JP2008125396A - N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用 - Google Patents

N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用 Download PDF

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Abstract

【課題】核酸にコードされたアミノ酸配列情報の翻訳により、N末端に非天然骨格を有するポリペプチドを生合成すること。
【解決手段】任意のアミノ酸によるtRNAのアシル化反応を触媒するARSリボザイムを用いて開始tRNAに任意のアミノ酸を結合させ、この開始tRNAで翻訳を開始することにより、その任意のアミノ酸をN末端に有するポリペプチドを合成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、所望のN末端構造をもつポリペプチドの新規な合成方法に関する。
(1)ポリペプチド(タンパク質)の生合成
ポリペプチドの生合成において、mRNAを鋳型としてポリペプチドがつくられる段階を翻訳(translation)という。mRNAの連続する3塩基をコドン(codon)という。コドンはそれぞれ1つのアミノ酸に対応するが、UAA, UAG, UGAの3つに対応するアミノ酸はなく、ポリペプチド合成の終止を指定するので終止コドンと呼ばれる。一方、mRNAの翻訳の際、最初に現れるAUGはポリペプチド合成の開始を指定するので開始コドンと呼ばれる。開始コドン以降の配列を3塩基ずつ区切っていくと、それらが1つ1つのアミノ酸に対応する。
翻訳は、ポリペプチド合成の鋳型となるmRNA上に配列された各コドンを読み取る機能を担うtRNAに、関連アミノ酸が正確に対応付けられることが重要である。化学的には、アミノ酸がそのカルボキシル基の部分で特異的なtRNAの3'末端にエステル結合することによって達成される。例えば、開始コドンに対応する開始tRNA(initiator tRNAまたはtRNAfMet)にはメチオニンが結合し、そのアミノ基がホルミル化(-COH基が結合)されてN-ホルミルメチオニンになる(図1上段:天然に於ける翻訳開始)。これにより、原核細胞の開始tRNA(fMet-tRNAfMet)が合成される。メチオニンに対応するコドンはAUG一つだけである。
コドンAUGはリボソームにmRNA からの蛋白質翻訳を「開始」させるシグナルを送る開始コドンとしても重要である。リボソームは、50種以上のリボソームタンパク質と数種のRNA分子(rRNA)が集合したタンパク質合成装置であり、mRNAの遺伝情報を読み取り、アミノ酸の重合を触媒する。リボソームは真核生物でも原核生物でも、構造も機能も極めてよく似ており、いずれも大サブユニット1個と小サブユニット1個がくっついた数百万ダルトンの分子量を超える複合体である。
原核細胞由来のポリペプチド合成開始の過程は、開始因子(initiation factor: IF)と呼ばれるタンパク質群が関与する多くの段階を経る。まず、メチオニンでアミノアシル化された開始tRNAが、メチオニンtRNAホルミルトランスフェラーゼ(MTF)によりN-ホルミルメチオニン-tRNAへと変換され、それが開始因子と結合する。続いて、この開始因子・N-ホルミルメチオニン-tRNA複合体にリボソームの小サブユニットが結合し、このさらなる複合体がmRNA上にあるリボソーム結合部位(SD配列)に結合する。さらに、この複合体が開始シグナル(AUGコドン)を探し当てると、そこに大サブユニットが結合する。同時に、複合体からは開始因子が解離し、mRNA上にはリボソーム・開始tRNA複合体が残る。ペプチドの翻訳合成の開始は、これらの過程を正確に経て起こるため、合成生成物のN末端は、通常ホルミルメチオニンになる。
次いで、リボソームはmRNAに沿って3'末端側に動きながらコドンを一つずつ翻訳し、tRNAを使ってポリペプチドの伸長端にアミノ酸を付け加える。ポリペプチド鎖の伸長末端に付加されるアミノ酸は、そのアミノ酸が結合しているtRNA分子のアンチコドンと、mRNA鎖の次のコドンとの相補的塩基対形成によって選ばれる。こうして、mRNAのコドンに対応するアミノ酸が次々とペプチド結合で連結してポリペプチド合成が進行する。
(2)tRNAのアミノ酸特異性
既に述べたように、遺伝情報としてのmRNAのコドンをアミノ酸に対応付けるアダプターの役割を果たすのはtRNAである。tRNAはそれぞれに特異的なアミノ酸を結合(アミノアシル化)することにより、アダプターとして機能する。翻訳精度の鍵を握る要因として、各tRNAのアンチコドンとアミノ酸との間には厳密な対応関係が要請される。しかし、tRNA及びアンチコドンが直接にアミノ酸を選択するわけではなく、各アミノ酸に対して特異性を示すのはアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase: ARS)であり、各tRNA分子はそれぞれに適合したARSを特異的に識別してアミノアシル化されることにより、正しいアミノ酸を受容する。すなわち、生体内において、tRNAのアミノ酸特異性はtRNAとARSとの間の特異的な分子識別によって保たれる。
一方、このようなtRNA、ARS、アミノ酸の3者の間の特異的な対応関係を人工的に変化させることにより、tRNAに本来的に受容すべきアミノ酸以外のものをミスチャージさせる方法が考案されている。そのような方法の一つが、本発明者らにより試験管内分子進化を用いて創製されたtRNAのアシル化反応を触媒するARSリボザイム(アシル化触媒RNA、または通称「スーパーフレキシザイム」)を用いた方法である。スーパーフレキシザイムは、任意のtRNA及び任意のアミノ酸を用いたアミノアシル化が可能であるという特徴を有する。つまり、任意のtRNAと任意のアミノ酸とを自在に結合させることができる。これは、例えば、非天然(異常)アミノ酸を導入したポリペプチドを翻訳により合成する際に非常に有用である(特許文献1、2、非特許文献1、2、3、4)。
(3)無細胞合成
ポリペプチドの無細胞合成とは、細胞質の抽出物から構成される遺伝情報翻訳系を人工容器内に揃えて、ポリペプチドを試験管内で合成しようとするものである。無細胞合成では生きた生命体を利用しないので生体内の生理学的制約を受けることがなく、遺伝子からのポリペプチド合成のハイスループット化が可能であり、さらに合成可能なアミノ酸配列の種類を劇的に拡大することができると期待されている。原理的には、無細胞ポリペプチド合成系では、遺伝情報さえあれば、翻訳酵素系の触媒機能を妨害しない限りにおいて、どのようなアミノ酸配列からなるポリペプチドでも試験管内で自在に合成することができると考えられる。さらには、遺伝情報とうまく対応させることができれば、生体内に存在しない非天然アミノ酸も用いることができる。
(4)N末端に非天然骨格を持つペプチド性化合物
天然由来のペプチド性化合物には、N末端に変わった構造のアミノ酸が結合したものが見られる。図2に示す例においては、Somamides Aではhexyl基、Factor A (A54556 complex)では2,4,6-heptatrienyl基がN末に存在する。また、生体内で発見される神経ペプチドの多くは、N末にピログルタミン酸構造をもつ。
これらの分子は長鎖ペプチドであり、化学合成が難しく、合成収率が低いため、高価にならざるを得ない。また、これらのペプチド配列をもとに、多様な類似体ポリペプチドを平行合成(ライブラリー構築)し、薬剤探索を行おうとした場合、ペプチド配列をコードする分子をビーズ上やペプチド分子上に別途化学的に標識する必要があり、技術的な煩雑さがさらに増大する。さらに、ペプチドライブラリーが枯渇した場合、全く新規に合成をし直す必要がある。他方、生細胞系であれ無細胞系であれ、人為的な翻訳系を介してこのようなペプチドが合成された例はこれまで報告されていない。したがって、鋳型mRNAに配列をコードし、これらの特殊ペプチド分子を翻訳合成できる技術を開発すれば、その技術的進歩性は極めて高い。
特表2003−514572 特表2005−528090 H. Murakami, H. Saito, and H. Suga (2003) "A versatile tRNA aminoacylation catalyst based on RNA" Chemistry & Biology, Vol. 10, 655-662 蛋白質 核酸 酵素(2003) Vol.48, No.11, 1511-1518頁 実験医学(2004) Vol.22, No.17, 184-189頁 H. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga (2006) "The flexizyme system: a highly flexible tRNA aminoacylation tool for the synthesis of nonnatural peptides" Nature Methods 3, 357-359
発明が解決しようとする課題は、核酸によりコードされたアミノ酸配列情報の翻訳により、N末端に非天然骨格(多様なアシル基、D体アミノ酸、その他の非天然アミノ酸骨格など)を有するポリペプチドを生合成することである。
上記課題は、本発明の、所望のN末端構造を持つポリペプチドを翻訳合成する方法により解決できる。具体的には、任意のアミノ酸によるtRNAのアシル化反応を触媒するARSリボザイムを用いることにより、開始tRNAにNホルミルメチオニン以外の任意のアミノ酸を結合させ、この開始tRNAで翻訳を開始することにより、その任意のアミノ酸をN末端に有するポリペプチドが合成できる。開始tRNAに結合させるアミノ酸としては、通常翻訳で使用される天然アミノ酸のみならず、所望の構造を有するアミノ酸を用いることができ、例えば、アミノ基に様々なアシル基が導入されたものや、D-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、およびこれらのアミノ酸のN-メチル化体、ピログルタミン酸、およびアミノベンゼンカルボン酸、並びにスタチン(β-ヒドロキシ-γ-アミノ酸)およびその誘導体等の異常アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、及びそれより長鎖のペプチド、であっても開始tRNAに結合させることができる。このような非天然骨格を有するアミノ酸で翻訳を開始することにより、N末端に非天然骨格を有するポリペプチドを生合成することができる。
さらに、この合成方法を応用し、翻訳系においてメチオニンtRNAホルミルトランスフェラーゼ(MTF)の存在又は非存在を選択することにより、翻訳合成されるポリペプチドのN末端のホルミル化をコントロールすることができる。
すなわち、本願では以下の発明が提供される。
(1)以下の工程を含む、所望のN末端構造を持つポリペプチドを翻訳合成する方法:
(a)tRNAのアシル化反応を触媒するリボザイムを提供する工程;(b)前記リボザイムによるアシル化反応の基質となる、所望の構造を持つアミノ酸基質を提供する工程;(c)前記(a)のリボザイムを用いて、前記(b)のアミノ酸基質で開始tRNAのアシル化反応を行うことにより、所望の構造を持つアミノ酸でアミノアシル化された開始tRNAを得る工程;(d)前記(c)で得られたアミノアシル化開始tRNAを無細胞翻訳系に加えて、所望の構造を持つアミノ酸で翻訳を開始させることにより、所望のN末端構造をもつポリペプチドを得る工程。
(2)上記工程(c)で開始tRNAをアミノアシル化するアミノ酸がメチオニン以外の通常アミノ酸である、(1)に記載の方法。
(3)上記工程(c)で開始tRNAをアミノアシル化するアミノ酸が異常アミノ酸である、(1)に記載の方法。
(4)異常アミノ酸が、アミノ基に様々なアシル基が導入されたアミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、およびこれらのアミノ酸のN-メチル化体、ピログルタミン酸、スタチン(β-ヒドロキシ-γ-アミノ酸)およびその誘導体、ジペプチド、トリペプチド、及びそれより長鎖のペプチドからなる群から選択される、(3)に記載の方法。
(5)上記工程(b)で提供されるアミノ酸基質が、弱活性化されたアミノ酸である、(1)に記載の方法。
(6)アミノ酸基質がアミノ酸のシアノメチルエステル、ジニトロベンジルエステル又は4-クロロベンジルチオエステルである、(5)に記載の方法。
(7)tRNAのアシル化反応を触媒するリボザイムが、以下の(1)又は(2)
(1)GGAUCGAAAGAUUUCCGCGGCCCCGAAAGGGGAUUAGCGUUAGGU
(2)GGAUCGAAAGAUUUCCGCAUCCCCGAAAGGGUACAUGGCGUUAGGU
のいずれかのRNA配列からなるリボザイムである、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)開始tRNAが、5’から3’方向に、
GGCGGGGUGGAGCAGCCUGGUAGCUCGUCGGGCUNNNAACCCGAAGAUCGUCGGUUCAAAUCCGGCCCCCGCAACCA
で示されるRNA配列からなる構造を有し、NNNは任意の塩基の組合せからなるアンチコドンを表し、該アンチコドンに対応する開始コドンが、翻訳合成されるポリペプチドの配列をコードするmRNA上に存在し、該開始コドンが所望の構造を持つアミノ酸をコードする、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)開始tRNA中のアンチコドンがCAUであり、mRNA上の開始コドンがAUGである、(8)に記載の方法。
(10)開始tRNA中のアンチコドンがCAU以外のアンチコドンであり、mRNA上の開始コドンがAUG以外のコドンである、(8)に記載の方法。
(11)無細胞翻訳系として再構成無細胞翻訳系を用いる、(1)に記載の方法。
(12)メチオニン又はメチオニルtRNA合成酵素(MetRS)を翻訳系中から除いて、天然の翻訳開始機構を阻害することにより、所望のN末端構造を持つポリペプチドだけが翻訳合成される、(11)に記載の方法。
(13)メチオニンtRNAホルミルトランスフェラーゼ(MTF)の存在又は非存在を選択することにより、翻訳合成されるポリペプチドのN末端のホルミル化をコントロールする、(11)に記載の方法。
(14)以下の成分を含む、N末端に非天然骨格をもつポリペプチドを翻訳合成するために使用可能なキット:(a)以下の(1)又は(2)のいずれかのRNA配列からなる、tRNAのアシル化を触媒する2つのリボザイム:
(1)GGAUCGAAAGAUUUCCGCGGCCCCGAAAGGGGAUUAGCGUUAGGU
(2)GGAUCGAAAGAUUUCCGCAUCCCCGAAAGGGUACAUGGCGUUAGGU;
(b)前記リボザイムの基質となる、非天然骨格をもつアミノ酸基質;(c)開始tRNA;および(d)無細胞合成系。
本発明においては、tRNAと任意のアミノ酸とを自在に結合させることができるARSリボザイムで、開始tRNAに所望の構造を有するアミノ酸をアミノアシル化したものを作成し、これを用いて翻訳を開始することにより、N末に所望の構造を有するポリペプチドを翻訳により合成することが可能であり、生体内に存在しない異常アミノ酸も用いることができる。さらに、翻訳系の制御により翻訳合成されるポリペプチドのN末端の修飾をコントロールすることもできる。
従って、本発明はN末に修飾が入ったポリペプチド全般に適応でき、これまで化学合成が極めて困難であった長鎖の特殊ペプチド分子を簡便且つ安価に合成することができる。
(1)アミノ酸
アミノ酸は、基本的には分子内にアミノ基(−NR)とカルボキシル基(−COOH)の二つの官能基を持つ化合物を指す。アミノ酸のうち、通常の翻訳で使用されるアミノ酸は、一般構造:
で示される(Rはアミノ酸側鎖である)α-アミノカルボン酸(または置換型α-アミノカルボン酸)である、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、およびグルタミン酸(Glu)の20種類の天然アミノ酸である。本明細書においては、アミノ酸には、天然アミノ酸と非天然アミノ酸の両方が含まれ、特にこれらの天然アミノ酸を通常アミノ酸とも称する。
通常アミノ酸に対する語として、異常アミノ酸は、通常アミノ酸以外のアミノ酸を意味し、人工的に合成したものであっても、自然界に存在するものであってもよい。異常アミノ酸の例としては、アミノ酸骨格内に付加的なメチレン基を有するβ-アミノ酸、γ-アミノ酸及びδ-アミノ酸、並びに通常のアミノ酸の立体異性体であるD-アミノ酸等が挙げられる。また、本明細書においては、アミノ酸の語には、アミノ酸骨格上のアミノ基やカルボキシル基が置換された構造を有する誘導体も包含し、アミノ酸のアミノ基に多様なアシル基が導入されたものや、N-メチル体、スタチン(β-ヒドロキシ-γ-アミノ酸)、ピログルタミン酸、アミノベンゼンカルボン等も異常アミノ酸の例として挙げられる。さらに、ジペプチド、トリペプチド、若しくはそれより長鎖のペプチドもアミノ酸と表現する場合がある。従って、「所望の構造を有するアミノ酸」という場合には、このような本明細書における「アミノ酸」全てを包含する。以上で述べた様々なアミノ酸の代表例の化学構造式を図3に示す。
異常アミノ酸を含んだペプチドを「特殊ペプチド」と呼ぶ。天然から単離された特殊ペプチドの例としては、ホルモンペプチド、神経ペプチド、Somamides A, factor A, GPCR103リガンド等が挙げられる。本発明により合成可能な特殊ペプチドはこれらの天然の特殊ペプチドを模倣した類似体に限定されず、上述の様々な異常アミノ酸をN末に有するあらゆる特殊ペプチドが合成可能である。
(2)開始tRNA
mRNAの翻訳の開始には、開始tRNAと呼ばれる特定のtRNAが必要である。翻訳が始まるには、アミノアシル化された開始tRNAが、開始因子(IF)とともにリボソームの小サブユニットに結合し、リボソームの小サブユニットがmRNA上の開始コドンに結合するが、この開始コドンを認識するのが開始tRNAである。従来技術の項で述べたように、天然においては、開始tRNAは必ずメチオニン(原核細胞ではホルミルメチオニン)を運び、開始コドンとしては一般的にはメチオニンのコドンであるAUGが用いられるため、開始tRNAはメチオニンに対応するアンチコドンを有する。
これに対して、本発明においては、開始アミノ酸がメチオニンに限定されないことが特徴である。つまり、開始tRNAにメチオニン以外の任意のアミノ酸を結合して翻訳を開始させることが特徴である。また、本発明においては、開始コドンもAUGに限定されない。つまり、開始コドンとして他のコドンを割り当てることも可能である。従って、本発明においては開始tRNAはメチオニンに対応するアンチコドンを有していても、他のアンチコドンで置換されていてもよい。例えば、本発明者らはAUA、CGG、CCG、GGC、GCCのコドンでもそれらのアンチコドンをもつ開始tRNAを用いれば、開始可能であることを確認している。
以下は、本発明において使用可能な、開始コドンAUGに対応する天然の開始tRNA(tRNAfMet)の塩基配列を示す。
5'-GGCGGGGUGGAGCAGCCUGGUAGCUCGUCGGGCUCAUAACCCGAAGAUCGUCGGUUCAAAUCCGGCCCCCGCAACCA-3' (配列番号1)下線部はアンチコドン部位である。二次構造の図を図4に示すので参照されたい。
開始コドンを変える場合は、それに相補的なアンチコドンをもったtRNAを使用する。従って、開始コドンとして任意のコドン(NNN)を割り当てる場合は、開始tRNAの配列は次のように表される。
5'-GGCGGGGUGGAGCAGCCUGGUAGCUCGUCGGGCUNNNAACCCGAAGAUCGUCGGUUCAAAUCCGGCCCCCGCAACCA-3' (配列番号2)下線部のNNNは任意の塩基の組合せからなるアンチコドンを表す。NNN以外の部分は、tRNAfMetのボディ配列であり、開始因子(IF)の結合に必要であると考えられている。
本発明において、所望のN末端構造を持つポリペプチドを翻訳合成する際には、上記のNNNで表されるアンチコドンに対応する開始コドンが、翻訳合成されるポリペプチドの配列をコードするmRNA上に存在し、その開始コドンがポリペプチドのN末端となる所望の開始アミノ酸をコードすることになる。
(3)開始tRNAのアミノアシル化
tRNAのアミノアシル化は、tRNAの3’末端の水酸基にアミノ酸のカルボキシル基がエステル結合する反応(アシル化)である。アミノ酸は活性化された中間体を経由してtRNAと結合する。
天然では、ARSタンパク質酵素が、ATPの加水分解と共役したアミノ酸基質の活性化(ATPとアミノ酸から高エネルギー中間体であるアミノアシルAMPを合成する反応)と、アミノ酸基質のtRNAへの結合の2段階の反応を触媒してアミノアシルtRNAの合成を行っている。まず、アミノ酸のカルボキシル基がAMP部分と結合して活性化され、アデニル化アミノ酸(アミノアシルAMP)となる。次に、アデニル化アミノ酸からAMPが脱離し、アミノ酸のカルボキシル基はtRNAの3’末端のリボースの水酸基に移される。この転移によりアミノ酸がtRNAと活性エステル結合を形成し、アミノアシル化されたtRNAが生じる。活性化されたアミノ酸とtRNAとのエステル結合は、加水分解により大きな自由エネルギーを放出する高エネルギー結合であり、この結合のエネルギーはその後のタンパク質合成の段階で、アミノ酸を共有結合でつないでポリペプチド鎖を伸長させるのに使われる。
天然では、各アミノ酸とtRNAに特異的なアミノアシルtRNA合成酵素(ARS)により、このようなtRNAのアミノアシル化反応が触媒される。開始tRNAがメチオニンを結合する反応は専用のタンパク質酵素であるメチオニルtRNA合成酵素(MetRS)による。
これに対して、本発明においては、tRNAのアシル化反応を触媒することができるRNA分子であるARSリボザイムを用いて、開始tRNAのアミノアシル化を行う。ARSリボザイムとして本発明で使用可能なものは、所望の構造を持つアミノ酸基質を任意のtRNAにアシル化する機能を有するリボザイムである。このようなARSリボザイムは、天然のARSタンパク質酵素とは異なり、各アミノ酸及び各tRNAに対して特異性を持たず、本来チャージすべきアミノ酸以外の任意のアミノ酸を用いたアミノアシル化が可能となるため、開始tRNAに任意のアミノ酸を結合することができる。
図1を参照して、開始tRNAのアミノアシル化を説明する。従来技術の項でも説明したように、天然ではtRNAfMetからMetRS(メチオニルtRNA合成酵素)・MTF(メチオニンtRNAホルミルトランスフェラーゼ)という2つの蛋白質酵素が関与して合成されるfMet-tRNAfMetが開始tRNAとして働くのに対し(図1上段)、本発明ではMetRSの代わりにARSリボザイム(スーパーフレキシザイム)によって多種にわたるアミノ酸誘導体がtRNAfMetにチャージされたXaa-tRNAfMetが開始tRNAとして働く(図1下段:本申請に於ける翻訳開始)。
本発明で使用されるARSリボザイムは、本発明者らにより記載された試験管内分子進化による方法に従って創製可能である(特願2005-352243 多目的アシル触媒とその用途、および H. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga (2006) "
1163748499187_1.pdf
" Nature Methods 3, 357-359)。この方法により創製されるARSリボザイムは、天然のARSタンパク質酵素とは異なり、アミノアシル化反応の第1段階目である高エネルギー中間体(アミノアシルAMP)の生成の過程をスキップしてアミノ酸基質のtRNAへの結合の過程のみを触媒するように進化させて得られるものであるため、アミノ酸基質としてはあらかじめ弱活性化されたアミノ酸を用いる必要がある。つまり、アミノ酸のアデニル化をスキップする代わりに、アシル化が進行するカルボニル基において弱活性化されたエステル結合を持つアミノ酸誘導体を使用する。一般にアシル基の活性化は電子吸引性をもつ脱離基をエステル結合させることで達成できるが、あまり強力な電子吸引性脱離基を有するエステルでは水中で加水分解が起きるばかりか、ランダムなRNAへのアシル化が併発してしまう。したがって、アミノ酸基質としては無触媒状態でこのような副反応が起きにくいように弱活性化したものを用いる必要がある。このような弱活性化は、例えば、AMP、シアノメチルエステル、チオエステル、又はニトロ基やフッ素その他の電子吸引性の官能基をもったベンジルエステル等を使用して行うことができる。好適なアミノ酸基質の例としては、アミノアシル-シアノメチルエステル(CME:cyanomethyl ester)、アミノアシル-ジニトロベンジルエステル(DNB:3,5-dinitrobenzyl ester)、又はアミノアシル-4-クロロベンジルチオエステル(CBT:p-chloro-benzyl thioester)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、当業者であれば反応効率の高い適当な脱離基を適宜スクリーニングして用いることが可能であり、そのような適当な脱離基を有するアミノ酸基質を利用したアシル化反応も本発明の範囲に含まれることは当然である。
本発明で使用可能なARSリボザイムの極めて具体的な例としては、従来技術の項で前述したスーパーフレキシザイム、すなわち、
(1)GGAUCGAAAGAUUUCCGCGGCCCCGAAAGGGGAUUAGCGUUAGGU
(スーパーフレキシザイムeFx:配列番号3)
(2)GGAUCGAAAGAUUUCCGCAUCCCCGAAAGGGUACAUGGCGUUAGGU
(スーパーフレキシザイムdFx:配列番号4)
のいずれかのRNA配列からなるリボザイム、又はその変異型が挙げられる。これらのスーパーフレキシザイムやその原型であるフレキシザイムの創製については、特願2005-352243 多目的アシル触媒とその用途、およびH. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga (2006) Nature Methods 3, 357-359、ならびに H. Murakami H. Saito, H. Suga (2003) “A versatile tRNA aminoacylation catalyst based on RNA” Chem. Biol. 10, 655-662に詳細に記載されている。
ARSリボザイムとしてこれらのスーパーフレキシザイム又はその変異型を用いる場合、アミノ酸基質は、スーパーフレキシザイムで認識されるように、アミノ酸側鎖または脱離基内に芳香環を有していなければならない。このようなアミノ酸基質の構造を一般式で表すと、次のようになる。
アミノ酸基質のうち、側鎖として芳香環をもつアミノ酸のシアノメチルエステル(左の構造式)の合成については、特表2005−528090およびSugaら、J.Am.Chem.Soc.、120、1151〜1156、1998に記載の方法を参照されたい。本明細書中で後述する実施例においては、シアノメチルエステル(CME)を導入したN-アシル化アミノ酸基質およびペプチド基質の合成の例を示した。
脱離基として芳香環をもつアミノ酸基質(右の構造式)の合成は、まず(1)アミンをBoc保護したアミノ酸を、ベンジル位にハロゲンを持ち芳香族に電子吸引基を持つ化合物と反応し、エステルを形成させる。次に、酸を用いてBoc保護基を除くことでアミノ酸基質を合成する。あるいは、このエステルは、(2)アミンをBoc保護したアミノ酸を、ベンジル位に水酸基を持ち芳香族に電子吸引基を持つ化合物と、一般的な縮合剤を用いて縮合させることでも合成できる。さらに(3)Boc保護したアミノ酸を活性化したものを、ベンジル位に水酸基を持ち芳香族に電子吸引基を持つ化合物と混ぜることでも合成できる。チオエステルの合成は、上記の(2)又は(3)の方法を用いて行うことができる。ただし、ベンジル位に水酸基を持ち芳香族に電子吸引基を持つ化合物の代わりに、ベンジル位にチオール基を持つ化合物を用いる。チオエステルは、活性が比較的高いので、芳香族の電子吸引基は必ずしも必要ではない。脱離基として芳香環をもつアミノ酸基質の合成についての具体的な方法は、特願2005-352243にも既述されている。本明細書中の後述の実施例では、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸またはβ-アミノ酸等の異常アミノ酸にジニトロベンジルエステル(DBE)を導入した基質の合成の例を示した。
ARSリボザイムによるアシル化反応は、溶液中で行ってもよいし、担体に固定化したARSリボザイムを用いたカラムを用いて反応させてもよい。例えば、もし翻訳の反応スケールが100μl以下の少ない量であれば、溶液中でARSリボザイムによるtRNAのアシル化を行い、反応溶液をエタノール沈殿したペレットを適当な緩衝液(例えば1mMの酢酸カリウム、pH5等)に溶解し、翻訳系に添加すれば良い。反応の条件は適宜好適な条件を選べばよいが、少量スケールの反応条件の一例としては、最終濃度で0.5〜20μMのtRNA、0.5〜20μMのARSリボザイム、2〜10mMのアミノ酸基質、0.6MのMgCl2を含むpH7.5、0.1Mの反応緩衝液を、0度Cで1時間〜24時間、反応させるとよい。
翻訳の反応スケールが100μlを超える場合は、ARSリボザイムの再利用を考慮し、担体に固定化したARSボザイムを用いたほうが好都合である。担体として、例えば、樹脂、アガロース、セファロース、磁器ビーズなどを用いることもできるが、特に限定されない。ARSリボザイムを担体に固定化して反応を行わせる場合は、例えば、Murakami, H., Bonzagni, N. J. and Suga, H. (2002). "Aminoacyl-tRNA synthesis by a resin-immobilized ribozyme." J. Am. Chem. Soc. 124(24): 6834-6835に記載の方法に従って行うことができる。反応産物であるアミノアシル化tRNAの分離は、様々な方法で行える。一例としては、10mM程度のEDTAを含有する緩衝液でカラムから溶出する方法がある。ARSリボザイムを固定化した樹脂は、例えば反応バッファーで平衡化することにより、十数回リサイクルすることができる。
ARSリボザイムによるアシル化反応についても、さらに具体的には後述の実施例を参照されたい。なお、後述の実施例では、多様なアミノ酸のアシル化を簡便に確認するため、開始tRNAではなく、その短鎖アナログを用いた実験結果を示している。ジペプチドやトリペプチド、もしくはそれより長鎖のペプチド、N末端に非天然骨格(D体、N-メチル体、β-アミノ酸、スタチン等)を持つアミノ酸のような異常アミノ酸であっても、アミノアシル化できることが確認されている。
(4)翻訳
上述の方法により、ARSリボザイムを用いてアミノアシル化された開始tRNAを無細胞翻訳系に添加することにより、N末端に任意のアミノ酸を有するポリペプチドを合成することができる。
天然の翻訳産物ではポリペプチドのN末端はメチオニン(原核細胞ではホルミルメチオニン)に限られるが、本発明ではN末端にメチオニン以外のアミノ酸、様々なアシル基、D-アミノ酸、Nメチルアミノ酸、β−アミノ酸、スタチン、その他の特殊骨格を有する特殊ペプチドを自由自在に合成可能である。図5に天然の翻訳産物(上段)と本発明で合成可能なポリペプチドの例(下段)を示す(この例では様々なアシル基を有するフェニルアラニン誘導体がN末端に存在する)。
無細胞合成系では生体内の制約がないため、どのようなアミノ酸配列からなるポリペプチドでも自在に合成することができ、合成可能なポリペプチドの長さにも原理的には制限はなく、遺伝情報と対応させることができれば異常アミノ酸も用いることができる。従って、所望の構造を持つアミノ酸でアミノアシル化された開始tRNAを系に加えて翻訳を開始することにより、所望のN末端構造を有するポリペプチドを合成可能であり、さらに、伸長反応で導入するアミノ酸も天然アミノ酸20種類全てを利用できる。伸長用の天然アミノ酸についても、ARSリボザイムでアシル化されたアミノアシル化tRNAを無細胞翻訳系に添加して用いることが可能である。
無細胞翻訳系は一般的には、リボソームタンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)、リボソームRNA、アミノ酸、tRNA、GTP、ATP、翻訳開始因子(IF)伸長因子(EF)、終結因子(RF)、およびリボソーム再生因子(RRF)、ならびに翻訳に必要なその他の因子を含み、高効率のものとしては、大腸菌抽出液や小麦胚芽抽出液を利用した系がある。他に、ウサギ赤血球抽出液や昆虫細胞抽出液を利用する系もある。これらは、透析を用いて連続的にエネルギーを供給することで、数百μgから数mg/mLの蛋白質を生産する。遺伝子DNAからの転写も併せて行うためのRNAポリメレースを含む系もある。本発明では、このような無細胞翻訳系を適宜用いることができる。市販されている無細胞翻訳系として、大腸菌由来の系としてはロッシュ・ダイアグノスティック社のRTS−100(登録商標)やPGI社のPURESYSTEM(登録商標)等、小麦胚芽抽出液を用いた系としてはゾイジーン社やセルフリーサイエンス社のもの等が使用できる。
さらに、系を細分化し、各要素を再構成して、より不純物の少ない翻訳系を構築することもできる。具体的な構成としては、リボソーム、GTP、ATP、IF群、EF群、RF群、RRF、目的のペプチド合成に最低限となるtRNA・ARS群・アミノ酸などがある。このような再構成無細胞翻訳系は、特に本発明において好適である。再構成無細胞翻訳系を用いることにより成分を任意に調節することが可能であり、開始アミノ酸もしくはペプチドの種類を選択することに加えて、ポリペプチドのN末端修飾をさらに自在にコントロールすることができるようになるからである。
例えば、メチオニン、又はメチオニルtRNA合成酵素(MetRS)を翻訳系中から除くことで天然の翻訳開始機構を阻害することができる。そこに所望の構造を持つアミノ酸でアシル化した開始tRNAを加えることで、所望のN末端構造を持つペプチドだけが翻訳系中で生成する。このとき、開始tRNAとしてはアンチコドン部分を改変した開始tRNAfMetを使う。本発明では開始コドンは天然であるAUGだけに制限されず他のコドンも開始コドンとして利用できる、すなわち、N末アミノ酸に対して特定のコドンを割り当てることができるのである。このとき、翻訳合成されるポリペプチドをコードする核酸配列において、mRNA上の開始コドンはアシルtRNAfMetのアンチコドンと相補的であれば(多少の効率の違いは見受けられるが)原則的に何でも良い。原核細胞由来の系を用いる場合、鋳型mRNAには5’末端の近傍にリボソーム結合部位であるSD配列が存在しさらにその下流に開始コドンが存在する必要がある。
また、再構成無細胞翻訳系を用いることで、メチオニンtRNAホルミルトランスフェラーゼ(MTF)の存在、非存在を選択でき、これによるN末端修飾のコントロールも可能である。MTFは、原核細胞由来の系において、開始tRNAにアシル化されたメチオニンのアミノ基に対し、ホルミル基を結合させる酵素である。この酵素は、一般にはメチオニンに対してホルミル化選択性があると考えられているが、これまでにも間接的な実験結果から、開始tRNAに結合したフェニルアラニンやグルタミンなどのアミノ基に対してもホルミル基が修飾されたとする報告はあった(Mayer, C., Kohrer, C., Prusko, C., RajBhandary, U.L. (2003). "Anticodon Sequence Mutants of Escherichia coli Initiator tRNA: Effects of Overproduction of Aminoacyl-tRNA Synthetases, Methionyl-tRNA Formyltransferase, and Initiation Factor 2 on Activity in Initiation" Biochemistry 42: 4787-4799)。本発明により、合成ペプチドの質量分析により、その直接的な実験結果が得られた。本発明では、さらに多様なアミノ酸を用いても、N末端がホルミル化されたポリペプチドが合成できる事を発見している。
他方、本発明者らは、MTFを翻訳系内から除去する事で、N末端にホルミル修飾が施されていないポリペプチドを合成できること、さらには、系内のMTFまたはそのドナーとなる基質の有無に関わらず、N末にホルミル修飾がされていないペプチドも合成できることも見出した。これまで、原核由来の開始因子では、ホルミル基もしくは類似のアシル基(アセチル基等)の修飾が必要と考えられていたが、本発明により(ARSリボザイムで様々なアミノ酸を開始tRNAにチャージして翻訳開始をすることで)、その制限がないことが明らかとなった。例えば、アシル基のないアミノ酸でも翻訳を開始できるばかりか、アミノ基に導入するアシル基には任意のRを付けることができる(R-CO-aa-)。さらに、Rをジペプチド、トリペプチドもしくはそれより長鎖のペプチド、又はスタチン骨格にすること、あるいはアミノ酸をD体にすることも可能であり、それらによって翻訳開始されたペプチドにはホルミル化が進行せず、ホルミル化されていないペプチドが合成される。
従って、本発明では、開始アミノ酸もしくはペプチドの種類、MTFの存在下、非存在下で、翻訳合成されるポリペプチドのN末端修飾をコントロールできる。一方で、通常のアミノ酸の立体異性体であるD-アミノ酸やジペプチド、トリペプチドを開始tRNAに結合させ翻訳に用いた場合、MTFが翻訳系内にあってもホルミル化が全く進行しない事も発見している。
(5)キット
上述の方法を用いた、N末端に非天然骨格をもつポリペプチドを翻訳合成するために使用可能なキット化製品も本発明の範囲に含まれる。キットの最低限の内容としては、
(a)以下の(1)又は(2)のいずれかのRNA配列からなる、tRNAのアシル化を触媒する2つのリボザイム:
(1)GGAUCGAAAGAUUUCCGCGGCCCCGAAAGGGGAUUAGCGUUAGGU
(2)GGAUCGAAAGAUUUCCGCAUCCCCGAAAGGGUACAUGGCGUUAGGU
(それぞれ担体に固定化されていてもよい)
(b)前記リボザイムの基質となる、非天然骨格をもつアミノ酸基質
(c)開始tRNA
(d)無細胞合成系
を含んでいればよいが、さらに、反応緩衝液、反応容器、使用説明書等を含んでいてもよい。
なお、本発明の実施のための材料及び方法は、特に断らないかぎり、化学及び分子生物学の技術分野でよく知られる慣用の方法に従って、様々な一般的な教科書や専門的な参考文献に記載されている方法を用いる。分子生物学についての参考文献としては、例えばSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)およびAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992),およびHarlowおよびLane Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1999)を参照されたい。
上述した発明の内容を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、これは例示であり本発明の範囲はこれに限定されない。明細書及び特許請求の範囲の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
以下に記載する実施例ではARSリボザイムとしては、スーパーフレキシザイムを使用し、翻訳系としては、cDNAからの転写系を含む原核生物由来の再構成無細胞合成系を用いた。
1. アミノ酸基質の合成
この実施形態では、スーパーフレキシザイムによるアシル化反応の基質となる、弱活性化されたエステル結合を持つアミノ酸基質(以下、単に「基質」と記載することもある)の合成を記載する。スーパーフレキシザイムにより認識されるために、基質は分子内に芳香環を有する必要があった。脱離基に芳香族を用いる場合、エステル結合は、チオエステルで活性化(CBT)、もしくは芳香族に電子吸引性の官能基を持ったもの(DBE)を使用して活性化した。芳香族を側鎖に持つアミノ酸やペプチドについては、シアノメチルエステル(CME)で活性化した。
1.1. D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、β-アミノ酸
標題のアミノ酸にDBEを導入した基質の合成の一般的な方法を、D-セリンDBEの例で説明する。α-N-Boc-D-セリン(384 mg, 1.87 mmol)、トリエチルアミン(207 mg, 2.05 mmol)および3,5-ジニトロベンジルクロリド(324 mg, 1.50 mmol)を0.4mlのジメチルホルムアミドに加えて混合し、室温で12時間攪拌した。反応後、ジエチルエーテル(15ml)を加え、溶液を0.5 M HCl (5 mL x 3)、4 % NaHCO3 (5 mL x 3) およびブライン (5 mL x1)で洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層の中の水を除いてから、減圧下で溶媒を減圧留去した。クルードな残渣を4M塩酸/酢酸エチル(3 ml)に溶解し、室温で20分静置した。反応後、ジエチルエーテル(3mL)を加えて溶媒を減圧留去する操作を3回繰り返し、余分のHClを除いた。ジエチルエーテル(3mL)を加えて沈殿させ、沈澱を濾過により回収して全体で35%の収率で産物を得た(170 mg, 0.53 mmol)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz) d 8.83 (s, 1H), 8.70 (s, 2H), 8.44 (br, 3H), 5.56 (s, 2H), 4.07 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 2.22 (m, 1H), 1.00 (d, J= 7.0 Hz, 3H), 0.97 (d, J = 6.9 Hz, 3H).
1.2. N-アシル化アミノ酸
CMEを導入したN-アシル化アミノ酸基質(N-アシル-アミノアシル-CME)の合成の一般的な方法を、N-アセチル-Phe-CMEの例で説明する。フェニルアラニン(33 mg, 0.20 mmo)、酢酸N-ヒドロキシスクシンイミド(38 mg, 0.24 mmol)およびNaHCO3(50 mg, 0.60 mmol)を50%ジオキサン水溶液(0.3ml)に加えて混合し、室温で1時間攪拌した。反応後、溶媒を減圧留去してジオキサンを除き、酢酸エチル(3 mL x2)で溶液を洗浄した。水層を1M HClで酸性にし、溶液を酢酸エチル(3 mL x2)で抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の中の水を除いてから、減圧下で溶媒を減圧留去した。残渣(N-アセチル-Phe-OH)を、ジメチルホルムアミド(0.2ml)にトリエチルアミン(24 mg, 1.2 mmol)およびクロロアセトニトリル(0.1 mL)を加えたものと混合し、反応混合物を室温で12時間攪拌した。反応後、ジエチルエーテル(9 ml)を加え、1M塩酸 (3 mL x 3)、飽和NaHCO3 (3 mL x 3)およびブライン(5 mL x1)で溶液を洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層の中の水を除いてから、減圧下で溶媒を減圧留去した。クルードな残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフフィーにより精製し、N-アセチル-Phe-CME(28 mg, 55%)を得た。
1.3. ペプチド基質
ペプチドは全てFmoc化学を利用した固相合成により合成した。N-Fmocアミノ酸(N-保護アミノ酸)は渡辺化学工業株式会社(日本)から購入したものを用いた。
CMEを導入したペプチド基質(ペプチド-CME)の合成の一般的な方法の例として、H-DPhe-DPhe-Phe-CMEの合成を説明する。まず、H- DPhe-DPhe-Phe-OHを、WANG-alko-レジン(0.15 mmol スケール、渡辺化学工業社製)を用いて固相合成した。得られたトリペプチド(H- DPhe-DPhe-Phe-OH)、Boc2O (35 mg, 0.16 mmol)およびNaHCO3(13 mg, 0.16 mmol)を50% ジオキサン水溶液(0.5 mL)に加えて混合し、室温で1時間攪拌した。次いで、反応混合物を減圧留去してジオキサンを除き、酢酸エチル(3 mL x2)で溶液を洗浄した。水層を1M HClで酸性にし、溶液を酢酸エチル(3 mL x2)で抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の中の水を除いてから、減圧下で溶媒を減圧留去した。残渣(Boc-DPhe-DPhe-Phe-OH)を、ジメチルホルムアミド(0.2ml)にトリエチルアミン(16 mg, 0.16 mmol)およびクロロアセトニトリル(0.1 mL)と加えたものと混合し、反応混合物を室温で12時間攪拌した。反応後、ジエチルエーテル(9 ml)を加え、1M塩酸 (3 mL x 3)、飽和NaHCO3 (3 mL x 3)およびブライン(5 mL x1)で溶液を洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層の中の水を除いてから、減圧下で溶媒を減圧留去した。クルードな残渣を4M塩酸/酢酸エチル(2 ml)に溶解し、室温で20分静置した。ジエチルエーテル(3 ml)を加えて溶媒を減圧留去する操作を3回繰り返し、余分のHClを除いた。ジエチルエーテル(3 ml)を加えて沈殿させ、沈澱を濾過により回収して全体で43%の収率で産物を得た(35 mg)。
2. RNAの合成
オリゴヌクレオチドは全てOperon社(日本)から購入した。以下のプライマーを用いて増幅した鋳型DNAからin vitro の転写によりtRNAfMet cauを合成した。
P1: 5’-GTAAT ACGAC TCACT ATAGG CGGGG TGGAG CAGCC TGGTA GCTCG TCGG-3’ (配列番号5)
P2: 5'-GAACC GACGA TCTTC GGGTT ATGAG CCCGA CGAGC TACCA GGCT-3' (配列番号6)
P3: 5'-GCATA TGTAA TACGA CTCAC TATAG-3' (配列番号7)
P4: 5'-TGGTT GCGGG GGCCG GATTT GAACC GACGA TCTTC GGG-3' (配列番号8)
P5: 5'-TGGTT GCGGG GGCCG GATTT-3' (配列番号9)
まず、P1とP2とをアニ−ルさせ、Taq DNA ポリメレースにより伸長した。得られた産物をPCR反応緩衝液で20倍に希釈し、P3およびP4をそれぞれ5'および3'プライマーとして用いて増幅した。さらに、産物を200倍に希釈して、P3およびP5をそれぞれ5'および3'プライマーとして用いて増幅してtRNAfMet cauに相当するDNAを得た。次いで、T7 RNAポリメレースを用いて、DNA産物を転写し、10%変性PAGEにより精製した。得られたtRNAfMet cauを水に溶解し、濃度を200μMに調整した。
同様に、スーパーフレキシザイムもin vitro 転写法により合成した。具体的には、特願2005-352243 多目的アシル触媒とその用途、およびH. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga (2006) Nature Methods 3, 357-359に記載の方法を用いて行った。
3. tRNAのアシル化の確認
本実施形態では、多様なアミノ酸によるアシル化を簡便に確認するため、開始tRNA (tRNAfMet cau)の代わりに、その短鎖アナログに相当するマイクロヘリックス(microhelix)またはミニヘリックス(minihelix)を用いてアシル化反応を行い、反応後の溶液はアミノアシル化の効率を確認するために酸性条件下でのアクリルアミド電気泳動分析を行った。Minihelix(またはmicrohelix)に由来するバンドがアミノアシル化されると移動度が遅くなる。Minihelix(またはmicrohelix)のバンドとアシル化minihelix(またはmicrohelix)のバンドの強度を比較することでアミノアシル化効率が決定できる。
アシル化反応は、0.1 M Hepes-K buffer(pH 7.5)、 0.1 M KCl, 600 mM MgCl2 中で20 μM スーパーフレキシザイム(dFx または eFx)5 μL、20 μM tRNAアナログ(microhelixまたはminihelix)、および5 mM 基質を20 % DMSOに加えて、0℃で2〜6時間反応させた。その詳細な手順としては、まず、40 μM tRNAアナログを0.2 M Hepes-K buffer pH 7.5, 0.2 M KCl (2.5 μL)に加え、95℃で3分加熱し、5分間で25℃まで冷却した。MgCl2 (3 M, 1 μL)およびスーパーフレキシザイム(200 μM, 0.5 μL)を加え、混合物を25℃で5分静置した。基質(DMSO中25 mM, 1 μL)を加えることによりtRNAアナログのアシル化反応を開始し、氷上で2時間静置した。0.6 M 酢酸ナトリウム、pH 5を15 μL加えることにより反応を停止した。エタノール沈殿後、70%エタノールで洗浄したペレットを2 μLの10 mM 酢酸ナトリウム、pH 5に溶解した。反応後の溶液を酸性条件下、20%の変性PAGE(50 mM 酢酸ナトリウム、6 M 尿素)で解析した。
添付の図面で示す実験結果は、基質としてN-アシル基のついたPhe誘導体(図6〜7)その他を用いた例である。アシル化の結果を図8〜11に示す。ここでは多種のアミノ酸誘導体が効率よくスーパーフレキシザイムによってアシル化されることが確認された。
例示された基質の略称の意味は次の通りである。F = フェニルアラニン (Phe)、 OH-F = ヒドロキシ-deamino-フェニルアラニン、 Ac = アセチル、 N3Ac = アジド-アセチル、 oxP = 4-オキソ-ペンタノイル、 Pen = ペンタ-4-エノイル, Hex = ヘキサノイル, Pyl = ペンタ-5-イノイル, CBA = カルボキシ-ベンジルアミン, Mhe = 5-メチル-ヘキサノイル, Mim = メレイミド, PyE = パイログルタミン, DPhe = D-フェニルアラニン
4. 翻訳
本実施形態では、様々なアミノ酸によりアシル化された開始tRNAを、無細胞翻訳系に加えて翻訳を開始することにより、所望のN末端骨格を持つポリペプチドの翻訳合成を行った。
翻訳系は、cDNAからの転写系を含む原核生物由来の再構成無細胞タンパク質合成系であるPGI社のPURESYSTEM(登録商標)を用いた。必要最低限のアミノ酸のみを含んだ翻訳反応混合物にアシル化tRNAを加えた。この時、生成するペプチドの検出のためC14でラベルされたAspを加えていた。翻訳反応後、tricine-SDS PAGEで解析した。
まず、翻訳反応で用いるアシル化開始tRNAを調整した。0.1 M Hepes-K buffer pH 7.5, 0.1 M KCl, 600 mM MgCl2中で、20 μMスーパーフレキシザイム(dFx または eFx)15 μL、 20 μM tRNAfMet CAU, および5 mM 基質、20 % DMSOとを0℃で2〜6時間反応させた後、エタノール沈殿を行い、目的のアミノ酸でアシル化された開始tRNA(tRNAfMet cauまたはそのアンチコドンを変えた変異体)を単離した。その詳細な手順としては、40 μM tRNAAsn CUA(または変異体)を0.2 M Hepes-K buffer pH 7.5, 0.2 M KCl (7.5 μL) に加え、95℃で3分加熱し、5分間で25℃まで冷却した。MgCl2(3 M, 3 μL)およびスーパーフレキシザイム(200 μM, 1.5 μL)を加え、混合物を25℃で5分静置した。基質(DMSO中25 mM, 3 μL)を加えることによりアシル化反応を開始し、氷上で2時間静置した。アシル化反応後、0.6 M 酢酸ナトリウム(pH 5)を45 μL加えることにより反応を停止し、エタノール沈殿によりRNAを回収した。ペレットを70%エタノールと0.1 M酢酸ナトリウム(pH 5)で2回洗浄し、70%エタノールで1回洗浄してアシル化開始tRNAを得た。アシル化開始tRNAは、翻訳混合物に添加する直前に0.5 μLの1 mM酢酸ナトリウムに溶解した。
ペプチドの翻訳合成は、PURE systemを用いて、0.04 μM cDNA および3 mM EDTA、伸長反応用の必要最低限のアミノ酸として200 μM の Thr, Tyr, Lys またはThr, Gly, Phe, Tyr, Lysおよび 50 μM の [14C]-Asp、ならびに120 μMのアシル化tRNAfMet CAU を翻訳反応混合物に添加して行った。37℃で1時間翻訳反応をさせた後、tricine-SDS PAGEで解析した。
結果を図12〜18に示す。図18以外は、いずれの例もN末端の開始コドンはメチオニンのコドン(ATG)、開始tRNAはtRNAAsn CUAを用いたものを示すが(鋳型cDNA配列は図中にYG1またはYG10として示した)、これら以外のcDNA配列でも翻訳合成反応に関し特に制限はないと思われた。また、本実施形態では示していないが、YG1のペプチド配列の中央のFをサプレッサーtRNAで読みとることでペプチド配列の真ん中にも非天然アミノ酸を導入可能である(F前後のT及びGはスペーサーとして配置してある)。ペプチドのC末端には精製用のタグとしてFLAG配列が存在する。
図12〜15は図6〜7で挙げたアミノ酸誘導体をチャージさせた開始tRNAを用いてペプチドが翻訳されるかを確認した実験である。
図12では、ペプチド合成を様々な脂肪酸様アシル基をもったフェニルアラニンで開始した。ここではcDNA配列としてYG1を利用し、必要最低限のアミノ酸としてThr, Gly, Phe, Tyr, Lysを加えている。メチオニンを系中に加えたポジティブコントロール(wt)では確かにバンドが現れ、ペプチド合成が行われたことを示している。一方メチオニン非存在下、開始tRNAを加えなかったり(-tRNA)、アシル化していない開始tRNAを加えた(Noaa)ネガティブコントロールではバンドが現れず、ペプチド合成が阻害されていることが確認できる。様々な脂肪酸様アシル基をもったフェニルアラニンでアシル化した開始tRNAを加えた場合にはペプチド合成が見られ、これらフェニルアラニン誘導体で翻訳反応が開始したことが示唆される。
図13では、図12と同じくYG1をcDNAとし、様々なアシル基をもったフェニルアラニンで翻訳開始させた。ここではアシル基として、翻訳後に化学的に修飾可能な官能基を持つもの(N3AcF(アジド基)、PylF(アルキン)、oxPF(ケト基)、MimF(マレイミド基))を用いた。
図14では、同じくYG1をcDNAとし、カルボキシ-ベンジルアミンでアシル化したフェニルアラニン(CBAF)で翻訳開始させた。このように立体的に大きなアシル基でも翻訳反応を開始させることができた。
図15では、同じくYG1をcDNAとし、様々なフェニルアラニン誘導体で翻訳開始させた。ここではペプチドホルモンのN末端に頻繁にみられるピログルタミン酸(pyEF)・及びD-アミノ酸であるD-フェニルアラニン(DPheF)でアシル化したフェニルアラニンを用いた。さらに、これまで用いてきたものはL体のフェニルアラニンであったが、D体のフェニルアラニン(DF)やN-アシル化されたD?フェニルアラニン(PenDF)でも翻訳開始可能であることがわかった。
図16は、20種類の天然アミノ酸をそれぞれアミノアシル化した開始tRNAをポリペプチドの翻訳合成に用いた例を示す。その結果、一部(Pro, Glu, Arg)を除いた全てのアミノ酸で翻訳開始が可能であった。(ここではcDNAとしてYG10を用いた。)
図17ではトリペプチドをアシル化した開始tRNA(開始ペプチジル-tRNA)でも翻訳開始が可能であることを示した。(ここではcDNAとしてYG10を用いた。)2種類のDアミノ酸が含まれている点が重要である。
図18は、通常の開始コドン以外の4種類のコドンでも開始が可能なことを示した図である。天然の開始tRNAの配列中のアンチコドン部分をAUGからAUA・CGG・CCG・GGC・GCCへと変換した開始tRNAとそれに対応する開始コドンを持つcDNA配列を用いて翻訳開始反応を行った。実験ではアミノ酸をチャージしていないtRNA(-aa, ネガティブコントロール)と、Met, Tyr, ProをそれぞれチャージしたtRNAを用いた。Proは図16で示した20種類の天然アミノ酸中で何故か開始できないアミノ酸の一つで、開始コドンを変えることでも開始が可能とはならなかったが、他のアミノ酸では問題なく翻訳開始できた。この実験により天然の開始コドン(AUG)以外の配列も開始コドンとして割り当てることが可能であることが分かった。
以上より、多種のN-アシルアミノ酸、及びD-アミノ酸、ならびに特殊骨格を含むポリペプチド骨格などがN末端に存在するペプチドを翻訳によって合成できること、開始コドンの改変が可能であることが確認された。
5. ペプチドのマススペクトル測定
ペプチド翻訳産物の分子量をマススペクトル測定により確認した。上述の方法で[14C]-Aspの代わりにAspを用いて反応を行ってペプチドを翻訳合成した後、生成物のC末端に付加させたFLAGタグ配列を利用し、生成物の翻訳混合物からの単離を行った。単離にはSIGMA社から発売されているANTI-FLAG (登録商標)M2アガロースを用いた。単離物をMALDI-MSで解析し、生成物の分子量が予想される分子量と一致すること及び、望まれない不純物(N末端にホルミルメチオニンが含むペプチドなど)が混入していないことを確認した。
結果を図19〜25に示す。図19〜24は図12〜15で合成された種々のN末端骨格を持つポリペプチドのマススペクトルであり、図25は図17で示したトリペプチド開始産物のマススペクトルである。予測されるポリペプチドの分子量と観測された分子量とが一致し、さらに、マススペクトルに目的物の単一ピークしか観測されないことから、目的のポリペプチドのみが合成され、天然の翻訳開始機構を経て得られたペプチド等が混入していないことが明らかとなった。
さらに、N末端アミノ基のホルミル化について新たな知見が得られた。図22において、CBAF(フェニルアラニンにベンジルアミンをアシル化した誘導体)で開始した翻訳産物(図14)のN末端はMTFの存在下でもホルミル化されなかったことが示された。また、図23において、ジペプチドを開始tRNAに結合させて翻訳に用いた場合にホルミル化されないことが示された。また、図24において、D-アミノ酸をN末に有するポリペプチドも何ら問題なく翻訳合成されたことが確認され、さらに、D体フェニルアラニン(F)のN末端がホルミル化されなかったことも示された。なお、L体フェニルアラニンで開始した場合のホルミル化は確認されている。
天然の(原核)翻訳系における開始tRNAと本発明における開始tRNAの比較。 ペプチド性天然物のN末端部位にみられる特殊骨格の例。 本発明で用いる様々な開始アミノ酸の例。 翻訳開始に使用しているtRNAの配列とその2時構造。本図では通常の開始コドン(AUG)に相補的なアンチコドン(CAU)をもつ一般的なtRNAを示している。 天然の(原核)翻訳産物と本発明における翻訳産物の比較。 実施例で用いたアミノ酸誘導体。 実施例で用いたアミノ酸誘導体。 図6と図7で挙げたアミノ酸誘導体のアシル化の効率を確認した結果。 図6と図7で挙げたアミノ酸誘導体のアシル化の効率を確認した結果。 図6と図7で挙げたアミノ酸誘導体のアシル化の効率を確認した結果。 図6と図7で挙げたアミノ酸誘導体のアシル化の効率を確認した結果。 様々なアミノ酸でポリペプチドの翻訳合成を開始した例。 様々なアミノ酸でポリペプチドの翻訳合成を開始した例。 様々なアミノ酸でポリペプチドの翻訳合成を開始した例。 様々なアミノ酸でポリペプチドの翻訳合成を開始した例。 20種類の天然アミノ酸でポリペプチドの翻訳合成を開始した例。 2種類のD-アミノ酸を含むトリペプチドでの開始の例。 通常の開始コドン以外の4種類のコドンでも開始が可能なことを示した図。 図12〜15で合成したペプチド翻訳産物のマススペクトル。 図12〜15で合成したペプチド翻訳産物のマススペクトル。 図12〜15で合成したペプチド翻訳産物のマススペクトル。 図12〜15で合成したペプチド翻訳産物のマススペクトル。 図12〜15で合成したペプチド翻訳産物のマススペクトル。 図12〜15で合成したペプチド翻訳産物のマススペクトル。 図17で示したトリペプチド開始のペプチドのマススペクトル。
配列番号1:開始tRNA(tRNAfMet
配列番号2:アンチコドンを改変した開始tRNA
配列番号3:スーパーフレキシザイムeFx
配列番号4:スーパーフレキシザイムdFx
配列番号5:P1
配列番号6:P2
配列番号7:P3
配列番号8:P4
配列番号9:P5

Claims (14)

  1. 所望のN末端構造を持つポリペプチドを翻訳合成する方法であって、
    (a)tRNAのアシル化反応を触媒するリボザイムを提供する工程:
    (b)前記リボザイムによるアシル化反応の基質となる、所望の構造を持つアミノ酸基質を提供する工程;
    (c)前記(a)のリボザイムを用いて、前記(b)のアミノ酸基質で開始tRNAのアシル化反応を行うことにより、所望の構造を持つアミノ酸でアミノアシル化された開始tRNAを得る工程;
    (d)前記(c)で得られたアミノアシル化開始tRNAを無細胞翻訳系に加えて、所望の構造を持つアミノ酸で翻訳を開始させることにより、所望のN末端構造をもつポリペプチドを得る工程
    を含む、前記方法。
  2. 工程(c)で開始tRNAをアミノアシル化するアミノ酸がメチオニン以外の通常アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(c)で開始tRNAをアミノアシル化するアミノ酸が異常アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
  4. 異常アミノ酸が、アミノ基に様々なアシル基が導入されたアミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、およびこれらのアミノ酸のN-メチル化体、ピログルタミン酸、スタチン(β-ヒドロキシ-γ-アミノ酸)およびその誘導体、ジペプチド、トリペプチド、及びそれより長鎖のペプチドからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 工程(b)で提供されるアミノ酸基質が、弱活性化されたアミノ酸である、請求項1に記載の方法。
  6. アミノ酸基質がアミノ酸のシアノメチルエステル、ジニトロベンジルエステル又は4-クロロベンジルチオエステルである、請求項5に記載の方法。
  7. tRNAのアシル化反応を触媒するリボザイムが、以下の(1)又は(2)
    (1)GGAUCGAAAGAUUUCCGCGGCCCCGAAAGGGGAUUAGCGUUAGGU
    (2)GGAUCGAAAGAUUUCCGCAUCCCCGAAAGGGUACAUGGCGUUAGGU
    のいずれかのRNA配列からなるリボザイムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 開始tRNAが、5’から3’方向に、
    GGCGGGGUGGAGCAGCCUGGUAGCUCGUCGGGCUNNNAACCCGAAGAUCGUCGGUUCAAAUCCGGCCCCCGCAACCA
    で示されるRNA配列からなる構造を有し、NNNは任意の塩基の組合せからなるアンチコドンを表し、該アンチコドンに対応する開始コドンが、翻訳合成されるポリペプチドの配列をコードするmRNA上に存在し、該開始コドンが所望の構造を持つアミノ酸をコードする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 開始tRNA中のアンチコドンがCAUであり、mRNA上の開始コドンがAUGである、請求項8に記載の方法。
  10. 開始tRNA中のアンチコドンがCAU以外のアンチコドンであり、mRNA上の開始コドンがAUG以外のコドンである、請求項8に記載の方法。
  11. 無細胞翻訳系として再構成無細胞翻訳系を用いる、請求項1に記載の方法。
  12. メチオニン又はメチオニルtRNA合成酵素(MetRS)を翻訳系中から除いて、天然の翻訳開始機構を阻害することにより、所望のN末端構造を持つポリペプチドだけが翻訳合成される、請求項11に記載の方法。
  13. メチオニンtRNAホルミルトランスフェラーゼ(MTF)の存在又は非存在を選択することにより、翻訳合成されるポリペプチドのN末端のホルミル化をコントロールする、請求項11に記載の方法。
  14. N末端に非天然骨格をもつポリペプチドを翻訳合成するために使用可能なキットであって
    (a)以下の(1)又は(2)のいずれかのRNA配列からなる、tRNAのアシル化を触媒する2つのリボザイム:
    (1)GGAUCGAAAGAUUUCCGCGGCCCCGAAAGGGGAUUAGCGUUAGGU
    (2)GGAUCGAAAGAUUUCCGCAUCCCCGAAAGGGUACAUGGCGUUAGGU
    (b)前記リボザイムの基質となる、非天然骨格をもつアミノ酸基質
    (c)開始tRNA
    (d)無細胞合成系
    を含む、前記キット。
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