本発明は、棒状成形体を得るためのスクリュー式の押出成形機に関するものである。
従来から、セラミックス等からなる棒状成形体を得るための成形方法として、押出成形法が用いられている。この押出成形法に用いる押出成形機は、粘土状に調製された成形材料を特定の出口形状を有する金型から押し出すことによって、特定の出口形状を断面形状とする棒状成形体を連続的に成形することができるものであり、棒状成形体の効率的な量産に好適に用いられている。
この押出成形機には、プランジャー式やスクリュー式等があるが、成形材料の供給がバッチ式であるプランジャー式と比較して、連続成形が可能で量産性に優れるという点でスクリュー式の押出成形機が一般的によく用いられる。
図7は、従来のスクリュー式の押出成形機の一例を示す概略断面図である。
図7に示すスクリュー式の押出成形機20は、上段スクリュー24と下段スクリュー27との間に真空室25を有し、上段スクリュー24は上段バレル23に、下段スクリュー27は下段バレル26にそれぞれ覆われている。また、上段バレル23の一部に成形材料の投入口22が開口しており、下段バレル26の出口側には金型28が接続された構成としてある。
さらに、上段スクリュー24および下段スクリュー27には螺旋状の凸部31が形成されており、それぞれ片方を上段軸受け29および下段軸受け30に接続固定されて、動力源(不図示)に接続されている。そして、真空室25はその内部を真空引きするための真空ポンプ(不図示)と接続されている。
次に、このスクリュー式の押出成形機20を用いた棒状成形体の成形手順を説明する。
まず、例えば小麦粉と水とを、またはセラミック粉体とバインダと水とを混合し、混練して粘土状の成形材料とする。そして、この成形材料をスクリュー式の押出成形機20の投入口22より投入する。投入された成形材料は、上段スクリュー24の回転によって、上段スクリュー24と上段バレル部23との隙間を通って、真空室25へと押し出される。真空室25へと押し出された成形材料は、真空室25に接続された真空ポンプによって減圧されて成形材料の内部の気泡を排出する。その後、下段スクリュー27の回転により、下段スクリュー27と下段バレル26との隙間を通って金型28の方向へと押し出され、金型28の出口部28aを通過することにより、出口形状に対応した特定の断面形状を有する棒状成形体が得られる。
このようにして得られた棒状成形体は、小麦粉と水とを用いた成形材料としたときは、例えば棒状の麺製品となる。また、セラミック粉体とバインダと水とを用いた成形材料としたときは、得られた棒状成形体を乾燥して焼成することにより、棒状セラミック部材となる。
しかしながら、このスクリュー式の押出成形機20によれば、棒状成形体の連続成形が可能であるが、得られた棒状成形体はその断面において密度のばらつきが大きいという問題を有している。
すなわち、スクリュー式の押出成形機20において、成形材料に加わる押し出し圧力は、下段スクリュー27の外周部に設けられた螺旋状の凸部31による剪断作用によって加えられるものであるが、この剪断作用による押し出し圧力には場所によってばらつきがあり、密度の低い部分は、下段スクリュー27の軸心の延長上のスクリュー先端部27aと金型28の出口部28aとを結ぶ成形材料の中央部(以下、単に中央部と称す。)に集中しやすくなる現象が起こる。そのために、得られた棒状成形体の内部に密度のばらつきが生じて、中央部の密度が極端に低くなって、内部に空洞を生じたり、棒状成形体の乾燥時や焼成時には変形やクラックを生じたりするという問題があった。
また、下段スクリュー27の回転によって、成形材料に回転方向の流れが生じ、そのまま金型28の出口部28aを通過することで、得られた棒状成形体が捻れて変形することが生じるという問題もあった。
これらの問題に対し、特許文献1には、下段スクリュー27と金型28の間に、成形材料の流れを整えるための筒状整流部を備え、整流部内に入口と出口とを結ぶ複数の流路を形成して成形材料の流れを分割し、整流部入口において中心部に流入する成形材料を整流部出口において周縁部に、整流部入口において周縁部に流入する成形材料を整流部出口において中心部にそれぞれ変更する押出成形機が開示されている。この押出成形機によれば、成形材料をバレル内で無理なく混合できるため密度のばらつきが緩和され、強度が高く、変形や反り、クラックの発生が少ない棒状成形体が得られるというものである。
特開2006−103072号公報
しかしながら、特許文献1に開示された押出成形機は、筒状整流部における成形材料の流れに対する抵抗が極めて大きくなるため、押し出し圧力の小さい小型の押出成形機においては使用することができなかった。
また、筒状整流部において、成形材料が複数の流路に完全に分離されることにより、筒状整流部の後方においても分離された成形材料が完全に一体化することができず、得られた棒状成形体の表面に線状のキズが発生するという問題があった。
また、筒状整流部の構造が複雑であるため、押出成形機の作製コストが増加したり、メンテナンスがし難く、成形作業の効率が悪化したりするという問題が生じていた。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、筒状整流部を用いずにスクリュー先端部から見て金型の出口部を覆うように貫通孔非形成領域を設けて密度のばらつきの少ない棒状成形体を得るためのスクリュー式の押出成形機を提供することを目的とする。
本発明のスクリュー式の押出成形機は、スクリュー先端部と金型の出口部との間に、複数の貫通孔を有する板状体を設けており、前記板状体に前記スクリュー先端部から見て前記出口部を覆うように貫通孔非形成領域を設けたことを特徴とするものである。
また、本発明のスクリュー式の押出成形機は、上記構成において、前記貫通孔を成形材料の押し出し方向に対して角度をつけて形成したことを特徴とするものである。
さらに、本発明のスクリュー式の押出成形機は、上記構成において、前記板状体の前記貫通孔非形成領域に円錐形状の隆起部を設けたことを特徴とするものである。
本発明のスクリュー式の押出成形機によれば、スクリュー先端部と金型の出口部との間に、複数の貫通孔を有する板状体を設けており、板状体にスクリュー先端部から見て出口部を覆うように貫通孔非形成領域を設けたことにより、スクリュー軸心の延長線上のスクリュー先端部と金型の出口部とを結ぶ成形材料の中央部の密度の低い部分が、一旦中央部から外周方向に押し分けられるように分散することによって、中央部への密度の低い部分の集中が緩和されるので、得られた棒状成形体は密度のばらつきが小さく、内部に空洞の発生が少なく、また、棒状成形体を乾燥や焼成する時の変形やクラックが少ないものとなる。さらに構造が単純で部品点数が少なくてすむことから、スクリュー式の押出成形機の作製コストが低く抑えられ、メンテナンスがしやすく、成形効率も向上する。
また、本発明のスクリュー式の押出成形機によれば、板状体に複数の貫通孔が設けられていることから、成形材料が板状体を通過する際の抵抗が小さいため、押し出し圧力が小さな小型のスクリュー式の押出成形機においても密度のばらつきが少ない棒状成形体を得ることが可能となる。
さらに、本発明のスクリュー式の押出成形機によれば、貫通孔を成形材料の押し出し方向に対して角度をつけて形成すると、板状体の後段部において周縁部からスクリューの中心軸方向に向かう成形材料の流れを生じさせて棒状成形体の中央部における成形材料の詰まりを良好にし、より密度のばらつきが少ない棒状成形体を得ることが可能となる。あるいは、成形材料が貫通孔を通過する際に、スクリューの回転方向と逆方向の流れを与えることによって、成形材料の回転方向の流れを抑制することが可能となり、本発明のスクリュー式の押出成形機を用いて成形すれば、押し出された棒状成形体が捻れて変形することを低減できる。
さらに、本発明のスクリュー式の押出成形機によれば、板状体の貫通孔非形成領域に円錐形状の隆起部を設けたときには、板状体の前後における成形材料の流れがさらに良くなるために、スクリュー式の押出成形機内の圧力のばらつきが解消されて、得られた棒状成形体の密度のばらつきが少なくなる。また、成形材料が板状体を通過する際の抵抗がより小さくなるため、押し出し圧力の小さな小型のスクリュー式の押出成形機においても密度のばらつきが少ない棒状成形体を得ることが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明のスクリュー式の押出成形機の実施の形態の一例を示す、(a)は概略断面図であり、(b)は(a)における下段スクリューのスクリュー先端部から金型の出口部の方向を見たときの拡大断面図である。
図1に示すスクリュー式の押出成形機1は、上段スクリュー4と下段スクリュー7との間に真空室5を有し、上段スクリュー4は上段バレル3に、下段スクリュー7は下段バレル6にそれぞれ覆われている。また、上段バレル3の一部に成形材料の投入口2が開口しており、下段バレル6の出口側には金型8が接続された構成としてある。ここでスクリュー式の押出成形機1とは、押出成形機と金型8とを合わせた装置のことを言う。
さらに、上段スクリュー4および下段スクリュー7には螺旋状の凸部12が形成されており、それぞれ片方を上段軸受け10および下段軸受け11に接続固定され、動力源(不図示)に接続されている。そして、真空室5はその内部を真空引きするための真空ポンプ(不図示)と接続されている。
次に、スクリュー式の押出成形機1を用いて、例えばセラミック製の棒状成形体を成形する手順を説明する。
まず、セラミック粉体とバインダと水とを混合撹拌ミキサーで混合し、さらに3本ロール混練機に3回通して混練し、粘土状の成形材料とする。そして、この成形材料をスクリュー式の押出成形機1の投入口2より投入する。投入された成形材料は、上段スクリュー4の回転によって、凸部12に剪断されながら上段スクリュー4と上段バレル3との隙間を通って、真空室5へと押し出される。真空室5へと押し出された成形材料は、真空室5に接続された真空ポンプによって減圧されて成形材料の内部の気泡を排出し、その後、下段スクリュー7の回転により、凸部12に剪断されながら下段スクリュー7と下段バレル6との隙間を通って金型8の方向へと押し出され、金型8の出口部8aを通過することにより、棒状成形体となる。
この様なスクリュー式の押出成形機1を用いて押出成形する場合であれば、成形材料に加わる押し出し圧力は、下段スクリュー7の外周部に設けられた螺旋状の凸部12による剪断作用によって加えられるものであるが、この剪断作用による押し出し圧力にはばらつきがあり、押し出される成形材料の密度の低い部分は、下段スクリュー7の軸心の延長上のスクリュー先端部7aと金型8の出口部8aとを結ぶ成形材料の中央部に集中する現象が起こる。
この中央部の密度が低いと、乾燥時および焼成時における収縮のばらつきにより、棒状成形体にクラックや変形を生じるという問題が生じる。また、中央部の密度が極端に低くなることによって棒状成形体の内部に空洞を生じたり、焼成時に中央部が緻密化しなかったりして、不良となる等の問題が生じる。
そこで本発明者は、密度のばらつきの少ない棒状成形体が得られるよう、種々の検討を重ねた結果、図1に示すように、スクリュー先端部7aと金型8の出口部8aとの間に複数の貫通孔9aを有する板状体9を設け、この板状体9にスクリュー先端部7aから見て金型8の出口部8aを覆うように貫通孔非形成領域9bを設けたスクリュー式の押出成形機1によって、成形した棒状成形体の内部に空洞が生じず、乾燥時や焼成時において変形やクラックが生じることの少ない棒状成形体を提供できることを突き止めた。
これは、成形材料の中央部に集中した密度の低い部分が、板状体9に設けられた貫通孔非形成領域9bによって中央部から外周方向に向けて一旦分散された後、金型8の出口部8aの方向に向かって押し出されながら再度加圧充填されることによって、中央部と周縁部とで密度のばらつきが少なくなり、その後、金型8の出口部8aを通過して棒状成形体となるため、得られた棒状成形体は中心部と外周部で密度のばらつきが少なくなり、成形された棒状成形体に内部の空洞や、乾燥時や焼成時における変形やクラックが生じることがないものとなることによる。
ここで、貫通孔非形成領域9bをスクリュー先端部7a側から見て金型8の出口部8aを覆うように設けたのは、スクリュー先端部7a側から見て金型8の出口部8aが貫通孔非形成領域9bに覆われていない場合であれば、成形材料の中央部に集中した密度の低い部分が、貫通孔非形成領域9bによって外周方向に完全に分散されずに、一部がそのまま金型8の出口部8aを通過して棒状成形体となるため、得られた棒状成形体は密度のばらつきが大きくなり、成形された棒状成形体に内部の空洞や、乾燥時や焼成時における変形やクラックが生じるからである。
したがって、スクリュー先端部7aと金型8の出口部8aとの間に、複数の貫通孔9aを有する板状体9を設け、板状体9にスクリュー先端部7aから見て金型8の出口部8aを覆うように貫通孔非形成領域9bを設けたスクリュー式の押出成形機1を用いれば、成形した棒状成形体の内部に空洞のない、乾燥時や焼成時において変形やクラックが生じることのない棒状成形体を提供できるため、装置の構造が単純でコストやメンテナンス性に優れたスクリュー式の押出成形機1が提供できる。また、得られた棒状成形体は、量産性に優れ、コストの低いものとなる。
このとき、貫通孔非形成領域9bの面積は、金型8の出口部8aの面積より大きいことが重要であるが、あまり大きすぎると、成形材料が板状体9を通過する際の抵抗が大きくなり、押し出し圧力の小さな小型のスクリュー式の押出成形機1での成形が困難になるため、貫通孔非形成領域9bの面積は、下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して50%以下であることが望ましい。また、貫通孔非形成領域9bの形状は、成形材料の流れの均一化の観点から、略円形状であることが望ましいが、それ以外の形状であっても実用上なんら問題は無い。
また、貫通孔9aが複数に分かれて形成されていることにより、成形材料が板状体9の貫通孔9aを通過する際に混合攪拌作用が働くため、得られた棒状成形体は密度のばらつきがより小さなものとなる。このため、貫通孔9aの数は、開口面積が下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して30%以上となる範囲で多い方が良い。しかし、貫通孔9aの開口面積が下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して30%未満となれば、成形材料が板状体9を通過するときの抵抗が大きくなって、押し出し圧力の小さな小型のスクリュー式の押出成形機1での成形が困難になるため、好ましくない。
このスクリュー式の押出成形機1には、さまざまな大きさのものがあり、所望する棒状成形体のサイズに応じて適宜選択すればよいが、量産性およびメンテナンス性を考慮すると、下段スクリュー7の直径が30mm〜200mm程度のものが適している。
また、本発明のスクリュー式の押出成形機1は、図2(a)にスクリュー式の押出成形機における板状体9の一例の拡大断面図で、また(b)にスクリュー先端部から金型の出口部を見たときの拡大断面図に示すように、複数の貫通孔9aを成形材料の押し出し方向に対して角度をつけて形成した板状体9を用いることが好ましい。例えば図2(a)に示すように、貫通孔9aを外周部からスクリューの中心軸方向に向かって角度をつけて形成することにより、貫通孔非形成領域9bによって一旦外周方向に分散された成形材料が再び中央部に集合しやすくなることから、中央部に成形材料が加圧充填されやすくなり、結果として棒状成形体の密度のばらつきがより少なくなり、内部の空洞の発生が少なく、乾燥時や焼成時における変形やクラックの発生がより少なくなる。あるいは、図2(b)に示すように、成形材料が貫通孔9aを通過する際にスクリューの回転方向と逆方向の流れを与えるように角度をつけて貫通孔9aを形成することによって、成形材料の回転方向の流れを抑制することが可能となり、棒状成形体が捻れて変形することを低減させることが可能になる。
さらに、本発明のスクリュー式の押出成形機1は、図3にスクリュー式の押出成形機における板状体9の他の一例を示す板状体9の拡大断面図に示すように、板状体9の貫通孔非形成領域9bに円錐形状の隆起部9cを設けることが好ましい。こうすることによって、成形材料が板状体9の貫通孔非形成領域9bによって滞留することが無くなるので、板状体9の前後における成形材料の流れがさらに良くなり、スクリュー式の押出成形機1内の圧力のばらつきが解消されて、得られた棒状成形体の密度のばらつきが少なくなり、内部の空洞の発生がさらに少なく、乾燥時や焼成時における変形やクラックがさらに少ない棒状成形体を得ることが可能になる。また、隆起部9cが円錐形であることによって、貫通孔非形成領域9bにおける成形材料の流れが円錐形の隆起部9cに沿って流れるので、抵抗となる部分が少なくなり、押し出し圧力の小さな小型のスクリュー式の押出成形機1においても密度のばらつきが少ない棒状成形体を得ることが可能となる。このとき、円錐形状の隆起部9cの大きさは、成形材料の滞留を少なくするという観点から、貫通孔非形成領域9bとほぼ同じ大きさであることが望ましい。また、円錐形状の隆起部9cは、板状体9の前後の両方に、あるいはいずれか片方に設けてもよい。なお、ここでいう円錐形状とは、円錐に近い形状のことを言い、多角錐形状あるいは稜線が曲線となる形状でも何ら差し支え無い。
この成形材料として例えば、小麦粉と水とを混合混練して成形材料とした場合であれば、得られた棒状成形体を、必要な水分量になるまで乾燥させることによって、うどんやスパゲティ等の棒状の乾燥麺製品となり、密度のばらつきが少ないことから、乾燥時に変形や折れを生じることが少なく、歩留まりに優れた低コストの乾燥麺製品を作製することができる。
また、成形材料として熱硬化性の樹脂を用いた場合であれば、得られた棒状成形体は、樹脂が硬化するために必要な熱処理を施すことによって、棒状の樹脂部材として、例えば電子機器用の絶縁部材として使用することができる。
また、棒状セラミック部材を得るための製造方法としては、セラミック粉体、バインダおよび水、可塑剤、分散剤等の添加剤を混合して成形材料を作製し、この成形材料を本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて金型8より押し出して棒状成形体を成形し、得られた棒状成形体を乾燥し、適切な焼成炉で焼成すればよい。
この場合、セラミック粉体としては、アルミナ,ジルコニア,窒化硅素,炭化硅素,窒化アルミニウム,フェライト,コージェライト等がその使用目的に応じて適宜選択され、必要に応じて酸化硅素,酸化カルシウム,酸化マグネシウム,酸化ニッケル,酸化亜鉛,酸化銅等の焼結助剤を添加してもよい。また、バインダとしては押し出し成形時の流動性、成形体の保形性、成形体の強度、ハンドリング性を総合的に考慮すると、セルロース係のバインダを用いるのがよく、中でも水溶性のセルロースエーテルを使用するのが好ましい。
なお、スクリュー式の押出成形機1の内部の成形材料は、上段スクリュー4と上段バレル3との間および下段スクリュー7と下段バレル6との間で発生する剪断力を受けるために、摩擦熱によって温度が上昇する。成形材料によっては、この摩擦熱による温度上昇によって流動性が悪化したり、特性が劣化したりするため、スクリュー式の押出成形機1のバレル部やスクリュー内部を冷却水で冷却できるジャケット構造とすることが好ましい。
そして、本発明のスクリュー式の押出成形機1によって棒状セラミック部材を得るための成形手順は、まず、セラミック粉体とバインダと水とを混合撹拌ミキサーで混合し、さらに3本ロール混練機に3回通して混練して、粘土状の成形材料とする。このとき、混練後の粘土状の成形材料は、例えば(株)島津製作所製フローテスターCFT−500C型を用いて、圧力6MPa、温度20℃、金型口径1mm、金型長さ1mmの設定条件における測定値が1×102〜1×104Pa・sの粘度範囲となるように調整するのがよい。
そして、この成形材料をスクリュー式の押出成形機1の投入口2より投入する。投入された成形材料は、上段スクリュー4の回転によって、上段スクリュー4と上段バレル3との隙間を通って真空室5へと押し出される。真空室5へと押し出された成形材料は、真空室5に接続された真空ポンプによって減圧されて成形材料の内部の気泡を排出し、その後、下段スクリュー7の回転により、下段スクリュー7と下段バレル6との隙間を通って金型8の方向へと押し出され、板状体9の複数の貫通孔9aを通ってから、金型8の出口部8aを通過することにより、棒状成形体が得られる。
そして、この棒状成形体を乾燥させるには、急激な乾燥は棒状成形体を変形させるため、自然乾燥でもよいが、一定時間自然乾燥した後、さらに残留する水分を乾燥させるためには、灯油ボイラ等で室温80℃前後に設定された乾燥室での乾燥を組み合わせて実施することが好ましい。
次に、棒状成形体の乾燥後、焼成を行なう。焼成の温度パターンは使用するセラミック粉体によって異なるが、例えばアルミナを使用する場合であれば、まず室温から300〜500℃の温度までを2〜6時間かけて昇温し、その後1〜4時間の保持時間を設けることによって、棒状成形体に含まれるバインダを焼失させる。さらにその後、1400〜1650℃の最高温度まで2〜6時間かけて昇温し、1〜4時間の保持時間を設けた後、室温まで徐々に冷却すればよい。
このようにして得られた棒状セラミック部材は、耐熱性や絶縁性が必要とされる温度ヒューズやブレーカー等に使用される絶縁部材として好適に使用することができる。
以下、本発明のスクリュー式の押出成形機1の実施例を示す。
(実施例1)
図1に示す本発明のスクリュー式の押出成形機1および図7に示す従来のスクリュー式の押出成形機20を用いて棒状セラミック部材を作製し、得られた棒状セラミック部材が密度のばらつきによる内部の欠陥や乾燥、焼成のときに発生する変形やクラックの少ないものとなるかどうかを確認する比較試験を行なった。このときの金型8の出口部8aは、直径が5mmの円形状とした。
まず、押し出し成形用の成形材料を作製した。用いる原料粉体としては、純度が99%、平均粒径が1μmの市販のアルミナ原料を使用した。このアルミナ原料100質量部と、アルミナ原料100質量部に対して3質量部の焼結助剤と、バインダとして4質量部の水溶性セルロースエーテルと、6質量部の界面活性剤と、8質量部の水とを市販の混合撹拌ミキサーに入れて混合した。次に、これを3本ロール混練機に3回通して混練し、粘土状の成形材料とした。
次に、この成形材料を図1に示すスクリュー式の押出成形機1の投入口2から投入して押し出し成形を行なった。
なお、スクリュー式の押出成形機1の上段バレル3,下段バレル6,下段スクリュー7の内部は水冷ジャケット構造とし、10℃以下に設定された冷却水を内部に循環させることによって、成形材料の温度上昇を防止した。さらに、真空ポンプを作動させ、真空室5を脱気しながら成形を行なった。
なお、スクリュー式の押出成形機1,20の成形条件としては、棒状成形体の成形速度が8〜12m/分となるように、上段スクリュー4および下段スクリュー7の回転数を調整した。
そして、得られた棒状成形体は、成形直後に10cmの長さに切断した後、自然乾燥で12時間の乾燥を行なった後に、バッチ式の焼成炉内に入炉し、焼成して棒状セラミック部材を得た。このときの焼成の温度パターンは、大気中で常温から400℃までを3時間で上昇させた後、2時間保持し、その後1600℃までを6時間で上昇させた後、2時間保持し、6時間かけて常温まで冷却する温度パターンとした。棒状セラミック部材はそれぞれの成形機で100本ずつ作製した。
得られた棒状セラミック部材の変形量を測定するための位置を図4に示す。図4に示すように、棒状セラミック部材50を工具顕微鏡のテーブル(不図示)に載せて、工具顕微鏡の寸法測定目盛りを有した接眼レンズから棒状セラミック部材50を見て確認し、その時に見える十字線51を棒状セラミック部材50の両端に合うようにテーブルを調整して、変形量が最大の場所の変形量Hを測定した。また、クラックの発生の有無は、浸透探傷液で処理した後、目視にて確認した。さらに、棒状セラミック部材の長さ方向の中央部付近をダイヤモンド砥石を装着した回転式の切断機にて切断し、断面を倍率30倍の双眼顕微鏡で観察して、内部における空洞の発生の有無を確認した。
その結果、本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて成形した棒状セラミック部材は、変形量Hの最大値が0.9mmであり、クラックの発生数は100本中2本であった。これに対し、従来のスクリュー式の押出成形機20を用いて成形した棒状セラミック部材は、変形量Hの最大値が2.8mmと大きく、クラックの発生数も100本中8本と多かった。
また、本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて成形した棒状セラミック部材は、内部の空洞の発生数が100本中0本であったのに対し、従来のスクリュー式の押出成形機20を用いて成形した棒状セラミック部材は、内部の空洞の発生数が100本中21本と多かった。
このことから、スクリュー先端部7aと金型8の出口部8aとの間に、複数の貫通孔9aを有する板状体9を設けており、板状体9にスクリュー先端部7aから見て金型8の出口部8aを覆うように貫通孔非形成領域9bを設けた本発明のスクリュー式の押出成形機1で得られた棒状成形体は、密度のばらつきが少なく、そのために内部の空洞の発生が少なく、乾燥時や焼成時における変形やクラックの発生が少ないものとなることが確認された。
さらに、上記と同様の方法により、図1に示す本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて棒状セラミック部材を作製した。その際、図1(b)に示す板状体9の複数の貫通孔9aの面積を変化させたものを用いて、複数の貫通孔9aの開口面積の最適な範囲の確認を行なった。
その結果、複数の貫通孔9aの開口面積が下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して30%以上の場合には、押出成形による棒状成形体を問題なく得ることができたが、複数の貫通孔9aの開口面積が下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して30%未満の場合には、下段スクリュー7の押し出し圧力に対する板状体9の抵抗が大きいために、成形速度が極端に低下する現象が見られた。
さらに、複数の貫通孔9aの開口面積が下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して20%未満の場合には、成形材料への板状体9の抵抗がさらに大きくなるために、下段スクリュー7が成形材料を金型8の出口部8aから押し出すことが困難となり、良好な棒状成形体を得ることができなかった。
このことから、複数の貫通孔9aの開口面積は、下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向に垂直の断面積に対して20%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、複数の貫通孔9aの開口面積は、下段バレル6の下段スクリュー7の軸心方向にの断面積に対して30%以上であることが良好であることが確認された。
(実施例2)
次に、図2(b)に示すように、成形材料が貫通孔9aを通過する際にスクリューの回転方向と逆方向の流れを与えるように角度をつけて貫通孔9aを形成した本発明のスクリュー式の押出成形機1と、従来のスクリュー式の押出成形機20とを用いて、実施例1と同様に棒状セラミック部材を作製した。このときの金型8の出口部8aは一辺が5mmの正方形とし、ダイヤモンド砥石を装着した回転式の切断機にて棒状セラミック部材を10mmの長さに切断して20本作製した。この棒状セラミック部材は、金型8の出口部8aがこの様に一辺が5mmの正方形の場合は、棒状成形体18は角柱となる。
この場合の得られた棒状セラミック部材が、角柱の棒状成形体18として金型8の出口部8aから押し出される状態を図5に示す。成形材料が図5に示すように、金型8の出口部8aを通過することにより、下段スクリューの回転方向(図5では押し出し方向に右回転)に成形された角柱の棒状成形体18も回転しながら押し出されるために、捻れて変形する。
この捻れて変形した角柱の棒状成形体18を焼成して得られた棒状セラミック部材の捻れて変形した角度を測定する位置を図6に示す。
図6は角柱の棒状成形体18を焼成した後、図5の矢印の方向から見たときと同じ方向からみた棒状セラミック部材の断面を表している。
次に、得られた棒状セラミック部材60の、捻れて変形した角度の測定は、角度測定機能の付いた投影機にて、棒状セラミック部材60をテーブル(不図示)に10mmの長さ方向に立てて載せ、先ず棒状セラミック部材60の底面部の一辺63にピントを合わせてからテーブルを調整して、スクリーン上に書いてある基準カーソル62に棒状セラミック部材60の底面部の一辺63を合わす。次に、棒状セラミック部材60の上面の一辺64にピントを合わせてから基準カーソルを棒状セラミック部材60の上面の一辺64に合うように回転させて、棒状セラミック部材60が捻れて変形した角度Sの測定を行なった。
その結果、成形材料が貫通孔9aを通過する際にスクリューの回転方向と逆方向の流れを与えるように角度をつけて貫通孔9aを形成した板状体9を設けた本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いたときの棒状セラミック部材60が捻れて変形した角度Sは0〜0.2度と小さかったのに対し、従来のスクリュー式の押出成形機20を用いたときの棒状セラミック部材60が捻れて変形した角度Sは0.3〜0.8度と大きかった。
(実施例3)
次に、図3に示すように、板状体9の貫通孔非形成領域9bに円錐形状の隆起部9cを設けた本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて、実施例1,2と同様に棒状セラミック部材を作製し、得られた棒状セラミック部材が変形やクラック、内部の欠陥の少ないものとなるかどうかを確認する試験を行なった。
その結果、得られた棒状セラミック部材の変形量Hの最大値は0.5mmであり、クラック発生数は100本中1本であった。また、内部の空洞の発生数は100本中0本であった。
このことから、板状体9の貫通孔非形成領域9bに円錐形状の隆起部9cを設けた本発明のスクリュー式の押出成形機1を用いて得られる棒状成形体は、密度のばらつきがさらに少なく、内部の空洞の発生が無い、また、乾燥、焼成時における変形やクラックがさらに少ないものとなることが確認された。
また、成形材料が板状体9を通過する際の抵抗が小さいため、押し出し圧力の小さい小型の押出成形機1においても密度のばらつきの少ない成形体を得ることができることが確認された。
本発明のスクリュー式の押出成形機の実施の形態の一例を示す、(a)は概略断面図、(b)は(a)におけるスクリュー先端部から金型の出口部の方向を見たときの拡大断面図である。
本発明のスクリュー式の押出成形機における板状体の一例を示す、(a)は板状体の拡大断面図、(b)はスクリュー先端部から金型の出口部を見たときの拡大断面図である。
本発明のスクリュー式の押出成形機における板状体の他の一例を示す、板状体の拡大断面図である。
本発明の棒状セラミック部材の変形量を測定する位置を示す図である。
棒状成形体が金型から捻れて押し出される状態を示す斜視図である。
本発明の棒状セラミック部材が捻れて変形した角度を測定する位置を示す図である。
従来のスクリュー式の押出成形機の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1:押出成形機
2:投入口
3:上段バレル
4:上段スクリュー
5:真空室
6:下段バレル
7:下段スクリュー
7a:スクリュー先端部
8:金型
8a:出口部
9:板状体
9a:貫通孔
9b:貫通孔非形成領域
9c:隆起部
10:上段軸受け
11:下段軸受け
12:凸部