以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
<通信装置>
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信装置100の機能構成を示すブロック図である。通信装置100は、例えば、携帯電話機や携帯式の無線端末等によって構成される。
図1に示すように、通信装置100は、主に制御部200、送受信機300、アンテナ400、操作部600、マイクロフォンMP、及びスピーカSPを備えている。
制御部200は、通信装置100の各種動作を統括制御する部位である。この制御部200は、CPU、RAM、及びROM等を備え、ROM内等に格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行することで、通信装置100の各種制御や機能が実現される。
アンテナ400は、送受信機300からの送信信号に基づいて無線電波を発信する一方、通信装置100の外部からの無線電波を受け付けて送受信機300に対して受信信号を転送する部位である。
スピーカSPは、送受信機300からの音声信号に応答して音声を発する部位であり、マイクロフォンMPは、音声の受け付けに応答して音声信号を生成して制御部200を介して送受信機300に対して音声信号を出力する部位である。
操作部600は、ユーザーによる通信装置100への各種入力を受け付ける部位であり、例えば、各種ボタン等によって構成される。
送受信機300は、マイクロフォンMPから制御部200を介して入力された音声信号を送信信号に変換してアンテナ400に出力する一方、アンテナ400からの受信信号を音声信号に変換してスピーカSPに対して出力する部位である。
この送受信機300では、マイクロフォンMPから制御部200を介して入力されたアナログ音声信号がDSP(Digital Signal Processor)301でA/D変換(アナログ信号からデジタル信号へ変換)された後、変調器302で変調され、更に局部発振器320の発振信号を用いてミキサ303で周波数変換される。ミキサ303の出力は送信用バンドパスフィルタ304およびパワーアンプ305を通り、分波器306を通ってアンテナ400に対して送信信号として出力される。
また、アンテナ400からの受信信号は分波器306を通ってローノイズアンプ307、受信用バンドパスフィルタ308を経てミキサ309へ入力される。ミキサ309は局部発振器320の発振信号を用いて受信信号の周波数を変換し、当該変換された信号はローパスフィルタ310を通って復調器311で復調され、更にDSP301でD/A変換(デジタル信号からアナログ信号へ変換)された後、制御部200を介してスピーカSPに対してアナログ音声信号として出力される。
なお、通信装置100の送受信機300では、アイソレーション特性に優れた分波器306が搭載されているため、ノイズの少ない通話が可能である。以下、分波器306について詳述する。
<分波器>
図2は、本発明の第1実施形態に係る分波器306の回路構成を例示する図である。
図2に示すように、分波器306は、信号端子1,2、共通端子3、送信用フィルタ素子(以下、単に「送信用フィルタ」と略称する)4、受信用フィルタ素子(以下、単に「受信用フィルタ」と略称する)5、整合回路6、及び信号線路4La,4Lb,5La,5Lb,KYを備えている。
信号端子1は、送信側の回路(送信回路)に含まれるパワーアンプ305に対して電気的に接続(導通接続)される端子(送信側信号端子)であり、信号端子2は、受信側の回路(受信回路)に含まれるローノイズアンプ307に対して電気的に接続される端子(受信側信号端子)である。共通端子3は、アンテナ400に対して電気的に接続される端子である。
送信用フィルタ4は、受信用フィルタ5とは選択的に通過させる信号の周波数帯域(通過周波数帯域)が相互に異なり、共通端子3と送信側信号端子1との間に設けられている。具体的には、送信用フィルタ4は、送信側信号端子1に対して信号線路(以下「送信用信号線路」とも称する)4Laによって電気的に接続される一方、共通端子3に対して信号線路4Lb及び共通線路KYによって電気的に接続されている。この送信用フィルタ4は、送信側信号端子1から信号線路4Laを介して入力された信号のうち、所定の送信用の周波数帯域(例えば、824〜849MHz)の信号を選択的に通過させて、信号線路4Lb及び共通線路KYを介して共通端子3に対して出力する。
受信用フィルタ5は、共通端子3と受信側信号端子2との間に設けられている。具体的には、受信用フィルタ5は、受信側信号端子2に対して信号線路(以下「受信用信号線路」とも称する)5Laによって電気的に接続される一方、共通端子3に対して信号線路5Lb及び共通線路KYによって電気的に接続されている。この受信用フィルタ5は、アンテナ400側すなわち共通端子3から共通線路KY及び信号線路5Lbを介して入力された信号のうち、所定の受信用の周波数帯域(例えば、869〜894MHz)の信号を選択的に通過させて、信号線路5Laを介して受信側信号端子2に対して出力する。
ここでは、送信用フィルタ4から出力されて共通端子3へ伝送される送信用の信号、及び共通端子3から受信用フィルタ5へ伝送される受信用の信号の双方とも、同一の共通線路KYを通過する。つまり、共通線路KYは、送受信信号が共用する線路(以下「送受信共通線路」とも称する)となっている。
整合回路6は、一端が共通線路KYに対して電気的に接続されることで共通線路KYを介して共通端子3に対して電気的に接続され、他端が接地された回路であり、所定の受信用の周波数帯域の信号については共通端子3から送信回路へのインピーダンスがほぼ無限大となる一方で、所定の送信用の周波数帯域の信号については送信回路から受信回路へのインピーダンスがほぼ無限大となるように調整する部位である。
ここでは、送信信号を伝送する場合には、送信用フィルタ4から見て、共通端子3の前段に整合回路6が設けられ、受信信号を伝送する場合には、共通端子3から見て、受信用フィルタ5の前段に整合回路6が設けられている。
このような回路構成を有する分波器306は、薄い誘電体の層が複数積層されて形成された回路基板上に送信用フィルタ4と受信用フィルタ5とが例えばフリップチップ実装されて構成される。また、整合回路6を構成する整合用線路は、複数の誘電体層にわたって構成された導体のパターン(以下「導体パターン」とも称する)を備え、端部が接地される。なお、整合回路6の導体パターンには、螺旋状の導体パターン(以下「螺旋状パターン」とも称する)及び蛇行状の導体パターン(以下「蛇行状パターン」とも称する)の両方が含まれている。この整合回路6については更に後述する。
ここで、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5は、弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)であっても、所謂FBARフィルタであっても、その他の方式のフィルタであっても良い。また、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5は、同一基板(例えば、SAWフィルタでは圧電基板、FBARフィルタでは種々の基板)上に作製されていても、各々別個の基板上に作製されていても構わないが、以下の理由により同一基板上に作製されている方が好ましい。
送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5の各々には製造上のばらつきが発生する。このため、各フィルタ4,5が別個の基板上に作製されている場合には、別個に様々な製造上のばらつきが生じた送信用フィルタ4と受信用フィルタ5とが組み合わされる事となる。その結果、整合回路6の線路を構成する導体パターンの最適なインダクタンスの値が、送信用フィルタ4と受信用フィルタ5との組合せによって異なってしまう不具合が生じ易い。これに対して、各フィルタ4,5が同一基板上に作製されている場合には、ウェハーのほぼ同じ場所に作製されたフィルタ間では同様なばらつきが生じるため、ウェハーから切り出したどのフィルタ4,5の組合せに対しても最適なインダクタンスの値が略同一となる。従って、送信用フィルタ4と受信用フィルタ5との組合せによる特性のばらつきを気にする必要性が無くなるといった点から、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5が同一基板上に作製されていることが好ましい。
<分波器デバイス用回路基板>
<回路基板の概略構成>
図3は、分波器306のうちの送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5を実装するための回路が配設された基板(以下「分波器デバイス用回路基板」とも称する)800の概略構成を例示する断面模式図である。なお、図3及び図3以降の図では、方位関係を明確化するためにXYZの直交する3軸が付されている。
分波器デバイス用回路基板(以下、単に「回路基板」と略称する)800は、所定形状(ここでは略矩形状)の外形を有する複数層(ここでは3層)の誘電体の薄膜(誘電体層)Lb,Ld,Lfと、当該誘電体層Lb,Ld,Lfの表面及び層間に設けられた4層の導体の配線パターンが設けられた層(以下「導体パターン形成層」とも称する)La,Lc,Le,Lgとを備えている。すなわち、3層の誘電体層Lb,Ld,Lfが相互に積層されて一体の積層体を形成し、その層間に複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって挟まれた2層の導体パターン形成層Lc,Leが形成されている。
導体パターン形成層Laは、誘電体層Lbの上面(+Z方向の面)すなわち回路基板800を構成する多層基板の一方主面(ここでは、表面)に設けられている。
導体パターン形成層Lcは、誘電体層Lbの下面(−Z方向の面)であり、かつ誘電体層Ldの上面(+Z方向の面)に設けられている。つまり、導体パターン形成層Lcは、誘電体層Lbと誘電体層Ldとの層間に設けられている。
導体パターン形成層Leは、誘電体層Ldの下面(−Z方向の面)であり、かつ誘電体層Lfの上面(+Z方向の面)に設けられている。つまり、導体パターン形成層Leは、誘電体層Ldと誘電体層Lfとの層間に設けられている。
導体パターン形成層Lgは、誘電体層Lfの下面(−Z方向の面)すなわち回路基板800を構成する多層基板の他方主面(ここでは、裏面)に設けられている。
つまり、3層の誘電体層Lb,Ld,Lfの一方及び他方の主面上には、導体パターンが形成された導体パターン形成層La,Lc,Le,Lgが配置されている。
このように、回路基板800は、図3中の上から順番に、導体パターン形成層La、誘電体層Lb、導体パターン形成層Lc、誘電体層Ld、導体パターン形成層Le、誘電体層Lf、及び導体パターン形成層Lgが積層されて構成されている。
誘電体層Lb,Ld,Lfを構成する誘電体の材料としては、例えばアルミナを主成分とするセラミックスや、低温で焼結可能なガラスセラミックス、又は有機材料を主成分とするガラスエポキシ樹脂等が用いられる。
なお、誘電体の材料としてセラミックスやガラスセラミックスを用いる場合には、まず、セラミックス等の金属酸化物と有機バインダとが有機溶剤等で均質に混練されたスラリーをシート状に成型することでグリーンシートを複数枚作製する。次に、複数枚のグリーンシートに対して所望の導体パターンや表面から裏面へと貫通するビアホールに導体を充填した導体部分(以下、単に「ビア」と略称する)を形成した後に、複数枚のグリーンシートを積層して圧着することで一体形成して焼成することにより、回路基板800が作製される。
整合回路6を構成する螺旋状パターンや蛇行状パターンを含む導体パターンは、各誘電体層(ここでは、誘電体層Ld,Lf)の表面に導体によって作製された複数の導体パターンが、誘電体層を貫通して設けられたビアによって電気的に接続されることで形成されている。
ここで、導体パターンを構成する導体としては、銀、銀にパラジウムを添加した合金、タングステン、銅、及び金などを採用することができる。当該導体パターンは、金属導体を用いたスクリーン印刷、或いは蒸着やスパッタリング等の成膜法とエッチングとの組合せ等によって形成される。
また、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5に対して直接接続される導体パターンや、PCB等の外部回路に分波器を搭載する際に接続するための導体パターン(端子)については、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5等の接続端子との接合性の向上に必要であれば、適宜導体パターンの表面にNi或いはAu等のめっきを施しても良い。
<回路基板の具体的な構成>
図4及び図5は、回路基板800を構成する各層La〜Lgにおける導体パターン及びビアの配置を例示する図である。図4及び図5では、回路基板800の外縁すなわち誘電体層Lb,Ld,Lfの外縁との位置関係を明確化するために、回路基板800の外縁の位置が破線で示されている。
回路基板800を構成する多層基板は、3層の誘電体層が積層した構造(3層積層構造)を有し、多層基板表面に形成された導体パターン(図4(a))、多層基板裏面に形成された導体パターン(図5(c))、誘電体層Lbと誘電体層Ldとの層間に形成された導体パターン(図4(c))、誘電体層Ldと誘電体層Lfとの層間に形成された導体パターン(図5(a))、誘電体層Lbを挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Lbを貫通する複数のビア(図4(b))、誘電体層Ldを挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Ldを貫通する複数のビア(図4(d))、及び誘電体層Lfを挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Lfを貫通する複数のビア(図5(b))を備えている。
図4及び図5では、送信用及び受信用フィルタ4,5は図示されていないが、回路基板800の上面(+Z方向の面)が、送信用及び受信用フィルタ4,5を搭載するための面(フィルタ搭載面)となっており、図4(a)の右方が送信用フィルタ4のフィルタ搭載面、図4(a)の左方が受信用フィルタ5のフィルタ搭載面となっている。
環状電極パターン7は、送信用及び受信用フィルタ4,5を構成する弾性表面波フィルタの振動空間を確保しつつ、気密封止するためのパターンである。なお、環状電極パターン7は、設けられなくても良い。また、ここでは、送信用及び受信用フィルタ4,5がフリップチップ実装される場合を例示しているが、これに限られず、例えば、送信用及び受信用フィルタ4,5をフェイスアップ実装した後に、各フィルタの接続端子と回路基板800の接続端子とをワイヤボンディング等の手法で電気的に接続するようにしても良い。
ここでは、送信用及び受信用フィルタ4,5が同一の圧電基板上に作製され、図4(a)で示す回路基板800の上面には、送信用及び受信用フィルタ4,5に対して電気的に接続するための端子の機能を有する導体パターン8〜12、及び環状電極パターン7が設けられている例が示されている。
なお、送信用及び受信用フィルタ4,5が実装されて送信及び受信回路が接続される前段階の回路基板800単体の状態では、整合回路6は、相互に通過周波数帯域が異なる送信用及び受信用フィルタ4,5間のインピーダンスを調整するための線路(以下「整合回路用線路」とも称する)であり、各信号線路4La,4Lb,5La,5Lbは、信号を伝送するための線路(以下「信号電送用線路」とも称する)であり、更に、信号端子1,2、及び共通端子3は、信号を伝送するための端子(以下「信号電送用端子」とも称する)である。
ここで、図4及び図5を参照しつつ、回路基板800における導体パターン及びビアの配置及び接続状態と、回路基板800に対して送信用及び受信用フィルタ4,5が実装されて送信及び受信回路が接続された際の送信/受信信号の流れについて説明する。
送信側信号端子1に対して、導体パターン10,23,38とビア15,31,45とによって構成される信号線路(送信用信号線路)4Laが電気的に接続されており、導体パターン10は、送信用フィルタ4が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路4Laが、上下方向(Z軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって囲まれており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成された多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfに渡って形成されている。そして、送信側信号端子1から入力される送信用の信号は、信号線路4Laを介して送信用フィルタ4に入力されることになる。
また、共通端子3に対して、導体パターン8,21とビア13とによって構成される信号線路4Lb、及び導体パターン36とビア28,43とによって構成される共通線路KYが順次直列的な態様で電気的に接続されており、導体パターン8は、送信用フィルタ4が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路4Lb及び共通線路KYが、上下方向(Z軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって囲まれており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfに渡って形成されている。そして、送信用フィルタ4から出力される送信信号は、信号線路4Lb、共通線路KY、及び共通端子3を順次に介して、アンテナ400(図1)に出力されることになる。
一方、共通端子3に対して、導体パターン36とビア28,43とによって構成される共通線路KY、及び導体パターン11,21とビア16とによって構成される信号線路5Lbが順次直列的な態様で電気的に接続されており、導体パターン11は、受信用フィルタ5が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路5Lbが、上下方向(Z軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって囲まれており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfに渡って形成されている。そして、アンテナ400から入力される受信信号は、共通端子3、共通線路KY、及び信号線路5Lbを順次に介して、受信用フィルタ5に入力されることになる。
また、受信側信号端子2に対して、導体パターン12,25,39とビア17,32,46とによって構成される信号線路5Laが電気的に接続されており、導体パターン12は、受信用フィルタ5が電気的に接続される端子として機能する。より詳細には、信号線路5Laが、上下方向(Z軸に沿った方向)を除いて複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって囲まれており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において当該複数の誘電体層Lb,Ld,Lfを貫通するように複数の誘電体層Lb,Ld,Lfに渡って形成されている。そして、受信用フィルタ5から出力される信号は、信号線路5Laを介して受信側信号端子2から出力されることになる。
回路基板800の最上部を構成する導体パターン形成層Laに含まれる環状電極パターン7は、各々複数のビアによって構成されるビア群18〜20によって接地用の導体パターン(接地用パターン)26,27,70に対して電気的に接続されている。接地用パターン26,27,70は、それぞれ1組の誘電体層Lb,Ldの層間に形成され、かつ2層の誘電体層Lb,Ldによって囲まれている。そして、接地用パターン26は、ビア群33によって接地用パターン40に対して電気的に接続され、接地用パターン27は、ビア群35によって接地用パターン42に対して電気的に接続され、接地用パターン70は、ビア群34によって接地用パターン41に対して電気的に接続されている。
更に、接地用パターン40〜42は、それぞれ1組の誘電体層Ld,Lfの層間に形成され、かつ2層の誘電体層Ld,Lfによって囲まれている。そして、接地用パターン40は、ビア群47によって回路基板800の裏面に設けられた接地用の端子(接地用端子)50に対して電気的に接続され、接地用パターン41は、ビア群48によって接地用端子50に対して電気的に接続され、接地用パターン42は、ビア群49によって接地用端子50に対して電気的に接続されている。
導体パターン9,22,37とビア14,30,44によって構成される線路は、送信用フィルタ4を接地用端子50に対して電気的に接続するための線路である。
回路基板800の裏面では、図5(c)で示すように、導体パターン形成層Lgのうち、送信側信号端子1が図中右下方に配置され、受信側信号端子2が図中左下方に配置され、共通端子3が図中上方の略中央に配置されている。このように回路基板800の裏面では、3つの端子1〜3が相互に極力離隔されて配置されている。
このような線路配置は、送信用信号線路4Laと整合回路6との間、受信用信号線路5Laと整合回路6との間、及び送信用信号線路4Laと受信用信号線路5Laとの間におけるそれぞれのアイソレーションを確保するためのものである。つまり、限られた空間内において、整合回路6、送信用信号線路4La、及び受信用信号線路5Laの3つの線路間の距離が、それぞれ適正な距離設定となるように工夫されている。なお、線路間のアイソレーション特性を向上させるための整合回路6の線路配置については後述する。
共通端子3に対して、共通線路KYの一部(ここでは、ビア43)を介して電気的に接続されている整合回路6は、共通端子3に対してビア43によって電気的に接続される導体パターン24,36及びビア29を含む線路(整合用線路)によって構成されている。整合回路6を構成する導体パターン24,36のうち、導体パターン24は螺旋状パターン24aと蛇行状パターン24bとを備えて構成され、導体パターン36は全長に渡って螺旋状パターンによって構成されている。
より詳細には、整合回路6は、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって囲まれており、複数の誘電体層Lb,Ld,Lfによって構成される多層基板の内部において誘電体層Ldを貫通して形成されている。そして、整合回路6の一端部(すなわち、螺旋状パターン36がビア43に対して電気的に接続されている端部)36Tが、共通線路KYに対して電気的に接続され、整合回路6の他端部(すなわち、導体パターン24のうち、螺旋状パターン36とビア29によって電気的に接続されている側とは反対側の端部)24Tが、接地用の導体パターン(接地用パターン)70に対して電気的に接続されている。
つまり、整合回路6は、共通端子3側から螺旋状パターン36,24a、及び蛇行状パターン24bの順に直列的かつ電気的に接地用パターン70側に対して接続されている。なお、接地用パターン70は、複数のビアを含むビア群34によって接地用の導体パターン(接地用パターン)41に対して電気的に接続され、更に、複数のビアを含むビア群48を介して回路基板80の裏面に設けられた接地用端子50に対して電気的に接続されており、接地用端子50は接地される。
また、整合回路6の他端部24Tと送信用信号線路4La(ここでは、導体パターン23)との最短距離が、他端部24Tと受信用信号線路5La(ここでは、導体パターン25)との最短距離よりも相対的に長くなっている。そして、接地用パターン70と送信用信号線路4La(ここでは、導体パターン23)との最短距離が、接地用パターン70と受信用信号線路5La(ここでは、導体パターン25)との最短距離よりも相対的に長くなっている。
また、螺旋状パターン36は、共通端子3に対して電気的に接続されているビア43側から導体パターン24に対して電気的に接続されているビア29側にかけて、螺旋状の導体パターンの径が徐々に小さくなるように構成されている。一方、導体パターン24に含まれる螺旋状パターン24aは、螺旋状の導体パターンの径が徐々に大きくなるように構成されている。螺旋状パターン24a,36のうち上下層間で螺旋状パターンが相互に重なり合う部分では、螺旋状パターン24a,36におけるインダクタンスを増大させる為に、ともに電流が同一方向に流れるように整合用線路が配置されることが好ましい。
<アイソレーション特性を向上させるための整合用線路の配置>
整合回路6の線路のうち、電位の絶対値が最も大きくなる箇所は、大電力の信号が通過する送信用フィルタ4に最も近い位置、すなわち、共通線路KYと電気的に接続されている位置にあたる一端部36Tである。そして、共通線路KYと接地用パターン41との間には、例えば全長が数mmである整合用線路が電気的に接続されており、この整合用線路の全長は、通常の分波器で使用される信号の周波数の波長の1/4以下と短い。このため、整合回路6のうち、一端部36Tにおいて電位の絶対値が最も大きく、接地用パターン70に対して電気的に接続されている他端部24Tにおいて電位の絶対値が最も小さくなる。そして、一端部36Tから他端部24Tにかけて徐々に電位の絶対値が小さくなる。
例えば、螺旋状パターン36では、一端部36Tに対して比較的接近した外周部に配置された導体パターンにおいて電位の絶対値が比較的大きくなる一方、螺旋状パターン24aでは、一端部36Tに対して比較的接近した内周部に配置された導体パターンにおいて電位の絶対値が比較的大きくなる。また、蛇行状パターン24bにおいても、他端部24Tに近づけば近づく程、電位の絶対値が小さくなる傾向を示す。
従って、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーション特性を向上させるためには、整合回路6のうち、電位の絶対値が大きくなる一端部36Tに近い箇所を、受信用信号線路5Laから極力離隔して配置することが好ましい。
また、小型化が要求される限られた空間を有する回路基板において、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーションを向上させる為に、螺旋状パターン36,24aは、受信用信号線路5La(具体的には、導体パターン25,39)から極力離隔され、送信用信号線路4Laに対して相対的に近づけられて配置されることが好ましい。
具体的には、図4(c)及び図5(a)で示された導体パターン形成層に含まれている、整合回路6を構成する導体パターン(以下「整合回路用導体パターン」とも称する)24,36、送信用信号線路4Laを構成する導体パターン(以下「送信信号用導体パターン」とも称する)23,38、及び受信用信号線路5Laを構成する導体パターン(以下「受信信号用導体パターン」とも称する)25,39が、下式(1),(2)の関係を満たすように配置されている。
LTx≦LRx・・・(1)
DTx<DRx・・・(2)。
上式(1),(2)のうち、LTxが、送信信号用導体パターン23,38と整合回路用導体パターン24,36との最短距離(ここでは、導体パターン23と螺旋状パターン24aとの最短距離)を示し、LRxが、受信信号用導体パターン25,39と整合回路用導体パターン24,36との最短距離(ここでは、導体パターン25と蛇行状パターン24bとの最短距離)を示している。また、DTxが、整合回路用導体パターン24,36のうちの送信信号用導体パターン23,38と最も接近した位置(以下「送信用線路側最接近位置」とも「Tx最接近位置」とも称する)P1から一端部36Tまでの整合回路用線路の線路長を示し、DRxが、整合回路用導体パターン24,36のうちの受信信号用導体パターン25,39と最も接近した位置(以下、「受信用線路側最接近位置」とも「Rx最接近位置」とも称する)P2から一端部36Tまでの整合回路用線路の線路長を示している。
また、螺旋状パターン36の外周部は、受信用線路側最接近位置P2を含む蛇行状パターン24bよりも、一端部36Tからの距離が非常に近く、電位の絶対値が顕著に高くなる為、螺旋状パターン36の外周部と受信信号用導体パターン39との間の離隔距離が、受信用線路側最接近位置P2と受信信号用導体パターン25との間の離隔距離(最短距離)LRxよりも、相対的に大きくなっている。このような導体パターンの配置により、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーションをより向上させることができる。
螺旋状パターンでは、相互に隣接する線路において電流が流れる方向が同一方向となるため、線路周辺における磁束の強め合いによって、線路周辺に及ぼす電気的な影響が比較的大きく、アイソレーションの劣化要因と成り得る。一方、蛇行パターンでは、相互に隣接する線路において電流が流れる方向が逆方向となるため、線路周辺における磁束の相殺によって、線路周辺に及ぼす電磁気的な影響が比較的小さく、アイソレーションの劣化要因と成り難い。
そこで、導体パターン形成層Lcにおいては、螺旋状パターン24aが、共通線路KYに近接配置され、螺旋状パターン24aと受信信号用導体パターン25との間に蛇行状パターン24bが設けられている。つまり、螺旋状パターン24aに送信用線路側最接近位置P1が含まれ、蛇行状パターン24bに受信用線路側最接近位置P2が含まれている。更に、蛇行状パターン24bは、共通端子3側から接地用パターン70側に進むにつれて、蛇行しながら徐々に受信用信号線路5La(具体的には、導体パターン25)に対して接近するように配置されることが望ましい。なお、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーションをより向上させる観点から言えば、蛇行状パターン24bと受信信号用導体パターン25との間も極力離隔される方が好ましい。
ところで、回路基板800では、限られた空間内で整合用線路を配置した関係上、各導体パターン形成層Lc,Leでは、共通端子3から最も近く電位の絶対値が最も高くなる点(ここでは、一端部36T、及び螺旋状パターン24aのうちビア29と接続された位置)と、送信信号用導体パターン23,38と、受信信号用導体パターン25,39とをそれぞれ結んだ三角形の領域に、螺旋状パターン24a,36の一部が配置されている。
そして、各導体パターン形成層Lc,Leでは、螺旋状パターン24a,36の線路が、受信信号用導体パターン25,39よりも、送信信号用導体パターン23,38側に偏って配置されている。より詳細には、各導体パターン形成層Lc,Leにおいて、送信信号用導体パターン23,38と、受信信号用導体パターン25,39とをそれぞれ結ぶ線分の垂直2等分線で各層の領域を区切った場合、受信信号用導体パターン25,39側の領域よりも送信信号用導体パターン23,38側の領域において、各螺旋状パターン24a,36がより長い線路長を有するように構成されている。
また、回路基板800では、整合回路6の線路(整合用線路)が2つの導体パターン形成層Lc,Leに渡って、導体パターン24,36として配置されている。このため、各導体パターン形成層に配置された整合用線路(ここでは、導体パターン24,36)において所望のインダクタンスを得るために必要な線路長が短くても済む。このような構成では、回路基板800を構成する各誘電体層の外縁のサイズが限られている場合に、各導体パターン形成層において、受信用信号線路と整合用線路とを極力離隔して配置することができる。
ところで、仮に整合回路用導体パターンを螺旋状パターンを用いて構成する場合、共通線路KY側から見て、徐々に径が小さくなるように線路パターンが配置されると、螺旋状パターンの外周部において内周部よりも電位の絶対値が高くなる一方、共通線路KY側から見て、徐々に径が大きくなるように線路パターンが配置されると、螺旋状パターンの内周部において外周部よりも電位の絶対値が高くなる。
整合回路において所望のインダクタンスの値を得る為に、螺旋状パターンが2層の導体パターン形成層に渡って形成されるような場合には、共通線路側から見て徐々に径が小さくなる螺旋状パターンと、徐々に径が大きくなる螺旋状パターンの双方が配置される。このため、何れかの導体パターン形成層において電位の絶対値が高くなる部分が螺旋状パターンの外周部に配置される。従って、仮に整合回路用導体パターンが螺旋状パターンのみで構成されて、電位の絶対値が大きくなる部分が受信信号用導体パターンに対して近接配置された場合には、整合回路用導体パターンと受信信号用導体パターンとの間のアイソレーション特性が劣化する。
一方、仮に整合回路用導体パターンが蛇行状パターンのみで構成される場合には、電位の絶対値が大きくなる部分が共通線路近傍に配置され、受信信号用導体パターン近傍に電位の絶対値が小さくなる部分が配置される態様が容易に可能となる。このような構成では、整合回路用導体パターンと受信信号用導体パターンとの間のアイソレーション特性が改善されるが、整合用線路のインダクタンスの値が螺旋状パターンの場合よりも得られ難くなる。よって、インダクタンスを確保するために蛇行状パターンの線路長を長くする為に、回路基板を構成する誘電体層の主面をより拡張しなければならず、結果として回路基板の大型化、ひいては分波器の大型化を招いてしまう。
これに対して、回路基板800では、整合用線路が、2つの導体パターン形成層Lc,Leに渡って形成された螺旋状パターン24a,36と導体パターン形成層Lcに形成sれた蛇行状パターン24bとを備えて構成され、受信信号用導体パターン25側に蛇行状パターン24bが配置されている。このため、整合回路用導体パターンを螺旋状パターンのみで構成した場合よりも、整合回路用導体パターンと受信信号用導体パターンとの間のアイソレーション特性が向上し、整合回路用導体パターンを蛇行状パターンのみで構成した場合よりも、所望のインダクタンスの値をより短い線路長で得ることが出来る為、回路基板800の小型化、ひいては分波器306の小型化を実現することができる。
図6は、図4(a)で示したフィルタ搭載面上に実装される弾性表面波素子900の構成を例示する上面図である。ここでは、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5が同一基板上に形成されることで弾性表面波素子900が形成されている。なお、図6で示される弾性表面波素子900は、いわゆるラダー型のフィルタ素子によって構成されている。
図6に示すように、弾性表面波素子900は、主に圧電基板902の一方主面上に送信用フィルタ(Txフィルタ)4と受信用フィルタ(Rxフィルタ)5とを備えている。弾性表面波素子900では、Txフィルタ4とRxフィルタ5とを個別に取り囲む環状電極部(環状導体)930が設けられている。図6では、環状電極部930で囲まれた2つの領域のうち上方の領域がTxフィルタ4が設けられた領域、下方の領域がRxフィルタ5が設けられた領域を示している。
Txフィルタ4には、6つの直列腕の共振子(直列共振子)914a〜914fと2つの並列腕の共振子(並列共振子)915a,915bとによって構成される複数の励振電極が設けられ、各励振電極間が接続電極917によって電気的に接続されている。そして、Txフィルタ4には、入力パッド部911、アンテナ400と電気的に接続される出力パッド部912、及び接地電極部913が設けられている。そして、並列共振子915a,915bは、それぞれ接地電極部913に対して電気的に接続されている。
一方、Rxフィルタ5には、4つの直列共振子924a〜924dと4つの並列共振子925a〜925dとによって構成される複数の励振電極が設けられ、各励振電極間が接続電極927によって電気的に接続されている。そして、Rxフィルタ5には、入力パッド部921、出力パッド部922、及び接地用電極923が設けられており、並列共振子925a〜925dは、それぞれ接地用電極923に対して電気的に接続されている。更に、接地用電極923が、環状電極部930に対して電気的に接続されている。
このような構成を有する弾性表面波素子900が、回路基板800上にフェイスダウン実装によって搭載されることで、分波器306が形成される。具体的には、環状電極パターン7に対して環状電極部930が、導体パターン10に対して入力パッド部911が、導体パターン8に対して出力パッド部912が、導体パターン9に対して接地電極部913が、導体パターン11に対して入力パッド部921が、導体パターン12に対して出力パッド部922が、それぞれ半田バンプを介して電気的に接続される。
以上のように、第1実施形態に係る回路基板800では、受信用信号線路5Laから整合用線路が極力離隔されるとともに、整合用線路(ここでは、蛇行状パターン24b)のうちの受信用信号線路(ここでは、導体パターン25)と最接近する位置(ここでは、受信用線路側最接近位置P2)が整合用線路上において共通線路KYから極力離隔されることで、当該位置における信号の電位が極力低減される。そして、整合回路用の線路において、螺旋状パターン24a,36によって比較的短い線路長でインダクタンスの値が増大される一方で、線路周辺に及ぼす電磁気的な影響が比較的小さい蛇行状パターン24bが受信信号用導体パターン25の近傍に配置される。このため、回路基板に整合回路を内装しても、整合回路と受信信号を伝送する線路との間のアイソレーション特性を向上させることができるとともに、分波器デバイス用回路基板の小型化を図ることができる。
なお、本実施形態においては、DRx−DTx≧2mmであることが好ましい。
更に、回路基板800を搭載した分波器306はアイソレーション特性に優れるとともに小型である為、当該分波器306を搭載した通信装置100では、良好な通信と小型化とが実現可能となる。
なお、回路基板800では、整合用線路がストリップ線路で構成されていない為、回路基板800の低背化、すなわち小型化を図ることができる。
<第2実施形態>
上述した第1実施形態に係る回路基板800では、受信用信号線路5Laから整合用線路を極力離隔するとともに、整合用線路のうちの受信用信号線路5Laと最接近する位置P2における信号の電位を極力低減することで、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーション特性を向上させた。これに対して、第2実施形態に係る回路基板800Aでは、信号線路4La,4Lb,5La,5Lbと整合用線路との間を、接地用パターンによって遮蔽することで、更にアイソレーション特性の向上を図っている。
第2実施形態に係る分波器306A及び通信装置100Aは、適宜接地用パターンを追加した以外は、第1実施形態に係る分波器306及び通信装置100と同様な構成を有する。以下、第2実施形態に係る分波器306A及び通信装置100Aのうち、第1実施形態に係る分波器306及び通信装置100と同様な部分については同じ符号を付して説明を省略しつつ、第1実施形態に係る通信装置100とは構成が異なる回路基板800Aの構成について主に説明する。
図7及び図8は、第2実施形態に係る回路基板800Aを構成する導体パターン形成層Lc,Leにおける導体パターンの配置を例示する図である。なお、図7及び図8においても、図4及び図5と同様に、回路基板800Aの外縁の位置が破線で示されている。また、他層La,Lb,Ld,Lf,Lgにおける導体パターン及びビアの配置は、第1実施形態に係る回路基板800と同様な配置となっているため、ここでは、図示を省略している。
図7で示すように、導体パターン形成層Lcでは、第1実施形態に係る回路基板800と比較して、接地用パターン26と接地用パターン27との間を連結する接地用パターンの領域(接地用パターン領域)56a、及び接地用パターン27と接地用パターン70との間を連結する接地用パターン領域56bが設けられて、一体の接地用パターン56が形成されている。
より具体的には、導体パターン形成層Lcには、接地用パターン56が設けられ、この接地用パターン56は、整合回路用導体パターン24と送信信号用導体パターン23との間を遮蔽するように設けられた接地用パターン領域56aと、整合回路用導体パターン24と受信信号用導体パターン25との間を遮蔽するように設けられた接地用パターン領域56bとを有している。そして、接地用パターン56は、接地用端子50に対して電気的に接続されている。なお、接地用パターン領域56a,56bは、送信信号用導体パターン23と受信信号用導体パターン25との間も遮蔽している。
また、図8で示すように、導体パターン形成層Leでは、第1実施形態に係る回路基板800と比較して、接地用パターン40と接地用パターン42との間を連結する接地用パターンの領域(接地用パターン領域)55a、及び接地用パターン41と接地用パターン42との間を連結する接地用パターン領域55bが設けられて、一体の接地用パターン55が形成されている。
より具体的には、導体パターン形成層Leには、接地用パターン55が設けられ、この接地用パターン55は、整合回路用導体パターン36と送信信号用導体パターン38との間を遮蔽するように設けられた接地用パターン領域55aと、整合回路用導体パターン36と受信信号用導体パターン39との間を遮蔽するように設けられた接地用パターン領域55bとを有している。そして、接地用パターン55は、接地用端子50に対して電気的に接続されている。なお、接地用パターン領域55a,55bは、送信信号用導体パターン38と受信信号用導体パターン39との間も遮蔽している。
なお、回路基板800Aにおけるその他の導体パターン並びにビアの配置は、回路基板800と同様なものとなっている。
以上のように、第2実施形態に係る回路基板800Aでは、接地用パターン領域55b,56bの存在により、整合回路用の線路と受信用信号線路5Laとの間が電磁気的に遮蔽される。このため、整合回路用の線路と受信信号を伝送する線路との間のアイソレーション特性をより向上させることができる。
更に、回路基板内部に設けられた各線路間が接地用パターン領域55a,55b,56a,56bの存在によって電磁気的に遮蔽される。このため、回路基板内部における電磁気的な干渉を更に低減することができる。その結果として、回路基板内部の各線路間におけるアイソレーション特性を更に向上させることができる。
なお、回路基板800Aを搭載した分波器306Aはアイソレーション特性に優れるとともに小型である為、当該分波器306Aを搭載した通信装置100Aでは、良好な通信と小型化とが実現可能となる。
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。したがって、本発明は以上の実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。
◎例えば、上記実施形態では、回路基板800,800Aが、3層の誘電体層Lb,Ld,Lfを有し、整合回路用導体パターン24,36が2層の導体パターン形成層Lc,Leに渡って形成されていた。しかしながら、回路基板を構成する誘電体層の数は2層以上であれば何層でも良く、また、整合回路用導体パターンの数も1層以上であれば何層でも良い。更に、例えば、螺旋状パターンを一層で構成してもよいし、また、三層以上で構成してもよい。また、蛇行状パターンを二層以上で構成しても良い。回路基板の誘電体層数を多くした場合には、回路基板の面積が同一だと更に大きなインダクタンスを得ることができるか、更にアイソレーション特性を向上することができ、インダクタンスの値を一定とすると回路基板の面積を小さくして小型化を図ることができる。
以下、2層の誘電体層によって構成され、整合回路用導体パターンが1層の導体パターン形成層のみに形成された回路基板800Bを搭載した通信装置100Bを例に挙げて説明する。
変形例に係る通信装置100Bは、第1及び第2実施形態に係る通信装置100,100Aと比較して、回路基板において、整合用線路が形成される層数が減少するとともに、誘電体層及び導体パターン形成層の数が減少している。また、送信用フィルタ4の出力用の電極と受信用フィルタ5の入力用の電極とが共用された構成を有する弾性表面波素子に対応すべく、ビアや導体パターンの配置が若干変更されている。
以下、変形例に係る通信装置100Bのうち、第1及び第2実施形態に係る通信装置100,100Aと同様な部分については同じ符号を付して説明を省略しつつ、第1及び第2実施形態に係る通信装置100,100Aと異なる回路基板800Bの構成について主に説明する。
図9は、回路基板800Bの概略構成を例示する断面模式図である。回路基板800Bでは、第1及び第2実施形態に係る回路基板800,800Aよりも、誘電体層及び導体パターン形成層が1層ずつ減少している。
具体的には、回路基板800Bは、2層の誘電体層(導体パターン形成層)Lb’,Ld’と、当該誘電体層Lb’,Ld’の表面及び層間に設けられた3層の導体パターン形成層La’,Lc’,Le’とを備えている。導体パターン形成層La’は、誘電体層Lb’の上面(+Z方向の面)すなわち回路基板800Bを構成する多層基板の一方主面(ここでは、表面)に設けられ、導体パターン形成層Lc’は、誘電体層Lb’の下面(−Z方向の面)であり、かつ誘電体層Ld’の上面(+Z方向の面)すなわち誘電体層Lb’と誘電体層Ld’との層間に設けられている。更に、導体パターン形成層Le’は、誘電体層Ld’の下面(−Z方向の面)すなわち多層基板の他方主面(ここでは、裏面)に設けられている。
つまり、回路基板800Bは、図9中の上から順番に、導体パターン形成層La’、誘電体層Lb’、導体パターン形成層Lc’、誘電体層Ld’、及び導体パターン形成層Le’が積層されて構成されている。
図10及び図11は、回路基板800Bを構成する各層La’〜Le’における導体パターン及びビアの配置を例示する図である。なお、図10及び図11では、図4及び図5と同様に、回路基板800Bの外縁の位置が破線で示されている。
回路基板800Bを構成する多層基板は、2層の誘電体層が積層した構造(2層積層構造)を有し、多層基板表面に形成された導体パターン(図10(a))、多層基板裏面に形成された導体パターン(図11(b))、誘電体層Lb’と誘電体層Ld’との層間に形成された導体パターン(図10(c))、誘電体層Lb’を挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Lb’を貫通する複数のビア(図10(b))、誘電体層Ld’を挟んで設けられた導体パターン間を電気的に接続するための誘電体層Ld’を貫通する複数のビア(図11(a))を備えている。
図10及び図11では、送信用及び受信用フィルタ4,5は図示されていないが、回路基板800Bの上面(+Z方向の面)が、送信用及び受信用フィルタ4,5を搭載するための面(フィルタ搭載面)となっており、図10(a)の右方が送信用フィルタ4のフィルタ搭載面、図10(a)の左方が受信用フィルタ5のフィルタ搭載面となっている。
環状電極パターン7Bは、送信用及び受信用フィルタ4,5を構成する弾性表面波フィルタの振動空間を確保しつつ、気密封止するためのパターンである。
ここで、図10及び図11を参照しつつ、回路基板800Bにおける導体パターン及びビアの配置及び接続状態と、回路基板800Bに対して送信用及び受信用フィルタ4,5が実装されて送信及び受信回路が接続された際の送信/受信信号の流れについて説明する。
送信側信号端子1に対して、導体パターン10B,23Bとビア15B,45Bとによって構成される送信用信号線路4Laが電気的に接続されており、導体パターン10Bは、送信用フィルタ4が電気的に接続される端子として機能する。そして、送信側信号端子1から入力される送信用の信号は、信号線路4Laを介して送信用フィルタ4に入力されることになる。
また、共通端子3と、送信用フィルタ4並びに受信用フィルタ5とは、信号線路4Lb,5Lbが省略されて、導体パターン8B,24Bとビア13B,43Bとによって構成される共通線路KYにより電気的に接続されている。導体パターン8Bは、送信用及び受信用フィルタ4,5がそれぞれ電気的に接続される共通の入出力端子として機能する。そして、送信用フィルタ4から出力される送信信号は、共通線路KY、及び共通端子3を順次に介して、アンテナ400(図1)に出力される一方、アンテナ400から入力される受信信号は、共通端子3、及び共通線路KYを順次に介して、受信用フィルタ5に入力されることになる。
また、受信側信号端子2に対して、導体パターン12B,25Bとビア17B,46Bとによって構成される信号線路5Laが電気的に接続されており、導体パターン12Bは、受信用フィルタ5が電気的に接続される端子として機能する。そして、受信用フィルタ5から出力される信号は、信号線路5Laを介して受信側信号端子2から出力されることになる。
回路基板800Bの最上部を構成する導体パターン形成層La’に含まれる環状電極パターン7Bは、各々複数のビアによって構成されるビア群18B〜20Bによって接地用の導体パターン(接地用パターン)26B,27B,70Bに対して電気的に接続されている。そして、接地用パターン26B,27B,70Bは、ビア群47B〜49Bによって接地用端子50に対してそれぞれ電気的に接続されている。
なお、導体パターン9B,22Bとビア14B,44Bによって構成される線路は、送信用フィルタ4を接地用端子50に対して電気的に接続するための線路である。また、回路基板800Bの裏面における端子1〜3,50の配置は、第1実施形態に係る回路基板800(図5(c))と同様であるため、同じ符号を付して説明を省略する。
また、共通端子3に対して、共通線路KYの一部(ここでは、ビア43B)を介して電気的に接続されている整合回路6は、共通端子3に対してビア43Bによって電気的に接続される導体パターン24Bを含む線路(整合用線路)によって構成されている。整合回路6を構成する導体パターン24Bは、螺旋状パターン24Baと蛇行状パターン24Bbとを備えて構成されている。
ここでは、整合回路6は、複数の誘電体層Lb,Ldによって囲まれており、複数の誘電体層Lb,Ldによって構成される多層基板の内部に形成されている。そして、整合回路6の一端部(すなわち、螺旋状パターン24Baがビア43Bに対して電気的に接続されている端部)TB1が、共通線路KYに対して電気的に接続され、整合回路6の他端部TB2が、接地用パターン70Bに対して電気的に接続されている。
つまり、整合回路6は、共通端子3側から螺旋状パターン24Ba、及び蛇行状パターン24Bbの順に直列的かつ電気的に接地用パターン70側に対して接続されている。なお、接地用パターン70Bは、複数のビアを含むビア群48Bを介して回路基板800の裏面に設けられた接地用端子50に対して電気的に接続されており、接地用端子50は、接地される。
整合回路6の他端部TB2と送信用信号線路4La(ここでは、導体パターン23B)との最短距離が、他端部TB2と受信用信号線路5La(ここでは、導体パターン25B)との最短距離よりも相対的に長くなっている。そして、接地用パターン70Bと送信用信号線路4La(ここでは、導体パターン23B)との最短距離が、接地用パターン70Bと受信用信号線路5La(ここでは、導体パターン25B)との最短距離よりも相対的に長くなっている。
そして、螺旋状パターン24Baは、共通端子3に対して電気的に接続されているビア43B側から蛇行状パターン24Bb側にかけて、螺旋状の導体パターンの径が徐々に大きくなるように構成されている。
また、整合回路6では、一端部TB1において電位の絶対値が最も大きく、接地用パターン70Bに対して電気的に接続されている他端部TB2において電位の絶対値が最も小さくなる。そして、一端部TB1から他端部TB2にかけて徐々に電位の絶対値が小さくなる。
この回路基板800Bでは、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーションを向上させる為に、螺旋状パターン24Baが、受信信号用導体パターン25Bから極力離隔され、送信信号用導体パターン23Bに対して相対的に近づけられて配置されることが好ましい。
具体的には、整合回路用導体パターン24B、送信信号用導体パターン23B、及び受信信号用導体パターン25Bが、上式(1),(2)の関係を満たすように配置されている。
ここでは、上式(1),(2)のうち、LTxが、送信信号用導体パターン23Bと整合回路用導体パターン24Bとの最短距離を示し、LRxが、受信信号用導体パターン25Bと整合回路用導体パターン24Bとの最短距離を示している。また、DTxが、整合回路用導体パターン24Bのうちの送信信号用導体パターン23Bと最も接近した位置(送信用線路側最接近位置)PB1から一端部TB1までの整合回路用線路の線路長を示し、DRxが、整合回路用導体パターン24Bのうちの受信信号用導体パターン25Bと最も接近した位置(受信用線路側最接近位置)PB2から一端部TB1までの整合回路用線路の線路長を示している。
また、導体パターン形成層Lc’においては、螺旋状パターン24Baが、共通線路KYに近接配置され、螺旋状パターン24Baと受信信号用導体パターン25Bとの間に蛇行状パターン24bが設けられている。つまり、螺旋状パターン24Baに送信用線路側最接近位置PB1が含まれ、蛇行状パターン24Bbに受信用線路側最接近位置PB2が含まれている。更に、蛇行状パターン24Bbは、共通端子3側から接地用パターン70B側に進むにつれて、蛇行しながら徐々に導体パターン25Bに対して接近するように配置されることが望ましい。なお、整合回路6と受信用信号線路5Laとの間のアイソレーションをより向上させる観点から言えば、蛇行状パターン24Bbと受信信号用導体パターン25Bとの間も極力離隔される方が好ましい。
図12は、送信用フィルタ4の出力用の電極と受信用フィルタ5の入力用の電極とが共用された構成を有する弾性表面波素子900Bの構成を例示する上面図である。ここでは、送信用フィルタ4及び受信用フィルタ5が同一基板上に形成されることで弾性表面波素子900Bが形成されている。なお、図12で示される弾性表面波素子900Bは、いわゆるラダー型のフィルタ素子によって構成されている。
図12に示すように、弾性表面波素子900Bは、主に圧電基板902Bの一方主面上に送信用フィルタ(Txフィルタ)4と受信用フィルタ(Rxフィルタ)5とを備えている。弾性表面波素子900Bでは、Txフィルタ4とRxフィルタ5とを取り囲む環状電極部(環状導体)930Bが設けられている。図12では、環状電極部930Bで囲まれた領域のうち上半分の領域がTxフィルタ4が設けられた領域、下半分の領域がRxフィルタ5が設けられた領域を示している。
Txフィルタ4には、6つの直列腕の共振子(直列共振子)914Ba〜914Bfと2つの並列腕の共振子(並列共振子)915Ba,915Bbとによって構成される複数の励振電極が設けられ、各励振電極間が接続電極917Bによって電気的に接続されている。そして、Txフィルタ4には、入力パッド部911B、アンテナ400と電気的に接続され、Txフィルタ4の出力パッド部として機能し且つRxフィルタ5の入力パッド部としても機能する共通パッド部912B、及び接地電極部913Bが設けられている。そして、並列共振子915Ba,915Bbは、それぞれ接地電極部913Bに対して電気的に接続されている。
一方、Rxフィルタ5には、4つの直列共振子924Ba〜924Bdと4つの並列共振子925Ba〜925Bdとによって構成される複数の励振電極が設けられ、各励振電極間が接続電極927Bによって電気的に接続されている。そして、Rxフィルタ5には、入力パッド部として機能する共通パッド部912B、出力パッド部922B、及び接地用電極923Bが設けられており、並列共振子925Ba〜925Bdは、それぞれ接地用電極923Bに対して電気的に接続されている。更に、接地用電極923Bが、環状電極部930Bに対して電気的に接続されている。
このような構成を有する弾性表面波素子900Bが、回路基板800B上にフェイスダウン実装によって搭載されることで、分波器306Bが形成される。具体的には、環状電極パターン7Bに対して環状電極部930Bが、導体パターン10Bに対して入力パッド部911Bが、導体パターン8Bに対して共通パッド部912Bが、導体パターン9Bに対して接地電極部913Bが、導体パターン12Bに対して出力パッド部922Bが、それぞれ半田バンプを介して電気的に接続される。
以上のように、変形例に係る回路基板800Bでは、受信用信号線路5Laから整合用線路が極力離隔されるとともに、整合用線路の蛇行状パターン24Bbのうちの導体パターン25Bと最接近する位置PB2が整合用線路上で共通線路KYから極力離隔されることで、当該位置PB2における信号の電位が極力低減される。また、整合回路用の線路において、螺旋状パターン24Baによって比較的短い線路長でインダクタンスの値が増大される一方で、線路周辺に及ぼす電磁気的な影響が比較的小さい蛇行状パターン24Bbが受信信号用導体パターン25Bの近傍に配置される。このため、回路基板に整合回路を内装しても、整合回路と受信信号を伝送する線路との間のアイソレーション特性を向上させることができるとともに、分波器デバイス用回路基板の小型化を図ることができる。更に、回路基板800Bを搭載した分波器306Bはアイソレーション特性に優れるとともに小型である為、当該分波器306Bを搭載した通信装置100Bでは、良好な通信と小型化とが実現可能となる。
◎また、上記実施形態では、整合回路6の他端部24Tと送信用信号線路4Laとの最短距離が、他端部24Tと受信用信号線路5Laとの最短距離よりも相対的に長くなっていたが、これに限られず、例えば、整合回路6の他端部24Tと送信用信号線路4Laとの最短距離が、他端部24Tと受信用信号線路5Laとの最短距離よりも相対的に短くなるような構成も考えられる。
但し、接地用端子50に対して電気的に接続された接地用パターンに対して電気的に接続されている他端部24Tが、送信信号用導体パターン23に接近し過ぎると、接地用パターン70と送信信号用導体パターン23とが接近し過ぎるため、接地用パターン70と送信用信号線路4Laとの間において寄生容量が生じ、送信用信号線路4Laにおいて伝送される送信信号の電圧が低下する挿入損失が発生してしまう。従って、このような挿入損失の発生を抑制する為には、整合回路6の他端部24Tと送信用信号線路4Laとの最短距離が、他端部24Tと受信用信号線路5Laとの最短距離よりも相対的に長い方が好ましい。そして、接地用パターン70と送信用信号線路4Laとの最短距離が、接地用パターン70と受信用信号線路5Laとの最短距離よりも相対的に長い方が好ましい。
◎また、上記第2実施形態では、送信信号用導体パターン23,38と整合回路用導体パターン24,36との間、並びに受信信号用導体パターン25,39と整合回路用導体パターン24,36との間の双方に、接地用パターン領域55a、55b、56a、56bが設けられたが、これに限られない。例えば、整合回路用導体パターン24,36と受信信号用導体パターン25,39との間におけるアイソレーション特性を向上させる観点から言えば、少なくとも受信信号用導体パターン25,39と整合回路用導体パターン24,36との間に電磁気的な干渉を遮蔽するための接地用パターン領域55b,56bを設けるだけでも良い。また、2層の導体パターン形成層Lc,Leのうちの少なくとも一方に、接地用パターン領域55a、55b、56a、56bを設けるようにしても、各線路間におけるアイソレーション特性を向上させることができる。
また、上記変形例に係る回路基板800Bに対して、受信信号用導体パターン25Bと整合回路用導体パターン24Bとの間、更には送信信号用導体パターン23Bと整合回路用導体パターン24Bとの間に、電磁気的な干渉を遮蔽するための接地用パターン領域を設けるようにしても良い。
(実施例)
実施例として、上記第1及び第2実施形態に係る回路基板800,800Aをそれぞれ用いた分波器306,306Aと同様な構成を有する3種類の分波器を作製した。なお、分波器306に相当するものを実施例1、分波器306Aに相当するものを実施例2とした。
実施例1,2に係る回路基板800,800Aでは、整合回路6が、複数の誘電体層によって囲まれた多層膜内部に配置されるとともに、螺旋状パターン及び蛇行状パターンの双方を有して構成され、受信用信号線路5Laから整合用線路が極力離隔されるとともに、整合用線路のうちの受信用信号線路と最接近する位置における信号の電位が極力低減され、且つ整合回路6において受信用信号線路5Laに最接近する位置が蛇行状パターンによって形成されたものを用いた。
具体的には、送信信号用導体パターンと整合回路用導体パターンとの最短距離LTx、受信信号用導体パターンと整合回路用導体パターンとの最短距離LRx、整合回路用導体パターンのうちの送信信号用導体パターンと最も接近した位置から共通線路に接続される一端部までの整合回路用線路の線路長DTx、及び整合回路用導体パターンのうちの受信信号用導体パターンと最も接近した位置から一端部までの整合回路用線路の線路長DRxが、下記表1であるものを用いた。
上記表1について説明する。実施例1,2では、各種距離が下記の如く設定されたものを用いた。整合回路用導体パターンの全長(すなわち2層の導体パターン形成層Lc,Leにおける整合回路用導体パターン24,36の線路長の合計)Dpが11.4mm、導体パターン形成層Lcでの整合回路用導体パターンの全長(すなわち1層の導体パターン形成層Lcにおける整合回路用導体パターン24の線路長)Dpcが7.4mm、導体パターン形成層Leでの整合回路用導体パターンの全長(すなわち1層の導体パターン形成層Leにおける整合回路用導体パターン36の線路長)Dpeが4mmであった。
また、導体パターン形成層Lcにおける一端部36T側(すなわちビア29)からTx最接近位置P1までの距離(線路長)DTxcが3.5mm、導体パターン形成層Lcにおける一端部36T側(すなわちビア29)からRx最接近位置P2までの距離(線路長)DRxcが6.8mm、導体パターン形成層Leにおける一端部36TからTx最接近位置(整合回路用導体パターン36のうちの送信信号用導体パターン38と最も接近した位置)までの距離(線路長)DTxeが1.3mm、導体パターン形成層Leにおける一端部36TからRx最接近位置(整合回路用導体パターン36のうちの受信信号用導体パターン39と最も接近した位置)までの距離(線路長)DRxeが2.1mmであった。
また、導体パターン形成層Lcにおける整合回路用導体パターン24と送信信号用導体パターン23との最短距離LTx1(=LTx)が0.38mm、導体パターン形成層Lcにおける整合回路用導体パターン24と受信信号用導体パターン25との最短距離LRx1(=LRx)が0.52mm、一端部36Tから導体パターン形成層LcのTx最接近位置P1までの距離(線路長)DTx1(=DTx)が7.5mm、一端部36Tから導体パターン形成層LcのRx最接近位置P2までの距離(線路長)DRx1(=DRx)が10.8mmであった。
更に、導体パターン形成層Leにおける整合回路用導体パターン36と送信信号用導体パターン38との最短距離LTx2が0.47mm、導体パターン形成層Leにおける整合回路用導体パターン36と受信信号用導体パターン39との最短距離LRx2が0.97mm、一端部36Tから導体パターン形成層LeのTx最接近位置までの距離(線路長)DTx2が1.3mm、一端部36Tから導体パターン形成層LeのRx最接近位置までの距離(線路長)DRx2が2.1mmであった。
なお、実施例2に係る回路基板800Aでは、整合回路用の導体パターンと受信信号を伝送するための導体パターンとの間、並びに整合回路用の導体パターンと送信信号を伝送するための導体パターンとの間の双方が、接地用の導体パターンによって電磁気的に遮蔽されるものを用いた。
分波器306,306Aにおいては、圧電基板上にIDT(InterDigital Transducer)電極及び反射器電極を備えた共振器と、当該各共振器間を接続する配線電極と、回路基板に接続するための接続端子とが形成された弾性表面波フィルタ(弾性表面波素子)を用いた。
ここで、弾性表面波素子900を使用した分波器306,306A(実施例1,2)の製造について説明する。
弾性表面波素子900の製造については、まず、タンタル酸リチウム(LiTaO3)製の圧電基板を用い、当該圧電基板の主面上に厚みが6nmのTi薄膜を形成し、当該Ti薄膜上に厚さが125nmのAl−Cu薄膜を形成して、このTi薄膜及びAl−Cu薄膜を交互に各3層ずつ積層することで、合計6層のTi/Al−Cu積層膜を形成した。
次に、レジスト塗布装置によって厚さが約0.5μmのフォトレジストを塗布した。そして、縮小投影露光装置(ステッパー)等を用いて、例えば、図6で示した共振器や信号線、及びパッド電極等となるフォトレジストのパターンを形成した。受信用フィルタにおけるアンテナ側に最も近い並列共振子についても、この工程でフォトレジストのパターンが形成される。更に、現像装置によって不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させた。
その次に、RIE(Reactive Ion Etching)装置によって図6で示した電極パターン(導体パターン)を形成した。そして、電極パターンの所定の領域上に保護膜を作製した。ここでは、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって、電極パターン及び圧電基板の主面上に厚さが約15nmのSiO2膜を形成した。
更に、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行ない、RIE装置等でフリップチップ用の電極部(入出力電極、接地電極及びパッド電極)を覆っているSiO2膜のエッチングを行った。そして、スパッタリング装置を使用して、SiO2膜を除去した部分にCr、Ni、Auよりなる積層電極を成膜した。このときの積層電極の膜厚は約1μm、Cr層、Ni層、及びAu層の厚さをそれぞれ0.01μm 、1μm 、及び0.2μmとした。その後、フォトレジスト及び積層電極の不要箇所をリフトオフ法によって同時に除去し、積層電極が形成された部分を、フリップチップ用のバンプを電気的に接続するためのフリップチップ用の電極部とした。そして、圧電基板のダイシング線に沿ってダイシング加工を施すことで、各弾性表面波素子900を構成するチップに分割した。
回路基板800,800Aの製造については、まず、セラミックス等の金属酸化物と有機バインダとを有機溶剤等で均質混練したスラリーをシート状に成型したグリーンシートを作製した。そして、複数枚のグリーンシートに対して所望の導体パターン及びビアを形成した後に、複数枚のグリーンシートを積層して圧着することによって多層膜を作製し、焼成することにより複数の回路基板800,800Aが集まった回路基板(集合回路基板)を作製した。集合回路基板に設けられた導体パターン等に用いられる材料としては銀とガラスとを主成分としたものを用い、合計3層の誘電体層とその表裏面及び層間に形成された導体パターンを備えた集合回路基板を作製した。
弾性表面波素子900と集合回路基板とを電気的に接続する工程については、まず導体パターン形成層La(図4(a))の導体パターン8〜12の上に導電性を有する材料(導電材)を印刷した。この導電材としては半田を使用した。
そして、弾性表面波素子900をフリップチップ実装装置によって、弾性表面波素子900の電極形成面を下面にして集合回路基板上に仮接着した。この仮接着はN2雰囲気中で行った。更に、N2雰囲気中でリフローを行ない、半田を溶融することにより、弾性表面波素子900と集合回路基板上とを接着し、気密封止を施した。
そして、弾性表面波素子900が接着された集合回路基板に樹脂を塗布し、N2雰囲気中でベークを行なうことで、弾性表面波素子900を樹脂によって封止した。
ここでは、複数の弾性表面波素子900を搭載できる集合回路基板を用いたため、集合回路基板のダイシング線に沿ってダイシング加工を施して、回路基板800,800Aの個片に分割することで、複数の分波器306,306Aを一度の工程で得た。なお、出来上がった各分波器306,306Aの寸法(できあがり寸法)を、実装面積2.5mm×2.0mm×高さ0.9mmとした。
このようにして作製された2種類の分波器306,306Aについて、ネットワークアナライザーを用いた測定値(Sパラメータ)より送信側信号端子1から受信側信号端子2への透過係数(すなわちアイソレーション)を得た。
(比較例)
実施例1,2に係る回路基板800,800Aでは、導体パターン形成層Lcの整合回路6に係る導体パターンにおいて、螺旋状パターン24aよりも蛇行状パターン24bの方が受信信号用導体パターン25に対して相対的に接近して配置された。これに対して、導体パターン形成層Lcの整合回路6に係る導体パターンにおいて、蛇行状パターン24Cbよりも螺旋状パターン24Caの方が受信信号用導体パターン25に対して相対的に接近して配置された回路基板を用いた分波器を比較例として採用した。更に、比較例の回路基板としては、最短距離LTx,LRx、線路長DTx,DRxの値が上表1であるものを用いた。具体的には、LTx=0.2、LRx=0.22、DTx=8.2(3.65)、DRx=9.2(4.61)であるものを用いた。なお、比較例については、導体パターン形成層Lc,Leにおいて整合回路6の線路と送信用信号線路との最短距離及び整合回路6の線路と受信用信号線路との最短距離が各々等しい為、上表1では、導体パターン形成層Lc,Leに係る線路長DTx,DRxとして、各々2つの数値を挙げている。
比較例で用いた回路基板の導体パターンとビアの配置を図13及び図14に示している。
図13及び図14で示すように、比較例に係る回路基板では、整合回路6の線路が、螺旋状パターン24Caと蛇行状パターン24Cbとによって構成された導体パターン形成層Lcの整合回路用導体パターン24C、及び蛇行状パターン36Caと螺旋状パターン36Cbとによって構成された導体パターン形成層Leの整合回路用導体パターン36Cを備えて構成されている。また、導体パターン形成層Lcの整合回路用導体パターン24Cと導体パターン形成層Leの整合回路用導体パターン36Cとがビア29Cによって電気的に接続されている。なお、整合回路6を構成する螺旋状パターン及び蛇行状パターンの配置及びこれらの導体パターンを接続するビア29Cの配置に係る特徴点を除いて、比較例に係る回路基板は、実施例1,2に係る回路基板800,800Aと同様な構成を有するため、図13及び図14では、実施例1,2に係る回路基板800,800Aと同様な部分については同様な符号を付して、説明を省略する。
また、変形例に係る分波器は、実施例1,2に係る分波器と同様に弾性表面波素子900を使用した分波器であり、当該分波器の製造方法については、実施例1,2に係る分波器と同様であるため説明を省略する。
このようにして作製された比較例に係る分波器についても、実施例1,2に係る分波器306,306Aと同様に、ネットワークアナライザーを用いた測定値(Sパラメータ)より送信側信号端子1から受信側信号端子2への透過係数(すなわちアイソレーション)を得た。
(実施例と比較例の比較)
上述のようにして得られた、実施例1,2に係る2種類の分波器と、比較例に係る1種類の分波器とについての、送信側信号端子1から受信側信号端子2への透過係数(すなわちアイソレーション)を、図15〜図17、及び下表2に示す。
図15〜図17では、横軸は周波数(単位:MHz)を、縦軸はアイソレーション(単位:dB)を示している。そして、実施例1のアイソレーションが実線R1で示され、実施例2のアイソレーションが太線R2で示されている。更に、比較例のアイソレーションが破線R3で示されている。
また、図15では、広範囲の周波数帯域(800〜920MHz)におけるアイソレーションを示している。図16では、US−CDMA方式で必要とされる送信用の周波数帯域(824〜849MHz)に着目したアイソレーション、すなわち図15の太破線A1で囲まれた領域に着目したアイソレーションを示している。図17では、US−CDMA方式で必要とされる受信用の周波数帯域(869〜894MHz)に着目したアイソレーション、すなわち図15の太破線A2で囲まれた領域に着目したアイソレーションを示している。
また、上表2では、アイソレーション(単位:dB)とともに、導体パターン形成層Lc,Leにおける整合回路6を構成する導体パターンの特徴、最短距離LTx(単位:mm)、最短距離LRx(単位:mm)、線路長DTx(単位:mm)、線路長DRx(単位:mm)、周波数帯域860MHzにおける整合回路6の導体パターンによって得られた単位長さ当たりのインダクタンスの値(単位:nH/mm)、及び比較結果に係る総合評価が示されている。
導体パターン形成層Lc,Leの整合回路6に係る導体パターンにおいて、蛇行状パターン24Cb,36Caよりも螺旋状パターン24Ca,36Cbの方が受信信号用導体パターン25,39に対して相対的に接近して配置された回路基板を用いた分波器(比較例)では、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値が−54.7dBであり、受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値が−48.5dBであった。
一方、導体パターン形成層Leの整合回路6に係る螺旋状パターン36が受信信号用導体パターン39から十分離隔されて配置され、導体パターン形成層Lcの整合回路6に係る導体パターンにおいて、螺旋状パターン24aよりも蛇行状パターン24bの方が受信信号用導体パターン25に対して相対的に接近して配置され、且つLTx≦LRx及びDTx<DRxの関係を満たす回路基板800を用いた実施例1の分波器では、比較例と比べて、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値が−56.8と1.9dBだけ減少するとともに、受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値が−49.7dBと1.2dBだけ減少し、送受信の周波数帯域全体としてアイソレーション特性が向上した。
また、実施例1の分波器に対して、更に整合回路用導体パターン24,36と送信信号用導体パターン23,38との間を遮蔽する接地用パターン領域55a,56a、及び整合回路用導体パターン24,36と受信信号用導体パターン25,39との間を遮蔽する接地用パターン領域55b,56bが設けられた実施例2の分波器では、実施例1と比べて、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)におけるアイソレーションの最大値は−58.4dBと1.6dBだけ減少するとともに、受信用の周波数帯域(869〜894MHz)におけるアイソレーションの最大値が−49.9dBと0.2dBだけ減少した。そして、実施例2については、比較例と比較して、送信用の周波数帯域(824〜849MHz)及び受信用の周波数帯域(869〜894MHz)の双方において、アイソレーションの最大値が減少する傾向を示した。すなわち、整合回路用導体パターン24,36と送信信号用導体パターン23,38との間を遮蔽する接地用パターン領域55a,56a、及び整合回路用導体パターン24,36と受信信号用導体パターン25,39との間を遮蔽する接地用パターン領域55b,56bが設けられたことで、アイソレーションの特性をより向上させることができた。
また、インダクタンスに着目すると、実施例1及び実施例2の分波器では、比較例の分波器と比較して、整合回路6の全長はほとんど変わらないが、整合回路6を構成する導体パターンのうちの螺旋パターンが占める割合が増加したことにより、単位長さ当たりのインダクタンスの値が0.07nH/mmだけ高まった。
以上の結果より、受信用信号線路5Laから整合用線路を極力離隔するとともに、整合用線路のうちの受信用信号線路と最接近する位置における信号の電位を極力低減させ、且つ、整合回路用の線路において、螺旋状パターンの利用によって比較的短い線路長でインダクタンスの値を増大させつつ、線路周辺に及ぼす電磁気的な影響が比較的小さい蛇行状パターンが受信信号用導体パターンの近傍に配置されることで、回路基板に整合回路を内装しても、分波器の小型化を図ることができ且つアイソレーション特性が向上した分波器が得られる事を確認した。更に、回路基板内部に設けられた各線路間を電磁気的に遮蔽することで、アイソレーション特性が更に向上する傾向がある事を確認した。