JP2008128070A - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の空燃比制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】この発明は、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を触媒の状態変化に合わせて適切に行うことができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吸入空気量Gaの変化(図2の実線)に対して制御目標空燃比の変化を遅らせる(図2の矢印)。
【選択図】図2

Description

この発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関する。
従来、例えば、特開2005−48711号公報に開示されているように、吸入空気量に合わせて燃料噴射量を補正する内燃機関の空燃比制御装置が知られている。上記従来の技術の内燃機関は、排気通路に排気ガス浄化用の触媒を有している。そして、触媒の上流側の空燃比センサの出力に基づいてメインのフィードバック制御が実行され、一方、触媒の下流側の酸素センサの出力に基づいてサブのフィードバック制御が実行される。
触媒には、流入してくる排気ガスを効率的に浄化することのできる触媒ウィンドウが存在する。換言すると、触媒は、流入してくる排気ガスの空燃比が、その触媒ウィンドウに収まっている場合に良好な浄化特性を発揮する。上記従来の空燃比制御装置では、メインのフィードバック制御とサブのフィードバック制御が実行されることで、触媒へと流入する排気ガスが触媒ウィンドウ内に収まるように燃料噴射量の制御が行われている。
ところが、上述した触媒ウィンドウは、内燃機関の運転状態に応じて変化することがある。具体的には、触媒ウィンドウは、吸入空気量が増えるに連れてリッチ化する傾向にある。メインおよびサブのフィードバック制御が、ある触媒ウィンドウに応じた空燃比制御を実行している場合に、触媒ウィンドウが変化すると、同じフィードバック制御が継続されていても触媒の下流に未燃成分が流出する事態が生じ得る。
そこで、上記従来の技術では、メインのフィードバック制御とサブのフィードバック制御とで空燃比を制御するとともに、吸入空気量が多量であるほど、触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチ化させることとしている。これにより、運転状態に応じて触媒ウィンドウが変化しても、良好なエミッション特性を保つことができる。
特開2005−48711号公報
吸入空気量増加に伴って触媒ウィンドウがリッチ化する要因の一つに、吸入空気量増加に伴う触媒の温度上昇がある。吸入空気量増加による触媒の温度上昇は、吸入空気量増加の影響により排気ガスから触媒へ与えられる熱量が増加することにより生ずる。
吸入空気量の変化後、触媒の温度が上昇するまでには、ある程度の時間がかかる。このため、吸入空気量の増加から触媒ウィンドウの変化までには、ある程度の時間を要する。この時間を考慮せずに、上記従来の空燃比制御を吸入空気量の増加後に即座に行うと、触媒ウィンドウの変化が未だ生じていないにもかかわらず空燃比がリッチ化されるという事態が生じうる。この場合、触媒ウィンドウの変化と空燃比のリッチ化とが適合せず、エミッション特性に好ましくない影響を及ぼしてしまう。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を触媒の状態変化に合わせて適切に行うことができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の空燃比制御装置であって、
内燃機関の排気通路に配置される触媒と、
前記触媒の上流に配置される上流側排気ガスセンサと、
前記触媒に流入する排気ガスの空燃比が制御目標空燃比と一致するように、前記上流側排気ガスセンサの出力を燃料噴射量にフィードバックする空燃比フィードバック手段と、
前記内燃機関の吸入空気量を計測する吸入空気量計測手段と、
前記制御目標空燃比を設定する手段であって、前記吸入空気量の増加時に該吸入空気量の変化に遅れて該制御目標空燃比をリッチ側に変化させ、該吸入空気量の減少時に該吸入空気量の変化に遅れて該制御目標空燃比をリーン側に変化させる制御目標空燃比設定手段と、
を有することを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記触媒のS、HC、CO吸着量のうち少なくとも一つが多量であるほど前記吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段を有することを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記触媒の酸素吸蔵容量(OSC:Oxygen Storage Capacity)が小さいほど前記吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段を有することを特徴とする。
また、第4の発明は、第1乃至3の発明において、
前記吸入空気量が多いほど該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段を有することを特徴とする。
また、第5の発明は、第1乃至4の発明において、
前記触媒の下流に配置される下流側排気ガスセンサと、
前記触媒から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように、前記下流側排気ガスセンサの出力を燃料噴射量にフィードバックするサブフィードバック手段と、
を有し、
前記吸入空気量の増加時に前記下流側排気ガスセンサの出力がリッチ側であるほど該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを大きく設定する吸気増加時遅れパラメータ算出手段を有することを特徴とする。
また、第6の発明は、第1乃至5の発明において、
前記触媒の下流に配置される下流側排気ガスセンサと、
前記触媒から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように、前記下流側排気ガスセンサの出力を燃料噴射量にフィードバックするサブフィードバック手段と、
を有し、
前記吸入空気量の減少時に前記下流側排気ガスセンサの出力がリーン側であるほど該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを大きく設定する吸気減少時遅れパラメータ算出手段を有することを特徴とする。
また、第7の発明は、第1乃至6の発明において、
前記吸入空気量の減少時であって前記制御目標空燃比設定手段による前記制御目標空燃比の設定により該制御目標空燃比がリッチ側に変化する場合には、該制御目標空燃比設定手段による該制御目標空燃比の設定を禁止する吸気減少時空燃比設定制限手段を有することを特徴とする。
また、第8の発明は、第1乃至7の発明において、
前記吸入空気量の増加時であって前記制御目標空燃比設定手段による前記制御目標空燃比の設定により該制御目標空燃比がリーン側に変化する場合には、該該制御目標空燃比設定手段による該制御目標空燃比の設定を禁止する吸気増加時空燃比設定制限手段を有することを特徴とする。
また、第9の発明は、第1乃至8の発明において、
前記制御目標空燃比設定手段が、
前記制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように前記基本値に加減乗除すべき補正値を算出する補正値算出手段と、
前記補正値を前記吸入空気量の変化に対して所定の遅延時間だけ遅らせて出力する補正時期ディレイ手段と、
を含むことを特徴とする。
また、第10の発明は、第1乃至9の発明において、
前記制御目標空燃比設定手段が、
前記制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように前記基本値に加減乗除すべき補正値を算出する補正値算出手段と、
前記補正値の変化を時間方向に平滑化させる補正値変化平滑化手段と、
を含むことを特徴とする。
また、第11の発明は、第1乃至10の発明において、
前記制御目標空燃比設定手段が、
前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し、該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように、該制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
前記基本値を前記吸入空気量の変化に対して所定の遅延時間だけ遅らせて出力するディレイ生成手段と、
を含むことを特徴とする。
また、第12の発明は、第1乃至11の発明において、
前記制御目標空燃比設定手段が、
前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し、該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように、該制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
前記基本値の変化を時間方向に平滑化させた値を出力する平滑化手段と、
を含むことを特徴とする。
第1の発明によれば、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を、触媒の温度変化に合わせて適切に行うことができる。このため、本発明によれば、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができ、良好なエミッション特性を実現することができる。
第2の発明によれば、触媒の被毒状態に応じて、制御目標空燃比変化を適切に遅らせることができ、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができる。
第3の発明によれば、触媒の酸素吸蔵容量に応じて、制御目標空燃比変化を適切に遅らせることができ、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができる。
第4の発明によれば、吸入空気量に応じて、制御目標空燃比変化を適切に遅らせることができる。吸入空気量が相対的に大きい場合には、触媒温度が相対的に速く変化する。このため、第4の発明によれば、吸入空気量による触媒温度上昇速度の依存性を反映させて、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができる。
第5の発明によれば、吸入空気量の増加時に触媒の雰囲気がリッチである場合には、吸入空気量変化に対する制御目標空燃比変化の遅れを相対的に大きくすることができる。触媒の雰囲気がリッチである状況下で、更に、吸入空気量増加に伴うリッチ化が行われると、空燃比のリッチ化が過度に行われてしまうおそれがある。第5の発明によれば、このような過剰なリッチ化を回避しつつ、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を行うことができる。
第6の発明によれば、吸入空気量の減少時に触媒の雰囲気がリーンである場合には、吸入空気量変化に対する制御目標空燃比変化の遅れを相対的に大きくすることができる。触媒の雰囲気がリーンである状況下で、更に、吸入空気量減少に伴うリーン化が行われると、空燃比のリーン化が過度に行われてしまうおそれがある。第6の発明によれば、このような過剰なリーン化を回避しつつ、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を行うことができる。
第7の発明によれば、吸入空気量の減少時であって制御目標空燃比がリッチ化されるような場合には、当該リッチ側への変化を禁止することができる。これにより、吸入空気量減少により内燃機関の出力を抑制すべき時期に、リッチ化によるトルク増大が発生するのを(トルクショックを)回避することができる。
第8の発明によれば、吸入空気量の増加時であって制御目標空燃比がリーン化されるような場合には、当該リーン側への変化を禁止することができる。これにより、吸入空気量増加により内燃機関の出力を増大すべき時期に、リーン化によるトルク減少が発生し、出力増大がもたつくのを(もたつき感が生ずるのを)回避できる。
第9の発明によれば、吸入空気量に応じて排気ガスの空燃比がリッチ化およびリーン化するように制御目標空燃比に補正を加える際に、吸入空気量の変化後所定の遅延時間が経過するのを待ってから制御目標空燃比の変化が生じるように、当該補正を行うことができる。これにより、制御目標空燃比の変化の時期を、触媒温度が実際に変化する時期に近づけることができる。
第10の発明によれば、吸入空気量に応じて排気ガスの空燃比がリッチ化およびリーン化するように制御目標空燃比に補正を加える際に、吸入空気量の変化に比して制御目標空燃比の変化が緩やかになるように、当該補正を行うことができる。これにより、吸入空気量の変化が触媒温度に現実に反映される時期に対応させて、制御目標空燃比を変化させることができる。
第11の発明によれば、吸入空気量の変化後所定の遅延時間が経過するのを待ってから、制御目標空燃比の変化を生じさせることができる。これにより、制御目標空燃比の変化の時期を、触媒温度が実際に変化する時期に近づけることができる。
第12の発明によれば、吸入空気量に応じて排気ガスの空燃比がリッチ化およびリーン化するように制御目標空燃比を変化させる際に、吸入空気量の変化に比して制御目標空燃比の変化を緩やかにすることができる。これにより、吸入空気量の変化が触媒温度に現実に反映される時期に対応させて、制御目標空燃比を変化させることができる。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の空燃比制御装置の構成を説明するための図である。図1に示す通り、本実施形態の装置は、内燃機関の排気通路10に配置された上流触媒12および下流触媒14を備えている。上流触媒12および下流触媒14は、何れも、CO、HCおよびNOxを同時に浄化することのできる三元触媒である。
上流触媒12の上流には、メイン空燃比センサ16が配置されている。また、上流触媒12の下流には、サブ酸素センサ18が配置されている。メイン空燃比センサ16は、上流触媒12に流入する排気ガスの空燃比に対してほぼリニアな出力を発するセンサである。一方、サブ酸素センサ18は、上流触媒12から流出してくる排気ガスが理論空燃比に対してリッチであるか、或いはリーンであるかに応じて出力を急変させるセンサである。
メイン空燃比センサ16の出力、およびサブ酸素センサ18の出力は、それぞれECU(Electronic Control Unit)20に供給されている。ECU20には、更に、エアフロメータ22、および燃料噴射弁26などが接続されている。エアフロメータ22は、内燃機関の吸入空気量Gaを検出するセンサである。燃料噴射弁26は、内燃機関の吸気ポートに燃料を噴射するための電磁弁である。
[実施の形態1の基本動作]
本実施形態の装置は、メイン空燃比センサ16の出力やサブ酸素センサ18の出力などに基づいて空燃比フィードバック制御を実行する。空燃比フィードバック制御は、主に、メインのフィードバック制御とサブのフィードバック制御とで構成されている。
メインフィードバック制御は、主に、メイン空燃比センサ16の出力を基礎として内燃機関から排出される排気ガスの空燃比(以下、「制御空燃比」と称す)が制御目標空燃比に現実に一致するように、燃料噴射量を調節するための制御である。サブフィードバック制御は、メインフィードバック制御を補完して、内燃機関のエミッション特性を向上させるための制御である。このような空燃比フィードバック制御の具体的な内容に関しては、既に公知であるため、その詳細な説明は省略する。
触媒には、流入してくる排気ガスを効率的に浄化することのできる触媒ウィンドウが存在する。換言すると、触媒は、流入してくる排気ガスの空燃比が、その触媒ウィンドウに収まっている場合に良好な浄化特性を発揮する。本実施形態では、メインのフィードバック制御とサブのフィードバック制御が実行されることで、上流触媒12へと流入する排気ガスが触媒ウィンドウ内に収まるように燃料噴射量の制御が行われる。
この触媒ウィンドウは、内燃機関の運転状態に応じて変化することがある。具体的には、触媒ウィンドウは、吸入空気量が増えるに連れてリッチ化する傾向にある。そこで、実施の形態1では、メインのフィードバック制御とサブのフィードバック制御とで空燃比を制御するとともに、吸入空気量が多量であるほど、上流触媒12に流入する排気ガスの空燃比をリッチ化させることとする(以下、このような吸入空気量Ga増加に応じたリッチ化を、「リッチ化補正」とも呼称する)。なお、このような触媒ウィンドウの変化に対処する空燃比制御は、特開2005−48711号公報において既に公知となっているため、その詳細な説明は省略する。
[実施の形態1の特徴動作]
吸入空気量増加による触媒の温度上昇は、吸入空気量増加の影響により、排気ガスから触媒へ与えられる熱量が増加することにより生ずる。具体的には、吸入空気量の増加に合わせて燃料噴射量が増加し、燃料の増加により燃焼後の排気ガスの温度が上昇し、当該高温となった排気ガスが触媒に流れ込むなどの過程を経て、触媒温度が上昇する。
このため、吸入空気量の変化後、触媒の温度が変化して触媒ウィンドウに影響を及ぼすまでには、ある程度の時間を要する。この時間を考慮せずに、上記の空燃比制御を吸入空気量の増加後に即座に行うと、触媒ウィンドウの変化が未だ生じていないにもかかわらず空燃比がリッチ化されるという事態が生じうる。
そこで、実施の形態1では、このような吸入空気量変化に対する触媒温度変化の遅れを考慮して、空燃比制御を行うこととする。具体的には、実施の形態1では、吸入空気量の変化に対して所定の遅延時間dだけ、リッチ化補正による制御目標空燃比の変化を遅らせることとする。
図2は、上述した本実施形態の動作を具体的に説明するための図である。図2は制御目標空燃比の時間変化を示しており、図2の横軸が時間、縦軸が制御目標空燃比に対応している。また、図2では、説明の便宜上、制御目標空燃比とともに吸入空気量Gaを縦軸にとっている。実施の形態1では、図2に示すように、吸入空気量Gaの増加(図2の実線)に対して、所定の遅延時間dだけ吸入空気量Gaの変化から遅れるように(図2の矢印)制御目標空燃比のリッチ化補正を行う(図2の破線)。
その結果、制御目標空燃比がリッチ化されるタイミングと、吸入空気量の変化が触媒温度に反映される時期とを近づけることができる。これにより、本発明によれば、吸入空気量Gaの変化後、上流触媒12の温度が変化して触媒ウィンドウに影響を及ぼすまでの時間を考慮して、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができる。
[実施の形態1の具体的処理]
図3は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。図3は、メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御が組み合わせて実行されるメインルーチンに対して、本実施形態が付加的に実行するサブルーチンのみを示している。
以下の説明では、制御目標空燃比をvabyf(t)とし、メインフィードバック制御およびサブフィードバック制御により算出されるフィードバック制御目標空燃比をvabyffdbk(t)とし、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化制御のための補正値(以下、触媒特性補正値とも呼称する)をvafcat(t)とする。そして、これらの間には下記の関係式が成立しているものとする。
vabyf(t)=vabyffdbk(t)+vafcat(t) ・・・(1)
内燃機関の運転時、メインルーチンの実行中には、前述した公知の空燃比フィードバック制御に基づいて、時刻tにおけるフィードバック制御目標空燃比vabyffdbk(t)が算出されている。そして、吸入空気量Gaに応じた空燃比のリッチ化の為の補正値として、触媒特性補正値vafcatが加算されている。吸入空気量Gaが変化すると、当該変化に応じて、触媒特性補正値vafcat(t)が更新される。本実施の形態の図3に示すルーチンは、メインルーチン内における触媒特性補正値vafcat(t)の算出時に付加的に実行されるものである。
なお、上述したメインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御を組み合わせて実行するルーチンの詳細については、特開2005−48711号公報において既に公知である。従って、その詳細な説明は省略する。また、実施の形態1では、予め実験などにより、吸入空気量の変化後触媒の温度が変化するまでの時間を計測し、遅延時間dを好適な値に定めておくこととする。
また、本実施の形態では、吸入空気量Gaに対応する触媒特性補正量のマップを予め作成し、ECU20に記憶しておくこととする。図4は、吸入空気量Gaと触媒特性補正量の関係を定めたマップの一例である。図4のように、触媒特性補正量は、吸入空気量Gaが多量であるほど、補正後の制御目標空燃比がリッチ化するように(換言すれば、吸入空気量Gaが少量であるほど補正後の制御目標空燃比がリーン化するように)定められている。なお、このようなマップの詳細は、特開2005−48711号公報において既に公知であるため、その説明は省略する。
図3に示すルーチンでは、先ず、エアフロメータ22から時刻tにおける吸入空気量Ga(t)が取得される。そして、上述したマップに基づいて当該Ga(t)に対応する触媒特性補正量が算出された後、この値が時刻tにおける仮触媒特性補正値vafcatb(t)として記憶(外部記憶装置等に保持)される(ステップS100)。
次に、遅延時間d分だけ遡った時刻(t-d)における仮触媒特性補正値vafcatb(t-d)が読み出され、時刻tにおける触媒特性補正値として、触媒特性補正値vafcat(t)に入力される(ステップS110)。その後、今回のルーチンが終了し、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比vabyf(t)に反映される。これにより、吸入空気量Gaの変化から遅延時間dの経過後、制御目標空燃比のリッチ化が行われる。
以上説明したルーチンが継続的に実行されることで、触媒特性補正値を、吸入空気量Gaの変化から所定の遅延時間dだけ遅れて変化させることができる。これにより、吸入空気量Gaの変化から所定の遅延時間dだけ遅れて、制御目標空燃比のリッチ化を行うことができる。その結果、触媒の温度変化に対応させて空燃比制御を精度よく行うことができ、良好なエミッション特性を実現することができる。
尚、上述した実施の形態1では、上流触媒12が前記第1の発明における「触媒」に、メイン空燃比センサ16が前記第1の発明における「上流側排気ガスセンサ」に、エアフロメータ22が前記第1の発明における「吸入空気量計測手段」に、それぞれ相当している。また、上述した実施の形態1の説明中の「メインフィードバック制御」が、前記第1の発明の「空燃比フィードバック手段」に相当している。また、上述した実施の形態1では、ECU20が、上記ステップS100およびS110の処理を実行することにより、「制御目標空燃比設定手段」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態1では、メインフィードバック制御およびサブフィードバック制御によりフィードバック制御目標空燃比vabyffdbk(t)が算出される処理が、前記第9の発明の「前記制御目標空燃比の基本値を設定する手段」に相当し、vabyffdbk(t)が、前記第9の発明の「基本値」に相当している。また、上記ステップS100の処理が実行されることにより前記第9の発明の「補正値算出手段」が、ステップS110の処理が実行されることにより「補正時期ディレイ手段」がそれぞれ実現されるとともに、遅延時間dが、前記第9の発明の「遅延時間」に対応している。
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
実施の形態1の具体的処理では、吸入空気量Gaの値から、一旦、仮触媒特性補正値vafcatb(t)を算出した。そして、遅延時間d分だけ遡った時刻(t-d)における仮触媒特性補正値vafcatb(t-d)を、触媒特性補正値vafcat(t)に入力し、制御目標空燃比に反映させている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、吸入空気量Gaの変化に対して所定の遅延時間dだけ制御目標空燃比の変化を遅らせる種々の処理を、本発明における「制御目標空燃比設定手段」として実行することができる。
具体的には、例えば、空燃比のリッチ化補正を行う際に、触媒特性補正値ではなく、制御目標空燃比そのものの値を所定の遅延時間dだけ遅らせるような処理を行ってもよい。例えば、先ず、実施の形態1におけるメインルーチンにより時刻tの仮制御目標空燃比 vabyfb(t)を算出して記憶しておくこととし、その後、遅延時間dだけ遡った仮制御目標空燃比 vabyfb(t-d)の値を制御目標空燃比 vabyf(t)として用いるような処理を行うことができる。
このような処理により、吸入空気量Gaの変化が生ずると、先ず、触媒特性補正値vafcat(t)が変化することでリッチ化またはリーン化された制御目標空燃比 vabyfb(t)が設定され、当該リッチ化またはリーン化された制御目標空燃比が遅延時間dの経過後に出力されることになる。このような処理によっても、吸入空気量Gaの変化に対して所定の遅延時間dだけ制御目標空燃比の変化を遅らせる処理を実現することができる。
なお、第1変形例では、「メインルーチンにより時刻tの仮制御目標空燃比 vabyfb(t)を算出する」処理が、前記第11の発明の「前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し、該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように、該制御目標空燃比の基本値を設定する手段」に、「遅延時間dだけ遡った仮制御目標空燃比 vabyfb(t-d)の値を制御目標空燃比 vabyf(t)として読み出す」処理が、前記第11の発明の「ディレイ生成手段」に相当し、遅延時間dが、前記第11の発明の「遅延時間」に相当している。
(第2変形例)
触媒特性補正値vafcat(t)の算出方法は、実施の形態1の具体的処理に限られない。例えば、実施の形態1の処理と異なり、所定の遅延時間dだけ遡った時刻におけるGaに基づいて、直接、触媒特性補正値vafcat(t)を算出することとしてもよい。具体的には、所定時刻tの吸入空気量Ga(t)を逐次記憶しておき、所定時刻tにおける触媒特性補正値vafcat(t)の算出を、Ga(t-d)の値に基づいて行うようにしてもよい。なお、この第2変形例では、所定の遅延時間dだけ遡った時刻におけるGa(即ちGa(t-d))に基づいて触媒特性補正値vafcat(t)が算出され、その後メインルーチンにおいて当該vafcat(t)が制御目標空燃比に反映されることにより、前記第1の発明の「制御目標空燃比設定手段」が実現されている。
なお、上述した実施の形態1では、触媒特性補正値をフィードバック制御目標空燃比に加算することで、制御目標空燃比の補正を行った。換言すれば、触媒特性補正値がフィードバック制御目標空燃比に加算すべき値として算出、設定され、吸入空気量Gaに応じた触媒特性補正値のマップ(図4)もこれに沿って作成された。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。吸入空気量Gaの増加に応じて制御目標空燃比がリッチ化し、吸入空気量Gaの減少に応じて制御目標空燃比がリーン化するように、フィードバック制御目標空燃比に、種々の補正値を加減乗除すればよい。そして、当該補正値を定めるマップも、加減乗除のいずれを選択するかに応じて、適宜好適に作成することができる。
実施の形態2.
[実施の形態2の構成および基本動作]
次に、図5および図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1と同様の構成で、同様の基本動作(メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御)を実行できるようになっている。
[実施の形態2の特徴動作]
上述した実施の形態1は、吸入空気量Gaの変化に対して所定の遅延時間dだけ制御目標空燃比の変化を遅らせることにより、吸入空気量Gaの変化に応じた空燃比制御を精度よく行うこととしている。これに対して、本実施形態の装置は、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の変化の応答を鈍くすることにより、同様の機能を実現する点に特徴を有している。
図5は、上述した本実施形態の動作を具体的に説明するための図である。図5では、図2と同様に、横軸が時間、縦軸が制御目標空燃比に対応し、制御目標空燃比とともに吸入空気量Gaを縦軸にとっている。実施の形態1で述べたように、吸入空気量Gaの変化が触媒の状態変化に寄与して触媒ウィンドウが変化するまでには、所定の時間を要する。すなわち、触媒の温度は、吸入空気量Gaが変化した後で、当該Gaの変化から遅れて緩やかに変化することになる。また、触媒温度の上昇速度は、吸入空気量Gaの値や、その変化量によっても左右される。
本実施形態は、この点を考慮して、図5に示すように、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の変化の応答を鈍くすることとする(図5の破線)。より具体的には、実施の形態2では、所定の平滑化係数を用いて、制御目標空燃比を時間方向に平滑化する。このようにすることで、吸入空気量Gaの変化に応じた制御目標空燃比のリッチ化を、吸入空気量Gaの変化が触媒温度に現実に反映される時期に精度よく適合させることができる。
[実施の形態2の具体的処理]
図6は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ステップS110の処理が、ステップS210の処理に置き換えられている点を除き、図3に示すルーチンと同様である。以下、図6において、図3に示すステップと同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、その他の図3のルーチンと同様の点についてもその説明を省略する。
図6に示すルーチンでは、ステップS100の処理が終了すると、次に、以下に示す演算式に従って、平滑化係数Aを用いて時間方向に平滑化された触媒特性補正値vafcat(t)が算出される(ステップS210)。
vafcat(t)=vafcat(t-1)+{vafcatb(t)-vafcat(t-1)}/A ・・・ (2)
なお、本実施形態では、予め実験などにより、吸入空気量Gaの変化後上流触媒12の温度が変化して触媒ウィンドウに影響を及ぼすまでの経過を測定しておき、これに基づいて、触媒特性補正値vafcat(t)が十分に平滑化されうるような好適な平滑化係数Aを定めておくこととする。ステップS210の実行後、本ルーチンが終了し、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比 vabyf(t)に反映される。
以上説明した処理により、本実施の形態では、吸入空気量Gaの変化に比して触媒特性補正値vafcat(t)の変化を緩やかにすることができる。これにより、吸入空気量Gaの変化が上流触媒12の温度に現実に反映される時期に合わせて、制御目標空燃比 vabyf(t)の補正を行うことができる。その結果、吸入空気量Gaの変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができ、良好なエミッション特性を実現することができる。
尚、上述した実施の形態2では、上流触媒12が前記第1の発明における「触媒」に、メイン空燃比センサ16が前記第1の発明における「上流側排気ガスセンサ」に、エアフロメータ22が前記第1の発明における「吸入空気量計測手段」に、それぞれ相当している。また、上述した実施の形態2が備える「メインフィードバック制御」が、前記第1の発明の「空燃比フィードバック手段」に相当している。また、上述した実施の形態2では、ECU20が上記ステップS100およびS210の処理を実行することにより、前記第1の発明の「制御目標空燃比設定手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態2では、メインフィードバック制御およびサブフィードバック制御によりフィードバック制御目標空燃比vabyffdbk(t)を算出する処理が、前記第10の発明の「前記制御目標空燃比の基本値を設定する手段」に相当し、上記ステップS100の処理が実行されることにより、前記第10の発明の「補正値算出手段」が、ステップS210の処理が実行されることにより、前記第10の発明における「補正値変化平滑化手段」が、それぞれ実現されている。
なお、実施の形態2では、上述した演算式(2)に従って、制御目標空燃比を平滑化した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の変化の応答を鈍くする手法、より具体的には、制御目標空燃比を所定の平滑化係数を用いて時間方向に平滑化させる種々の演算手法を、演算式(2)に換えて利用することができる。
[実施の形態2の変形例]
実施の形態2の具体的処理では、吸入空気量Gaの値から、一旦、仮触媒特性補正値vafcatb(t)を算出した。そして、平滑化係数Aを用いて時間方向に平滑化された触媒特性補正値(vafcat(t-1)+{vafcatb(t)-vafcat(t-1)}/A)を、触媒特性補正値vafcat(t)に入力し、制御目標空燃比に反映させている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、吸入空気量Gaの変化に対して制御目標空燃比の変化の応答を鈍くする種々の処理を、本発明における「制御目標空燃比設定手段」として実行することができる。
具体的には、例えば、空燃比のリッチ化補正を行う際に、触媒特性補正値ではなく、制御目標空燃比そのものの値を平滑化係数Aを用いて平滑化する処理を行ってもよい。例えば、先ず、実施の形態1におけるメインルーチンにより時刻tの仮制御目標空燃比 vabyfb(t)を算出して記憶しておくこととする。このような処理により、吸入空気量Gaの変化に応じて触媒特性補正値vafcat(t)が変化することでリッチ化またはリーン化された、仮制御目標空燃比 vabyfb(t)=vabyffdbk(t)+vafcat(t)が設定される。
その後、仮制御目標空燃比 vabyfb(t)を、平滑化係数Aを用いて時間方向に平滑化した値(vabyfb(t-1)+{vabyfb(t)-vabyfb(t-1)}/A)を制御目標空燃比 vabyf(t)として用いるような処理を行うことができる。これにより、当該リッチ化またはリーン化した仮制御目標空燃比の変化を時間方向に平滑化した値が出力され、現実の制御目標空燃比として用いられることになる。これにより、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の変化の応答を鈍くする処理を、実現することができる。
なお、上述した実施の形態2の第1変形例では、「メインルーチンにより時刻tの仮制御目標空燃比 vabyfb(t)を算出する」処理が、前記第12の発明の「前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し、該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように、該制御目標空燃比の基本値を設定する手段」に相当している。また、第1変形例の「平滑化係数Aを用いて時間方向に平滑化された仮制御目標空燃比(vabyfb(t-1)+{vabyfb(t)-vabyfb(t-1)}/A)を制御目標空燃比 vabyf(t)として用いる」処理が、前記第12の発明の「平滑化手段」に相当している。
なお、実施の形態1で述べた「吸入空気量の変化に対して所定の遅延時間dだけ制御目標空燃比の変化を遅らせる」思想と、実施の形態2で述べた「吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の変化の応答を鈍くする」思想は、組み合わせて用いてもよい。その場合には、先ず実施の形態1の思想を用いてから、得られた出力に対して実施の形態2の思想を用いてもよいし、逆に、実施の形態2の思想を用いてから実施の形態1の思想を用いることとしてもよい。
また、実施の形態1の第1変形例で述べた手法と、実施の形態2の第1変形例で述べた手法とを、組み合わせて用いても良い。更に、実施の形態1、およびその第1変形例、実施の形態2、およびその第2変形例、の4つの手法から、適宜好適な手法を選択し、組み合わせて用いても良い。これらの処理を適宜組み合わせることで、吸入空気量に対する制御目標空燃比の変化を所望の時間だけ遅らせて、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができる。
実施の形態3.
[実施の形態3の構成、基本動作]
次に、図7および図8を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1とほぼ同様の構成で、同様の基本動作(メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御)を実行できるようになっている。そして、本実施形態の装置は、実施の形態1の装置に加え、上流触媒12の被毒状態を推定する処理と、上流触媒12の酸素吸蔵容量(OSC:Oxygen Storage Capacity)を推定する処理とを実行できるように構成されている。
触媒の被毒状態を検知する方法としては、触媒に吸着しているS、HC、COの量を推定するなどの種々の方法が、既に公知となっている。OSCを検知する方法についても、種々の手法が既に公知となっている。これらの手法については新規な事項ではないため、その詳細な内容については説明を省略する。
[実施の形態3の特徴]
実施の形態1および2では、制御目標空燃比の変化を吸入空気量の変化に対して遅らせる処理に用いるパラメータ、すなわち遅延時間dまたは平滑化係数A(以下、これらを総称して「遅れパラメータ」とも呼称する)を、予め好適な値に定められた固定値とした。これに対し、本実施形態では、この遅れパラメータを、上流触媒12の状態に応じて逐次好適な値に更新する点に特徴を有している。具体的には、本実施形態では、触媒の被毒が進むほど、およびOSCが小さいほど、遅れパラメータを小さな値に設定することとする。
図7(a)は、本実施の形態における、被毒状態と遅れパラメータとの関係を定めたマップの一例である。被毒が大きくなるほど、遅れパラメータの値が小さく設定されている。図7(b)は、触媒劣化状態と遅れパラメータとの関係を定めたマップの一例である。劣化が大きいほど、遅れパラメータの値が小さく設定されている。本実施形態では、予め実験などを行い、触媒の被毒や劣化により変化する触媒の応答性についての傾向を把握し、これらの図に示すようなマップを作成しておくこととする。
本実施の形態では、上述したマップに基づき、実施の形態1および2の動作における遅れパラメータ(遅延時間dまたは平滑化係数A)を定めることとする。具体的には、吸入空気量Gaが増加したのに応じて制御目標空燃比のリッチ化を行う際に、上流触媒12の被毒状態やOSCを推定し、触媒の状態に関する情報を取得する。そして、上述したマップを参照し、被毒状態およびOSCに基づいて、好適な遅れパラメータを決定する。その後、得られた遅れパラメータに基づいて、実施の形態1、2で述べた処理を実行する。
以上の処理によれば、触媒の被毒状態および酸素吸蔵容量(OSC)に基づいて、触媒の状態に応じた適切な遅延時間または平滑化係数を定めることができ、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができる。
[実施の形態3の具体的処理]
図8は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンでは、ステップS110の処理が、ステップS310〜S330の処理に置き換えられている点を除き、図3に示すルーチンと同様である。以下、図8において、図3に示すステップと同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、その他の図3のルーチンと同様の点についてもその説明を省略する。
なお、図8のルーチンに関しては、便宜上、遅延時間dと平滑化係数Aを総括した概念である遅れパラメータαを用いて、その説明を行うこととする。つまり、遅れパラメータαに関して以下説明する事項については、遅延時間dまたは平滑化係数Aと読み替えることが可能である。また、本実施形態では、図8のルーチンを実行する前に、上述した被毒状態と遅れパラメータとの関係、および酸素吸蔵量(OSC)と遅れパラメータとの関係についてのマップが、ECU20に予め記憶されているものとする。
図8に示すルーチンでは、ステップS100の処理が終了すると、触媒状態の推定処理がなされる(ステップS310)。具体的には、本実施形態では、上述した触媒のS、HC、CO吸着量を推定する処理、および、OSCを推定する処理が実行される。そして、これらの処理の結果がECU20に入力される。
次に、ECU20内に記憶されたマップが参照され、ステップS310で得られた被毒状況、OSCに応じた遅れパラメータαが算出される(ステップS320)。なお、本実施形態では、被毒状況に基づいて得られた遅れパラメータと、OSCに基づいて得られた遅れパラメータとの平均値を求め、これを遅れパラメータαとする。
その後、得られた遅れパラメータαに基づいて、触媒特性補正値vafcat(t)の算出が行われる(ステップS330)。具体的には、実施の形態1で述べた遅延処理を行う場合には、上記のステップに従って得られた遅延時間dに基づいて、図3のステップS110の処理が実行される。また、実施の形態2で述べた平滑化処理を行う場合には、上記のステップに従って得られた平滑化係数Aに基づいて、図6のステップS210の処理が実行される。その後、今回のルーチンが終了し、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比 vabyf(t)に反映される。
以上説明したように、図8に示すルーチンによれば、上流触媒12の被毒状態および酸素吸蔵容量(OSC)に基づいて、適切な遅延時間または平滑化係数を定めることができる。これにより、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができ、良好なエミッション特性を実現することができる。
尚、上述した実施の形態3では、ECU20が、上記ステップS310〜S320の処理を実行することにより、前記第2の発明における「前記触媒のS、HC、CO吸着量のうち少なくとも一つが多量であるほど前記吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段」、および前記第3の発明における「前記触媒の酸素吸蔵容量が小さいほど前記吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段」が実現されている。
[実施の形態3の変形例]
実施の形態3の具体的処理では、触媒の被毒状況と酸素吸蔵容量(OSC)の両方に基づいて、遅れパラメータαを算出した。しかしながら、本発明はこれに限られない。触媒の被毒状況のみ、または、OSCのみに基づいて、遅れパラメータαを算出することとしてもよい。また、本実施の形態では、被毒状況に基づいて得られた遅れパラメータと劣化状況に基づいて得られた遅れパラメータとの平均値を求め、これを遅れパラメータαとした。しかしながら、これ以外にも、所定の判断基準に則って一方の値を適用するなどの種々の判断手法に従って、遅れパラメータαを決定することができる。
実施の形態4.
[実施の形態4の構成、基本動作]
次に、図9および図10を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1と同様の構成で、同様の基本動作(メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御)を実行できるようになっている。
[実施の形態4の特徴]
実施の形態1および2では、制御目標空燃比の変化を吸入空気量の変化に対して遅らせる処理に用いるパラメータ、すなわち遅延時間dまたは平滑化係数A(以下、これらを総称して「遅れパラメータ」とも呼称する)を、予め好適な値に定められた固定値とした。本実施形態では、この遅れパラメータを、吸入空気量Gaに応じて逐次好適な値に更新する点に特徴を有している。
吸入空気量Gaが相対的に多い場合、排気ガスから触媒へ与えられる熱量が相対的に大きくなり、触媒の温度が速やかに上昇する。そこで、本実施の形態では、この点を考慮して、吸入空気量Gaの値が大きいほど遅れパラメータ(遅延時間dおよび平滑化係数A)を小さな値に設定する。
図9は、本実施形態における、吸入空気量Gaと遅れパラメータとの関係を説明するためのイメージ図である。吸入空気量Gaが大きくなるほど、遅れパラメータの値が小さく設定されている。本実施形態では、予め実験などを行い、吸入空気量Gaの値と触媒温度の上昇速度に関しての傾向を把握しておき、Gaと遅れパラメータについて定めたマップを作成しておくこととする。
本実施形態では、吸入空気量Gaが増加したのに応じて制御目標空燃比のリッチ化を行う際、上述したマップを参照して、吸入空気量Gaに応じた遅れパラメータを決定する。そして、この遅れパラメータを、実施の形態1、2の動作中の遅延時間dまたは平滑化係数Aとして用いる。以上の説明した本実施形態の動作により、吸入空気量に応じて、適切な遅延時間dまたは平滑化係数Aを定めることができる。
[実施の形態4の具体的処理]
図10は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンでは、ステップS310、S320の処理が、ステップS410の処理に置き換えられている点を除き、図8に示すルーチンと同様である。以下、図10において、図8に示すステップと同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、その他の図8のルーチンと同様の点についてもその説明を省略する。
なお、図10のルーチンでも、実施の形態3の図8のルーチンと同様に、便宜上、遅延時間dと平滑化係数Aを総括した概念である遅れパラメータαを用いて、その説明を行うこととする。また、本実施形態では、図10のルーチンを実行する前に、上述した吸入空気量Gaと遅れパラメータとの関係についてのマップが、ECU20に予め記憶されているものとする。
図10に示すルーチンでは、ステップS100の処理が終了すると、先ず、その時点での吸入空気量Gaがエアフロメータ22により取得される。そして、この値を基に上述したマップが参照され、遅れパラメータαが算出される(ステップS400)。その後、実施の形態3と同様に、触媒特性補正値vafcat(t)の算出が行われる(ステップS330)。その後、今回のルーチンが終了し、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比 vabyf(t)に反映される。
以上説明したように、図10に示すルーチンによれば、吸入空気量Gaに応じて、適切な遅延時間または平滑化係数を定めることができる。これにより、吸入空気量の変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができ、良好なエミッション特性を実現することができる。
尚、上述した実施の形態4では、ECU20が、上記ステップS410の処理を実行することにより、前記第4の発明における「該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段」が実現されている。
実施の形態5.
[実施の形態5の構成、基本動作]
次に、図11および図12を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1と同様の構成で、同様の基本動作(メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御)を実行できるようになっている。
[実施の形態5の特徴]
本実施形態は、遅延時間dまたは平滑化係数A(以下、これらを総称して「遅れパラメータ」とも呼称する)を、吸入空気量Gaの挙動(増加および減少)とサブ酸素センサ18の出力とに基づいて、逐次好適な値に設定する点に特徴を有している。前述したように、サブ酸素センサ18の出力は、上流触媒12から流出してくる排気ガスが理論空燃比に対してリッチであるか、或いはリーンであるかに応じて変化する。よって、サブ酸素センサ18の出力により、上流触媒12の雰囲気がリッチまたはリーンのいずれかにあるかを検知できる。
触媒がリッチ雰囲気にある状況下で、上述した吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化が実行されると、現時点でリッチ状態にある触媒雰囲気が、更にリッチ側に制御される。その結果、空燃比がリッチ側に偏りすぎてしまう場合がある。逆に、触媒がリーン雰囲気にある状況下で、上述した吸入空気量Gaの減少に応じた空燃比のリーン化が実行されると、現時点でリーン状態にある触媒雰囲気が、更にリーン側に制御される。これにより、空燃比がリーン側に偏りすぎてしまう場合がある。このように、吸入空気量Gaの挙動のみに着目して空燃比のリッチ化制御を行うと、空燃比がリッチ側またはリーン側に過補正されてしまう状況が生じうる。
そこで、本実施の形態ではこの点を考慮して、吸入空気量Gaの増加時には、サブ酸素センサ18の出力がリッチ側であるほど遅れパラメータを大きく設定する。そして、吸入空気量Gaの減少時には、サブ酸素センサ18の出力がリーン側であるほど遅れパラメータを大きく設定する。図11(a)は、吸入空気量Gaが増加する場合の、サブ酸素センサ18と遅れパラメータとの関係を定めたマップの一例である。図11(b)は、吸入空気量Gaが減少する場合の、サブ酸素センサ18と遅れパラメータとの関係を定めたマップの一例である。
触媒雰囲気がリッチ側にある場合には、一定時間後、サブフィードバック制御によって、制御目標空燃比がリーン側に補正されることが予測される。反対に、触媒雰囲気がリッチ側にある場合には、一定時間後、サブフィードバック制御によって、制御目標空燃比がリーン側に補正されることが予測される。従って、触媒雰囲気がリッチまたはリーンに偏っていたとしても、一定時間後には、その偏りが緩和されていることが予測される。
本実施の形態によれば、上述したような、リッチ雰囲気下で更にリッチ化の制御がなされうる場合、または、リーン雰囲気下で更にリーン化の制御がなされうる場合に、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の変化の遅れを大きくすることができる。これにより、触媒雰囲気がリッチまたはリーンに偏っている場合に、フィードバック制御により触媒雰囲気の偏りが緩和されるのを待って、吸入空気量Gaの変化に応じた空燃比制御を実行することができる。その結果、リッチ化またはリーン化の過補正が生ずるのを回避しつつ、吸入空気量Gaの変化に応じた空燃比制御を行うことができる。
[実施の形態5の具体的処理]
図12は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンでは、ステップS410の処理が、ステップS510の処理に置き換えられている点を除き、図10に示すルーチンと同様である。以下、図12において、図10に示すステップと同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、その他の図10のルーチンと同様の点についてもその説明を省略する。
なお、図12のルーチンでも、便宜上、遅延時間dと平滑化係数Aを総括した概念である遅れパラメータαを用いて、その説明を行うこととする。また、本実施形態では、吸入空気量Gaの増加時と減少時のそれぞれについて、サブ酸素センサ18の出力と遅れパラメータとの関係についてのマップを作成し、ECU20に予め記憶しておくものとする。
図12に示すルーチンでは、ステップS100の処理が終了すると、サブ酸素センサ18の出力に応じて遅れパラメータαが算出される(ステップS510)。具体的には、先ず、エアフロメータ22により現時点での吸入空気量Gaが取得され、所定時間遡った時刻の吸入空気量Gaと比較される。これにより、吸入空気量Gaが増加しているか、減少しているかの判断がなされる。そして、サブ酸素センサ18の出力が取得され、上述した二つマップのうちどちらかが参照されて、好適な遅れパラメータαが算出される。
その後、実施の形態3と同様に、触媒特性補正値vafcat(t)の算出が行われる(ステップS330)。その後、今回のルーチンが終了し、以下説明するように、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比 vabyf(t)に反映される。
実施の形態1で述べたように、制御目標空燃比 vabyf(t)、フィードバック制御目標空燃比 vabyffdbk(t)、触媒特性補正値vafcat(t)の間には、式(1)の関係が成立している。サブ酸素センサ18がリーン側またはリッチ側への偏りを検出した場合には、フィードバック制御により、その偏りが緩和される方向にvabyffdbk(t)が制御される。
吸入空気量Gaの増加時であって、サブ酸素センサ18がリッチを示している場合には、遅れパラメータαが大きく設定される。これにより、式(1)のうち、vabyffdbk(t)の項がリーン側へ制御されるのを待って、vafcat(t)の項がリッチ側へ変化することになる。逆に、吸入空気量Gaの減少時であって、サブ酸素センサ18がリーンを示している場合にも、遅れパラメータαが大きく設定される。
この場合は、vabyffdbk(t)の項がリッチ側へ制御されるのを待って、vafcat(t)の項がリーン側へ変化することになる。その結果、本実施の形態のルーチンによれば、触媒雰囲気がリッチまたはリーンに偏っている場合には、サブフィードバック制御により触媒雰囲気の偏りが緩和されるのを待って、吸入空気量Gaの変化に応じた空燃比制御を実行することができる。
以上説明したように、図12に示すルーチンによれば、吸入空気量Gaの挙動(増加および減少)とサブ酸素センサ18の出力とに基づいて、適切な遅延時間dまたは平滑化係数Aを定めることができる。従って、吸入空気量Gaの変化に応じた空燃比制御を精度よく行うことができ、良好なエミッション特性を実現することができる。
尚、上述した実施の形態中のサブ酸素センサ18が、前記第5および第6の発明の「下流側排気ガスセンサ」に、上述した実施の形態の説明中のサブフィードバック制御が、前記第5および第6の発明の「サブフィードバック手段」に、それぞれ相当している。また、上述した実施の形態5では、ECU20が、上記ステップS510の処理を実行することにより、前記第5の発明における「吸気増加時遅れパラメータ算出手段」および前記第6の発明における「吸気減少時遅れパラメータ算出手段」が実現されている。
[実施の形態5の変形例]
実施の形態5では、吸入空気量Gaの増加時にはサブ酸素センサ18の出力がリッチ側であるほど遅れパラメータが大きくなるように、かつ、吸入空気量Gaの減少時にはサブ酸素センサ18の出力がリーン側であるほど遅れパラメータが大きくなるように、遅れパラメータのマップを作成した。しかしながら、本発明はこれに限られない。必要に応じ、上述した二つの思想(Ga増加時に対処する思想と、Ga減少時に対処する思想)のどちらか一方のみを適用することとしても良い。
実施の形態6.
[実施の形態6の構成、基本動作]
次に、図13および図14を参照して、本発明の実施の形態6について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1と同様の構成で、同様の基本動作(メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御)を実行できるようになっている。
[実施の形態6の特徴]
実施の形態1および2により吸入空気量Gaの変化が制御目標空燃比へと遅れて反映される状況下では、吸入空気量Gaの減少時に制御目標空燃比がリッチ化するような事態が生じうる。本実施形態は、このような場合には吸入空気量Gaの増加に遅れて制御目標空燃比がリッチ側に変化する挙動を禁止する点に、特徴を有している。
図13は、吸入空気量Gaの減少時であって制御目標空燃比がリッチ化されるような状況を説明するためのイメージ図である。Gaの変化が制御目標空燃比へと遅れて反映される場合、図13に示すようなGaの増減が、遅れて触媒特性補正値vafcatへと反映される。そのため、吸入空気量Gaが減少する状況下で、触媒特性補正値vafcatが増加する事態が生じうる(図13中の破線で囲まれた領域)。
吸入空気量Gaが減少する場合は、内燃機関の制御が、その出力を減少させるように行われていると判断できる。出力が低下する方向へ制御が進んでいる最中に、遅れて制御目標空燃比がリッチ化されると、出力低下要求に反したトルク上昇が生じてしまう(トルクショック)。
そこで、本実施の形態では、上記のような状況下では、Ga増加に応じた空燃比のリッチ化を禁止することとする。これにより、吸入空気量減少により内燃機関の出力を抑制すべき時期に、リッチ化によるトルク増大が発生するのを(トルクショックを)回避することができる。
[実施の形態6の具体的処理]
図14は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンでは、ステップS110の処理が、ステップS610〜S640の処理に置き換えられている点を除き、図3に示すルーチンとほぼ同様である。以下、図14において、図3に示すステップと同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、その他の図3のルーチンと同様の点についてもその説明を省略する。なお、以下の説明では、便宜上、現在の時刻をtとし、本ルーチンが前回実行された時刻をt-1と表すこととする。
図10に示すルーチンでは、ステップS100の処理が終了すると、先ず、前回の触媒特性補正値vafcat(t-1)が保持(記憶)される。その後、実施の形態1のステップS110または実施の形態2のステップS210と同様に、今回の触媒特性補正値vafcat(t)が算出される(ステップS620)。続いて、今回の吸入空気量Ga(t)が前回の吸入空気量Ga(t-1)よりも小さく(Ga減少)、かつ、今回の触媒特性補正値vafcat(t)が前回の触媒特性補正値vafcat(t-1)よりも大きい(リッチ化)か否かが判別される(ステップS630)。
ステップS630の条件が成立している場合には、吸入空気量Gaの減少と制御目標空燃比のリッチ化補正とが同時に生じていると判断することができる。このため、ステップ630の条件の成立が認められた場合には、前回の触媒特性補正値vafcat(t-1)が読み出されて今回の触媒特性補正値vafcat(t)に入力され、今回のルーチンが終了する。その結果、制御目標空燃比が更にリッチ化されるという事態が回避される。
ステップS630の成立が認められない場合には、補正を禁止する必要がないと判断され、S620にて算出された触媒特性補正値vafcat(t)が用いられる。その後、今回のルーチンが終了し、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比 vabyf(t)に反映される。
以上説明したように、図14に示すルーチンによれば、吸入空気量Gaの減少時であって触媒特性補正値vafcat(t)により制御目標空燃比がリッチ化するおそれがある場合には、リッチ化の補正を禁止することができる。これにより、吸入空気量Ga減少により内燃機関の出力を抑制すべき時期に、リッチ化によるトルク増大が発生するのを(トルクショックを)回避することができる。
尚、上述した実施の形態6では、ECU20が、上記ステップS610〜S640の処理を実行することにより、前記第7の発明における「吸気減少時空燃比設定制限手段」が実現されている。
実施の形態7.
[実施の形態7の構成、基本動作]
次に、図15および図16を参照して、本発明の実施の形態7について説明する。本実施形態の装置は、上述した実施の形態1と同様の構成で、同様の基本動作(メインフィードバック制御、サブフィードバック制御、吸入空気量Gaの増加に応じた空燃比のリッチ化の制御)を実行できるようになっている。
[実施の形態7の特徴]
実施の形態1および2により吸入空気量Gaの変化が制御目標空燃比へと遅れて反映される状況下では、吸入空気量Gaの増加時に制御目標空燃比がリーン化されるような事態が生じうる。本実施形態は、このような場合には、吸入空気量Gaの減少に遅れて制御目標空燃比がリーン側に変化する挙動を禁止する点に、特徴を有している。
図15は、吸入空気量Gaの増加時であって制御目標空燃比がリーン化するような状況を説明するためのイメージ図である。実施の形態1および2によりGaの変化が制御目標空燃比へと遅れて反映される場合、図15に示すようなGaの増減が、遅れて触媒特性補正値vafcatへと反映される。そのため、吸入空気量Gaが増加する状況下で、触媒特性補正値vafcatが減少するという事態が生じうる(図15中の破線で囲まれた領域)。
吸入空気量Gaが増加する場合は、内燃機関の制御が、その出力を増加させるように行われていると判断できる。出力が増加する方向へ制御が行われている最中に、遅れて制御目標空燃比がリーン化されると、速やかな出力増加を妨げる要因となる。このような状況が車両に搭載される内燃機関で発生した場合には、加速時にもたつき感が生ずることになる。
そこで、本実施の形態では、上記のような状況下では、Ga減少に応じた空燃比のリーン化を禁止することとする。これにより、吸入空気量Ga増加により内燃機関の出力を増加すべき時期に、リーン化による出力減少が発生して出力増大がもたつくのを(もたつき感の発生を)回避することができる。
[実施の形態7の具体的処理]
図16は、上記の機能を実現するために、本実施形態においてECU20が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンでは、ステップS630の処理が、ステップS730の処理に置き換えられている点を除き、図14に示すルーチンと同様である。以下、図16において、図14に示すステップと同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略または簡略し、その他の図14のルーチンと同様の点についてもその説明を省略する。
図16に示すルーチンでは、ステップS620の処理が終了すると、今回の吸入空気量Ga(t)が前回の吸入空気量Ga(t-1)よりも大きく(Ga増加)、かつ、今回の触媒特性補正値vafcat(t)が前回の触媒特性補正値vafcat(t-1)よりも小さい(リーン化)か否かが判別される(ステップS730)。
ステップS730の条件が成立している場合には、吸入空気量Gaの増加と制御目標空燃比のリーン化補正とが同時に生じていると判断することができる。このため、ステップ730の条件の成立が認められた場合には、前回の触媒特性補正値vafcat(t-1)が読み出されて今回の触媒特性補正値vafcat(t)に入力され、今回のルーチンが終了する。その結果、制御目標空燃比が更にリーン化されるという事態が、回避される。
ステップS730の成立が認められない場合には、補正を禁止する必要がないと判断され、S620にて算出された触媒特性補正値vafcat(t)が用いられる。その後、今回のルーチンが終了し、メインルーチンにおいて触媒特性補正値vafcat(t)が制御目標空燃比 vabyf(t)に反映される。
以上説明したように、図16に示すルーチンによれば、吸入空気量Gaの増加時であって触媒特性補正値vafcat(t)により制御目標空燃比がリーン化するおそれがある場合には、リーン化の補正を禁止することができる。これにより、吸入空気量Ga増加により内燃機関の出力を増加すべき時期に、リーン化による出力減少が発生して出力増大がもたつくのを(もたつき感の発生を)回避することができる。
尚、上述した実施の形態7では、ECU20が、上記ステップS610、620、730、640の処理を実行することにより、前記第8の発明における「吸気増加時空燃比設定制限手段」が実現されている。
なお、上述した実施の形態1〜7では、メイン空燃比センサ16とサブ酸素センサ18とを有し、メインフィードバック制御とサブフィードバック制御の双方を実行する空燃比制御装置とした。しかしながら、実施の形態5を除いて、メイン空燃比センサ16およびメインフィードバック制御に相当するフィードバック制御のみを備える構成としてもよい。また、実施の形態1では、上流触媒12の下流に配置する排気ガスセンサに酸素センサを用いているが、本発明はこれに限られず、例えばメイン空燃比センサ16と同様に空燃比センサを用いても良い。
また、上述した実施の形態3〜5では、触媒特性補正値vafcat(t)の値に着目して、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の遅れの大きさ(遅延時間d、平滑化係数A)を設定した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。実施の形態1の第1変形例や実施の形態2の第2変形例に対して上記実施の形態3〜7の思想を組み合わせる際には、触媒特性補正値vafcat(t)ではなく、制御目標空燃比そのものの値に着目して、吸入空気量Gaの変化に対する制御目標空燃比の遅れの大きさ(遅延時間dや平滑化係数A)を設定することができる。
また、上述した実施の形態6および7では、触媒特性補正値vafcat(t)の値に着目して、制御目標空燃比変化を制限すべきか否かの判断を行った。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。実施の形態1の第1変形例や実施の形態2の第2変形例に対して上記実施の形態6および7の思想を組み合わせる際には、触媒特性補正値vafcat(t)ではなく、制御目標空燃比そのものの値に着目して、制御目標空燃比変化を制限すべきか否かの判断を行うことができる。
本発明の実施の形態1の空燃比制御装置の構成を説明するための図である。 実施形態1の動作を具体的に説明するための図である。 実施形態1において実行される制御ルーチンのフローチャートである。 吸入空気量Gaと触媒特性補正量の関係を定めたマップの一例である。 実施形態2の動作を具体的に説明するための図である。 実施形態2において実行される制御ルーチンのフローチャートである。 実施形態3における、触媒状態と遅れパラメータとの関係を定めたマップの一例である。 実施形態3において実行される制御ルーチンのフローチャートである。 実施形態4における、吸入空気量Gaと遅れパラメータ(遅延時間dまたは平滑化係数A)との関係を説明するためのイメージ図である。 実施形態4において実行される制御ルーチンのフローチャートである。 吸入空気量Gaの増加/減少およびサブ酸素センサ18の出力と、遅れパラメータ(遅延時間dまたは平滑化係数A)との関係を定めたマップの一例である。 実施形態5において実行される制御ルーチンのフローチャートである。 吸入空気量Gaの減少時であって制御目標空燃比がリッチ化されるような状況を説明するためのイメージ図である。 実施形態6において実行される制御ルーチンのフローチャートである。 吸入空気量Gaの増加時であって制御目標空燃比がリーン化するような状況を説明するためのイメージ図である。 実施形態7において実行される制御ルーチンのフローチャートである。
符号の説明
10 排気通路
12 上流触媒
14 下流触媒
16 メイン空燃比センサ
18 サブ酸素センサ
20 ECU(Electronic Control Unit)
22 エアフロメータ
26 燃料噴射弁
Ga 吸入空気量
vafcat 触媒特性補正値
vafcatb 仮触媒特性補正値
vabyf 制御目標空燃比
α 遅れパラメータ
d 遅延時間
A 平滑化係数

Claims (12)

  1. 内燃機関の排気通路に配置される触媒と、
    前記触媒の上流に配置される上流側排気ガスセンサと、
    前記触媒に流入する排気ガスの空燃比が制御目標空燃比と一致するように、前記上流側排気ガスセンサの出力を燃料噴射量にフィードバックする空燃比フィードバック手段と、
    前記内燃機関の吸入空気量を計測する吸入空気量計測手段と、
    前記制御目標空燃比を設定する手段であって、前記吸入空気量の増加時に該吸入空気量の変化に遅れて該制御目標空燃比をリッチ側に変化させ、該吸入空気量の減少時に該吸入空気量の変化に遅れて該制御目標空燃比をリーン側に変化させる制御目標空燃比設定手段と、
    を有することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 前記触媒のS、HC、CO吸着量のうち少なくとも一つが多量であるほど前記吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 前記触媒の酸素吸蔵容量(OSC:Oxygen Storage Capacity)が小さいほど前記吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  4. 前記吸入空気量が多いほど該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを小さく設定する手段を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  5. 前記触媒の下流に配置される下流側排気ガスセンサと、
    前記触媒から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように、前記下流側排気ガスセンサの出力を燃料噴射量にフィードバックするサブフィードバック手段と、
    を有し、
    前記吸入空気量の増加時に前記下流側排気ガスセンサの出力がリッチ側であるほど該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを大きく設定する吸気増加時遅れパラメータ算出手段を有することを特徴とする請求項1乃至4に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  6. 前記触媒の下流に配置される下流側排気ガスセンサと、
    前記触媒から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように、前記下流側排気ガスセンサの出力を燃料噴射量にフィードバックするサブフィードバック手段と、
    を有し、
    前記吸入空気量の減少時に前記下流側排気ガスセンサの出力がリーン側であるほど該吸入空気量の変化に対する前記制御目標空燃比の遅れを大きく設定する吸気減少時遅れパラメータ算出手段を有することを特徴とする請求項1乃至5に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  7. 前記吸入空気量の減少時であって前記制御目標空燃比設定手段による前記制御目標空燃比の設定により該制御目標空燃比がリッチ側に変化する場合には、該制御目標空燃比設定手段による該制御目標空燃比の設定を禁止する吸気減少時空燃比設定制限手段を有することを特徴とする請求項1乃至6に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  8. 前記吸入空気量の増加時であって前記制御目標空燃比設定手段による前記制御目標空燃比の設定により該制御目標空燃比がリーン側に変化する場合には、該制御目標空燃比設定手段による該制御目標空燃比の設定を禁止する吸気増加時空燃比設定制限手段を有することを特徴とする請求項1乃至7に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  9. 前記制御目標空燃比設定手段が、
    前記制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
    前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように前記基本値に加減乗除すべき補正値を算出する補正値算出手段と、
    前記補正値を前記吸入空気量の変化に対して所定の遅延時間だけ遅らせて出力する補正時期ディレイ手段と、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至8に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  10. 前記制御目標空燃比設定手段が、
    前記制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
    前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように前記基本値に加減乗除すべき補正値を算出する補正値算出手段と、
    前記補正値の変化を時間方向に平滑化させる補正値変化平滑化手段と、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至9に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  11. 前記制御目標空燃比設定手段が、
    前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し、該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように、該制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
    前記基本値を前記吸入空気量の変化に対して所定の遅延時間だけ遅らせて出力するディレイ生成手段と、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至10に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  12. 前記制御目標空燃比設定手段が、
    前記吸入空気量の増加に応じて前記制御目標空燃比がリッチ化し、該吸入空気量の減少に応じて該制御目標空燃比がリーン化するように、該制御目標空燃比の基本値を設定する手段と、
    前記基本値の変化を時間方向に平滑化させた値を出力する平滑化手段と、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至11に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5240416B2 (ja) * 2011-01-24 2013-07-17 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置

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