤外分光スペクトル法により測定される。
なお、プロピレン・エチレンランダム共重合体におけるエチレン含有量は、プロピレン・エチレンランダム共重合体重合時のエチレンとプロピレンの組成比の制御により調製することができる。
(A5)プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFR
本発明で用いるプロピレン系樹脂(A)がプロピレン・エチレンブロック共重合体である場合には、プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFRは、0.001〜10g/10分が好ましく、より好ましくは0.01〜5g/10分、さらに好ましくは0.01〜3g/10分である。プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFRが、上記範囲未満であると、流動性が不足し充填不良などの問題を生じる可能性があり、上記範囲を超えると、発泡成形体の機械物性が著しく低下するため好ましくない。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFRは、冷キシレンに溶解する成分を分別する方法によりプロピレン・エチレンランダム共重合部分を取り出し、そのMFRを、JIS K7210、条件14に基づき230℃、21.18Nで測定するものである。
なお、プロピレン・エチレンランダム共重合体のMFRは、重合時の連鎖移動剤、例えば水素濃度の制御により調製することができる。
上記プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン、またはプロピレンとエチレンを立体規則性触媒、好ましくは担体付遷移金属成分及び有機アルミニウム化合物よりなる触媒の存在下に、一つの重合反応系中で重合させることにより得られる、特開昭52−98045号及び特公昭57−26613号の各公報に記載されているような、いわゆる非ポリマーブレンドタイプの共重合体であるのが好ましいが、プロピレン系樹脂(A)の内のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、必ずしも一つの重合反応系中で重合させることにより得られた一種の重合体に限らず、別々に重合された二種以上のプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体またはプロピレン・エチレンブロック共重合体の混合物であってもよい。
(2)化学発泡剤
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物を構成する化学発泡剤は、発泡成形体が内包するセル径を均一化する機能を果たす。すなわち、物理発泡剤を用いる発泡成形方法においては、樹脂に溶解した物理発泡剤は、ミクロ的に不均一な部分が発生するセル生成核となり易いが、化学発泡剤を使用すると、発泡成形体が内包するセル径を均一化することができる。
本発明で用いる化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン又はアゾビスイソブチロニトリルなどの有機発泡剤、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ酸などのポリカルボン酸と、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムアルミニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸化合物の混合物や、クエン酸ニ水素ナトリウム、シュウ酸カリウムなどのポリカルボン酸の塩が無機発泡剤として挙げられる。
とりわけ、有機発泡剤としては、ADCA、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリヒドラジノトリアジンが好ましく、無機発泡剤としては、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
また、ポリオレフィンに対してポリカルボン酸と無機炭酸化合物の併用が好ましく、特にクエン酸と炭酸水素ナトリウムを併用した物に微セル化効果、すなわち多量の発泡核を生成する効果があり、製品場所間での均一微細セルを有する発泡製品が得られる。
なお、尿素、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等を助剤としてブレンドして使用することもできる。
これらの化学発泡剤は、平均粒径1〜100μmの粒子に加工し、射出発泡成形時にプロピレン系樹脂(A)からなるプロピレン系樹脂組成物にまぶして使用できる。また、オレフィン系樹脂(A)を基材としたマスターバッチとして造粒加工した後に使用することもできる。これにより成形機のホッパーの汚染、製品表面への粉の付着を抑制することができる。
また、一度化学発泡剤を添加し、ペレット化により化学発泡剤を分解させたものであっても良く、更に予め、高濃度の化学発泡剤を分解させ、その残渣を添加しても良い。化学発泡剤は、射出成形機のシリンダー中で分解し、その発泡残査が発泡核剤となりうる。化学発泡剤残渣の添加量は、未分解物に換算して0.005〜1重量部が好ましい。
化学発泡剤の配合量は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.02〜0.2重量部である。化学発泡剤の配合量が0.005重量部未満では、十分な発泡効果が得られず、1重量部を超える量では、生産コストが高価となり対費用効果が低く、さらに分解物が目やにとなり製品となる発泡成形体を汚染する場合がある。
(3)エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を配合することができる。エチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンであり、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる。好ましいエチレン・α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム(EBR)、エチレン・オクテン共重合体ゴム(EOR)などが挙げられる。また、本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、次の(B1)〜(B3)の物性を有しているものが射出発泡性能を向上させることができ好ましい。
(B1)密度
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度は、0.86〜0.89g/cmが好ましく、より好ましくは0.86〜0.88g/cm、さらに好ましくは0.86〜0.87g/cmである。
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が、上記範囲未満であると、べとつきによるブロッキング不良が生じ易く、生産性が悪化し、上記範囲を超えると、耐衝撃性が不足する。
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K7112に基づき測定するものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、エチレンとα−オレフィンの共重合比率や一次構造配列の制御などにより調製することができる。
(B2)MFR
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFRは、0.5〜100g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜60g/10分、さらに好ましくは0.5〜50g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが、上記範囲未満であると、射出成形性が不十分であり、上記範囲を超えると、発泡成形体の機械物性、特に表面硬度、耐衝撃性が悪化する。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFRは、JIS K7210、条件4に基づき190℃、21.18Nで測定するものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFRは、例えば、重合時の連鎖移動剤濃度や重合温度により調製することができる。
(B3)エチレン含量
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、60〜90重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレン含量が、上記範囲外であると、発泡成形体の耐衝撃性が不十分であり、製品性能として十分でない。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、13C−NMR法に基づき測定するものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、重合時のエチレンとα−オレフィンとの組成比により調製することができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の配合量は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、1〜65重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有量が、上記範囲未満であると、発泡成形体の表面外観が不十分であり、上記範囲を超えると、発泡成形体の機械物性、特に剛性、耐熱性が不十分でとなる。
(4)無機フィラー(C)
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、無機フィラー(C)を配合することができる。無機フィラーを配合することにより、得られる発泡成形体の剛性、耐熱性及び寸法安定性が向上する。本発明で用いられる無機フィラーとしては、具体的には、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー等が挙げられる。本発明では、発泡性、剛性向上という点から、ガラス繊維又はタルクが特に好ましい。
無機フィラー(C)の配合量は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは3〜10重量部、さらに好ましくは5〜15重量部である。このような割合でフィラーを配合することにより、得られる発泡成形体の剛性、耐熱性及び寸法安定性を向上させることができる。
(5)その他の成分
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、通常用いられる各種添加剤等がさらに配合されていてもよい。添加剤としては、通常のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される核剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
(6)プロピレン系樹脂組成物の物性
上記の構成成分からなる本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、30〜200g/10分が好ましく、より好ましくは30〜150g/10分である。MFRが上記範囲を超えると、最終的に製品の耐衝撃性が低下する。また、該MFRが上記範囲未満であると、流動性が低下して樹脂圧力が高くなり、大型の製品を射出発泡成形する際に不具合を生じる。特に、本発明の方法で得られる発泡成形体において、ボス、リブを形成する場合には、プロピレン系樹脂組成物のMFRが上記範囲にあることが望ましい。
ここで、プロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210、条件14、230℃、21.18Nで測定する値である。
2.樹脂組成物の製造
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物は、上述したプロピレン系樹脂(A)、及び化学発泡剤、さらに必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、無機フィラー(C)、添加剤等をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、V−ブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて公知の方法で均一に混合して調製することができる。
3.発泡成形体の製造方法
本発明のプロピレン系樹脂発泡成形体は、上記プロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形機のホッパーへ供給し、溶融・混合状態となったプロピレン系樹脂組成物に、物理発泡剤を導入量を制御しつつ導入し、溶融したプロピレン系樹脂組成物と混合し、これを賦型し発泡成形させる射出発泡成形法で製造することができる。
射出発泡成形法としては、物理発泡剤を導入した組成物をインロー金型(型部材同士の間に互いに嵌合される凹凸構造からなり、樹脂の加圧方向以外への型部材同士の移動が規制されるインロー部を備える金型)へフルショットの射出工程(キャビティー内に樹脂を完全充填する工程)から成形機の可動プレートを移動することによりインロー構造部をスライドさせて金型を型開することにより発泡成形する方法、ショートショットの射出工程(フルショットに要するよりも少ない樹脂量に設定し、キャビティー内に樹脂を完全充填せずに空隙部を残す射出工程)から発泡ガス圧により樹脂を発泡させてキャビティー内を完全充填する発泡成形する方法、フルショットの工程で発生する樹脂の容積収縮分を発泡により膨脹させることによる発泡成形する方法等が挙げられる。
なお、射出発泡成形機の射出条件としては、次の条件が好ましい。
成形温度:190〜260℃、より好ましくは、200〜240℃
金型温度:20〜60℃、より好ましくは、30〜50℃
型開き速度:0.5〜50mm/sec、より好ましくは、1〜20mm/secであり、多段制御可能であることがさらに好ましい。
充填速度:基本的に高速で充填することが望ましい
本発明の発泡成形体の製造で用いる物理発泡剤としては、通常の物理発泡剤を使用することができ、例えば、不活性ガス、低沸点有機溶剤の蒸気、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気などが挙げられる。
上記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどが挙げられ、上記低沸点有機溶剤の蒸気としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタンなどが挙げられ、上記ハロゲン系不活性溶剤の蒸気としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、フロン、三フッ化窒素などが挙げられる。これらの中で、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染、火災の危険性が極めて少ないことから、物理発泡剤として不活性ガスを使用することが好ましく、なかでも二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、特に二酸化炭素、窒素が好ましく、とりわけ窒素が最も好ましい。
さらに、物理発泡剤は、超臨界状態であることが好ましく、これにより樹脂中へのガス溶融が容易になる利点がある。
物理発泡剤の樹脂組成物への導入量は、溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に対して、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。物理発泡剤の導入量が0.01重量%未満では、十分な核化効果が得られず、2重量%を超える量では、生産コストが高価となり対費用効果が低く、さらにガス過充填により製品が二次発泡(製品を成形した後に成形品の内部に過剰に残存した発泡性ガスにより製品表面が火膨れ状に膨れる現象)する場合がある。
なお、溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に対する物理発泡剤の導入量は、ガス注入圧力と時間で導入量を算出するが最終的には物理発泡剤を導入した製品の単位体積当たりの重量と物理発泡剤を導入していない製品の単位体積当たりの重量の差で、測定し定義するものである。
4.プロピレン系樹脂発泡体
本発明の方法により得られたプロピレン系樹脂発泡体は、微細な発泡セル構造を発現し、発泡成形体の部位に因らず発泡セルの大きさが均一であり機械的性能に優れる発泡成形体である。具体的には、発泡セル径の平均径が好ましくは5〜75μm、より好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmであり、発泡セル径が均一であり、粒径分布の狭いことが好ましい。特に発泡成形体発泡セルの大半のセル径が50μm以下の均一発泡成形体であることが好ましい。
本発明の方法により得られたプロピレン系樹脂発泡体は、さらに発泡倍率が1.01〜3.0倍、好ましくは1.1〜2.5倍、より好ましくは1.5〜2.0倍の所望の倍率にすることができる。
本発明の方法により得られたプロピレン系樹脂発泡体は、以下のような用途に用いることができる。
文房具、OA機器:ファイル、マウスパット、鉛筆・ボールペン等の軸、ホチキス、レターケース、ナイフ鋏の取っ手、金庫、パソコン、プリンター、外付けMO等のハウジング、椅子の背もたれ・肘掛け、ドライバーの柄など。
電気製品:冷蔵庫、テレビ、ビデオ、エアコンのハウジング、スピーカーコーン、マイク、ソナー、レーダー、パラボラアンテナ、エアコン室外機、ファンの羽、風力発電機の羽、炊飯器・ジャー・ポットの蓋など。
自動車関連:アームレスト、ヘッドレスト、フロアーマット、サイドモール、吸音材、ガソリンフロート、バンパー、ドアハンドル、グローブボックス、フレッシュエアーアウトレット、コンソールボックス、天井材、ホイルキャップ、ピラー、インツルーメントパネル、エアーバックカバー、レバー類、エアークリーナーケース、レゾネーター、カウルトップガーニッシュ、デフガーニッシュー、ドアトリム、スポイラーなど。
物流分野:樹脂パレット、コンテナ、プラスチックダンボール、CD・DVD郵送用ケース、鞄の取っ手、緩衝材など。
土木・建築分野:エアコン等の断熱パイプ、コンクリートパネル、屋上断熱材、排水マス、クッション床材、畳芯材、襖、システムキッチンの木材代替え材、風呂桶の蓋、簀の子、ゴミ箱、ベンチ・テーブルの板など。
スポーツ分野:スポーツシューズのソール類、サンダル、スリッパ、プロテクター、水着カップ、ゴルフパック、ライフジャケット、ビート板にも適用出来る。
農業・水産用分野:植木鉢、漁網の浮き、防舷材、水難救命具、オイルフェンスの浮きなど。
食品包装材分野:通い箱、インスタントラーメンの容器、コンビニ弁当箱、ドンブリ鉢、食品トレー、パッキン、ガラス製牛乳瓶の蓋、コルク代替え材、茶碗、皿、まな板等が挙げられ、医療分野では、血液輸送用容器、枕、健康マットなど。
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法、使用した材料は、以下の通りである。
1.評価方法
(1)セル径構造:発泡された成形品について下記の基準で判断した。
A:発泡セル径が大半50μm以下の均一発泡成形体
B:発泡セル径の平均径が50μmで均一な発泡成形体
C:発泡セル径が50〜100μmの発泡成形体
D:発泡セル径が大半100μm以上で不均一な発泡成形体
E:D以上の発泡セル径が大半で且つ不均一な発泡成形体
(2)表面平滑性:発泡された成形品の表面を目視にて、次の基準で判断した。
良好:表面の凹凸が認められない
凹凸有:表面に不均一に点在するおよそ100μm以上の発泡セルのため凹状のエクボ状態となり明らかな凹凸が認められる
2.使用材料
(1)ポリプロピレン系樹脂(A)
(i)PP−1:MFRが30g/10分、プロピレン単独重合部分のIPFが97.6%、冷キシレンに溶解する成分量(プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量)が27重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合部分におけるエチレンの含有量が37重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFRが、0.5g/10分である、気相重合で製造したプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
(ii)PP−2:MFRが100g/10分、プロピレン単独重合部分のIPFが97.7%、冷キシレンに溶解する成分量(プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量)が29重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合部分におけるエチレンの含有量が56重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFRが、0.87g/10分である、気相重合で製造したプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
(iii)PP−3:MFRが5g/10分、プロピレン単独重合部分のIPFが97.8%、冷キシレンに溶解する成分量(プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量)が24重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合部分におけるエチレンの含有量が58重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合部分のMFRが、0.77g/10分である、気相重合で製造したプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
(i)EOR−1:デュポンダウエラストマー製「EG8407」(密度が0.87g/cm、MFRが60g/10分、エチレン含量が61.5重量%のエチレン・1−オクテン共重合ゴム)
(ii)EOR−2:デュポンダウエラストマー製「EG8100」(密度が0.87g/cm、MFRが2g/10分、エチレン含量が62重量%のエチレン・1−オクテン共重合ゴム)
(3)化学発泡剤:ファインブローS20N(日東化工(株)製)
(4)無機フィラー:タルクMT−7(富士タルク社製)
(5)物理発泡剤:窒素
実施例1〜7、比較例1〜6
プロピレン系樹脂(A)、化学発泡剤、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、タルクを表1に示す量を秤量・ドライブレンドし、射出成形機のホッパーへ供給し、溶融・混合状態となったプロピレン系樹脂組成物に、日本製鋼所製J180ELIII−UPS−Mucellにより、表1に示す量の物理発泡剤を導入量を制御しつつ導入し、溶融したプロピレン系樹脂組成物と混合し、130mm×130mm×20mmのインロー金型へ射出し、フルショットの工程から成形機の可動プレートを移動することによりインロー構造の金型を型開きを行うことにより発泡成形して、発泡成形体を得た。樹脂組成物のMFR、得られた発泡体の発泡倍率、製品厚み、セル径構造、表面平滑性等の結果を表1及び表2に示す。
なお、射出条件は、以下の通りである。
成形温度:200℃
金型温度:40℃
型開き速度:1mm/sec
充填速度:80mm/sec
Figure 2008133485
Figure 2008133485

Claims (3)

  1. 下記の条件(A1)〜(A2)を満たすプロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合部分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)100重量部と化学発泡剤0.005〜1重量部とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融し、該溶融状態のプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤として窒素0.01〜2重量%を導入してなる発泡成形用樹脂組成物。
    (A1)メルトフローレート(JIS K7210 条件14、230℃、21.18N荷重)が30〜200g/10分
    (A2)プロピレン単独重合部分のアイソタクチックペンタッド分率が97.5%以上
  2. プロピレン・エチレンブロック共重合体は、下記の条件(A3)〜(A5)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の発泡成形用樹脂組成物。
    (A3)プロピレン・エチレンランダム共重合部分の含有量が5〜40重量%
    (A4)プロピレン・エチレンランダム共重合部分におけるエチレンの含有量が30〜70重量%
    (A5)プロピレン・エチレンランダム共重合部分のメルトフローレート(JIS K7210 条件14、230℃、21.18N荷重)が0.001〜10g/10分
  3. 請求項1又は2に記載の発泡成形用樹脂組成物を射出発泡成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
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