JP2008119710A - 高強度溶接鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶接鋼管の製造における鋼板端部の曲げ成形において、上ダイの作用面の曲率半径をR1(mm)、上ダイの曲率中心からの鋼板端部までの水平方向の距離をu(mm)、鋼板の引張強さをs(MPa)、製造する溶接鋼管の外径をD(mm)としたとき、0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160であって、A≦w≦BあるいはA×C≦w≦B/Dで定まる上ダイの押し付け力w(N/mm)で、鋼板端部を曲げ成形する。但し、A、Bは、上記sによって定まる値であり、C、Dは、上記sとuによって定まる値。
【選択図】 図4
Description
そこで、本発明は、引張強さ850MPa以上の鋼板からなる高強度溶接鋼管を、ピーキング、バックリングの発生を防止するとともに、溶接部からの割れ発生等を生じることなく、しかも、効率的かつ安定的に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明においては、溶接部からの割れで特に問題としているのは、拡管割れとトウ割れである。これらは、溶接止端部が起点となっていることが多く、拡管割れは、拡管中にシーム溶接部が完全に破断し、分離するものであり、トウ割れは、拡管後の目視では確認できず、浸透探傷試験、超音波探傷試験、X線透過試験などによって検出される微細な割れである。
(1)下ダイに引張強さ850MPa以上の鋼板の端部を載置した状態で、上ダイを当該鋼板表面に長手方向の単位長さ当たり押し付け力w(N/mm)で押し付け、上ダイと下ダイにより鋼板端部を曲げ成形した後、鋼板全体を筒状に成形し、対向する鋼板端部同士を突き合わせて溶接する高強度溶接鋼管の製造方法において、
前記上ダイの作用面の曲率半径をR1(mm)、上ダイの曲率中心から鋼板端部までの水平方向の距離をu(mm)、鋼板の引張強さをs(MPa)、製造する溶接鋼管の外径をD(mm)としたとき、
0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160
であって、さらに、
A≦w≦B
但し、
A=a1×s4+a2×s3+a3×s2+a4×s+a5
B=b1×s4+b2×s3+b3×s2+b4×s+b5
a1=−1.36745×10−5、 b1=−3.28031×10−5
a2= 5.28952×10−2、 b2= 1.20850×10−1
a3=−7.63786×10、 b3=−1.66625×102
a4= 4.88303×104、 b4= 1.01971×105
a5=−1.16629×107、 b5=−2.33714×107
で定まる上ダイの押し付け力w(N/mm)で、鋼板端部を曲げ成形することを特徴とする高強度溶接鋼管の製造方法。
(2)前記(1)記載の高強度溶接鋼管の製造方法において、
0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160
であって、さらに、
A×C≦w≦B/D
但し、
C=−(c1×s3+c2×s2+c3×s+c4)×u+c5×s3
+c6×s2+c7×s+c8
D=−(d1×s2+d2×s+d3)×u+d4×s2+d5×s+d6
c1= 5.90495×10−9、 d1= 2.86940×10−7
c2=−1.66049×10−5、 d2=−5.67020×10−4
c3= 1.54748×10−2、 d3= 2.65389×10−1
c4=−4.78261、 d4= 3.85933×10−5
c5= 7.94216×10−7、 d5=−7.62640×10−2
c6=−2.23336×10−3、 d6= 3.66947×10
c7= 2.08136、
c8=−6.42262×102、
で定まる上ダイの押し付け力w(N/mm)で、鋼板端部を曲げ成形することを特徴とする前記(1)記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
引張強さ(以下、単に「板強度」という)850MPa以上の鋼板のUOE方式による溶接鋼管の成形では、ピーキングを極めて狭い範囲に制御しなければエキスパンダーでの拡管割れを招くことが従来からの研究により知られていた。
図1は、外径711〜1219mm、肉厚13〜20mm、板強度850〜1050MPaの溶接鋼管について、成形したときのピーキング値と、Oプレス時のバックリング、エキスパンダーでの拡管割れの有無を示したものである。ここでピーキング値とは、シーム溶接部を中心に120mm区間の溶接鋼管の公称外径からの偏差(mm)を示す。
そこで、本発明者らは、拡管割れと最も密接な関係のあるピーキングについて、FEA(有限要素法)により板強度とCプレス荷重との複合依存性を調査した。
図2はCプレス荷重がピーキング値に及ぼす影響について、板強度をパラメーターとして解析したものである。製造鋼管は外径1016mm、肉厚19mm、Cプレスでの製造条件はR1=178mm、u=150mmである。また、上ダイの押し付け力(以下、「Cプレス荷重」ともいう)は、両板端に加わる長手方向単位長さ当たりの荷重(N/mm)で示す。図2から、同一のピーキング量を得るための板強度とCプレス荷重との関係が明確になった。つまり、同一のピーキング量を得るためには、板強度が大きくなるほど高いCプレス荷重が必要になることがわかる。
そこで、拡管割れを防止するためのピーキング量を2mmとし、Oプレスでのバックリングを防止するピーキング量を−0.7mmとし、板強度とCプレス荷重の関係を図3に示した。拡管割れを防止するCプレス荷重をA、バックリングを防止するCプレス荷重をBとすると、
A≦w≦B ・・・(式1)
但し、
A=a1×s4+a2×s3+a3×s2+a4×s+a5
B=b1×s4+b2×s3+b3×s2+b4×s+b5
a1=−1.36745×10−5、 b1=−3.28031×10−5
a2= 5.28952×10−2、 b2= 1.20850×10−1
a3=−7.63786×10、 b3=−1.66625×102
a4= 4.88303×104、 b4= 1.01971×105
a5=−1.16629×107、 b5=−2.33714×107
の関係を得た。したがって、A値、B値間にCプレス荷重を制御することで拡管割れ、並びに、バックリングを防止できるという可能性に着目した。
しかし、図4に、拡管割れが起こった全サンプルと式1を満たす領域で拡管割れが起こらなかったサンプルの、板強度とプレス荷重の関係を示したが、図4からもわかるように、式1を満足したとしても、拡管割れを完全に防止することはできず、拡管割れを起こす場合もあることがわかった。
0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160
の範囲内であれば拡管割れの発生がないことが判明した。
したがって、図6に示すように、0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160の条件の下、式1を満たすプレス荷重を選択することにより拡管割れの発生を防止できるという結論に至った。
但し、本式適用の板強度上限は1025MPaである。これは、シーム溶接金属とのオーバーマッチング(溶接金属強度が板強度より大きくなること)を満たす必要があるところ、Cプレス荷重の最大値は14000N/mmであり、Cプレス機の設備能力の関係から、これ以上の値に対しては実証されていないためである。
次に、本発明者らは、0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160の条件を満たすと同時に、式1の条件をも満たし、拡管割れが発生しなかったサンプルについての詳細検査、並びにサンプルの全工程の成形条件調査を行った。
そして、サンプルの詳細検査により、拡管割れには至らなかったものの、シーム溶接内面の止端部トウより微少なクラックが発生しているサンプルが見受けられた。これらのサンプルの板強度とCプレス荷重の関係を「トウ割れ」と定義し、図7に示す。
なお、トウ割れの検出は、浸透探傷試験、超音波探傷試験、X線透過試験の少なくとも1つの方法によって行った。
また、サンプルの成形条件調査では、シーム溶接の仮付け時に溶け落ちが発生したり、開先合わせに著しく時間を要する(5分以上)サンプルのあることがわかった。これらのサンプルの板強度とCプレス荷重の関係を「仮付け不良」と定義し、同じく図7に示す。
トウ割れの発生状況を詳細に分析したところ、トウ割れは、拡管割れの前段階と判定され、メカニズムから推定し、高強度材ほど発生しやすいことが推定できる。さらに、上ダイの作用面の曲率中心から鋼板端部までの水平方向距離u(mm)に着目すると、uが小さいほどシーム溶接近傍での曲率半径が小さくなり、拡管時に歪み集中が緩和されることが予測される。そこで、板強度s(MPa)と、上ダイの曲率中心から鋼板端部までの水平方向の距離u(mm)とで規定される係数Cを、
C=−(c1×s3+c2×s2+c3×s+c4)×u+c5×s3+
c6×s2+c7×s+c8 ・・・(式2)
但し、
c1= 5.90495×10−9、
c2=−1.66049×10−5、
c3= 1.54748×10−2、
c4=−4.78261、
c5= 7.94216×10−7、
c6=−2.23336×10−3、
c7= 2.08136、
c8=−6.42262×102、
で定義し、トウ割れの発生を防止できるCプレス荷重条件を、
A×C≦w ・・・(式3)
で求めた。図7にトウ割れが発生したサンプルの板強度sとCプレス荷重wの関係を、また、図8に、式3の値を示す。なお、図8中、付記した数字は板強度を示す。図8から、式3を満たせばトウ割れは生じなかった。
なお、図8には、図6で拡管割れを起こさなかったサンプルでトウ割れを起こしたサンプルについて図中に黒丸で示した。したがって、残りのサンプルは式3を満たし、トウ割れを起こさなかったことを意味する。ただ、式3の技術的意義をより鮮明にするために、図8には同強度でトウ割れを起こさなかったサンプルについても、白菱形で図中に示した。
なお、図8中に示されるトウ割れを起こしたサンプル(黒丸)は比較例:51,53,54,57に対応し、トウ割れを起こさなかった同強度材(白菱形)は実施例:58,59,62,65,66,69に対応する。
D=−(d1×s2+d2×s+d3)×u+d4×s2+d5×s+d6 ・・・(式4)
但し、
d1= 2.86940×10−7
d2=−5.67020×10−4
d3= 2.65389×10−1
d4= 3.85933×10−5
d5=−7.62640×10−2
d6= 3.66947×10
で定義し、仮付け不良の発生を防止するCプレス荷重条件を、
w≦B/D ・・・(式5)
で求めた。図7に仮付け不良が起こったサンプルの板強度sとCプレス荷重wの関係を、また、図9に、式5の値を示す。なお、図9中、付記した数字は板強度を示す。図9から、式5を満たせば仮付け不良は生じなかった。
なお、図9には、図6で拡管割れを起こさなかったサンプルで仮付け不良となったサンプルについて図中に黒丸で示した。したがって、残りのサンプルは式5を満たし、仮付け良好と判定されたことを意味する。ただ、式5の技術的意義をより鮮明にするために、図9には同強度で仮付け良好とされたサンプルについても、白菱形で図中に示した。
なお、図9中に示される仮付け不良のサンプル(黒丸)は比較例:37,39,41,44,45,46,49,50に対応し、仮付け良好な同強度材(白菱形)は実施例:36〜39,42,43,48〜51,54〜57に対応する。
したがって、以下の式6を満たせば、溶接鋼管製造時のトウ割れ発生を防止し、また、仮付け不良の発生を防止できることがわかった。
A×C≦w≦B/D ・・・(式6)
上記式6で得られるCプレス荷重w(N/mm)は、板強度s(MPa)と上ダイの曲率中心から鋼板端部までの水平方向の距離u(mm)の関数となり、具体的には、図10に示すような関係が得られる。
まず、UOE鋼管の素材となる厚鋼板(母材)は、例えば、その鋼組成が、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.01〜0.6%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:0.1〜2.0%、Mo:0.15〜0.60%、Nb:0.001〜0.10%、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.06%以下を含有し、さらに、必要に応じてB:0.0001〜0.005%、N:0.0001〜0.006%、V:0.001〜0.10%、Cu:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜1.0%、Zr:0.0001〜0.005%、Ta:0.0001〜0.005%、Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.006%の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、鋳造した鋼片を熱間制御圧延して製造することができる。
なお、上記サブマージアーク溶接によって得られた溶接金属は、成分が、質量%で、C:0.04〜0.14%、Si:0.05〜0.4%、Mn:1.2〜2.2%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Ni:1.3〜3.2%、Cr+Mo+V:1.0〜2.5%、Ti:0.003〜0.050%、Al:0.02%以下、B:0.005%以下、O:0.01〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるものである。
実施例1〜35のいずれも、0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)であり、押し付け力w(N/mm)は、式Aの値以上、式Bの値以下であった。そして、実施例1〜35のすべての鋼管について、バックリング、拡管割れを起こさずに拡管することができた。
比較例1、3、5、7〜9、12〜22は、押し付け力w(N/mm)が式Aの値未満であり、拡管割れを起こした。
比較例6、11は、押し付け力wが式Bの値を超えるものであり、シーム溶接外面止端部から拡管割れを起こした。
比較例2、4、10は、押し付け力wが式Bの値を超えるものであり、バックリングを起こし拡管できなかった。
比較例24、27〜30、34は、押し付け力wが式Aの値以上、式Bの値以下であったが、0.15≦R1/D≦0.25を満たしていないため、比較例24、28〜30、34は拡管割れを起こし、また、比較例27はバックリングを起こした。
比較例23、25、26、31、35は、押し付け力wが式Aの値以上、式Bの値以下であったが、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)を満たしていないため、拡管割れを起こした。
比較例32、33は、押し付け力wが式Aの値以上、式Bの値以下であったが、0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)の両方を満たしていないため、拡管割れを起こした。
実施例36〜70のいずれについても、0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)であり、押し付け力w(N/mm)は、式A×Cの値以上、式B/Dの値以下であった。そして、実施例36〜70のすべての鋼管について、トウ割れを起こさず、仮付け溶接不良もなかった。
比較例36、38、40、42、43、47、48、51〜57は、押し付け力w(N/mm)が式A×Cの値未満であり、トウ割れを発生した。
比較例37、39、41、44〜46、49、50、58、60は、押し付け力wが式B/Dの値を超えるものであり、仮付け不良を発生した。
比較例59、62、64、65、69では、押し付け力wは式A×Cの値以上、式B/Dの値以下であったが、0.15≦R1/D≦0.25を満たさず、仮付け不良を起こした。
比較例63では、押し付け力wは式B/Dの値を超え、なおかつ、0.15≦R1/D≦0.25を満たさず、仮付け不良を起こした。
比較例70は、押し付け力wが式A×Cの値以上、式B/Dの値以下であったが、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)を満たしていないため、トウ割れを起こした。
比較例61、66では、押し付け力wが式A×Cの値以上、式B/Dの値以下であったが、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)を満たしていないため、比較例61はトウ割れを起こし、比較例66は仮付け不良を起こした。
比較例67は、押し付け力wが式A×Cの値以上、式B/Dの値以下であったが、0.15≦R1/D≦0.25、なおかつ、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)の両方を満たしていないため、仮付け不良を起こした。
比較例68は、押し付け力wが式A×Cの値以上、式B/Dの値以下であったが、0.15≦R1/D≦0.25、なおかつ、135(mm)≦u(mm)≦160(mm)の両方を満たしていないため、トウ割れを起こした。
Claims (2)
- 下ダイに引張強さ850MPa以上の鋼板の端部を載置した状態で、上ダイを当該鋼板表面に長手方向の単位長さ当たり押し付け力w(N/mm)で押し付け、上ダイと下ダイにより鋼板端部を曲げ成形した後、鋼板全体を筒状に成形し、対向する鋼板端部同士を突き合わせて溶接する高強度溶接鋼管の製造方法において、
前記上ダイの作用面の曲率半径をR1(mm)、上ダイの曲率中心から鋼板端部までの水平方向の距離をu(mm)、鋼板の引張強さをs(MPa)、製造する溶接鋼管の外径をD(mm)としたとき、
0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160
であって、さらに、
A≦w≦B
但し、
A=a1×s4+a2×s3+a3×s2+a4×s+a5
B=b1×s4+b2×s3+b3×s2+b4×s+b5
a1=−1.36745×10−5、 b1=−3.28031×10−5
a2= 5.28952×10−2、 b2= 1.20850×10−1
a3=−7.63786×10、 b3=−1.66625×102
a4= 4.88303×104、 b4= 1.01971×105
a5=−1.16629×107、 b5=−2.33714×107
で定まる上ダイの押し付け力w(N/mm)で、鋼板端部を曲げ成形することを特徴とする高強度溶接鋼管の製造方法。 - 請求項1記載の高強度溶接鋼管の製造方法において、
0.15≦R1/D≦0.25、かつ、135≦u≦160
であって、さらに、
A×C≦w≦B/D
但し、
C=−(c1×s3+c2×s2+c3×s+c4)×u+c5×s3
+c6×s2+c7×s+c8
D=−(d1×s2+d2×s+d3)×u+d4×s2+d5×s+d6
c1= 5.90495×10−9、 d1= 2.86940×10−7
c2=−1.66049×10−5、 d2=−5.67020×10−4
c3= 1.54748×10−2、 d3= 2.65389×10−1
c4=−4.78261、 d4= 3.85933×10−5
c5= 7.94216×10−7、 d5=−7.62640×10−2
c6=−2.23336×10−3、 d6= 3.66947×10
c7= 2.08136、
c8=−6.42262×102、
で定まる上ダイの押し付け力w(N/mm)で、鋼板端部を曲げ成形することを特徴とする請求項1記載の高強度溶接鋼管の製造方法。
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