JP2008132648A - スクリュー式の押出成形機およびこれを用いた筒状セラミック部材の製造方法 - Google Patents

スクリュー式の押出成形機およびこれを用いた筒状セラミック部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 筒状部材を得るためのスクリュー式の押出成形機において、従来は金型に中子を有する構造とする必要があったため、径の細い筒状部材が得られる金型の製造コストは高く、また、成形時に中子の破損が生じるため、メンテナンスが必要であり、生産効率が悪かった。
【解決手段】 成形原料12の押し出し方向に成形体を成形するための金型8を有したスクリュー式の押出成形機1であって、金型出口部8aの内径寸法をA、スクリュー径をB、スクリュー先端部7aから金型出口部8aまでの距離をCとしたとき、Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30であるとともに、C/Bの値を0.5〜2.0としたスクリュー式の押出成型機である。中子を用いずに筒状部材を得ることが可能となり、金型8の製造コストの低減、筒状部材の生産効率の向上が可能となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、筒状成形体を得るためのスクリュー式の押出成形機、およびこれを用いた筒状部材や筒状セラミック部材の製造方法に関する。
従来から、棒状成形体や筒状成形体を得るための成形方法として、押出成形法が用いられている。この押出成形法に用いる押出成形機は、粘土状に調製された成形原料を特定の出口形状を有する金型から押し出すことによって、特定の出口形状を断面形状とする成形体を連続的に成形することができるものであり、棒状成形体や筒状成形体の効率的な量産に好適に用いられている。
この押出成形機には、プランジャー式やスクリュー式等があるが、成形原料の供給がバッチ式であるプランジャー式と比較して、連続成形が可能で量産性に優れるという点でスクリュー式の押出成形機が一般的によく用いられる。
そして、筒状成形体を得るには、筒状成形体の外形部を形成する口金部と、筒状成形体の中空部を形成する中子と、この中子を支持して口金部に固定する支持部とからなる金型を有するスクリュー式の押出成形機が用いられる。
図3は、筒状成形体を得るための従来のスクリュー式の押出成形機の一例を示す概略断面図である。
図3に示すこのスクリュー式の押出成形機20は、上段スクリュー24と下段スクリュー27との間に真空室25を有し、上段スクリュー24は上段バレル23に、下段スクリュー27は下段バレル26にそれぞれ覆われている。また、上段バレル23の一部に成形原料の投入口22を開口してあり、下段バレル26の出口側に金型28が接続された構成とされている。
さらに、上段スクリュー24および下段スクリュー27は、それぞれ片方を上段軸受け29および下段軸受け30に接続固定され、動力源(不図示)に接続されている。そして、真空室25にはその内部を真空引きするための真空ポンプ(不図示)が接続されている。
次に、この押出成形機20を用いた筒状成形体の成形手順を説明する。
まず、例えば小麦粉と水とを、またはセラミック粉体とバインダと水とを混合し、混練して粘土状の成形原料とする。そして、この成形原料を押出成形機20の投入口22より投入する。投入された成形原料は、上段スクリュー24の回転によって、上段スクリュー24と上段バレル部23との隙間を通って、真空室25へと押し出される。真空室25へと押し出された成形原料は、真空室25に接続された真空ポンプによって減圧されて成形原料の内部の気泡を排出する。その後、下段スクリュー27の回転により、下段スクリュー27と下段バレル26との隙間を通って金型28の方向へと押し出され、筒状成形体の外形部を形成する口金部31と、筒状成形体の中空部を形成する中子32と、この中子32を支持して口金部31に固定する支持部33とからなる金型28を通過することにより、特定の断面形状を有する筒状成形体が得られる。
このようにして得られた筒状成形体は、小麦粉と水とを用いた成形原料としたときは、例えば筒状の麺製品であるマカロニ等となり、セラミック粉体とバインダと水とを用いた成形原料としたときは、得られた成形体を乾燥して焼成することにより、通気性や通液性を必要とする用途の筒状セラミック部材となる。
この押出成形機20によれば、筒状成形体の連続成形が可能である。しかしながら、外径が2.5mm以下の径の細い筒状成形体を得ようとすると、筒状成形体の中空部を形成する中子32を支持して口金部31の中心に固定することが困難となり、金型28のコストアップにつながると同時に、金型28のセットやメンテナンス時に中子32を破損しないように特別の注意を払わなければならないことからメンテナンス性に劣るという問題点があった。
特に、中空部を形成する中子32の先端の径寸法が0.5mm以下の場合には、押し出しの動力がスクリューであるため、成形原料の粘性の微妙な差異等に起因する僅かな圧力分布の乱れにより、容易に中子31が破損してしまい、成形効率が悪化するという問題点があった。
この問題点に対し、特許文献1には、中子32にあたる細棒状マンドレルを他とは独立した部品として備え、この細棒状マンドレルの外周側に細溝を設けたマンドレル挟持部材の各挟持片を配置し、マンドレル保持部材の保持孔内に配置してマンドレル保持部材の保持孔内周壁面がマンドレル挟持部材の各挟持片の外面に焼嵌め等により押圧されることにより、細棒状マンドレルがマンドレル挟持部材の各挟持片に挟持される構造の金属製押出材の押出加工用ダイスが開示されている。この押出加工用ダイスによれば、細孔に対応する横断面サイズの細棒状マンドレルを容易に精度よく製作することができ、破損や磨耗が生じても細棒状マンドレルのみを交換すればよいので、交換コストが低く抑えられるというものである。
特開平7−185648号公報
しかしながら、特許文献1に開示された押出加工用ダイスは、細孔を有する金属製押出材は形成できたとしても、金属よりも粘性の高い成形原料では、中空部を形成する細棒状マンドレルの径寸法が0.5mm以下の場合に、押し出しの動力に係る粘性の微妙な差異等に起因する僅かな圧力分布の乱れにより、細棒状マンドレルが破損したり磨耗したりして、成形効率が悪化するという問題を解決することはできなかった。
また、交換部品は細棒状マンドレルのみであっても、細棒状マンドレルを挟持して精度よく位置決めするための機構は多数の部品から構成されているため、交換に長時間を要するという問題や、多数の部品から構成されているため押出加工用ダイスの作製コストが増加するという問題が生じていた。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、中子を用いずに筒状成形体を得るためのスクリュー式の押出成形機、およびこれを用いた筒状部材や筒状セラミック部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のスクリュー式の押出成形機は、成形原料の押し出し方向に成形体を成形するための金型を有したスクリュー式の押出成形機であって、金型出口部の内径寸法をA、スクリュー径をB、スクリュー先端部から前記金型出口部までの距離をCとしたとき、Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30であるとともに、C/Bの値が0.5〜2.0であることを特徴とするものである。
また、本発明の筒状部材の製造方法は、成形原料を作製する工程と、前記成形原料を上記構成の本発明のスクリュー式の押出成形機を用いて金型より押し出して筒状成形体を成形する工程とを含むことを特徴とするものである。
さらに、本発明の筒状セラミック部材の製造方法は、少なくともセラミック粉体、水溶性セルロースエーテルおよび水を混合して成形原料を作製する工程と、前記成形原料を上記構成の本発明のスクリュー式の押出成形機を用いて金型より押し出して筒状成形体を成形する工程と、得られた筒状成形体を乾燥し、焼成する工程とを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の筒状セラミック部材の製造方法は、上記構成において、前記成形原料として、前記セラミック粉体100質量部に対し水溶性セルロースエーテルを2.0〜5.0質量部添加したものを用いることを特徴とするものである。
本発明のスクリュー式の押出成形機によれば、成形原料の押し出し方向に成形体を成形するための金型を有したスクリュー式の押出成形機であって、金型出口部の内径寸法をA、スクリュー径をB、スクリュー先端部から前記金型出口部までの距離をCとしたとき、Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30であるとともに、C/Bの値が0.5〜2.0であることにより、スクリューの軸心の延長線上のスクリュー先端部と金型出口部とを結ぶ成形原料の中心部に密度の低い部分が集中して、スクリュー式の押出成形機の真空室が真空ポンプにより真空引きされていることから、金型出口部からスクリュー先端部およびスクリューの外面に沿って真空室まで連続した通気孔が生じ、この通気孔が成形体の中空部となることで、金型に中子を用いなくても筒状部材の成形が可能となる。さらに、金型に中子を用いないことから、金型の作製が容易であり、コストが低く抑えられ、中子の破損や磨耗に対するメンテナンスが必要ないので成形効率が向上する。
また、本発明の筒状部材の製造方法によれば、成形原料を作製する工程と、上記構成の本発明のスクリュー式の押出成形機を用いて金型より押し出して筒状成形体を成形する工程とからなることにより、金型に中子を配設する必要がないため、金型の製造コストを低くでき、さらに成形時に中子の折れが発生して成形が中断したり、交換に時間を要したりすることがなくなり成形効率が向上するため、径の細い筒状部材を高効率かつ低コストで製造することが可能となる。
さらに、本発明の筒状セラミック部材の製造方法によれば、少なくともセラミック粉体、水溶性セルロースエーテルおよび水を混合して成形原料を作製する工程と、上記構成の本発明のスクリュー式の押出成形機を用いて金型より押し出して筒状成形体を成形する工程と、得られた筒状成形体を乾燥し、焼成する工程とを含むことにより、金型に中子を配設する必要がないため、金型の製造コストを低くでき、さらに成形時に中子の折れが発生して成形が中断したり、交換に時間を要したりすることがなくなり成形効率が向上するため、径の細い筒状セラミック部材を高効率かつ低コストで製造することが可能となる。
また、本発明の筒状セラミック部材の製造方法によれば、前記成形原料として、前記セラミック粉体100質量部に対し水溶性セルロースエーテルを2.0〜5.0質量部添加したものを用いるときには、成形原料の流動性が良好なものとなり、スクリュー式の押出成形機に対して必要とされる押し出し圧力が低くなるため、モーター出力が小さくても所望の筒状成形体を得ることができるので、設備のコストが安価になる。また、セラミック粉体100質量部に対し水溶性セルロースエーテルを2.0〜5.0質量部添加したものを用いることにより、成形体の強度が十分なものとなり、工程中の成形体のハンドリングによる破損が減少し歩留まりが向上すると同時に、自動機での成形体のハンドリングが可能となるため、成形後の工程の自動化にも対応することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態の例について説明する。
図1は、本発明のスクリュー式の押出成形機の実施の形態の一例を示す、(a)は概略断面図であり、(b)は(a)におけるS部の拡大図である。
図1に示す本発明のスクリュー式の押出成形機1は、上段スクリュー4と下段スクリュー7との間に真空室5を有し、上段スクリュー4は上段バレル3に、下段スクリュー7は下段バレル6にそれぞれ覆われている。また、上段バレル3の一部に成形原料の投入口2を開口してあり、下段バレル6の出口側に金型8が接続された構成としてある。
さらに、上段スクリュー4および下段スクリュー7は、それぞれ片方を上段軸受け9および下段軸受け10に接続固定され、動力源(不図示)に接続されている。そして、真空室5にはその内部を真空引きするための真空ポンプ(不図示)が接続されている。
次に、図1に示すスクリュー式の押出成形機1を用いた筒状部材の成形手順を説明する。
まず、セラミック粉体とバインダと水とを混合撹拌ミキサーで混合し、さらに3本ロール混練機に3回通して混練し、粘土状の成形原料とする。そして、この成形原料をスクリュー式の押出成形機1の投入口2より投入する。投入された成形原料は、上段スクリュー4の回転によって、上段スクリュー4と上段バレル3との隙間を通って、真空室5へと押し出される。真空室5へと押し出された成形原料は、真空室5に接続された真空ポンプによって減圧されて成形原料の内部の気泡を排出する。その後、下段スクリュー7の回転により、下段スクリュー7と下段バレル6との隙間を通って金型8の方向へと押し出され、金型出口部8aを通過することにより、筒状成形体が得られる。
スクリュー式の押出成形機1において、成形原料に加わる押し出し圧力は、下段スクリュー7の外周部に設けられた螺旋状の凸部による剪断作用によって加えられるものである。しかしながら、この剪断作用による押し出し圧力にはバラツキがあり、押し出される成形原料において密度の低い部分は、下段スクリュー7の軸心の延長上の、スクリュー先端部7aと金型出口部8aとを結ぶ成形原料の中心部(以下、単に中心部と称す。)に集中する現象が起こる。
そこで本発明者は、中子を用いずに径の細い筒状成形体が得られるよう、種々の検討を重ねた結果、図1(b)に図1(a)におけるS部の拡大断面図で示すように、金型8の金型出口部8aの内径寸法をA、金型8と対向するスクリューである下段スクリュー7のスクリュー径をB、下段スクリュー7のスクリュー先端部7aから金型8の金型出口部8a(出口側)までの距離をCとしたとき、Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30であるとともに、C/Bの値が0.5〜2.0であるスクリュー式の押出成形機1とすることによって、前述の中子を用いずに径の細い筒状成形体を得るという目的を達成して筒状部材や筒状セラミック部材を提供できることを突き止めた。
図2は、図1(b)に示す本発明のスクリュー式の押出成形機1に成形原料を充填した状態を示す概略断面図である。
本発明のスクリュー式の押出成形機1により筒状成形体が得られたのは、図2に示すように、真空室5に接続された真空ポンプによる真空引きによって金型8の金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周を沿って真空室5まで成形原料12の密度の低い部分を連なる通気孔13が生じ、これが成形体における中空部となることで筒状成形体を得ることができたものと推察される。
ここで、金型出口部8aの内径寸法Aが1.0〜2.5mmであるとしたのは、1.0mm未満であると、スクリュー式の押出成形機1では押し出し圧力が不足するため、下段スクリュー7によって金型出口部8aから成形原料12を押し出すことが困難となるからであり、また、2.5mmを超えると、成形原料12の中心部に密度の低い部分が集中せず、金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が発生しなくなるため筒状成形体を得ることができなくなるからである。
また、金型出口部8aの内径寸法をA、スクリュー径をBとしたとき、B/Aの値が20〜30であるとしたのは、B/Aの値が20未満だと、成形原料12の中心部に密度の低い部分が集中せず、金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が発生しなくなるため筒状成形体を得ることができなくなるからである。また、B/Aの値が30を超えると、スクリュー式の押出成形機1の押し出し圧力が不足し、金型出口部8aから成形原料12を良好に押し出すことが困難になるからである。
下段バレル6から金型出口部8aに至る成形原料12の流路となる部分は、スクリュー先端部7aでの下段バレル6の内径寸法から金型出口部8aの内径寸法まで内径が漸減するようなテーパー形状とするか、もしくはスクリュー先端部7aから一定の長さのストレート部を設けた後、金型出口部8aの内径寸法まで内径が漸減するようなテーパー部を設けることにより、成形原料12の流れがスムーズとなって、成形原料12の中心部に密度の低い部分が集中し、金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が生じ、筒状成形体を得ることができる。
さらに、スクリュー径をB、スクリュー先端部7aから金型出口部8aまでの距離をCとしたとき、C/Bの値を0.5〜2.0としたのは、0.5未満であれば、スクリュー先端部7aと金型出口部8aとの距離が近すぎて、その間の下段バレル6に十分な長さのテーパー部を設けることができなくて、成形原料12への抵抗が増加し、スクリュー式の押出成形機1の押し出し圧力が不足して成形が不可能になるからであり、あるいは、成形が可能であっても、成形原料12の流れが乱れることによって、成形原料12の中心部に密度の低い部分が集中せず、金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が生じなくなるため筒状成形体を得ることができなくなるからである。また、C/Bの値が2.0を超えると、スクリュー先端部7aから金型出口部8aまでの距離が長くなるため、成型原料12の中心部の密度の低い部分に連なる通気孔13が発生しなくなり、成形体に中空部が形成されなくなるため、筒状成形体を得ることができなくなるからである。
したがって、金型出口部8aの内径寸法をA、下段スクリュー7のスクリュー径をB、スクリュー先端部7aから金型出口部8aまでの距離をCとしたとき、Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30であるとともに、C/Bの値が0.5〜2.0であるスクリュー式の押出成形機1を用いれば、金型8に中子を使用せずに筒状部材の成形が可能であるため、装置の構造が単純でコストやメンテナンス性に優れたスクリュー式の押出成形機1とすることができる。また、得られたこのような本発明のスクリュー式の押出成型機1により得られた筒状部材は、金型8に中子を使用しないことから、量産性に優れ、コストの低いものとすることができる。
次に、本発明の筒状部材の製造方法は、成形原料12を作製する工程と、この成形原料を本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて金型8より成形原料12を押し出して筒状成形体を成形する工程とを含むことを特徴としている。
この成形原料12として例えば、小麦粉と水とを混合し混練して成形原料12とした場合であれば、得られた筒状成形体は、必要な水分量になるまで乾燥させることによって、うどんやスパゲッティー等の筒状の乾燥麺製品となり、内部に空洞を有することから、ゆでる際に水分を吸収する表面積が大きくなるため、短時間でゆであげることが可能な乾燥麺製品となる。また、中空部の直径が0.1〜0.5mmと細いため、ゆであがり時には、水分吸収に伴う麺の膨張により中空部は塞がり、通常の麺と比べて食感に差異を生じず、良好な食感となる乾燥麺製品を得ることができる。
あるいは、成形原料12として熱硬化性の樹脂を用いた場合であれば、得られた筒状成形体は、樹脂が硬化するために必要な熱処理を施すことによって、筒状の樹脂部材として、配線保護部材あるいは導水管等として使用することができる。
次に、本発明の筒状セラミック部材の製造方法は、少なくともセラミック粉体、水溶性セルロースエーテルおよび水を混合して成形原料12を作製する工程と、この成形原料12を本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて金型8より押し出して筒状成形体を成形する工程と、得られた筒状成形体を乾燥し、焼成する工程とを含むことを特徴としている。
この場合、セラミック粉体としては、アルミナ,ジルコニア,窒化硅素,炭化硅素,窒化アルミニウム,フェライト等がその使用目的に応じて適宜選択され、必要に応じて酸化硅素,酸化カルシウム,酸化マグネシウム,酸化ニッケル,酸化亜鉛,酸化銅等の焼結助剤を添加してもよい。また、バインダとしては、押し出し成形時の流動性,成形体の保形性,成形体の強度,ハンドリング性を総合的に考慮すると、水溶性のセルロースエーテルを使用するのが好ましい。その添加量は、セラミック粉体100質量部に対し
て水溶性セルロースエーテルを2.0〜5.0質量部の割合で添加するのが重要である。この添加量が2.0質量部未満では、成形原料12の粘度が高過ぎることとなって押し出し圧力が上昇して成型原料12の全体の密度が上昇し、成型原料12の中心部に金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が生じないようになる。また、5.0質量部を超えると、焼成時にバインダが焼失するときの収縮率が大きくなり、筒状成形体の変形や破損が生じやすくなるため、好ましくない。よって、水溶性セルロースエーテルの添加量が2.0〜5.0質量部であれば、成型原料12の流動性が良好になり、成型原料12の中心部に密度の低い部分が集中し、金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が安定して生じるようになり、良好な筒状成形体を安定して得ることができる。
なお、スクリュー式の押出成形機1の内部の成形原料12は、上段スクリュー4と上段バレル3との間および下段スクリュー7と下段バレル6との間で発生する剪断力を受けるため、摩擦熱によって温度が上昇する。成形原料12によっては、この摩擦熱による温度上昇によって流動性が悪化したり、特性が劣化したりするため、スクリュー式の押出成形機1のバレル部やスクリューの内部は、冷却水で冷却できるジャケット構造とすることが好ましい。
そして、本発明によって筒状セラミック部材を得るための成形手順は、まず、セラミック粉体とバインダと水とを混合撹拌ミキサーで混合し、さらに3本ロール混練機に3回通して混練して、粘土状の成形原料12とする。このとき、混練後の粘土状の成形原料12は、例えば(株)島津製作所製のフローテスターCFT−500C型を用いて、圧力6MPa,温度20℃,金型口径1mm,金型長さ1mmの設定条件における測定値が1×10〜1×10Pa・sの粘度範囲となるように調整するのがよい。
そして、この成形原料12をスクリュー式の押出成形機1の投入口2より投入する。投入された成形原料12は、上段スクリュー4の回転によって、上段スクリュー4と上段バレル3との隙間を通って真空室5へと押し出される。真空室5へと押し出された成形原料12は、真空室5に接続された真空ポンプによって減圧されて成形原料12の内部の気泡を排出し、その後、下段スクリュー7の回転により、下段スクリュー7と下段バレル6との隙間を通って金型8の方向へと押し出され、金型出口部8aを通過することにより、筒状成形体となる。
そして、この筒状成形体を乾燥させる。急激な乾燥は筒状成形体を変形させるため、自然乾燥でもよいが、一定時間自然乾燥した後、残留する水分を除いてさらに乾燥させるためには、灯油ボイラ等で気温80℃前後に設定された乾燥室での乾燥を組み合わせて実施する方が好ましい。
筒状成形体の乾燥後、焼成を行なう。焼成の温度パターンは使用するセラミック粉体によって異なるが、例えばアルミナを使用する場合であれば、まず室温から300〜500℃の温度までを2〜6時間かけて昇温し、次いで、1〜4時間の保持時間を設けることによって、筒状成形体に含まれるバインダを焼失させる。その後、1400〜1650℃の最高温度まで2〜6時間かけて昇温し、1〜4時間の保持時間を設けた後、室温まで徐々に冷却すればよい。
このように、少なくともセラミック粉体、水溶性セルロースエーテルおよび水を混合して成形原料を作製した後、本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて筒状成形体を成形し、得られた筒状成形体を乾燥し、焼成する工程によって得られた筒状セラミック部材は、金型8に中子を有しないことから量産性に優れ、コストの低いものとすることができる。
また、セラミック原料100質量部に対して、バインダである水溶性セルロースエーテルを2.0〜5.0質量部の範囲で添加したものを用いることにより、筒状セラミック部材の製造工程中での筒状成形体のハンドリング性が向上して歩留まりが向上し、量産性に優れたコストの低い筒状セラミック部材を得ることができる。
このようにして得られた筒状セラミック部材は、通気性や通液性を必要とする用途、例えばインクの導出管としての筆記具のペン先や、台木および穂木の切断面同士に突き刺して接ぎ合わせるための接ぎ木用の部材として使用することができる。
以下、本発明の実施例を示す。
(実施例1)
図1に示す本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて、下段スクリュー7のスクリュー径Bとスクリュー先端部7aから金型出口部8aまでの距離Cとをそれぞれ30mm,50mm,70mmとしたとき、金型出口部8aの内径寸法Aを0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0mmと変化させて、押し出し成形を実施して、筒状成形体が得られるかどうかを目視により確認する試験を行なった。
まず、押し出し成形用の成形原料12を作製した。用いるセラミック粉体としては、純度が99%、平均粒径が1μmの市販のアルミナ原料を使用した。このアルミナ原料100質量部と、アルミナ原料100質量部に対して3質量部の焼結助剤と、バインダとして4質量部の水溶性セルロースエーテルと、6質量部の界面活性剤と、8質量部の水とを市販の混合撹拌ミキサーに入れ混合した。次に、これを3本ロール混練機に3回通して混練し、粘土状の成形原料12とした。
次に、この成形原料12を図1に示すスクリュー式の押出成形機1の投入口2から投入して押し出し成形を行なった。
なお、スクリュー式の押出成形機1の上段バレル3,下段バレル6,下段スクリュー7の内部は水冷ジャケット構造とし、10℃以下に設定された冷却水を循環させることによって、成形原料12の温度上昇を防止した。さらに、真空ポンプを作動させ、真空室5を真空引きしながら成形を行なった。
評価は、筒状成形体が得られたものは○、成形できないか、あるいは得られた成形体が筒状でないものは×とした。以上の条件および結果を表1にまとめて示す。
Figure 2008132648
表1に示した結果によると、本発明の比較例である試料No.1,6,10は、金型出口部8aの内径寸法が小さすぎるため、あるいは、スクリュー径に対する金型出口部8aの内径寸法が小さすぎるため、成形原料12が金型出口部8aから出てこないか、押し出し圧力が上昇しすぎて成形原料12の密度が全体的に高くなり、金型出口部8aからスクリュー先端部7aおよび下段スクリュー7の外周に沿って真空室5まで連なる通気孔13が発生せず、得られた成形体は筒状ではなかった。また、試料No.4,5,9,12は、金型出口部8aの内径寸法が大きすぎるため、あるいはスクリュー径Bに対する金型出口部8aの内径寸法が大きすぎるため、成形原料12の密度の低い部分が成型原料12の中心部に集中せず全体的に分散した結果、金型出口部8aから真空室5まで連なる通気孔13が発生せず、得られた成形体は筒状ではなかった。
これらと比較して、本発明の実施例である試料No.2,3,7,8,11は、C/Bの値が1の場合であって、金型出口部8aの内径寸法Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30と本発明の範囲内であることにより、得られた成形体が筒状であることが確認された。
(実施例2)
次に、金型出口部8aの内径寸法Aを1.5mm、下段スクリュー7のスクリュー径Bを30mmとし、スクリュー先端部7aから金型出口部8aの間までの距離Bを10〜75mmまで変化させて、実施例1と同様に成形体を作製し、筒状成形体が得られるかどうかを確認した。その結果、筒状成形体が得られたものは○、成形できない、あるいは得られた成形体が筒状でないものは×とした。以上の条件および結果を表2にまとめて示す。
Figure 2008132648
表2に示した結果によると、C/Bの値が本発明の範囲外である試料No.13,18は、得られた成形体は筒状ではなかった。また、比較例の試料No.13は、スクリュー先端部7aから金型出口部8aの間までの距離Bが短く、押し出し圧力が不足して押し出すことができなかった。また、比較例の試料No.18は、成形体は得られたものの筒状ではなく、距離Bが長すぎて通気孔13が潰れたものと思われる。
これに対し、本発明の実施例の試料No.14〜17は、金型出口部8aの内径寸法Aを1.5mm、B/Aが20.0であって、C/Bの範囲が0.5〜2.0と本発明の範囲内であることにより、得られた成形体が筒状であることが確認された。
(実施例3)
次に、筒状セラミック部材の製造方法における水溶性セルロースエーテル添加量の最適範囲を検証するため、金型出口部8aの内径寸法Aが1.5mm、スクリュー径Bが30mm、スクリュー先端部7aから金型出口部8aまでの距離Cが30mmの本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて、セラミック粉末100質量部に対し、水溶性セルロースエーテルの添加量を0〜6.0質量部まで変化させて筒状セラミック部材が作製できるかどうかを検証した。
また、実施例3にて得られた成形体を、変形を防ぐ目的でV形状のアルミ製乾燥治具上で24時間自然乾燥させた後、バッチ式の焼成炉内に入炉した。焼成パターンは、大気中で常温から400℃までを3時間で上昇させた後2時間保持し、その後1600℃までを6時間で上昇させた後2時間保持し、6時間掛けて常温まで冷却して行なった。
評価は、筒状成形体が得られたものは○、成形できないあるいは得られた成形体が筒状でないものは×とした。さらに、成形体を得た後の工程でのハンドリングや脱脂時における変形についても評価を行なった。以上の条件および結果を表3にまとめた。なお、表3において、ハンドリングや脱脂時における歩留まりが◎は90%以上のものを、○は89〜50%のものを、△は49%以下のものを示す。
Figure 2008132648
その結果、表3に示したように、水溶性セルロースエーテルの添加量が0質量部の比較例の試料No.19では、筒状セラミック部材を得ることができなかった.これは、水溶性セルロースエーテルが添加されていないため、セラミック粉体の粒子間のすべりが悪く、押し出し圧力が必要以上に上昇した結果、成形原料12の中心部に密度の低い部分が集中せず、金型出口部8aから真空室5まで連なる通気孔13が生じなかったためである。また、水溶性セルロースエーテルの添加量が1.0質量部の試料No.20では、筒状セラミック部材を得ることができたものの、通気孔13の孔径の大きさにバラツキが見られた。さらに、添加量が6.0質量部の試料No.25では、ハンドリングや脱脂時における変形が見られた。これに対し、水溶性セルロースエーテルの添加量が2.0〜5.0質量部の試料No.21〜24は、ハンドリングや脱脂時においても変形せず、焼結体の断面は直径が0.2mmの連続する中空部が形成されており、形状が安定した良好な筒状セラミック部材であることが確認された。
本発明のスクリュー式の押出成形機の実施の形態の一例を示す、(a)は概略断面図、(b)は(a)におけるS部の拡大断面図である。 図1(b)に示す本発明のスクリュー式の押出成形機に成形原料を充填した状態を示す概略断面図である。 従来のスクリュー式の押出成形機の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1:押出成形機
2:投入口
3:上段バレル
4:上段スクリュー
5:真空室
6:下段バレル
7:下段スクリュー
7a:スクリュー先端
8:金型
8a:金型出口部
9:上段軸受け
10:下段軸受け

Claims (4)

  1. 成形原料の押し出し方向に成形体を成形するための金型を有したスクリュー式の押出成形機であって、金型出口部の内径寸法をA、スクリュー径をB、スクリュー先端部から前記金型出口部までの距離をCとしたとき、Aの値が1.0〜2.5mm、B/Aの値が20〜30であるとともに、C/Bの値が0.5〜2.0であることを特徴とするスクリュー式の押出成形機。
  2. 成形原料を作製する工程と、前記成形原料を請求項1に記載のスクリュー式の押出成形機を用いて金型より押し出して筒状成形体を成形する工程とを含むことを特徴とする筒状部材の製造方法。
  3. 少なくともセラミック粉体、水溶性セルロースエーテルおよび水を混合して成形原料を作製する工程と、前記成形原料を請求項1に記載のスクリュー式の押出成形機を用いて金型より押し出して筒状成形体を成形する工程と、得られた筒状成形体を乾燥し、焼成する工程とを含むことを特徴とする筒状セラミック部材の製造方法。
  4. 前記成形原料として、前記セラミック粉体100質量部に対し水溶性セルロースエーテルを2.0〜5.0質量部添加したものを用いることを特徴とする請求項3に記載の筒状セラミック部材の製造方法。
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