JP2008122138A - 薄鋼板の磁気特性及び機械的強度測定装置並びに測定方法 - Google Patents

薄鋼板の磁気特性及び機械的強度測定装置並びに測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】走行する薄鋼板の磁気特性を安定に精度良く測定すること、また、当該磁気特性から薄鋼板の機械的強度を迅速に、かつ従来よりも精度良く測定すること。
【解決手段】移動する薄鋼板を被測定物として、該薄鋼板面に対向させた1対の磁極からなり、交流の励磁電流で交番磁界を発生する磁化器で、薄鋼板を磁化して薄鋼板の磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、前記磁化器が2台であって、前記薄鋼板を挟んで互いに対向配置され、さらに、該磁化器それぞれのヨークに巻いた1つ又は複数の検出コイルを具備し、前記励磁電流の値と前記検出コイルの出力電圧に基づいて前記薄鋼板の磁気特性を測定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄鋼製品の製造工程において通板中の薄鋼板を交番磁界により励磁し、その励磁電流値と磁化器内の磁束密度を測定することにより、薄鋼板の磁気特性と機械的強度を測定する装置と方法に関する。
薄鋼板は自動車のボディーや家電製品の外板に用いられることが多く、この目的のために通常はプレス加工等の成型を施されて利用されている。薄鋼板のプレス加工を精度良く安定して行うためには、加工する薄鋼板の降伏点(Yp)や引張強度(Ts)等といった機械的強度があらかじめわかっていることが重要である。一方、こうした加工に供される薄鋼板は通常はコイルとして出荷されることが多く、コイルの長手方向で機械的強度がばらついていると同じ条件で加工しようとしても成形性に差異が生じてしまい安定した加工が困難となる。また、コイルの幅方向に機械的強度のばらつきがある場合にも同様に安定した加工が困難である。したがって、薄鋼板の製造工程で薄鋼板の機械的強度ばらつきを測定することが、その後のプレス加工等の機械加工のために重要である。
ところで、薄鋼板の機械的強度は保磁力や残留磁化といった薄鋼板の磁気特性と関係があることが広く知られている。また、保磁力と結晶粒径との間に相関があることも広く知られており、薄鋼板の磁気特性を通板中に測定することは、機械的特性を製造工程で測定する上での効果は大きい。なお、通常厳密な保磁力とは、磁性材料を準静的に交番磁界で磁化して得るヒステリシス=ループ(特にメジャーループ)において、磁化がゼロとなるときの磁場の大きさである。本願明細書においては、交番磁界が準静的ではないときも、保磁力と呼ぶ。
例えば、薄鋼板の保磁力を測定して結晶粒径を評価する技術は、特許文献1、2に開示されている。その技術は、図14に示すように、ヨーク式の磁化器を薄鋼板の片側に設置し、励磁コイルに交流電流を与えることにより交番磁界を発生させ薄鋼板を磁化し、励磁コイルに与える励磁電流と磁極に巻いた検出コイルからの磁束密度より、保磁力に相当する値を測定し、この保磁力相当値と結晶粒径との予め実験的に求めた関係式より結晶粒径を測定するという技術である。
他にも同様に薄鋼板をヨーク式磁化器で磁化し、薄鋼板の表面近傍で磁界と漏洩磁束を検出して、後者で測定されるバルクハウゼンノイズが最大となるときの磁界強度を測定して保磁力とする方法が特許文献3に開示されている。
これらの保磁力測定方法に共通するのは、ヨーク式の磁化器を薄鋼板の片側に設置して薄鋼板を磁化し、保磁力または保磁力相当値を測定している点であるが、製造工程において通板中の薄鋼板を安定して磁化するためには以下の問題があった。
(a)通板中の薄鋼板には振動があることや、薄鋼板に反り等の形状があるため、磁化器の磁極面と薄鋼板との間隔(ギャップ)を安定的に小さくすることが困難である。従来技術では、例えば特許文献2に記載があるように磁極面と鋼板とのギャップは1mm程度と非常に小さい。
(b)磁極面と薄鋼板のギャップが変動してギャップ部の磁気抵抗が変動した場合、薄鋼板へ印加される実効的な起磁力が大きく変動するため、測定に影響を与えてしまう。
なお、漏洩磁束法による欠陥検出において磁化力を向上するために、薄鋼板の両側に対向させて配置された2つの中空ロール内に1組の磁化器を設置する方法が、特許文献4に開示されている。当該磁化方法では、2つの中空ロール間に鋼板を挟んで通板することによって、磁極と鋼板面の間隔を一定に保つよう工夫されている。
特開平6−213872号公報 特開平6−265525号公報 特開2001−141701号公報 特開平3−277962号公報
以上のように、走行する薄鋼板を1つのヨーク式磁化器を用いて片側から交流磁界により励磁し、ヨーク式磁化器の磁心に巻いた検出コイルにより測定した磁束密度と励磁電流値から薄鋼板の保磁力や残留磁化といった磁気特性を測定しようとする場合、通板時の板の振動や薄鋼板の形状によりヨーク式磁化器と薄鋼板間のギャップが変動し、薄鋼板を磁化する力が変換するため測定される磁気特性が大きく変化してしまい、安定して精度良く薄鋼板の磁気特性を測定することが困難であった。
このような状況に鑑みて本発明は、製造工程等において走行する薄鋼板の磁気特性を安定に精度良く測定することを第1の目的とする。また、当該磁気特性から薄鋼板の機械的強度を迅速に、かつ従来よりも精度良く測定することを第2の目的とする。
上記課題を達成するために本発明は以下のようにしたことを特徴とする。
本発明の薄鋼板の磁気特性測定装置は、移動する薄鋼板を被測定物として、該薄鋼板面に対向させた1対の磁極からなり、交流の励磁電流で交番磁界を発生する磁化器で、薄鋼板を磁化して薄鋼板の磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、前記磁化器が2台であって、前記薄鋼板を挟んで互いに対向配置され、さらに、該磁化器それぞれのヨークに巻いた1つ又は複数の検出コイルを具備し、前記励磁電流の値と前記検出コイルの出力電圧に基づいて前記薄鋼板の磁気特性を測定することを特徴とする。
本発明の薄鋼板の磁気特性測定方法は、移動する薄鋼板を被測定物として、該薄鋼板面に対向させた1対の磁極からなり、交流の励磁電流で交番磁界を発生する磁化器で、薄鋼板を磁化して薄鋼板の磁気特性を測定する磁気特性測定方法であって、前記磁化器が2台であって、前記薄鋼板を挟んで互いに対向配置され、前記励磁電流の値、及び前記磁化器それぞれのヨークに巻いた1つ又は複数の検出コイルの出力電圧に基づいて、前記薄鋼板の磁気特性を測定することを特徴とする。
本発明の薄鋼板の機械的強度測定装置は、前記の薄鋼板の磁気特性測定装置に、さらに機械的強度評価部を備え、該機械的強度評価部は、鋼種ごとに予め設定した所定の磁気特性と所定の機械的強度値との相関を示すデータベースとに基づいて、前記磁気特性測定装置で測定した前記所定の磁気特性を用いて、前記機械的強度値を評価することを特徴とする。
本発明の薄鋼板の機械的強度測定方法は、前記の薄鋼板の磁気特性測定方法において、さらに機械的強度評価工程を備え、該機械的強度評価工程は、鋼種ごとに予め設定した所定の磁気特性と所定の機械的強度値との相関を示すデータベースとに基づいて、前記磁気特性測定方法で測定した前記所定の磁気特性を用いて、前記機械的強度値を評価することを特徴とする。
本発明による薄鋼板の磁気特性と機械的強度の測定装置及び測定方法においては、1対の磁化器を薄鋼板を挟んで対向させて配置したことにより薄鋼板と磁化器のギャップを大きく、かつ、ギャップ内での薄鋼板の位置に影響されることなく安定に精度良く薄鋼板の磁気特性と機械的強度を測定することができる。
本発明の実施の形態を図を用いて詳細に説明する。以下では、主として薄鋼板の磁気特性の例として保磁力(相当値)を揚げて説明するが、その他最大透磁率や残留磁化等の薄鋼板の磁化曲線の特徴量を導出しても良い。
図1に本発明による薄鋼板の磁気特性測定装置の実施の形態の概略構成を示す。例えば、鋼板面が水平で、水平方向に移動する薄鋼板13を挟んで対抗させて磁化器1及び磁化器1′を配置する。それぞれの磁化器1(1′)は、薄鋼板13の鋼板面に対向させた1対の磁極3(a),(b)(磁極3′(a),(b))、ヨーク8(8′)、及びヨーク8(8′)に巻かれた励磁コイル2(2′)と検出コイル4(4′)から構成されている。本実施形態では励磁コイルは各磁化器に1つづつ取り付けた例を示すが、複数であっても良い。また、磁化器1及び1′は同じ仕様のものが測定条件を安定化する上で好ましい。
発振器5により生成された正弦波信号を励磁電源6で増幅された電流を、各磁化器1及び1′の励磁コイル2及び2′に印加し、交番磁界を発生させる。交番磁界の向きは対向する磁化器1と1′の対向する磁極同士が同じ極性(N又はS極)になるように励磁電源と励磁コイルを結線する。すなわち、薄鋼板には、2台の磁化器で発生した磁界は加算されて印加される。励磁電流により励磁され、磁化器1又は1′、薄鋼板13、及び各磁極と薄鋼板13との間のギャップで形成される磁路中に発生する磁束Φの時間変化を、検出コイル4(4′)により検出する。
ヨーク8(8′)の材質としては軟磁気特性の良い電磁鋼板やNi−Znフェライト等を、またコイルの巻線材としてはポリイミド被覆銅線やエナメル被覆銅線等の銅線を用いるのが良い。また、磁化器の組み立て方法としては、ヨーク材に電磁鋼板を用いた場合には薄い電磁鋼板を積層することで渦電流損を抑えることができる。コイルは図1ではヨークの中央に巻く方法を示したが、交換が容易となるようにヨークの両腕に1つずつ巻いても良い。
磁化器を励磁する周波数は、磁化器の磁極間距離を薄鋼板が移動する間に複数回励磁方向が変化させるためには高いほうが良いが、表皮効果を抑制して全板厚を磁化するためには低いほうが良い。したがって、予め実験により定めた周波数と振幅を持った正弦波を発振器5で生成し、これを励磁電源6により電流増幅して磁化器1、1′に装着した励磁コイル2、2′に通電する。図1では2つの励磁コイルを並列に接続する場合を示したが、両者を直列に接続してもよい。また、励磁電源と励磁コイルの間には励磁電流値を測定するための抵抗値R(通常は0.1〜1オーム程度)が既知の抵抗器を直列に接続されており、この抵抗器の端子間電圧を基に励磁電流値を計算する。なお、抵抗器の代わりにCT(電流センサ)を用いても良い。
図1で磁束密度検出部7は、検出コイル自身による電圧降下を抑制するために2つの高入力インピーダンスの増幅器により構成されており(図示せず)、検出コイル4、4′は各々増幅器に接続され、検出コイル両端に誘起される誘導電圧を予め定めたゲインで増幅して磁気特性評価部9に出力する。また、2つの検出コイルを直列に接続して、1つの高入力インピーダンス増幅器により増幅してもよい。
磁気特性評価部9は多チャンネルのオシロスコープ又はAD変換器と、さらにパーソナルコンピュータ及び以下に記載するデータ処理と測定を制御するためのソフトウエアからなっており、励磁電源6と励磁コイル2、2′の間に含まれる抵抗器両端の電圧Vを測定して、Iin=V/Rの関係より励磁電流値Iinを算出する。また、磁束密度検出部7からの、2つの検出コイル4、4′の誘導電圧を増幅した値を加算する。当該加算値が、ヨーク内磁束密度の時間微分値に比例する測定値である。以下では、検出コイルの誘導電圧をヨーク内磁束密度の時間微分値として説明する。
励磁電流Iin(t)(励磁磁界に比例)とヨーク内磁束密度By(t)=Φ/S(S:検出コイルが取り付けられたヨーク部の断面積)、並びに、検出コイルにより検出される、ヨーク内磁束密度By(t)の時間微分dBy/dtの3つの値が時間とともに変化する様子を図2に示す。準静的に測定したヒステリシス=ループとのアナロジーから、ヨーク内磁束密度By(t)の変化が最も急峻な時刻におけるIin(t)の値が保磁力に相当すると考えられるため、検出コイル出力であるBy(t)の時間微分dBy/dtが最大又は最小となる時刻での励磁電流値を保磁力相当値+Ic又は−Icとして測定する。保磁力相当値の測定に際しては、薄鋼板を十分に磁気飽和させるに足る磁場を生成可能な励磁電流値の最大値を選ぶことが望ましい。
また、測定周波数が低くて、励磁電流Iin(t)に対する磁化器のヨークに発生する磁界の位相遅れは小さく、励磁電流がゼロとなるときに鋼板に印加される磁界も0となると考えられるため、励磁電流がゼロとなるときのヨーク内磁束密度を残留磁化相当値±Brとして測定する。
次に、図3に本発明における薄鋼板の機械的強度測定装置の実施の形態の概略構成を示す。上記した薄鋼板の磁気特性測定装置に機械的強度評価部10を付加した構成である。図3中の各部の符号は、図1中の符号に対応させて記載した。
機械的強度評価部10はパーソナルコンピュータにより構成されており、各鋼種の薄鋼板について予め実験的に求めておいた保磁力相当値や残留磁化相当値と機械的強度との相関のデータをデータベース11として保持している。被測定物の鋼板の鋼種、及び磁気特性測定装置により測定された保磁力相当値や残留磁化相当値について、記録しておいたデータベースに基づいて被測定物の鋼板の機械的強度を機械的強度推定部12で推定する。ここで、機械的強度とは、前記した薄鋼板の降伏点(Yp)や引張強度(Ts)等である。
なお、機械的強度評価部10で使用されるパーソナルコンピュータは磁気特性評価部9で使用されるパーソナルコンピュータは同一であってもかまわない。パーソナルコンピュータには、上記の所定の演算や処理を実行するためのソフトウエアがハードディスクにインストールされているか、又はROMとして内蔵されていても良い。パーソナルコンピュータには、作業者が被測定物の鋼板の鋼種や各演算における条件設定や指示を入力するためのマウス及びキーボード、並びに測定結果を表示するためのディスプレーを付属させると良い(図示せず)。さらに、製造工程内のLAN等のネットワークを介して、上位の生産管理用コンピュータと被測定物の鋼板の情報及び測定結果を伝送するようにしても良い(図示せず)。
以上のようにして鋼板の保磁力相当値と残留磁化相当値を、本発明の磁気特性測定装置により測定する。
次に本発明による磁気特性測定装置の別の構成について説明する。図1、3では磁気特性評価部9の処理方法として、検出コイル出力が最大最小となる時刻での励磁電流値を保磁力相当値、励磁電流値がゼロとなるときのヨーク内磁束密度を残留磁化相当値とする方法を説明した。その代わりに、励磁電流値は励磁磁界に比例し、検出コイル出力はヨーク内磁束密度の微分値であるため、横軸に励磁電流を、縦軸に検出コイル出力の積分値をとることによりヒステリシスループに対応する図4に示すような図形が得られる。図4の図形で横軸の切片が保磁力相当値(±Ic)、縦軸の切片が残留磁化相当値(±Br)である。
続いて本発明における薄鋼板の磁気特性の測定方法について図5を用いて以下に説明する。
正弦波信号を発生する発振工程20と、正弦波信号を電流増幅して励磁コイルに印加する電流増幅工程21とにより、前記したような薄鋼板を対向して配置された1組の磁化器の励磁コイル2、2′に励磁電流を通電し、薄鋼板を磁化する(磁化工程22)。
電流増幅工程21は、励磁コイルを励磁すると同時に、例えば励磁コイル2、2′と直列に接続された抵抗器両端の電圧を測定することにより印加する電流を測定する励磁電流測定工程も有する。薄鋼板内部と薄鋼板と磁化器のギャップを磁化するために発生させられた磁束の変化を、磁化器のヨークに巻いた検出コイル4、4′に生じる起電力として測定し、これを磁束密度検出工程23により増幅した後に、磁気特性測定工程24によって時間変化を測定する。
磁気特性測定工程24では、上記したように起電力の時間変化を、検出コイルを巻いたヨークの断面積で除算することにより、ヨーク内磁束密度の時間微分波形として保持しておく。同時に磁気特性測定工程24では前記励磁電流の時間変化も同時に測定しており、ヨーク内磁束密度の時間微分が最大最小となる時刻における励磁電流値を保磁力相当値とする。さらに、ヨーク内磁束密度の時間微分を積分してヨーク内磁束密度を算出し、励磁電流値がゼロとなる時刻におけるヨーク内磁束密度を残留磁化相当値とする。以上が薄鋼板の磁気特性測定方法の説明である。
次に、本発明における薄鋼板の機械的強度測定方法について、図6を用いて説明する。
機械的強度測定方法では、前記薄鋼板の磁気特性測定方法により測定した保磁力相当値や残留磁化相当値と降伏点や引張強度といった機械的強度との関係を、測定したい鋼板について予め測定しておき両者の相関式を明らかにしておく。機械的強度測定工程25では、保磁力相当値や残留磁化相当値の測定結果から、前記した各鋼種の薄鋼板について予め実験的に求めておいた保磁力相当値や残留磁化相当値と機械的強度との相関の式に基づいて機械的強度を算出する。
以下、実施例によって本発明の具体例及び効果についてさらに説明する。
磁化器として板厚0.23mmの電磁鋼板を積層して磁極間隔200mm、幅100mmのヨークを製作した。ヨークの両腕に、直径2mmのエナメル被覆銅線を300ターンヨークの両腕に巻いた磁化器1、1′を2台1組製作した。各磁化器にはヨークの磁極部には検出コイルを各々5ターンずつ巻いた。鋼板内磁束密度の変化を測定するために、図7に示すように板厚1mmの薄鋼板の中心に40mm間隔で孔を開け、磁束密度検出用のコイルを5ターン巻いた被検査体を用意した。
本発明の磁気特性及び機械的強度測定装置の実施例として、磁化器対向配置では薄鋼板の面の上下両側に配置し、対向する磁化器の磁極面の間隔を20〜100mmの範囲で変化させ、被検査体は両方の磁化器の中間部に鋼板面を磁極面に対向させて設置した。薄鋼板と磁化器の間隔としては10〜50mmの範囲であった。
また、比較例としては、磁化器を1台用いる片側磁化配置とし、薄鋼板面に磁極面を対向させて配置した。そして、薄鋼板と磁極面の間隔を2〜10mmの範囲で変化させて鋼板内の磁束密度を測定した。
励磁条件は、励磁周波数50Hz、励磁電流振幅3.6Aとした。片側磁化の場合には磁束密度検出コイルが磁極間中心となるように配置した場合の、対向磁化の場合には薄鋼板と磁化器の間隔の中心、かつ、磁束密度検出コイルが磁極間中心にくるように被検査体を配置した場合の鋼板内磁束密度の関係を図8に示す。片側磁化では鋼板と磁化器の間隔が大きくなるにしたがって急激に鋼板内の磁束密度が低下しており、十分に磁化するにはこの間隔を非常に小さくしなければならないことがわかる。一方、対向磁化では鋼板と磁化器の間隔が25mm程度までは鋼板内の磁束密度が低下しておらず、この程度まで間隔を大きくすることが可能であることがわかる。
続いて対向磁化で磁化器間隔を50mmとした場合に、対向する磁化器の間隙内で被検査体である鋼板を設置する位置を変化させたときの鋼板内磁束密度の変化を図9に示す。鋼板位置は磁化器間中心を0としてプロットした。図9から50mmの磁化器間隔のうち、約±20mm程度の領域で鋼板内磁束密度は変化しておらず、本手法の対向する磁化器間の通板位置による影響が少ないことがわかる。
鋼板の磁気特性と本発明による磁気特性測定結果を評価するために、被検査体としてあらかじめ保磁力と残留磁化を測定した板厚1mmの鋼板5枚を用意した。鋼板の保磁力の範囲は867〜1,728 A/m、残留磁化の範囲は0.865〜1.09Tである。図9と同じ条件で測定した保磁力相当値と残留磁化相当値の、実際の保磁力と残留磁化との関係を図10、11に示す。両者は良い相関を示し、本発明により保磁力や残留磁化が測定可能であることを確認した。
さらに、本発明による磁気特性測定結果と鋼板の強度の関係を評価するために、降伏点(Yp)と引張強度(Ts)のわかっている鋼板4枚を用意した。鋼板のYp範囲は430〜610MPa、Ts範囲は610〜1030MPaである。本手法により測定した保磁力相当値とYp、Tsの関係を図12、13に示す。両者は良い相関を示し、本発明によりYpやTsといった機械的強度が測定可能であることを確認した。
本発明の薄鋼板の磁気特性測定装置の実施の形態の概略構成図である。 励磁電流、ヨーク内磁束密度の変化、及び検出コイル出力の変化を説明する図である。 本発明における薄鋼板の機械的強度測定装置の実施の形態の概略構成図である。 励磁電流と検出コイル出力の積分値により得られる磁化曲線を説明する図である。 本発明の薄鋼板の磁気特性測定方法のフローチャートの概略図である。 本発明の薄鋼板の機械的強度測定方法のフローチャートの概略図である。 鋼板内の磁束密度を測定するために鋼板に巻いた検出コイルを説明する図である。 鋼板と磁化器の間隔と磁極間中心での鋼板内磁束密度の関係を説明する図である。 磁化器間内での鋼板位置と磁極間中心での鋼板内磁束密度の関係を説明する図である。 実施例の測定した保磁力相当値と保磁力の関係を示す一例である。 実施例の測定した残留磁化相当値と残留磁化の関係を示す一例である。 実施例の測定した保磁力相当値と降伏点の関係を示す一例である。 実施例の測定した保磁力相当値と引張強度の関係を示す一例である。 従来の片側磁化式磁気特性測定装置を説明する図である。
符号の説明
1 第1の磁化器
1′ 第2の磁化器
2、2′ 励磁コイル
3、3′ 磁極(a)、(b)
4、4′ 検出コイル
5 発振器
6 励磁電源
7 磁束密度検出部
8、8′ ヨーク
9 磁気特性評価部
10 機械的強度評価部
11 データベース部
12 機械的強度推定部
13 薄鋼板
20 発振工程
21 電流増幅工程
22 磁化工程
23 磁束密度検出工程
24 磁気特性測定工程
25 機械的強度測定工程

Claims (4)

  1. 移動する薄鋼板を被測定物として、該薄鋼板面に対向させた1対の磁極からなり、交流の励磁電流で交番磁界を発生する磁化器で、薄鋼板を磁化して薄鋼板の磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、
    前記磁化器が2台であって、前記薄鋼板を挟んで互いに対向配置され、
    さらに、該磁化器それぞれのヨークに巻いた1つ又は複数の検出コイルを具備し、
    前記励磁電流の値と前記検出コイルの出力電圧に基づいて前記薄鋼板の磁気特性を測定することを特徴とする薄鋼板の磁気特性測定装置。
  2. 移動する薄鋼板を被測定物として、該薄鋼板面に対向させた1対の磁極からなり、交流の励磁電流で交番磁界を発生する磁化器で、薄鋼板を磁化して薄鋼板の磁気特性を測定する磁気特性測定方法であって、
    前記磁化器が2台であって、前記薄鋼板を挟んで互いに対向配置され、
    前記励磁電流の値、及び前記磁化器それぞれのヨークに巻いた1つ又は複数の検出コイルの出力電圧に基づいて、前記薄鋼板の磁気特性を測定することを特徴とする薄鋼板の磁気特性測定方法。
  3. 請求項1に記載の薄鋼板の磁気特性測定装置に、さらに機械的強度評価部を備え、
    該機械的強度評価部は、鋼種ごとに予め設定した所定の磁気特性と所定の機械的強度値との相関を示すデータベースとに基づいて、前記磁気特性測定装置で測定した前記所定の磁気特性を用いて、前記機械的強度値を推定することを特徴とする薄鋼板の機械的強度測定装置。
  4. 請求項2に記載の薄鋼板の磁気特性測定方法において、さらに機械的強度評価工程を備え、
    該機械的強度評価工程は、鋼種ごとに予め設定した所定の磁気特性と所定の機械的強度値との相関を示すデータベースとに基づいて、前記磁気特性測定方法で測定した前記所定の磁気特性を用いて、前記機械的強度値を推定することを特徴とする薄鋼板の機械的強度測定方法。
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