JP2008124910A - 高周波増幅回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】合成後の出力高周波信号の劣化を抑えることができる高周波増幅回路を提供する。
【解決手段】信号分離器12は、入力変調信号Sin(t)の振幅変調及び位相変調に応じた位相変調を伴い且つ入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差を有する位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)を生成する。ミキサ28−1,28−2は、発振器26から出力された高周波信号SL(t)を用いて位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をアップコンバートして、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)を生成する。逓倍回路32−1,32−2は、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)の周波数を2倍することで、増幅器対14へ入力される高周波信号S1(t),S2(t)を生成する。
【選択図】図1
【解決手段】信号分離器12は、入力変調信号Sin(t)の振幅変調及び位相変調に応じた位相変調を伴い且つ入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差を有する位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)を生成する。ミキサ28−1,28−2は、発振器26から出力された高周波信号SL(t)を用いて位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をアップコンバートして、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)を生成する。逓倍回路32−1,32−2は、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)の周波数を2倍することで、増幅器対14へ入力される高周波信号S1(t),S2(t)を生成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、高周波増幅回路、特に高効率増幅を図った高周波増幅回路に関する。
高効率な線形増幅器を実現する手段の1つとして、LINC(Linear Amplification with Nonlinear Components)による飽和増幅器を用いた高周波増幅回路が知られている。以下、関連技術の高周波増幅回路について、図7を用いて説明する。
信号分離器(SCS:Signal Components Separator)62は、入力端子10に入力された包絡線変動を伴う入力変調信号Sin(t)をその振幅に応じた位相差を有する位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)に分離して出力する。例えば、入力変調信号Sin(t)は、振幅変調及び位相変調(角度変調)を伴う変調信号であり、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)は、定包絡線となる定振幅位相変調信号である。ここでの入力変調信号Sin(t)及び位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)は、いずれもベースバンド信号であってもよいし、IF信号であってもよい。信号分離器62では、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)がディジタル信号として生成される。
信号分離器62で生成された位相変調信号対の一方Sc1(t)は、D/Aコンバータ72−1でディジタル信号からアナログ信号へ変換され、さらに、フィルタ74−1を通過することで、位相変調信号対の一方Sc1(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。同様に、位相変調信号対の他方Sc2(t)は、D/Aコンバータ72−2でディジタル信号からアナログ信号へ変換され、さらに、フィルタ74−2を通過することで、位相変調信号対の他方Sc2(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。
ミキサ78−1は、発振器76から出力された高周波信号(発振信号)SL(t)を用いて、フィルタ74−1を通過した位相変調信号対の一方Sc1(t)を周波数変換(アップコンバート)することで、RF信号である高周波信号対の一方S1(t)を生成して出力する。ミキサ78−1から出力された高周波信号対の一方S1(t)は、フィルタ30−1を通過することで、高周波信号対の一方S1(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。同様に、ミキサ78−2は、発振器76から出力された高周波信号SL(t)を用いて、フィルタ74−2を通過した位相変調信号対の他方Sc2(t)を周波数変換(アップコンバート)することで、RF信号である高周波信号対の他方S2(t)を生成して出力する。ミキサ78−2から出力された高周波信号対の他方S2(t)は、フィルタ30−2を通過することで、高周波信号対の他方S2(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。
ここで、入力変調信号Sin(t)を以下の(1)式で表すものとすると、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)及び高周波信号対S1(t),S2(t)については、以下の(2)〜(6)式で表すことができる。
Sin(t)=a(t)・cos[θ(t)] (1)
Sc1(t)=amax・cos[θ(t)+ψ(t)] (2)
Sc2(t)=amax・cos[θ(t)−ψ(t)] (3)
S1(t)=amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)+ψ(t)] (4)
S2(t)=amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)−ψ(t)] (5)
ψ(t)=cos-1[a(t)/(2・amax)] (6)
Sc1(t)=amax・cos[θ(t)+ψ(t)] (2)
Sc2(t)=amax・cos[θ(t)−ψ(t)] (3)
S1(t)=amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)+ψ(t)] (4)
S2(t)=amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)−ψ(t)] (5)
ψ(t)=cos-1[a(t)/(2・amax)] (6)
ただし、(1)〜(6)式において、a(t)は入力変調信号Sin(t)の振幅変調分、θ(t)は入力変調信号Sin(t)の位相変調分(角度変調分)である。fcは発振器76から出力される高周波信号SL(t)の周波数、つまり高周波信号対S1(t),S2(t)のキャリア周波数である。amaxは、後述する増幅器対14の飽和出力レベルから設定される定数である。このように、信号分離器62、発振器76、及びミキサ78−1,78−2を含む構成により、入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差2×ψ(t)が生じるように位相変調が与えられた高周波信号対S1(t),S2(t)が生成される。
増幅器対14は、互いに並列に設けられた増幅器14−1,14−2によって構成されており、増幅器14−1と増幅器14−2とで利得、位相特性は略同一である。増幅器14−1は、ミキサ78−1から出力された(フィルタ30−1を通過した)高周波信号対の一方S1(t)を増幅し、増幅器14−2は、ミキサ78−2から出力された(フィルタ30−2を通過した)高周波信号対の他方S2(t)を増幅する。また、ここでの増幅器14−1,14−2は飽和増幅器として用いられる。
合成器16は、増幅器対14により増幅された高周波信号対G×S1(t),G×S2(t)(Gは増幅器14−1,14−2の利得)の各々を合成し、合成後の信号を出力高周波信号Sout(t)として出力端子20から出力する。高周波信号対S1(t),S2(t)の通過位相をφとすると、出力高周波信号Sout(t)については以下の(7)式で表すことができる。
Sout(t)=G・amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)+ψ(t)+φ]
+G・amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)−ψ(t)+φ]
=2・G・amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)+φ]・cos[ψ(t)]
=G・a(t)・cos[2・π・fc・t+θ(t)+φ] (7)
+G・amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)−ψ(t)+φ]
=2・G・amax・cos[2・π・fc・t+θ(t)+φ]・cos[ψ(t)]
=G・a(t)・cos[2・π・fc・t+θ(t)+φ] (7)
(7)式に示すように、図7に示す高周波増幅回路によれば、入力変調信号Sin(t)を利得Gで増幅した出力高周波信号Sout(t)を得るとともに、高効率な線形増幅を図っている。なお、このような高周波増幅回路(LINC)は、下記特許文献1〜3にも開示されている。
図7に示す高周波増幅回路において、信号分離器62で生成される位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の帯域幅は、入力変調信号Sin(t)の振幅変調分a(t)に応じた位相変調分(角度変調分)ψ(t)が与えられることで、元の入力変調信号Sin(t)の帯域幅よりも大幅に広くなる。そして、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の帯域幅が増大するほど、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の劣化が生じやすくなる。位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)に劣化が生じると、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)をアップコンバートしたRF信号である高周波信号対S1(t),S2(t)を増幅器対14で増幅する際に、増幅器対14のAM/AM歪みやAM/PM歪みの影響を受けることで、合成後の出力高周波信号Sout(t)が劣化して歪みが発生することになる。
本発明は、合成後の出力高周波信号の劣化を抑えることができる高周波増幅回路を提供することを目的とする。
本発明に係る高周波増幅回路は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係る高周波増幅回路は、振幅変調及び角度変調を伴う入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅に応じた位相差が生じるように角度変調が与えられた高周波信号対を生成して出力する高周波信号対生成器と、高周波信号対生成器から出力された高周波信号対を増幅する増幅器対と、増幅器対で増幅された高周波信号対の各々を合成して出力する合成器と、を備える高周波増幅回路であって、高周波信号対生成器は、入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅変調に応じた角度変調を伴い且つ入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する角度変調信号対を生成する変調信号生成手段と、高周波信号を用いて角度変調信号対を周波数変換する変換手段と、変換手段で周波数変換された角度変調信号対の周波数をn倍(nは2以上の整数)して、入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する高周波信号対を生成する逓倍手段と、を有し、逓倍手段から出力された高周波信号対が増幅器対で増幅されることを要旨とする。ここでの角度変調については、位相変調を用いることもできるし、周波数変調を用いることもできる。
また、本発明に係る高周波増幅回路は、振幅変調を伴う入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅に応じた位相差が生じるように角度変調が与えられた高周波信号対を生成して出力する高周波信号対生成器と、高周波信号対生成器から出力された高周波信号対を増幅する増幅器対と、増幅器対で増幅された高周波信号対の各々を合成して出力する合成器と、を備える高周波増幅回路であって、高周波信号対生成器は、入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅変調に応じた角度変調を伴う角度変調信号を生成する変調信号生成手段と、高周波信号を用いて角度変調信号を周波数変換して、入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する角度変調高周波信号対を生成する変換手段と、変換手段からの角度変調高周波信号対の周波数をn倍(nは2以上の整数)して、入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する高周波信号対を生成する逓倍手段と、を有し、逓倍手段から出力された高周波信号対が増幅器対で増幅されることを要旨とする。ここでの角度変調についても、位相変調を用いることもできるし、周波数変調を用いることもできる。
本発明によれば、入力変調信号の振幅変調に応じた角度変調を伴う角度変調信号の周波数帯域幅を狭めることができるので、角度変調信号の劣化を抑えることができる。その結果、角度変調信号を周波数変換して生成した高周波信号対を増幅器対で増幅する際に、増幅器対のAM/AM歪みやAM/PM歪みの影響を受けるのを抑えることができ、合成後の出力高周波信号の劣化を抑えることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。ただし、図7に示した関連技術と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る高周波増幅回路の概略構成を示す図である。本実施形態に係る高周波増幅回路も、図7に示した関連技術と同様にLINCであり、入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差が生じるように位相変調(角度変調)が与えられた高周波信号対S1(t),S2(t)を増幅器対14(増幅器14−1,14−2)で増幅し、増幅後の高周波信号対G×S1(t),G×S2(t)(Gは増幅器14−1,14−2の利得)の各々を合成器16で合成して出力することで、線形増幅された出力高周波信号Sout(t)を得るものである。
変調信号生成手段として設けられた信号分離器12は、入力端子10に入力された包絡線変動を伴う入力変調信号Sin(t)をその振幅に応じた位相差を有する位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)に分離して出力する。例えば、入力変調信号Sin(t)は、振幅変調及び位相変調(角度変調)を伴う変調信号であり、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)は、定包絡線となる定振幅位相変調信号である。ここでの入力変調信号Sin(t)及び位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)は、いずれもベースバンド信号であってもよいし、IF信号であってもよい。信号分離器12では、入力変調信号Sin(t)の振幅変調及び位相変調に応じた位相変調(角度変調)を伴い且つ入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差を有する位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)がディジタル信号として生成される。
信号分離器12で生成された位相変調信号対の一方Sb1(t)は、D/Aコンバータ22−1でディジタル信号からアナログ信号へ変換され、さらに、フィルタ24−1を通過することで、位相変調信号対の一方Sb1(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。同様に、位相変調信号対の他方Sb2(t)は、D/Aコンバータ22−2でディジタル信号からアナログ信号へ変換され、さらに、フィルタ24−2を通過することで、位相変調信号対の他方Sb2(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。
ミキサ28−1は、発振器26から出力された高周波信号(発振信号)SL(t)を用いて、フィルタ24−1を通過した位相変調信号対の一方Sb1(t)を周波数変換(アップコンバート)することで、位相変調高周波信号対の一方Sp1(t)を生成する。逓倍回路32−1は、ミキサ28−1でRF信号に変換された位相変調高周波信号対の一方Sp1(t)の周波数を2倍(2逓倍)することで、高周波信号対の一方S1(t)を生成する。図1は、位相変調高周波信号対の一方Sp1(t)をミキサ34−1により2乗することで2逓倍する例を示している。逓倍回路32−1から出力された高周波信号対の一方S1(t)は、フィルタ30−1を通過することで、高周波信号対の一方S1(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。増幅器14−1は、逓倍回路32−1から出力された(フィルタ30−1を通過した)高周波信号対の一方S1(t)を増幅する。
同様に、ミキサ28−2は、発振器26から出力された高周波信号SL(t)を用いて、フィルタ24−2を通過した位相変調信号対の他方Sb2(t)を周波数変換(アップコンバート)することで、位相変調高周波信号対の他方Sp2(t)を生成する。逓倍回路32−2は、ミキサ28−2でRF信号に変換された位相変調高周波信号対の他方Sp2(t)の周波数を2倍(2逓倍)することで、高周波信号対の他方S2(t)を生成する。図1は、位相変調高周波信号対の他方Sp2(t)をミキサ34−2により2乗することで2逓倍する例を示している。逓倍回路32−2から出力された高周波信号対の他方S2(t)は、フィルタ30−2を通過することで、高周波信号対の他方S2(t)の周波数帯域に対応する成分が抽出されるとともにそれ以外の周波数成分が抑圧される。増幅器14−2は、逓倍回路32−2から出力された(フィルタ30−2を通過した)高周波信号対の他方S2(t)を増幅する。このように、信号分離器12、発振器26、ミキサ28−1,28−2、及び逓倍回路32−1,32−2を含む構成により、入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差を有するように位相変調が与えられた高周波信号対S1(t),S2(t)を生成して増幅器対14へ出力する高周波信号対生成器が実現される。
本実施形態では、入力変調信号Sin(t)を前述の(1)式、高周波信号対S1(t),S2(t)を前述の(4)〜(6)式、出力高周波信号Sout(t)を前述の(7)式で表すものとすると、信号分離器12から出力される位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)は、以下の(8)、(9)式で表される。ただし、(8)、(9)式において、Aは定数である。
Sb1(t)=A・cos[θ(t)/2+ψ(t)/2] (8)
Sb2(t)=A・cos[θ(t)/2−ψ(t)/2] (9)
Sb2(t)=A・cos[θ(t)/2−ψ(t)/2] (9)
つまり、本実施形態では、信号分離器12は、位相変調信号対の一方Sb1(t)の位相が高周波信号対の一方S1(t)の位相変調分(角度変調分)θ(t)+ψ(t)の1/2になり、位相変調信号対の他方Sb2(t)の位相が高周波信号対の他方S2(t)の位相変調分(角度変調分)θ(t)−ψ(t)の1/2になるように、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)を生成する。
ミキサ28−1,28−2によるアップコンバート後の位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)は、以下の(10)、(11)式で表される。
Sp1(t)=A・cos[2・π・fc/2・t+θ(t)/2+ψ(t)/2] (10)
Sp2(t)=A・cos[2・π・fc/2・t+θ(t)/2−ψ(t)/2] (11)
Sp2(t)=A・cos[2・π・fc/2・t+θ(t)/2−ψ(t)/2] (11)
つまり、本実施形態では、発振器26から出力される高周波信号SL(t)の周波数は、高周波信号対S1(t),S2(t)のキャリア周波数fcの1/2に設定されている。そして、位相変調高周波信号対の一方Sp1(t)の位相は高周波信号対の一方S1(t)の位相の1/2になり、位相変調高周波信号対の他方Sp2(t)の位相は高周波信号対の他方S2(t)の位相の1/2になる。
逓倍回路32−1,32−2で2逓倍(ミキサ34−1,34−2で2乗)された高周波信号対S1(t),S2(t)は、以下の(12)、(13)式で表される。
S1(t)=A2/2・cos[2・π・fc・t+θ(t)+ψ(t)]+A2/2 (12)
S2(t)=A2/2・cos[2・π・fc・t+θ(t)−ψ(t)]+A2/2 (13)
S2(t)=A2/2・cos[2・π・fc・t+θ(t)−ψ(t)]+A2/2 (13)
(12)、(13)式の右辺第二項(DC成分であるA2/2)をフィルタ30−1,30−2で除去し、amax=A2/2を満たすようにAの値を設定することで、増幅器14−1,14−2へ入力される高周波信号対S1(t),S2(t)は、前述の(4)、(5)式に一致する。
前述のように、図7に示す高周波増幅回路においては、信号分離器62で生成される位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の帯域幅は、入力変調信号Sin(t)の振幅変調分a(t)に応じた位相変調分ψ(t)が与えられることで、元の入力変調信号Sin(t)の帯域幅よりも大幅に広くなる。図2のベクトル図に示すように、θ(t)の変化範囲は±πであり、ψ(t)の変化範囲は±π/2であるため、θ(t)±ψ(t)は±1.5×πの範囲で変化し、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)は過度の角度変調状態となる。FM変調モデルで考えると、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の変調指数βはθ(t)±ψ(t)の最大値に相当し、98%電力の周波数帯域幅は、カーソンの法則より2×(1+β)=11.4倍に広がる。一例として、W−CDMA4波である場合の入力変調信号Sin(t)のスペクトラム(ベースバンド帯域)を図3に示し、この入力変調信号Sin(t)を信号分離器62で分離した場合の位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)のスペクトラム(ベースバンド帯域)を図4に示す。このような広帯域の位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)を劣化無く信号分離器62で生成するためには、信号分離器62に要求されるサンプリングレートは入力変調信号Sin(t)の帯域幅の約15〜20倍となる。ディジタル回路の消費電力はクロック周波数に概略比例するので、回路全体の消費電力に大きな影響を及ぼすことになる。
また、図7に示す高周波増幅回路においては、信号分離器62で生成される位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の帯域幅が増大するほど、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の劣化が生じやすくなる。例えば、広帯域の位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)をフィルタ74−1,74−2に通すことで位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)に対応する周波数成分を抽出する際には、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の帯域幅が増大するほど、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)の劣化が生じやすくなる。劣化が生じた位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)のI−Qコンスタレーションは、例えば図5に示すようになり、位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)が定振幅信号にならなくなる。このような劣化した位相変調信号対Sc1(t),Sc2(t)をアップコンバートしてRF信号である高周波信号対S1(t),S2(t)を生成し、この高周波信号対S1(t),S2(t)を増幅器対14で増幅すると、増幅器対14のAM/AM歪みやAM/PM歪みの影響を受けることで、例えば図6に示すように、合成後の出力高周波信号Sout(t)が劣化して歪みが発生することになる。ただし、図6では、ベースバンド帯域に換算したスペクトラムを図示している。
これに対して本実施形態では、信号分離器12が位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をその変調指数βが1/2になるように生成し、ミキサ28−1,28−2が高周波信号対S1(t),S2(t)のキャリア周波数fcの1/2の高周波信号(発振信号)SL(t)で位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をアップコンバートし、逓倍回路32−1.32−2がアップコンバートされた位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)を2逓倍(2乗)することで高周波信号対S1(t),S2(t)を生成している。これによって、信号分離器12で生成される位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)の帯域幅を狭めることができる。そのため、信号分離器12に要求されるサンプリングレートを低くすることができ、回路全体の消費電力を低減することができる。そして、例えば位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をフィルタ24−1,24−2に通す際に、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)の劣化を抑えることができる。そのため、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をアップコンバート及び2逓倍したRF信号である高周波信号対S1(t),S2(t)を増幅器対14で増幅する際に、増幅器対14のAM/AM歪みやAM/PM歪みの影響を受けるのを抑えることができ、合成後の出力高周波信号Sout(t)の劣化を抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、高効率な線形増幅を実現することができる。
以上の実施形態の説明では、逓倍回路32−1.32−2が位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)の周波数を2倍するものとした。ただし、本実施形態では、逓倍回路32−1.32−2が位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)の周波数をn倍(nは2以上の整数)して高周波信号対S1(t),S2(t)を生成することもできる。その場合は、信号分離器12は、位相変調信号対の一方Sb1(t)の位相が高周波信号対の一方S1(t)の位相変調分θ(t)+ψ(t)の1/nになり、位相変調信号対の他方Sb2(t)の位相が高周波信号対の他方S2(t)の位相変調分θ(t)−ψ(t)の1/nになるように(変調指数βが1/nになるように)、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)を生成する。そして、ミキサ28−1,28−2は、高周波信号対S1(t),S2(t)のキャリア周波数fcの1/nの高周波信号(発振信号)SL(t)を用いて位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)をアップコンバートして、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)を生成する。入力変調信号Sin(t)を前述の(1)式、高周波信号対S1(t),S2(t)を前述の(4)〜(6)式、出力高周波信号Sout(t)を前述の(7)式で表すものとすると、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)、及び位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)は、以下の(14)〜(17)式で表される。
Sb1(t)=A・cos[θ(t)/n+ψ(t)/n] (14)
Sb2(t)=A・cos[θ(t)/n−ψ(t)/n] (15)
Sp1(t)=A・cos[2・π・fc/n・t+θ(t)/n+ψ(t)/n] (16)
Sp2(t)=A・cos[2・π・fc/n・t+θ(t)/n−ψ(t)/n] (17)
Sb2(t)=A・cos[θ(t)/n−ψ(t)/n] (15)
Sp1(t)=A・cos[2・π・fc/n・t+θ(t)/n+ψ(t)/n] (16)
Sp2(t)=A・cos[2・π・fc/n・t+θ(t)/n−ψ(t)/n] (17)
逓倍回路32−1.32−2が位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)をn逓倍(n乗)して高周波信号対S1(t),S2(t)を生成する場合も、信号分離器12で生成される位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)の帯域幅を狭めることができ、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)の劣化を抑えることができる。さらに、逓倍数nの値を増大させるほど、変調指数βをより小さくすることができ、位相変調信号対Sb1(t),Sb2(t)の帯域幅をより狭めることができる。
以上の実施形態の説明では、入力変調信号Sin(t)が振幅変調及び位相変調を伴う変調信号であるものとした。ただし、本実施形態では、入力変調信号Sin(t)が振幅変調及び周波数変調を伴う変調信号であってもよい。その場合は、以上の実施形態の説明において、θ(t)を2・π・f(t)・tに置き換えたものを考えればよい。ただし、f(t)は、入力変調信号Sin(t)の周波数変調分である。このように、本実施形態では、角度変調として、位相変調を用いることもできるし、周波数変調を用いることもできる。
さらに、本実施形態では、入力変調信号Sin(t)が振幅変調を伴う変調信号であってもよい。その場合は、信号分離器12は、入力変調信号Sin(t)を基に、入力変調信号Sin(t)の振幅変調に応じた位相変調(角度変調)を伴う位相変調信号Sb(t)を生成する。そして、ミキサ28−1,28−2は、発振器26から出力された高周波信号SL(t)を用いて位相変調信号Sb(t)を周波数変換(アップコンバート)して、入力変調信号Sin(t)の振幅に応じた位相差を有する位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)を生成する。ここでは、位相変調高周波信号対の一方Sp1(t)の位相が発振器26からの高周波信号SL(t)の位相と位相変調信号Sb(t)の位相との和に基づいて決まり(和に等しくなり)、位相変調高周波信号対の他方Sp2(t)の位相が発振器26からの高周波信号SL(t)の位相と位相変調信号Sb(t)の位相との差に基づいて決まる(差に等しくなる)ように、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)が生成される。振幅変調(包絡線変動)を伴う入力変調信号Sin(t)を以下の(18)式で表すものとすると、位相変調信号Sb(t)、位相変調高周波信号対Sp1(t),Sp2(t)、及び高周波信号対S1(t),S2(t)については、以下の(19)〜(23)式で表すことができる。ただし、(19)〜(23)式において、nは2以上の整数である。
Sin(t)=a(t) (18)
Sb(t)=A・cos[ψ(t)/n] (19)
Sp1(t)=A・cos[2・π・fc/n・t+ψ(t)/n] (20)
Sp2(t)=A・cos[2・π・fc/n・t−ψ(t)/n] (21)
S1(t)=amax・cos[2・π・fc・t+ψ(t)] (22)
S2(t)=amax・cos[2・π・fc・t−ψ(t)] (23)
Sb(t)=A・cos[ψ(t)/n] (19)
Sp1(t)=A・cos[2・π・fc/n・t+ψ(t)/n] (20)
Sp2(t)=A・cos[2・π・fc/n・t−ψ(t)/n] (21)
S1(t)=amax・cos[2・π・fc・t+ψ(t)] (22)
S2(t)=amax・cos[2・π・fc・t−ψ(t)] (23)
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 入力端子、12 信号分離器、14 増幅器対、16 合成器、20 出力端子、22−1,22−2 D/Aコンバータ、24−1,24−2,30−1,30−2 フィルタ、26 発振器、28−1,28−2,34−1,34−2 ミキサ、32−1,32−2 逓倍回路。
Claims (2)
- 振幅変調及び角度変調を伴う入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅に応じた位相差が生じるように角度変調が与えられた高周波信号対を生成して出力する高周波信号対生成器と、高周波信号対生成器から出力された高周波信号対を増幅する増幅器対と、増幅器対で増幅された高周波信号対の各々を合成して出力する合成器と、を備える高周波増幅回路であって、
高周波信号対生成器は、
入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅変調に応じた角度変調を伴い且つ入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する角度変調信号対を生成する変調信号生成手段と、
高周波信号を用いて角度変調信号対を周波数変換する変換手段と、
変換手段で周波数変換された角度変調信号対の周波数をn倍(nは2以上の整数)して、入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する高周波信号対を生成する逓倍手段と、
を有し、
逓倍手段から出力された高周波信号対が増幅器対で増幅される、高周波増幅回路。 - 振幅変調を伴う入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅に応じた位相差が生じるように角度変調が与えられた高周波信号対を生成して出力する高周波信号対生成器と、高周波信号対生成器から出力された高周波信号対を増幅する増幅器対と、増幅器対で増幅された高周波信号対の各々を合成して出力する合成器と、を備える高周波増幅回路であって、
高周波信号対生成器は、
入力変調信号を基に、入力変調信号の振幅変調に応じた角度変調を伴う角度変調信号を生成する変調信号生成手段と、
高周波信号を用いて角度変調信号を周波数変換して、入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する角度変調高周波信号対を生成する変換手段と、
変換手段からの角度変調高周波信号対の周波数をn倍(nは2以上の整数)して、入力変調信号の振幅に応じた位相差を有する高周波信号対を生成する逓倍手段と、
を有し、
逓倍手段から出力された高周波信号対が増幅器対で増幅される、高周波増幅回路。
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JP2010154470A (ja) * | 2008-12-26 | 2010-07-08 | Toshiba Corp | 電力増幅装置及び電力増幅方法 |
CN102461018A (zh) * | 2009-04-28 | 2012-05-16 | 阿尔卡特朗讯 | 用于使用linc放大器进行数据传输的方法、linc放大器、发射设备、接收设备及其通信网络 |
-
2006
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